説明

引留碍子用防護カバー及び引留碍子の防護構造

【課題】建造物についての作業に支障をきたすことなく、容易にかつ短時間で引留碍子の防護を行うことができる碍子用防護カバー及び引留碍子の防護構造を提供する。
【解決手段】本発明の碍子用防護カバー1は、引留碍子3を覆う筒状部10と、引込元から延びる低圧引込線2が通過可能に筒状部10の一端を覆う第一端壁11と、引留碍子3に設けられた固定部材4が通過可能に筒状部10の他端を覆う第二端壁12とを備えている。筒状部10及び両端壁11,12には、低圧引込線2を引き留めた状態で引留碍子3、低圧引込線2、及び固定部材4を筒状部10の内外に通過させる開口13が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電柱等に架設された送電線から分岐して建造物等に向けて延ばされる低圧引込線を引き留める引留碍子を防護するための引留碍子用防護カバー及び引留碍子の防護構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電柱に架設された送電線から延びる低圧引込線を建物等との間で引き留めるために引留碍子が用いられている。この引留碍子は、前記低圧引込線が巻き掛けられるとともに建物側に設けられたブラケット等に固定される。これによって、低圧引込線は、建物側に引き留められ、電柱と建物との間で架空される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−116841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図3は、上記引留碍子の設置例を示す図である。引留碍子100は、陶器や合成樹脂等の絶縁材料によって形成された部材であり、上述のように、例えば電柱(図示せず)から延びる低圧引込線101が巻き掛けられている。この低圧引込線101としては、通常、複数の被覆線を樹脂で覆った例えば単相3線式のものが用いられる。また、引留碍子100は、建物102に設けられたブラケット103に対して、ワイヤ等からなる固定部材104を介して固定されている。引留碍子100によって引き留められた低圧引込線101は、前記被覆線同士が互いに分離された状態で、建物102内に電力を導く屋内引込線105に接続される。
【0005】
図3に示すように、引留碍子100は、建物102の引込線105に接続するために低圧引込線101を引き留めるので、通常、建物102の軒下等、建物102に近接する位置に配置される。従って、改築や外壁塗装工事等といった当該建物102についての作業を行う際に、作業者が引留碍子100に近づかなければならない場合がある。このため、前記工事期間においては、作業者の安全を確保するために、引留碍子100の外側をビニールシート等の被覆材106で被覆し、作業者が引留碍子100等に直接接触しないように防護するといったことがなされている。
【0006】
しかし、図3に示すように、引留碍子100からは、前記電柱から延びる低圧引込線101や、建物102側に引留碍子100を固定するための固定部材104が延びているため、被覆材106で引留碍子100の周囲をすきまなく被覆するには困難を伴う。このため、引留碍子100を防護する作業に多くの時間を要していた。
【0007】
さらに、上述のようなシート状の被覆材106で引留碍子100を被覆し防護しようとすると、図3に示すように、引留碍子100の周囲を広範囲に亘って被覆しなければならず、被覆材106が、建物102に接近することとなる。このため、建物102についての作業に支障をきたす場合が生じていた。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、建造物についての作業に支障をきたすことなく、容易にかつ短時間で引留碍子の防護を行うことができる引留碍子用防護カバー及び引留碍子の防護構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明は、引込元から建造物に延びるとともに複数本の被覆線からなる低圧引込線を前記建造物側に引き留める引留碍子を覆う引留碍子用防護カバーであって、前記引留碍子の外周を覆う筒状部と、前記筒状部の両端を覆う一対の端壁と、を備え、前記筒状部の底部及び前記一対の端壁には、前記低圧引込線を前記建造物側に引き留めた状態で前記引留碍子、前記低圧引込線、及び前記引留碍子を前記建造物側に固定する固定部材を、前記筒状部の内外に通過させる開口が形成されていることを特徴としている。
【0010】
上記のように構成された引留碍子用防護カバーによれば、筒状部及び両端壁に、低圧引込線を引き留めた状態で引留碍子、低圧引込線、及び固定部材を筒状部の内外に通過させる開口が形成されているので、低圧引込線を引き留めた状態の引留碍子をこの開口を通して筒状部の内部に導入することができる。このため、容易に引留碍子を覆うことができる。また、本発明では、筒状部及び両端壁によって、引留碍子を必要最小限の範囲で覆うことができるので、建造物側で行われる作業の妨げとなるのを防止できる。
【0011】
上記引留碍子用防護カバーにおいて、前記開口は、前記筒状部の底部に設けられ、前記引留碍子を通過させるとともに前記低圧引込線の内、前記引留碍子から前記被覆線同士を互いに分離させた状態で前記建造物側に向かって延びる建造物側の区間を、当該区間の各被覆線を個別に覆う複数本の第一の防護管ごと通過させる幅広部を有していることが好ましい。
この場合、幅広部によって、低圧引込線の建造物側の区間を、第一の防護管ごと筒状部の内部に導くことができるので、当該建造物側の区間と筒状部との境界部を隙間なく覆って防護することが容易となる。
また、上記引留碍子用防護カバーは、低圧引込線の建造物側の区間を第一の防護管ごと筒状部の内部に導いているので、筒状部が自己の軸線回りに回動するのを防止できる。このため、特に、回り止めに対する対策等を採る必要がなく、より短時間で引留碍子の防護を行うことができる。
【0012】
また、前記開口は、前記一対の端壁の内の一方に設けられ、前記筒状部に導入された前記低圧引込線を、当該低圧引込線を覆う第二の防護管ごと包囲する孔部を有していることが好ましい。
この場合、孔部によって、引込元から延びる低圧引込線を第二の防護管ごと筒状部の内部に導くことができるので、引込元から延びる低圧引込線と一方の端壁との境界部を隙間なく覆って防護することができる。
また、孔部を通して低圧引込線を第二の防護管ごと筒状部の内部に導くことで、筒状部の上下方向の移動を規制することができ、筒状部が上方へ抜けてしまうのを防止できる。
【0013】
また、上記引留碍子用防護カバーにおいて、前記筒状部、及び前記一対の端壁が弾性変形可能な合成樹脂で形成されていてもよく、この場合、引留碍子を筒状部の内部に導入する際に、筒状部及び端壁を適度に弾性変形させることができ、より容易に引留碍子の防護を行うことができる。
【0014】
また、本発明は、引込元から建造物に延びるとともに複数本の被覆線からなる低圧引込線を前記建造物側に引き留める引留碍子と、前記低圧引込線の引留碍子近傍とを覆うための引留碍子の防護構造であって、前記引留碍子の外周を覆う筒状部と、前記筒状部の両端を覆う一対の端壁と、を備え、前記筒状部の底部及び前記一対の端壁には、前記低圧引込線を前記建造物側に引き留めた状態で前記引留碍子、前記低圧引込線、及び前記引留碍子を前記建造物側に固定する固定部材を、前記筒状部の内外に通過させる開口が形成されている引留碍子用防護カバーによって前記引留碍子を覆い、前記開口が有する、前記筒状部の底部に設けられた前記引留碍子を通過させる幅広部に、前記低圧引込線の内、前記引留碍子から前記被覆線同士を互いに分離させた状態で前記建造物側に向かって延びる建造物側の区間を、当該区間の各被覆線を個別に覆う複数本の第一の防護管ごと通過させているとともに、前記開口が有する、前記一対の端壁の内の一方に設けられた孔部に、前記筒状部に導入された前記低圧引込線を、当該低圧引込線を覆う第二の防護管ごと通過させていることを特徴としている。
【0015】
上記のように構成された引留碍子の防護構造によれば、第一及び第二の防護管によって、筒状部が自己の軸線回りに回動するのを防止できるとともに、筒状部が上方へ抜けてしまうのを防止できるので、筒状部の回り止め対策や抜け止め対策が不要となる。このため、建造物についての作業に支障をきたすことなく、一層、容易にかつ短時間で引留碍子の防護を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の碍子用防護カバー及び引留碍子の防護構造によれば、建造物についての作業に支障をきたすことなく、容易にかつ短時間で引留碍子の防護を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る引留碍子用防護カバー及び引留碍子の防護構造を示す側面図である。
【図2】(a)は、引留碍子用防護カバーの斜視図であり、(b)は、引留碍子用防護カバーの側面図である。
【図3】引留碍子の設置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る引留碍子用防護カバー及び引留碍子の防護構造を示す側面図である。
図において、本実施形態の碍子用防護カバー1は、引込元である電柱(図示せず)から建物Hに延びる低圧引込線2を建物H側に引き留めるバインドレス引留碍子3の周囲を覆うように取り付けられている。
【0019】
バインドレス引留碍子3(以下、引留碍子3ともいう)は、陶器や合成樹脂等の絶縁材料によって形成された部材であり、その外面に形成された突起に前記電柱から延びる低圧引込線2が巻き掛けられている。また、引留碍子3には、当該引留碍子3を建物H側に固定するためのワイヤ等からなる固定部材4が設けられている。
引留碍子3は、固定部材4を建物Hに設けられたブラケットh1に接続することで建物H側に固定されている。また、引留碍子3には、低圧引込線2が8の字状に巻き掛けられているので、引留碍子3を建物H側に固定するだけで、低圧引込線2は、建物H側に引き留められ、前記電柱と建物Hとの間で架空されている。
【0020】
引留碍子3によって引き留められた低圧引込線2は、3本の被覆線を樹脂で覆った単相3線式のものが用いられており、引留碍子3に巻き掛けられた部分から終端2aに亘る区間では、3本の被覆線2b同士が互いに分離された状態で下側に垂下されている。低圧引込線2(被覆線2b)の終端2aは、建物Hから延びる当該建物H内に電力を導くための屋内引込線5に接続されている。
なお、以下の説明では、低圧引込線2における引留碍子3に巻き掛けられた部分から終端2aまでの各被覆線2bに分離された区間を「建物側区間」ともいい、電柱から引留碍子3までの区間を「電柱側区間」ともいう。
【0021】
低圧引込線2における電柱側区間の引留碍子3近傍、及び、建物側区間には、それぞれ樹脂製の第一及び第二防護管6,7が取り付けられている。
建物側区間に取り付けられている第一防護管6は、蛇腹状の屈曲可能なパイプであり、低圧引込線2の3本の被覆線2bを個別に覆うことで、作業者等が低圧引込線2に接触しないように防護している。よって、建物側区間の第一防護管6は、通常、3本一組で用いられる。このように、3本の被覆線2bを個別に覆うことで、万一、第一防護管6の内部に雨水等が入ったとしても、各被覆線2bが互いに短絡するのを防止することができる。
また、第一防護管6には、屋内引込線5に接続した状態で被覆線2bを内部に収納するための切り込みが軸方向全域に亘って形成されている。
【0022】
電柱側区間に取り付けられている第二防護管7は、円筒状のパイプであり、引留碍子3近傍の低圧引込線2を覆うことで、作業者等が低圧引込線2に接触しないように防護している。この第二防護管7の全長は、例えば、60センチメートルに設定されている。第二防護管7には、上記第一防護管6と同様、低圧引込線2を架空した状態で当該低圧引込線2を内部に収納するための切り込みが軸方向全域に亘って形成されている。
【0023】
図2(a)は、碍子用防護カバー1の斜視図である。図2(a)において、碍子用防護カバー1は、絶縁性を有する合成樹脂等により形成されており、引留碍子3を覆う筒状部10と、筒状部10の端部を覆う第一及び第二端壁11,12とを備えている。
筒状部10は、断面ほぼ矩形の筒状に形成されており、その内部に引留碍子3を収容可能な空間を有している。筒状部10は、引留碍子3を内部に収容し、当該引留碍子3の周囲を必要最小限の範囲で覆うことができる程度の大きさに形成されており、より具体的には、軸方向長さが20〜30センチメートル程度、断面の一辺の長さが10〜20センチメートル程度に設定されている。
【0024】
図2(b)は、(a)中の引留碍子用防護カバー1の側面(矢印Xの方向から見た面)図である。図2(a)及び図2(b)に示すように、筒状部10及び両端壁11,12には、当該筒状部10の軸方向に沿う開口13が形成されている。この開口13は、第一端壁11、筒状部10の底壁10a、及び第二端壁12に亘って形成されており、筒状部10の底壁10aの幅方向中央から軸方向に沿って上方向に碍子用防護カバー1全体を分割するように形成されている。
【0025】
開口13は、筒状部10の底壁10aに位置する部分に比較的幅広に形成された幅広部14と、幅広部14から第一端壁11に亘って形成された幅広部14より狭い幅の第一スリット部15と、第一端壁11に形成された孔部11aと、幅広部14から第二端壁12に亘って形成された幅広部14より狭い幅の第二スリット部16とを有している。
【0026】
幅広部14は、引留碍子3が通過可能であるとともに、低圧引込線2の建物側区間における各被覆線2がこれらを個別に覆う各第一防護管6ごと通過可能な大きさで矩形状に形成されている。
【0027】
第一端壁11に形成された孔部11aは、低圧引込線2の電柱側区間を通過させるために設けられている。この孔部11aは、電柱側区間を覆う第二防護管7が挿入可能な内径に形成されており、低圧引込線2を、当該低圧引込線2を覆う第二防護管7ごと包囲している。これにより、孔部11aには、図1に示すように、第二防護管7が差し込まれている。
第一スリット部15は、第一端壁11を、下端縁11bから孔部11aの内周面までの範囲で切り欠いている。また、第一スリット部15は、低圧引込線2の外径よりも大きい幅で形成されている。このため、低圧引込線2は、筒状部10の底壁10a側から、第一スリット部15を通じて、孔部11aの内周面側に通過可能である。
【0028】
また、第二スリット部16は、図2(b)に示すように、第二端壁12を、上壁10b付近まで切り欠いている。第二スリット部16は、固定部材4の外径よりも大きい幅で形成されており、固定部材4は、第二スリット部16を通過可能である。このため、固定部材4は、引留碍子3が筒状部10の幅広部14から内部に導入されるのを妨げない。
【0029】
このように、開口13は、電柱から延びる低圧引込線2を建物H側に引き留めた状態で引留碍子3、低圧引込線2、及び、固定部材4を筒状部10の内外に通過させることができる。
【0030】
上記碍子用防護カバー1を用いて、電柱から延びる低圧引込線2を引き留めている引留碍子3の防護処理を行うには、まず、碍子用防護カバー1を引留碍子3の上側から被せるように取り付ける。この際、引留碍子3からは、低圧引込線2の電柱側区間、及び固定部材4が、当該低圧引込線2の架線されている方向に沿って延びているが、上記開口13は、引留碍子3が通過可能な幅広部14を有するとともに、電柱側区間、及び固定部材4が通過可能な第一及び第二幅狭部15,16を有しているので、当該引留碍子3を筒状部10の内部に導入することができる。
また、下側に垂下している低圧引込線2の建物側区間は、開口13の幅広部14を通じてそのまま垂下した状態を維持できる。
【0031】
上記のように、碍子用防護カバー1によって引留碍子3を覆った後、低圧引込線2の電柱側区間の外周側に第二防護管7を取り付け、さらに、第二防護管7を、図1に示すように、碍子用防護カバー1の孔部11aに挿入する。このように、孔部11aに第二防護管7を挿入することで、筒状部10の上下方向の移動を規制することができ、当該筒状部10が上方へ抜けてしまうのを防止できる。
【0032】
次いで、低圧引込線2の建物側区間に対して第一防護管6を取り付け、当該第一防護管6を、図1に示すように、碍子用防護カバー1の幅広部14に挿入する。なお、幅広部14は、引留碍子3を通過させるとともに、防護管7ごと建物側区間を通過させる程度の寸法で形成されている。
そして、第一防護管6と碍子用防護カバー1の境界部分、及び、第二防護管7と碍子用防護カバー1の境界部分に沿って、ビニールテープ等を巻くことで、これら境界部分を密封し、雨等の水分が侵入しないように防水処理を施し、防護処理を終える。
【0033】
以上のようにして、本実施形態の碍子用防護カバー1を用いた引留碍子3の防護処理を行うとともに、引留碍子3の防護構造を得ることができる。
上記従来例のように、ビニールシート等を用いて、引留碍子3を防護した場合、引留碍子3をビニールシートで覆いくるむのに比較的作業時間を要し、さらにシートの隙間を塞ぐ必要があるため、概ね15分程度の作業時間を必要とする。また、作業者によっては、慣れ不慣れがあり、作業時間に個人差が生じる。
しかし、本実施形態の碍子用防護カバー1を用いた引留碍子3の防護処理では、引留碍子3を覆うのに碍子用防護カバー1及び防護管6,7を取り付けた後、簡単な防水処理を行えばよいので、その作業時間は5分程度とすることができ、また、作業が容易なので、作業者による個人差が大きく現れることがない。
【0034】
上記のように構成された引留碍子用防護カバーによれば、筒状部10及び両端壁11,12に、低圧引込線2を引き留めた状態で引留碍子3、低圧引込線2、及び固定部材4を筒状部10の内外に通過させる開口13が形成されているので、低圧引込線2を引き留めた状態の引留碍子3をこの開口13を通して筒状部10の内部に導入することができる。このため、容易に引留碍子3を覆うことができる。
また、本実施形態の引留碍子用防護カバーによれば、筒状部10及び両端壁11,12によって、引留碍子3の周囲を必要最小限の範囲で覆うことができるので、引留碍子3を防護することが、建物H側で行われる作業の妨げとなるのを防止できる。
以上より、本実施形態によれば、建物Hについての作業に支障をきたすことなく、容易にかつ短時間で引留碍子3の防護を行うことができる。
【0035】
また、本実施形態では、開口13が、引留碍子3を通過させるとともに、低圧引込線2の建物側区間が、当該区間の各被覆線2を覆う第一防護管6ごと通過させる幅広部14を有しているので、この幅広部14によって、建物側区間を、その第一防護管6ごと筒状部10の内部に導くことができる。この結果、建物側区間と筒状部10との境界部を隙間なく覆って防護することが容易となる。
【0036】
また、上記引留碍子用防護カバー1は、低圧引込線2の建物側区間を第一防護管6ごと筒状部10の内部に導いているので、筒状部10が自己の軸線回りに回動するのを防止できる。このため、特に、回り止めに対する対策等を採る必要がなく、より短時間で引留碍子3の防護を行うことができる。
【0037】
また、本実施形態において、第一端壁11には、筒状部10に導入された低圧引込線2の電柱側区間を、第二防護管7ごと包囲する孔部11aが形成されているので、この孔部11aに第二防護管7を挿入することができる。この結果、電柱側区間と、第一端壁11との境界部を隙間なく覆って防護することができる。
【0038】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態では、筒状部10は、断面ほぼ矩形に形成した場合を例示したが、例えば、円筒状としてもよいし、矩形以外の多角形断面としてもよい。
また、筒状部10及び両端壁11,12を、ゴム等の弾性変形可能な合成樹脂材料で形成してもよく、この場合、引留碍子3を筒状部10の内部に導入し収容する際に、筒状部10及び両端壁11,12を適度に弾性変形させることができ、より容易に引留碍子3の防護を行うことができる。
また、上記実施形態では、建物H側に低圧引込線2を引き留める引留碍子3を防護する場合を示したが、電柱側においても建物H側と同様に低圧引込線2を引き留める引留碍子が用いられており、電柱側において作業を行う場合には、この電柱側の引留碍子に対しても、本発明の碍子用防護カバーを用いて防護することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 引留碍子用防護カバー
2 低圧引込線
2b 被覆線
3 バインドレス碍子(引留碍子)
4 固定部材
6 第一防護管
7 第二防護管
10 筒状部
11 第一端壁
11a 孔部
12 第二端壁
13 開口
14 幅広部
H 建物(建造物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引込元から建造物に延びるとともに複数本の被覆線からなる低圧引込線を前記建造物側に引き留める引留碍子を覆う引留碍子用防護カバーであって、
前記引留碍子の外周を覆う筒状部と、
前記筒状部の両端を覆う一対の端壁と、を備え、
前記筒状部の底部及び前記一対の端壁には、前記低圧引込線を前記建造物側に引き留めた状態で前記引留碍子、前記低圧引込線、及び前記引留碍子を前記建造物側に固定する固定部材を、前記筒状部の内外に通過させる開口が形成されていることを特徴とする引留碍子用防護カバー。
【請求項2】
前記開口は、前記筒状部の底部に設けられ、前記引留碍子を通過させるとともに前記低圧引込線の内、前記引留碍子から前記被覆線同士を互いに分離させた状態で前記建造物側に向かって延びる建造物側の区間を、当該区間の各被覆線を個別に覆う複数本の第一の防護管ごと通過させる幅広部を有している請求項1に記載の引留碍子用防護カバー。
【請求項3】
前記開口は、前記一対の端壁の内の一方に設けられ、前記筒状部に導入された前記低圧引込線を、当該低圧引込線を覆う第二の防護管ごと包囲する孔部を有している請求項1又は2に記載の引留碍子用防護カバー。
【請求項4】
前記筒状部、及び前記一対の端壁が弾性変形可能な合成樹脂で形成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の引留碍子用防護カバー。
【請求項5】
引込元から建造物に延びるとともに複数本の被覆線からなる低圧引込線を前記建造物側に引き留める引留碍子と、前記低圧引込線の引留碍子近傍とを覆うための引留碍子の防護構造であって、
前記引留碍子の外周を覆う筒状部と、前記筒状部の両端を覆う一対の端壁と、を備え、前記筒状部の底部及び前記一対の端壁には、前記低圧引込線を前記建造物側に引き留めた状態で前記引留碍子、前記低圧引込線、及び前記引留碍子を前記建造物側に固定する固定部材を、前記筒状部の内外に通過させる開口が形成されている引留碍子用防護カバーによって前記引留碍子を覆い、
前記開口が有する、前記筒状部の底部に設けられた前記引留碍子を通過させる幅広部に、前記低圧引込線の内、前記引留碍子から前記被覆線同士を互いに分離させた状態で前記建造物側に向かって延びる建造物側の区間を、当該区間の各被覆線を個別に覆う複数本の第一の防護管ごと通過させているとともに、
前記開口が有する、前記一対の端壁の内の一方に設けられた孔部に、前記筒状部に導入された前記低圧引込線を、当該低圧引込線を覆う第二の防護管ごと通過させていることを特徴とする引留碍子の防護構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−75237(P2012−75237A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217380(P2010−217380)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】