説明

張力付与装置

【課題】簡素な構造でありながら糸条を張力付与部の所定の位置に配置する際には、該糸条の糸道から張力付与部を確実に退避させることができ、更に、糸条に生じる摩擦力を高い精度で調節することによって該糸条に最適な張力を付与できる張力付与装置を提供する。
【解決手段】糸条YをパッケージPに巻取るため種々の駆動源を有する巻取り装置100に取り付けられ、糸条Yに張力を付与する張力付与装置3であって、張力付与装置3は、糸条Yの糸道を挟むように配置された一対の張力付与部と、種々の駆動源とは個別に設けられ、張力付与部を電力を用いて駆動する第一動力部と、張力付与部を電力を用いて駆動する第二動力部と、を備え、第一動力部は、糸条Yに張力を付与する際に張力付与部を閉方向に駆動し、第二動力部は、糸条Yを張力付与部に導入する際に、張力付与部を退避位置に駆動する直進式のソレノイド33である、とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、張力付与装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、糸条の糸道を挟むように一対の張力付与部を配置し、該張力付与部を操作することによって該糸条に適宜に張力を付与する張力付与装置が知られている(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
張力付与装置は、張力付与部を操作することによって糸条に生じる摩擦力を調節し、該糸条に適宜に張力を付与するように構成されるほか、例えば切断された糸条を再び張力付与部の所定の位置に配置する際には、該糸条の糸道から張力付与部を退避させるように構成されている。
【0004】
しかし、従来の張力付与装置においては、張力付与部を退避させる動力源として圧縮空気が用いられており、例えばコンプレッサやエアシリンダ、空気配管等が必要になることから非常に複雑な構造とならざるを得なかった。また、張力付与装置には、糸条に生じる摩擦力を高い精度で調節することによって該糸条に最適な張力を付与することが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−286607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる問題を解決すべくなされたものであり、簡素な構造でありながら糸条を張力付与部の所定の位置に配置する際には、該糸条の糸道から張力付与部を確実に退避させることができ、更に、糸条に生じる摩擦力を高い精度で調節することによって該糸条に最適な張力を付与できる張力付与装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
次に、この課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、第1の発明は、給糸ボビンから供給された糸条をパッケージに巻取るため種々の駆動源を有する巻取り装置に取り付けられ、前記糸条に張力を付与する張力付与装置であって、
前記張力付与装置は、
前記糸条の糸道を挟むように配置された一対の張力付与部と、
前記種々の駆動源とは個別に設けられ、前記張力付与部を電力を用いて駆動する第一動力部と、
前記種々の駆動源とは個別に設けられ、前記張力付与部を電力を用いて駆動する第二動力部と、
を備え、
前記第一動力部は、前記糸条に張力を付与する際に前記張力付与部を閉方向に駆動し、
前記第二動力部は、前記糸条を前記張力付与部に導入する際に、前記張力付与部を退避位置に駆動する直進式のソレノイドである、としたものである。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記張力付与部は、それぞれ櫛歯状に形成された櫛歯状部材であり、
前記第一動力部は、前記糸条に張力を付与する際に前記櫛歯状部材が互いに交差するように閉方向に駆動し、前記糸条の糸道を屈曲させることで該糸条に張力を付与する、としたものである。
【0010】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記第一動力部は、回転式のソレノイドである、としたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0012】
第1の発明によれば、張力付与部を退避させる動力源として圧縮空気を用いないために簡素な構造とすることができる。また、糸条の糸道から張力付与部を確実に退避させることができる。
【0013】
第2の発明によれば、糸条に生じる摩擦力を高い精度で調節することができ、該糸条に最適な張力を付与することが可能となる。
【0014】
第3の発明によれば、糸条に生じる摩擦力を更に高い精度で調節することができ、該糸条に最適な張力を付与することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】糸巻取りユニット100の全体構成を示す側面図。
【図2】糸巻取りユニット100の動作態様を示すフロー図。
【図3】糸巻取りユニット100の切断動作S120を示す側面図。
【図4】糸巻取りユニット100の配置動作S130を示す一の側面図。
【図5】糸巻取りユニット100の配置動作S130を示す他の側面図。
【図6】巻取り動作S110における張力付与装置3の動作態様を示す上面図。
【図7】櫛歯状部材31の動作態様を示す概略図。
【図8】配置動作S130における張力付与装置3の動作態様を示す上面図。
【図9】配置動作S130における張力付与装置3の動作態様を示す下面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず、本発明の一実施形態に係る張力付与装置3を備えた糸巻取りユニット(巻取り装置)100について説明する。
【0017】
図1は、糸巻取りユニット100の全体構成を示す側面図である。なお、図中の矢印は、糸条Yの送り方向を示している。
【0018】
糸巻取りユニット100には、給糸ボビン1から解舒された糸条Yの送り方向に沿って、糸解舒補助装置2、張力付与装置3、糸継ぎ装置4、ヤーンクリアラー5、綾振ドラム6、ボビン7が備えられている。また、糸巻取りユニット100の本体部には、パッケージP側の糸条Yである上糸YUを吸引捕捉する上糸用サクションアーム8、給糸ボビン1側の糸条Yである下糸YRを吸引捕捉する下糸用サクションアーム9、ストッパ機構10等が備えられている。
【0019】
糸解舒補助装置2は、エアーシリンダを駆動源とし、給糸ボビン1からの糸条Yの解舒を補助するものである。糸解舒補助装置2は、給糸ボビン1から解舒された糸条Yがその遠心力によって広がることを制限し、該糸条Yに掛かる張力を適宜に調節することによって解舒を補助するとしている。
【0020】
張力付与装置3は、給糸ボビン1からボビン7へ送られる糸条Yに適宜に張力を付与するものである。張力付与装置3は、張力付与部を操作することによって糸条Yに生じる摩擦力を調節し、該糸条Yに適宜に張力を付与する。
【0021】
糸継ぎ装置4は、糸条Yの糸端部どうしを継ぎ合わせるものである。例えば糸条Yを切断して該糸条Yの欠点部を除去した場合、糸継ぎ装置4は、切断されて分割した糸条Yの糸端部どうしを継ぎ合わせる。なお、本糸巻取りユニット100に備えられた糸継ぎ装置4は、空気の旋回流を利用して糸端部どうしを継ぎ合わせるエアスプライサ装置を用いている。糸継ぎ装置4には、糸継ぎ装置4の糸継ぎのための糸条Yの最終的な位置決めを行なうための糸寄せレバーが設けられている。この糸寄せレバーは、糸巻取りユニット100に設けられたモータを駆動源としている。
【0022】
ヤーンクリアラー5は、糸条Yの欠点部を検出するものである。ヤーンクリアラー5は、発光ダイオード等を光源として糸条Yを照射し、該糸条Yからの反射光量を検出することによって欠点部の有無を判断する。また、ヤーンクリアラー5の近傍には、該ヤーンクリアラー5が糸条Yの欠点部を発見した際に該糸条Yを切断する図示しないカッターが付設されている。
【0023】
綾振ドラム6は、ドラム専用のモータを駆動源とし、ボビン7ならびに該ボビン7上に形成されたパッケージPを従動回転させるとともに糸条Yを綾振するものである。綾振ドラム6は、図示しないモータによって回転され、糸条Yの巻取り速度を一定に保つことで該糸条Yに掛かる張力を安定させる。また、綾振ドラム6は、糸条Yを綾振することによってパッケージPにおける該糸条Yの偏りを防いでいる。
【0024】
上糸用サクションアーム8は、上糸用サクションアーム8専用のモータを駆動源とし、糸巻取りユニット100の本体部に回動可能に軸着された吸引ダクトである。上糸用サクションアーム8の先端部には、サクションマウス8aが設けられており、該サクションマウス8aから空気を吸入することによってパッケージPに巻取られた糸端部を捕捉し、保持することを可能としている。また、上糸用サクションアーム8は、糸条Yを保持した状態で下方へ回動することができ、糸継ぎ装置4の所定の位置に該糸条Yを配置する。
【0025】
下糸用サクションアーム9は、下糸用サクションアーム9専用のモータを駆動源とし、糸巻取りユニット100の本体部に回動可能に軸着された吸引ダクトである。下糸用サクションアーム9の先端部には、サクションマウス9aが設けられており、該サクションマウス9aから空気を吸入することによって給糸ボビン1側の糸端部を捕捉し、保持することを可能としている。また、下糸用サクションアーム9は、糸条Yを保持した状態で上方へ回動することができ、糸継ぎ装置4の所定の位置に該糸条Yを配置する。
【0026】
ストッパ機構10は、上糸用サクションアーム8の回動を制限することによって、サクションマウス8aを糸端部の捕捉に最適な吸引位置に配置するものである。ストッパ機構10は、糸条Yが巻かれることで径が大きくなるパッケージPに対してサクションマウス8aを常に最適な吸引位置に配置できるとしている。
【0027】
以上が本発明の一実施形態に係る張力付与装置3を備えた糸巻取りユニット100の全体構成であるが、次に、糸条Yに欠点部を発見した場合に当該欠点部を除去し、糸端部どうしを継ぎ合わせる糸巻取りユニット100の動作態様について説明する。
【0028】
図2は、糸巻取りユニット100の動作態様を示すフロー図である。また、図3は、糸巻取りユニット100の切断動作S120を示す側面図であり、図4ならびに図5は、糸巻取りユニット100の配置動作S130を示す側面図である。なお、図中の矢印は、上糸用サクションアーム8ならびに下糸用サクションアーム9の回動方向を示している。
【0029】
図2に示すように、糸巻取りユニット100の動作態様は、主に巻取り動作S110と、切断動作S120と、配置動作S130と、糸継ぎ動作S140と、から構成される。
【0030】
巻取り動作S110は、糸条Yを巻取ってパッケージPを形成する動作である。上述したように、糸巻取りユニット100に備えられた綾振ドラム6は、ボビン7を従動回転させるとともに糸条Yを綾振することによって該ボビン7上にパッケージPを形成する。
【0031】
切断動作S120は、ヤーンクリアラー5が糸条Yの欠点部を発見した際に該糸条Yを切断する動作である。上述したように、ヤーンクリアラー5の近傍に付設されたカッターは、該ヤーンクリアラー5が糸条Yの欠点部を発見した際に該糸条Yを切断する。
【0032】
これにより、図3に示すように、糸条Yの切断部よりも下流側である上糸YUは、パッケージPに巻取られた状態となる。また、糸条Yの切断部よりも上流側である下糸YRは、下糸用サクションアーム9のサクションマウス9aに保持された状態となる。なお、糸条Yの欠点部は、上糸YUの一部としてパッケージPに巻取られている。
【0033】
配置動作S130は、切断されて分割した糸条Yを張力付与装置3の張力付与部ならびに糸継ぎ装置4の所定の位置に配置する動作である。配置動作S130について具体的に説明すると、図4に示すように、上糸用サクションアーム8は、まず、上方へ回動して糸条Y(上糸YU)の糸端部を捕捉し、これを保持する。そして、図5に示すように、上糸用サクションアーム8は、糸条Y(上糸YU)を保持した状態で下方へ回動して糸継ぎ装置4の所定の位置に該糸条Y(上糸YU)を配置する。また、下糸用サクションアーム9は、糸条Y(下糸YR)を保持した状態で上方へ回動して張力付与装置3の張力付与部ならびに糸継ぎ装置4に該糸条Y(下糸YR)を配置する。
【0034】
糸継ぎ動作S140は、糸条Y(上糸YU)と糸条Y(下糸YR)の糸端部どうしを継ぎ合わせる動作である。糸継ぎ動作S140について具体的に説明すると、まず、糸継ぎ装置4は、糸条Y(上糸YU)と糸条Y(下糸YR)とを引き寄せて糸継孔へ案内する。そして、糸継ぎ装置4は、糸条Y(上糸YU)と糸条Y(下糸YR)とをクランプ動作によって固定した後にカッターを用いて切断する。これにより、上糸YUの一部としてパッケージPに巻取られていた欠点部は、サクションマウス8aに吸引されて除去されることとなる。
【0035】
その後、糸継ぎ装置4は、空気の旋回流によって糸端部の撚りを解く解撚動作を行なった後に解撚された糸端部どうしを撚り合わせる撚掛動作を行なう。撚掛動作とは、解撚動作時と逆方向に形成された空気の旋回流を利用して解撚された糸端部どうしを撚り合わせる行程である。
【0036】
こうして、糸巻取りユニット100は、糸条Yの欠点部を除去することができ、更に糸条Y(上糸YU)と糸条Y(下糸YR)の糸端部どうしを継ぎ合わせることによって、再び一本の糸条YとしてパッケージPに巻取ることを可能としているのである。
【0037】
以上が本糸巻取りユニット100の動作態様であるが、次に、巻取り動作S110における張力付与装置3の動作態様について詳細に説明する。
【0038】
図6は、巻取り動作S110における張力付与装置3の動作態様を示す上面図である。また、図7は、櫛歯状部材31の動作態様を示す概略図である。なお、図中の矢印は、糸条Yに張力を付与する際の各部材の動作方向ならびに該糸条Yの送り方向を示している。
【0039】
巻取り動作S110における張力付与装置3の動作態様は、張力付与部と第一動力部、そして、これらを連動可能に構成するリンク機構等によってなされる(図6実線部参照。)。
【0040】
張力付与部は、糸条Yの糸道を挟むように配置された一対の櫛歯状部材31である。櫛歯状部材31は、揺動可能に設けられた可動側櫛歯状部材31aとフレーム等に固設された固定側櫛歯状部材31bとで構成される。
【0041】
櫛歯状部材31は、図7に示すように、可動側櫛歯状部材31aの歯部311aと固定側櫛歯状部材31bの歯部311bを交差させる、換言すると噛み合わせることによって糸条Yの糸道を屈曲させ、該糸条Yに摩擦力を生じさせて張力を付与している。
【0042】
第一動力部は、電流を通電することによって出力軸32aが回転する回転式ソレノイド32である。回転式ソレノイド32は、コイルに電流が流れることによって励磁される、いわゆる電磁石を備えており、この磁力によって出力軸32aを回転させる代表的なソレノイドアクチュエータである。
【0043】
そして、回転式ソレノイド32は、出力軸32aの回転によって回動される第一アーム321や該第一アーム321によって連動される第一ロッド322により、可動側櫛歯状部材31aを閉方向に駆動するとしている。ここで、閉方向とは、可動側櫛歯状部材31aの歯部311aを固定側櫛歯状部材31bの歯部311bに向かわせる方向であり、図6に示す矢印の方向である。
【0044】
具体的には図6に示すように、回転式ソレノイド32は、出力軸32aを回転することによって該出力軸32aに固設された第一アーム321を図示矢印方向に回動させる。すると、第一アーム321によって第一ロッド322が押動され、第一シャフト323を中心として揺動可能に設けられた可動側櫛歯状部材31aの歯部311aは、該第一ロッド322によって図示矢印方向に回動される。つまり、櫛歯状部材31を閉方向に駆動するのである。
【0045】
このように、回転式ソレノイド32は、櫛歯状部材31を閉方向に駆動することができ、ひいては櫛歯状部材31の噛み合わせ量Dを大きくすることを可能としている(図7二点鎖線参照。)。こうして、回転式ソレノイド32は、糸条Yの糸道を更に屈曲させて該糸条Yに生じる摩擦力を増加させることができ、該糸条Yの張力を上昇させるのである。
【0046】
一方、糸条Yの張力を低下させる場合は、回転式ソレノイド32への通電を停止することによって達成される。これは、回転式ソレノイド32から可動側櫛歯状部材31aへの入力が遮断されると、該可動側櫛歯状部材31aは、糸条Yの張力によって開方向に駆動されて櫛歯状部材31の噛み合わせ量Dが小さくなるからである(図7実線参照。)。こうして、回転式ソレノイド32への通電を停止することによって糸条Yに生じる摩擦力を低減させることができ、該糸条Yの張力を低下させることが可能となるのである。
【0047】
なお、本実施形態に係る張力付与装置3は、回転式ソレノイド32への通電を停止した際に第一アーム321を当初の位置に戻すバネ等を用いていないことを特徴としている。これは、櫛歯状部材31の噛み合わせ量Dの制御にバネによる付勢力の影響が及ぶことを防ぐためである。
【0048】
以上のように、張力付与部として櫛歯状部材31を用いることによって、該櫛歯状部材31の噛み合わせ量Dを変更可能とする構成とできる。これにより、糸条Yに生じる摩擦力を高い精度で調節することができ、該糸条Yに最適な張力を付与することが可能となるのである。
【0049】
また、第一動力部として回転式ソレノイド32を用いることによって、櫛歯状部材31の噛み合わせ量Dを正確に制御することができる。これにより、糸条Yに生じる摩擦力を更に高い精度で調節することができ、該糸条Yに最適な張力を付与することが可能となるのである。
【0050】
以上が巻取り動作S110における張力付与装置3の動作態様であるが、次に、配置動作S130における張力付与装置3の動作態様について詳細に説明する。
【0051】
図8は、配置動作S130における張力付与装置3の動作態様を示す上面図である。また、図9は、配置動作S130における張力付与装置3の動作態様を示す下面図である。なお、図中の矢印は、糸条Yの糸道から櫛歯状部材31ならびにプレクリアラー34を退避する際の各部材の動作方向を示している。
【0052】
配置動作S130における張力付与装置3の動作態様は、第二動力部とプレクリアラー34、そして、これらを連動可能に構成するリンク機構等によってなされる(図8、図9実線部参照。)。
【0053】
まず、糸条Yの糸道から櫛歯状部材31を退避させる動作態様について説明する。
【0054】
第二動力部は、電流を通電することによってプランジャ33aが摺動する直進式ソレノイド33である。直進式ソレノイド33は、コイルに電流が流れることによって励磁される、いわゆる電磁石を備えており、この磁力によってプランジャ33aを摺動させる代表的なソレノイドアクチュエータである。
【0055】
直進式ソレノイド33は、プランジャ33aの摺動によって回動される第二アーム331や上述した第一アーム321ならびに第一ロッド322により、可動側櫛歯状部材31aを開方向に駆動するとしている。ここで、開方向とは、可動側櫛歯状部材31aの歯部311aを固定側櫛歯状部材31bの歯部311bから遠ざける方向であり、図8に示す矢印の方向である。
【0056】
具体的には図8に示すように、直進式ソレノイド33は、プランジャ33aの摺動によって連動可能に設けられた第二アーム331を図示矢印方向に回動させる。第二アーム331は、第一アーム321の突起部分321aに当接することとなり、該第一アーム321を図示矢印方向に回動させる。すると、第一アーム321によって第一ロッド322が引張られ、第一シャフト323を中心として揺動可能に設けられた可動側櫛歯状部材31aの歯部311aは、該第一ロッド322によって図示矢印方向に回動される。つまり、櫛歯状部材31を開方向に駆動するのである。
【0057】
このように、直進式ソレノイド33は、櫛歯状部材31を開方向に駆動することができ、ひいては可動側櫛歯状部材31aと固定側櫛歯状部材31bとを互いに離間させることを可能としている。このように、可動側櫛歯状部材31aと固定側櫛歯状部材31bとが離間したときの可動側櫛歯状部材31aの位置が退避位置である。こうして、直進式ソレノイド33は、糸条Yの糸道から櫛歯状部材31を退避位置に退避させることを可能としているのである。
【0058】
以上のように、第二動力部として直進式ソレノイド33を用いることによって、圧縮空気を用いずに櫛歯状部材31を退避させることができる。これにより、張力付与装置3を簡素な構造に、ひいては糸巻取りユニット100を簡素な構造にすることが可能となるのである。
【0059】
また、直進式ソレノイド33は、一般的にプランジャ33aの摺動距離に応じて該プランジャ33aに作用する磁力が大きくなるため、摺動開始から徐々に駆動力が高まるという特徴を有する。このため、直進式ソレノイド33は、櫛歯状部材31を高い駆動力によって駆動することができ、該櫛歯状部材31を確実に退避させることを可能としている。
【0060】
なお、本張力付与装置3では、プランジャ33aの駆動力が最大となるときに櫛歯状部材31が全開状態となるように構成している。
【0061】
次に、糸条Yの糸道からプレクリアラー34を退避させる動作態様について説明する。
【0062】
プレクリアラー34は、糸条Yの糸道が通るスリットを構成して該糸条Yが絡んでなる欠点部(巻糸部)の通過を阻止するものである。プレクリアラー34は、揺動可能に設けられた可動側プレクリアラー部材34aとフレーム等に固設された固定側プレクリアラー部材34bとで構成される(図9参照。)。
【0063】
そして、直進式ソレノイド33は、プランジャ33aの摺動によって回動される第三アーム341や該第三アーム341によって連動される第二ロッド342により、プレクリアラー34を開方向に駆動するとしている。
【0064】
具体的には図9に示すように、直進式ソレノイド33は、プランジャ33aの摺動によって連動可能に設けられた第三アーム341を図示矢印方向に回動させる。すると、第三アーム341によって第二ロッド342が押動され、第二シャフト343を中心として揺動可能に設けられた可動側プレクリアラー部材34aは、該第二ロッド342によって図示矢印方向に回動される。つまり、プレクリアラー34を開方向に駆動するのである。
【0065】
このように、直進式ソレノイド33は、プレクリアラー34を開方向に駆動することができ、ひいては可動側プレクリアラー部材34aと固定側プレクリアラー部材34bとを互いに離間させることを可能としている。こうして、直進式ソレノイド33は、糸条Yの糸道からプレクリアラー34を退避させることを可能としているのである。
【0066】
以上のように、第二動力部として直進式ソレノイド33を用いることによって、圧縮空気を用いずにプレクリアラー34を退避させることができる。これにより、張力付与装置3を簡素な構造に、ひいては糸巻取りユニット100を簡素な構造にすることが可能となるのである。
【0067】
また、上述したように、直進式ソレノイド33は、一般的にプランジャ33aの摺動距離に応じて該プランジャ33aに作用する磁力が大きくなるため、プレクリアラー34を高い駆動力によって駆動することができる。これによって、プレクリアラー34を確実に退避させることが可能となるのである。
【0068】
なお、本張力付与装置3では、プランジャ33aの駆動力が最大となるときにプレクリアラー34が全開状態となるように構成している。
【符号の説明】
【0069】
1 給糸ボビン
2 糸解舒補助装置
3 張力付与装置
31 櫛歯状部材
31a 可動側櫛歯状部材
31b 固定側櫛歯状部材
32 回転式ソレノイド
33 直進式ソレノイド
34 プレクリアラー
34a 可動側プレクリアラー部材
34b 固定側プレクリアラー部材
321 第一アーム
322 第一ロッド
323 第一シャフト
331 第二アーム
341 第三アーム
342 第二ロッド
343 第二シャフト
4 糸継ぎ装置
5 ヤーンクリアラー
6 綾振ドラム
7 ボビン
8 上糸用サクションアーム
9 下糸用サクションアーム
10 ストッパ機構
100 糸巻取りユニット
P パッケージ
Y 糸条
YU 上糸
YR 下条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給糸ボビンから供給された糸条をパッケージに巻取るため種々の駆動源を有する巻取り装置に取り付けられ、前記糸条に張力を付与する張力付与装置であって、
前記張力付与装置は、
前記糸条の糸道を挟むように配置された一対の張力付与部と、
前記種々の駆動源とは個別に設けられ、前記張力付与部を電力を用いて駆動する第一動力部と、
前記種々の駆動源とは個別に設けられ、前記張力付与部を電力を用いて駆動する第二動力部と、
を備え、
前記第一動力部は、前記糸条に張力を付与する際に前記張力付与部を閉方向に駆動し、
前記第二動力部は、前記糸条を前記張力付与部に導入する際に、前記張力付与部を退避位置に駆動する直進式のソレノイドである、ことを特徴とする張力付与装置。
【請求項2】
前記張力付与部は、それぞれ櫛歯状に形成された櫛歯状部材であり、
前記第一動力部は、前記糸条に張力を付与する際に前記櫛歯状部材が互いに交差するように閉方向に駆動し、前記糸条の糸道を屈曲させることで該糸条に張力を付与する、ことを特徴とする請求項1に記載の張力付与装置。
【請求項3】
前記第一動力部は、回転式のソレノイドである、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の張力付与装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−144030(P2011−144030A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7621(P2010−7621)
【出願日】平成22年1月17日(2010.1.17)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】