説明

弁付中栓体を嵌合したチューブ容器

【課題】製造工程数が少なく製造コストが安価であり、粘度の低い内容物に対して、確実に弁機能を発揮するチューブ容器。
【解決手段】中栓体と弁体が分離した状態で、同一の金型で同時成形される弁付中栓体を、チューブ容器の口部に嵌合することを特徴とするチューブ容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は弁付中栓体を嵌合したチューブ容器に関し、さらに詳しくは、弁体と中栓体が分離した状態で、同一の金型で同時成形される、弁付中栓体を嵌合したチューブ容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、押出しチューブ容器は、容器胴部の復元力によりエアーを吸い込むエアーバック現象があり、このため吸い込まれたエアーにより内容物に変質が生じたり、内容物が固化する場合がある。そこで、容器の口部に逆流防止弁を嵌合した、エアーバックを防止するための逆流防止弁付きチューブ容器が使用されている。従来の逆止弁付チューブ容器は、弁体と中栓体とが別成形され、後から組みつけられて製造されていた。そして、逆流防止弁が嵌合されたチューブ容器の胴部を押圧すると、内容物はチューブ容器の胴部から押出され、弁体を押し上げて外に吐出される。胴部の押圧を止めると、容器胴部の復元力により、逆流防止弁内の内容物は、容器内に戻されると共にエアーを吸い込もうとするが、同時に弁体も引き戻されるので、弁体は弁孔を閉鎖する。これにより容器内へのエアーバックが防止される。
【0003】
このような従来の逆流防止弁としては、図6及び図7に示すようなものがある。図6において、56は球体であり53は中栓体である。中栓体53はチューブ容器51の口部52に嵌入されている。チューブ容器51は単層、多層のチューブ又はラミネートチューブである。中栓体53には、上方に通路54が形成され、この通路54の下方に、内径が拡大された弁体収納部55が形成されている。この弁体収納部55の内径寸法は、球体56の直径より若干大きく構成されている。弁体収納部55の天面には、全周を3〜4等分するように弁止部57が形成されており、球体56が上昇することにより、球体56が通路54を閉鎖して内容物が通路54を塞ぐのを防止している。一方、弁体収納部55の下方には、球体56を支持すると共に、球体56との相互作用により、弁機能の役割を果たす突起部58が形成されている。この突起部58間の寸法は、球体56より若干小さい寸法で構成され、球体56は、中栓体下部59から無理挿入できる程度に突出されている。そして、球体56と突起部58の係脱により、弁機能が発揮される。このような従来の逆流防止弁が付いた、弁付中栓体を嵌合したチューブ容器の文献としては、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4434380号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の弁付中栓体を嵌合したチューブ容器の、球体56と中栓体53は、図7に示すように、別々の製造工程で成形された後、中栓体下部59の突起部間58から弁体収納部55へ圧入される。したがって、圧入作業工程が必要であり、弁付中栓体の製造工程数が多くなると共に、製造コストが高くなる欠点があった。
本発明は、このような課題に着目してなされたものであり、製造工程数が少なく、製造コストが安価であると共に、粘度の低い内容物に対して、確実に弁機能の効果を発揮する、弁付中栓体を嵌合したチューブ容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するため、請求項1記載の発明の解決手段は、中栓体と弁体が分離した状態で、同一の金型で同時成形される弁付中栓体を、チューブ容器の口部に嵌合することを特徴とする弁付中栓体を嵌合したチューブ容器である。
【0007】
請求項2記載の発明の解決手段は、中栓体と弁体が分離した状態で、同一の金型で同時成形される弁付中栓体を、チューブ容器の口部に嵌合すると共に、口部の雄ねじ部にヒンジキャップ螺合したことを特徴とする弁付中栓体を嵌合したチューブ容器である。
【0008】
請求項3記載の発明の解決手段は、中栓体をチューブ容器の口部に嵌入すると共に、ヒンジキャップの基部に形成したフランジ部を中栓体の鍔部に嵌入し、中栓体を介してチューブ容器とヒンジキャップを密接に嵌合したことを特徴とする中栓体を嵌合したチューブ容器である。
【0009】
請求項4記載の発明の解決手段は、チューブ容器に代えてボトル容器としたものである。
【0010】
請求項5記載の発明の解決手段は、カップ部と脚部とから構成される弁体と、カップ部が線接触で接触し弁機能を発揮する弁座を有する中栓体とからなり、(a)弁体は、少なくとも上型ピン、上スリーブピン及び下型ピン、下スリーブピンで囲まれる空間部に樹脂を流入して成形され、(b)中栓体は、少なくともキャビティの中心に、上型ピンと上スリーブピンを配置すると共に、コアピンの中心に、下型ピンと下スリーブピンを配置し、キャビティと上スリーブピン及びコアピンと下スリーブピンで囲まれる空間部に、樹脂を流入して成形され、(c)弁体と中栓体は、分離した状態で同一の金型で同時成形されることを特徴とする弁付中栓体の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、弁体と中栓体が分離した状態で、同一の金型で同時成形される、弁付中栓体を嵌合したチューブ容器であるから、成形工程数が少なく製造コストが安価である効果を奏する。又弁機能が確実に発揮されるので、低粘度の内容物であっても、エアーによる内容物の変質を確実に防止できる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る弁付中栓体をチューブ容器の口部に嵌合した場合において、弁機能が発揮されている状態を示す、実施例1を示す正面断面図。
【図2】本発明に係る弁付中栓体をチューブ容器の口部に嵌合した場合において、弁機能が解除されている状態を示す、実施例1を示す正面断面図。
【図3】本発明に係る弁付中栓体を嵌合したチューブ容器において、ヒンジキャップを螺合した実施例2を示す正面断面図。
【図4】本発明に係る中栓体を嵌合したチューブ容器において、ヒンジキャップを螺合した実施例3を示す正面断面図。
【図5】本発明に係る弁付中栓体の製造方法において、弁付中栓体の成形金型を示す正面断面図。
【図6】従来の弁付中栓体を、チューブ容器の口部に嵌合したチューブ容器の正面断面図。
【図7】従来の弁付中栓体を、チューブ容器の口部に嵌合したチューブ容器において、球体を中栓体内に圧入している状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例の一例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0014】
図1及び図2は、本発明に係る弁付中栓体3を、チューブ容器1の口部2に嵌合した状態を示す実施例1を示す断面図である。この発明に係る弁付中栓体3の特徴は、中栓体3と弁体4が分離した状態で、同一の金型で同時成形される。チューブ容器1は、単層チューブ、多層チューブ又はラミネートチューブである。弁体4は、上方のカップ部6と、下方の脚部7から構成され、下方の脚部7は、円周方向に3〜4分割され、分割の隙間に形成された溝8から内容物が上方に移動する。そして、カップ部6及び脚部7の抜止部7aは、中栓体3の弁座5に抜止めとして係合するので、弁体4は中栓体3の弁座5から外れない。
【0015】
図1は、内容物がチューブ容器1から外に押し出された後、チューブ容器1の内部が減圧化し、弁体4が下がることにより、弁体4のカップ部6が中栓体3の弁座5に嵌合し、弁機能が発揮され、エアーバックを防止している状態を示す図面である。弁座5には、中栓体3と一体成形され、弁体4が移動可能に保持できるように、一定の肉厚を有する弁座5の平面部に、孔が穿設されている。すなわち、弁体4のカップ部6は、弁座5の平面部に穿設された孔上方角部5aに線接触したとき、弁機能が発揮される。弁体4のカップ部6と中栓体3の弁座5は、面接触ではなく線接触で係合するため、密着性が向上し低粘度の内容物でも、確実にエアーバック効果を発揮する。したがって、閉鎖膜を必要としない弁付中栓体を嵌合したチューブ容器に効果的に適用することができる。又図2は、内容物がチューブ容器1の外に押し出され、弁体4が上方に移動することにより、弁体4の脚部7の抜止部7aが、中栓体3の弁座5に嵌合し、弁機能が解除された断面図である。この場合、内容物は脚部7の溝8を通り上方に移動し、チューブ容器1の外に吐出される。
【0016】
図5は、実施例1に係る弁付中栓体3を、金型で成形している状態を示す断面図である。図5は、キャビティ11と上スリーブピン12と補助ピン15及びコアピン13と下スリーブピン14とスライドコア18で囲まれる空間部に樹脂を流入して中栓体3を成形すると同時に、上型ピン16と上スリーブピン12及び下型ピン17と下スリーブピン14で囲まれる空間部に別ルートから樹脂を流入し、弁体4を成形する状態を示す図面である。この製造方法では、中栓体3と弁体4が分離した状態で、同一の金型で同時成形が可能である。なお、図5では、中栓体3の成形性を向上させるため、補助ピン15が設けられているが、補助ピン15を設けないで、上スリーブピン12と補助ピン15が一体化されたピンが設けられた金型の実施例であってもよい。
【実施例2】
【0017】
図3は実施例2を示す図面である。実施例2は、中栓体23と弁体24が分離した状態で、同一の金型で同時成形される弁付中栓体23を、チューブ容器21の口部22に嵌合すると共に、ヒンジキャップ25を口部22の雄ねじ部22aに螺合した実施例である。ヒンジキャップ25は、キャップ基部35の頂壁26から垂下されたフランジ部27が、弁付中栓体23の鍔部23aに上から嵌合している。又頂壁26から垂下するフランジ部27の上方には、注出口28を起立すると共に、頂壁26の外周縁には外筒29が形成され、この外筒29は、チューブ容器21の肩部30上に垂下されている。又蓋体31の天面内壁から嵌合筒32を垂下して、注出口28に係脱自在に嵌合されている。又蓋体31の外周縁には前壁33が垂下されると共に、後には後壁34が形成され、この後壁34とキャップ基部35は、ヒンジ36で連結され蓋体31は開閉自在に構成されている。なお、キャップ基部35の雌ねじ部35aは、チューブ容器21の口部22の雄ねじ部22aに螺合されている。
【実施例3】
【0018】
図4は、本発明の実施例3を示すもので、成形時に、金型の弁体の部位に樹脂を流入しないで、金型で中栓体23のみを成形する実施例である。中栓体23をチューブ容器21の口部22に嵌入すると共に、ヒンジキャップ25の基部35に形成した頂壁26から垂下したフランジ部27を、中栓体23の鍔部23aに上から嵌合したものである。これにより、中栓体23を介してチューブ容器21とヒンジキャップ25を密接に嵌合することができ、中栓体23は、チューブ容器21の口内径を調整する機能を発揮する。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明に係る中栓体と弁体が分離した状態で、同一の金型で同時成形される弁付中栓体を、チューブ容器の口部に嵌合したチューブ容器は、組み立て工程数が少なく、かつ製造コストが安価であると共に、高い弁機能を発揮するので、内容物として化粧品、医薬品、食料品等を充填するチューブ容器として、多岐にわたって利用することができる。
【符号の説明】
【0020】
1,21 チューブ容器
2,22 口部
3,23 中栓体
4,24 弁体
5 弁座
6 カップ部
7 脚部
7a 抜止部
11 キャビティ
12 上スリーブピン
13 コアピン
14 下スリーブピン
16 上型ピン
17 下型ピン
22a 雄ねじ部
23a 鍔部
25 ヒンジキャップ
27 フランジ部
35 ヒンジキャップの基部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中栓体と弁体が分離した状態で、同一の金型で同時成形される弁付中栓体を、チューブ容器の口部に嵌合することを特徴とする弁付中栓体を嵌合したチューブ容器。
【請求項2】
中栓体と弁体が分離した状態で、同一の金型で同時成形される弁付中栓体を、チューブ容器の口部に嵌合すると共に、該口部の雄ねじ部にヒンジキャップ螺合したことを特徴とする弁付中栓体を嵌合したチューブ容器。
【請求項3】
中栓体をチューブ容器の口部に嵌入すると共に、ヒンジキャップの基部に形成したフランジ部を中栓体の鍔部に嵌入し、該中栓体を介してチューブ容器とヒンジキャップを密接に嵌合したことを特徴とする中栓体を嵌合したチューブ容器。
【請求項4】
前記チューブ容器に代えてボトル容器としたことを特徴とする請求項1〜3記載のボトル容器。
【請求項5】
カップ部と脚部とから構成される弁体と、カップ部が線接触で接触し弁機能を発揮する弁座を有する中栓体とからなり、
(a)前記弁体は、少なくとも上型ピン、上スリーブピン及び下型ピン、下スリーブピンで囲まれる空間部に樹脂を流入して成形され、
(b)前記中栓体は、少なくともキャビティの中心に、上型ピンと上スリーブピンを配置すると共に、コアピンの中心に、下型ピンと下スリーブピンを配置し、キャビティと上スリーブピン及びコアピンと下スリーブピンで囲まれる空間部に、樹脂を流入して成形され、
(c)前記弁体と前記中栓体は、分離した状態で同一の金型で同時成形されることを特徴とする弁付中栓体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−255906(P2011−255906A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129898(P2010−129898)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000238614)武内プレス工業株式会社 (72)
【Fターム(参考)】