説明

引っ張り器具

ここで論じる引っ張り器具(retractors)は、口唇の四つの部位を保持する、四つの保持溝(channel retainers)を有する開唇器(lip retractors)を含む。前記の四つの保持溝は、前記の四本の保持溝を互いに外向きに付勢するための、四つの弾性部品(resilent members)に取り付けられ、歯および/もしくは口腔を露出するために、前記の四つの保持溝に保持された口唇の部位を順次引っ張ることを特徴とする。前記引っ張り器具は、舌保持具を任意に装着することができる。前記舌保持具を装着した場合、前記舌保持具は、歯の裏側をさらに露出させるために舌を抑止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
検査および/もしくは処置のために、歯および/もしくは口腔領域を露出するような、上唇および下唇の部位ならびに任意に舌、を引っ張るための引っ張り器具についての特定の論を以て、口唇を引っ張るための引っ張り器具についてここで概論する。
【背景技術】
【0002】
頬引っ張り具もしくは舌カップ(tongur cups)として公知である口角拡張デバイスは、口唇の部位を拡張する技術分野において公知であり、また、ヘルスケア専門家による検査および/もしくは処置のために頬を拡張することを特徴とする。典型的な口角拡張デバイスは、補助手段によって離れるよう付勢される梃子を用い、前記口唇を包み且つ拡張するフランジを用い、金属弾性部品を含むデバイスを用い、ならびに、前記口唇の二つの部位を拡張するための二つの保持部品を持つデバイスを用いて、上唇および下唇の単独もしくは複数の部位を拡張するデバイスを含む。しかしながら、その上に関係する有用性について後述するところの、引っ張り器具の必要がさらに在る。
【発明の開示】
【0003】
本発明においては、それぞれの保持溝が曲面、内側壁、および外側壁を含むことを特徴とする四本の保持溝もしくはフランジ、ならびに、それぞれの弾性部品が、二つの隣接する保持溝の二つの外側壁と一体成形され、且つ、アーチを含むことを特徴とする四つの弾性部品、を含む、使用者の口唇を引っ張るための引っ張り器具が提供される。
【0004】
本発明の別の態様では、四つの弾性部品によって間隔のひらいた関係に置かれる四つの保持溝、および、二つの第二弾性部品によって二つの前記保持溝に係合されるひとつの舌保持具を含む、使用者の口唇を引っ張るための引っ張り器具が提供される。
【0005】
本発明を実施する、他の代替物および実施例については、ここにも記述されており、さらに「発明を実施するための最良の態様」の項においても後述する。
本発明のこれらおよび他の特徴ならびに有用性は、明細書、請求項および添付図面を参照することでよく理解できるのと同様、正しく理解できるであろう。
【発明を実施するための最良の態様】
【0006】
添付図面と関連づけて以下に述べる詳細な説明は、本発明において提供される前記引っ張り器具の目下の好ましい実施例についての記述であり、また、本発明の構成もしくは利用の唯一の形態を示すものではない。この説明は、図示された実施例に関連づけて、本発明の引っ張り器具の構成および使用における特徴とステップについて述べる。しかしながら、異なる実施例によって実行される同一もしくは同等の機能ならびに構造は、本発明の範囲内に包含されていることを理解されたい。さらに、ここで示すように、要素などの番号は、類似もしくは相似の要素または特徴を示すものである。
【0007】
図1では、本発明の一実施例において提供される、口腔および/もしくは歯の検査および/もしくは処置をしやすくするために上唇および下唇(ここでは口唇(lips)と呼ぶ)を引っ張るための引っ張り器具(一般には 10 で示される)を示す。舌カップ(tongur cup)としても公知である引っ張り器具 10 は、フランジとしても公知であり、また、口唇の四つの対応する部位を、口腔および/もしくは歯の検査および/もしくは処置のために保持する、間隔をあけて配置された四つの保持溝 12, 14, 16, 18 を含む。使用時には、引っ張り器具 10 が、口唇を後退させて頬を引っ張り、口腔を露出させることにより、ヘルスケア専門家は容易に歯を診ることができ、また、容易に歯および/もしくは口腔の作業をすることができる。
【0008】
前記の四つの保持溝は、口唇の端、すなわち上唇と下唇が交叉する点の近傍、を保持するための二つの横側保持溝 12, 14 、ならびに、上唇および下唇の中央部を保持するための二つの唇保持溝 16, 18 を含む。特に、前記の四つの保持溝もしくはフランジ 12, 14, 16, 18 は、口唇を包むこと、および、処置および/もしくは検査をする際に歯を露出させるために口唇を開かせるように付勢することに用いられる。
【0009】
複数の弾性部品 20 は、引っ張り器具 10 に組み込まれ、四つの保持溝 12, 14, 16, 18 を相互に連結し、且つ、付勢手段としてはたらく。準備態勢(ready position)(前記引っ張り器具を口腔に挿入する前)において、弾性部品 20 は、引っ張り器具 10 に関して外向きのアーチ状となる。さらに後述するように、引っ張り器具 10 が口腔内に挿入される際には、四つの保持溝 12, 14, 16, 18 は、口唇のそれぞれの部位を包み、弾性部品 20は、検査および/もしくは処置のために口唇を円状になるように外向きに引っ張る引っ張り応力を提供する。
【0010】
オプションである舌保持具 22 は、四つの保持溝 12, 14, 16, 18 に関して、中心の近傍に位置するように示している。舌保持具 22 は、鉢(trough) 23 を含み、一対の第二弾性部品 24 によって、二つの保持溝 12, 14 に取り付けられている。舌保持具 22 および第二弾性部品 24 を組み入れると、舌保持具 22 および第二弾性部品 24 は、協働して舌を口腔の奥に封じて抑えるため、検査および/もしくは処置を行なうために舌部または歯の背面にアクセスすることができる。つまり、前記舌保持具は、ヘルスケア専門家による処置および/もしくは検査の間、舌の干渉を最小限に抑えるために構成されている。
【0011】
横側保持溝 12, 14 は、C字曲線に類似しており、アーチ面 26 および二つの溝側壁 28a, 28b を含む。溝側壁 28a, 28b は、鐘型に似て、中央部 34 の近傍における最大壁寸法と、終端における二つのより小さい先細の先端 36 を含む。一実施例では、後述するように、口腔内に入る内側壁28a は、外側壁 28b に較べて少し大きくなっている。しかし、開唇器 10 としての機能を果せる範囲において、相対寸法は逆転しているか、または同一となっている。
【0012】
横側保持溝 12, 14 は、さらに内表面 30 および外表面 32 を含む。アーチ面 26 は、開いた状態の口唇の側方の曲線に似せた、湾曲部 31 の半径を含む。この曲線は使用者もしくは患者の大きさおよび年齢に依り変化するため、引っ張り器具 10 は、湾曲部 31 の半径を変えることによって、特定の使用者/患者により変わる形状にフィットすることができる。アーチ面 26 は、さらに不規則な湾曲、もしくは、二種以上の湾曲部の半径も含む。例えば、湾曲部 31 の下部 38 の半径は、上部 40 の半径よりも大きくすることができ、またその逆もできる。使用時において、前記の不規則な湾曲部は、前記アーチ面内部に着いた唇の部位の開き量を変えることができ、これによって前記唇の各部位間の開き量を変えることができる。
【0013】
唇保持溝 16, 18 は、横側保持溝 12, 14 と同様に、C字曲線に類似しており、アーチ面 42 および二つの溝側壁 44a, 44b を含む。一実施例では、前記唇保持溝の湾曲部 46 の半径は、横側保持溝 12, 14 の湾曲部 31 の半径よりも大きい。湾曲部 46 の半径を大きくすることによって、唇保持溝 16, 18 を、口角部よりも平らな、唇下帯近傍の上唇および下唇の輪郭に適合させることができる。意図した使用者/患者の大きさおよび年齢に応じて、唇保持溝 16, 18 の湾曲部 46 の半径を変えることができる。
【0014】
示したように、唇下帯よけ(a frenum release) 48 は、上唇および下唇の唇下帯を安全にするために、唇保持溝 16, 18 の内側壁 44a に組み込まれている。一実施例では、唇下帯よけ 48 は、唇下帯のための間隙として充分な部分が切り取られた円弧形状を含む。換言すると、唇下帯よけ 48 は、使用に際して前記唇下帯よけの最下部(the lowest most portion) 50 が、唇下帯にほんの少ししか触れないようなものであるべきである。唇下帯よけ 48 の円状の切り抜きが示されているが、前記唇下帯よけの機能を損なわない範囲において、円弧状、長方形の切り抜き、正方形の切り抜き、もしくは他の幾何学的形状の切り抜きを組み込むことができる。引っ張り器具 10 は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、もしくはその類似物といった熱可塑性樹脂を射出成形することによって作成することができる。より好ましくは、引っ張り器具 10 は、ポリプロピレンの射出成形によって作成し、平滑且つ透明な仕上げとする。
【0015】
図2は、図1の引っ張り器具 10 の半概略底面図である。図2は、四つの弾性部品 20 が、四つの保持溝 12, 14, 16, 18 を、外向き 52 に付勢しているか、もしくは、互いに間隔をあけた位置にあるような態勢であるところの、準備態勢にある引っ張り器具 10 を示している。同様に、二つの第二弾性部品 24 は、舌保持具 22 を、四つの保持溝 12, 14, 16, 18 の位置を定める平面(視線方向に対してほぼ垂直)から離す方向へと付勢している。したがって、さらに後述するように、使用中に引っ張り器具 10 が口腔内に置かれると、四つの保持溝 12, 14, 16, 18 は口唇を包み、四つの弾性部品 20 は、弾性部品 20 の弾性によって、唇もしくは歯の前面を露出するように口唇を拡張する。同様に、舌保持具 22 は舌を抑え、二つの第二弾性部品 24 は、舌を口腔の奥、喉の方向へと封じ、舌、または上歯列および下歯列の裏側をさらに露出させる。
【0016】
引っ張り器具 10 は、口腔に、図2に示す方向にフィットするように構成されている。言い換えれば、内側壁 28a, 44a 、第二弾性部品 24 、および鉢 23 を含む舌保持具 22 は、口腔内に在るように、また、外側壁 28b, 44b および四つの弾性部品 20 は口腔外に在るように構成されている。明らかにわかるように、四つの弾性部品 20 は、前記引っ張り器具の口腔への挿入へ干渉しないように、外側壁 28b, 44b と完全に一体化されている。
【0017】
図3は、図2の線A-Aに沿った、図2の引っ張り器具の半概略側面図である。図3は、上部リム 54 および下部リム 56 を含む舌保持具 22 を示している。上部リム 54 は、下部リム 56 に較べて高い位置に在り(すなわち、前記引っ張り器具の使用中には、前記下部リムよりも口腔内へさらに突き出すということである)、また、二つの第二弾性部品 24 と完全に一体化されている。または、舌保持具 22 は、舌の上面および下面に沿って舌を同様に保持する二つの同等のリムを持つ。
【0018】
示しているように、二つの第二弾性部品 24 は、上部リム 54 から延びている概して水平な部分 58 、ならびに、水平な部分 58 、および、二つの横側保持溝 12, 14 の湾曲部 31 の半径に接続している斜行部 60 、を持つ。または、二つの第二弾性部品 24 は、前記上部リムおよび湾曲部の半径に接続している単独の斜行部を含む。
【0019】
右横側保持溝 12 について特に述べると、前記保持溝を曲面 26 のほぼ中央部で分けている、溝中心線 CL が示されている。中心線 CL からの視点では、外側壁 28b の角距離 64 よりも、内側壁 28a の角距離 62 が大きいことを見ることができる。さらに、外側壁 28b の表面領域は、内側壁 28a に較べて小さい。また、このオフセットもしくは非対称構成は、頬と口唇の物理的特性に能く適合する、すなわち前記引っ張り器具の使用時に、より快適にフィットする、と信じられる。換言すると、横側保持溝 12, 14 は、半円形、または、口唇の非対称な特徴に適する線もしくは点について対称な形ではないことが示されている。しかしながら、横側保持溝 12, 14 を対称形につくることも可能であり、また、快適にフィットするよりも大きなサイズとすることも可能である。
【0020】
図3は、弾性部品 20 が、横側保持溝 12, 14 の外側壁 28b および唇保持溝 16 の外側壁 44b と完全に一体化していることを、さらに示している。特に、一実施例では、弾性部品 20 は、それぞれが上部エッジ 66 を有し、上部エッジ 66 は、横側保持溝 12, 14 の内表面 30 および唇保持溝 16 の内表面 68 に関して平坦化、平面、もしくは他の平滑にする変化を加えられている。この配置によって、口唇および頬の内表面に対して隆起したもしくは突出した鋭いエッジを無くして、引っ張り器具 10 を装着することができる。しかしながら、口唇と頬は柔軟であり、使用者/患者を不快にしない少しのずれには適応できるため、上部エッジ 66 と保持溝 12, 14, 16 の内表面 30, 68 との間の若干のずれは許容される。
【0021】
再び弾性部品 20 について述べる(図3)と、一実施例では、前記弾性部品のそれぞれは、一つの細い中央部 70 、および二つの前記中央部に較べ広い端部 72 を含む。端部 72 は、その巾を変えることができるか、もしくは、もう一方の端部と同じ巾にすることができる。そのような配置では、弾性部品 20 の付勢力 52 (図2)は、端部 72 の巾に対する中央部 70 の巾によって決められる。中央部 70 の巾を広くすると、曲げへの抵抗力が大きくなる、すなわち付勢力が大きくなることは、当業者には容易に理解できる。したがって、頬と口唇を引っ張る際の引っ張り器具 10 の引っ張り応力 52 は、中央部 70 の巾を変えることによって、変えることができる。前記引っ張り応力は、ポリマーもしくは他の熱可塑性樹脂を、基材(すなわち、化合物)に混合することのような、前記弾性部品の物性を変えることによっても、変えることができる。
【0022】
図4は、図1の引っ張り器具の典型的な半概略上面図である。示したように、弾性部品 20 の端部 72 は、横側保持溝 12, 14 のエッジ 74 および唇保持溝 16, 18 のエッジ 76 の傍を通って延びており、弾性部品 20 と保持溝 12, 14, 16, 18 との間において接合されている、もしくは完全に一体化されている。しかしながら、端部 72 と前記エッジとの間の重なり量は、実質的もしくは任意の重なりが無くとも充分な強度を有する、引っ張り器具 10 の作成に用いた特定の物質に依って、変えることができる。示したように、舌保持具 22 は、円状の輪郭および滑らかな外表面 78 を有する。しかしながら、円形、正方形、方形、もしくは他の幾何学的形状の舌保持具 22 も、本発明の範囲を逸脱することなく用いることができる。
【0023】
図5は、図4の線B-Bに沿った、図4の引っ張り器具の半概略側面図である。横側保持溝 12, 14 および唇保持溝 16, 18 が曲面を定めると仮定すると、示したように、舌保持具 22 の上部リム 54 は、前記曲面の下にくることになる。上述したように、下方に置く構成と、鉢 23 (図2)の深さによって、舌保持具 22 は舌を抑え、口腔の奥へと封じこめ、歯の舌側の面をさらに露出させることができる。
【0024】
図6は、図5の線C-Cに沿った、図5の引っ張り器具の半概略側面図である。図3の横側保持溝 12 と同様に、唇保持溝 18 は、アーチ曲面 42 の中心線近傍において前記唇保持溝を分けている唇溝中心線 CL もしくは中央部を含む。中心線 CL からの視点では、外側壁 82 の中心線に関する角距離 82 よりも、内側壁 44a の角距離 80 が小さいことを見ることができる。また、このオフセットもしくは非対称構成は、頬と口唇の物理的特性に能く適合する、すなわち前記引っ張り器具の使用時に、より快適にフィットする、と信じられる。または、横側保持溝 12, 14 について上述したのと同様に、前記中心線に関する内壁および外壁 44a, 44b の角距離が、同一もしくは逆転するように、特定の位置関係を切り替えることもできる。
【0025】
図7は、本発明の別の実施例において提供される別の引っ張り器具 10' の、半概略斜視図である。示したように、前記引っ張り器具は、二つの横側保持溝 12', 14' 、二つの唇保持溝 16', 18' 、および四つの弾性部品 20' を含む。一実施例では、別の引っ張り器具 10' は、舌保持具を含まないことを除いて、図1〜6に示した引っ張り器具 10 と同一となる。したがって、引っ張り器具 10 に関する上記の記載は、前記舌保持具に関するものを除いて、別の引っ張り器具 10' に対しても適用できる。
【0026】
図8は、使用者もしくは患者 84 が使用中の図1の引っ張り器具 10 の半概略正面図である。示したように、引っ張り器具 10 は、使用者の口腔 86 に係合し、使用者の口唇 88 および頬 90 を引っ張っている。この態勢では、使用者の口腔 86 、および特に歯 92 は、ヘルスケア専門家による検査および/もしくは処置のために、露出されている。特に、横側保持溝 12, 14 は口腔の横側に係合し、唇保持溝 16, 18 は上唇および下唇 88 に係合し、ならびに、弾性部品 20 は、歯と口腔内を露出させるために口唇 88 および頬 90 を開かせるように付勢している前記の四つの保持溝を付勢している。前記引っ張り器具が使用位置にあるとき、外側壁 28a, 44a および弾性部品 20 は口腔外に露出している。
【0027】
示しているように、舌保持具 22 は、舌 94 に係合し、前記舌を口腔 86 の奥へと遣っている。組み込まれたときに、舌保持具 22 は、検査および/もしくは処置のために、歯の舌側の面 96 をさらに露出させるように構成されている。
【0028】
引っ張り器具 10 は、まず前記上唇に内側壁 44a がかぶるように、続いて上唇保持溝 16 の曲面 42 に前記上唇が収まるように、口唇 88 に挿入される。二つの横側保持溝 12, 14 は、前記口唇の側方が、横側保持溝 12, 14 の内側壁 28a にフィットしてかぶせられ、曲面 26 に収められるまで、互いに協力してあるいは一度にひとつずつ、絞られて口腔内に置かれる。最後に、下唇保持溝 18 が絞られ、唇保持溝 18 のアーチ面 42 を下唇 88 の上に被せる。挿入されると、舌保持具 22 は、自動的に舌 94 の動きを封じこめるように調整する。引っ張り器具 10 は、上述したようなステップを逆転させて行っても挿入することができ、また、四つの保持溝すべてを同時に絞って口唇にフィットさせることによっても挿入することができる。
【0029】
図9は,使用者もしくは患者 84 が使用中の図7の別の引っ張り器具 10' の、典型的な半概略正面図である。図8の引っ張り器具 10 と同様に、別の引っ張り器具 10' は、検査および/もしくは処置に際して歯 92 を露出させるように、口唇 88 および頬 90 を引っ張るために口唇と係合している。しかしながら、図8の引っ張り器具 10 とは異なり、別の引っ張り器具 10' は舌保持具を組み込んでいない。したがって、示すように、舌 94 は口腔 86 内部を自由に動く。
【0030】
本発明の好ましい実施例について、いくつかの特性とともに記述してきたが、上記の記述および図は、制限されるものではなく、また、当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、ここで論じられている実施例にさまざまな修正を行うことができることを理解でき、それらのすべての変更および修正は、付属の請求項内に規定される。前記引っ張り器具へのさまざまな変更は、異なる寸法での製造、異なる物質の使用、前記引っ張り器具を不透明、半透明、透明、色つき、表面加工仕上げを施したもの、などにすること、を含む。例えば、前記引っ張り器具を、射出成形によるひとつのステップで作成する代わりに、さまざまな部品をともに熔接して作成したり、複数の鋳出し成形ステップを用いてもよい。さらに、前記の二つの保持溝が上唇の二端を包み、また別の二つの保持溝が下唇の二端を包むように、前記の四つの保持溝を配置することもできる。この別の引っ張り器具は、舌保持具を組み込むことも組み込まないこともできる。したがって、本発明の範囲から逸脱することなく、当業者による多数の代案および修正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、本発明の一実施例に従って提供される引っ張り器具の半概略斜視図である。
【図2】図2は、図1の引っ張り器具の半概略底面図である。
【図3】図3は、図2の線A-Aに沿った、図2の引っ張り器具の半概略側面図である。
【図4】図4は、図1の引っ張り器具の半概略上面図である。
【図5】図5は、図4の線B-Bに沿った、図4の引っ張り器具の半概略側面図である。
【図6】図6は、図5の線C-Cに沿った、図5の引っ張り器具の半概略側面図である。
【図7】図7は、本発明の別の実施例に従って提供される別の引っ張り器具の半概略斜視図である。
【図8】図8は、使用者/患者が使用中の図1の引っ張り器具の半概略正面図である。
【図9】図9は、使用者/患者が使用中の図7の引っ張り器具の半概略正面図である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
検査および/もしくは処置のために、歯および/もしくは口腔領域を露出するような、上唇および下唇の部位ならびに任意に舌、を引っ張るための引っ張り器具についての特定の論を以て、口唇を引っ張るための引っ張り器具についてここで概論する。
【背景技術】
【0002】
頬引っ張り具もしくは舌カップ(tongur cups)として公知である口角拡張デバイスは、口唇の部位を拡張する技術分野において公知であり、また、ヘルスケア専門家による検査および/もしくは処置のために頬を拡張することを特徴とする。典型的な口角拡張デバイスは、補助手段によって離れるよう付勢される梃子を用い、前記口唇を包み且つ拡張するフランジを用い、金属弾性部品を含むデバイスを用い、ならびに、前記口唇の二つの部位を拡張するための二つの保持部品を持つデバイスを用いて、上唇および下唇の単独もしくは複数の部位を拡張するデバイスを含む。しかしながら、その上に関係する有用性について後述するところの、引っ張り器具の必要がさらに在る。
【発明の開示】
【0003】
本発明においては、それぞれの保持溝が曲面、内側壁、および外側壁を含むことを特徴とする四本の保持溝もしくはフランジ、ならびに、それぞれの弾性部品が、二つの隣接する保持溝の二つの外側壁と一体成形され、且つ、アーチを含むことを特徴とする四つの弾性部品、を含む、使用者の口唇を引っ張るための引っ張り器具が提供される。
【0004】
本発明の別の態様では、四つの弾性部品によって間隔のひらいた関係に置かれる四つの保持溝、および、二つの第二弾性部品によって二つの前記保持溝に係合されるひとつの舌保持具を含む、使用者の口唇を引っ張るための引っ張り器具が提供される。
【0005】
本発明を実施する、他の代替物および実施例については、ここにも記述されており、さらに「発明を実施するための最良の態様」の項においても後述する。
本発明のこれらおよび他の特徴ならびに有用性は、明細書、請求項および添付図面を参照することでよく理解できるのと同様、正しく理解できるであろう。
【発明を実施するための最良の態様】
【0006】
添付図面と関連づけて以下に述べる詳細な説明は、本発明において提供される前記引っ張り器具の目下の好ましい実施例についての記述であり、また、本発明の構成もしくは利用の唯一の形態を示すものではない。この説明は、図示された実施例に関連づけて、本発明の引っ張り器具の構成および使用における特徴とステップについて述べる。しかしながら、異なる実施例によって実行される同一もしくは同等の機能ならびに構造は、本発明の範囲内に包含されていることを理解されたい。さらに、ここで示すように、要素などの番号は、類似もしくは相似の要素または特徴を示すものである。
【0007】
図1では、本発明の一実施例において提供される、口腔および/もしくは歯の検査および/もしくは処置をしやすくするために上唇および下唇(ここでは口唇(lips)と呼ぶ)を引っ張るための引っ張り器具(一般には 10 で示される)を示す。舌カップ(tongur cup)としても公知である引っ張り器具 10 は、フランジとしても公知であり、また、口唇の四つの対応する部位を、口腔および/もしくは歯の検査および/もしくは処置のために保持する、間隔をあけて配置された四つの保持溝 12, 14, 16, 18 を含む。使用時には、引っ張り器具 10 が、口唇を後退させて頬を引っ張り、口腔を露出させることにより、ヘルスケア専門家は容易に歯を診ることができ、また、容易に歯および/もしくは口腔の作業をすることができる。
【0008】
前記の四つの保持溝は、口唇の端、すなわち上唇と下唇が交叉する点の近傍、を保持するための二つの横側保持溝 12, 14 、ならびに、上唇および下唇の中央部を保持するための二つの唇保持溝 16, 18 を含む。特に、前記の四つの保持溝もしくはフランジ 12, 14, 16, 18 は、口唇を包むこと、および、処置および/もしくは検査をする際に歯を露出させるために口唇を開かせるように付勢することに用いられる。
【0009】
複数の弾性部品 20 は、引っ張り器具 10 に組み込まれ、四つの保持溝 12, 14, 16, 18 を相互に連結し、且つ、付勢手段としてはたらく。準備態勢(ready position)(前記引っ張り器具を口腔に挿入する前)において、弾性部品 20 は、引っ張り器具 10 に関して外向きのアーチ状となる。さらに後述するように、引っ張り器具 10 が口腔内に挿入される際には、四つの保持溝 12, 14, 16, 18 は、口唇のそれぞれの部位を包み、弾性部品 20は、検査および/もしくは処置のために口唇を円状になるように外向きに引っ張る引っ張り応力を提供する。
【0010】
オプションである舌保持具22 は、四つの保持溝 12, 14, 16, 18 に関して、中心の近傍に位置するように示している。舌保持具 22 は、鉢(trough) 23 を含み、一対の第二弾性部品 24 によって、二つの保持溝 12, 14 に取り付けられている。舌保持具 22 および第二弾性部品 24 を組み入れると、舌保持具 22 および第二弾性部品 24 は、協働して舌を口腔の奥に封じて抑えるため、検査および/もしくは処置を行なうために舌部または歯の背面にアクセスすることができる。つまり、前記舌保持具は、ヘルスケア専門家による処置および/もしくは検査の間、舌の干渉を最小限に抑えるために構成されている。
【0011】
横側保持溝 12, 14 は、C字曲線に類似しており、アーチ面 26 および二つの溝側壁 28a, 28b を含む。溝側壁 28a, 28b は、鐘型に似て、中央部 34 の近傍における最大壁寸法と、終端における二つのより小さい先細の先端 36 を含む。一実施例では、後述するように、口腔内に入る内側壁 28a は、外側壁 28b に較べて少し大きくなっている。しかし、開唇器 10 としての機能を果せる範囲において、相対寸法は逆転しているか、または同一となっている。
【0012】
横側保持溝 12, 14 は、さらに内表面 30 および外表面 32 を含む。アーチ面 26 は、開いた状態の口唇の側方の曲線に似せた、湾曲部 31 の半径を含む。この曲線は使用者もしくは患者の大きさおよび年齢に依り変化するため、引っ張り器具 10 は、湾曲部 31 の半径を変えることによって、特定の使用者/患者により変わる形状にフィットすることができる。アーチ面 26 は、さらに不規則な湾曲、もしくは、二種以上の湾曲部の半径も含む。例えば、湾曲部 31 の下部 38 の半径は、上部 40 の半径よりも大きくすることができ、またその逆もできる。使用時において、前記の不規則な湾曲部は、前記アーチ面内部に着いた唇の部位の開き量を変えることができ、これによって前記唇の各部位間の開き量を変えることができる。
【0013】
唇保持溝 16, 18 は、横側保持溝 12, 14 と同様に、C字曲線に類似しており、アーチ面 42 および二つの溝側壁 44a, 44b を含む。一実施例では、前記唇保持溝の湾曲部 46 の半径は、横側保持溝 12, 14 の湾曲部 31 の半径よりも大きい。湾曲部 46 の半径を大きくすることによって、唇保持溝 16, 18 を、口角部よりも平らな、唇下帯近傍の上唇および下唇の輪郭に適合させることができる。意図した使用者/患者の大きさおよび年齢に応じて、唇保持溝 16, 18 の湾曲部 46 の半径を変えることができる。
【0014】
示したように、唇下帯よけ(a frenum release) 48 は、上唇および下唇の唇下帯を安全にするために、唇保持溝 16, 18 の内側壁 44a に組み込まれている。一実施例では、唇下帯よけ 48 は、唇下帯のための間隙として充分な部分が切り取られた円弧形状を含む。換言すると、唇下帯よけ 48 は、使用に際して前記唇下帯よけの最下部(the lowest most portion) 50 が、唇下帯にほんの少ししか触れないようなものであるべきである。唇下帯よけ 48 の円状の切り抜きが示されているが、前記唇下帯よけの機能を損なわない範囲において、円弧状、長方形の切り抜き、正方形の切り抜き、もしくは他の幾何学的形状の切り抜きを組み込むことができる。引っ張り器具 10 は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、もしくはその類似物といった熱可塑性樹脂を射出成形することによって作成することができる。より好ましくは、引っ張り器具 10 は、ポリプロピレンの射出成形によって作成し、平滑且つ透明な仕上げとする。
【0015】
図2は、図1の引っ張り器具 10 の半概略底面図である。図2は、四つの弾性部品 20 が、四つの保持溝 12, 14, 16, 18 を、外向き 52 に付勢しているか、もしくは、互いに間隔をあけた位置にあるような態勢であるところの、準備態勢にある引っ張り器具 10 を示している。同様に、二つの第二弾性部品 24 は、舌保持具 22 を、四つの保持溝 12, 14, 16, 18 の位置を定める平面(視線方向に対してほぼ垂直)から離す方向へと付勢している。したがって、さらに後述するように、使用中に引っ張り器具 10 が口腔内に置かれると、四つの保持溝 12, 14, 16, 18 は口唇を包み、四つの弾性部品 20 は、弾性部品 20 の弾性によって、唇もしくは歯の前面を露出するように口唇を拡張する。同様に、舌保持具 22 は舌を抑え、二つの第二弾性部品 24 は、舌を口腔の奥、喉の方向へと封じ、舌、または上歯列および下歯列の裏側をさらに露出させる。
【0016】
引っ張り器具 10 は、口腔に、図2に示す方向にフィットするように構成されている。言い換えれば、内側壁 28a, 44a 、第二弾性部品 24 、および鉢 23 を含む舌保持具 22 は、口腔内に在るように、また、外側壁 28b, 44b および四つの弾性部品 20 は口腔外に在るように構成されている。明らかにわかるように、四つの弾性部品 20 は、前記引っ張り器具の口腔への挿入へ干渉しないように、外側壁 28b, 44b と完全に一体化されている。
【0017】
図3は、図2の線A-Aに沿った、図2の引っ張り器具の半概略側面図である。図3は、上部リム 54 および下部リム 56 を含む舌保持具 22 を示している。上部リム 54 は、下部リム 56 に較べて高い位置に在り(すなわち、前記引っ張り器具の使用中には、前記下部リムよりも口腔内へさらに突き出すということである)、また、二つの第二弾性部品 24 と完全に一体化されている。または、舌保持具 22 は、舌の上面および下面に沿って舌を同様に保持する二つの同等のリムを持つ。
【0018】
示しているように、二つの第二弾性部品 24 は、上部リム 54 から延びている概して水平な部分 58 、ならびに、水平な部分 58 、および、二つの横側保持溝 12, 14 の湾曲部 31 の半径に接続している斜行部 60 、を持つ。または、二つの第二弾性部品 24 は、前記上部リムおよび湾曲部の半径に接続している単独の斜行部を含む。
【0019】
右横側保持溝 12 について特に述べると、前記保持溝を曲面 26 のほぼ中央部で分けている、溝中心線 CL が示されている。中心線 CL からの視点では、外側壁 28b の角距離 64 よりも、内側壁 28a の角距離 62 が大きいことを見ることができる。さらに、外側壁 28b の表面領域は、内側壁 28a に較べて小さい。また、このオフセットもしくは非対称構成は、頬と口唇の物理的特性に能く適合する、すなわち前記引っ張り器具の使用時に、より快適にフィットする、と信じられる。換言すると、横側保持溝 12, 14 は、半円形、または、口唇の非対称な特徴に適する線もしくは点について対称な形ではないことが示されている。しかしながら、横側保持溝 12, 14 を対称形につくることも可能であり、また、快適にフィットするよりも大きなサイズとすることも可能である。
【0020】
図3は、弾性部品 20 が、横側保持溝 12, 14 の外側壁 28b および唇保持溝 16 の外側壁 44b と完全に一体化していることを、さらに示している。特に、一実施例では、弾性部品 20 は、それぞれが上部エッジ 66 を有し、上部エッジ 66 は、横側保持溝 12, 14 の内表面 30 および唇保持溝 16 の内表面 68 に関して平坦化、平面、もしくは他の平滑にする変化を加えられている。この配置によって、口唇および頬の内表面に対して隆起したもしくは突出した鋭いエッジを無くして、引っ張り器具 10 を装着することができる。しかしながら、口唇と頬は柔軟であり、使用者/患者を不快にしない少しのずれには適応できるため、上部エッジ 66 と保持溝 12, 14, 16 の内表面 30, 68 との間の若干のずれは許容される。
【0021】
再び弾性部品 20 について述べる(図3)と、一実施例では、前記弾性部品のそれぞれは、一つの細い中央部 70 、および二つの前記中央部に較べ広い端部 72 を含む。端部 72 は、その巾を変えることができるか、もしくは、もう一方の端部と同じ巾にすることができる。そのような配置では、弾性部品 20 の付勢力 52 (図2)は、端部 72 の巾に対する中央部 70 の巾によって決められる。中央部 70 の巾を広くすると、曲げへの抵抗力が大きくなる、すなわち付勢力が大きくなることは、当業者には容易に理解できる。したがって、頬と口唇を引っ張る際の引っ張り器具 10 の引っ張り応力 52 は、中央部 70 の巾を変えることによって、変えることができる。前記引っ張り応力は、ポリマーもしくは他の熱可塑性樹脂を、基材(すなわち、化合物)に混合することのような、前記弾性部品の物性を変えることによっても、変えることができる。
【0022】
図4は、図1の引っ張り器具の典型的な半概略上面図である。示したように、弾性部品 20 の端部 72 は、横側保持溝 12, 14 のエッジ 74 および唇保持溝 16, 18 のエッジ 76 の傍を通って延びており、弾性部品 20 と保持溝 12, 14, 16, 18 との間において接合されている、もしくは完全に一体化されている。しかしながら、端部 72 と前記エッジとの間の重なり量は、実質的もしくは任意の重なりが無くとも充分な強度を有する、引っ張り器具 10 の作成に用いた特定の物質に依って、変えることができる。示したように、舌保持具 22 は、円状の輪郭および滑らかな外表面 78 を有する。しかしながら、円形、正方形、方形、もしくは他の幾何学的形状の舌保持具 22 も、本発明の範囲を逸脱することなく用いることができる。
【0023】
図5は、図4の線B-Bに沿った、図4の引っ張り器具の半概略側面図である。横側保持溝 12, 14 および唇保持溝 16, 18 が曲面を定めると仮定すると、示したように、舌保持具 22 の上部リム 54 は、前記曲面の下にくることになる。上述したように、下方に置く構成と、鉢 23 (図2)の深さによって、舌保持具 22 は舌を抑え、口腔の奥へと封じこめ、歯の舌側の面をさらに露出させることができる。
【0024】
図6は、図5の線C-Cに沿った、図5の引っ張り器具の半概略側面図である。図3の横側保持溝 12 と同様に、唇保持溝 18 は、アーチ曲面 42 の中心線近傍において前記唇保持溝を分けている唇溝中心線 CL もしくは中央部を含む。中心線 CL からの視点では、外側壁 82 の中心線に関する角距離 82 よりも、内側壁 44a の角距離 80 が小さいことを見ることができる。また、このオフセットもしくは非対称構成は、頬と口唇の物理的特性に能く適合する、すなわち前記引っ張り器具の使用時に、より快適にフィットする、と信じられる。または、横側保持溝 12, 14 について上述したのと同様に、前記中心線に関する内壁および外壁 44a, 44b の角距離が、同一もしくは逆転するように、特定の位置関係を切り替えることもできる。
【0025】
図7は、本発明の別の実施例において提供される別の引っ張り器具 10' の、半概略斜視図である。示したように、前記引っ張り器具は、二つの横側保持溝 12', 14' 、二つの唇保持溝 16', 18' 、および四つの弾性部品 20' を含む。一実施例では、別の引っ張り器具 10' は、舌保持具を含まないことを除いて、図1〜6に示した引っ張り器具 10 と同一となる。したがって、引っ張り器具 10 に関する上記の記載は、前記舌保持具に関するものを除いて、別の引っ張り器具 10' に対しても適用できる。
【0026】
図8は、使用者もしくは患者 84 が使用中の図1の引っ張り器具 10 の半概略正面図である。示したように、引っ張り器具 10 は、使用者の口腔 86 に係合し、使用者の口唇 88 および頬 90 を引っ張っている。この態勢では、使用者の口腔 86 、および特に歯 92 は、ヘルスケア専門家による検査および/もしくは処置のために、露出されている。特に、横側保持溝 12, 14 は口腔の横側に係合し、唇保持溝 16, 18 は上唇および下唇 88 に係合し、ならびに、弾性部品 20 は、歯と口腔内を露出させるために口唇 88 および頬 90 を開かせるように付勢している前記の四つの保持溝を付勢している。前記引っ張り器具が使用位置にあるとき、外側壁 28a, 44a および弾性部品 20 は口腔外に露出している。
【0027】
示しているように、舌保持具22 は、舌 94 に係合し、前記舌を口腔 86 の奥へと遣っている。組み込まれたときに、舌保持具 22 は、検査および/もしくは処置のために、歯の舌側の面 96 をさらに露出させるように構成されている。
【0028】
引っ張り器具 10 は、まず前記上唇に内側壁 44a がかぶるように、続いて上唇保持溝 16 の曲面 42 に前記上唇が収まるように、口唇 88 に挿入される。二つの横側保持溝 12, 14 は、前記口唇の側方が、横側保持溝 12, 14 の内側壁 28a にフィットしてかぶせられ、曲面 26 に収められるまで、互いに協力してあるいは一度にひとつずつ、絞られて口腔内に置かれる。最後に、下唇保持溝 18 が絞られ、唇保持溝 18 のアーチ面 42 を下唇 88 の上に被せる。挿入されると、舌保持具 22 は、自動的に舌 94 の動きを封じこめるように調整する。引っ張り器具 10 は、上述したようなステップを逆転させて行っても挿入することができ、また、四つの保持溝すべてを同時に絞って口唇にフィットさせることによっても挿入することができる。
【0029】
図9は、使用者もしくは患者 84 が使用中の図7の別の引っ張り器具 10' の、典型的な半概略正面図である。図8の引っ張り器具 10 と同様に、別の引っ張り器具 10' は、検査および/もしくは処置に際して歯 92 を露出させるように、口唇 88 および頬 90 を引っ張るために口唇と係合している。しかしながら、図8の引っ張り器具 10 とは異なり、別の引っ張り器具 10' は舌保持具を組み込んでいない。したがって、示すように、舌 94 は口腔 86 内部を自由に動く。
【0030】
本発明の好ましい実施例について、いくつかの特性とともに記述してきたが、上記の記述および図は、制限されるものではなく、また、当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、ここで論じられている実施例にさまざまな修正を行うことができることを理解でき、それらのすべての変更および修正は、付属の請求項内に規定される。前記引っ張り器具へのさまざまな変更は、異なる寸法での製造、異なる物質の使用、前記引っ張り器具を不透明、半透明、透明、色つき、表面加工仕上げを施したもの、などにすること、を含む。例えば、前記引っ張り器具を、射出成形によるひとつのステップで作成する代わりに、さまざまな部品をともに熔接して作成したり、複数の鋳出し成形ステップを用いてもよい。さらに、前記の二つの保持溝が上唇の二端を包み、また別の二つの保持溝が下唇の二端を包むように、前記の四つの保持溝を配置することもできる。この別の引っ張り器具は、舌保持具を組み込むことも組み込まないこともできる。したがって、本発明の範囲から逸脱することなく、当業者による多数の代案および修正を行うことができる。
【0031】
(付記1) 四つの保持溝および四つの弾性部品を含む、使用者の口唇を引っ張る引っ張り器具であって、それぞれの保持溝が、曲面、内側壁、および外側壁を含み、且つ、それぞれの弾性部品が、二つの隣接する保持溝の二つの外側壁に一体成形され、アーチを含むことを特徴とする、引っ張り器具。
(付記2) 前記の四つの保持溝の、少なくともひとつの前記内側壁上に、唇下帯よけをさらに含む、付記1記載の引っ張り器具。
(付記3) 前記の四つの保持溝の、それぞれの前記曲面が、湾曲部の半径を含むことを特徴とする、付記1記載の引っ張り器具。
(付記4) 前記の四つの保持溝が、二つの横側保持溝および二つの唇保持溝を含み、且つ、前記横側保持溝の前記内側壁が、前記横側保持溝の前記外側壁よりも大きいことを特徴とする、付記1記載の引っ張り器具。
(付記5) 前記引っ張り器具が、ポリプロピレンから作成されていることを特徴とする、付記1記載の引っ張り器具。
(付記6) 前記の四つの保持溝および前記の四つの弾性部品が、一体成形されていることを特徴とする、付記1記載の引っ張り器具。
(付記7) 前記の四つの弾性部品のそれぞれが、一つの中央部および二つの端部を含み、且つ、前記中央部が、前記の二つの端部よりも細いことを特徴とする、付記1記載の引っ張り器具。
(付記8) 前記の四つの保持溝のそれぞれが内表面を含み、且つ、前記の四つの弾性部品のそれぞれが、上部エッジを含み、且つ、前記弾性部品の前記上部エッジが、前記保持溝の前記内表面に対して、実質的に平坦であることを特徴とする、付記1記載の引っ張り器具。
(付記9) 前記のそれぞれの保持溝の曲面が中心線を含み、且つ、前記内側壁および前記外側壁が、前記中心線に関して非対称であることを特徴とする、付記1記載の引っ張り器具。
(付記10) 前記の四つの保持溝が、二つの唇保持溝を含み、且つ、前記唇保持溝の前記内側壁のそれぞれが、唇下帯よけを含むことを特徴とする、付記1記載の引っ張り器具。
(付記11) 舌保持具をさらに含み、且つ、前記舌保持具が、二つの第二弾性部品によって、前記保持溝のうちの二つに係合していることを特徴とする、付記1記載の引っ張り器具。
(付記12) 使用者の口唇を引っ張る引っ張り器具であって、四つの保持溝および舌保持具を含み、前記の四つの保持溝が四つの弾性部品によって間隔をあけた位置関係に置かれ、且つ、前記舌保持具が、二つの第二弾性部品によって、前記保持溝のうちの二つに取り付けられていることを特徴とする、引っ張り器具。
(付記13) 前記の四つの保持溝のうちの少なくともひとつの内側壁上に、唇下帯よけをさらに含む、付記12記載の引っ張り器具。
(付記14) 前記の四つの保持溝のそれぞれが、曲面、内側壁、および外側壁を含み、且つ、前記の四つの保持溝のそれぞれの前記曲面が、湾曲部の半径を含むことを特徴とする、付記12記載の引っ張り器具。
(付記15) 前記の四つの保持溝が、二つの横側保持溝および二つの唇保持溝を含み、且つ、前記保持溝のそれぞれが、曲面、内側壁、および外側壁を含み、且つ、前記横側保持溝の前記内側壁が、前記横側保持溝の前記外側壁よりも大きいことを特徴とする、付記12記載の引っ張り器具。
(付記16) 前記引っ張り器具が、ポリプロピレンから作成されていることを特徴とする、付記12記載の引っ張り器具。
(付記17) 前記の四つの保持溝、前記の四つの弾性部品、前記舌保持具、および前記の二つの第二弾性部品が、一体成形されていることを特徴とする、付記12記載の引っ張り器具。
(付記18) 前記の四つの弾性部品のそれぞれが、一つの中央部および二つの端部を含み、且つ、前記中央部が、前記の二つの端部よりも細いことを特徴とする、付記12記載の引っ張り器具。
(付記19) 前記の四つの保持溝のそれぞれが、内側壁を含み、且つ、前記の四つの弾性部品のそれぞれが、上部エッジを含み、且つ、前記弾性部品の前記上部エッジが、前記保持溝の前記内表面に対して、実質的に平坦であることを特徴とする、付記12記載の引っ張り器具。
(付記20) 前記の四つの保持溝のそれぞれが、曲面、曲面中心線、内側壁、および外側壁を含み、且つ、前記内側壁および前記外側壁が、前記中心線に関して非対称であることを特徴とする、付記12記載の引っ張り器具。
(付記21) 前記の四つの保持溝が、二つの唇保持溝および二つの横側保持溝を含み、且つ、前記二つの唇保持溝のそれぞれが、曲面、内側壁、および外側壁を含み、且つ、前記内側壁のそれぞれが、唇下帯よけを含むことを特徴とする、付記12記載の引っ張り器具。
(付記22) 使用者の口唇を引っ張る方法であって、引っ張り器具の四つの保持溝を、前記口唇が、前記保持溝のそれぞれの曲面内に静止するように、且つ、前記保持溝のそれぞれの外側壁が前記の使用者の口唇の外に在るように、前記の使用者の口唇上に滑らせること、ならびに、前記の四つの保持溝を、四つの弾性部品で離れる方向に付勢することによって、前記口唇を引っ張ることを含む、方法。
(付記23) 舌保持具によって、前記舌を抑止するステップをさらに含む、付記22記載の方法。
(付記24) 前記引っ張り器具が、ポリプロピレンから作成されていることを特徴とする、付記22記載の方法。
(付記25) 前記の四つの保持溝のうちの少なくともひとつの内側壁上に、少なくともひとつの唇下帯よけを組み込んでいることにより、唇下帯よけを提供することをさらに含む、付記22記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本発明の一実施例に従って提供される引っ張り器具の半概略斜視図である。
【図2】図2は、図1の引っ張り器具の半概略底面図である。
【図3】図3は、図2の線A-Aに沿った、図2の引っ張り器具の半概略側面図である。
【図4】図4は、図1の引っ張り器具の半概略上面図である。
【図5】図5は、図4の線B-Bに沿った、図4の引っ張り器具の半概略側面図である。
【図6】図6は、図5の線C-Cに沿った、図5の引っ張り器具の半概略側面図である。
【図7】図7は、本発明の別の実施例に従って提供される別の引っ張り器具の半概略斜視図である。
【図8】図8は、使用者/患者が使用中の図1の引っ張り器具の半概略正面図である。
【図9】図9は、使用者/患者が使用中の図7の引っ張り器具の半概略正面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
四つの保持溝および四つの弾性部品を含む、使用者の口唇を引っ張る引っ張り器具であって、それぞれの保持溝が、曲面、内側壁、および外側壁を含み、且つ、それぞれの弾性部品が、二つの隣接する保持溝の二つの外側壁に一体成形され、アーチを含むことを特徴とする、引っ張り器具。
【請求項2】
前記の四つの保持溝の、少なくともひとつの前記内側壁上に、唇下帯よけをさらに含む、請求項1記載の引っ張り器具。
【請求項3】
前記の四つの保持溝の、それぞれの前記曲面が、湾曲部の半径を含むことを特徴とする、請求項1記載の引っ張り器具。
【請求項4】
前記の四つの保持溝が、二つの横側保持溝および二つの唇保持溝を含み、且つ、前記横側保持溝の前記内側壁が、前記横側保持溝の前記外側壁よりも大きいことを特徴とする、請求項1記載の引っ張り器具。
【請求項5】
前記引っ張り器具が、ポリプロピレンから作成されていることを特徴とする、請求項1記載の引っ張り器具。
【請求項6】
前記の四つの保持溝および前記の四つの弾性部品が、一体成形されていることを特徴とする、請求項1記載の引っ張り器具。
【請求項7】
前記の四つの弾性部品のそれぞれが、一つの中央部および二つの端部を含み、且つ、前記中央部が、前記の二つの端部よりも細いことを特徴とする、請求項1記載の引っ張り器具。
【請求項8】
前記の四つの保持溝のそれぞれが内表面を含み、且つ、前記の四つの弾性部品のそれぞれが、上部エッジを含み、且つ、前記弾性部品の前記上部エッジが、前記保持溝の前記内表面に対して、実質的に平坦であることを特徴とする、請求項1記載の引っ張り器具。
【請求項9】
前記のそれぞれの保持溝の曲面が中心線を含み、且つ、前記内側壁および前記外側壁が、前記中心線に関して非対称であることを特徴とする、請求項1記載の引っ張り器具。
【請求項10】
前記の四つの保持溝が、二つの唇保持溝を含み、且つ、前記唇保持溝の前記内側壁のそれぞれが、唇下帯よけを含むことを特徴とする、請求項1記載の引っ張り器具。
【請求項11】
舌保持具をさらに含み、且つ、前記舌保持具が、二つの第二弾性部品によって、前記保持溝のうちの二つに係合していることを特徴とする、請求項1記載の引っ張り器具。
【請求項12】
使用者の口唇を引っ張る引っ張り器具であって、四つの保持溝および舌保持具を含み、前記の四つの保持溝が四つの弾性部品によって間隔をあけた位置関係に置かれ、且つ、前記舌保持具が、二つの第二弾性部品によって、前記保持溝のうちの二つに取り付けられていることを特徴とする、引っ張り器具。
【請求項13】
前記の四つの保持溝のうちの少なくともひとつの内側壁上に、唇下帯よけをさらに含む、請求項12記載の引っ張り器具。
【請求項14】
前記の四つの保持溝のそれぞれが、曲面、内側壁、および外側壁を含み、且つ、前記の四つの保持溝のそれぞれの前記曲面が、湾曲部の半径を含むことを特徴とする、請求項12記載の引っ張り器具。
【請求項15】
前記の四つの保持溝が、二つの横側保持溝および二つの唇保持溝を含み、且つ、前記保持溝のそれぞれが、曲面、内側壁、および外側壁を含み、且つ、前記横側保持溝の前記内側壁が、前記横側保持溝の前記外側壁よりも大きいことを特徴とする、請求項12記載の引っ張り器具。
【請求項16】
前記引っ張り器具が、ポリプロピレンから作成されていることを特徴とする、請求項12記載の引っ張り器具。
【請求項17】
前記の四つの保持溝、前記の四つの弾性部品、前記舌保持具、および前記の二つの第二弾性部品が、一体成形されていることを特徴とする、請求項12記載の引っ張り器具。
【請求項18】
前記の四つの弾性部品のそれぞれが、一つの中央部および二つの端部を含み、且つ、前記中央部が、前記の二つの端部よりも細いことを特徴とする、請求項12記載の引っ張り器具。
【請求項19】
前記の四つの保持溝のそれぞれが、内側壁を含み、且つ、前記の四つの弾性部品のそれぞれが、上部エッジを含み、且つ、前記弾性部品の前記上部エッジが、前記保持溝の前記内表面に対して、実質的に平坦であることを特徴とする、請求項12記載の引っ張り器具。
【請求項20】
前記の四つの保持溝のそれぞれが、曲面、曲面中心線、内側壁、および外側壁を含み、且つ、前記内側壁および前記外側壁が、前記中心線に関して非対称であることを特徴とする、請求項12記載の引っ張り器具。
【請求項21】
前記の四つの保持溝が、二つの唇保持溝および二つの横側保持溝を含み、且つ、前記二つの唇保持溝のそれぞれが、曲面、内側壁、および外側壁を含み、且つ、前記内側壁のそれぞれが、唇下帯よけを含むことを特徴とする、請求項12記載の引っ張り器具。
【請求項22】
使用者の口唇を引っ張る方法であって、引っ張り器具の四つの保持溝を、前記口唇が、前記保持溝のそれぞれの曲面内に静止するように、且つ、前記保持溝のそれぞれの外側壁が前記の使用者の口唇の外に在るように、前記の使用者の口唇上に滑らせること、ならびに、前記の四つの保持溝を、四つの弾性部品で離れる方向に付勢することによって、前記口唇を引っ張ることを含む、方法。
【請求項23】
舌保持具によって、前記舌を抑止するステップをさらに含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記引っ張り器具が、ポリプロピレンから作成されていることを特徴とする、請求項22記載の方法。
【請求項25】
前記の四つの保持溝のうちの少なくともひとつの内側壁上に、少なくともひとつの唇下帯よけを組み込んでいることにより、唇下帯よけを提供することをさらに含む、請求項22記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
四つの保持溝と、
四つの弾性部品と
を含む、使用者の口唇を引っ張る引っ張り器具であって、
それぞれの保持溝が、曲面、内側壁、および外側壁を含み、且つ、それぞれの弾性部品が、二つの隣接する保持溝の二つの外側壁に取り付けられ、ならびにアーチを含むことを特徴とする、引っ張り器具。
【請求項2】
四つの保持溝と、
四つの弾性部品と、
舌保持具と
を含む、使用者の口唇を引っ張る引っ張り器具であって、
前記の四つの保持溝が、四つの弾性部品によって間隔のひらいた位置関係に置かれ、且つ、前記舌保持具が、二つの第二弾性部品によって、前記の保持溝のうちの二つに取り付けられていることを特徴とする、引っ張り器具。
【請求項3】
前記の四つの保持溝の、少なくともひとつの前記内側壁上に、唇下帯よけをさらに含む、請求項1もしくは2に記載の引っ張り器具。
【請求項4】
前記の四つの保持溝が、二つの横側保持溝および二つの唇保持溝を含み、且つ、前記横側保持溝の前記内側壁が、前記横側保持溝の前記外側壁よりも大きいことを特徴とする、請求項1、2もしくは3に記載の引っ張り器具。
【請求項5】
前記引っ張り器具が、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、もしくはその類似物を含む物質から作成されていることを特徴とする、上記の請求項のいずれか一項に記載の引っ張り器具。
【請求項6】
前記の四つの弾性部品のそれぞれが、ひとつの中央部および二つの端部を含み、且つ、前記中央部が、前記の二つの端部よりも細いことを特徴とする、上記の請求項のいずれか一項に記載の引っ張り器具。
【請求項7】
前記の四つの保持溝が、二つの唇保持溝を含み、前記唇保持溝の複数の前記内側壁のそれぞれが、唇下帯よけを含むことを特徴とする、上記の請求項のいずれか一項に記載の引っ張り器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−514861(P2006−514861A)
【公表日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−518483(P2005−518483)
【出願日】平成16年2月3日(2004.2.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/003162
【国際公開番号】WO2004/075927
【国際公開日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(300057780)ディスカス デンタル インプレッションズ インコーポレーテッド (15)
【Fターム(参考)】