説明

引戸の外れ防止装置

【課題】 引戸をレールから離脱することを防止すると共に、簡単な操作で引戸をレールに着脱することができる外れ防止装置を提供する。
【解決手段】 上端に外れ防止具を取り付ける取付スペース6が形成された引戸Bと、開口部1を狭くした溝2を備えたレールAと、外れ防止具Cとからなり、外れ防止具Cは、ボデイ10と、ボデイ上方に設けられた略長方形状の水平な鍔部12と、ボデイ底面に設けられた係合爪13と、係合爪の係合を解除するための操作片14と、ボデイから水平に突出された舌片15とからなり、鍔部12の短軸方向の巾がレールの開口部1に下方から差し込み可能で長軸方向の巾がレールの開口部1の巾より大きな寸法で形成されており、引戸Aは、取付スペース6に向いた垂直な面に開口する舌片差込孔7を備え、舌片差込孔7に舌片15を挿入した位置で係合爪13が引戸の被係合部9に係合する構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具や建具の上下枠に設けられたレールに沿って走行する引戸の外れ防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の一般的な引戸は、引戸上端部に形成された凸条からなる滑走部が、家具や建具の上部枠体に設けられたレールの溝に差し込まれて走行するように形成されている。従って、滑走部のレールへの差込が浅い場合は引戸がレールから外れることがある。
【0003】
そこで、特許文献1に示すように、引戸の滑走部に上方に向かって弾力的に突出する円板部(13)を取り付けてレール(ガイド溝)に常時弾力的に押し込まれるようにしたものや、特許文献2に示すように、引戸上端部に上方に向う突出量を調整することが可能な離脱防止片(4)を設けてレール(ガイド溝)に深く差し込むことができるようにし、これにより引戸が外れることを防止しようとしたものが開示されている。
【特許文献1】特開平9−60398号公報
【特許文献2】特開2004−27667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の従来手段では、円板部や離脱防止片をレールに対して下方から差し込むだけの構造であるから、レールの溝を深くして奥まで差し込むことが必要となる。しかし、レールの溝をあまり深くすると上部枠体の強度が弱くなるので溝を深くすることに限界があると共に、円板部や離脱防止片をレールに対して下方から単に差し込むだけの構造であるから、下方への離脱を完全に阻止するものでなく、円板部や離脱防止片のレールへの掛かり具合が浅かったり、或いは下方の滑走部が外れたりした場合にはやはり引戸が外れることがある、といった問題点があった。
【0005】
そこで本発明は上記従来課題を解消し、引戸をレールから離脱することを完全に防止することができると共に、簡単な操作で引戸をレールに着脱することができる外れ防止装置を簡単な構造で提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために本発明では次のような技術的手段を講じた。
【0007】
すなわち、本発明は、引戸の上端に着脱可能に取り付けられる外れ防止具と、開口部を狭くした溝を有し且つ引戸の上端滑走部を摺動自在に受け入れるレールとを備え、前記外れ防止具は、ボデイと、該ボデイ上方に設けられ且つ短軸方向の巾と長軸方向の巾とを有する鍔部とを備え、鍔部の短軸方向の巾が前記レールの溝の開口部に下方から差し込み可能な寸法で形成され、鍔部の長軸方向の巾がレールの溝の開口部の巾より大きく形成されており、鍔部の長軸方向をレールの溝の長手方向と交差させた状態で外れ防止具が引戸上端に着脱可能に取り付けられることを特徴とする引戸の外れ防止装置として構成することができる。好ましくは、ボデイに、係合爪と、係合爪の係合を解除するための操作片と、ボデイから水平に突出された舌片とを設け、前記鍔部の長軸方向と舌片の突出方向とが交差するように形成され、前記引戸は、取付部に向いた垂直な面に開口する舌片差込孔を備え、該舌片差込孔に外れ防止具の舌片を挿入した位置で前記係合爪が引戸に形成した被係合部に係合するように形成するのが良い。
【0008】
また、本発明にかかる引戸の外れ防止具にあっては、上端に外れ防止具を取り付けるための取付部が形成された引戸と、開口部を狭くした溝を有し且つ引戸の上端滑走部を摺動自在に受け入れるレールと、引戸をレールから脱落することを防止する前記外れ防止具とを備え、前記外れ防止具は、ボデイと、該ボデイと連接してボデイ上方に設けられた略長方形状乃至楕円形状の水平な鍔部と、ボデイ底面に設けられた係合爪と、係合爪の係合を解除するための操作片と、ボデイから水平に突出された舌片とからなり、前記鍔部の長軸方向と舌片の突出方向とが直交するように形成され、鍔部の短軸方向の巾が前記レールの開口部に下方から差し込み可能な寸法で形成され、鍔部の長軸方向の巾がレールの開口部の巾より大きく形成されており、前記引戸は、取付部に向いた垂直な面に開口する舌片差込孔を備え、該舌片差込孔に外れ防止具の舌片を挿入した位置で前記係合爪が引戸に形成した被係合部に係合するように形成されている構造とすることができる。上記取付部は、引戸の上端コーナー部分に設けられた取付スペースによって構成するのが好ましいが、滑走部の長手方向中途部に形成することもできる。鍔部の長軸方向とは、レール開口部の巾よりも大きい寸法となる方向であり、短軸方向とは、レール開口部の溝の巾よりも小さい寸法となる方向をいう。「略長方形状乃至楕円形状」とは、長方形や楕円形に限定されるものではなく、上記長軸方向と短軸方向を有する形状であればどのようなものでも良い。
【0009】
上記発明において、前記引戸は、硬質材料による形材で形成された左右の垂直框と上部横框とを備え、前記上部横框がレールの開口部に差し込まれて滑動する滑走部を形成すると共に、上部横框の端面が取付スペースに向かって開口して前記舌片差込孔を形成しており、垂直框の上端面に外れ防止具の係合爪に係合する被係合部が形成されている構造とするのがよい。
【0010】
また、上記係合爪は、舌片を引戸の舌片差込孔に挿入するときに上方に逃げ、挿入完了時に引戸の被係合部に弾性係合する構造がよい。このように一方向係合構造を採用することにより、舌片を引戸の舌片差込孔に挿入する操作だけで、ワンタッチで係合爪を被係合部に係合ロックさせることができる。
【0011】
また、前記引戸の垂直框と横框は、軽金属材料の引き抜き加工により成形された形材で作られ、前記垂直框は長さ方向に延びる断面四角形の筒部を備え、この筒部の上端開口縁の一部が前記係合爪が係合する被係合部として形成されている構造とするのがよい。これにより引戸の構造が強化されると共に、筒部の上端開口縁を被係合部として利用できるので好都合である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上記の如く構成されているので、外れ防止具の鍔部の長軸方向をレールの溝方向に沿った姿勢でレールの溝に対して下方から差し込んで90度回転させることによって外れ防止具がレールから抜け出ることができない状態に保持することができ、この外れ防止具の舌片に引戸の舌片差込孔を差し込むことによって、引戸をレールから離反することを防止した状態で引戸をレールに装着することができるとともに、外れ防止具の引戸への挿着や、この外れ防止具と引戸との結合を簡単に行うことができ、加えて操作片によって、外れ防止具の係合爪と引戸の被係合部との係合を解除することにより、引戸をレールから簡単に取り外すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下において、本発明にかかる引戸の外れ防止装置の好適な実施形態を図に示した実施例に基づき説明する。本発明にかかる引戸の外れ防止装置は、レールAと、引戸Bと、外れ防止具Cとから構成される。
【0014】
上記レールAは、図3に詳しく示すように、アルミ等の軽金属材料によってチャンネル状の形材で形成され、開口部1を狭くし、奥部を広くした溝2を備えており、建具の上鴨居や家具の上枠に取り付けられる。
【0015】
上記引戸Bは、図4に詳しく示すように、アルミ等の軽金属材料による形材で形成された左右の垂直框4と上部横框5とを備え、上記垂直框4と上部横框5との連結部分を切除することによって、引戸Aの上部コーナー部分に外れ防止具Cを取り付けるための取付スペース6が形成されている。また、前記上部横框5はレールAの開口部1に差し込まれて走行する滑走部を形成しており、この上部横框5の端面が取付スペース6に向かって開口して外れ防止具Cの舌片を受け入れる舌片差込孔7を形成している。また、垂直框4は長さ方向に延びる断面四角形の筒部8を備え、この筒部8の上端開口縁の一部に外れ防止具Cの係合爪が係合する被係合部9が形成されている。
【0016】
上記外れ防止具Cは、図1並びに図2に詳しく示すように、ボデイ10と、細径の接続部11を介してボデイ上方に連設された略長方形状の水平な鍔部12と、ボデイ10の底面に設けられた係合爪13と、係合爪13の係合を解除するための操作片14と、ボデイから水平に突出された舌片15とから構成されており、前記鍔部12の長軸方向と舌片15の突出方向とが直交するように形成されている。また、鍔部12の短軸方向の巾が前記レールAの開口部1に下方から差し込み可能な寸法で形成され、鍔部12の長軸方向の巾がレールの開口部1の巾より大きく形成されている。また、操作片14は弾性変形可能であり、舌片15を引戸Bの舌片差込孔7に挿入するときに上方に逃げ、挿入完了時に弾性復帰して係合爪13が引戸の被係合部9に係合するように形成されている。尚、係合爪13を被係合部9に係合させる際に、操作片14で係合爪13を持ち上げるようにしてもよい。
【0017】
上記の構成において、引戸BをレールAにセットする場合に、先ず外れ防止具Cを図3に示すように鍔部12の長軸方向をレールAの溝方向に沿った状態にして開口部1から溝2に差し込み、図4に示すように90度回転させる。これにより、鍔部12が狭くした開口部1に引っかかってレールCから抜け出ることができない。この状態で図5に示すように、引戸Bの舌片差込孔7を外れ防止具Cの舌片15に差し込むことにより図6に示すように引戸Bと外れ防止具Cとを連結する。この舌片15の差し込み位置において係合爪13が引戸Bの被係合部9に係合してロックされる。これにより引戸BがレールAから離脱することを完全に阻止することができる。また、何らかの都合により、引戸BをレールAから取り外したいときは、操作片14をドライバー等の先端で押し上げて係合爪13を被係合部9から離反させた状態で外れ防止具Cの舌片15を引戸Bから引き抜くことにより簡単に取り外すことができる。
【0018】
尚、引戸Bを外れ防止具Cに結合させた図6の状態において、引戸Bの滑走部となる上部横框5がレールAの開口部1に差し込まれてレールに沿って走行できるように、上部横框の巾寸法や、外れ防止具Cの舌片15並びに引戸Bの舌片差込孔7の位置が予め設定されている。またこの状態において、外れ防止具Bのボデイ10がレールAの開口部1に差し込むことが可能な寸法に設けられている。
【0019】
上記実施例では、引戸Bの垂直框4並びに上部横框5をアルミ等の軽金属材料の型枠で形成したが、これに代えて、充分な強度を備えた樹脂材や木材で形成することも可能である。また、外れ防止具Cを取り付けるための取付スペース6を引戸Bの上端の左右のコーナー部分に設けて各コーナー部分に外れ防止具Cを配置するのが好ましいが、何れか一方のコーナー部分だけであってもよい。その他本発明ではその構成要件を備え、かつ本発明の目的を達成し、本発明の効果を奏する範囲内において適宜改変して実施できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の引戸の外れ防止具は、建具における引戸や家具の引戸等、引戸全般に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に於ける外れ防止具の一実施例を示す斜視図。
【図2】上記外れ防止具の断面図。
【図3】上記外れ防止具をレールに差し込む過程を示す斜視図。
【図4】外れ防止具をレールに装着した姿勢と、引戸の一部を示す斜視図。
【図5】レールに装着した外れ防止具に引戸を取り付ける過程を示す断面図。
【図6】レールに装着した外れ防止具を引戸に取り付けた状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0022】
A レール
B 引戸
C 外れ防止具
1 開口部
2 溝
4 垂直框
5 上部横框
6 取付スペース
7 舌片差込孔
8 筒部
9 被係合部
10 ボデイ
12 鍔部
13 係合爪
14 操作片
15 舌片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引戸の上端に着脱可能に取り付けられる外れ防止具と、開口部を狭くした溝を有し且つ引戸の上端滑走部を摺動自在に受け入れるレールとを備え、
前記外れ防止具は、ボデイと、該ボデイ上方に設けられ且つ短軸方向の巾と長軸方向の巾とを有する鍔部とを備え、鍔部の短軸方向の巾が前記レールの溝の開口部に下方から差し込み可能な寸法で形成され、鍔部の長軸方向の巾がレールの溝の開口部の巾より大きく形成されており、
鍔部の長軸方向をレールの溝の長手方向と交差させた状態で外れ防止具が引戸上端に着脱可能に取り付けられることを特徴とする引戸の外れ防止装置。
【請求項2】
上端に外れ防止具を取り付けるための取付部が形成された引戸と、開口部を狭くした溝を有し且つ引戸の上端滑走部を摺動自在に受け入れるレールと、引戸をレールから脱落することを防止する前記外れ防止具とを備え、
前記外れ防止具は、ボデイと、該ボデイと連接してボデイ上方に設けられた略長方形状乃至楕円形状の水平な鍔部と、ボデイ底面に設けられた係合爪と、係合爪の係合を解除するための操作片と、ボデイから水平に突出された舌片とからなり、前記鍔部の長軸方向と舌片の突出方向とが直交するように形成され、鍔部の短軸方向の巾が前記レールの開口部に下方から差し込み可能な寸法で形成され、鍔部の長軸方向の巾がレールの開口部の巾より大きく形成されており、
前記引戸は、取付部に向いた垂直な面に開口する舌片差込孔を備え、該舌片差込孔に外れ防止具の舌片を挿入した位置で前記係合爪が引戸に形成した被係合部に係合するように形成されている引戸の外れ防止装置。
【請求項3】
前記係合爪は、舌片を引戸の舌片差込孔に挿入するときに上方に逃げ、挿入完了時に引戸の被係合部に弾性係合する請求項2に記載の引戸の外れ防止装置。
【請求項4】
前記引戸は、硬質材料による形材で形成された左右の垂直框と上部横框とを備え、前記上部横框がレールの開口部に差し込まれて滑動する滑走部を形成すると共に、上部横框の端面が取付スペースに向かって開口して前記舌片差込孔を形成しており、垂直框の上端面に外れ防止具の係合爪に係合する被係合部が形成されている請求項1,2又は3に記載の引戸の外れ防止装置。
【請求項5】
前記引戸の垂直框と横框は軽金属材料の引き抜き加工により成形された形材で作られ、前記垂直框は長さ方向に延びる断面四角形の筒部を備え、この筒部の上端開口縁の一部に前記係合爪が係合する被係合部が形成されている請求項4に記載の引戸の外れ防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−19627(P2008−19627A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−192488(P2006−192488)
【出願日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(000101776)アルメタックス株式会社 (22)
【出願人】(391021190)大安金属株式会社 (2)
【Fターム(参考)】