説明

張力制御装置

【課題】ダンサローラの位置変化に基づき巻取ロールを回転するシート巻取モータの回転制御を行うことに起因して、機械的な応答時間の遅れが発生して微細な張力変化が生じた場合においても、かかる微細な張力変化を緩和吸収することによりシートの巻取張力を一定に保持することが可能なシート張力制御装置を提供する。
【解決手段】位置検出器8を介してシート4の加圧時にダンサローラ6の位置を検出するとともに、巻取モータコントローラ9を介して位置検出器8からの位置変化量に基づきシート巻取モータ10の回転を制御して、シート送出ロール2とシート巻取ロール3間でシートの張力を基本的に制御し、またこれと同時に、ダンサローラ6の下流側に配設された張力検出器12を介して検出された張力値と目標張力値との張力差に対応して、ユニット移動モータコントローラ14によりユニット移動モータ15の回転制御を行うように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート送出ロールから送出されたシートをシート巻取ロールに巻き取る際に、シート送出ロールとシート巻取ロールとの間でシートの張力を一定に制御するシート張力制御装置に関し、特に、数μm程度の厚さのシートを巻き取る場合においても、シートの巻取張力を一定に保持してシートのスムーズな巻取を可能とするシート張力制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、比較的薄いシートを安定的に巻き取るべく、シート巻取時のシート張力を一定に保持する各種の張力制御装置が提案されている。
【0003】
例えば、特公平2−34855号公報には、巻取張力制御装置が記載されており、かかる巻取張力制御装置では、図2に示されているように、ダンサローラの下流側に配置された案内ローラを張力検出ローラに兼用し、その浮動量に基づき張力検出装置で走行シートの張力が測定されるとともに、張力検出装置で測定された検出信号は制御装置に送られる。
【0004】
そして、制御装置及び駆動用流体圧回路を介して流体圧シリンダが駆動され、かかる流体圧シリンダの駆動に対応して発生するダンサローラの浮動量が浮動検出装置により検出される。かかる検出信号が巻取速度制御装置に送られると、巻取速度制御装置にて、ダンサローラを定位置に戻すに必要なシートの巻軸の回転速度が演算され、この後、その演算された巻軸の回転速度に基づき巻取モータに指令が行われる。これにより、張力を一定に保持しつつシートが巻軸に巻き取られる。
【特許文献1】特公平2−34855号公報(第2ページ、第3ページ、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に記載された巻取張力制御装置では、案内ローラと兼用される張力検出ローラを介して走行シートの張力が測定され、このように測定された張力に基づき制御装置を介して流体圧シリンダが駆動された後、ダンサローラの浮動量が浮動検出装置により検出されるように構成されており、かかる場合には、ダンサローラの浮動量を検出してから巻軸の回転速度を制御するに至るまでに機械的な応答時間の遅れが発生してしまう。
【0006】
このように、ダンサローラの浮動量を検出してから巻軸の回転速度を制御するに至るまでに機械的な応答時間の遅れが発生すると、数μm程度の厚さのシートを巻き取る場合には、微細な張力変化を制御することは困難となる。これより、巻取時に発生するシートの微細な巻取張力を一定に保持してシートのスムーズな巻取を行うことができないという問題がある。
【0007】
本発明は前記従来の問題点を解消するためになされたものであり、数μm程度の厚さのシートを巻き取る場合に、ダンサローラによりシートを加圧してダンサローラの位置変化を検出した後に、かかるダンサローラの位置変化に基づき巻取ロールを回転するシート巻取モータの回転制御を行うことに起因して、機械的な応答時間の遅れが発生して微細な張力変化が生じた場合においても、かかる微細な張力変化を緩和吸収することによりシートの巻取張力を一定に保持してシートのスムーズな巻取を可能とするシート張力制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため請求項1に係るシート張力制御装置は、シート送出ロールと、前記シート送出ロールから送出されたシートを巻き取るシート巻取ロールと、前記巻取ロールを回転駆動するシート巻取モータと、前記シート送出ロールと前記シート巻取ロールとの間に配設され、シートを加圧するダンサローラと、前記シートの加圧時にダンサローラの位置を検出する位置検出手段と、前記位置検出手段からの位置検出信号に基づき前記シート巻取モータの回転を制御する第1回転制御手段とを備えたシート張力制御装置において、前記シート送出ロールとシート巻取ロール間で形成されるシート走行経路に沿って、シート巻取ロールを移動可能に支持する巻取ロール支持機構と、前記巻取ロール支持機構にて、シート巻取ロールをシート走行経路に沿って移動させる巻取ロール移動モータと、前記ダンサローラの下流側に配設され、シートの張力を検出するシート張力検出手段と、前記シート張力検出手段を介して検出された張力検出信号に基づき前記巻取ロール移動モータの回転を制御する第2回転制御手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係るシート張力制御装置では、位置検出手段を介してシートの加圧時にダンサローラの位置を検出するとともに、第1回転制御手段を介して位置検出手段からの位置検出信号に基づきシート巻取モータの回転を制御することにより、シート送出ロールとシート巻取ロール間でシートの張力を基本的に制御すると同時に、ダンサローラの下流側に配設されたシート張力検出手段を介して検出された張力検出信号に基づき、第2回転制御手段により巻取ロール移動モータの回転を制御することにより、ダンサローラの位置を検出した後にシート巻取モータの回転制御を行うことに起因して、機械的な応答時間の遅れに起因する微細な張力変化を緩和吸収して微調整することができる。これにより、シートの巻取張力を一定に保持してシートのスムーズな巻取が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係るシート張力制御装置について、本発明を具体化した実施形態に基づき図面を参照しつつ説明する。図1は本実施形態に係るシート張力制御装置の主要部の制御ブロック図である。
【0011】
図1において、シート張力制御装置1は、基本的に、シート送出ロール2及びシート巻取ロール3を備えており、フィルムシート(厚さ:25〜300μm、幅:500〜900nmを有するPET(ポリエチレンフタレート)、、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、TAC(トリ酢酸セルロース)等のプラスチックフィルム。以下、「シート」と称する)4は、図1中、左側から右側に向かって搬送される。尚、シート巻取ロール3は、巻取ユニットUに回転可能に支持されている。巻取ユニットUの構成については後述する。
また、シート送出ロール2の下流側には、一対の支持ローラ5、5が配置されており、各支持ローラ5間には、ダンサローラ6が上下方向に移動可能に設けられている。かかるダンサローラ6は、シート4の上面に接触して下方に加圧する作用を行う。ダンサローラ6が上方に移動するとシート4に加えられる圧力は、小さくなり、これに伴いシート4の張力も小さくなる。また、ダンサローラ6が下方に移動するとシート4に加えられる圧力は大きくなり、これに伴いシートの張力も大きくなる。
【0012】
ダンサローラ6は、その移動機構が付設された圧力コントローラ7により上下方向に移動される。ここに、圧力コントローラ7には、シート張力制御装置1の稼働時にシート4の目標張力値(N)が設定され、圧力コントローラ7は、その設定された目標張力値をダンサローラ6に加えられる圧力に換算してダンサローラ6に圧力を加える。尚、シート巻取ロール3にシート4が巻き取られていくと、その巻取径が変化していくが、圧力コントローラ7はシート4の巻取径の変化に対応してダンサローラ6に加えられる圧力を所定の率で変化させていく。
ここに、圧力コントローラ7に付設されるダンサローラ6の移動機構としては、一般に、回転軸を中心として上下に揺動可能な支持部材の一端をダンサローラ6の支持軸に固定するとともに、支持部材の他端をシリンダに付設されるシリンダ軸の端部に固定し、シリンダ軸を上下に移動して支持部材を回転軸の回りに揺動させ、これによりダンサローラ6の上下動を行う機構が採用されている。かかる機構を採用する場合、回転軸には多相回転機(JISC4906)又はポテンショメータが付設され、かかる多相回転機又はポテンショメータを介して回転軸の回転角度が検出される。このように検出される回転軸の回転角度とダンサローラ6に加えられる圧力との間には相関関係が存在しており、従って、シリンダ軸の揺動に応じて回転軸の回転角度が検出されていき、所定の回転角度が検出された時点でダンサローラ6には、その回転角度に対応する圧力が加えられ、これによりシート4に対して目標張力値が付与されるものである。
【0013】
また、ダンサローラ6には、圧力コントローラ7を介して加圧された際にダンサローラ6に生じる基準位置からの位置変化量(mm)を検出する位置検出器8が接続されている。かかる位置検出器8により検出されたダンサローラ6の位置変化量は、巻取モータコントローラ9に出力される。
【0014】
巻取モータコントローラ9には、ダンサローラ6の位置変化量と、ダンサローラ6を基準位置まで戻すに必要なシート巻取モータ10の回転速度との関係がテーブル化されて予め設定記憶されている。かかる巻取モータコントローラ9は、ダンサローラ6の位置変化量を示す検出信号が位置検出器8から出力された場合、テーブルを参照してその位置変化量に対応するシート巻取モータ10の回転速度を読み出すとともに、その回転速度に基づきシート巻取モータ10の回転制御を行う。
前記のようにシート巻取モータ10回転駆動が行われることに基づき、シート巻取ロール3のロール軸11が回転され、シート4がシート巻取ロール3に巻き取られる。
【0015】
また、ダンサローラ6の下流側には、シート4の裏面に接触してシート4の張力を検出する張力検出器12が配設されている。かかる張力検出器12を介して検出されたシート4の張力値は、張力コントローラ13に出力される。ここに、張力コントローラ13には、シート張力制御装置1の稼働時にシート4の目標張力値(N)が設定され、張力コントローラ13は、張力検出器12を介して検出されたシート2の張力値と、予め設定されている目標張力値との差を演算する。
【0016】
前記張力コントローラ13にて演算された張力値の差は、ユニット移動モータコントローラ14に出力される。ここに、ユニット移動モータコントローラ14には、張力コントローラ13から出力される張力値の差と、その張力値の差を解消してシート4の張力を目標張力値にするために必要なユニット移動モータ15の回転速度との関係がテーブル化されて予め設定記憶されている。かかるユニット移動モータコントローラ14は、張力検出器12を介して検出されたシート4の張力値と目標張力値と差を示す信号が張力コントローラ13から出力された場合、テーブルを参照してその張力差に対応するユニット移動モータ15の回転速度を読み出すとともに、その回転速度に基づきユニット移動モータ15の回転制御を行う。
【0017】
ここで、シート巻取ロール3を回転可能に支持する巻取ユニットUの構成について説明する。巻取ユニットUは、一対の支持板16(図1には一方の支持板16のみを示す)を備えており、両支持板16の下端はベース部19を介して連結されている。また、シート巻取ロール3のロール軸11は、両支持板16に形成された支持孔18に支持されている。
【0018】
また、ベース部19の下側には、巻取ユニットUが載置されるとともに、巻取ユニットUをシート送出ロール2とシート巻取ロール3との間で形成されるシート走行経路に沿って(図1中、左右方向に沿って)移動可能に支持する巻取ユニット支持機構Sが配設されている。
【0019】
かかる巻取ユニット支持機構について、図2を参照して説明する。図2は巻取ユニット支持機構の概略斜視図である。
図2において、巻取ユニット支持機構Sは、ベース部19を載置するスライダ20と、スライダ20を移動可能に支持するレール21と、ユニット移動モータ15の回転軸に連結されるとともにレール21に内設されたボールネジ(図示せず)と、スライダ20に固設されボールネジのネジ溝に噛合する噛合部材(図示せず)とから構成される。かかる構成では、ユニット移動モータ15が回転されると、その回転軸に連結されたボールネジが回転され、かかるボールネジの回転に基づきスライダ20の噛合部材がボールネジのネジ溝を介して送られ、これによりスライダ20が矢印方向に往復動されるものである。尚、巻取ユニット支持機構Sについては、従来より公知である各種の構成を採用することができる。
【0020】
前記のように構成されたシート張力制御装置1において行われる動作について説明する。先ず、シート4の先端をシート巻取ロール3の固定し、図1に示す状態に張設する。続いて、圧力コントローラ7に目標張力値が設定されるとともに、張力コントローラ13に目標張力値が設定される。
【0021】
この後張力制御装置1を稼働すると、圧力コントローラ7は、その設定された目標張力値をダンサローラ6に加えられる圧力に換算してダンサローラ6に圧力を加える。また、位置検出器8はダンサローラ6の基準位置からの位置変化量を検出するとともに、その検出した位置変化量を巻取モータコントローラ9に出力する。
巻取モータコントローラ9は、ダンサローラ6の位置変化量を示す検出信号が位置検出器8から出力された場合、テーブルを参照してその位置変化量に対応するシート巻取モータ10の回転速度を読み出すとともに、その回転速度に基づきシート巻取モータ10の回転制御を行う。
【0022】
このように、シート巻取モータ10回転駆動が行われることに基づき、シート巻取ロール3のロール軸11が回転され、シート4がシート巻取ロール3に巻き取られていくが、このとき、ダンサローラ6の位置変化量に対応してシート巻取モータ10の回転速度を制御しているので、シート4の張力は基本的に略一定値に保持される。
【0023】
また、前記した動作と同時に、張力検出器12を介してシート4の張力が検出されるとともに、その検出されたシート4の張力値は、張力コントローラ13に出力される。また、張力コントローラ13においては、張力検出器12を介して検出されたシート2の張力値と、予め設定されている目標張力値との差が演算され、その演算された張力値の差は、ユニット移動モータコントローラ14に出力される。更に、ユニット移動モータコントローラ14では、張力コントローラ13から出力される張力値の差と、その張力値の差を解消してシート4の張力を目標張力値にするために必要なユニット移動モータ15の回転速度との関係を記憶したテーブルに基づき、その張力差に対応するユニット移動モータ15の回転速度を読み出されるともに、その回転速度に基づきユニット移動モータ15の回転制御が行われる。
【0024】
このようにユニット移動モータ15の回転駆動が行われると、その回転方向に従って、巻取ユニットUは巻取ユニット支持機構
19において矢印方向に微細な移動制御が行われる。かかる巻取ユニットUの微細移動制御に基づき、張力検出器12を介して検出される張力値が張力コントローラ13に設定された目標張力値となるようシート4の張力が補正されることとなる。
【0025】
以上説明した通り、本実施形態に係る張力制御装置1によれば、位置検出器8を介してシート4の加圧時にダンサローラ6の位置を検出するとともに、巻取モータコントローラ9を介して位置検出器8からの位置変化量に基づきシート巻取モータ10の回転を制御することにより、シート送出ロール2とシート巻取ロール3間でシートの張力を基本的に略一定に制御することができ、これと同時に、ダンサローラ6の下流側に配設された張力検出器12を介して検出された張力値と目標張力値との張力差に対応して、ユニット移動モータコントローラ14によりユニット移動モータ15の回転制御を行うことにより、ダンサローラ6の位置を検出した後にシート巻取モータ10の回転制御を行うことに起因して、機械的な応答時間の遅れに起因する微細な張力変化を緩和吸収して微調整することができる。これにより、シートの巻取張力を一定に保持してシートのスムーズな巻取が可能となる。
【0026】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲内において種々の変更、改良が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施形態に係るシート張力制御装置の主要部の制御ブロック図である。
【図2】巻取ユニット支持機構の概略斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1 張力制御装置
2 シート送出ロール
3 シート巻取ロール
4 シート
5 支持ローラ
6 ダンサローラ
7 圧力コントローラ
8 位置検出器
9 巻取モータコントローラ
10 シート巻取モータ
11 ロール軸
12 張力検出器
13 張力コントローラ
14 ユニット移動モータコントローラ
15 ユニット移動モータ
S 巻取ユニット支持機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート送出ロールと、
前記シート送出ロールから送出されたシートを巻き取るシート巻取ロールと、
前記巻取ロールを回転駆動するシート巻取モータと、
前記シート送出ロールと前記シート巻取ロールとの間に配設され、シートを加圧するダンサローラと、
前記シートの加圧時にダンサローラの位置を検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段からの位置検出信号に基づき前記シート巻取モータの回転を制御する第1回転制御手段とを備えたシート張力制御装置において、
前記シート送出ロールとシート巻取ロール間で形成されるシート走行経路に沿って、シート巻取ロールを移動可能に支持する巻取ロール支持機構と、
前記巻取ロール支持機構にて、シート巻取ロールをシート走行経路に沿って移動させる巻取ロール移動モータと、
前記ダンサローラの下流側に配設され、シートの張力を検出するシート張力検出手段と、
前記シート張力検出手段を介して検出された張力検出信号に基づき前記巻取ロール移動モータの回転を制御する第2回転制御手段とを備えたことを特徴とするシート張力制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−265966(P2008−265966A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−111997(P2007−111997)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】