説明

引戸納め構造及び引戸納め構造の施工方法

【課題】戸袋に収納された引戸を閉鎖する際における引戸の操作性を向上し得るとともに見栄えを向上し得る引戸納め構造及び引戸納め構造の施工方法を提供する。
【解決手段】開口枠1に左右方向に沿ってスライド自在に引戸30を建て付け、全開させた状態における前記引戸を戸袋6内に収納して納める引戸納め構造であって、前記戸袋の戸袋口6aを形成するように、該戸袋を区画する前後両側の壁体4,4の戸袋口側の側端部4a,4aに沿って前後に間隔を空けて一対の中方立14,14をそれぞれに設け、これら一対の中方立の互いに対向する側端部15,15の高さ方向途中位置に、互いに向き合う方向に開口する手先挿入用切欠部16,16をそれぞれに設け、かつ、これら一対の中方立のそれぞれに、前記手先挿入用切欠部に沿う形状とされて手先挿入用凹所29,29を形成するとともに該手先挿入用切欠部を覆うカバー材20,20を取り付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全開させた状態における引戸を戸袋内に収納して納める引戸納め構造及び引戸納め構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、開口枠に左右方向に沿ってスライド自在に引戸を建て付け、全開させた状態における上記引戸を戸袋内に収納して納めるいわゆる戸袋納めの引戸の納め構造が知られている。このような戸袋納め構造においては、引戸を全開させた状態では、引戸が戸袋内に収納されるため、該引戸を閉鎖させる際における引戸の操作がし難いという問題があった。
下記特許文献1では、引戸によって開閉される開口部側の戸袋の縁部に、長手方向に沿って切欠段部を設けることで、引戸の建て付けを容易とした引戸ユニットが提案されている。また、この引戸ユニットは、上記切欠段部を隠すカバー部材を備えており、このカバー部材に、引戸の引手位置に合わせて切欠凹所を設けた構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−196277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された引戸ユニットでは、引戸によって開閉される開口部側の戸袋の縁部の長手方向に沿ってカバー部材が設けられるため、該カバー部材が目立ち易く、戸袋の縁部のその他の部位との違和感が生じ易いという問題があった。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、戸袋に収納された引戸を閉鎖する際における引戸の操作性を向上し得るとともに見栄えを向上し得る引戸納め構造及び引戸納め構造の施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る引戸納め構造は、開口枠に左右方向に沿ってスライド自在に引戸を建て付け、全開させた状態における前記引戸を戸袋内に収納して納める引戸納め構造であって、前記戸袋の戸袋口を形成するように、該戸袋を区画する前後両側の壁体の戸袋口側の側端部に沿って前後に間隔を空けて一対の中方立をそれぞれに設け、これら一対の中方立の互いに対向する側端部の高さ方向途中位置に、互いに向き合う方向に開口する手先挿入用切欠部をそれぞれに設け、かつ、これら一対の中方立のそれぞれに、前記手先挿入用切欠部に沿う形状とされて手先挿入用凹所を形成するとともに該手先挿入用切欠部を覆うカバー材を取り付けたことを特徴とする。
【0007】
本発明においては、前記カバー材に、前記中方立の戸先側側面における前記手先挿入用切欠部に沿う縁部を覆う側面縁カバー部を設けてもよい。
また、本発明においては、前記壁体のそれぞれを、複数枚のボードを前後に重ね合わせるようにして形成されるものとし、前記カバー材の壁体側の側端部に、前記戸袋側に面して設けられる内側ボードの戸袋口側の側端部に当接されてこの内側ボードを位置決めする位置決め突片部を設けてもよい。
また、本発明においては、前記ボードを、石膏ボードとしてもよい。
また、本発明においては、前記カバー材によって形成される前記手先挿入用凹所を前記戸袋の戸尻側に向けて延出させるように、前記カバー材の左右方向に沿う寸法を、前記中方立の左右方向に沿う寸法よりも大きく形成してもよい。
また、本発明においては、前記引戸の戸先側端部の前後面のそれぞれに、前後方向に向けて開口する凹状の引手を当該引戸の高さ方向途中位置に設け、前記中方立の手先挿入用切欠部を、この引手の高さ位置に対応した高さ位置に設けてもよい。
【0008】
また、本発明に係る引戸納め構造の施工方法は、前記壁体のそれぞれを、複数枚のボードを前後に重ね合わせるようにして形成されるものとし、前記カバー材の壁体側の側端部に、前記戸袋側に面して設けられる内側ボードの戸袋口側の側端部に当接されてこの内側ボードを位置決めする位置決め突片部を設けた引戸納め構造の施工方法であって、前記開口枠が設置される開口部の左右方向略中央に前記一対の中方立を施工した後、これら一対の中方立のそれぞれの前記手先挿入用切欠部に取り付けられた前記カバー材の位置決め突片部に前記内側ボードの戸袋口側の側端部を当接させて位置決めして該内側ボードを施工し、次いで、該内側ボードの外側に、前記壁体を構成する外側のボードを重ね合わせるようにして施工することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上述のような構成としたことで、戸袋に収納された引戸を閉鎖する際における引戸の操作性を向上させることができるとともに見栄えを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(a)〜(c)は、いずれも本発明の一実施形態に係る引戸納め構造の一例を模式的に示し、(a)は、図2(a)におけるX1−X1線矢視に対応させた一部破断概略横断面図、(b)は、図2(b)におけるX2−X2線矢視に対応させた一部破断概略横断面図、(c)は、図2(b)におけるX3−X3線矢視に対応させた一部破断概略横断面図である。
【図2】(a)、(b)は、いずれも同引戸納め構造を模式的に示す概略正面図である。
【図3】図2(b)におけるY−Y線矢視に対応させた一部破断概略縦断面図である。
【図4】(a)、(b)は、いずれも同引戸納め構造に用いられる中方立の一例を模式的に示し、(a)は、一部破断概略分解斜視図、(b)は、一部破断概略斜視図である。
【図5】(a)〜(c)は、いずれも同引戸納め構造の施工手順の一例を模式的に示し、それぞれ図1(c)に対応させた一部破断概略横断面図である。
【図6】(a)、(b)は、いずれも本発明の他の実施形態に係る引戸納め構造に用いられる中方立の一例を模式的に示し、(a)は、一部破断概略分解斜視図、(b)は、一部破断概略斜視図、(c)は、同引戸納め構造の施工手順の一例を模式的に示し、図7(a)におけるZ2方向から見た状態に対応させた一部破断概略正面図である。
【図7】(a)、(b)は、いずれも同施工手順の一例を模式的に示し、それぞれ図5(a)、(c)に対応させた一部破断概略横断面図、(c)は、同引戸納め構造を模式的に示し、図1(c)に対応させた一部破断概略横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
なお、一部の図では、他図に付している詳細な符号の一部を省略している。
また、以下の各実施形態では、図1(c)に示すZ1方向から見た状態を基準として、図1(c)における上側を後方、下側を前方とし、また、その他の方向を原則的に説明する。
【0012】
図1〜図5は、第1実施形態に係る引戸納め構造及びこの引戸納め構造の施工手順(施工方法)の一例について説明するための概念的な説明図である。
本実施形態に係る引戸納め構造は、図1及び図2に示すように、開口枠(戸枠)1に、左右方向に沿ってスライド自在に引戸30を建て付け、全開させた状態(図1(b)及び図2(b)に示す状態)における引戸30を、戸袋6内に収納して納める構造とされている。また、本実施形態では、一枚からなる片引き式の引戸30を戸袋6内に収納して納める引戸納め構造を例示している。
【0013】
開口枠1は、住居等の建物内に設けられた開口部2の内周に沿わせるようにして配設された上枠(鴨居)10と、この上枠10の長手方向(左右方向)両側端部にそれぞれの上端部が連結固定された一対の縦枠12,13とを備えている。一対の縦枠12,13は、引戸30の戸先側に配設された戸先側縦枠12と、引戸30の戸尻側に配設された戸尻側縦枠13とからなる。また、開口枠1は、開口部2の左右方向略中央で、これら一対の縦枠12,13間に配設された一対の中方立(中間縦枠)14,14を備えている。
開口部2は、柱材や間柱、横桟(まぐさ)、飼木、床下地(または床材)などの下地(枠下地)3によって正面視して略矩形状に形成されている。なお、下地3としては木造下地に限られず、スタッド等の鋼製下地としてもよい。
開口枠1の周囲(図例では、開口枠1の上方及び左右)には、上記同様の下地(壁下地)3の前面及び後面のそれぞれに沿わせるようにしてボード5が配設され、建物の構造壁や間仕切壁、垂れ壁となる内壁体が形成されている(図3も参照)。
【0014】
戸袋6は、図1に示すように、戸袋口6aを形成するように前後方向(見込み方向)に間隔を空けて設けられた一対の中方立14,14と、戸尻側縦枠13とによって、その左右方向(引戸30の戸幅方向と同方向)両側が区画されている。
また、戸袋6は、これら中方立14,14と、これら中方立14,14のそれぞれの戸尻側に設けられた前後両側の袖壁状の壁体4,4とによって、その前後方向(引戸30の戸厚方向と同方向)両側が区画されている。また、これら前後両側の壁体4,4は、本実施形態では、複数枚のボード40,41を前後に重ね合わせるようにしてそれぞれ形成されている。図例では、戸袋6側に面して設けられた内側ボード40と、この内側ボード40の外側に設けられた外側ボード41とからなる二枚のボード40,41によって、各壁体4,4を形成した例を示している。なお、外側ボード41は、戸袋6を区画する壁体4,4の寸法(上下寸法及び左右寸法)に対応させたものとしてもよいが、図例では、上記した内壁体のボード5の一部を構成するように、戸袋6を区画する壁体4,4の寸法よりも大きい寸法とした外側ボード41を例示している。
また、戸袋6は、上方側が上枠10によって区画され、下方側が下枠または床面(図例では、床面)によって区画されている。
戸袋6の戸先側には、引戸30によって開放または閉鎖される出入口7が形成されている。この出入口7は、その左右方向両側が戸先側縦枠12及び一対の中方立14,14によって区画され、その上下方向両側が上枠10及び下枠または床面(図例では、床面)によって区画されている。
【0015】
上枠10は、その下面側に、引戸30のスライド移動を案内する上吊レールや案内溝等の上ガイド部11(図3参照)を長手方向に沿って有している。本実施形態では、図3に示すように、上ガイド部としての上吊レール11を上枠10に設けた例を示している。
また、この上枠10は、戸先側部位(左側部位)が、開口部2の戸先側に形成される内壁体の壁厚に対応させて幅広部とされ、戸尻側部位(右側部位)が、戸袋6を区画する前後両側の壁体4,4の壁厚を加味して上記幅広部よりも幅の狭い幅狭部とされている(図5(a)も参照)。なお、この上枠10の幅広部と幅狭部とを区切る長手方向略中央部に、一対の中方立14,14のそれぞれの上端部が係合する切欠部等を設けるようにしてもよい。
【0016】
戸先側縦枠12は、上枠10の上記幅広部に応じた幅寸法(壁厚方向の幅寸法、見込み方向の寸法)とされ、開口部2の戸先側の内側面に沿うように上下方向に沿って配設される。この戸先側縦枠12には、引戸30の戸先側端部33を受け入れる戸じゃくり溝が上下方向に沿って形成されている。
戸尻側縦枠13は、上枠10の上記幅狭部に応じた幅寸法(壁厚方向の幅寸法)とされ、開口部2の戸尻側の内側面に沿うように上下方向に沿って配設される。この戸尻側縦枠13の戸先側面の上下方向の適所に、引戸30の戸尻側端部35が当接または弾接するストッパー部や緩衝体を設けるようにしてもよい。
【0017】
一対の中方立14,14は、それぞれの戸尻側側面(戸尻側縦枠13側に向く面)18,18が、戸袋6を区画する前後両側の壁体4,4の戸袋口6a側の側端部4a,4aに当接されるようにして、これら側端部4a,4aに沿ってそれぞれ設けられている。
また、これら中方立14,14は、互いに対向する側端部(対向側端部(見込み方向の内方側端部))15,15と引戸30の前面及び後面との間に当該引戸30の開閉の際に必要となる僅かなクリアランスが形成されるように配置され、これら対向側端部15,15のそれぞれが引戸30の前面及び後面に近接対面するように配置される。このクリアランスは、引戸30の開閉の際における引戸30と中方立14,14との接触を防止する観点や、戸袋6内を見え難くする観点、戸袋6への異物等の侵入を抑制する観点等から一般的には5mm〜10mm程度とされている。また、これら一対の中方立14,14の左右方向に沿う寸法(見付け方向の寸法、厚さ寸法)は、一般的には20mm〜30mm程度とされている。
【0018】
上記構成とされた開口枠1は、上枠10の長手方向の各端面を、各縦枠12,13の上端部内側面に突き合わせ、これら縦枠12,13の上端部の外側面から釘やねじ等の固定止具を捩じ込んで、上枠10と各縦枠12,13とを連結するようにしてもよい。また、上枠10の上記切欠部等に一対の中方立14,14のそれぞれの上端部を係合させ、釘やねじ等の固定止具を捩じ込んでこれら中方立14,14を上枠10に連結して、開口枠1を組み付けるようにしてもよい。
また、このように組み付けられた開口枠1は、図1〜図3に示すように、開口部2の内周面に沿わせるようにして固定される。図例では、開口部2の内周天面を構成するまぐさや横桟などの枠下地3に沿わせるようにして上枠10を固定し、開口部2の内周両側面を構成する柱材や飼木などの枠下地3,3に沿わせるようにして一対の縦枠12,13を固定した例を示している。また、一対の中方立14,14のそれぞれの下端部は、床下地(または床材)などの枠下地3に固定するようにしてもよい。
【0019】
引戸30は、上記構成とされた開口枠1にスライド自在に建て付けられる。本実施形態では、当該引戸30の上端部の両側端部にランナー部材31,31を連結固定し、これらランナー部材31,31が、上枠10の上吊レール11に引戸30の戸幅方向に沿って走行自在に支持され、当該引戸30が上吊式で開閉される構成とされている。
また、図例では、床面に、引戸30のスライド移動をガイドする下ガイド部としてのガイドピン19を設け、引戸30の下端面に、このガイドピン19を受け入れるガイド凹溝32を設けた例を示している。
【0020】
この引戸30は、これら上下のガイド部11,19によってガイドされ、図1(a)及び図2(a)に示すように、出入口7を閉鎖した全閉状態と、図1(b)、(c)及び図2(b)に示すように、出入口7を開放した全開状態との間をスライド自在とされている。また、引戸30は、全閉状態では、当該引戸30の戸尻側端部35と一対の中方立14,14とが前後方向で重なり合うように配置される一方、全開状態では、当該引戸30の戸先側端部33と一対の中方立14,14とが前後方向で重なり合うように配置される。本実施形態では、全開状態とされた引戸30の全体を、戸袋6内に収納し得る構造としている。図例では、全開状態において、引戸30の戸先側端面と一対の中方立14,14の戸先側側面(見込み面、戸先側縦枠12に対向する面)17,17とが略同一平面状となるように引戸30を設けた例を示している。なお、全開状態において、引戸30の戸先側端部33が僅かに戸袋6から突出するような態様としてもよく、または、引戸30の戸先側端面が各中方立14,14の戸先側側面17,17よりも僅かに戸尻側(戸袋6の収納方向奥方側)に位置するような態様としてもよい。
【0021】
また、引戸30の戸先側端部33の前面及び後面のそれぞれには、前後方向に向けて開口する凹状の引手34,34が設けられている。これら引手34,34は、引戸30の前面及び後面のそれぞれに引戸30の厚さ方向に形成された凹部にそれぞれ嵌め込まれた引手部材によって形成されており、当該引戸30の前面及び後面のそれぞれにおいて凹むような形状とされている。また、これら引手34,34は、本実施形態では、図1(c)及び図2(b)に示すように、引戸30が全開状態において、中方立14と前後方向で重合しないように、中方立14よりも僅かに戸尻側に位置するように設けられている。
また、これら引手34,34は、当該引戸30の高さ方向の全長に亘って設けられておらず、高さ方向途中位置に設けられている。これら引手34,34が設けられる高さ位置やこれら引手34,34の上下寸法等は、操作性等の観点から適宜、設定するようにしてもよい。
【0022】
なお、開口枠1としては、図例のように下枠を備えない上吊式の開口枠(三方枠)に限られず、引戸の下端部に戸車を設け、この戸車をガイドするレールを備えた下枠を更に備えた開口枠(四方枠)としてもよい。この場合は、上枠10の上ガイド部を適宜、変形し、引戸30の上端部に、ランナー部材に代えて、案内片や案内ピン等を設けるようにしてもよい。また、図例のような固定枠に限られず、ケーシング額縁を備えたいわゆるケーシング枠を開口枠として採用するようにしてもよい。
また、開口枠1を構成する各枠材10,12,13,14,14は、木質系材料から形成されたものとしてもよい。木質系材料としては、合板やLVL(単板積層材)等の木質積層板、パーティクルボード等の木質ボード、またはインシュレーションボードやMDF(中密度繊維板)等の木質繊維板などを採用するようにしてもよい。または、上記各枠材は、例えば、合成樹脂系材料に、木粉や無機フィラー、相溶化剤、着色剤などを所定の含有割合で含有させた木粉(木質)・プラスチック複合材(WPC)や、その他の合成樹脂系材料、金属系材料等から形成されたものとしてもよい。
【0023】
また、戸袋6を区画する前後両側の壁体4,4を形成する各ボード40,41は、無垢材や上記同様の木質系材料、または無機質系材料、合成樹脂系材料等を板状に加工したものとしてもよい。また、内側ボード40の戸袋6側に向く面(内側面)や、外側ボード41の反戸袋6側に向く面(外側面)に、合成樹脂化粧シートや化粧紙、クロス等の化粧シートまたは突板等の表面化粧材を貼着するようにしてもよい。
本実施形態では、これらボード40,41を、石膏ボードからなるものとしている。
【0024】
上記したように、戸袋6の戸袋口6aを形成する一対の中方立14,14と引戸30の前面及び後面との間には、図1(a)、(b)に示すように、僅かなクリアランスが形成される構造とされている。このような構造では、図1(b)に示す全開状態とした引戸30を戸袋6内から引き出す際、つまり、引戸30を閉鎖する際における操作がし難いという傾向がある。
そのため、本実施形態では、一対の中方立14,14の対向側端部15,15のそれぞれに、図1(c)及び図3に示すように、手先挿入用切欠部16,16を設けている(図4(a)も参照)。また、これら一対の中方立14,14のそれぞれに、それぞれの手先挿入用切欠部16,16を覆うカバー材20,20を取り付けている。
【0025】
これら手先挿入用切欠部16,16は、それぞれの中方立14,14の対向側端部15,15の高さ方向途中位置において、互いに向き合う方向に開口するように形成されている。また、これら手先挿入用切欠部16,16は、図3に示すように、引戸30の引手34,34の高さ位置に対応した高さ位置に設けられている。
この手先挿入用切欠部16は、中方立14を、その厚さ方向(見付け方向、左右方向)の全体に亘って切り欠くようにして形成されており、図3に示すように、中方立14を戸先側から見て、略矩形状の凹所空間となるように形成されている。
【0026】
また、この手先挿入用切欠部16の深さ寸法(前後寸法)は、後記するカバー材20によって形成される手先挿入用凹所29を利用した引戸30の操作性の観点や、中方立14自体の強度を確保する観点等から適宜、設定するようにしてもよい。例えば、上記したような観点等からは、手先挿入用切欠部16の深さ寸法を、中方立14の前後寸法(見込み方向の寸法)の1/4〜3/4程度とすることが好ましく、図例では、中方立14の前後寸法の2/5程度とした例を示している。また、この手先挿入用切欠部16の上下寸法は、引戸30の引手34の上下寸法と略同寸法としてもよく、または、引戸30の引手34の上下寸法よりも僅かに小さい寸法若しくは僅かに大きい寸法としてもよい。
【0027】
カバー材20は、図3及び図4に示すように、手先挿入用切欠部16の内周面(引戸30側に向く面並びに上方側及び下方側に向く面)に沿う形状とされて手先挿入用凹所29を形成するとともに手先挿入用切欠部16を覆う切欠カバー部21を備えている。この切欠カバー部21の左右寸法は、本実施形態では、中方立14の見付け方向の寸法と略同寸法とされている(図1(c)も参照)。
また、本実施形態では、カバー材20は、中方立14の戸先側側面17における手先挿入用切欠部16に沿う縁部(切欠部側縁部)17aを覆う側面縁カバー部22を備えている。この側面縁カバー部22は、切欠カバー部21の戸先側に連なるように設けられている。
【0028】
また、本実施形態では、カバー材20は、中方立14の対向側端面15aにおける手先挿入用切欠部16の上下の縁部15b,15bを覆う端面縁カバー部23,23を備えている。これら端面縁カバー部23,23は、切欠カバー部21の上下に連なるように設けられている。
これら側面縁カバー部22及び端面縁カバー部23,23は、切欠カバー部21の戸先側及び上下の周縁から中方立14の戸先側側面17及び対向側端面15aに沿わせるようにして、戸先側及び上下に向けて延出するように形成されている。これら側面縁カバー部22及び端面縁カバー部23,23の延出寸法は、カバー材20と中方立14の手先挿入用切欠部16との隙間を覆う観点や見栄えの観点等から0.5mm〜10mm程度としてもよい。
【0029】
また、カバー材20の壁体4側(戸尻側)の側端部には、戸袋6側に面して設けられる内側ボード40の戸袋口6a側(戸先側)の側端部40aに当接されてこの内側ボード40を位置決めする位置決め突片部25が設けられている(図5も参照)。この位置決め突片部25は、図5に示すように、その反戸袋6側に向く面(外側面)が内側ボード40の戸袋口6a側の側端部40aの戸袋6側に向く面(内側面)に当接される。この位置決め突片部25は、内側ボード40の側端部40aの前後方向(ボード厚さ方向)位置を位置決めする際に位置決め部として機能する。
また、この位置決め突片部25は、切欠カバー部21の戸尻側の縁部から戸袋6の内方側(戸袋6の前後方向中心側)に向けて突出するように形成された突片部24の突出方向先端部から戸尻側に向けて突出するように形成されている。図例では、切欠カバー部21の戸尻側の縁部に、横断面略L字状片部を連なるように形成して、これら突片部24及び位置決め突片部25を形成している。この位置決め突片部25の突片部24からの突出寸法は、内側ボード40の厚さ方向への位置決めが可能なように適宜、設定するようにしてもよい。
【0030】
突片部24は、図5に示すように、その戸尻側の面が内側ボード40の戸袋口6a側の端面に近接対面または当接するように配置され、内側ボード40の戸袋口6a側の端面を覆うボード端面カバー部として機能する。この突片部24の突出寸法は、図例では、内側ボード40のボード厚さ寸法と略同寸法とされている。また、この突片部24は、その突出方向先端部に設けられた位置決め突片部25が中方立14の対向側端面15a(図4参照)よりも前後方向において外側(中方立14の見付け面側)に位置するように形成されている。この突片部24の突出寸法は、位置決め突片部25と引戸30との間に、上記クリアランスよりも大きく、かつ成人の手指の挿入が可能な手先挿入用凹所29(図1(c)参照)が形成されるように、適宜、設定するようにしてもよい。例えば、位置決め突片部25と引戸30との間の前後寸法を、15mm〜30mm程度としてもよい。
これによれば、上記のように、引戸30の引手34を、引戸30が全開状態において、中方立14よりも僅かに戸尻側に位置するように設けた構造とした場合にも、引手34に手指等を掛け易くなる。
【0031】
上記構成とされた各カバー材20,20を各中方立14,14に取り付けた状態では、図1(c)及び図3に示すように、これらカバー材20,20によって、引戸30の前面側及び後面側に、手先挿入用凹所29,29がそれぞれ形成される。これら手先挿入用凹所29,29は、これらが設けられた部位において戸袋口6aを拡大させるようにして、戸先側に向けて開口するとともに、互いに向き合う方向に開口するような空間を形成している。
この手先挿入用凹所29の寸法は、引戸30との間に、成人の手指等の挿入が可能で、全開状態とされた引戸30の戸先側端部33を手指で挟んで引き出し可能な空間が形成されるように適宜、設定するようにしてもよい。例えば、切欠カバー部21の引戸30側に向く面と引戸30との間の前後寸法を、15mm〜45mm程度としてもよい。
【0032】
なお、カバー材20は、木粉(木質)・プラスチック複合材(WPC)や、その他の合成樹脂系材料、金属系材料等から上記形状に形成されたものとしてもよい。
また、カバー材20の上記した各部は、比較的に薄く形成するようにしてもよく、例えば、0.5mm〜2mm程度としてもよい。
また、カバー材20の中方立14への取り付けは、接着剤や粘着テープ(粘着材)等によって取り付けるようにしてもよく、これに代えてまたは加えて、釘やねじ等の固定止具によって取り付けるようにしてもよい。
【0033】
上記構成とされた本実施形態に係る引戸納め構造によれば、戸袋6に収納された引戸30を閉鎖する際における引戸30の操作性を向上させることができるとともに見栄えを向上させることができる。
つまり、戸袋6の戸袋口6aを形成するように設けられる一対の中方立14,14の対向側端部15,15の高さ方向途中位置に、手先挿入用切欠部16,16をそれぞれに設け、これを覆うカバー材20,20をそれぞれに取り付けた構造としている。従って、前後の壁体4,4に対面した状態におけるこれら中方立14,14の外側端面(見付け面)には、手先挿入用切欠部16,16及びこれを覆うカバー材20,20が露出せず、開口枠1としての中方立14,14の外観を阻害することがない。また、手先挿入用切欠部16は、カバー材20で覆われるため、見栄えを向上させることができる。
また、中方立14を、木質系材料や木粉(木質)・プラスチック複合材(WPC)から形成されたものとし、切削により手先挿入用切欠部16を形成した場合にも、切削面をカバー材20によって容易に覆い隠すことができ、簡易な構造で見栄えを向上させることができる。
さらに、カバー材20が取り付けられて形成された手先挿入用凹所29を介して、戸袋6に収納された引戸30を、容易に引き出すことができ、戸袋6に収納された引戸30を閉鎖する際における引戸30の操作性を向上させることができる。また、引戸30との間に手先挿入用凹所29が形成されるので、この手先挿入用凹所29が設けられた部位では、引戸30を開放させる際に生じる傾向がある中方立14と引戸30との間における手指等の挟み込み(指詰め)を抑制することもできる。
【0034】
さらにまた、本実施形態では、カバー材20に、中方立14の戸先側側面17の切欠部側縁部17aを覆う側面縁カバー部22を設けている。従って、中方立14の戸先側側面17側において、手先挿入用切欠部16とカバー材20(切欠カバー部21)との間に隙間があるような場合にも側面縁カバー部22によって覆い隠すことができ、見栄えをより向上させることができる。
また、カバー材20を中方立14に取り付ける際に、カバー材20の中方立14に対する左右方向(見付け方向)取り付け位置の位置決めとして側面縁カバー部22を利用することもでき、施工性を向上させることができる。
【0035】
また、本実施形態では、カバー材20に、中方立14の対向側端面15aにおける手先挿入用切欠部16の上下の縁部15b,15bを覆う端面縁カバー部23,23を設けている。従って、中方立14の対向側端面15a側において、手先挿入用切欠部16の上下縁とカバー材20(切欠カバー部21)との間に隙間があるような場合にも、これら端面縁カバー部23,23によって覆い隠すことができ、見栄えをより向上させることができる。
【0036】
さらに、本実施形態では、戸袋6を区画する前後両側の壁体4,4のそれぞれを、複数枚のボード40,41を前後に重ね合わせるようにして形成している。従って、戸袋6側に面する内側ボード40によって戸袋6の内側面が形成されるので、例えば、桟材や胴縁等の軸組みによって戸袋6の内側を形成するものと比べて、すっきりとした印象となり、見栄えが良い。また、戸袋6の内側面が平滑となるので、上記軸組み構造とした場合と比べて、該内側面の高さ方向途中に塵埃等が溜まったりするようなことがなく、付着し難くなる。
また、カバー材20の壁体4側の側端部に、内側ボード40の戸袋口6a側の側端部40aに当接されてこの内側ボード40を位置決めする位置決め突片部25を設けている。従って、戸袋6を区画する壁体4を構成する内側ボード40の位置決めを容易に行うことができ、施工性を向上させることができる。
【0037】
さらに、本実施形態では、内側ボード40の戸袋口6a側の端面を覆うボード端面カバー部として機能する突片部24を設けている。従って、上記のように複数枚のボード40,41によって戸袋6を区画する前後両側の壁体4,4を形成する態様とした場合にも、内側ボード40の端面が戸先側から見た際に露出せず、見栄えを向上させることができる。
さらにまた、本実施形態では、これらボード40,41を、石膏ボードからなるものとしているので、戸袋6を区画する前後両側の壁体4,4の耐火性、断熱性、遮音性を向上させることができる。
【0038】
また、本実施形態では、引戸30の戸先側端部33の前後面のそれぞれに、凹状の引手34,34を引戸30の高さ方向途中位置に設け、各中方立14,14の手先挿入用切欠部16,16を、引手34,34の高さ位置に対応した高さ位置に設けている。従って、引手34の高さ位置に対応した高さ位置に手先挿入用凹所29が形成されることとなるため、引手34が凹状であることと相俟って、戸袋6に収納された引戸30の引手34に手指を掛け易くなる。従って、戸袋6に収納された引戸30を閉鎖する際における引戸30の操作性をより向上させることができる。
【0039】
次に、上記構成とされた引戸納め構造の施工手順(施工方法)の一例について説明する。
まず、図5(a)に示すように、上述のように組み付けた開口枠1を、開口部2に設置する。つまり、開口部2の上側に上枠10、左右両側に各縦枠12,13、左右方向略中央に一対の中方立14,14を施工する。
次いで、図5(a)、(b)に示すように、戸袋6の前後両側を区画する壁体4,4(図1等参照)のそれぞれの内側ボード40,40を施工する。この際、各内側ボード40,40の戸袋口6a側の側端部40a,40aを各カバー材20,20の位置決め突片部25,25に当接させることで、これら内側ボード40,40の厚さ方向の位置決めを容易に行うことができる。また、図例では、各内側ボード40,40の戸尻側の側端部を戸尻側縦枠13の外側面に当接させて位置決めした例を示している。これら内側ボード40,40は、上枠10や戸尻側縦枠13、各中方立14,14、さらには床下地(または床材)等に釘やねじ等の固定止具によって固定するようにしてもよい。
【0040】
次いで、図5(c)に示すように、各内側ボード40,40の外側面に、左右方向に間隔を空けて複数本の胴縁等の下地42,42を上下方向に沿わせるようにして固定する。これら下地42,42は、内側ボード40と同様、上枠10や戸尻側縦枠13、各中方立14,14、さらには床下地(または床材)等に釘やねじ等の固定止具によって固定するようにしてもよい。図例では、これら下地42,42を、これらの外側面が下地(壁下地)3の前面及び後面と略同一平面状となるように設けた例を示している。
そして、各内側ボード40,40のそれぞれの外側に、下地42,42を介して、外側ボード41,41を重ね合わせるようにしてそれぞれ施工する。これら外側ボード41,41は、下地42,42や、上記した下地(壁下地)3等に釘やねじ等の固定止具によって固定するようにしてもよい。
次いで、図1〜図3に示すように、引戸30を開口枠1に建て付けることで、本実施形態に係る引戸納め構造を施工するようにしてもよい。
【0041】
上記構成とされた本実施形態に係る引戸納め構造の施工方法によれば、上述のように、戸袋6を区画する壁体4を構成する内側ボード40の位置決めを容易に行うことができ、施工性を向上させることができる。
なお、上記施工手順は一例であり、各部材及び各部の機能を阻害しない限りにおいて別手順でなされるようにしてもよい。例えば、上記した例では、内側ボード40を施工した後に、外側ボード41を施工した例を示しているが、これら複数枚のボード40,41を枠組みした芯材の表裏に固定して壁下地体を形成し、この壁下地体を開口枠1等に対して固定して設置するようにしてもよい。また、戸袋6を区画する前後両側の壁体4,4を施工した後に、これら壁体4,4の戸袋口6a側の側端部4a,4aに沿わせるようにして、一対の中方立14,14を施工する態様としてもよい。この場合は、カバー材20の位置決め突片部25を壁体4に対する中方立14の位置決めとして機能させるようにしてもよい。
【0042】
次に、本発明に係る他の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図6及び図7は、第2実施形態に係る引戸納め構造及びこの引戸納め構造の施工手順(施工方法)の一例について説明するための概念的な説明図である。
なお、上記第1実施形態との相違点について主に説明し、同様の構成については、同一符号を付し、その説明を省略または簡略に説明する。また、同様の施工手順についてもその説明を省略または簡略に説明する。
【0043】
本実施形態では、カバー材20A及び戸袋6を区画する前後両側の壁体4A,4Aの構成が上記第1実施形態とは主に異なる。
カバー材20Aは、図7(c)に示すように、当該カバー材20Aによって形成される手先挿入用凹所29Aを戸袋6の戸尻側に向けて延出させるように、左右方向に沿う寸法が、中方立14の厚さ寸法よりも大きく形成されている。図例では、中方立14の手先挿入用切欠部16を覆う切欠カバー部21Aを、戸尻側に延出させるようにして、この切欠カバー部21Aの左右方向に沿う寸法を、中方立14の厚さ寸法よりも大きく形成した例を示している(図6も参照)。この切欠カバー部21Aの左右方向に沿う寸法は、引戸30の引手34に手先挿入用凹所29Aの少なくとも一部が前後方向で重合し、手先挿入用凹所29Aを介して引手34に手指が掛けられるような寸法としてもよい。
【0044】
上記構成によれば、中方立14の厚さ寸法が20mm〜30mm程度の比較的に小さい寸法の場合にも、戸袋6に収納された引戸30を閉鎖する際における引戸30の操作性をより向上させることができる。
また、上記のように切欠カバー部21Aの左右方向に沿う寸法を、手先挿入用凹所29Aを介して引手34に手指が掛けられるような寸法とすることで、引手34をして引戸30を引き出すことができ、引戸30を閉鎖する際における引戸30の操作性を極めて向上させることができる。また、これによれば、引戸30とカバー材20Aの位置決め突片部25Aまたは戸袋6の内面(図例では内側ボード40)との間に手指の差し入れスペースがないような場合にも、戸尻側に延出させた手先挿入用凹所29Aを利用して、引手34に手指を掛けることができる。
【0045】
カバー材20Aの切欠カバー部21Aの戸尻側の縁部には、上記同様の突片部24が設けられている。
また、壁体4Aを構成する内側ボード40Aの戸袋口6a側の側端部40aには、図6(c)に示すように、カバー材20Aの突片部24及び切欠カバー部21Aの戸尻側の延出させた部位(延出部位)を受け入れる切欠凹所40bが形成されている(図7も参照)。
また、本実施形態では、カバー材20Aの位置決め突片部25Aを、この内側ボード40Aの内側面における切欠凹所40bに沿う縁部を覆う形状としている。つまり、位置決め突片部25Aは、突片部24の突出方向先端部に連なるように形成されるとともに、切欠カバー部21Aの延出部位の上下の縁部に連なるように形成されており、正面視して(図7(a)のZ2方向から見て)、図6(c)に示すように、戸先側に向けて開口するような略コ字状(略倒U字状)に形成されている。
位置決め突片部25Aをこのような構成とすることで、上記のように内側ボード40Aに切欠凹所40bを形成した場合にも、戸先側(戸袋口6a側)から見た状態では、内側ボード40Aの切欠凹所40bが露出せず、見栄えを向上させることができる。
【0046】
また、本実施形態では、図6(a)、(b)に示すように、カバー材20Aに、中方立14の戸尻側側面18における手先挿入用切欠部16の上下の縁部の内側部位を覆う戸尻側縁カバー部26,26を設けている。このような戸尻側縁カバー部26,26を設けることで、上記した側面縁カバー部22とともに、中方立14に対するカバー材20Aの左右方向の位置決めをより容易に行うことができる。なお、これら戸尻側縁カバー部26,26を設けないようにしてもよい。
【0047】
次に、上記構成とされた引戸納め構造の施工手順(施工方法)の一例について説明する。
まず、上記同様、図7(a)、(b)に示すように、開口枠1を開口部2に設置し、戸袋口6a側の側端部40a,40aに切欠凹所40b,40bをそれぞれ設けた内側ボード40A,40Aを施工する(図6(c)も参照)。この際、内側ボード40Aの切欠凹所40bに、カバー材20Aの突片部24及び切欠カバー部21Aの延出部位を受け入れさせるようにして、内側ボード40Aを施工する。また、この際、上記第1実施形態と同様、各内側ボード40A,40Aの戸袋口6a側の側端部40a,40a(図6(c)参照)を各カバー材20A,20Aの位置決め突片部25A,25Aに当接させることで、これら内側ボード40A,40Aの厚さ方向の位置決めを容易に行うことができる。
図例では、これら内側ボード40A,40Aを、それぞれの外側面が、下地(壁下地)3の前面及び後面と略同一平面状となるように固定した例を示している。
【0048】
次いで、図7(b)、(c)に示すように、各内側ボード40A,40Aのそれぞれの外側に、外側ボード41,41を重ね合わせるようにしてそれぞれ施工する。本実施形態では、内側ボード40Aと外側ボード41との間に下地を設けずに、内側ボード40Aの外側面に直接的に外側ボード41を固定した例を示している。これら外側ボード41,41は、内側ボード40Aに接着剤や粘着材等によって固定するようにしてもよく、また、上記同様、開口枠1の各枠材や下地(壁下地)3等に釘やねじ等の固定止具によって固定するようにしてもよい。
次いで、図7(c)に示すように、引戸30を開口枠1に建て付けることで、本実施形態に係る引戸納め構造を施工するようにしてもよい。
【0049】
上記構成とされた本実施形態に係る引戸納め構造の施工方法によっても、上記第1実施形態と同様、戸袋6を区画する壁体4を構成する内側ボード40Aの位置決めを容易に行うことができ、施工性を向上させることができる。
また、本実施形態では、内側ボード40Aと外側ボード41との間に下地を設けずに、内側ボード40Aの外側面に直接的に外側ボード41を固定する態様としているので、より施工性を向上させることができるとともに、簡易な構造となる。
なお、上記施工手順は一例であり、上記第1実施形態と同様、各部材及び各部の機能を阻害しない限りにおいて別手順でなされるようにしてもよい。
また、上記第1実施形態においても、本実施形態と同様、内側ボード40と外側ボード41との間に下地42を設けずに、内側ボード40の外側面に直接的に外側ボード41を固定する態様としてもよい。さらには、本実施形態においても、上記第1実施形態と同様の下地42を設ける態様としてもよい。これらの場合には、各部材を適宜、必要に応じて変形するようにしてもよい。
【0050】
なお、上記各実施形態では、引戸30の高さ方向途中位置に引手34を設けた例を示しているが、引戸30の高さ方向の略全体に亘って凹状の引手を設けた態様としてもよい。
また、上記各実施形態では、引戸30の引手34を、引戸30が全開状態において、中方立14よりも僅かに戸尻側に位置するように設けた構造とした例を示しているが、このような態様に限られない。例えば、引戸30が全開状態において、中方立14に引手34の少なくとも一部が前後方向で重合するような態様としてもよい。
さらに、引戸30の引手34としては、凹状のものに限られず、引戸30の前面及び後面から突出するように設けられたものとしてもよい。
【0051】
さらにまた、上記各実施形態では、カバー材20(20A)に、側面縁カバー部22、端面縁カバー部23,23、突片部24及び位置決め突片部25(25A)を設けた例を示しているが、少なくとも切欠カバー部21(21A)を備えた構成とすればよい。
また、上記各実施形態では、中方立14の手先挿入用切欠部16を、中方立14を戸先側から見て、略矩形状の凹所空間となるように形成し、カバー材20(20A)をこれに応じた形状とした例を示しているが、このような態様に限られない。例えば、手先挿入用切欠部16によって形成される凹所空間が、中方立14を戸先側から見て、略半円形状や略半長円形状、略半楕円形状、さらには略半多角形状となるように形成されたものとしてもよい。この場合は、カバー材20(20A)を、手先挿入用切欠部16の形状に応じた形状とすればよい。
【0052】
また、上記各実施形態では、戸袋6の前後両側を区画するそれぞれの壁体4,4(4A,4A)を、複数枚のボードを前後に重ね合わせるようにして形成した例を示しているが、このような態様に限られない。例えば、内側ボード40(40A)を設けずに、外側ボード41(5)の内側に桟材や胴縁等の軸組みを設け、この軸組みによって戸袋6の内側を形成する態様としてもよい。この場合は、カバー材20(20A)に、位置決め突片部25(25A)を設けないようにしてもよく、また、突片部24も設けないようにしてもよい。
さらに、上記各実施形態では、開口部2の上側に垂れ壁を形成するように開口部2を設けた例を示しているが、床面から天井面に略至る高さ寸法とされた開口部2とし、この開口部2に対して開口枠1を施工する態様としてもよい。この場合は、上枠10を天井面に沿わせるようにして設ける態様としてもよく、または、上枠10の一部若しくは全体を天井に埋め込むようにして設ける態様としてもよい。
さらにまた、上記各実施形態では、片引き式の一枚の引戸30を戸袋6に収納する引戸納め構造について例示しているが、複数枚の引戸を戸袋に収納する引戸納め構造としてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 開口枠
14 中方立
15 対向側端部(一対の中方立の互いに対向する側端部)
16 手先挿入用切欠部
17 戸先側側面
17a 切欠部側縁部(戸先側側面における手先挿入用切欠部に沿う縁部)
20,20A カバー材
22 側面縁カバー部
25,25A 位置決め突片部
29,29A 手先挿入用凹所
30 引戸
33 戸先側端部
34 引手
2 開口部
4,4A 壁体
4a 戸袋口側の側端部
40,40A 内側ボード
40a 戸袋口側の側端部
41 外側ボード
6 戸袋
6a 戸袋口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口枠に左右方向に沿ってスライド自在に引戸を建て付け、全開させた状態における前記引戸を戸袋内に収納して納める引戸納め構造であって、
前記戸袋の戸袋口を形成するように、該戸袋を区画する前後両側の壁体の戸袋口側の側端部に沿って前後に間隔を空けて一対の中方立をそれぞれに設け、これら一対の中方立の互いに対向する側端部の高さ方向途中位置に、互いに向き合う方向に開口する手先挿入用切欠部をそれぞれに設け、かつ、これら一対の中方立のそれぞれに、前記手先挿入用切欠部に沿う形状とされて手先挿入用凹所を形成するとともに該手先挿入用切欠部を覆うカバー材を取り付けたことを特徴とする引戸納め構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記カバー材には、前記中方立の戸先側側面における前記手先挿入用切欠部に沿う縁部を覆う側面縁カバー部が設けられていることを特徴とする引戸納め構造。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記壁体のそれぞれは、複数枚のボードを前後に重ね合わせるようにして形成されており、
前記カバー材の壁体側の側端部には、前記戸袋側に面して設けられる内側ボードの戸袋口側の側端部に当接されてこの内側ボードを位置決めする位置決め突片部が設けられていることを特徴とする引戸納め構造。
【請求項4】
請求項3において、
前記ボードは、石膏ボードであることを特徴とする引戸納め構造。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項において、
前記カバー材によって形成される前記手先挿入用凹所を前記戸袋の戸尻側に向けて延出させるように、前記カバー材の左右方向に沿う寸法を、前記中方立の左右方向に沿う寸法よりも大きく形成したことを特徴とする引戸納め構造。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項において、
前記引戸の戸先側端部の前後面のそれぞれには、前後方向に向けて開口する凹状の引手が当該引戸の高さ方向途中位置に設けられており、前記中方立の手先挿入用切欠部を、この引手の高さ位置に対応した高さ位置に設けたことを特徴とする引戸納め構造。
【請求項7】
請求項3に記載の引戸納め構造の施工方法であって、
前記開口枠が設置される開口部の左右方向略中央に前記一対の中方立を施工した後、これら一対の中方立のそれぞれの前記手先挿入用切欠部に取り付けられた前記カバー材の位置決め突片部に前記内側ボードの戸袋口側の側端部を当接させて位置決めして該内側ボードを施工し、次いで、該内側ボードの外側に、前記壁体を構成する外側のボードを重ね合わせるようにして施工することを特徴とする引戸納め構造の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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