説明

弱溶剤型フッ素樹脂塗料用硬化剤およびこれを用いた2液型フッ素樹脂塗料

【課題】弱溶剤に対する溶解性に優れ、フッ素樹脂ポリオールとの反応性が良好な弱溶剤型フッ素樹脂塗料用硬化剤、およびこれを用いた2液型フッ素樹脂塗料を提供すること。
【解決手段】ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアヌレートおよび/またはウレタン結合を含有するヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアヌレートからなるポリイソシアヌレート体と、ノルボルナンジイソシアネートとを含有し、遊離のヘキサメチレンジイソシアネートが0.3質量%以下、かつ、溶剤を含まない状態で、ポリイソシアヌレート体の粘度が25℃で600〜1,500mm2/sである弱溶剤型フッ素樹脂塗料用硬化剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弱溶剤型フッ素樹脂塗料用硬化剤およびこれを用いた2液型フッ素樹脂塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅やビルなどの建造物の外装に用いられる塗料には、高い耐候性が要求される。特に、高層建築物、橋梁物については、巨大かつ高層であるため、塗装面積が広大なだけでなく塗装作業時の危険性が伴うため、頻繁に補修並びに塗り替え作業ができない。このような理由からフッ素樹脂塗料が近年使用されるようになってきた。
そして、フッ素樹脂塗料を構成するイソシアネート系硬化剤としては、フッ素樹脂ポリオールとの反応性は低いものの、耐候性に優れた脂肪族系または脂環族系イソシアネートが好んで使用されてきた。
【0003】
一方、主剤と硬化剤とからなる2液型フッ素樹脂塗料の溶剤としては、一般的に、トルエンやキシレン等の芳香族炭化水素溶剤や、酢酸ブチル等のエステル系溶剤などの強溶剤、すなわち、溶解力の強い溶剤が用いられていた。
これらの強溶剤は、臭気が強いため、近年、作業環境の改善や地球環境負荷の低減という点から、敬遠される傾向にある。さらに、塗装の補修並びに塗り替えの際、旧塗膜の上から新たに塗装する場合に、その補修用塗料中に強溶剤が含まれている場合、その強溶剤の溶解力が高いために旧塗膜が膨潤ないしは溶解し、旧塗膜まで補修する必要が発生する虞がある。その結果、塗装作業の拡大化と煩雑化、塗装費用の増大、工期の延長などの問題が生じる場合がある。
【0004】
以上の問題解決のため、フッ素樹脂塗料を用いる場合に、硬化剤として、例えばヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと略称する)のような脂肪族イソシアネートからなる組成物を用い、溶剤として、比較的臭気が少なく、かつ溶解力の弱い低極性溶剤である弱溶剤を用いたタイプが好んで使用されるようになってきた。
例えば、特許文献1(特開平8−302282号公報)には、パラフィン系溶剤またはナフテン系溶剤を30重量%以上含む溶剤を用いたフッ素樹脂系の塗料用被覆組成物が開示されている。
また、特許文献2(特開2006−152080号公報)には、弱溶剤に対する溶解性に優れた水酸基含有フッ素樹脂を含む弱溶剤型フッ素樹脂系塗料組成物が開示されている。
【0005】
しかし、これらの弱溶剤型フッ素樹脂塗料は、フッ素樹脂ポリオールの塗膜乾燥性が悪い(遅い)上に、弱溶剤の揮発が遅いため、塗膜がベタつき易く、初期汚染性という点で問題がある。さらに、イソシアネート硬化剤のフッ素樹脂ポリオールおよび弱溶剤に対する溶解性が低いため、使用可能な主剤および硬化剤に制約がある上に、イソシアネート硬化剤と当該ポリオールとの反応性が乏しいことから、触媒などで反応を促進させる必要があるため、可使時間の維持が難しいという問題もある。
【0006】
これらの点に鑑み、イソシアネート硬化剤のフッ素樹脂ポリオールに対する相溶性を高める手法として、硬化剤としてHDIの環状3量体を用いたり(特許文献3:特開昭63−265970号公報)、アロファネート基およびイソシアヌレート基を有し、アロファネート基とイソシアヌレート基とのモル比を所定範囲に調整したポリイソシアネートを用いたり(特許文献4:特許第3244297号公報)する手法が開示されている。
【0007】
しかし、上記各特許文献の手法を用いた場合でも、イソシアネート硬化剤の弱溶剤や、低汚染化剤として必要に応じて用いられるアルキルシリケート(特許文献5,6参照)に対する溶解性は不十分であり、さらなる改善が求められている。
【0008】
【特許文献1】特開平8−302282号公報
【特許文献2】特開2006−152080号公報
【特許文献3】特開昭63−265970号公報
【特許文献4】特許第3244297号公報
【特許文献5】特開2002−38085号公報
【特許文献6】特開2005−23285号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、弱溶剤に対する溶解性に優れ、フッ素樹脂ポリオールとの反応性が良好な弱溶剤型フッ素樹脂塗料用硬化剤、およびこれを用いた2液型フッ素樹脂塗料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、硬化剤として、特定範囲の粘度を有するHDIのポリイソシアヌレート体と、ノルボルナンジイソシアネート(以下、NBDIと略称する)とを併用することで、硬化剤の弱溶剤に対する溶解性とフッ素樹脂ポリオールとの相溶性が向上する結果、硬化剤と、主剤中のフッ素樹脂ポリオールとの反応が速やかに進行し、塗膜乾燥性や強度に優れた塗膜が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、
1. HDIのポリイソシアヌレートおよび/またはウレタン結合を含有するHDIのポリイソシアヌレートからなるポリイソシアヌレート体と、NBDIとを含有し、遊離のHDIが0.3質量%以下、かつ、溶剤を含まない状態で、前記ポリイソシアヌレート体の粘度が25℃で600〜1,500mm2/sであることを特徴とする弱溶剤型フッ素樹脂塗料用硬化剤、
2. 前記ポリイソシアヌレート体とNBDIとを、ポリイソシアヌレート体/NBDI=9.3/0.7〜0.7/9.3(質量比)で含有する1の弱溶剤型フッ素樹脂塗料用硬化剤、
3. 弱溶剤を含有する1または2の弱溶剤型フッ素樹脂塗料用硬化剤、
4. アルキルシリケートおよびその縮合物の少なくとも一方を含有する1〜3のいずれかの弱溶剤型フッ素樹脂塗料用硬化剤、
5. 前記アルキルシリケートおよびその縮合物の少なくとも一方を、10〜40質量%含む4の弱溶剤型フッ素樹脂塗料用硬化剤、
6. 前記アルキルシリケートが、エチルシリケートである4または5の弱溶剤型フッ素樹脂塗料用硬化剤、
7. 1〜6のいずれかの弱溶剤型フッ素樹脂塗料用硬化剤と、水酸基およびカルボキシル基を含有するとともに弱溶剤に可溶なフッ素樹脂ポリオール並びに弱溶剤を含む主剤と、からなる2液型フッ素樹脂塗料、
8. 前記ポリイソシアヌレート体およびNBDIと、前記フッ素樹脂ポリオールとが、イソシアネート基/水酸基当量比=2/1〜1/2の範囲で配合される7の2液型フッ素樹脂塗料
を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、弱溶剤型フッ素樹脂塗料用硬化剤として、HDIの各種変性体の中でもポリイソシアヌレート体を用いているため、弱溶剤型フッ素樹脂塗料の短所である塗膜乾燥性の悪さを解消することができる。
また、HDIのポリイソシアヌレート体の粘度を所定範囲に調節することで、ポリイソシアヌレート体の、NBDIおよび弱溶剤への溶解性を高めることができる。
さらに、弱溶剤との相溶性およびポリイソシアヌレート体の溶解性に優れたNBDIを用いているため、イソシアヌレート体とNBDIとを含む有機ポリイソシアネート硬化剤全体としての弱溶剤に対する溶解性が向上する結果、弱溶剤可溶型フッ素樹脂ポリオールとの反応性が向上し、当該硬化剤を用いた塗料の塗膜乾燥性および初期汚染性が改善される効果が発現する。
また、本発明の弱溶剤型フッ素樹脂塗料用硬化剤は、HDIのポリイソシアヌレートおよび/またはウレタン結合含有のHDIのポリイソシアヌレートと、NBDIとを含有しており、その構造故に高耐候性を有しているため、これをさらに高耐候性を有するフッ素樹脂ポリオールと組み合わせることによって耐候性に極めて優れた塗膜を形成することができる。
さらに、弱溶剤を用いているため、地球環境や作業環境に優しい硬化剤および塗料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明に係る弱溶剤型フッ素樹脂塗料用硬化剤は、HDIのポリイソシアヌレート(以下、HDIポリイソシアヌレートという)およびウレタン結合を含有するHDIのポリイソシアヌレート(以下、ウレタン結合含有HDIポリイソシアヌレートという)からなるポリイソシアヌレート体と、NBDIとを含有してなるものである。
すなわち、本発明では、NBDIが、HDIポリイソシアヌレートおよび/またはウレタン結合含有HDIポリイソシアヌレートと、弱溶剤の双方に対する相溶性に優れていることを見出し、これを硬化剤の一成分として用いる。
このNBDIは、市販品として入手可能であり、例えば、コスモネートNBDI(三井化学ポリウレタン株式会社製)等が挙げられる。
【0014】
HDIポリイソシアヌレートおよびウレタン結合含有HDIポリイソシアヌレートは、上述の特許文献3に開示されているような、従来公知の各種手法で製造することができる。
【0015】
NBDIおよび弱溶剤との溶解性を高め、ポリイソシアヌレート体とNBDIとからなる有機ポリイソシアネート組成物全体としての弱溶剤に対する溶解性を向上させるためには、ポリイソシアヌレート体の粘度は、遊離のヘキサメチレンジイソシアネートが0.3質量%以下、かつ、溶剤を含まない状態で、600〜1,500mm2/s(25℃、以下同様)が好ましく、700〜1,400mm2/sであることがより好ましい。
ポリイソシアヌレート体の粘度が600mm2/s未満の場合、ポリイソシアヌレート体中のポリイソシアヌレート構造の含有量が低いため、塗膜の乾燥性が悪く(遅く)、耐候性にも劣る。一方、粘度が1,500mm2/sを超えると、ポリイソシアヌレート体中のポリイソシアヌレート構造の含有量が高すぎて、弱溶剤およびNBDIとの相溶性(溶解性)が低下する。
【0016】
さらに、本発明において、ポリイソシアヌレート体とNBDIとの配合割合は特に限定されるものではないが、ポリイソシアヌレート体/NBDI=9.3/0.7〜0.7/9.3(質量比、以下同様)が好ましく、9.3/0.7〜1.5/8.5がより好ましく、9.3/0.7〜3/7がより一層好ましい。
ポリイソシアヌレート体とNBDIとの配合比を上記範囲に調節することで、硬化剤の弱溶剤に対する溶解性や、硬化剤と弱溶剤可溶型フッ素樹脂ポリオールとの相溶性が高まる結果、硬化剤とポリオールとの反応性が向上し、得られる塗料の塗膜乾燥性および初期汚染性が良好になる。
【0017】
すなわち、NBDIに対するポリイソシアヌレート体の質量比が9.3を超えると、有機ポリイソシアネート組成物中におけるポリイソシアヌレート構造が相対的に多くなる。その結果、弱溶剤およびフッ素樹脂ポリオールとの相溶性(溶解性)が悪くなるため、反応性が低下し、塗料の塗膜乾燥性および初期汚染性が悪化する虞があるうえに、均一な塗膜とならず、高光沢の塗膜が得られない虞がある。
一方、NBDIに対するポリイソシアヌレート体の質量比が0.7未満であると、反対にポリイソシアヌレート構造が相対的に少なくなる。その結果、塗膜の耐候性が低下する虞があるうえに、ポリイソシアヌレート体の官能基数がNBDIのそれより高いため、塗膜強度が低下する虞がある。
【0018】
イソシアネートとしては、耐候性の点から無黄変タイプのものが好ましいため、本発明では主としてHDIが用いられるが、必要に応じて、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、2−メチル−ペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチル−ペンタン−1,5−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;キシリレン−1,4−ジイソシアネート、キシリレン−1,3−ジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等を一部併用することも可能である。これらの有機ジイソシアネートは、単独あるいは2種以上の混合物のいずれの形態で用いてもよい。併用する場合、その使用量は、HDIに対して5〜35質量%程度が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
【0019】
また、本発明では、HDIポリイソシアヌレートだけなく、ウレタン結合含有HDIポリイソシアヌレートも用いることができるが、このウレタン結合含有HDIポリイソシアヌレートとしては、活性水素化合物により予めウレタン変性されたHDIをイソシアヌレート化したものでも、HDIと活性水素化合物との混合物をイソシアヌレート化(すなわち、イソシアヌレート化と同時にウレタン化および部分的にアロファネート化も進行)したものでも、さらにはHDIポリイソシアヌレートをその後に活性水素化合物によりウレタン変性したものでもよい。
【0020】
この活性水素化合物としては、官能基数が1〜5(一価〜五価アルコール)であれば本発明に使用できる。その具体例としては、フェノール、クレゾール等のフェノール性ヒドロキシ化合物;メタノール、エタノール、プロパノール(各種異性体を含む)、ブタノール(各種異性体を含む)、ペンタノール(各種異性体を含む)、ヘキサノール(各種異性体を含む)、ヘプタノール(各種異性体を含む)、オクタノール(各種異性体を含む)、ノナノール(各種異性体を含む)、デカノール(各種異性体を含む)、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール(テトラデカノール)、ペンタデカノール、セチルアルコール(ヘキサデカノール)、ヘプタデカノール、ステアリルアルコール(オクタデカノール)、ノナデカノール、オレイルアルコール等の脂肪族モノオール類、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール等の脂環族モノオール類;ベンジルアルコール等の芳香脂肪族モノオール類;エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−n−ヘキサデカン−1,2−エチレングリコール、2−n−エイコサン−1,2−エチレングリコール、2−n−オクタコサン−1,2−エチレングリコール等の脂肪族ジオール類;シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂環族ジオール類;ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンゼン等の芳香脂肪族ジオール類;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の脂肪族ポリオール類;ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール等のオキシアルキレン基含有グリコール類;上記各化合物を開始剤として用いて、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、グリシジルエーテル、メチルグリシジルエーテルなどのモノマーを単独でまたは2種以上混合して公知の方法により付加重合して得られたポリエーテルモノまたはポリオール;アミン系モノまたはポリオール;アミノアルコール系モノまたはポリオール;片末端をアルキル基で封鎖したポリオキシエチレンモノアルキルエーテル類;アジピン酸、無水フタル酸などの二塩基酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパンなどのグリコールやトリオールとの脱水縮合反応により得られる各種ポリエステルポリオール;ε−カプロラクタムの開環重合により得られるラクトン系ポリオール;ポリカーボネート系ジまたはポリオール;アクリル系ポリオール;ポリブタジエン系ポリオール;ノボラック樹脂やレゾール樹脂などのフェノール系ポリオール;ポリオール中でアクリロニトリル、スチレンなどのビニル系モノマーをラジカル重合させたタイプ;これらのポリマーをポリオール中に分散溶解させたポリマーポリオール;テトラヒドロフランのカチオン重合により得られるポリテトラメチレン系ポリオールなどを挙げることができ、単独または2種以上の混合物として使用することができる。
また、これらの活性水素化合物は、イソシアヌレート化反応の助触媒としての作用も発揮するので、助触媒として用いることもできる。
【0021】
また、HDIのイソシアヌレート化を進めるためのイソシアヌレート化触媒としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、バレリアン酸、カプリン酸、オクチル酸、ミリスチン酸等のアルキルカルボン酸およびこれらのアルキルカルボン酸の分岐タイプのアルカリ金属塩;テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド;カルボン酸の第四アンモニウム塩;ヘキサメチルジシラザン等のアミノシリル基含有化合物等が挙げられる。
イソシアヌレート化の際には、必要に応じて溶剤を使用することもできるが、この溶剤はHDIのイソシアネート基と反応しないタイプが好ましい。具体的には活性水素基を有しないものであり、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル系溶剤;エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤が挙げられる。また、これらの溶剤は、1種単独で、または2種以上混合して使用することもできるため、反応条件に応じた粘度に調整することができる。
なお、溶剤は、イソシアヌレート化反応が終了した後、未反応のHDIを減圧蒸留にて除去する際に、反応粗生成物から除去される。
【0022】
本発明のフッ素樹脂塗料用硬化剤は、弱溶剤を含有していてもよい。
ここで、弱溶剤とは、一般的には溶解力の弱い溶剤を意味するが、具体的には、JIS K 2266で規定されるアニリン点が12〜55℃であるものをいい、労働安全衛生法の第3種有機溶剤に相当する、高沸点芳香族炭化水素系溶剤を含んでいてもよい脂肪族炭化水素系溶剤であり、ターペンやミネラルスピリットなどに代表されるような高引火点、高沸点、低有害性であるものをいう。
【0023】
弱溶剤の具体例としては、ミネラルスピリットA(アニリン点=43℃)、ホワイトスピリット、ミネラルターペン、イソパラフィン、ソルベント灯油、芳香族ナフサ、VM&Pナフサ、ソルベントナフサなどがある。これらの市販品としては、ソルベッソ100、ソルベッソ150、ソルベッソ200、エッソナフサNo.6(アニリン点=43℃)(以上、エッソ石油株式会社製);スワゾール1000、スワゾール1500(以上、コスモ石油株式会社製);イプゾール100(アニリン点=12.4℃、出光興産株式会社製);HAWS(アニリン点=15℃)、LAWS(アニリン点=43℃)(以上、シェルケミカルズジャパン株式会社製);Aソルベント(アニリン点=44.5℃、日本石油株式会社製)などが挙げられる。
その他、単成分溶剤としてはn−ブタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソノナン、n−デカン、n−ドデカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロブタンなどの脂肪族炭化水素類などが挙げられる。
以上の弱溶剤は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
なお、本発明の硬化剤には、弱溶剤以外の有機溶剤を含有していてもよいが、その量は弱溶剤の量以下であることが好ましい。
【0024】
弱溶剤の配合量は特に限定されるものではないが、ポリイソシアヌレート体とNBDIとを含有する硬化剤中に、40〜60質量%程度、特に45〜55質量%程度とすることが好適である。
【0025】
また、本発明のフッ素樹脂塗料用硬化剤には、得られる塗膜の汚染性を低下させる目的で、アルキルシリケートおよびその縮合物の少なくとも一方を配合することもできる。
ここで、アルキルシリケートおよびその縮合物の具体例としては、従来公知のものから適宜選択して用いることができ、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラフェノキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、およびこれらの分岐状または直鎖状の縮合物などを用いることができる。これらは1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、本発明においては、テトラエトキシシラン(エチルシリケート)およびその縮合物を用いることが好適である。
【0026】
アルキルシリケートおよびその縮合物の配合量は任意であるが、得られる塗膜の強度を維持しつつ、十分な低汚染性を発揮させることを考慮すると、硬化剤中に、10〜40質量%配合することが好ましく、15〜35質量%配合することがより好ましい。
本発明のフッ素樹脂塗料用硬化剤の製造法は特に限定されず、上記各成分を任意の順序で混合して調製すればよい。混合方法は任意であり、ディゾルバ、ホモミキサなどの混合装置を用いて混合すればよい。
上記各成分を混合することで、本発明のフッ素樹脂塗料用硬化剤は、均一透明な溶液として得られる。
【0027】
本発明に係る2液型フッ素樹脂塗料は、上述したフッ素樹脂塗料用硬化剤と、水酸基およびカルボキシル基を含有するとともに弱溶剤に可溶なフッ素樹脂ポリオール並びに弱溶剤を含む主剤とからなるものである。
ここで、水酸基およびカルボキシル基を含有し、弱溶剤に可溶なフッ素樹脂ポリオールとしては、特に限定されるものではなく、公知の溶剤可溶型フッ素樹脂ポリオールを用いることができる。その具体例としては、フルオロエチレン−ビニルエーテル(ビニルエステル)共重合体等が挙げられる。市販品としては、ルミフロンLF800(旭硝子株式会社製)等が挙げられる。
【0028】
また、フッ素樹脂ポリオールの水酸基価および酸価は特に限定されるものではないが、本発明の塗料では、水酸基価9〜100mgKOH/gが好ましく、20〜70mgKOH/gがより好ましく、30〜50mgKOH/gがより一層好ましく、また、酸価0.1〜5mgKOH/gが好ましく、0.5〜3mgKOH/gがより好ましい。
さらに、フッ素樹脂ポリオールの数平均分子量は、得られる塗膜の強度や、塗料の取り扱い性などを考慮すると、5,000〜20,000が好ましく、7,000〜15,000がより好ましい。数平均分子量は、示差屈折率計検出によるゲルパーミェーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略称する)測定による測定値(ポリスチレン換算値)である(装置:東ソー株式会社製HLC−8120GPC、分離カラム:東ソーTSKgel Super HM−Mのミックスカラム)。
なお、弱溶剤は、上記フッ素樹脂塗料用硬化剤で例示したものと同様のものが挙げられる。また、この場合も、弱溶剤以外のその他の溶剤を用いることができるが、その量は弱溶剤よりも少ない量とする。
【0029】
フッ素樹脂塗料用硬化剤およびフッ素樹脂塗料用主剤は、硬化剤中のポリイソシアヌレート体およびNBDIと、主剤中のフッ素樹脂ポリオールとが、イソシアネート基/水酸基当量比=2/1〜1/2、特に1.5/1〜1/1.5の範囲となるように配合することが好ましい。
また、弱溶剤の配合割合は任意であるが、塗料中に、30〜70質量%程度、特に、35〜55質量%程度が好適である。
【0030】
なお、本発明の2液型フッ素樹脂塗料用主剤は、フッ素樹脂ポリオール溶液と酸化チタン等の顔料をステンレス製の混合容器に仕込み、ディゾルバおよびサンドミルなどの混合分散装置を用いて調製する。上記各必須成分の他に、必要に応じて顔料分散剤、表面調整剤、消泡剤、増粘剤、沈降防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、触媒等の各種添加剤を配合してもよい。
【0031】
上記2液型フッ素樹脂塗料は、フッ素樹脂塗料用硬化剤と、フッ素樹脂ポリオールおよび弱溶剤とを含むフッ素樹脂塗料主剤とを適宜配合して調製される。この場合、配合手法は任意であり、硬化剤の製造法で既に述べた混合装置などを用いて適宜配合すればよい。
硬化剤および主剤の2成分を配合して調製した本発明の2液型フッ素樹脂塗料を、建物外壁などの被塗装面に直接または下塗り層の上から塗布した後、これを常温にて放置または加熱して乾燥し、塗膜が形成される。
この場合、塗布法は特に限定されるものではなく、刷毛塗り、ローラ塗りなどの公知の手法から適宜選択すればよい。また、塗布量、塗膜の厚み、乾燥時間などは、使用するフッ素樹脂や、被塗装面の材質などに応じて適宜なものとすればよい。
【実施例】
【0032】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、「部」は質量部を意味する。
【0033】
[1]HDIポリイソシアヌレート、ウレタン結合含有HDIポリイソシアヌレートおよびHDIの各種変性体の調製
[合成例1]
撹拌機、温度計、還流冷却器、および窒素吹込み管を取り付けた四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にした後、HDIと、イソシアヌレート化触媒とを仕込んだ。これを撹拌しながら50〜70℃に加熱してイソシアヌレート化反応を行い、所定のイソシアネート含量(以下、NCO含量と略称する)(反応停止時のNCO含量)に到達した時点で停止剤を加えて反応を停止させ、HDIポリイソシアヌレートを含む淡黄色の反応生成液を得た。
未反応のHDIを120〜140℃、0.01〜0.05Torrで薄膜蒸留により除去し、目的のポリイソシアヌレート体を得た。
【0034】
[合成例2−1〜2−4]
撹拌機、温度計、還流冷却器、および窒素吹込み管を取り付けた四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にした後、HDIと一価アルコールとを仕込んだ。これを撹拌しながら50〜70℃に加熱し、目標のNCO含量に達するまでウレタン化反応を行った。その後、この反応液中にイソシアヌレート化触媒を加えて50〜70℃でイソシアヌレート化反応を行い、所定のNCO含量(反応停止時のNCO含量)に到達した時点で停止剤を加えて反応を停止させ、ウレタン結合含有のHDIポリイソシアヌレートを含む淡黄色の反応生成液を得た。
未反応のHDIを120〜140℃、0.01〜0.05Torrで薄膜蒸留により除去し、目的のポリイソシアヌレート体を得た。
【0035】
[合成例3−1〜3−3]
撹拌機、温度計、還流冷却器、および窒素吹込み管を取り付けた四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にした後、HDIと二価アルコールとを仕込んだ。これを撹拌しながら50〜70℃に加熱し、目標のNCO含量に達するまでウレタン化反応を行った。その後、この反応液中にイソシアヌレート化触媒を加えて50〜70℃でイソシアヌレート化反応を行い、所定のNCO含量(反応停止時のNCO含量)に到達した時点で停止剤を加えて反応を停止させ、ウレタン結合含有のHDIポリイソシアヌレートを含む淡黄色の反応生成液を得た。
未反応のHDIを120〜140℃、0.01〜0.05Torrで薄膜蒸留により除去し、目的のポリイソシアヌレート体を得た。
【0036】
[合成例4]
撹拌機、温度計、還流冷却器、および窒素吹込み管を取り付けた四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にした後、HDIと二価アルコールとを仕込み、さらにこの混合物にイソシアヌレート化触媒を加えて50〜70℃にてイソシアヌレート化と同時にウレタン化(部分的なアロファネート化も含めて)反応を行い、所定のNCO含量(反応停止時のNCO含量)に到達した時点で停止剤を加えて反応を停止させ、ウレタン結合含有のHDIポリイソシアヌレートを含む淡黄色の反応生成液を得た。
未反応のHDIを120〜140℃、0.01〜0.05Torrで薄膜蒸留により除去し、目的のポリイソシアヌレート体を得た。
【0037】
[合成例5]
撹拌機、温度計、還流冷却器、および窒素吹込み管を取り付けた四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にした後、HDIと一価アルコールと二価アルコールとを仕込んだ。これを撹拌しながら50〜70℃に加熱し、目標のNCO含量に達するまでウレタン化反応を行った。その後、この反応液中にイソシアヌレート化触媒を加えて50〜70℃でイソシアヌレート化反応を行い、所定のNCO含量(反応停止時のNCO含量)に到達した時点で停止剤を加えて反応を停止させ、ウレタン結合含有のHDIポリイソシアヌレートを含む淡黄色の反応生成液を得た。
未反応のHDIを120〜140℃、0.01〜0.05Torrで薄膜蒸留により除去し、目的のポリイソシアヌレート体を得た。
【0038】
[合成例6]
撹拌機、温度計、還流冷却器、および窒素吹込み管を取り付けた四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にした後、HDIと、イソシアヌレート化触媒とを仕込んだ。これを撹拌しながら50〜70℃に加熱してイソシアヌレート化反応を行い、所定のNCO含量(反応停止時のNCO含量)に到達した時点で停止剤を加えて反応を停止させ、HDIポリイソシアヌレートを含む淡黄色の反応生成液を得た。
未反応のHDIを120〜140℃、0.01〜0.05Torrで薄膜蒸留により除去し、目的物を得た。
その後、上記で得られたポリイソシアヌレートと二価アルコールとを撹拌機、温度計および還流冷却器を取り付けた四ツ口フラスコに仕込んだ。これを撹拌しながら60〜80℃に加熱し、目標のNCO含量に達するまでウレタン化反応を行って、ウレタン結合含有のHDIポリイソシアヌレート(ポリイソシアヌレート体)を得た。
【0039】
[合成例7]
撹拌機、温度計、還流冷却器、および窒素吹込み管を取り付けた四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にした後、HDIと二価アルコールとを仕込んだ。これを撹拌しながら50〜70℃に加熱し、目標のNCO含量に達するまでウレタン化反応を行った。その後、この反応液中にウレトジオン化およびイソシアヌレート化触媒を加えて50〜70℃でウレトジオン化およびイソシアヌレート化反応を行い、所定のNCO含量(反応停止時のNCO含量)に到達した時点で停止剤を加えて反応を停止させ、ウレトジオン二量体およびイソシアヌレート三量体構造を有するウレタン結合含有のHDI変性体を含む淡黄色の反応生成液を得た。
未反応のHDIを120〜140℃、0.01〜0.05Torrで薄膜蒸留により除去し、目的のHDI変性物を得た。ウレトジオン二量体含有率、イソシアヌレート環状三量体含有率を、GPCによって得られる各ピークの面積百分率をもとに検量線から求めたところ、ウレトジオン2量体含有率=40質量%、イソシアヌレート環状3量体含有率=10質量%であった。
【0040】
[合成例8]
撹拌機、温度計、還流冷却器、および窒素吹込み管を取り付けた四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にした後、HDIと水と、表1記載のその他原料とを仕込み(HDI/水モル比=5)、液温度を160〜170℃に加熱し、1時間反応させてHDIのビュレット変性体である淡黄色の反応生成液を得た。
未反応のHDIを120〜140℃、0.01〜0.05Torrで薄膜蒸留により除去し、HDIのビュレット変性体を得た。
なお、GPCにて、尿素2量体濃度を測定したところ、0.2質量%以下であった。GPC測定は、東ソー株式会社製HLC−8120GPCを用い、東ソーTSKgel Super HM−Mのミックスカラムを分離カラムとして用いて行った。この際、分子量310付近にトップピークを持つピークの面積%を尿素2量体の質量%とした。
【0041】
[合成例9]
撹拌機、温度計、還流冷却器、および窒素吹き込み管を取り付けた四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にした後、HDIと一価アルコールとを仕込んだ。これを撹拌しながら60〜80℃に加熱して反応させ、目標のNCO含量に達するまでウレタン化反応を行った。次に触媒を仕込んで90〜100℃で反応させ、目標のNCO含量に達するまでアロファネート化反応を行い、停止剤を投入して反応を停止した。
未反応のHDIを120〜140℃、0.01〜0.05Torrで薄膜蒸留により除去し、HDIのアロファネート変性体を得た。
【0042】
上記合成例1〜9において、使用した各原料、それらの仕込み量(質量部)および反応停止時のNCO含量を表1に示す。
なお、表1において、P−1010は、クラレポリオールP−1010(分子量=1000、株式会社クラレ製、3−メチル−1,5−ペンタンジオールを原料とするポリエステルポリオール)である。
【0043】
【表1】

【0044】
また、上記合成例1〜9で得られたポリイソシアヌレート体(HDIポリイソシアヌレート、ウレタン結合含有HDIポリイソシアヌレート)、HDIの各種変性体について、NCO含量、粘度、および未反応のHDI留去後の遊離HDI含有率を測定した結果、並びに各種溶剤やフッ素樹脂ポリオールに対する溶解性を評価した結果を表2に示す。なお、HDI、イソホロンジイソシアネート(IPDI)についても同様の測定・評価を行い、その結果を併せて表2に示した。
【0045】
【表2】

【0046】
表2において、各項目は以下の手法により、測定、評価した。
(1)粘度
JIS K 2283(原油及び石油製品−動粘度試験法及び粘度指数算出方法)に準拠して25℃の動粘度を測定した。
(2)遊離HDI含有量
ガスクロマトグラフィー分析(装置:株式会社 島津製作所製 GC−14A、カラム:シリコンDC HVグリース)により測定した。
(3)溶解性
各合成例で得られた生成物、HDIおよびIPDIを、それぞれイプゾール100(出光興産株式会社製)、ミネラルスピリット、NBDI(コスモネートNBDI、三井武田ケミカル株式会社製)、フッ素樹脂ポリオール(ルミフロンLF800、旭硝子株式会社製)と、固形分質量比で1:1で配合した際の配合液の外観を、以下の基準によって評価した。
○:透明
△:半透明
×:不透明または不溶解物あり
【0047】
[2]弱溶剤型フッ素樹脂塗料用硬化剤の調製
[実施例1〜12]
合成例1(実施例1)、合成例2−1(実施例2〜4)、合成例2−2(実施例5)、合成例3−1(実施例6)、合成例4(実施例7)、合成例5(実施例8〜10)、合成例6(実施例11,12)で得られたポリイソシアヌレート体と、コスモネートNBDI(三井武田ケミカル株式会社製)と、エチルシリケート40またはエチルシリケート48(いずれもコルコート株式会社製:エチルシリケート縮合物)と、イプゾール100、またはミネラルスピリットとを、それぞれ表3に示す割合で分散用ステンレス容器に仕込み、常温で15分間撹拌して透明な硬化剤溶液を得た。
なお、表3における有機ポリイソシアネート組成物の粘度は、表2の粘度と同様にして測定した。
【0048】
【表3】

【0049】
[比較例1〜12]
合成例2−3、合成例2−4、合成例3−2、合成例3−3、合成例5、合成例7〜9で得られたポリイソシアヌレート化合物、コスモネートNBDI、HDI、IPDI、エチルシリケート48、およびイプゾール100、ミネラルスピリットまたは酢酸ブチルを、それぞれ表4に示す割合で分散用ステンレス容器に仕込み、常温で15分間撹拌して硬化剤溶液を得た。
なお、表4における有機ポリイソシアネート組成物の粘度は、表2の粘度と同様にして測定した。
【0050】
【表4】

【0051】
上記実施例1〜12および比較例1〜12で得られた硬化剤溶液について、臭気および外観を、下記手法により評価した。結果を表5に示す。
[1]臭気
臭気の判定は、人の嗅覚により評価した。
○:刺激臭がない
×:刺激臭を感じる(ある)
[2]外観
目視により評価した。
○:透明で沈殿物のない均一な液体
×:白濁または沈殿物がある
【0052】
【表5】

【0053】
また、上記実施例1〜12および比較例1〜12で得られた硬化剤溶液を、下記手法により調製した主剤と、主剤:硬化剤=7:1(質量比、[NCO]/[OH]当量比は表6に示す)の比率で配合し、フッ素樹脂塗料を製造した。
[主剤の製造]
150部のルミフロンLF800(旭硝子株式会社製:弱溶剤可溶フッ素樹脂ポリオール、水酸基価35mgKOH/g、酸価0.5mgKOH/g、数平均分子量9000)、180部のタイペークCR97(顔料、石原産業株式会社製:酸化チタン)、65部のLAWS(弱溶剤、シェルケミカルズジャパン株式会社製:ミネラルスピリット)を分散用ステンレス容器に仕込み、15分間撹拌した。ここに各成分の合計量と同量のガラスビーズを加えた後、サンドミルにて30分間ミル分散を行い、グラインドゲージで粒径10μm以下になったことを確認して分散を終了した。分散後の白色ペーストに、さらに305部のルミフロンLF800を撹拌しながら加えた後、15分間撹拌した。ろ過により、ガラスビーズを除去して、白色の主剤を得た。
【0054】
【表6】

【0055】
得られたフッ素樹脂塗料について、JIS K5659に準拠し、乾燥時間、耐屈曲性、耐衝撃性、強制汚染、ポットライフを測定、評価するとともに、NCO含量を測定した。
なお、乾燥時間の評価は、半硬化による判定を行い、耐屈曲性および耐衝撃性の評価は上塗りのみで実施した。これらの結果を併せて表7に示す。
なお、強制汚染試験の評価は、コニカミノルタセンシング株式会社製の分光測色計CM−3600dを使用して明度を測定、試験前の試験体との明度差(ΔL*)で評価した。
明度差(ΔL*)=[試験後の塗膜明度(L*1)−試験前の塗膜明度(L*0)]
○: ΔL* −7以上
×: ΔL* −7未満
また、フッ素樹脂塗膜の評価は、促進耐候性試験キセノンランプ法(JIS K5600−7−7)に準拠して行った。2,500時間照射後の60度光沢を測定し、初期光沢に対する光沢保持率で評価した。80%以上を良好と判断した。
【0056】
【表7】

【0057】
表5,7に示されるように、実施例1〜12で得られたHDIポリイソシアヌレートおよび/またはウレタン結合含有HDIポリイソシアヌレートと、NBDIとを含む硬化剤は、臭気、透明性ともに良好であり、また、これらの硬化剤を用いた2液型フッ素樹脂塗料は、ポットライフも実用上問題なく、しかもこの塗料から得られた塗膜は、乾燥性および強度に優れていることがわかる。また、本発明のフッ素樹脂塗料用硬化剤を用いた2液型フッ素樹脂塗料は、比較例の弱溶剤型フッ素樹脂塗料に比べて、各項目のバランスが良く、特に耐候性に優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアヌレートおよび/またはウレタン結合を含有するヘキサメチレンジイソシアネートのポリイソシアヌレートからなるポリイソシアヌレート体と、ノルボルナンジイソシアネートとを含有し、
遊離のヘキサメチレンジイソシアネートが0.3質量%以下、かつ、溶剤を含まない状態で、前記ポリイソシアヌレート体の粘度が25℃で600〜1,500mm2/sであることを特徴とする弱溶剤型フッ素樹脂塗料用硬化剤。
【請求項2】
前記ポリイソシアヌレート体とノルボルナンジイソシアネートとを、ポリイソシアヌレート体/ノルボルナンジイソシアネート=9.3/0.7〜0.7/9.3(質量比)で含有する請求項1記載の弱溶剤型フッ素樹脂塗料用硬化剤。
【請求項3】
弱溶剤を含有する請求項1または2記載の弱溶剤型フッ素樹脂塗料用硬化剤。
【請求項4】
アルキルシリケートおよびその縮合物の少なくとも一方を含有する請求項1〜3のいずれか1項記載の弱溶剤型フッ素樹脂塗料用硬化剤。
【請求項5】
前記アルキルシリケートおよびその縮合物の少なくとも一方を、10〜40質量%含む請求項4記載の弱溶剤型フッ素樹脂塗料用硬化剤。
【請求項6】
前記アルキルシリケートが、エチルシリケートである請求項4または5記載の弱溶剤型フッ素樹脂塗料用硬化剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項記載の弱溶剤型フッ素樹脂塗料用硬化剤と、水酸基およびカルボキシル基を含有するとともに弱溶剤に可溶なフッ素樹脂ポリオール並びに弱溶剤を含む主剤と、からなる2液型フッ素樹脂塗料。
【請求項8】
前記ポリイソシアヌレート体およびノルボルナンジイソシアネートと、前記フッ素樹脂ポリオールとが、イソシアネート基/水酸基当量比=2/1〜1/2の範囲で配合される請求項7記載の2液型フッ素樹脂塗料。

【公開番号】特開2008−115343(P2008−115343A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−302432(P2006−302432)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(000116301)亜細亜工業株式会社 (18)
【Fターム(参考)】