説明

引戸及び同引戸の施工方法

【課題】天井面と引戸との間の隙間を防止し、外観を良好に保つことができる引戸及び同引戸の施工方法を提供する。
【解決手段】下方に開口した凹状の上レール1に沿って摺動する戸首部材2と、床面3に設けられた下レール4に沿って走行する走行部材5とを備える引戸において、前記戸首部材2は引戸本体6の上端部7略全長に亘ってこの引戸本体6とは別体に設けられるとともに、その長手方向の両端部8にて下方に延設する固定片9を有し、前記戸首部材2が前記上レール1に嵌挿された状態で、前記引戸本体6の上端部7がその表裏方向に移動されて前記両固定片9間に挿入され、この両固定片9が前記引戸本体6の両側端面10にネジ11で固定されることにより、前記引戸本体6の上端部7と前記戸首部材2とが結合されるようになした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、下方に開口した凹状の上レールに沿って摺動する戸首部材と、床面に設けられた下レールに沿って走行する走行部材とを備える引戸に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、図4に示されるように、床面3から天井面17に亘る引戸が知られている。この引戸は、引戸本体6と、戸首部材2と、走行部材5とを備えている。
【0003】
この場合、戸首部材2は、天井面17に設けられた凹状の上レール1に挿入され、走行部材5は、床面3に設けられた凹状の下レール4に装着されるようになっている。
【0004】
したがって、一般的にこのような引戸の全高Lは、床面3から天井面17までの高さHよりも高く形成され、戸首部材2を上レール1に挿入した後、走行部材5を下レール4に装着して施工する。
【0005】
なお、特開平8−296377号公報に示されるように、引戸を閉じた状態において、引戸とこの引戸の配される枠との間の隙間を塞ぐことのできる進退自在な気密部材を有する引戸は知られている。この引戸は、図5に示すように、引戸本体6の上端部7に気密部材21を備えている。
【特許文献1】特開平8−296377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の一般的な引戸では、上述したような施工方法を採るために、戸首部材2と上レール1との間にのみ込み代となる余裕が必要となり、引戸の全高Lをできるだけ低くし、戸首部材2の幅Nを上レール1の幅より狭くすることが行なわれる。そのため、戸首部材2の上レール1への挿入部分の長さMが短く引戸が外れやすいうえ、引戸の表裏方向でガタツキが生じるという問題があった。また、引戸を上レール1へ挿入する際に引戸を斜めにすることから、引戸本体6の上端部7と天井面17との間に余裕が必要となる。したがって、戸首部材2と上レール1との上下方向及び表裏方向の隙間や引戸本体6の上端部7と天井面17との間の隙間から明かりがもれるという問題があった。
【0007】
また、上記気密部材21を有する引戸は、引戸が完全に閉まった状態で気密部材21と上レール1との隙間を塞ぐものであるから、引戸の開閉時には隙間が発生してしまう。
【0008】
本願発明は、上記背景技術に鑑みてなしたものであり、その目的は、天井面と引戸との間の隙間を防止し、外観を良好に保つことができる引戸及び同引戸の施工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本願請求項1記載の発明は、下方に開口した凹状の上レールに沿って摺動する戸首部材と、床面に設けられた下レールに沿って走行する走行部材とを備える引戸において、前記戸首部材は引戸本体の上端部略全長に亘ってこの引戸本体とは別体に設けられるとともに、その長手方向の両端部にて下方に延設する固定片を有し、前記戸首部材が前記上レールに嵌挿された状態で、前記引戸本体の上端部がその表裏方向に移動されて前記両固定片間に挿入され、この両固定片が前記引戸本体の両側端面にネジで固定されることにより、前記引戸本体の上端部と前記戸首部材とが結合されるようになしている。
【0010】
本願請求項2記載の発明は、上記請求項1記載の引戸において、前記戸首部材は、引戸本体の上端部に取り付けられる基体部と、上レールに嵌挿される戸首部とからなり、この基体部は帯状金属板で形成されてその長手方向の両端部に下方へ折曲した前記固定片を有し、同基体部の上面にて前記戸首部が固着されていることを特徴としている。
【0011】
本願請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の引戸の施工方法において、戸首部材を上レールに嵌挿し、その後、引戸本体の上端部を表裏方向に移動させて両固定片間に挿入し、この両固定片を前記引戸本体の両側端面にネジで固定することにより、前記引戸本体の上端部と前記戸首部材とを結合することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本願請求項1記載の発明の引戸においては、引戸を取り付ける場合に、まず、別体からなる戸首部材を上レールに嵌挿し、引戸本体を表裏方向から戸首部材の両固定片間に挿入して、戸首部材と結合するようにしたので、のみ込み代となる余裕を戸首部材及び引戸本体の上端部に設ける必要がなく、戸首部材と上レールとの上下方向及び表裏方向の隙間や引戸本体の上端部と天井面との間の隙間を少なくすることができ、明かりもれを効果的に防止することができる。つまり、上レールに戸首部材を深く差し込むことができるので、引戸が上レールから外れるのを防止できるとともに、引戸の表裏方向でガタツキが生じることも防ぐことができる。さらに、引戸本体の側端面にて、戸首部材と引戸本体をネジ固定するものであるから、固定部が引戸の表面及び裏面に露出しないので、外観を良好に保つことができる。
【0013】
本願請求項2記載の発明の引戸においては、戸首部材を基体部と戸首部とで構成し、基体部をその長手方向の両端部にて下方へ折曲した固定片を有する帯状金属板で形成したので、引戸本体の上端部を補強することができるうえ、戸首部材と引戸本体との結合を強固にすることができる。
【0014】
本願請求項3記載の発明の引戸の施工方法においては、戸首部材を上レールに嵌挿した後、引戸本体の上端部を表裏方向に移動させて両固定片間に挿入し、この両固定片を引戸本体の両側端面にネジで固定するようにしたので、戸首部材と上レールとの上下方向及び表裏方向の隙間や引戸本体の上端部と天井面との間の隙間を少なくすることができる。さらに、大きく重たい引戸を直接、天井面の上レールに挿入する従来の施工方法とは異なり、走行部材を下レールに装着してから、戸首部材と引戸本体を結合するようにしたので、引戸を天井面の上レールに挿入する煩わしさがなく、施工を容易にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1乃至3は、本願発明の一実施形態である引戸及び同引戸の施工方法を示している。この実施形態の引戸では、下方に開口した凹状の上レール1に沿って摺動する戸首部材2と、床面3に設けられた下レール4に沿って走行する走行部材5とを備える引戸において、前記戸首部材2は引戸本体6の上端部7略全長に亘ってこの引戸本体6とは別体に設けられるとともに、その長手方向の両端部8にて下方に延設する固定片9を有し、前記戸首部材2が前記上レール1に嵌挿された状態で、前記引戸本体6の上端部7がその表裏方向に移動されて前記両固定片9間に挿入され、この両固定片9が前記引戸本体6の両側端面10にネジ11で固定されることにより、前記引戸本体6の上端部7と前記戸首部材2とが結合されるようにしてある。この場合、図1に示すように、前記戸首部材2は、引戸本体6の上端部7に取り付けられる基体部12と、上レール1に嵌挿される戸首部13とからなり、この基体部12は帯状金属板で形成されてその長手方向の両端部14に下方へ折曲した前記固定片9を有し、同基体部12の上面にて前記戸首部13が固着されるようにしてある。
【0016】
以下、この実施形態の引戸を、より具体的詳細に説明する。図2に示すように、引戸は引戸本体6と、引戸本体6の上端部7に後付される戸首部材2と、引戸本体6の下端部15から突出される走行部材5とを備えている。図1に示すように、戸首部材2は、引戸本体6の上端部7に取り付けられる基体部12と、上レール1に嵌挿される戸首部13とからなる。戸首部13は、木、樹脂、金属などからなり、長手方向の長さは引戸本体6の上端部7の略全長とし、幅方向の長さは上レール1の略溝幅とし、高さ方向の長さは上レール1の溝の深さとほぼ一致するかもしくは、やや長めとし、引戸本体6とは別体に設けられている。基体部12は、帯状金属板で形成され、長手方向の長さは引戸本体6の上端部7の略全長とし、幅方向の長さは戸首部13の幅とほぼ一致するかもしくは、やや長めとし、長手方向の両端部14で下方へ折曲した固定片9を有している。固定片9にはネジ穴16が形成され、引戸本体6の両側端面10とネジ11で固定される。ここで、基体部12と戸首部13は基体部12の長手方向に沿ってネジで固定されているが、これに限定されるものではなく、例えば、基体部12と戸首部13の接触面を接着剤で固定したり、あるいは、基体部12と戸首部13を一体成形したりしてもよい。また、基体部12と戸首部13は工場等で予め固定して、一体の戸首部材2としておく。
【0017】
走行部材5は、引戸本体6の下端部15に設けられる複数個の戸車である。なお、本実施形態の走行部材5は戸車としているが、引戸本体6の下端部15の略全長に亘って引戸本体6と一体に凸状部として設けるものであってもよい。
【0018】
さらに、本実施形態の引戸の施工方法について説明する。引戸を取り付ける場合には、図3(a)に示すように、戸首部材2を上レール1に嵌挿するとともに、引戸本体6を表裏方向に傾け、走行部材5を下レール4に装着する。次に、図3(b)に示すように、引戸本体6を引き起こし、引戸本体6の上端部7を両固定片9間に挿入する。引戸本体6の上端部7が水平となり、戸首部材2の真下にきたら、戸首部材2を上レール1からわずかに退出させ、引戸本体6の上端部7に当接させる。そして、図3(c)に示すように、両固定片9に設けられたネジ穴16を介して、固定片9と引戸本体6の両側端面10をネジ11で固定することにより、引戸本体6の上端部7と戸首部材2とを結合させる。逆に、引戸を取り外す場合には、まず、引戸本体6の両側端面10に取り付けられたネジ11を外し、戸首部材2を上レール1に嵌挿したまま、両固定片9間から引戸本体6を表裏方向に傾け、戸首部材2と引戸本体6を引き離す。次に、走行部材5を下レール4から外すとともに、戸首部材2を上レール1から退出させる。なお、走行部材5を下レール4に装着してから戸首部材2を上レール1に嵌挿したり、戸首部材2を上レール1から退出させてから走行部材5を下レール4から外したりしてもよい。
【0019】
したがって、引戸を取り付ける場合に、まず、別体からなる戸首部材2を上レール1に嵌挿し、引戸本体6を表裏方向から戸首部材2の両固定片9間に挿入して、戸首部材2と結合するようにしたので、のみ込み代となる余裕を戸首部材2及び引戸本体6の上端部7に設ける必要がなく、戸首部材2と上レール1との上下方向及び表裏方向の隙間や引戸本体6の上端部7と天井面17との間の隙間を少なくすることができ、明かりもれを効果的に防止することができる。つまり、上レール1に戸首部材2を深く差し込むことができるので、引戸が上レール1から外れるのを防止できるとともに、引戸の表裏方向でガタツキが生じることも防ぐことができる。さらに、引戸本体6の側端面10にて、戸首部材2と引戸本体6をネジ固定するものであるから、固定部が引戸の表面及び裏面に露出しないので、外観を良好に保つことができる。加えて、戸首部材2を基体部12と戸首部13とで構成し、基体部12をその長手方向の両端部14にて下方へ折曲した固定片9を有する帯状金属板で形成したので、引戸本体6の上端部7を補強することができるうえ、戸首部材2と引戸本体6との結合を強固にすることができる。また、大きく重たい引戸を直接、天井面17の上レール1に挿入する従来の施工方法とは異なり、走行部材5を下レール4に装着してから、戸首部材2と引戸本体6を結合するようにしたので、引戸を天井面17の上レール1に挿入する煩わしさがなく、施工を容易にすることができる。
【0020】
なお、上記実施形態では、天井面17と引戸の隙間について説明したが、本願発明は鴨居と引戸の隙間についても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本願発明の一実施形態である引戸の斜視図であって、(a)は引戸の要部、(b)は基体部と戸首部とからなる戸首部材をそれぞれ示している。
【図2】同引戸の全体概略を示す断面図。
【図3】同引戸の施工方法を示す斜視図であって、(a)は戸首部材を上レールに嵌挿する工程、(b)は引戸本体の上端部を両固定片間に挿入する工程、(c)は固定片と引戸本体の側端面をネジで固定する工程をそれぞれ示している。
【図4】従来例である引戸の取り付け状態を示した断面図。
【図5】従来例である気密部材を有する引戸を示した斜視図であって、(a)は引戸が非閉状態、(b)は引戸が閉状態の要部をそれぞれ示している。
【符号の説明】
【0022】
1 上レール
2 戸首部材
3 床面
4 下レール
5 走行部材
6 引戸本体
7 上端部
8 端部
9 固定片
10 側端面
11 ネジ
12 基体部
13 戸首部
14 端部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方に開口した凹状の上レールに沿って摺動する戸首部材と、床面に設けられた下レールに沿って走行する走行部材とを備える引戸において、前記戸首部材は引戸本体の上端部略全長に亘ってこの引戸本体とは別体に設けられるとともに、その長手方向の両端部にて下方に延設する固定片を有し、前記戸首部材が前記上レールに嵌挿された状態で、前記引戸本体の上端部がその表裏方向に移動されて前記両固定片間に挿入され、この両固定片が前記引戸本体の両側端面にネジで固定されることにより、前記引戸本体の上端部と前記戸首部材とが結合されるようになしたことを特徴とする引戸。
【請求項2】
前記戸首部材は、引戸本体の上端部に取り付けられる基体部と、上レールに嵌挿される戸首部とからなり、この基体部は帯状金属板で形成されてその長手方向の両端部に下方へ折曲した前記固定片を有し、同基体部の上面にて前記戸首部が固着されていることを特徴とする請求項1に記載の引戸。
【請求項3】
請求項1又は2記載の引戸の施工方法であって、戸首部材を上レールに嵌挿し、その後、引戸本体の上端部を表裏方向に移動させて両固定片間に挿入し、この両固定片を前記引戸本体の両側端面にネジで固定することにより、前記引戸本体の上端部と前記戸首部材とを結合することを特徴とする引戸の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−127366(P2009−127366A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−305976(P2007−305976)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】