説明

引戸の閉止装置

【課題】全てのレールに適用できる引戸の閉止装置を提供する。
【解決手段】固定ピン21と、引戸内に収納される閉止装置本体部1とからなり、閉止装置本体部1は、引戸のスライド方向に長く延びる両面部を備える固定枠体11と、引戸のスライドをアシストする力を蓄える、固定枠体11と可動体3を接続する第1スプリング2と、第1スプリング2のアシストする力の発揮を抑制する流体圧ダンパ31と、アシスト力を蓄積した状態の可動体を固定枠体11に係止して待機させる係脱手段4とを有する、固定枠体11内において長手方向に所定のストロークで移動する可動体3と、を備え、係脱手段4は、先端の係止片が外側へ突出するフック状の一対の係止部材42と、一対の係止部材42間に位置し一対の係止部材42の係止片423が外側に開くように弾発付勢される可動係止部材43とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸の閉止操作を補助又は緩和する引戸の閉止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
引戸は大型化、重量化が進むと、閉める際、大きな操作力が必要となるが、大きな操作力ゆえに、閉めた際の衝撃と衝撃音が大きくなり、不快感を与えることになる。一方、操作力が小さ過ぎると、引戸が半開きの状態となる。
【0003】
従来、このような引戸の衝撃や衝撃音を緩和したり、閉止をアシストするクローザと呼ばれる装置が多数提案されている。例えば特開2005−36635号公報には、ピストンを設けると共に建具に固定されたシャフトに、該ピストンを収容するシリンダーに当接体を設けたシリンダーユニットを、往復動可能に設けて成る建具用緩衝閉鎖装置であって、シリンダーユニットは、閉鎖ばねで後方に付勢されており、このシリンダーユニットを、閉鎖ばねに抗して前方に移動した状態で、建具に対して動かないように保持することができる保持体を設けて成り、建具が取り付けられる枠体には、建具が閉鎖する前に、保持体に保持されているシリンダーユニットの当接体が当接して保持される当受体を設けて成り、建具が閉鎖方向に移動すると、当接体が当受体に当接して、シリンダーユニットは保持体から離脱して当受体に保持され、ピストンがシリンダー内を相対的に摺動する時に緩衝されると共に、閉鎖ばねの復元力によって建具を閉鎖方向に移動することができるように成し、閉鎖操作された建具を緩衝して、なおかつ閉鎖させることができる建具用緩衝閉鎖装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−36635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の引戸の閉止装置は、引戸のスライドをガイドするレールと閉止装置がセットとなっている。このため、引戸の閉止装置を交換する場合には、レールと閉止装置を共に、交換する必要があった。そこで、閉止装置をレール構造には影響されない独自構造のものとすれば、レールは汎用もの等なんでもよく、閉止装置の適用の自由度が高まり都合がよい。
【0006】
従って、本発明の目的は、レール構造に左右されず、すべてのレールに適用できる引戸の閉止装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、上記課題を解決したものであって、引戸外の上部材又は下部材に固定される固定ピンと、引戸内において該固定ピンに対応する位置に収納される閉止装置本体部とからなり、該閉止装置本体部は、引戸のスライド方向に長く延びる両面部と、該両面部の所定位置に形成される開口と、引戸の閉止側の一端から奥側に延びる該固定ピンが通る固定ピン通路とを有する固定枠体と、引戸のスライドをアシストする力を蓄える、該固定枠体と可動体を接続する第1スプリングと、該第1スプリングのアシストする力の発揮を抑制する流体圧ダンパと、アシスト力を蓄積した状態の可動体を該固定枠体に係止して待機させる係脱手段とを有する、固定枠体内において該固定枠体の長手方向に所定のストロークで移動する可動体と、を備えるものであり、該係脱手段は、先端の係止片が外側へ突出するフック状の一対の係止部材と、該一対の係止部材間に位置し該一対の係止部材の係止片が外側に開くように弾発付勢される可動係止部材とを備えることを特徴とする引戸の閉止装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、閉止装置本体部をレールの構造に左右されない構造としたため、レール構造に左右されず、すべてのレールに適用でき、適用の自由度が広がる。すなわち、引戸の上方にレールが付設される場合、引戸の下部材、例えば床面や敷居面に固定ピンを設置し、閉止装置本体部を引戸の下方内部に設置すればよい。また、引戸の下方にレールが付設される場合、引戸の上部材、例えば引戸の枠の上部材に固定ピンを設置し、閉止装置本体部を引戸の上方内部に設置すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】引戸と閉止装置と固定ピンの位置関係を示す図である。
【図2】本例の引戸の閉止装置の斜視図である。
【図3】図2の引戸の閉止装置の分解斜視図である。
【図4】本例の引戸の閉止装置で使用する係脱手段の分解斜視図である。
【図5】本例の引戸の閉止装置で使用する係脱手段と固定ピンの位置関係を示す斜視図である。
【図6】本例の引戸の閉止装置で使用する係脱手段と固定ピンの係止状態を示す斜視図である。
【図7】図2の引戸の閉止装置の一部を破断して示す斜視図である。
【図8】(A)は係脱装置と固定ピンの係止前の状態の一部を破断して示す平面図、(B)は固定ピンが係脱装置の可動係止部材に衝突し、一対の係止部材が閉じた状態を示す図、(C)は衝撃吸収部材が固定ピンの衝突の衝撃を吸収している状態を示す図である。
【図9】本例の引戸の閉止装置の作用を説明する一部を破断して示す断面図であり、(A)が待機状態にある閉止装置の断面図、(B)が係脱手段が固定ピンをキャッチした閉止装置の断面図、(C)が閉止装置の作動完了後の断面図である。
【図10】引戸の開閉を説明する簡略図であり、(A)が引戸開、(B)が引戸閉の状態である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施の形態における引戸の閉止装置(以下、単に「閉止装置」とも言う。)を図1〜図10を参酌して説明する。閉止装置10は、引戸100の外の例えば敷居等の下部材200に固定される固定ピン21と、引戸100内において固定ピン21に対応する位置に収納される閉止装置本体部1とからなる。なお、引戸の外とは、移動体である引戸以外の固定側の部材を言う。また、引戸100内の下方部には、閉止装置本体部1の固定ピン開口111に通じる、引戸100のスライドをガイドする矩形断面形状であって、引戸の移動距離から閉止装置内移動距離Lを差し引いた長さの固定ピン通路11aが形成されている(図1及び図10)。このため、引戸を操作する者からは、固定ピンは実質的に見えない。下部材200は図1の形態に限定されず、床であってもよい。なお、符号Xは引戸が閉まる方向であり、符号qは固定ピン21がキャッチされる位置である。本例の引戸100は引戸枠の上部材に形成された公知のレール(不図示)によって吊り下げられている。なお、閉止装置10は、図1の設置位置に限定されず、例えば、引戸内であってその上部に設置してもよい。この場合、固定ピンは引戸枠の上部材に設置され、レールは引戸の下方側に形成される。本明細書中、引戸の閉じる方向とは、引戸を閉めるためスライドさせる方向を言う。また、引戸の開く方向とは、引戸を開けるためスライドさせる方向を言う。
【0011】
閉止装置本体部1は、固定枠体11と、第1スプリング2と、可動体3とを備える。固体枠体11は引戸100内に固定されるものであり、第1スプリング2と可動体3を収容する。固定枠体11は、本例では上固定枠体11aと下固定枠体11bからなる。上固定枠体11aは、螺子孔113を有する端部固定部115と、天板部116と、引戸が閉まる方向側の側板部117とからなり、天板部116には、引戸に螺子止めする螺子孔113及び下固定枠体11bと嵌合する嵌合片が形成されることで生じる孔114が形成されている。また、側板部117には、下固定枠体11bの嵌合突起123と係合する係合穴112が形成され、また、固定ピン21が通過する開口122が形成されている。下固定枠体11bは天井が開口し、底面には固定ピン21が通る切り欠き部129を有している。なお、符号118は表面板である。固体枠体11は、下固定枠体11bに、上固定枠体11aを嵌めることで得られる。
【0012】
固体枠体11は、引戸のスライド方向に長く延びる両面部126と、両面部126の所定位置に形成される貫通孔である開口120と、引戸100の閉止側の一端から奥側に延びる固定ピン21が通る固定ピン通路125とを有する。固体枠体11の長さは、長尺状の可動枠体33の長さと可動枠体33の固定枠体11内における移動距離(L)の合計で概ね決定される。開口120の内壁には係脱手段4の一対の係止部材の係止片42が係止する。すなわち、開口120はアシスト力を蓄えた係脱手段4を係止して待機状態とする機能を有する。開口120の長手方向における位置は、概ね中央であり、待機状態にある可動枠体33における一対の係止部材の係止片42の位置に対応する位置である。固体枠体11の引戸の開き方向側の端部には、更に第1スプリング2の一端を固定する係止部121と流体圧ダンパ31のピストンロッド312の一端を固定する係合部128を有している。
【0013】
第1スプリング2は、引戸100のスライドをアシストする力を蓄える状態、すなわち待機状態における可動枠体33と固定枠体11を接続する。第1スプリング2の一端は固定枠体11の係止部121に係止され、第1スプリング2の他端は可動枠体33の引戸の閉まる方向側にある係止部324に係止される。
【0014】
可動体3は、第1スプリング2のアシストする力の発揮を抑制する流体圧ダンパ31と、アシスト力を蓄積した状態の可動体3を固定枠体11に係止して待機させる係脱手段4とを有する。また、可動体3は、固定枠体11内において固定枠体11の長手方向に所定のストローク(L)で相対移動するものである。すなわち、可動体3は、閉止装置10が作動しない状態(待機状態)において、固定枠体11に掛り止めされており、係脱手段4が固定ピン21をキャッチすることで、この掛り止めが外され、閉止装置10のアシスト力が発揮されるものである。
【0015】
流体圧ダンパ31は、公知の市販品を使用することができる。すなわち、流体圧ダンパ31は、シリンダ311とピストンロッド312を備える。流体圧ダンパ31は、シリンダ311をダンパホルダ32に入れて固定し、ピストンロッド312の引戸100の開く方向側の端314を固定枠体11の係止部128に係止することで固定される。シリンダ311の端部313は可動枠体33の嵌合穴323に嵌るようになっている。そして、待機状態の閉止装置10において、流体圧ダンパ31のピストンロッド312は伸びきった状態となっている。そして、閉止装置10の待機状態が解除されると、第1スプリング2のアシストする力、すなわち弾発力が発揮されると同時に、ピストンロッド312がシリンダ311内に引き込まれて、第1スプリング2のアシストする力の発揮を抑制することになる。
【0016】
係脱手段4は、アシスト力を蓄積した状態の可動体3を固定枠体11に係止して待機させるものである。また、固定ピン21をキャッチして、固定枠体11との係止を解除し、待機状態から作動状態へと移行させるものである。すなわち、係脱手段4は、先端の係止片423が外側へ突出するフック状の一対の係止部材42、42と、一対の係止部材42、42間に位置し一対の係止部材42の係止片423が外側に開くように弾発付勢される可動係止部材43とを備える。
【0017】
係脱手段4において、一対の係止部材42、42と、可動係止部材43は、箱状体41の内部に収納される。箱状体41の引戸を閉める方向側の壁面413には固定ピン出入り用の開口44が形成され、箱状体41の側壁部412には、一対の係止部材42の係止片423が出入りする開口窓部491が形成されている。また、天板411には、可動係止部材43の係止体433が嵌る開口窓部461が形成されている。また、箱状体41の側壁部412の引戸が閉まる側の端近傍には、可動枠体33の係止片337が係止する凹部431が形成され、箱状体41の天板411の引戸が閉まる側の端近傍には、可動枠体33の係止片331が係止する凹部421が形成されている。この凹部431、421は共に、引戸の開く側に後方壁444を有しているため、可動枠体33中において、箱状体41が引戸の閉まる側には移動しないようになっている。一方、引戸を開く衝撃が大きい場合、箱状体41が引戸の開く側にバネ付勢に抗して移動し、衝撃吸収部材47により衝撃を吸収するようになっている。
【0018】
一対の係止部材42は、可動体3と固体枠体11との係脱に関与するものである。一対の係止部材42は、柱状の軸支部421と、先端の係止片423と、軸支部421と係止片423を接続する連結部422とからなり、係止片423の内側に軸支部421より背の高い、可動係止部材43と係止する柱状の係止部424を形成したものである。また、柱状の軸支部421は、棒軸44aにより箱状体41の支持部492に回動自在に軸支される。柱状の軸支部421の軸中心は箱状体41の側壁部412の側面より符号m分(図8の(B)参照)やや内側に入ったところである。
【0019】
可動係止部材43は、待機状態において、バネ46の付勢により、一対の係止部材42の間に入り、係止片423を外側に開いた状態に保持し、一方、固定ピン21をキャッチすることで、引戸100の開く方向に後退して、一対の係止部材42を閉じて固定ピン21を抱くように挟持し、一対の係止部材42と固定枠体11との係止を解くものである。可動係止部材43は、柱状本体部449の上部に、柱状本体部449から引戸を閉める方向側に突出する先端が一対の係止部材42の柱状の係止部424と係止する側方に少し突出した第2係止部432を備えた係止体433を備える。そして、係止体433の先端部の下方には、固定ピン21が入り込む空間447を形成している。
【0020】
可動係止部材43は、箱状体41内に、後方(引戸の開く方向)側に位置するバネ46により引戸100の閉まる方向側にバネ付勢された状態で設置される。すなわち、箱状体41に設置された可動係止部材43は、固定ピン21をキャッチして、引戸の開く方向に外力をうけると、バネ46の付勢に抗して引戸の開く方向に移動する。そして、固定ピン21が外れると、バネ46の付勢により一対の係止部材42の間に入ろうとすることで、係止片423が外側に開くように作用する。
【0021】
一対の係止部材42と可動係止部材43が組み込まれた箱状体41は、図5に示すように、一対の係止部材42が外側に開き、先端の係止片423が箱状体41の両側から外へ突出している。また、一対の係止部材42と可動係止部材43で形成される空間は、固定ピン21をキャッチする部分である。なお、可動係止部材43の前面445が、固定ピン21と衝突する箇所である(図4及び図6参照)。
【0022】
一対の係止部材42と可動係止部材43が組み込まれた箱状体41は、図7及び図9(A)に示すように、長尺状の可動枠体33に収納される。可動枠体33は、四角形断面の枠状であって、引戸の閉まる方向側が開口し、底面には固定ピン21が通過する切り欠き部334を有する。可動枠体33の天板336には、ダンパホルダ32の下方係止片(不図示)と係止する係止孔332が形成され、更に箱状体41を固定する係止片331が形成されている。また、可動枠体33の両側壁部335には、引戸の開く方向側から引戸の閉まる方向側へ向けて、衝撃吸収部材47の吸収片471が出没する開口339、一対の係止部材42の係止片423が出没する開口338、箱状体41の凹部431に係止するコ字形状の切り欠き部337がそれぞれ形成されている。また、可動枠体33は、固定枠体11内を固定枠体に対して相対移動するため、幅寸法は固定枠体11の幅内寸より僅かに小である。
【0023】
一対の係止部材42と可動係止部材43が組み込まれた箱状体41は、可動枠体33内の引戸100を開ける方向側の端近傍に収納される。また、可動枠体33の引戸を開ける方向側の壁面と箱状体41との間に、衝撃吸収部材47が設置されている。衝撃吸収部材47は、板状の基部471の両側から斜め外側方向に延びる両腕部472を有し、且つ中央にバネ45を介在させている。衝撃吸収部材47は可動係止部材43が固定ピン21をキャッチする際、バネ45でその衝撃を緩和吸収する。また、衝撃が激しい場合、両腕部472が外側に開き、固体枠体11の両側壁の内壁と接触し、接触摩擦によりブレーキをかけるようになっている。
【0024】
可動枠体33に、箱状体41及び衝撃吸収部材47を設置した後、係止片(爪)337を外側から内側へ押し込んで、箱状体41を可動枠体33に固定する。これにより、一対の係止部材42と可動係止部材43が組み込まれた箱状体41は、可動枠体33内において引戸100の閉じる方向へは移動せず、引戸100の開く方向には衝撃を吸収しつつ僅かに移動する。なお、符号341はダンパホルダ32の下面部が入る逃げ孔である。
【0025】
次に、閉止装置10の閉止の補助と緩和の作用について、図8〜図10を参照して説明する。引戸100は本例では引戸枠144に公知の吊り下げ手段(不図示)で左右方向に移動自在に設置されている。また、引戸100の下部には固定ピン案内溝11aが内成されており、引戸100の移動に際し、固定ピン21を固定ピン案内溝11aに通過させて、引戸100の移動を円滑且つ安定化させている。図10(A)は、引戸100が開の状態であり、閉止装置10は待機状態であり、固定ピン21は引戸100の閉まる方向側の端の下方部分に隠れた状態にある。図10中、符号143は壁面であり、符号141は壁の端を示す。
【0026】
引戸100を閉める際、操作者は取っ手142を矢印X方向に引く。引戸100は手の操作力により閉まる方向Xに移動する。この状態における閉止装置10において、可動係止部材43は、バネ46の付勢により、一対の係止部材42の間に入り、係止片423が外側に開くよう付勢している。その際、係止片423は可動枠体33の開口338を通り、固定枠体11の開口120の内壁に係止している。また、係止片423の先端は固体枠体11の外側(外壁面より外)に突出していない。このような一対の係止部材42の係止片423と固体枠体11との係止により、可動枠体33は固体枠体11内において固定(係止)状態となる。また、係脱手段4の一対の係止部材42の係止片423が両側に開くことで、一対の係止部材42間の引戸100の閉じ方向側は、固定ピン21が入るに十分な開口431を形成すると共に、一対の係止部材42と可動係止部材43で囲まれた部分が、固定ピン21を収容する空間444となる(図8(A)参照)。
【0027】
更に引戸100が閉まる方向に移動し、引戸100が完全に閉まる手前約4〜8cm(図9中の符号L)で、固定ピン21が一対の係止部材42間を通り、可動係止部材43の前壁445に衝突する。その際、固定ピン21は可動係止部材43をバネ付勢に抗して押す(図8(B)の矢印Y方向)。可動係止部材43が押されて矢印Y方向に移動すると、可動係止部材43と一対の係止部材42との係止が外れる。この際、一対の係止部材42の軸支位置と、先端の係止片423と固定枠体11の係止位置とが矢印Y方向と直交する方向にm分だけ離れていること、更に可動枠体33が固定枠体11に対して第1スプリング2により引っ張られているため、図8(B)の矢印p方向にモーメント力が作用し、一対の係止部材42は閉じて、固定ピン21を挟持することになる。この際、一対の係止部材42の係止片423の先端は長尺状の枠体33内に収容される(図8(B)及び図9(B))。この状態から、閉止装置10は操作者が何もしなくとも閉止操作を補助又は緩和する作用、すなわちアシスト作用を開始する。
【0028】
次に、閉止装置10のアシスト作用を説明する。図9(B)に示すように、可動枠体33は固定枠体11に対して第1スプリング2により引っ張られているため、アシスト力を発揮して流体圧ダンパ31のピストンロッド312を縮めようとする(符号x方向)。一方、可動枠体33は固定ピン21をキャッチし両者は一体化しているため、可動枠体33は移動せず、固定枠体11が可動枠体33に対して相対移動することになる。すなわち、固定枠体11が符号X方向に移動する。この際、流体圧ダンパ311は、第1スプリング2のアシストする力の発揮を抑制する。このため、減速された状態で、固定枠体11と一体の引戸100が可動枠体33に対して所定のストローク(距離L)分相対移動し、引戸100を閉めることになる(図9(C))。この相対移動は、係脱手段4に固定ピン21がキャッチされる強弱に拘わらず、一定である。このため、弱い操作力で引戸100が閉められた場合、閉止操作を補助する効果が得られ、逆に、強い操作力で引戸100が閉められた場合、閉止操作を緩和する効果が得られる。
【0029】
次に、図10(B)の状態から引戸100を開ける場合について説明する。この場合、閉止装置10は図8(B)及び図9(C)の状態である。すなわち、引戸100を開く際、操作者は取っ手142を矢印X方向の反対方向に引く。引戸100は手の操作力により開く方向に移動する。この際、閉止装置10の係脱手段4から固定ピン21が外れる。可動係止部材43は、バネ46の付勢により、一対の係止部材42の係止片423が外側に開くよう付勢するものの、固定枠体11の開口120と対応する位置にないため、一対の係止部材42の係止片423は可動枠体33の内壁に当接したままである。すなわち、操作者は第1スプリング2のバネ付勢に抗しながら、所定のストローク(距離L)分引戸100を開くことになる。次いで、引戸100が所定のストローク(距離L)分移動すると、一対の係止部材42の係止片423が固定枠体11の開口120に対応する位置にきて開き、一対の係止部材42の係止片423は可動枠体33の開口338を通り、固定枠体11の開口120の内壁に係止することになる。これにより、閉止装置10は待機状態となる。このように、閉止装置10は、引戸100を開いたり閉めたりすることで、待機状態からアシスト状態が繰り返される。
【0030】
次に、閉止装置10の衝撃吸収作用について図8(B)及び(C)を参照して説明する。閉止装置10の衝撃吸収作用とは、引戸100の操作力が強く、係脱手段4が固定ピン21を強くキャッチした場合、係脱手段4を構成する各部材の損傷等を防止するために、その衝撃を吸収緩和する作用を言う。閉止装置10の衝撃吸収は、係脱手段4の後側(引戸100を開ける方向側)、すなわち、長尺状の枠体33の壁面331と箱状体41との間に設置される衝撃吸収部材47により行われる。衝撃吸収部材47は可動係止部材43が固定ピン21をキャッチする際、バネ45でその衝撃を緩和吸収する。また、衝撃が激しい場合、両腕部472が外側に開き、固体枠体11の両側壁の内壁と接触し、接触摩擦によりブレーキをかけるようになっている。
【0031】
閉止装置10は、上記設置位置に限定されず、例えば、引戸100の下方にレールが付設される場合、引戸100の上部材、例えば引戸100の枠144の上部材に固定ピン21を設置し、閉止装置本体部を引戸100の上方内部に設置すればよい。この際、閉止装置本体部1は図1の設置姿勢の逆さ姿勢となる。
【0032】
また、閉止装置10を更に追加して2個とし、追加の1個を例えば、図10(A)の引戸100の右下端部に、左下端部の閉止装置10とは対称位置(対峙位置)となるように設置すれば、引戸100を開ける際の開きのアシストをすることができる。この場合、固定ピン21は、2つの閉止装置10の間に存在することになる。また、2つの閉止装置10を使用する場合、固定ピン21を同一軌道内に2個設置してもよい。この場合、2つの固定ピン21は、2つの閉止装置10の間に存在することになる。また、2つの閉止装置10と2個の固定ピン21を使用する場合、1つの閉止装置10と1個の固定ピン21の設置軌道(同一線上)と他の1つの閉止装置10と他の1個の固定ピン21の設置軌道(同一線上)を互いに異なる平行軌道(異なる線上)としてもよい。
【0033】
本発明の閉止装置10によれば、レールの構造に左右されない別系統の構造としたため、レール構造に左右されず、すべてのレールに適用でき、適用の自由度が広がる。また、固定ピン21の設置位置は、引戸の枠の中心141近傍(枠の中心141からL離れた位置)に設置できるため、引戸の開口度(L/L)を大きく採れる。なお、Lは閉止装置10が無い場合の引戸の最大開口幅を言う。なお、固定ピン21の設置位置を図10中、更に引戸が開く側に設置することで、引戸の最大開口Lを維持できる。
【符号の説明】
【0034】
1 閉止装置本体部
2 第1スプリング
3 可動体
4 係脱手段
10 閉止装置
11 固定枠体
21 固定ピン
31 流体圧ダンパ
32 ダンパホルダ
33 可動枠体
41 箱状体
42 一対の係止部材
43 可動係止部材
100 引戸
338、120 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引戸外の上部材又は下部材に固定される固定ピンと、引戸内において該固定ピンに対応する位置に収納される閉止装置本体部とからなり、該閉止装置本体部は、
引戸のスライド方向に長く延びる両面部と、該両面部の所定位置に形成される開口と、引戸の閉止側の一端から奥側に延びる該固定ピンが通る固定ピン通路とを有する固定枠体と、
引戸のスライドをアシストする力を蓄える、該固定枠体と可動体を接続する第1スプリングと、
該第1スプリングのアシストする力の発揮を抑制する流体圧ダンパと、アシスト力を蓄積した状態の可動体を該固定枠体に係止して待機させる係脱手段とを有する、固定枠体内において該固定枠体の長手方向に所定のストロークで移動する可動体と、
を備えるものであり、
該係脱手段は、先端の係止片が外側へ突出するフック状の一対の係止部材と、該一対の係止部材間に位置し該一対の係止部材の係止片が外側に開くように弾発付勢される可動係止部材とを備えることを特徴とする引戸の閉止装置。
【請求項2】
該可動体の待機状態は、該一対の係止部材の係止片と、該固体枠体の開口の内壁との係止により行われ、該係止片の先端は該固体枠体の外側に突出しないものであることを特徴とする請求項1記載の引戸の閉止装置。
【請求項3】
該係脱手段は、箱状体の内部に収納され、該係脱手段を収納した箱状体は、引戸を閉める方向側の側面と底面が開口した長尺状の可動枠体内であって、該可動枠体内の引戸を開ける方向側に収納されることを特徴とする請求項1又は2記載の引戸の閉止装置。
【請求項4】
該箱状体の引戸を閉める方向側の壁面には固定ピン出入り用の開口が形成され、該箱状体の両壁面には、該一対の係止部材の係止片が出入りする開口窓部が形成されることを特徴とする請求項3に記載の引戸の閉止装置。
【請求項5】
該長尺状の可動枠体の引戸を開ける方向側の壁面と該箱状体との間に、衝撃吸収部材を設置したことを特徴とする請求項3又は4に記載の引戸の閉止装置。
【請求項6】
該一対の係止部材は、柱状の軸支部と、先端の係止片と、該軸支部と該係止片を接続する連結部とからなり、該係止片の内側に該軸支部より背の高い、該可動係止部材と係止する柱状の係止部を形成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の引戸の閉止装置。
【請求項7】
該可動係止部材は、柱状本体部の上部に、該柱状本体部から引戸を閉める方向側に突出する先端が該係止部と係止する第2係止部を備えた係止体を備えることを特徴とする請求項6記載の引戸の閉止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−36625(P2012−36625A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177013(P2010−177013)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(394016874)河淳株式会社 (61)