説明

弦楽器弓の竿の製造方法、弦楽器弓の竿および弦楽器弓

【課題】ヘッド部がボイドのない美しい外観と、馬毛を保持する部材の取り付けや打撃などによって破損が生じにくい優れた強度とを有する弦楽器弓の竿の製造方法を提供する。
【解決手段】ヘッド部用芯金13bに接して長繊維樹脂プリプレグを巻きつけて内層を形成する工程と、内層の外側に長繊維樹脂プリプレグよりも繊維長の短い短繊維樹脂プリプレグを配置して中間層を形成する工程と、中間層の外側に長繊維樹脂プリプレグを巻きつけて外層を形成する工程とを含むヘッド部巻きつけ工程と、本体部被成形品およびヘッド部被成形品を本体部からヘッド部を一体的に成形する金型10のキャビティ4内に設置し、加熱しながら端面金型13をヘッド部用芯金13bに沿って金型10の端面形成位置14bに移動させて、キャビティ4内の体積を減少させて圧力を付与することにより、成形品を成形する成形工程とを備える弦楽器弓の竿の製造方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弦楽器弓の竿(スティック)の製造方法、弦楽器弓の竿および弦楽器弓に関し、特に、ヘッド部がボイドのない美しい外観と、弦を保持する部材の取り付けや打撃などによって破損が生じにくい優れた強度とを有する弦楽器弓の竿が得られる弦楽器弓の竿の製造方法、弦楽器弓の竿およびこれを備えた弦楽器弓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、バイオリンやチェロなどの弦楽器弓の竿には、天然木材からなるものが用いられてきた。天然木材には、高密度で硬く、湿気に強く、曲げ強度に優れるフェルナンブコ材が主として用いられてきた。
しかしながら、近年、フェルナンブコの木が激減しているため、入手が困難となっている。このため、弦楽器弓の竿として、フェルナンブコ材などの天然木材に代えて、炭素繊維やガラス繊維などの繊維と樹脂との複合材料(FRP(繊維強化プラスチック))を用いたものが製造されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、プラスチックを含浸させたグラスファイバーシートから形成された竿や、射出成形その他適宜の方法によりプラスチックを塑造成形してなる竿の弓頭部が記載されている。
【0004】
また、従来の繊維強化プラスチックからなる弦楽器弓の竿のヘッド部の製造方法としては、例えば、上金型と下金型とからなる金型のキャビティ内に、キャビティ内の体積よりも過剰な体積の繊維強化プラスチックを設置し、加熱しながら上金型および下金型から上下方向の圧力を付与することにより成形する方法が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭44−19189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術を用いて得られた繊維強化プラスチックからなる弦楽器弓の竿では、以下に示すような問題があった。
通常、弦楽器弓の竿のヘッド部には、馬毛の端部をヘッド部に保持させる部材を取り付けるために、凹部が設けられている。繊維強化プラスチックからなる竿のヘッド部は、馬毛を保持する部材をヘッド部に取り付ける際に、ヘッド部の凹部内が破損しやすいという不都合があった。
【0007】
また、従来の繊維強化プラスチックからなる竿では、打撃などによりヘッド部が破損しやすく、ヘッド部の強度を向上させることが望まれていた。
また、従来の繊維強化プラスチックからなる竿では、ヘッド部の表面に形成されるボイドの数が多く、ボイドを少なくして外観の美しさを向上させることが要求されていた。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ヘッド部がボイドのない美しい外観と、馬毛を保持する部材の取り付けや打撃などによって破損が生じにくい優れた強度とを有する弦楽器弓の竿を製造できる弦楽器弓の竿の製造方法、弦楽器弓の竿およびそれを備える弦楽器弓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
本発明の弦楽器弓の竿の製造方法は、弓形棒状の本体部と、前記本体部の一端部から前記本体部の延在方向と交差する方向に延在して形成されるヘッド部とを備える弦楽器弓の竿の製造方法であって、本体部用芯金に繊維樹脂プリプレグを巻きつけて本体部被成形品を形成する本体部巻きつけ工程と、ヘッド部用芯金に繊維樹脂プリプレグを巻きつけてヘッド部被成形品を形成する工程であって、前記ヘッド部用芯金として、前記ヘッド部の端面を成形する端面金型の端面成形面を貫通して立設されているものを用い、前記ヘッド部用芯金に接して長繊維樹脂プリプレグを巻きつけて内層を形成する工程と、前記内層の外側に前記長繊維樹脂プリプレグよりも繊維長の短い短繊維樹脂プリプレグを配置して中間層を形成する工程と、前記中間層の外側に長繊維樹脂プリプレグを巻きつけて外層を形成する工程とを含むヘッド部巻きつけ工程と、前記本体部被成形品および前記ヘッド部被成形品を前記本体部から前記ヘッド部を一体的に成形する金型のキャビティ内に設置し、加熱しながら前記端面金型を前記ヘッド部用芯金に沿って前記金型の端面形成位置に移動させて、前記キャビティ内の体積を減少させて圧力を付与することにより、成形品を成形する成形工程とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の弦楽器弓の竿の製造方法においては、短繊維樹脂プリプレグの繊維長が1mm〜10mmであるものとしてもよい。
【0011】
本発明の弦楽器弓の竿は、弓形棒状の本体部と、前記本体部の一端部から前記本体部の延在方向と交差する方向に延在して形成されるヘッド部とを備える弦楽器弓の竿であって、前記ヘッド部が、端面に開口する凹部を有し、前記ヘッド部を形成する壁部は、繊維強化プラスチックからなる前記凹部を囲む内層と、前記ヘッド部の外面に沿って配置された外層と、前記内層と前記外層との間に配置され、前記内層および前記外層よりも繊維長の短い繊維強化プラスチックからなる中間層とが厚み方向に形成されているものであることを特徴とする。
本発明の弦楽器弓の竿は、本発明の弦楽器弓の竿の製造方法を用いて得られたことを特徴とする。
また、本発明の弦楽器弓は、本発明の弦楽器弓の竿が備えられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の弦楽器弓の竿の製造方法は、本体部用芯金に繊維樹脂プリプレグを巻きつけて本体部被成形品を形成する本体部巻きつけ工程と、ヘッド部用芯金に繊維樹脂プリプレグを巻きつけてヘッド部被成形品を形成するヘッド部巻きつけ工程と、成形品を成形する成形工程とを備え、ヘッド部巻きつけ工程が、ヘッド部用芯金として、ヘッド部の端面を成形する端面金型の端面成形面を貫通して立設されているものを用い、ヘッド部用芯金に接して長繊維樹脂プリプレグを巻きつけて内層を形成する工程と、前記内層の外側に前記長繊維樹脂プリプレグよりも繊維長の短い短繊維樹脂プリプレグを配置して中間層を形成する工程と、前記中間層の外側に長繊維樹脂プリプレグを巻きつけて外層を形成する工程とを含むヘッド部巻きつけ工程とを含み、成形工程において、本体部被成形品および前記ヘッド部被成形品を前記本体部から前記ヘッド部を一体的に成形する金型のキャビティ内に設置し、加熱しながら前記端面金型を前記ヘッド部用芯金に沿って前記金型の端面形成位置に移動させて、前記キャビティ内の体積を減少させて圧力を付与するので、成形時に中間層が、外層と内層とによって過剰な移動を抑制されつつ端面金型の移動に追従して流動する。したがって、本発明の弦楽器弓の竿の製造方法によれば、ボイドのない美しい外観と、馬毛を保持する部材の取り付けや打撃などによって破損が生じにくい優れた強度とを有するヘッド部を備える本発明の弦楽器弓の竿が得られる。
【0013】
また、本発明の弦楽器弓の竿は、本発明の弦楽器弓の竿の製造方法を用いて得られたものであるので、本体部とヘッド部とを備え、ヘッド部が、端面に開口する凹部を有し、ヘッド部を形成する壁部は、繊維強化プラスチックからなる前記凹部を囲む内層と、ヘッド部の外面に沿って配置された外層と、前記内層と前記外層との間に配置され、前記内層および前記外層よりも繊維長の短い繊維強化プラスチックからなる中間層とが厚み方向に形成されているものとなる。
【0014】
したがって、本発明の弦楽器弓の竿は、ヘッド部の端面に開口する凹部の内面が内層からなる優れた強度を有するものとなり、馬毛を保持する部材をヘッド部に取り付ける際に、ヘッド部の凹部内に破損が生じにくいものとなる。また、本発明の弦楽器弓の竿は、ヘッド部の外面が外層からなる優れた強度を有するものとなるので、打撃などによってヘッド部が破損しにくいものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は本発明の弦楽器弓の一例を示した斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す弦楽器弓に備えられた竿のヘッド部を拡大して示した拡大断面図である。
【図3】図3は、本実施形態の竿の製造方法において用いる金型の一例を示した概略図であり、図3(a)は、成形時に内側となる面側から見た上金型と下金型の概略平面図である。また、図3(b)は端面金型の一例を示した概略斜視図である。
【図4】図4は本実施形態の竿の製造方法におけるヘッド部巻きつけ工程の一例を説明するための工程図であり、図4(a)は、内層を形成する工程を示し、図4(b)は、中間層を形成する工程を示し、図4(c)は、外層を形成する工程を示している。
【図5】図5は、成形工程における端面金型の移動を説明するための拡大模式図であり、図5(a)は、端面金型の移動前の状態を示した概略図であり、図5(b)は、端面金型の移動後の状態を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明の弦楽器弓の一例を示した斜視図である。図2は、図1に示す弦楽器弓に備えられた竿のヘッド部を拡大して示した拡大断面図である。
図1に示す弦楽器弓15は、本発明の実施形態である竿5と、馬毛5aとが備えられたものである。図1に示す弦楽器弓の竿5は、繊維強化プラスチックからなるものである。弦楽器弓の竿5は、弓形棒状の本体部51と、本体部51の一端部に設けられたヘッド部52とを備えている。本体部51は、断面視略円形の中空のものである。
【0017】
ヘッド部52は、図1および図2に示すように、本体部51の一端部52aから本体部51の延在方向と交差する方向に延在しており、本体部51の一端部52aから端面52bに向かって本体部51の延在方向の幅が拡幅した形状となっている。また、ヘッド部52は、図2に示すように、端面52bに開口する凹部52cを有している。凹部52cは、馬毛5aの端部をヘッド部52に保持させる部材(楔)を取り付けるためのものである。
【0018】
図1に示す弦楽器弓の竿5では、凹部52cの内面とヘッド部52の外面との間に形成されている繊維強化プラスチックからなる壁部55が、凹部52cを囲む長繊維層である内層54と、ヘッド部52の外面に配置された長繊維層である外層53と、内層54と外層53との間に配置され、内層54および外層53よりも繊維強化プラスチックに含まれる繊維長の短い短繊維層からなる中間層56とが厚み方向に形成されたものとなっている。
【0019】
次に、本発明の弦楽器弓の竿の製造方法の一例として、図1に示す弦楽器弓の竿5の製造方法を例に挙げて説明する。
はじめに、本実施形態の竿の製造方法において用いる金型について説明する。図3は、本実施形態において用いる金型の一例を示した概略図であり、図3(a)は、成形時に内側となる面側から見た上金型と下金型の概略平面図であり、図3(b)は図3(a)において符号14で示されるヘッド形成部に配置される端面金型の一例を示した概略斜視図である。
【0020】
図3(a)に示す金型10は、竿5の本体部51からヘッド部52を一体的に成形するものであり、図3(a)に示す上金型11と下金型12と図3(b)に示す端面金型13とを有している。図3(a)に示すように、上金型11は、竿5の一方の側面側の外形形状に対応する第1凹部11aを有し、下金型12は、竿5の他方の側面側の外形形状に対応する第2凹部12aを有している。第1凹部11aおよび第2凹部12aの一端部には、上金型11の上面と下金型12の上面とを対向配置させて重ねることによりヘッド部52の外形形状に対応する内面形状となる凹部を有するヘッド形成部14が設けられている。ヘッド形成部14には、後述する端面金型13のスライド部13dを対向配置させることにより、端面金型13の移動方向を案内するガイド部14aが形成されている。また、図3(a)に示す符号14bは、ガイド部14aとヘッド形成部14のヘッド部52の外面を成形する面との境界線である端面形成位置を示している。
【0021】
図3(b)に示す端面金型13は、図2に示すヘッド部52の端面52bを成形する端面成形面13aを有するものである。図3(a)に示す金型10では、端面金型13を、端面成形面13aを内側に向けてヘッド形成部14に配置し、上金型11と下金型12とを、図3(a)に示す上金型11の上面と下金型12の上面とを対向配置させて重ねることにより、第1凹部11aと第2凹部12aと端面成形面13aとに囲まれたキャビティが形成されるようになっている。
【0022】
また、図3(b)に示す端面金型13は、四角柱上の基体13c上に、ヘッド部52の端面52に対応する上面形状を有する柱状のスライド部13dを有している。図3(b)に示す端面金型13では、スライド部13dの上面が、端面成形面13aとされており、スライド部の13dの側面の長さが、図3(a)に示すヘッド形成部14のガイド部14aの長さと略同じとされている。また、上金型11の上面と下金型12の上面とを対向配置させて重ねたときのガイド部14aの金型10の厚み方向の断面形状は、ヘッド部52の端面52bの形状と略同じとされている。
【0023】
また、図3(b)に示す端面金型13は、成形時にヘッド部用芯金13bに沿って図3(a)および図5に示す金型10の端面形成位置14bに移動されるものである。ヘッド部用芯金13bは、成形後にヘッド用芯金13bを抜き取った後の図2で示すヘッド部52の凹部52cの底部に対応する先端部13eを有し、端面金型13の端面成形面13aを貫通して立設されており、成形前に繊維樹脂プリプレグが巻きつけられるものである。成形時、端面金型13のスライド部13dを、ヘッド形成部14内においてガイド部14aに沿ってキャビティ内側に移動させる。そのとき、固定されたヘッド部用芯金13bに沿って端面成形面13aが端面形成位置14bに移動することにより、端面成形面13aの先端部13e側に巻きつけた繊維樹脂プリプレグがキャビティ内に押し込まれるものである。
【0024】
このような金型10を用いる本実施形態の竿の製造方法では、まず、図示しない本体部用芯金(マンドレル)に所定の厚みで炭素繊維樹脂からなる繊維樹脂プリプレグを巻きつけて、本体部被成形品を形成する(本体部巻きつけ工程)。本実施形態においては、本体部用芯金に繊維樹脂プリプレグを巻きつける際に、巻きつける繊維樹脂プリプレグの厚みや積層数、角度などを適宜調節して、竿5の剛性を弦楽器弓の竿5としての適切な範囲とする。
【0025】
次に、図3(b)に示す端面金型13に一旦固定した状態のヘッド部用芯金13bに繊維樹脂プリプレグを巻きつけて、図4(c)に示されるヘッド部被成形品17を形成する(ヘッド部巻きつけ工程)。ヘッド部被成形品17の重量は、ヘッド部52の重量に応じて算出される。本実施形態においては、ヘッド部52としての機能とヘッド部52の重量とを考慮して、ヘッド部巻きつけ工程において、巻きつける繊維樹脂プリプレグの厚みや積層数、角度などを適宜調節することが好ましい。
【0026】
図4は本実施形態の竿の製造方法におけるヘッド部巻きつけ工程の一例を説明するための工程図である。本実施形態のヘッド部巻きつけ工程においては、まず、図4(a)に示すように、ヘッド部用芯金13bの、端面金型13の端面成形面13aより先端部13e側の位置に、ヘッド部用芯金13bに接して長繊維樹脂プリプレグ2を巻きつけて内層を形成する。
【0027】
本実施形態においては、内層の端面成形面13a側の部分は、スライド部13dが内側に押し込まれたときのヘッド部被成形品17の変形にばらつきが生じることを防止し、均一な品質のヘッド部52を有する竿5を歩留まりよく成形するために、端面成形面13aに接して形成されることが好ましい。
【0028】
内層の長繊維樹脂プリプレグ2としては、シート状、紐状、リボン状などの炭素繊維樹脂を用いる。長繊維樹脂プリプレグ2の厚みは、特に限定されるものではなく、ヘッド部用芯金13bに巻き付けやすいものを用いることができる。長繊維樹脂プリプレグ2を構成する炭素繊維としては、一方向性に引き揃えたものや二方向性織物などを用いることができる。
内層の長繊維樹脂プリプレグ2の繊維長は、ヘッド部用芯金13bの周長以上が好ましく、10mm以上であることが好ましい。長繊維樹脂プリプレグ2の繊維長が、10mm以上である場合、ヘッド部52の凹部52cの内面が優れた強度を有する長繊維層である内層54からなるものが得られるので、馬毛5aを保持する部材をヘッド部52に取り付ける際における破損を効果的に防止できる。
内層の長繊維樹脂プリプレグ2の繊維長の上限は、特に限定されるものではなく、ヘッド部用芯金13bへの巻き付けやすさなどに応じて決定できる。
【0029】
次に、図4(b)に示すように、内層の外側に長繊維樹脂プリプレグ2よりも繊維長の短い短繊維樹脂プリプレグ3を配置して中間層を形成する。
短繊維樹脂プリプレグ3としては、長繊維樹脂プリプレグ2を切断してなるものを用いることができる。短繊維樹脂プリプレグ3の繊維長は、内層および後述する外層の長繊維樹脂プリプレグ2以下であって10mm以下とされ、1mm〜10mmの範囲であることが好ましい。短繊維樹脂プリプレグ3の繊維長が、内層および外層の長繊維樹脂プリプレグ2の繊維長を超えると、成形時に端面金型13をヘッド部用芯金13bに沿って金型10の端面形成位置14bに移動させて、繊維樹脂プリプレグをキャビティ内に押し込んで圧力をかけても、端面金型13の移動にヘッド部被成形品17を構成する繊維樹脂プリプレグが追従して流動しないため、キャビティ内に空隙が残留し、ヘッド部52にボイドが形成されてしまう。
【0030】
短繊維樹脂プリプレグ3の繊維長が10mm以下である場合、成形時の端面金型13の移動に伴って容易に短繊維樹脂プリプレグ3が流動して、キャビティ内の空隙が効率よく消滅されるため、ボイドのない美しい外観を有するヘッド部52が形成される。なお、成形時の短繊維樹脂プリプレグ3の流動性をより一層向上させて、ボイドの形成をより効果的に防止するためには、短繊維樹脂プリプレグ3の繊維長を8mm以下とすることがより好ましく、6mm以下とすることがさらに好ましい。
【0031】
また、短繊維樹脂プリプレグ3の繊維長が1mm以上である場合、成形時の端面金型13の移動に伴う短繊維樹脂プリプレグ3の過剰な移動が、内層および後述する外層によって抑制される。このことにより、成形時に短繊維樹脂プリプレグ3が内層および外層の外側に流出して、上金型11と下金型12との間や、端面金型13と上金型11および/または下金型12との間から流出することが防止され、成形後に炭素繊維を含むバリが形成されることを防止できる。
【0032】
金型10から短繊維樹脂プリプレグ3を構成する炭素繊維が流出して、炭素繊維を含む多くのバリが形成されると、金型10が痛むため、ヘッド部52の品質や生産性が低下しやすくなり、好ましくない。また、繊維が含まれるバリを除去する後工程が必要となり負担が増え、生産性が低下する。成形時に短繊維樹脂プリプレグ3が金型10から流出することを効果的に防止するためには、短繊維樹脂プリプレグ3の繊維長を2mm以上とすることがさらに好ましい。
【0033】
短繊維樹脂プリプレグ3は、長繊維樹脂プリプレグ2を切断してなる切断片をそのまま使用してもよいが、繊維長が長繊維樹脂プリプレグ2以下である切断片をプレス加工して板状にしたものであってもよい。
本実施形態においては、ヘッド部被成形品17の重量を所定の重量とするために、中間層を形成する短繊維樹脂プリプレグ3の使用量を調節することが好ましい。短繊維樹脂プリプレグ3として、繊維長が長繊維樹脂プリプレグ2以下である切断片をプレス加工して板状にしたものを用いる場合、使用する板状の短繊維樹脂プリプレグ3の面積によって中間層の重量を容易に高精度で調整できる。また、短繊維樹脂プリプレグ3として、繊維長が長繊維樹脂プリプレグ2以下である切断片をプレス加工して板状にしたものを用いる場合、短繊維樹脂プリプレグ3が、繊維長が長繊維樹脂プリプレグ2以下である切断片をそのまま使用する場合と比較して、内層の外側に容易に短繊維樹脂プリプレグ3を配置できるし、中間層内に含まれる空気量を容易に少なくでき、ボイドの形成をより効果的に防止できる。
【0034】
短繊維樹脂プリプレグ3は、図4(b)に示すように、端面成形面13aに近い位置ほどヘッド部用芯金13bを軸とする外周寸法が大きくなるように配置することが好ましく、中間層の外形形状がヘッド部52の外形形状に近似する形状となるように配置されるほど好ましい。また、中間層は、内層を完全に覆うように形成されることが好ましいが、例えば、ヘッド部用芯金13bの先端部13eに形成された内層など内層の一部が中間層によって覆われていなくてもよい。
【0035】
次に、図4(c)に示すように、中間層の外側に長繊維樹脂プリプレグ2を巻きつけて外層を形成する。このことにより、ヘッド部被成形品17が得られる。外層に用いられる長繊維樹脂プリプレグ2としては、内層と同じものを用いることができる。外層の長繊維樹脂プリプレグ2の繊維長は、短繊維樹脂プリプレグ3を超える長さとされ、ヘッド部用芯金13bの周長以上が好ましく、10mm以上であることが好ましい。長繊維樹脂プリプレグ2の繊維長が、10mm以上である場合、ヘッド部52の外面が優れた強度を有する長繊維層である外層55からなるものが得られるので、より一層打撃などによってヘッド部52が破損しにくいものとなる。外層の長繊維樹脂プリプレグ2の繊維長の上限は、特に限定されるものではなく、中間層への巻き付けやすさなどに応じて決定できる。
【0036】
また、本実施形態においては、内層および外層に用いられる長繊維樹脂プリプレグ2の繊維長が、短繊維樹脂プリプレグ3を超える長さであるので、成形時の端面金型13の移動に伴う短繊維樹脂プリプレグ3の過剰な移動を内層および外層によって抑制でき、成形後に炭素繊維を含むバリが形成されることが防止される。
【0037】
次に、成形工程を行う。成形工程においては、まず、図3に示す金型10の第1凹部11aと第2凹部12aとの間に、本体部用芯金(マンドレル)に繊維樹脂プリプレグを巻きつけてなる本体部被成形品と、ヘッド部用芯金13bに繊維樹脂プリプレグを巻きつけてなるヘッド部被成形品17とを設置する。このとき、本体部被成形品は、本体部用芯金と一体化された状態で第1凹部11aと第2凹部12aとの間に設置する。また、ヘッド部被成形品17は、ヘッド部用芯金13bおよび端面金型13と一体化された状態で、端面成形面13aを内側に向けて金型10のヘッド形成部14に設置する。このことにより、第1凹部11aと第2凹部12aと端面成形面13aとに囲まれたキャビティが形成される。
【0038】
その後、加熱しながら端面金型13をヘッド部用芯金13bに沿って金型10の端面形成位置14bに移動させて、金型10内に圧力を付与することにより、本体部51とヘッド部52とが一体化された成形品である弦楽器弓の竿5を成形する。
なお、成形時の加熱温度や加熱時間等の条件は、本体部被成形品およびヘッド部被成形品17に用いられている材料や厚み、竿5の形状等によって適宜決定でき、特に限定されない。また、成形工程における端面金型13の移動は、金型10の加熱を開始すると同時に行ってもよいし、所定の温度で予備加熱を行ってから行ってもよい。また、端面金型13は、全ての移動距離分一度に移動させてもよいし、移動距離を複数に分けて段階的に移動させてもよい。
【0039】
ここで、本実施形態の成形工程における端面金型13の移動について、図面を用いて説明する。図5(a)は、端面金型13の移動前の状態を示した概略図であり、図5(b)は、端面金型13の移動後の状態を示した概略図である。なお、図5(a)および図5(b)においては、図面を見やすくするために、繊維樹脂プリプレグの図示を省略している。また、図5(a)および図5(b)においては、図面を見やすくするために、上金型11の図示を省略して金型10内の状態を示している。
【0040】
図5(a)および図5(b)において、符号16は、ヘッド形成部14内で端面金型13を支持しつつ、端面金型13の端面成形面13aを端面形成位置14b側に移動させる冶具を示している。冶具16は、ヘッド形成部14内に配置されている端面金型13の基体13cを、竿5の長さ方向両側から挟み込むように設置されており、端面金型13を金型10の端面形成位置14b側に移動させる図示しない移動手段を備えている。
【0041】
図5(a)に示すように、端面金型13の移動前の状態では、ヘッド形成部14内に配置された端面金型13のスライド部13dの上端である端面成形面13aが、ヘッド形成部14のガイド部14aの外側縁部14cの位置よりヘッド部52の外面を成形する面との境界線である端面形成位置14b側に間隙を有して位置するように配置されている。すなわち、端面金型13の移動前の状態では、ガイド部14aとヘッド部52の外面を成形する面との境界線(端面形成位置14b)と、端面成形面13aとの間にはスライド部13dが移動するための間隔が設けられている。
【0042】
このことにより、端面金型13の移動前の段階では、金型10のキャビティ4内の体積が、ヘッド部52の外面を成形する面の下端(端面形成位置14bに対応する位置)と端面成形面13aとの間の隙間の体積分、実際の竿5の体積よりも大きくなっている。よって、ヘッド部被成形品17の体積がヘッド部52の体積以上であっても、ヘッド部被成形品17をキャビティ4内に容易に設置できる。その結果、ヘッド部被成形品17を形成している繊維樹脂プリプレグが上金型11と下金型12との間や、端面金型13と上金型11および/または下金型12との間に挟みこまれることを防止でき、成形後に炭素繊維を含むバリが形成されることを防止できる。
【0043】
そして、金型10を加熱しながら、図示しない移動手段によってガイド部14aに沿って端面金型13のスライド部13dを押し込み、端面金型13をヘッド部用芯金13bに沿って金型10の端面形成位置14bに移動させると、図5(a)におけるヘッド部52の外面を成形する面の下端(端面形成位置14bに対応する位置)と端面成形面13aとの間の隙間の体積分、金型10のキャビティ4内の体積が小さくなり、ヘッド部用芯金13bに巻きつけられた繊維樹脂プリプレグが金型10内に押し込まれて、金型10のキャビティ4内に圧力が付与される。
端面金型13の移動後は、図5(b)に示すように、端面金型13のスライド部13dの端面成形面13aは、ガイド部14aとヘッド部52の外面を成形する面との境界線である端面形成位置14bと一致されている。
【0044】
金型10を加熱しながら、端面金型13を移動させることにより、ヘッド部被成形品17を形成している繊維樹脂プリプレグの炭素繊維および樹脂が流動されるとともに、ヘッド部用芯金13bに巻きつけられていた図4(c)に示されるヘッド部被成形品17が端面成形面13aによって内側に向かって押し込まれる。
そして、ヘッド部被成形品17の外層は、端面成形面13aによって内側に向かって押し込まれることによって、金型10のキャビティ4内のヘッド部52の外面を成形する面に沿って移動する。また、ヘッド部被成形品17の内層は、端面金型13の移動に伴って、ヘッド部用芯金13bに沿って移動する。また、ヘッド部被成形品17の中間層を形成する短繊維樹脂プリプレグ3は、外層と内層を形成する長繊維樹脂プリプレグ2によって過剰な移動を抑制されつつ、端面金型13の移動に追従して流動し、外層をキャビティ4内のヘッド部52の外面を成形する面に押し付けながら内側に向かって移動して、キャビティ4内の空隙を消滅させる。
【0045】
以上の工程により、ヘッド部52の端面52bに開口する凹部52cの内面が長繊維層である内層54からなる優れた強度を有し、ヘッド部52の外面が長繊維層である外層53からなる優れた強度を有し、ボイドのない美しい外観を有する図1に示す弦楽器弓の竿5が得られる。
【0046】
本実施形態の弦楽器弓の竿5の製造方法は、ヘッド部用芯金13bに接して長繊維樹脂プリプレグ2を巻きつけて内層を形成する工程と、内層の外側に長繊維樹脂プリプレグ2よりも繊維長の短い短繊維樹脂プリプレグ3を配置して中間層を形成する工程と、中間層の外側に長繊維樹脂プリプレグ2を巻きつけて外層を形成する工程とを含むヘッド部巻きつけ工程とを含み、成形工程において、本体部被成形品およびヘッド部被成形品17を本体部51からヘッド部52を一体的に成形する金型10のキャビティ4内に設置し、加熱しながら端面金型13をヘッド部用芯金13bに沿って金型10の端面形成位置14bに移動させて、キャビティ4内の体積を減少させて圧力を付与することにより、竿5を成形するので、ボイドのない美しい外観と、馬毛を保持する部材の取り付けや打撃などによって破損が生じにくい優れた強度とを有するヘッド部52を備えた弦楽器弓の竿5が得られる。
【0047】
これに対し、例えば、上金型と下金型とからなる金型のキャビティ内に、キャビティ内の体積よりも過剰な体積の繊維強化プラスチックを設置し、加熱しながら上金型および下金型から上下方向の圧力を付与することにより成形する方法により弦楽器弓の竿のヘッド部を形成した場合、過剰な体積の繊維強化プラスチックが、上金型と下金型との間に挟みこまれやすく、成形後に炭素繊維を含むバリが形成されやすい。しかし、バリの形成を抑制するために、キャビティ内に設置する繊維強化プラスチックの体積を削減すると、成形時のキャビティ内の圧力が不足して、成形後の成形体の内部および表面に繊維強化プラスチック内に含まれる空気に起因する多くの空隙が残留する。成形体に残留した空隙は、外観および強度を低下させる。したがって、バリの形成を抑制しつつ、外観および強度に優れた弦楽器弓の竿を製造することは困難であった。
【0048】
なお、本実施形態においては、繊維樹脂プリプレグとして、炭素繊維樹脂からなるものを例に挙げて説明したが、繊維樹脂プリプレグの少なくとも一部または全部をガラス繊維樹脂からなるものとしてもよい。また、アラミド繊維等その他の繊維を組み合わせても適用可能である。
【実施例】
【0049】
「実施例1」
図3に示す金型10を用い、以下に示す方法により、図1に示す弦楽器弓の竿5を製造した。なお、繊維樹脂プリプレグとしては、炭素繊維樹脂からなる東邦テナックス製CFRPプリプレグ(一方向に引き揃えたもの:商品名:Q−111H0900(34)))を使用した。また、短繊維樹脂プリプレグとしては、東邦テナックス製CFRPプリプレグ(一方向に引き揃えたもの:商品名:Q−111H0900(34)))を繊維長10mmに切断して得られた切断片をプレス加工して板状にしたものを用い、長繊維樹脂プリプレグとしては、そのままのものを幅5mm長さ300mmとなるように切り出して使用した。
【0050】
まず、本体部用芯金に繊維樹脂プリプレグを巻きつけて、本体部被成形品を形成した(本体部巻きつけ工程)。
次に、端面金型13に一旦固定した状態のヘッド部用芯金13bの、端面成形面13aより先端部13e側の位置に、ヘッド部用芯金13bに接して長繊維樹脂プリプレグ2を巻きつけて内層を形成した。内層の端面成形面13a側の部分は、端面成形面13aに接して形成した。
次に、内層の外側に、外形形状がヘッド部52の外形形状に近似する形状となるように短繊維樹脂プリプレグ3を配置して中間層を形成した。
次に、中間層の外側に長繊維樹脂プリプレグ2を巻きつけて外層を形成し、ヘッド部被成形品17を得た。
【0051】
次に、金型10の第1凹部11aと第2凹部12aとの間に、本体部用芯金と一体化された状態の本体部被成形品と、ヘッド部用芯金13bおよび端面金型13と一体化された状態のヘッド部被成形品17とを設置した。
その後、成型温度135℃で8分間予備加熱し、端面金型13をヘッド部用芯金13bに沿って金型10の端面形成位置14bに移動させて、金型10内に圧力を付与し、その後、135℃で40分間加熱して本体部51とヘッド部52とが一体化された成形品である弦楽器弓の竿5を成形した。
【0052】
「実施例2」
中間層を形成する短繊維樹脂プリプレグとして、繊維長8mmに切断して得られた切断片をプレス加工して板状にしたものを使用したこと以外は、実施例1と同様にして弦楽器弓の竿5を成形した。
「実施例3」
中間層を形成する短繊維樹脂プリプレグとして、繊維長5mmに切断して得られた切断片をプレス加工して板状にしたものを使用したこと以外は、実施例1と同様にして弦楽器弓の竿5を成形した。
【0053】
「実施例4」
中間層を形成する短繊維樹脂プリプレグとして、繊維長2mmに切断して得られた切断片をそのまま使用したこと以外は、実施例1と同様にして弦楽器弓の竿5を成形した。
「実施例5」
中間層を形成する短繊維樹脂プリプレグとして、繊維長1mmに切断して得られた切断片をそのまま使用したこと以外は、実施例1と同様にして弦楽器弓の竿5を成形した。
【0054】
「比較例1」
中間層を形成する短繊維樹脂プリプレグとして、繊維長11mmに切断して得られた切断片をプレス加工して板状にしたものを使用したこと以外は、実施例1と同様にして弦楽器弓の竿5を成形した。
「比較例2」
中間層を形成する短繊維樹脂プリプレグとして、繊維長0.8mmに切断して得られた切断片をそのまま使用したこと以外は、実施例1と同様にして弦楽器弓の竿5を成形した。
【0055】
このようにして得られた実施例1〜実施例5、比較例1、比較例2の竿について外観を評価した。その結果、実施例1〜実施例5では外層の外側に流出した炭素繊維は見られなかった。
また、中間層の繊維長が10mmである実施例1では、先端部に僅かにボイドが見られたが、非常に小さく、パテ埋めで修復ができるほどであり、品質として問題無いものであった。中間層の繊維長が8mmである実施例2、中間層の繊維長が5mmである実施例3、中間層の繊維長が2mmである実施例4では、ボイドが見られなかった。中間層の繊維長が1mmである実施例5では、ヘッド部52の楔が取り付けられる凹部52cの内面に僅かにボイドが生じたが、非常に小さく、その部分から亀裂が生じることはなく、品質として問題無いものであった。
【0056】
これに対し、比較例1では、成形後のサンディング仕上げ工程において、内部に生じていた大きなボイドが表出し、品質として問題となった。これは、中間層短繊維樹脂プリプレグ3の繊維長が長すぎたため、流動性が不足して、成形時に各層に含まれていた空気を追い出すことができず、外層側に繊維が含まれない樹脂と空気からなるボイドが発生し、その樹脂表層部分がサンディングにより剥がれたものと推定される。
また、比較例2では、中間層短繊維樹脂プリプレグ3の繊維長が短かすぎたため、外層の外側に炭素繊維が流出し、成形品に炭素繊維を含むバリが残り、また、流出した分の体積が減ったので、成形時に端面金型の移動による圧力が均等に十分にかからず、ヘッド部52の楔が取り付けられる凹部52cの内面に品質として問題となる大きなボイドが生じ、その部分から亀裂が生じた。
【符号の説明】
【0057】
2…長繊維樹脂プリプレグ、3…短繊維樹脂プリプレグ、4…キャビティ、5a…馬毛、5…竿、10…金型、11…上金型、11a…第1凹部、12…下金型、12a…第2凹部、13…端面金型、13a…端面成形面、13b…ヘッド部用芯金、13c…基体、13d…スライド部、13e…先端部、14…ヘッド形成部、14a…ガイド部、15…弦楽器弓、16…冶具、17…ヘッド部被成形品、51…本体部、52…ヘッド部、52b…端面、52c…凹部、53…外層、54…内層、55…壁部、56…中間層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弓形棒状の本体部と、前記本体部の一端部から前記本体部の延在方向と交差する方向に延在して形成されるヘッド部とを備える弦楽器弓の竿の製造方法であって、
本体部用芯金に繊維樹脂プリプレグを巻きつけて本体部被成形品を形成する本体部巻きつけ工程と、
ヘッド部用芯金に繊維樹脂プリプレグを巻きつけてヘッド部被成形品を形成する工程であって、前記ヘッド部用芯金として、前記ヘッド部の端面を成形する端面金型の端面成形面を貫通して立設されているものを用い、
前記ヘッド部用芯金に接して長繊維樹脂プリプレグを巻きつけて内層を形成する工程と、前記内層の外側に前記長繊維樹脂プリプレグよりも繊維長の短い短繊維樹脂プリプレグを配置して中間層を形成する工程と、前記中間層の外側に長繊維樹脂プリプレグを巻きつけて外層を形成する工程とを含むヘッド部巻きつけ工程と、
前記本体部被成形品および前記ヘッド部被成形品を前記本体部から前記ヘッド部を一体的に成形する金型のキャビティ内に設置し、加熱しながら前記端面金型を前記ヘッド部用芯金に沿って前記金型の端面形成位置に移動させて、前記キャビティ内の体積を減少させて圧力を付与することにより、成形品を成形する成形工程とを備えることを特徴とする弦楽器弓の竿の製造方法。
【請求項2】
前記短繊維樹脂プリプレグの繊維長が1mm〜10mmであることを特徴とする請求項1に記載の弦楽器弓の竿の製造方法。
【請求項3】
弓形棒状の本体部と、前記本体部の一端部から前記本体部の延在方向と交差する方向に延在して形成されるヘッド部とを備える弦楽器弓の竿であって、
前記ヘッド部が、端面に開口する凹部を有し、
前記ヘッド部を形成する壁部は、繊維強化プラスチックからなる前記凹部を囲む内層と、前記ヘッド部の外面に沿って配置された外層と、前記内層と前記外層との間に配置され、前記内層および前記外層よりも繊維長の短い繊維強化プラスチックからなる中間層とが厚み方向に形成されているものであることを特徴とする弦楽器弓の竿。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の弦楽器弓の竿の製造方法を用いて得られたことを特徴とする弦楽器弓の竿。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の弦楽器弓の竿が備えられていることを特徴とする弦楽器弓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−97265(P2013−97265A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241460(P2011−241460)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】