説明

弁付き雄ルアーコネクタ

弁付き雄ルアーコネクタは、入口部(6)と出口部(7)を有する管状部材(5)を包囲する弾性中空要素(15)を含む。カラー(28)は、軸方向に移動可能であり、弾性中空要素(15)の伸張変形を引き起こし、管状部材(15)の入口部(6)の初期端(11)に隣接する末端壁(20)の切欠き(20)を開放する。カラー(28)は、末端壁(20)に近接するまで弾性中空要素(15)の閉込め軸方向付属部(30)を有する。弾性中空要素(15)の伸張変形を制限する停止手段(14)が、末端壁(20)に近接する領域(19)に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療流体用コネクタ、さらに詳しくは弁付き雄ルアー(luer)コネクタであって、雌ルアーコネクタに接続し、2つのコネクタを通る流路を開くように設計された弁付き雄ルアーコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
このように作られるコネクタは、医療流体での使用を考慮すると、雌コネクタが無いときの完全な閉鎖、雌コネクタとの連結の間の瞬間的な連結、及び雌コネクタの離脱後の閉鎖状態への瞬間的な復帰を保証できなければならない。
【0003】
このような効果を達成するために、ケーシングと、初期端を備える入口部と出口部を有する管状部材と、ケーシングに固定されて管状部材の入口部をスライド可能に軸方向に包囲する弾性中空要素とからなる弁付き雄ルアーコネクタが、本願出願人に譲渡された米国特許第7559530号で提案された。弾性中空要素は、切欠き(cut)を有するとともに管状部材の入口部の初期端に隣接する末端壁を有し、ケーシングと弾性中空要素との間にカラー(collar)が介設されている。カラーは、軸方向に移動可能であり、雌コネクタとスラスト係合し、弾性中空要素を伸張変形させ、その結果として管状部材の入口部と出口部の間の前述した切欠き及び流路を開放させる。
【0004】
この弁付き雄ルアーコネクタは、切欠部を備える末端壁を介して閉鎖弁部材を規定する弾性変形要素の圧縮の代わりに伸張変形することにより、類似する従来の弁コネクタとは異なった動作をする。
【0005】
この従来のコネクタは、コネクタが使い捨て用又は使用回数制限用に意図されている場合に完全に有効であるが、繰り返し動作と再閉鎖サイクルの場合に欠点が明らかになる。このような欠点は、弾性中空要素の末端壁による不適切にシールされた再閉鎖の危険性によるものであり、該危険性は、伸張する拡張中における弾性中空要素の非対称な反り及び変形により、切欠き領域のバリ又は裂けによって引き起こされ、それに続く非変形状態への正しい弾性復帰に影響を与える。
【0006】
この従来技術の弁付き雄ルアーコネクタのさらなる欠点は、閉鎖状態で外側に自由に露出される弾性中空要素が不注意に又はむしろ意図的に変形し、相対的な末端壁の切欠きに過度の有害な開放が形成される可能性にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7559530号明細書
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、前記文献US−7559530から知られている前述のコネクタを改良し、さらに具体的には弾性中空要素の不正な変形による故障、及び末端壁の切欠きの安全で信頼性のある閉鎖に関する次の問題の危険性を劇的に減少することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、弾性中空要素の末端壁の切欠きの不注意による又は望まれない開放を防止することである。
【0010】
本発明によると、これらの目的は、請求項1の前提部に規定されたタイプの弁付き雄ルアーコネクタにより達成され、その主たる特徴は、ケーシングと弾性中空要素の間に介在されるカラーが、末端壁の実質的近傍まで、前記弾性中空要素に対する閉込め軸方向付属部(containment axial appendage)を有することである。
【0011】
この解決手段により、いくつかの重要な利点を得ることができる。
【0012】
第一に、カラーの軸方向付属部により及ぼされる閉込め動作は、伸張変形中の弾性中空要素の側壁の制御されない又は不正確な変形を防止し、弁コネクタの開放と再閉鎖が繰り返されても、関係する末端壁の切欠きの完全な閉鎖を保証する。
【0013】
これに対し、カラーの軸方向付属部の存在は、弾性中空要素の末端壁の切欠きにおける裂傷の危険性を劇的に減少し、裂傷があった場合でも、その伝搬が制限されあるいは停止される。
【0014】
弾性中空要素の伸張変形は、その末端壁と、閉込め軸方向付属部が延びるカラーの領域との間の軸方向延長部のほぼ全体にわたって、良好に制御される。
【0015】
本発明の好ましい実施形態によると、弾性中空要素の側壁は、カラーの閉込め軸方向付属部に向かって軸方向に対向する外部ラジアルフランジを有する。
【0016】
外部ラジアルフランジとカラーの閉込め軸方向付属部の自由端との間の当接は、コネクタの閉鎖状態において、弾性中空要素の末端壁の切欠きの望まれない又は不注意な開放を防止する。さらに、このようなラジアルフランジは、切欠きの確実(positive)な再閉鎖、切欠きの雌コネクタによる開放、これに続く雌コネクタの除去をもたらすことが有利にできる。弾性中空要素の末端壁の外部ラジアルフランジに対してカラーの閉込め軸方向付属部により付与される軸方向スラストによって決定される確実な再閉鎖の効果は、さらに、開放と再閉鎖のサイクルを繰り返した後でさえ、コネクタの完全閉鎖を保証すること、
中空要素と切欠きを備えた関連する末端壁との弾性変形を効率的に制御すること、に貢献している。
【0017】
このような効果は、本発明の更に有利な特徴による、 管状部材は、入口部の初期端に近接して、停止手段で終端する外部環状溝を有し、外部環状溝内で弾性中空部材の内部ガイド突起がスライド可能に嵌合する、という事実によりさらに増加する。
【0018】
このような弾性中空要素の内部ガイド突起と管状部材の外部溝との間の協働は、実質的に停止手段のように、端壁に近接する弾性中空要素の領域の伸張変形を制限し、これにより切欠きの領域の裂傷又は切裂けの危険性を防止することにさらに貢献する。
【0019】
弁付き雄ルアーコネクタと雌コネクタとの間の連結中に、弾性中空部材の緩やかな最もストレスの無い可能性の開放を保証するために、管状部材の入口部の前述した初期端には
外部環状丸形拡大部が都合良く形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明のさらなる特徴及び利点は、非制限的な実施例としてのみ与えられた添付図面を参照する以下の詳細な説明から明らかとなる。
【図1】本発明による弁付き雄ルアーコネクタの概略斜視図。
【図2】図1の軸方向断面図。
【図3】コネクタの分解斜視図。
【図4】図3の断面図。
【図5】本発明による弁付き雄ルアーコネクタの動作段階を示す図2に類似した概略断面図
【図6】本発明による弁付き雄ルアーコネクタの異なる動作段階を示す図2に類似した概略断面図。
【図7】本発明による弁付き雄ルアーコネクタの異なる動作段階を示す図2に類似した概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
最初に、図1乃至4を参照すると、本発明による弁付き雄ルアーコネクタは、ケーシング1からなり、該ケーシング1は、下部フランジ部2と、該下部フランジ部2と反対側に永久的に連結されて形成され、内部にねじ座4を備える上部中空本体3とで構成されている。
【0022】
フランジ2は、符号5で全体的に示された管状部材と一体的に且つ同軸に形成され、管状部材5は、中空本体3を通って伸張してねじ材4の外側に突出する入口部6と、出口部7とを有している。入口部6は、後で説明する他の部品と平行であるが、ねじ座4とともに、図示しない公知の雌コネクタと係合するように設計された雄ロックルアーコネクタを規定している。例えば、本願出願人による特許出願EP1834665A2に記載され図示されたタイプの弁を有することができる。
【0023】
出口部7は、管状付属部8と連通し、該管状付属部8は、例えば雌ロックルアーコネクタのように形成され、フランジ2と一体に形成され、ケーシング1に対して後部で突出している。
【0024】
入口部6と出口部7は、2シリーズの離れたラジアル通路9,10を介して互いに接続され、相互の連通は以下で明確にするように制御される。
【0025】
入口部6は、11で示す開放初期端を有し、該開放初期端11には、上部で外部環状溝13を画定する丸壁環状拡大部12が形成され、該外部環状溝13は内側で段部14により画定されている。
【0026】
弾性中空要素は、典型的にはエラストマー又はシリコンゴムであり、フランジ2と本体3との間でケーシング1に固定された環状ベース16と、略円錐部18を介してベース16に接続された第1略円筒部17と、該第1円筒部17に対して僅かに狭まり、末端横壁20を有する第2略円筒部19とからなり、15で示されている。略円錐部18は第1略円筒部17に向かって先細になっている。
【0027】
末端壁20は、中心に切欠き(cut)21を備え、該切欠き21は、例えば線形又は図示された実施例の場合のような三尖弁形状であり、弾性中空要素15の弾性特性により通常閉鎖されている。外部ラジアルフランジ22は、その機能については後述するが、末端壁20の外周縁から突出している。
【0028】
弾性中空要素15の第2円筒部19には、環状ガイド突起23が内部に形成され、該環状ガイド突起23は、管状部材5の入口部6の溝13内で環状拡大部12と段部14の間をスライド可能である。
【0029】
第1円筒部17は、互いに離れた少なくとも1つの第1、第2、第3環状シール突起が内部に形成され、それぞれ24,25,26で示され、管状部材5にスライド可能にシール接触している。
【0030】
弾性中空要素15の末端壁20は、通常は、その切欠き21を閉鎖したまま、入口部6の初期端11の真上に配置されている。このような位置は、図1,2,5に示す弁コネクタの閉鎖状態に相当し、この状態では、管状部材5のラジアル通路9,10の間の連通は、少なくとも弾性中空要素15の環状突起24によって互いに絶縁され、したがって、入口部6と出口部7の間の連通、すなわち、コネクタを通る流路は、隠されている。
【0031】
ケーシング1の中空本体3と弾性中空要素15との間に介設され、後述するように、弾性中空要素15の伸張変形により、コネクタを通る流路の開放と、その後の雌ルアーコネクタとの連結とを制御するように設計されたアクチュエータ部材を構成するカラーが、参照符号28で示されている。
【0032】
カラー28は、弾性中空要素15の第1円筒部17を包囲し、その下部29は、弾性中空要素15の円錐部18に係合している。
【0033】
本発明の独特な特徴によると、カラー28は、その上部に、弾性中空要素15の第2円筒部19を包囲する閉込め軸方向付属部30をさらに備え、該付属部30は末端壁20の近傍まで延びている。閉込め軸方向付属部30の自由端は、末端壁20の外部ラジアルフランジ22に向かって軸方向に面している。
【0034】
カラー28の閉込め軸方向付属部30は、雌コネクタの外部係合面、例えば必ずしもそうである必要はないが、ルアーコーン(luer cone)を有している。
【0035】
本発明による弁コネクタは、以下のように動作する。
【0036】
閉鎖状態では、図1,2,5に示すように、弾性中空部材15の末端壁20の切欠き21は閉鎖されている。不注意ではあるが望まれない開放は閉込め軸方向付属部30の存在により隠される。末端壁20で円筒部19を下方に押圧し又は変形させ、切欠き20の開放を引き起こす試みがあった場合、閉込め軸方向付属部30に対して、外部ラジアルフランジ22が当接する。
【0037】
コネクタの開放をもたらすために、雌ルアーコネクタを本体3の座4に導入し結合する必要がある。この導入により、図示しないが例えば前述したEP−1834665A2に記載され図示されたものに相当する雌コネクタは、閉込め付属部30に軸方向に係合し、カラー28に軸方向スラストを付加し、カラー28を出口通路7の方向に押圧する。カラー28のベース29と円錐部18の相互作用により、弾性中空要素15は、弾性的に伸張変形し、末端壁20の内面を管状部材5の入口部6の初期端11に押圧する。この工程の間、まず図5に示し次に図6に示すように、弾性中空要素15の内部ガイド突起23は、外部拡大部12からスタートして、図6に示すように段部14に当たって停止するまで、溝13に沿って平行移動する。同時に、弾性中空要素15の内部環状突起24は、ラジアル通路9,10の間、すなわち、管状部材5の入口部6と出口部7の間の連通を自由にするまで、円筒部17の伸張変形により下方に移動する。この工程の間、切欠き21は、末端壁20と外部環状拡大部12の間の相互作用により、開放を開始する。
【0038】
雌コネクタの完全開放、カラー28のさらなる下方への移動、及び次の弾性中空要素15の伸張変形に続いて、末端壁20と環状拡大部12の間の相互作用により切欠き21の完全開放が生じ、及びこれに応じて図7に示すように入口部6と出口部7の間の流路の完全開放が生じる。
【0039】
弾性中空要素15の第2円筒部19の伸張の制御は、内部ガイド突起23と溝13の間の相互作用により、切欠き21の裂傷の危険性を阻止する。さらに、内部ガイド突起23が段部14に当接するまで、第2円筒部19が下方に移動する場合に、カラー28の軸方向付属部30により与えられる閉込めは、第2円筒部19が横方向にそれるのを防止し、雌コネクタの離脱の後に初期位置に正しく復帰するのを保証する。さらに、このような復帰は、中空要素15の弾性復帰のみによるだけでなく、軸方向付属部30によって与えられる確実(positive)な動作により、得られる。実際には、軸方向付属部30の自由端と末端壁20の外部ラジアルフランジ22との間の相互作用は、安全で且つ信頼性をもって、切欠き21の変形されない閉鎖状態を回復させる。
【0040】
以上の説明は、閉込め軸方向付属部30の存在、内部ガイド突起23と協働する段部14を有する外部溝13の存在、また外部ラジアルフランジ22の存在、拡大部12の存在により、本発明によるコネクタの開放と再閉鎖の改良された制御を達成することができ、繰り返し動作の場合でも故障の危険性を回避することができる。
【0041】
構成の細部や実施例は、特許請求の範囲に規定された本発明の保護の範囲を逸脱することなく、説明し図示したものに対して、広範囲に変更してもよいことは明らかである。
【符号の説明】
【0042】
1 ケーシング
5 管状部材
6 入口部
7 出口部
9,10 ラジアル通路
11 初期端
12 外部環状円形拡大部
13 外部環状溝
14 停止手段
15 弾性中空要素
20 末端壁
21 切欠き
22 外部ラジアルフランジ
24,25 内部環状突起
28 カラー
30 閉込め軸方向付属部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング(1)と、
初期端(11)を備える入口部(6)と出口部(7)を有する管状部材(5)と、
前記ケーシング(1)に固定され、前記管状部材(5)を包囲し、前記管状部材(5)の入口部(6)の初期端(11)に隣接する末端壁(20)を有するとともに、切欠き(21)を有する弾性中空要素(15)と、
前記ケーシング(1)と前記弾性中空要素(15)との間に介在され、軸方向に移動可能で、雌コネクタがスラスト係合し、前記弾性中空要素(15)を伸張変形させ、その結果、前記切欠き(21)と、前記入口部(6)と前記管状部材(5)の出口部(7)との間の流路とを開放させるカラー(28)とを有し、
さらに、前記末端壁(20)の実質的近傍まで、前記弾性中空要素(15)に対する閉込め部材(30)を有する弁付き雄ルアーコネクタにおいて、
前記カラー(28)は、前記切欠き(21)の開放中に前記弾性中空要素(15)の伸張変形を生じさせるように設計され、
前記閉込め部材は、前記カラー(28)とともに軸方向に移動可能な前記カラー(28)の軸方向付属部(30)からなることを特徴とする弁付き雄ルアーコネクタ。
【請求項2】
前記弾性中空要素(15)の前記末端壁(20)は、前記カラー(28)の閉込め軸方向付属部(30)に向かって軸方向に対向する外部ラジアルフランジ(22)を有することを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記管状部材(5)は、前記末端壁(20)に近接する前記弾性中空要素(15)の部分(19)の伸張変形を制限するように設計された停止手段(14)を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記管状部材(5)は、前記入口部(6)の初期端(11)に近接して、前記停止手段(14)で終端する外部環状溝(13)を有し、前記外部環状溝(13)内で前記弾性中空部材(15)の内部ガイド突起がスライド可能に嵌合することを特徴とする請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記外部環状溝(13)は、前記入口部(6)の初期端(11)に実質的に対応して、外部環状円形拡大部(12)により範囲が定められている請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記管状部材(5)の前記入口部(6)と前記出口部(7)は、相互に離れたラジアル通路(9,10)を介して互いに接続され、前記弾性中空要素(15)は、前記ラジアル通路(9,10)の連通を制御する内部環状突起(24,25)を備えている請求項1から5のいずれかに記載のコネクタ。
【請求項7】
前記カラー(28)の前記閉込め軸方向付属部(30)は、雌コネクタ用の外部係合面を有することを特徴とする請求項1から6に記載の弁付きコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−512028(P2013−512028A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540531(P2012−540531)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際出願番号】PCT/IB2010/055430
【国際公開番号】WO2011/064738
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(507028619)インドゥストリー・ボルラ・ソシエタ・ペル・アチオニ (10)
【氏名又は名称原語表記】Industrie Borla S.p.A.
【Fターム(参考)】