引裂試験用樹脂フィルム片およびその製造方法
【課題】試験結果のバラツキが小さい引裂試験用樹脂フィルム片の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の引裂試験用樹脂フィルム片の製造方法は、樹脂フィルムにレーザー光を照射して切断する。好ましくは、前記レーザーは炭酸ガスレーザーである。
【解決手段】本発明の引裂試験用樹脂フィルム片の製造方法は、樹脂フィルムにレーザー光を照射して切断する。好ましくは、前記レーザーは炭酸ガスレーザーである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引裂試験用樹脂フィルム片およびその製造方法に関する。より詳細には、本発明は、試験結果のバラツキが小さい引裂試験用樹脂フィルム片およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルムは、加工性に優れ多種多様の特性を付与できることから広範な用途に用いられており、使用目的に応じた所定の強度が必要とされる。例えば、液晶表示装置等の画像表示装置には種々の樹脂フィルム(光学フィルム)が用いられており、樹脂フィルムの製造やフィルムの加工、樹脂フィルムやその加工品を用いた画像表示装置の製造、および画像表示装置の使用の際に、樹脂フィルムに裂けや切れなどが生じない所定の強度が必要である。強度の指標の1つとして引裂強度があり、例えば、JIS法で定められた引裂試験が行われる(非特許文献1)。しかし、JIS法により引裂試験を行うと、得られる結果に大きなバラツキが生じるという問題がある。
【非特許文献1】JIS K 7128−3
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、試験結果のバラツキが小さい引裂試験用樹脂フィルム片およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の引裂試験用樹脂フィルム片の製造方法は、樹脂フィルムにレーザー光を照射して切断する。
【0005】
好ましい実施形態においては、上記レーザーが炭酸ガスレーザーである。
【0006】
本発明の別の局面においては、引裂試験用樹脂フィルム片が提供される。この引裂試験用樹脂フィルム片は、上記製造方法により得られる。
【0007】
好ましい実施形態においては、上記樹脂フィルムがセルロース系樹脂で形成されている。
【0008】
好ましい実施形態においては、上記樹脂フィルムが光学フィルムとして用いられる。
【0009】
本発明のさらに別の局面においては、引裂試験方法が提供される。この引裂試験方法は、上記引裂試験用樹脂フィルム片を試験片として用いる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、引裂試験片の作成にあたり、レーザー光で樹脂フィルムを切断することにより、試験結果のバラツキが小さい引裂試験用樹脂フィルム片を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0012】
本発明の引裂試験用樹脂フィルム片は、樹脂フィルムにレーザー光を照射して、当該樹脂フィルムを切断することにより得られる。レーザー光を照射して切断することにより、試験結果のバラツキが小さい引裂試験用樹脂フィルム片を得ることができる。
【0013】
上記樹脂フィルムの形成材としては、任意の適切な樹脂が用いられ得る。上記樹脂フィルムは、好ましくは、光学フィルムとして用いられる。この場合、樹脂フィルムの形成材の具体例としては、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂等が挙げられる。
【0014】
上記セルロース系樹脂としては、好ましくは、セルロースエステルが用いられる。セルロースエステルとしては、任意の適切なセルロースエステルが採用され得る。具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等の有機酸エステルが挙げられる。また、セルロースエステルは、例えば、セルロースの水酸基の一部がアセチル基とプロピオニル基で置換された混合有機酸エステルであってもよい。セルロースエステルは、例えば、特開2001−188128号公報[0040]〜[0041]に記載の方法により製造される。
【0015】
上記セルロースエステルは、テトラヒドロフラン溶媒によるゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法で測定した重量平均分子量(Mw)が好ましくは30,000〜500,000、更に好ましくは、50,000〜400,000、特に好ましくは80,000〜300,000の範囲のものである。重量平均分子量が上記の範囲であれば、機械的強度に優れ、溶解性、成形性、流延の操作性が良いものができる。
【0016】
上記(メタ)アクリル系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、脂環族炭化水素基を有する重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)などが挙げられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とする(メタ)アクリル酸C1−6アルキル系樹脂が挙げられ、より好ましくは、メタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂が挙げられる。
【0017】
上記(メタ)アクリル系樹脂の具体例としては、例えば、三菱レイヨン社製のアクリペットVHやアクリペットVRL20A、特開2004−70296号公報に記載の分子内に環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂、分子内架橋や分子内環化反応により得られる高Tg(メタ)アクリル系樹脂が挙げられる。また、特開2000−230016号公報、特開2001−151814号公報、特開2005−146084号公報などに記載の、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂や、特開2005−314534号公報などに記載の、グルタル酸無水物構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を用いてもよい。上記(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは100℃以上、さらに好ましくは105℃以上、特に好ましくは110℃以上である。耐久性に優れ得るからである。(メタ)アクリル系樹脂のTgの上限値は、好ましくは170℃以下であり、さらに好ましくは140℃以下、特に好ましくは130℃以下である。成形性に優れ得るからである。
【0018】
上記ノルボルネン系樹脂は、ノルボルネン系モノマーを重合単位として重合される樹脂である。当該ノルボルネン系モノマーとしては、例えば、ノルボルネン、およびそのアルキルおよび/またはアルキリデン置換体、例えば、5−メチル−2−ノルボルネン、5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等、これらのハロゲン等の極性基置換体;ジシクロペンタジエン、2,3−ジヒドロジシクロペンタジエン等;ジメタノオクタヒドロナフタレン、そのアルキルおよび/またはアルキリデン置換体、およびハロゲン等の極性基置換体、例えば、6−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチリデン−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−クロロ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−シアノ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−ピリジル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−メトキシカルボニル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン等;シクロペンタジエンの3〜4量体、例えば、4,9:5,8−ジメタノ−3a,4,4a,5,8,8a,9,9a−オクタヒドロ−1H−ベンゾインデン、4,11:5,10:6,9−トリメタノ−3a,4,4a,5,5a,6,9,9a,10,10a,11,11a−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタアントラセン等が挙げられる。上記ノルボルネン系樹脂は、ノルボルネン系モノマーと他のモノマーとの共重合体であってもよい。
【0019】
上記ポリカーボネート系樹脂としては、好ましくは、芳香族ポリカーボネートが用いられる。芳香族ポリカーボネートは、代表的には、カーボネート前駆物質と芳香族2価フェノール化合物との反応によって得ることができる。カーボネート前駆物質の具体例としては、ホスゲン、2価フェノール類のビスクロロホーメート、ジフェニルカーボネート、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、ジ−p−クロロフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート等が挙げられる。これらの中でも、ホスゲン、ジフェニルカーボネートが好ましい。芳香族2価フェノール化合物の具体例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジプロピルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。好ましくは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンが用いられる。特に、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンとを共に使用することが好ましい。
【0020】
上記ポリエステル系樹脂およびオレフィン系樹脂の具体例については、業界で周知であるので、その記載は省略する。
【0021】
樹脂フィルムは、延伸フィルムであってもよいし、未延伸フィルムであってもよい。樹脂フィルムの厚みは、その用途等に応じて任意の適切な厚みが採用され得る。樹脂フィルムの厚みは、代表的には10〜300μm、好ましくは20〜200μmである。
【0022】
上記レーザー光は、樹脂フィルムの形成材等に応じて、任意の適切なレーザー光を採用し得る。上記レーザー光は、好ましくは、少なくとも400nm以下および/または1.5μm以上の波長の光を含む。さらに好ましくは2〜30μm、特に好ましくは8〜12μmの波長の光を含む。上記樹脂フィルムの形成材が、レーザー光を効率的に吸収し得、良好に切断し得るからである。
【0023】
上記レーザーとしては、任意の適切なレーザーを採用し得る。具体例としては、炭酸ガスレーザー、エキシマレーザー等の気体レーザー;YAGレーザー等の固体レーザー;半導体レーザーが挙げられる。好ましくは、炭酸ガスレーザーである。炭酸ガスレーザー光は上述の好ましい波長の光を含み得るからである。また、炭酸ガスレーザーは、照射の出力条件の適用範囲が広く、上記切断深さ等を容易に制御し得る。また、切断面にも優れ得、生産性に優れ得る。
【0024】
レーザー光の照射条件は、切断対象、切断深さ等に応じて任意の適切な条件を採用し得る。出力条件は、炭酸ガスレーザーを用いる場合、好ましくは0.1〜200W、さらに好ましくは0.5〜100Wである。移動速度は、炭酸ガスレーザーを用いる場合、好ましくは0.1〜800mm/秒、さらに好ましくは0.4〜400mm/秒である。その他の条件は、切断する樹脂フィルムの種類、レーザー出力、移動速度に応じて適宜設定され得る。
【0025】
レーザー光は、所定の引裂試験に応じて所望の形状を有する樹脂フィルム片が得られるように照射される。本発明の引裂試験用樹脂フィルム片は、例えば、直角形引裂法、JIS K 7128−3の試験片として好適に用いられる。上述のとおり、本発明の引裂試験用樹脂フィルム片は、試験結果のバラツキが小さいことから、引裂試験を精度よく行うことができる。また、引裂試験の試験片として、切断面にノッチがあるものは好ましくないとされているが、本発明の引裂試験用樹脂フィルム片の切断面は平滑性に優れる。なお、直角形引裂法の試験片として用いられる場合、図1(a)に示すように、引裂試験用樹脂フィルム片10は、左右両端の掴み部10a,10bと、左右の掴み部に10a,10bに対して下方に湾曲した中央部(引裂部)10cとを有し、中央部10cの上辺は下方に折れ曲がった形状とされる。なお、レーザー光は、目的や用途に応じた任意の適切な形状を有する樹脂フィルム片が得られるように照射することが可能であり、そのようにして得られる樹脂フィルム片は、引裂試験のみならず種々の用途に用いられ得る。
【実施例】
【0026】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0027】
[実施例1]
炭酸ガスレーザーを用いて、厚み40μmのトリアセチルセルロースフィルム(コニカミノルタオプト製、商品名:KC4UY)を、その長手方向(TD方向)および短手方向(MD方向)に沿って、JIS K 7128−3に規定されている形状に切断して試験片を得た(図1参照)。MD方向(試験片11)およびTD方向(試験片12)それぞれについて、試験片を10枚作製した。レーザー光の照射条件は以下のとおりである。
(レーザー光の照射条件)
装置:澁谷工業製、商品名「SILAS−SAM(SPL2305型)」
繰り返し周波数:4kHz
出力:2.2W
デューティー比:3%
移動速度:40mm/min
【0028】
(比較例1)
炭酸ガスレーザーによる切断にかえて、SD型レバー式試料裁断機(ダンベル社製、裁断刃:カミソリ)で打ち抜いたこと以外は、実施例1と同様にして試験片を作製した。
【0029】
実施例1および比較例1で得られた試験片について、JIS K 7128−3に基づき引裂試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
表1から明らかなように、実施例1は比較例1に比べて試験結果(引裂強度)のバラツキが小さかった。このことから、評価対象となる引裂試験用樹脂フィルムをレーザー光で切断することにより、引裂試験において精度よく評価できるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の樹脂フィルム片は、引裂試験の試験片として好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】(a)は引裂試験の試験片を示す平面図であり、(b)は試験片の採取箇所を示す平面図である。
【符号の説明】
【0034】
10 樹脂フィルム片
11 試験片(MD方向)
12 試験片(TD方向)
100 樹脂フィルム
【技術分野】
【0001】
本発明は、引裂試験用樹脂フィルム片およびその製造方法に関する。より詳細には、本発明は、試験結果のバラツキが小さい引裂試験用樹脂フィルム片およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルムは、加工性に優れ多種多様の特性を付与できることから広範な用途に用いられており、使用目的に応じた所定の強度が必要とされる。例えば、液晶表示装置等の画像表示装置には種々の樹脂フィルム(光学フィルム)が用いられており、樹脂フィルムの製造やフィルムの加工、樹脂フィルムやその加工品を用いた画像表示装置の製造、および画像表示装置の使用の際に、樹脂フィルムに裂けや切れなどが生じない所定の強度が必要である。強度の指標の1つとして引裂強度があり、例えば、JIS法で定められた引裂試験が行われる(非特許文献1)。しかし、JIS法により引裂試験を行うと、得られる結果に大きなバラツキが生じるという問題がある。
【非特許文献1】JIS K 7128−3
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、試験結果のバラツキが小さい引裂試験用樹脂フィルム片およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の引裂試験用樹脂フィルム片の製造方法は、樹脂フィルムにレーザー光を照射して切断する。
【0005】
好ましい実施形態においては、上記レーザーが炭酸ガスレーザーである。
【0006】
本発明の別の局面においては、引裂試験用樹脂フィルム片が提供される。この引裂試験用樹脂フィルム片は、上記製造方法により得られる。
【0007】
好ましい実施形態においては、上記樹脂フィルムがセルロース系樹脂で形成されている。
【0008】
好ましい実施形態においては、上記樹脂フィルムが光学フィルムとして用いられる。
【0009】
本発明のさらに別の局面においては、引裂試験方法が提供される。この引裂試験方法は、上記引裂試験用樹脂フィルム片を試験片として用いる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、引裂試験片の作成にあたり、レーザー光で樹脂フィルムを切断することにより、試験結果のバラツキが小さい引裂試験用樹脂フィルム片を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0012】
本発明の引裂試験用樹脂フィルム片は、樹脂フィルムにレーザー光を照射して、当該樹脂フィルムを切断することにより得られる。レーザー光を照射して切断することにより、試験結果のバラツキが小さい引裂試験用樹脂フィルム片を得ることができる。
【0013】
上記樹脂フィルムの形成材としては、任意の適切な樹脂が用いられ得る。上記樹脂フィルムは、好ましくは、光学フィルムとして用いられる。この場合、樹脂フィルムの形成材の具体例としては、セルロース系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂等が挙げられる。
【0014】
上記セルロース系樹脂としては、好ましくは、セルロースエステルが用いられる。セルロースエステルとしては、任意の適切なセルロースエステルが採用され得る。具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等の有機酸エステルが挙げられる。また、セルロースエステルは、例えば、セルロースの水酸基の一部がアセチル基とプロピオニル基で置換された混合有機酸エステルであってもよい。セルロースエステルは、例えば、特開2001−188128号公報[0040]〜[0041]に記載の方法により製造される。
【0015】
上記セルロースエステルは、テトラヒドロフラン溶媒によるゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法で測定した重量平均分子量(Mw)が好ましくは30,000〜500,000、更に好ましくは、50,000〜400,000、特に好ましくは80,000〜300,000の範囲のものである。重量平均分子量が上記の範囲であれば、機械的強度に優れ、溶解性、成形性、流延の操作性が良いものができる。
【0016】
上記(メタ)アクリル系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリメタクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、脂環族炭化水素基を有する重合体(例えば、メタクリル酸メチル−メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ノルボルニル共重合体など)などが挙げられる。好ましくは、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸C1−6アルキルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とする(メタ)アクリル酸C1−6アルキル系樹脂が挙げられ、より好ましくは、メタクリル酸メチルを主成分(50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%)とするメタクリル酸メチル系樹脂が挙げられる。
【0017】
上記(メタ)アクリル系樹脂の具体例としては、例えば、三菱レイヨン社製のアクリペットVHやアクリペットVRL20A、特開2004−70296号公報に記載の分子内に環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂、分子内架橋や分子内環化反応により得られる高Tg(メタ)アクリル系樹脂が挙げられる。また、特開2000−230016号公報、特開2001−151814号公報、特開2005−146084号公報などに記載の、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂や、特開2005−314534号公報などに記載の、グルタル酸無水物構造を有する(メタ)アクリル系樹脂を用いてもよい。上記(メタ)アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは100℃以上、さらに好ましくは105℃以上、特に好ましくは110℃以上である。耐久性に優れ得るからである。(メタ)アクリル系樹脂のTgの上限値は、好ましくは170℃以下であり、さらに好ましくは140℃以下、特に好ましくは130℃以下である。成形性に優れ得るからである。
【0018】
上記ノルボルネン系樹脂は、ノルボルネン系モノマーを重合単位として重合される樹脂である。当該ノルボルネン系モノマーとしては、例えば、ノルボルネン、およびそのアルキルおよび/またはアルキリデン置換体、例えば、5−メチル−2−ノルボルネン、5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等、これらのハロゲン等の極性基置換体;ジシクロペンタジエン、2,3−ジヒドロジシクロペンタジエン等;ジメタノオクタヒドロナフタレン、そのアルキルおよび/またはアルキリデン置換体、およびハロゲン等の極性基置換体、例えば、6−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチリデン−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−クロロ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−シアノ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−ピリジル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−メトキシカルボニル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン等;シクロペンタジエンの3〜4量体、例えば、4,9:5,8−ジメタノ−3a,4,4a,5,8,8a,9,9a−オクタヒドロ−1H−ベンゾインデン、4,11:5,10:6,9−トリメタノ−3a,4,4a,5,5a,6,9,9a,10,10a,11,11a−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタアントラセン等が挙げられる。上記ノルボルネン系樹脂は、ノルボルネン系モノマーと他のモノマーとの共重合体であってもよい。
【0019】
上記ポリカーボネート系樹脂としては、好ましくは、芳香族ポリカーボネートが用いられる。芳香族ポリカーボネートは、代表的には、カーボネート前駆物質と芳香族2価フェノール化合物との反応によって得ることができる。カーボネート前駆物質の具体例としては、ホスゲン、2価フェノール類のビスクロロホーメート、ジフェニルカーボネート、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、ジ−p−クロロフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート等が挙げられる。これらの中でも、ホスゲン、ジフェニルカーボネートが好ましい。芳香族2価フェノール化合物の具体例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジプロピルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。これらは単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。好ましくは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンが用いられる。特に、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンとを共に使用することが好ましい。
【0020】
上記ポリエステル系樹脂およびオレフィン系樹脂の具体例については、業界で周知であるので、その記載は省略する。
【0021】
樹脂フィルムは、延伸フィルムであってもよいし、未延伸フィルムであってもよい。樹脂フィルムの厚みは、その用途等に応じて任意の適切な厚みが採用され得る。樹脂フィルムの厚みは、代表的には10〜300μm、好ましくは20〜200μmである。
【0022】
上記レーザー光は、樹脂フィルムの形成材等に応じて、任意の適切なレーザー光を採用し得る。上記レーザー光は、好ましくは、少なくとも400nm以下および/または1.5μm以上の波長の光を含む。さらに好ましくは2〜30μm、特に好ましくは8〜12μmの波長の光を含む。上記樹脂フィルムの形成材が、レーザー光を効率的に吸収し得、良好に切断し得るからである。
【0023】
上記レーザーとしては、任意の適切なレーザーを採用し得る。具体例としては、炭酸ガスレーザー、エキシマレーザー等の気体レーザー;YAGレーザー等の固体レーザー;半導体レーザーが挙げられる。好ましくは、炭酸ガスレーザーである。炭酸ガスレーザー光は上述の好ましい波長の光を含み得るからである。また、炭酸ガスレーザーは、照射の出力条件の適用範囲が広く、上記切断深さ等を容易に制御し得る。また、切断面にも優れ得、生産性に優れ得る。
【0024】
レーザー光の照射条件は、切断対象、切断深さ等に応じて任意の適切な条件を採用し得る。出力条件は、炭酸ガスレーザーを用いる場合、好ましくは0.1〜200W、さらに好ましくは0.5〜100Wである。移動速度は、炭酸ガスレーザーを用いる場合、好ましくは0.1〜800mm/秒、さらに好ましくは0.4〜400mm/秒である。その他の条件は、切断する樹脂フィルムの種類、レーザー出力、移動速度に応じて適宜設定され得る。
【0025】
レーザー光は、所定の引裂試験に応じて所望の形状を有する樹脂フィルム片が得られるように照射される。本発明の引裂試験用樹脂フィルム片は、例えば、直角形引裂法、JIS K 7128−3の試験片として好適に用いられる。上述のとおり、本発明の引裂試験用樹脂フィルム片は、試験結果のバラツキが小さいことから、引裂試験を精度よく行うことができる。また、引裂試験の試験片として、切断面にノッチがあるものは好ましくないとされているが、本発明の引裂試験用樹脂フィルム片の切断面は平滑性に優れる。なお、直角形引裂法の試験片として用いられる場合、図1(a)に示すように、引裂試験用樹脂フィルム片10は、左右両端の掴み部10a,10bと、左右の掴み部に10a,10bに対して下方に湾曲した中央部(引裂部)10cとを有し、中央部10cの上辺は下方に折れ曲がった形状とされる。なお、レーザー光は、目的や用途に応じた任意の適切な形状を有する樹脂フィルム片が得られるように照射することが可能であり、そのようにして得られる樹脂フィルム片は、引裂試験のみならず種々の用途に用いられ得る。
【実施例】
【0026】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0027】
[実施例1]
炭酸ガスレーザーを用いて、厚み40μmのトリアセチルセルロースフィルム(コニカミノルタオプト製、商品名:KC4UY)を、その長手方向(TD方向)および短手方向(MD方向)に沿って、JIS K 7128−3に規定されている形状に切断して試験片を得た(図1参照)。MD方向(試験片11)およびTD方向(試験片12)それぞれについて、試験片を10枚作製した。レーザー光の照射条件は以下のとおりである。
(レーザー光の照射条件)
装置:澁谷工業製、商品名「SILAS−SAM(SPL2305型)」
繰り返し周波数:4kHz
出力:2.2W
デューティー比:3%
移動速度:40mm/min
【0028】
(比較例1)
炭酸ガスレーザーによる切断にかえて、SD型レバー式試料裁断機(ダンベル社製、裁断刃:カミソリ)で打ち抜いたこと以外は、実施例1と同様にして試験片を作製した。
【0029】
実施例1および比較例1で得られた試験片について、JIS K 7128−3に基づき引裂試験を行った。試験結果を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
表1から明らかなように、実施例1は比較例1に比べて試験結果(引裂強度)のバラツキが小さかった。このことから、評価対象となる引裂試験用樹脂フィルムをレーザー光で切断することにより、引裂試験において精度よく評価できるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の樹脂フィルム片は、引裂試験の試験片として好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】(a)は引裂試験の試験片を示す平面図であり、(b)は試験片の採取箇所を示す平面図である。
【符号の説明】
【0034】
10 樹脂フィルム片
11 試験片(MD方向)
12 試験片(TD方向)
100 樹脂フィルム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムにレーザー光を照射して切断する、引裂試験用樹脂フィルム片の製造方法。
【請求項2】
前記レーザーが炭酸ガスレーザーである、請求項1に記載の引裂試験用樹脂フィルム片の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法により得られる、引裂試験用樹脂フィルム片。
【請求項4】
前記樹脂フィルムがセルロース系樹脂で形成されている、請求項3に記載の引裂試験用樹脂フィルム片。
【請求項5】
前記樹脂フィルムが光学フィルムとして用いられる、請求項3または4に記載の引裂試験用樹脂フィルム片。
【請求項6】
請求項3から5のいずれかに記載の樹脂フィルム片を試験片として用いる、引裂試験方法。
【請求項1】
樹脂フィルムにレーザー光を照射して切断する、引裂試験用樹脂フィルム片の製造方法。
【請求項2】
前記レーザーが炭酸ガスレーザーである、請求項1に記載の引裂試験用樹脂フィルム片の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法により得られる、引裂試験用樹脂フィルム片。
【請求項4】
前記樹脂フィルムがセルロース系樹脂で形成されている、請求項3に記載の引裂試験用樹脂フィルム片。
【請求項5】
前記樹脂フィルムが光学フィルムとして用いられる、請求項3または4に記載の引裂試験用樹脂フィルム片。
【請求項6】
請求項3から5のいずれかに記載の樹脂フィルム片を試験片として用いる、引裂試験方法。
【図1】
【公開番号】特開2010−38828(P2010−38828A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204445(P2008−204445)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
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