説明

強皮症の治療方法

本発明は強皮症及び随伴症状を治療/改善する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は強皮症及び随伴症状を治療/改善する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
強皮症、又は全身性硬化症(SSC)は皮膚線維芽細胞による細胞外マトリックスへの過剰なタンパク質の沈着を特徴とする、進行性、衰弱性の自己免疫疾患である(皮膚線維症とも呼ばれる)。しばしば広範性皮膚症の患者は、トポイソメラーゼIに特異的な血清抗核自己抗体の他に、皮膚におけるI型インターフェロン(IFN)誘導性遺伝子の上方制御(アップレギュレーション)のような固有の指標を提示する。慢性ウイルス感染症に対するIFN治療を受けている患者に発症した強皮症についての最近の報告は、IFNが皮膚線維症においてなんらかの役割を果たしていることを支持している。全身性硬化症の概説は、Varga & Abraham, 2007, J. Clin. Invest., 117:557-567を参照。
【0003】
I型IFNα、β、θ、κ、及びωは13の機能的IFN-α遺伝子、1のIFN-β遺伝子、1のIFN-θ遺伝子、1のIFN-κ遺伝子、及び1のIFN-ω遺伝子から発現するサイトカインである(Theofilopoulos AN, Baccala R, Beutler B, Kono DH. Type I Interferons (α/β) in immunity and autoimmunity. Immunol Rev. 2005 Apr; 204:9-26)。少なくとも28のIFN-α亜型があると見込まれ、以下はこれらの一部のリストである:α1、α2a、α2b、α4、α5、α6、α7、α8、α10、α16、α17、及びα21。場合によって、インターフェロンアルファ亜型α2と言及することはα2a及びα2bの両者を含む。
【0004】
全てのヒトI型インターフェロンは、2つの膜貫通タンパク質、IFNAR-1及びIFNAR-2からなる細胞表面受容体(IFNアルファ受容体、IFNAR)と結合する(Uzeら (1990) Cell 60:225; Novickら (1994) Cell 77:391)。この受容体への結合は、Jakキナーゼ、Jak1及びTyk2の活性化により開始する、細胞内シグナル伝達経路の活性化を引き起こす(Stark GR, Kerr IM, Williams BR, Silverman RH, Schreiber RD. Annu Rev Biochem 1998; 67:227-64)。次にこれらのキナーゼはシグナル伝達性転写因子(STAT)タンパク質、STAT1及びSTAT2をリン酸化する。リン酸化されたSTATタンパク質は、p48と共に核内移行する転写因子複合体、IFN活性化遺伝子ファクター3(ISGF3)を形成する。これらの複合体は、IFN誘導性遺伝子の発現を誘導するIFN応答配列(ISRE)を活性化する。
【0005】
特異的な抗ウイルス機能に加え、I型IFNは免疫系の制御において重要な役割を担う(Theofilopoulos AN, Baccala R, Beutler B, Kono DH. Type I Interferons (a/b) in immunity and autoimmunity. Immunol Rev. 2005 Apr; 204:9-26及びBelardelli F, Gresser I. The neglected role of type I interferon in the T-cell response: implications for its clinical use. Immunol Today 1996; 17:369-72)。単球、マクロファージ、DC、及びリンパ球並びにその他血液細胞を含む様々な細胞種が、様々な病原体成分と同様に、炎症促進性サイトカインに反応してI型IFNを産生する。これらの細胞はI型IFNにも反応し、MHCクラスI、CD38、インターロイキン(BLyS、IL-6、IL-10及びIL-15)、並びにケモカイン(IL-8、MCP-1、MCP-2、MIG、MIP1a、MIP1b及びIP10)のような免疫学的に重要な分子の発現を亢進する。さらにI型IFNは、樹状細胞、T細胞、B細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞を含む免疫系の重要構成因子において多様な生物学的機能を誘導する。例えば、I型IFNはDCの成熟、記憶CD8+ T細胞の増殖、CD4+ T細胞のアポトーシスの阻害、NK細胞の活性化、及びB細胞の分化を促進する(Banchereau J, Pascual V, Palucka AK. Autoimmunity through cytokine-induced dendritic cell activiation. Immunity, Vol. 20, 539-550, May, 2004及びTaki S. Cytokine & Growth Factor Reviews 13 (2002) 379-391及びMailliard RB, Son YI, Redlinger R, Coates PT, Giermasz A, Morel PA, Storkus WJ, Kalinski P. J Immunol. 2003 Sep 1; 171(5):2366-73)。
【0006】
ほぼ全ての細胞がウイルス及び細菌構成因子による刺激に応答してI型IFNを産生することができるが、形質細胞様樹状細胞(pDC)、すなわち「天然型IFN産生細胞」は他の細胞種の1000倍までI型IFNを産生する。I型IFNの産生は、一本鎖RNA(ssRNA)、細菌DNAにおける低メチル化CpG、又は自己抗原−抗体免疫複合体と共に、TLR7及びTLR9等のエンドソームのToll様受容体(TLR)の刺激により誘導され得る。
【0007】
強皮症発症におけるI型インターフェロンの役割をより深く理解する必要があり、並びに該疾患及び臨床症状に対する新しい治療法を見出す必要がある。
【0008】
本明細書における参考文献の引用又は議論は本発明に対する先行技術であることを承認するものと理解されるべきではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Varga & Abraham, 2007, J. Clin. Invest., 117:557-567
【非特許文献2】Theofilopoulos AN, Baccala R, Beutler B, Kono DH. Type I Interferons (α/β) in immunity and autoimmunity. Immunol Rev. 2005 Apr; 204:9-26
【非特許文献3】Uzeら (1990) Cell 60:225
【非特許文献4】Novickら (1994) Cell 77:391
【非特許文献5】Stark GR, Kerr IM, Williams BR, Silverman RH, Schreiber RD. Annu Rev Biochem 1998; 67:227-64
【非特許文献6】Belardelli F, Gresser I. The neglected role of type I interferon in the T-cell response: implications for its clinical use. Immunol Today 1996; 17:369-72
【非特許文献7】Banchereau J, Pascual V, Palucka AK. Autoimmunity through cytokine-induced dendritic cell activiation. Immunity, Vol. 20, 539-550, May, 2004
【非特許文献8】Taki S. Cytokine & Growth Factor Reviews 13 (2002) 379-391
【非特許文献9】Mailliard RB, Son YI, Redlinger R, Coates PT, Giermasz A, Morel PA, Storkus WJ, Kalinski P. J Immunol. 2003 Sep 1; 171(5):2366-73
【発明の概要】
【0010】
本発明は、強皮症及び強皮症に随伴する症状の治療が必要な患者に対し、I型IFNの拮抗薬を治療上有効量投与することにより該疾患及び随伴症状を治療するための組成物及び方法を提供する。本発明はさらに、強皮症に付随するI型IFN誘導性遺伝子発現を阻害する方法を提供する。
【0011】
本発明を説明するため、本発明のいくつかの実施形態を図面に記述する。しかし、本発明は図面に記述する実施形態の方法及び手段そのものに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1はマウスにおける全身性硬化症(SSc)モデルの作製、すなわち疾患誘導を図示し、非主要組織適合性(miHag)−ミスマッチ全脾細胞をRAG2-/-マウスに移植し皮膚のコラーゲン沈着及び自己抗体のようなSSc症状は時間とともに進行する。
【図2A】図2Aは、疾患非誘導(コントロール)、抗インターフェロンアルファ受容体(IFNAR)抗体存在下で疾患誘導(SSc + αIFNAR)、又はIgアイソタイプコントロール抗体存在下で疾患誘導(SSc + Igアイソタイプ)のマウスにおいて時間経過に伴い測定した強皮症臨床症状のグラフである。Y軸にはスキンスコアを示す。
【図2B】図2Bは、疾患非誘導(コントロール)、抗インターフェロンアルファ受容体(IFNAR)抗体存在下で疾患誘導(SSc + αIFNAR)、又はIgアイソタイプコントロール抗体存在下で疾患誘導(SSc + アイソタイプIg)のマウスにおいて時間経過に伴い測定した強皮症臨床症状のグラフである。Y軸にはタンパク尿スコアを示す。
【図2C】図2Cは、抗インターフェロンアルファ受容体抗体存在下(αIFNAR;パネル上)、又はIgアイソタイプコントロール抗体存在下(Igコントロール;パネル下)における疾患誘導後のマウスの写真である。
【図3A】図3Aは、疾患非誘導(非移植)(コントロール)、抗インターフェロンアルファ受容体抗体存在下で疾患誘導(SSc + αIFNAR)、又はIgアイソタイプコントロール抗体存在下で疾患誘導(SSc + Igアイソタイプ)したRAG2-/-マウス由来のSSc皮膚の組織病理学的解析を示す棒グラフである。Y軸には、炎症(0 = 正常;1 = わずな細胞浸潤;2 = 中程度の浸潤;3 = 広汎性皮膚浸潤)及びコラーゲン沈着(0 = 正常;1 = 軽度;2 = 中程度;3 = 重度)に対する加算的なスコアを示す。
【図3B】図3Bは、疾患非誘導(コントロール)、抗インターフェロンアルファ受容体抗体存在下で疾患誘導(SSc + αIFNAR)、又はIgアイソタイプコントロール抗体存在下で疾患誘導(SSc + Igアイソタイプ)したマウス由来の皮膚の代表的なH&E(パネル左)及びマッソントリクローム染色(パネル右)の免疫組織化学を示す。
【図4】図4A〜4Fは、ヤギ抗マウスIg-FITC(緑)又はラット抗マウスC1q-PEポリクローナル抗体(赤)の一方で染色し、DAPI(青)にマウントした皮膚切片の免疫組織化学を示す。皮膚切片は、同系移植コントロールマウス(図4A及び4D)、Igアイソタイプコントロール存在下でSSc誘導したマウス(図4B及び4E)、及び抗IFNAR抗体存在下でSSc誘導したマウス(図4C及び4F)に由来する。
【図5A】図5Aは、疾患非誘導(コントロール)、抗インターフェロンアルファ受容体抗体存在下で疾患誘導(SSc + αIFNAR)、又はIgアイソタイプコントロール抗体存在下で疾患誘導(SSc + Igアイソタイプ)したマウス由来血清のELISAにより検出した血清抗Scl-70及び抗SSA自己抗体(IgG、IgA、IgM)を示す棒グラフである。
【図5B】図5Bは、疾患非誘導(非GVH)、抗インターフェロンアルファ受容体抗体存在下で疾患誘導(10 mpk A53)、又はIgアイソタイプコントロール抗体存在下で疾患誘導(10 mpk 1A7)したマウス由来血清における抗Scl-70 IgG1(上左)、抗Scl-70 IgG2(上右)、及び抗SSA IgG1(下)量を示す3つの棒グラフを表す。
【図5C】図5Cは、CD45R/B220(茶)、及び胚中心(GC)を同定するためのピーナッツ凝集素(赤)で染色された同系移植コントロールマウス(パネルa及びd)、Igアイソタイプコントロール存在下でSSc誘導したマウス(パネルb及びe)、並びに抗IFNAR抗体存在下でSSc誘導したマウス(パネルc及びf)由来の脾臓切片の免疫組織化学を示す。
【図6A】図6Aは、移植後2週のミスマッチ移植レシピエント(SSc)又は非移植RAG2-/-コントロール(コントロール)における、脾臓の形質細胞様樹状細胞(pDC)(B220+/Gr-1lo/CD11c+/CD11b-)数のフローサイトメトリー細胞選別法(FACS)による量的解析を示す棒グラフである。
【図6B】図6Bは、全miHagミスマッチ脾細胞(全脾細胞)又はGr-1欠損(すなわちpDC欠損)miHagミスマッチ脾細胞(Gr-1(-)脾細胞)を移植したRAG2-/-マウスにおけるスキンスコア(左)及びタンパク尿(右)の経時変化グラフを示す。
【図7】図7は、SSc疾患非誘導(コントロール)、Igアイソタイプコントロール抗体存在下でSSc疾患誘導(Igコントロール)、又は抗インターフェロンアルファ受容体抗体存在下でSSc疾患誘導(a-IFNAR)のマウス皮膚において、抑制又は誘導される遺伝子の全ゲノムアレイ(WGA)データ解析の「ヒートマップ」表示である。図3Aに記述したように決定される臨床スキンスコアを各WGA解析試料のカラムの下に示す。
【図8A】図8A〜8Dは、GVH-SSc皮膚におけるI型IFNの一過的発現を解析するために行われた一連の実験をまとめて示す。図8AはIFNα2、α5、α9、及びβmRNA誘導のqPCR解析をまとめて示す。
【図8B】図8A〜8Dは、GVH-SSc皮膚におけるI型IFNの一過的発現を解析するために行われた一連の実験をまとめて示す。図8BはIFNγのqPCR解析をまとめて示す(データは2回の実験のうち代表的なものである、n=4/時点)。
【図8C】図8A〜8Dは、GVH-SSc皮膚におけるI型IFNの一過的発現を解析するために行われた一連の実験をまとめて示す。図8CはIFNλ-2のqPCR解析をまとめて示す(データは2回の実験のうち代表的なものである、n=4/時点)。
【図8D】図8A〜8Dは、GVH-SSc皮膚におけるI型IFNの一過的発現を解析するために行われた一連の実験をまとめて示す。図8Dは、GVH-SSc(パネル下)及び非SSc(パネル上)皮膚上皮細胞におけるIFNλ-3の免疫組織化学染色を示す(倍率、400x)。
【図9A】図9A〜9Cは、GVH誘導SSc動物モデルのデータをまとめて示す。週2回体重当たり10 mg/kgの抗IFNAR1マウス抗体5A3(斜線棒)又はコントロールIg(黒棒)で処理したマウス由来の皮膚試料に対してFluidigm(qPCR)解析を行い、非SSc皮膚(白棒)と比較した。図9Aは、2時点における4つのIFN誘導性遺伝子(IFI44、MX1、OASL、OAS2)の発現結果をまとめて示し、データは、初期発現がIFNAR1非依存性であり、長期的発現がIFNAR-1依存性であることを示している。
【図9B】図9A〜9Cは、GVH誘導SSc動物モデルのデータをまとめて示す。週2回体重1kg当たり10 mgの抗IFNAR1マウス抗体5A3(斜線棒)又はコントロールIg(黒棒)で処理したマウス由来の皮膚試料に対してFluidigm(qPCR)解析を行い、非SSc皮膚(白棒)と比較した。図9Bは、皮膚における炎症性遺伝子発現(MPO、TNFα、IL-6、INOS)が抗IFNAR1抗体処理により減少することを示す結果をまとめて示す。
【図9C】図9A〜9Cは、GVH誘導SSc動物モデルのデータをまとめて示す。週2回体重当たり10 mg/kgの抗IFNAR1マウス抗体5A3(斜線棒)又はコントロールIg(黒棒)で処理したマウス由来の皮膚試料に対してFluidigm(qPCR)解析を行い、非SSc皮膚(白棒)と比較した。図9Cは、組織再構築関連遺伝子発現(KLF10、TIMP、EPGN、MMP9)が抗IFNAR抗体処理により減少することを示す結果をまとめて示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
強皮症治療
本発明は、I型IFN拮抗薬の投与により、強皮症又は全身性硬化症を治療する方法並びに強皮症又は全身性硬化症の症状を治療する方法を提供する。
【0014】
本発明の抗I型IFN又は抗インターフェロンアルファ又は抗IFNαR抗体の「治療上有効量」又は「治療上有効服用量」は、疾患症状の重症度の減少、疾患症状のない期間の頻度及び長さの増加、又は疾患の苦痛による機能障害若しくは能力的障害の予防をもたらすことが好ましい。例えば強皮症の場合、治療上有効量又は服用量は、例えば皮膚線維症、皮膚病変、脱毛症、炎症、皮膚肥厚、コラーゲン沈着、タンパク尿、自己抗体産生、及び補体沈着のような、強皮症又は全身性硬化症に随伴する身体的症状のさらなる悪化を防ぐことが好ましい。治療上有効量又は服用量はまた、疾患の初期的又は予備的兆候が存在するとき望まれ得るように、強皮症又は全身性硬化症の発症を予防するか、又は遅らせることも好ましい。同様に、強皮症又は全身性硬化症に随伴する慢性的進行を遅らせることも含まれる。強皮症又は全身性硬化症の診断で利用される臨床試験には化学、血液学、組織病理学、血清学及び放射線学が含まれる。従って、特定の治療が強皮症又は全身性硬化症を治療するのに治療上有効服用量であるかどうかを決定するために、前記事項をモニターする任意の臨床又は生化学試験が使用され得る。当業者なら、被験者の大きさ、被験者の症状の重症度、並びに選択した特定の組成又は投与経路等の要因に基づいてそのような量を決定することができるであろう。
【0015】
本明細書で使用される場合、「治療」という用語は強皮症又は全身性硬化症並びに随伴症状の重症度を緩和、改善、及び/又は低減することを指す。
【0016】
一部の実施形態において、皮膚線維症、皮膚病変、脱毛症、炎症、皮膚肥厚、コラーゲン沈着、タンパク尿、自己抗体産生、及び補体沈着を含む、1種以上の強皮症症状を治療する方法が提供される。
【0017】
強皮症症状の重症度、進行度、治療に対する反応、及びその他臨床測定には典型的には、改良型ロッドナン(Rodnan)スキンスコア、レイノー状態スコア(Raynaud's Condition Score)、肺機能検査の一部として努力性肺活量測定、右心カテーテル血行動態、血清クレアチン測定、血圧及び総血球数、並びに血清クレアチニンホスホキナーゼレベルの測定を用いた患者の評価が含まれる(例えば、Furst, 2008, Rheumatology, 47:v29-v30及びFurstら, 2007, J. of Rheumatology, 34:5, 1194-1200を参照)。
【0018】
改良型ロッドナンスキンスコアは、患者の皮膚厚を推定するために確立した触診を用いた強皮症の臨床評価法であり、患者の皮膚部位17箇所の計測を用い、各部位について0 = 正常皮膚、1 = 肥厚皮膚、2 = 肥厚皮膚でつまむことができない、並びに3 =肥厚皮膚で動かすことができない、の合計51点で採点する方法である(Czirjakら, 2007, Ann Rheum Dis.; 66(7):966-9. Epub 2007 Jan 18及びBrennanら, 1992, Br J Rheumatol; 31(7):457-60を参照)。
【0019】
従って、一部の実施形態において、I型インターフェロンの拮抗薬を治療上有効量投与することを含む、強皮症治療の必要な患者における強皮症治療方法で、前記治療が改良型ロッドナンスキンスコアにより測定される症状の改善(すなわち改良型スキンスコア値の合計の減少)をもたらす該治療方法が提供される。
【0020】
一実施形態において、本発明は、I型インターフェロンの拮抗薬を治療上有効量投与することを含む、強皮症治療の必要な患者における強皮症治療方法で、前記患者が1〜51の治療前改良型ロッドナンスキンスコアを有し、(1〜51)-xの治療後改良型ロッドナンスキンスコア(x = 1〜51であり、且つ治療後改良型ロッドナンスキンスコアは0未満でない)を有する該治療方法を提供する。
【0021】
一実施形態において、本発明は、I型インターフェロンの拮抗薬を治療上有効量投与することを含む、強皮症治療の必要な患者における強皮症治療方法で、前記患者が1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、又は51の治療前改良型ロッドナンスキンスコアを有し、50、49、48、47、46、45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、l、又は0の治療後改良型ロッドナンスキンスコアを有する該治療方法を提供する。
【0022】
一実施形態において、本発明は、I型インターフェロンの拮抗薬を治療上有効量投与することを含む、強皮症治療の必要な患者における強皮症治療方法で、前記治療が改良型ロッドナンスキンスコア値を少なくとも1減少させる該治療方法を提供する。一実施形態において、本発明は、I型インターフェロンの拮抗薬を治療上有効量投与することを含む、強皮症治療の必要な患者における強皮症治療方法で、前記治療が改良型ロッドナンスキンスコア値を少なくとも5減少させる該治療方法を提供する。一実施形態において、本発明は、I型インターフェロンの拮抗薬を治療上有効量投与することを含む、強皮症治療の必要な患者における強皮症治療方法で、前記治療が改良型ロッドナンスキンスコア値を少なくとも10減少させる該治療方法を提供する。一実施形態において、本発明は、I型インターフェロンの拮抗薬を治療上有効量投与することを含む、強皮症治療の必要な患者における強皮症治療方法で、前記治療が改良型ロッドナンスキンスコア値を少なくとも25減少させる該治療方法を提供する。
【0023】
一実施形態において、本発明は、I型インターフェロンの拮抗薬を治療上有効量投与することを含む、強皮症治療の必要な患者における強皮症治療方法で、前記治療が改良型ロッドナンスキンスコア値を少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも21、少なくとも22、少なくとも23、少なくとも24、少なくとも25、少なくとも26、少なくとも27、少なくとも28、少なくとも29、少なくとも30、少なくとも31、少なくとも32、少なくとも33、少なくとも34、少なくとも35、少なくとも36、少なくとも37、少なくとも38、少なくとも39、少なくとも40、少なくとも41、少なくとも42、少なくとも43、少なくとも44、少なくとも45、少なくとも46、少なくとも47、少なくとも48、少なくとも49、少なくとも50、又は51減少させる該治療方法を提供する。
【0024】
一部の実施形態において、I型インターフェロンの拮抗薬を治療上有効量投与することを含む、強皮症治療の必要な患者における強皮症治療方法で、前記治療がレイノー状態スコア(RCS)により測定される症状の改善をもたらす該治療方法が提供される。RCSは、数字の増加が強皮症随伴症状の悪化を意味する0〜10の階級を用いたレイノー現象活性の日々の自己評価である。(例えば、Merkelら, 2002, Arthritis & Rheumatism, 46:9, pp 2410-2420を参照)。
【0025】
一実施形態において、本発明は、I型インターフェロンの拮抗薬を治療上有効量投与することを含む、強皮症治療の必要な患者における強皮症治療方法で、前記患者が1〜10の治療前RCSスコアを有し、(1〜10)-xの治療後RCSスキンスコア(x = 1〜10であり、且つ治療後RCSスコアは0未満でない)を有する該治療方法を提供する。
【0026】
一実施形態において、本発明は、I型インターフェロンの拮抗薬を治療上有効量投与することを含む、強皮症治療の必要な患者における強皮症治療方法で、前記患者が1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10の治療前RCSスコアを有し、9、8、7、6、5、4、3、2、l、又は0の治療後RCSスコアを有する該治療方法を提供する。
【0027】
一実施形態において、本発明は、I型インターフェロンの拮抗薬を治療上有効量投与することを含む、強皮症治療の必要な患者における強皮症治療方法で、前記治療がRCSスコア値を少なくとも1減少させる該治療方法を提供する。一実施形態において、本発明は、I型インターフェロンの拮抗薬を治療上有効量投与することを含む、強皮症治療の必要な患者における強皮症治療方法で、前記治療がRCSスコア値を少なくとも2減少させる該治療方法を提供する。一実施形態において、本発明は、I型インターフェロンの拮抗薬を治療上有効量投与することを含む、強皮症治療の必要な患者における強皮症治療方法で、前記治療がRCSスコア値を少なくとも3減少させる該治療方法を提供する。一実施形態において、本発明は、I型インターフェロンの拮抗薬を治療上有効量投与することを含む、強皮症治療の必要な患者における強皮症治療方法で、前記治療がRCSスコア値を少なくとも5減少させる該治療方法を提供する。一実施形態において、本発明は、I型インターフェロンの拮抗薬を治療上有効量投与することを含む、強皮症治療の必要な患者における強皮症治療方法で、前記治療がRCSスコア値を少なくとも6減少させる該治療方法を提供する。一実施形態において、本発明は、I型インターフェロンの拮抗薬を治療上有効量投与することを含む、強皮症治療の必要な患者における強皮症治療方法で、前記治療がRCSスコア値を少なくとも7減少させる該治療方法を提供する。一実施形態において、本発明は、I型インターフェロンの拮抗薬を治療上有効量投与することを含む、強皮症治療の必要な患者における強皮症治療方法で、前記治療がRCSスコア値を少なくとも8減少させる該治療方法を提供する。一実施形態において、本発明は、I型インターフェロンの拮抗薬を治療上有効量投与することを含む、強皮症治療の必要な患者における強皮症治療方法で、前記治療がRCSスコア値を少なくとも9減少させる該治療方法を提供する。一実施形態において、本発明は、I型インターフェロンの拮抗薬を治療上有効量投与することを含む、強皮症治療の必要な患者における強皮症治療方法で、前記治療がRCSスコア値を少なくとも10減少させる該治療方法を提供する。
【0028】
一実施形態において、本発明は、I型インターフェロンの拮抗薬を治療上有効量投与することを含む、強皮症治療の必要な患者における強皮症治療方法で、前記治療がRCSスコア値を少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、又は10減少させる該治療方法を提供する。
【0029】
一部の実施形態において、I型インターフェロンの拮抗薬を治療上有効量投与することを含む、強皮症治療の必要な患者における強皮症治療方法で、前記治療が血清クレアチニンの臨床的測定により測定される症状の改善をもたらす該治療方法が提供される。
【0030】
一部の実施形態において、I型インターフェロンの拮抗薬を治療上有効量投与することを含む、強皮症治療の必要な患者における強皮症治療方法で、前記治療が血清クレアチンホスホキナーゼレベルの測定により測定される症状の改善をもたらす該治療方法を提供する。
【0031】
一部の実施形態において、I型インターフェロンの拮抗薬を治療上有効量投与することを含む、強皮症治療の必要な患者における強皮症治療方法で、前記治療が肺機能検査の一部として努力性肺活量の臨床的測定により測定される症状の改善をもたらす該治療方法が提供される。
【0032】
一部の実施形態において、I型インターフェロンの拮抗薬を治療上有効量投与することを含む、強皮症治療の必要な患者における強皮症治療方法で、前記治療が右心カテーテル血行動態により測定される症状の改善をもたらす該治療方法が提供される。
【0033】
一部の実施形態において、I型インターフェロンの拮抗薬を治療上有効量投与することを含む、強皮症治療の必要な患者における強皮症治療方法で、前記治療が血圧及び総血球数により測定される症状の改善をもたらす該治療方法が提供される。
【0034】
一部の実施形態において、I型インターフェロンの拮抗薬を治療上有効量投与することを含む、強皮症治療の必要な患者における強皮症治療方法で、前記治療が患者皮膚試料の組織病理学的解析により測定される症状の改善をもたらす該治療方法が提供される。一実施形態において、この改善は、組織試料における炎症性細胞浸潤、コラーゲン沈着、又は真皮の全体的な肥厚により示される炎症の減少として測定される。一実施形態において、I型インターフェロンの拮抗薬による治療は炎症を2倍減少させる。別の実施形態において、I型インターフェロンの拮抗薬による治療は炎症を3倍減少させる。さらなる実施形態において、I型インターフェロンの拮抗薬による治療は炎症を5倍減少させる。
【0035】
一部の実施形態において、I型インターフェロンの拮抗薬を治療上有効量投与することを含む、強皮症治療の必要な患者における強皮症治療方法で、前記治療が患者皮膚試料について実施するqPCR解析により測定される症状の改善をもたらす該治療方法が提供される。例えば、国際公開第WO/08070137A2号、発明の名称Interferon Alpha-Induced Pharmacodynamic Markersを参照。
【0036】
一実施形態において、I型インターフェロンの拮抗薬を治療上有効量投与することを含む、強皮症治療の必要な患者における強皮症治療方法で、前記治療がMPO、TNFα、IL-6、及びINOSを含むが、それに限定されない炎症性遺伝子発現を減少させる該治療方法が提供される。一実施形態において、I型インターフェロンの拮抗薬を治療上有効量投与することを含む、強皮症治療の必要な患者における強皮症治療方法で、前記患者が治療前にMPO、TNFα、IL-6、及びINOSを含むが、それに限定されない炎症性遺伝子発現の増加を呈し、前記患者が治療後にMPO、TNFα、IL-6、及びINOSを含むが、それに限定されない炎症性遺伝子発現の減少を呈する該治療方法が提供される。一実施形態において、I型インターフェロンの拮抗薬を治療上有効量投与することを含む、強皮症治療の必要な患者における強皮症治療方法で、前記治療が少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、又は少なくとも10倍のqPCRにより測定される炎症性遺伝子発現の減少をもたらす該治療方法が提供される。別の実施形態において、I型インターフェロンの拮抗薬を治療上有効量投与することを含む、強皮症治療の必要な患者における強皮症治療方法で、前記治療が少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、又は少なくとも90%のqPCRにより測定される炎症性遺伝子発現の減少をもたらす該治療方法が提供される。
【0037】
さらなる実施形態において、I型インターフェロンの拮抗薬を治療上有効量投与することを含む、強皮症治療の必要な患者における強皮症治療方法で、前記治療がKLF1O、TIMP、EPGN、及びMMP9を含むが、それに限定されない組織再構築関連遺伝子発現を減少させる該治療方法が提供される。一実施形態において、I型インターフェロンの拮抗薬を治療上有効量投与することを含む、強皮症治療の必要な患者における強皮症治療方法で、前記患者が治療前にKLF1O、TIMP、EPGN、及びMMP9を含むが、それに限定されない組織再構築関連遺伝子発現の増加を呈し、前記患者が治療後にKLF1O、TIMP、EPGN、及びMMP9を含むが、それに限定されない組織再構築関連遺伝子発現の減少を呈する該治療方法が提供される。一実施形態において、I型インターフェロンの拮抗薬を治療上有効量投与することを含む、強皮症治療の必要な患者における強皮症治療方法で、前記治療が少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、又は少なくとも10倍のqPCRにより測定される組織再構築関連遺伝子発現の減少をもたらす該治療方法が提供される。別の実施形態において、I型インターフェロンの拮抗薬を治療上有効量投与することを含む、強皮症治療の必要な患者における強皮症治療方法で、前記治療が少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、又は少なくとも90%のqPCRにより測定される組織再構築関連遺伝子発現の減少をもたらす該治療方法が提供される。
【0038】
I型IFN活性、より詳細にはIFNα活性、又はIFNαR活性に結合して拮抗する治療薬で患者を治療する方法、I型IFN活性、より詳細にはIFNα活性、又はIFNαR活性に結合して拮抗する治療薬の対象と患者をみなす方法、I型IFN又は、より詳細にはIFNαレベル、又はIFNαR活性の増加を伴う疾患を有すると患者を診断する方法、I型IFN活性、より詳細にはIFNα活性、又はIFNαR活性に結合して拮抗する治療薬による治療を受けている患者の疾患進行をモニターする方法、並びにI型IFN、より詳細にはIFNα介在、又はIFNαR介在疾患を治療する治療候補を同定する方法において、薬力学的(PD)指標を使用することができる。
【0039】
一形態において、本発明は、I型IFN活性の拮抗薬を投与することを含む、I型IFN介在病又は疾患を有する患者を治療する方法で;患者がI型IFN誘導性PD指標発現特性を含み;拮抗薬が被験者のI型IFN誘導性PD指標発現特性を中和化(neutralize)する該治療方法を提供する。特定の実施形態において、病気又は疾患は強皮症又は全身性硬化症である。
【0040】
本発明は患者における病気の進行を同定、診断、治療、及びモニターする方法を含む。患者にはI型IFN又はIFNα誘導性病気、疾患、又は状態を有するいずれの動物も含まれる。患者は実験研究の結果として該病気、疾患、又は状態を有してよく、例えば、該病気、疾患、又は状態のために開発された実験モデルであってよい。或いは、患者は実験操作によらずに該病気、疾患、又は状態を有してよい。患者には人、マウス、ラット、馬、豚、猫、犬、及び研究用に使用されるいずれの動物も含まれる。
【0041】
I型IFN誘導性若しくはIFNα誘導性PD指標発現特性を用いて、並びに/又は患者のI型IFN誘導性若しくはIFNα誘導性PD指標発現特性を中和化する拮抗薬を用いて、患者における病気の進行を同定、診断、治療、及びモニターする方法は、国際公開第WO/08070137A2号、発明の名称「Interferon Alpha-induced Pharmacodynamic Markers」に開示され、参照により本明細書に援用される。
【0042】
I型IFN又はIFNα又はIFNαR活性を結合して阻害するI型IFNの拮抗薬は、I型IFN又はIFNα誘導性特性を中和化し得る。I型IFN又はIFNα誘導性特性の中和化は、I型IFN又はIFNαに誘導される、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも5、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、又は少なくとも50の遺伝子における減少である。I型IFN又はIFNαに誘導される遺伝子は、国際公開第WO/08070137A2号、発明の名称「Interferon Alpha-induced Pharmacodynamic Markers」に開示されるいずれの遺伝子群であってもよい。I型IFN又はIFNα誘導性特性の中和化は、任意のI型IFN又はIFNα誘導性特性における、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも5、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、又は少なくとも50の任意の遺伝子の少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、又は少なくとも90%の減少である。或いは、I型IFN又はIFNα誘導性特性の中和化は、コントロール試料におけるI型IFN又はIFNα誘導性遺伝子の発現レベルの最大50%、最大45%、最大40%、最大35%、最大30%、最大25%、最大20%、最大15%、最大10%、最大5%、最大4%、最大3%、最大2%、又は最大1%以内であるI型IFN又はIFNα誘導性遺伝子発現の減少を指す。I型IFN又はIFNα活性を結合して調節する、より詳細には拮抗する薬剤が、抗体のような生物的薬剤の場合、薬剤は0.3〜30 mg/kg、0.3〜10 mg/kg、0.3〜3 mg/kg、0.3〜1 mg/kg、1〜30 mg/kg、3〜30 mg/kg、5〜30 mg/kg、10〜30 mg/kg、1〜10 mg/kg、3〜10 mg/kg、又は1〜5 mg/kgの服用量でI型IFN又はIFNα特性を中和化し得る。
【0043】
I型IFN又はIFNα活性を結合して調節する、より詳細には拮抗する薬剤は、1種以上のI型IFN又はIFNα亜型の発現を、さらに又は代わりに、中和化し得る。IFNα又はI型IFN亜型は任意の1より多い、2より多い、3より多い、4より多い、5より多い、6より多い、7より多い、8より多い、9より多い、又は10より多いIFNα又はI型IFN亜型を含んでよい。これらの亜型は、IFNα1、IFNα2、IFNα4、IFNα5、IFNα6、IFNα7、IFNα8、IFNα1O、IFNα14、IFNα17、IFNα21、IFNβ、又はIFNωを含んでよい。これらの亜型はIFNα1、IFNα2、IFNα8、及びIFNα14の全てを含んでよい。或いは、これらの亜型はIFNα1、IFNα2、IFNα4、IFNα5、IFNα8、IFNα10、IFNα21を含んでよい。IFNα又はI型IFN亜型の中和化は、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも5、少なくとも7、少なくとも8、又は少なくとも10の任意の亜型の少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、又は少なくとも90%の減少であってよい。IFNα又はI型IFN亜型の中和化は、コントロール試料におけるIFNα又はI型IFN亜型遺伝子の発現レベルの最大50%、最大45%、最大40%、最大35%、最大30%、最大25%、最大20%、最大15%、最大10%、最大5%、最大4%、最大3%、最大2%、又は最大1%以内であるIFNα又はI型IFN亜型遺伝子の発現の減少であってよい。IFNα活性又はI型IFN活性を結合して調節する、より詳細には拮抗する薬剤が、抗体のような生物的薬剤の場合、薬剤は0.3〜30 mg/kg、0.3〜10 mg/kg、0.3〜3 mg/kg、0.3〜1 mg/kg、1〜30 mg/kg、3〜30 mg/kg、5〜30 mg/kg、10〜30 mg/kg、1〜10 mg/kg、3〜10 mg/kg、又は1〜5 mg/kgの服用量でIFNα又はI型IFN亜型を中和化し得る。
【0044】
I型IFN又はIFNα活性を結合して調節する、より詳細には拮抗する薬剤は、IFNα受容体、IFNAR1若しくはIFNAR2の一方若しくは両方、又はTNFα、又はIFNγ、又はIFNγ受容体(IFNGR1、IFNGR2の一方、又はIFNGR1及びIFNGR2の両方)の発現を、さらに又は代わりに、中和化し得る。IFNα受容体、IFNAR1若しくはIFNAR2の一方若しくは両方、又はTNFα、又はIFNγ、又はIFNγ受容体(IFNGR1、IFNGR2の一方、又はIFNGR1及びIFNGR2の両方)の発現の中和化は、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも5、又は少なくとも6の任意のこれらの遺伝子の少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、又は少なくとも90%の減少であってよい。IFNα受容体、IFNAR1若しくはIFNAR2の一方若しくは両方、又はTNFα、又はIFNγ、又はIFNγ受容体(IFNGR1、IFNGR2の一方、又はIFNGR1及びIFNGR2の両方)の発現の中和化は、コントロール試料におけるこれらの遺伝子の発現レベルの最大50%、最大45%、最大40%、最大35%、最大30%、最大25%、最大20%、最大15%、最大10%、最大5%、最大4%、最大3%、最大2%、又は最大1%の発現の減少である。I型IFN又はIFNα活性を結合して調節する、より詳細には拮抗する薬剤が、抗体のような生物的薬剤の場合、薬剤は0.3〜30 mg/kg、0.3〜10 mg/kg、0.3〜3 mg/kg、0.3〜1 mg/kg、1〜30 mg/kg、3〜30 mg/kg、5〜30 mg/kg、10〜30 mg/kg、1〜10 mg/kg、3〜10 mg/kg、又は1〜5 mg/kgの服用量でIFNα受容体IFNAR1若しくはIFNAR2、又はTNFα、又はIFNγ、又はIFNγ受容体IFNGR1若しくはIFNGR2の発現を中和化し得る。
【0045】
本出願人は本発明のいくつかの形態を記述するために一連の非限定的な実施形態を提供する。
【0046】
1. I型インターフェロン(IFN)の拮抗薬を治療上有効量投与することを含む、強皮症治療の必要な患者における強皮症治療方法。
【0047】
2. I型インターフェロンの拮抗薬を治療上有効量投与することを含む、強皮症随伴症状治療の必要な患者における、1種以上の強皮症随伴症状の緩和方法。
【0048】
3. 前記拮抗薬が抗体である、実施形態1又は2に記載の方法。
【0049】
4. 前記抗体が抗IFNαR抗体である、実施形態3に記載の方法。
【0050】
5. 前記抗体が抗IFNα抗体である、実施形態3に記載の方法。
【0051】
6. 症状が皮膚線維症、皮膚病変、脱毛症、炎症、皮膚肥厚、コラーゲン沈着、タンパク尿、及び補体沈着からなる群より選択される、実施形態1又は2に記載の方法。
【0052】
7. 抗体が約0.03 mg/kg〜約30 mg/kgの服用量で投与される、実施形態1又は2に記載の方法。
【0053】
8. 前記治療が改良型ロッドナンスキンスコアで測定される症状の改善をもたらす、実施形態1又は2に記載の方法。
【0054】
9. 前記治療がレイノー状態スコア(RCS)で測定される症状の改善をもたらす、実施形態1又は2に記載の方法。
【0055】
10. 前記治療が患者皮膚試料に対して行うqPCR解析で測定される症状の改善をもたらす、実施形態1又は2に記載の方法。
【0056】
11. 前記治療がMPO、TNFα、IL-6、及びINOSからなる群より選択される炎症性遺伝子発現を減少させる、実施形態10に記載の方法。
【0057】
12. 前記治療がKLF10、TIMP、EPGN、及びMMP9からなる群より選択される組織再構築関連遺伝子発現を減少させる、実施形態10に記載の方法。
【0058】
投薬量及び投与
強皮症/全身性硬化症及び該疾患症状の治療、予防又は管理において有効である本発明の組成物の量は、標準的な研究手法により決定され得る。好ましい有効服用量の選択は、当業者に周知であろういくつかの因子を考慮の上、(例えば臨床試験によって)当業者により決定され得る。そのような因子には、関連症状、患者の体重、患者の免疫状態及び投与する医薬組成物の正確性を反映することが当業者に周知なその他因子が含まれる。
【0059】
製剤において使用される正確な服用量はまた、投与方法及び呈する強皮症症状の重症度にも依存するであろうし、施術者の判断及び各患者の状況に従って決定されるべきである。有効服用量はin vitro又は動物モデル試験系から得られる用量反応曲線から推定され得る。
【0060】
抗体、融合タンパク質、又は突然変異タンパク質の場合、患者に投与される投薬量は典型的には、患者の体重当たり0.1 mg/kg〜100 mg/kgである。一実施形態において、患者に投与される投薬量は、患者の体重当たり0.1 mg/kg〜20 mg/kgである。別の実施形態において、患者に投与される投薬量は、患者の体重当たり1 mg/kg〜10 mg/kgである。別の実施形態において、患者に投与される投薬量は、患者の体重当たり0.3 mg/kg〜30 mg/kgである。別の実施形態において、患者に投与される投薬量は、0.3 mg/kg〜3.0 mg/kgである。別の実施形態において、患者に投与される投薬量は、0.1 mg/kg、0.3 mg/kg、0.5 mg/kg、1.0 mg/kg、2.0 mg/kg、3.0 mg/kg、4.0 mg/kg、5.0 mg/kg、6.0 mg/kg、7.0 mg/kg、8.0 mg/kg、9.0 mg/kg、10.0 mg/kg、11.0 mg/kg、12.0 mg/kg、13.0 mg/kg、14.0 mg/kg、15.0 mg/kg、16.0 mg/kg、17.0 mg/kg、18.0 mg/kg、19.0 mg/kg、20.0 mg/kg、又は25 mg/kgである。特定の実施形態において、患者に投与される投薬量は、患者の体重当たり0.1 mg/kg、0.3 mg/kg、1.0 mg/kg、3.0 mg/kg、10 mg/kg、及び30 mg/kgからなる群より選択される。
特定の実施形態において、(任意選択で医薬組成物の一部として製薬上許容可能な担体中における)抗体の投薬量は少なくとも約0.0005、0.001、0.05、0.075、0.1、0.25、0.375、0.5、1、2.5、5、10、20、37.5、又は50 mg/m2及び/又は約500、475、450、425、400、375、350、325、300、275、250、225、200、175、150、125、100、75、60、50、37.5、20、15、10、5、2.5、1、0.5、0.375、0.1、0.075又は0.01 mg/m2未満である。一部の実施形態において、投薬量は約0.0005〜約200 mg/m2、約0.001〜150 mg/m2、約0.075〜125 mg/m2、約0.375〜100 mg/m2、約2.5〜75 mg/m2、約10〜75 mg/m2、及び約20〜50 mg/m2である。関連する実施形態において、使用する抗IFNα又はIFNαRの投薬量は患者の体重当たり少なくとも約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20、20.5 mg/kgである。
【0061】
特定の実施形態において、使用する抗IFNα又は抗IFNαR抗体の服用量は患者の体重当たり少なくとも約1〜約10、約5〜約15、約10〜約20、又は約15〜約25 mg/kgである。一部の実施形態において、使用する抗IFNα又はIFNαR抗体の服用量は患者の体重当たり少なくとも約1〜約20、約3〜約15、又は約5〜約10 mg/kgである。他の実施形態において、使用する抗IFNα又はIFNαR抗体の服用量は患者の体重当たり少なくとも約5、約6、約7、約8、約9、又は約10 mg/kgである。一部の実施形態において、(任意選択で医薬組成物の一部として製薬上許容可能な担体中における)抗体の単一投薬単位は少なくとも約0.5、約1、約2、約4、約6、約8、約10、約12、約14、約16、約18、約20、約22、約24、約26、約28、約30、約32、約34、約36、約38、約40、約42、約44、約46、約48、約50、約52、約54、約56、約58、約60、約62、約64、約66、約68、約70、約72、約74、約76、約78、約80、約82、約84、約86、約88、約90、約92、約94、約96、約98、約100、約102、約104、約106、約108、約110、約112、約114、約116、約118、約120、約122、約124、約126、約128、約130、約132、約134、約136、約138、約140、約142、約144、約146、約148、約150、約152、約154、約156、約158、約160、約162、約164、約166、約168、約170、約172、約174、約176、約178、約180、約182、約184、約186、約188、約190、約192、約194、約196、約198、約200、約204、約206、約208、約210、約212、約214、約216、約218、約220、約222、約224、約226、約228、約230、約232、約234、約236、約238、約240、約242、約244、約246、約248、又は約250μg/m2であり得る。他の実施形態において、服用量は単一投薬単位当たり約1 gまでである。
【0062】
本発明の組成物の人患者への投与は、静脈、皮内、経皮、皮下、筋内、吸入(例えばエアロゾルにより)、口腔(例えば舌下)、局所(すなわち気道表面を含む皮膚及び粘膜の両方)、くも膜下、関節内、胸膜内、脳内、動脈、腹腔内、経口、リンパ管内、経鼻、直腸又は膣内投与を含むが、それに限定されない任意の方法により、局所的カテーテルを通したかん流により、又は病巣内への直接注入により行い得る。一実施形態において、本発明の組成物は規定の時間(例えば0.5〜2時間)に渡り行われる静注又は静脈内点滴により投与される。ある一定の場合に最適な方法は、当技術分野で周知のように、被験者の人種、年齢、性別及び全体の状況、治療を受ける状況の性質及び重症度のような因子、並びに/又は投与される特定の組成物(すなわち投薬量、製剤)の性質に依存するであろうけれども、本発明の組成物は、蠕動法により、又は持続性製剤の形で送達され得る。特別な実施形態において、投与方法は、週1回又は2回、急速注入又は一定時間にわたる持続注入による。他の特別な実施形態において、投与方法は、任意で週1回又は2回、皮下注射による。一実施形態において、本発明の組成物及び/又は方法は外来患者に投与される。別の実施形態において、本発明の組成物及び/又は方法は薬剤充填済み注射器を用いて投与される。
【0063】
一部の実施形態において、抗IFNα又はIFNαR抗体を含む組成物の服用量は患者の体重当たりmg/kgの単位で計量される。他の実施形態において、抗IFNα又はIFNαR抗体を含む組成物の服用量は患者の除脂肪体重(すなわち体脂肪量を除いた体重)当たりmg/kgの単位で計量される。さらに他の実施形態において、抗IFNα又はIFNαR抗体を含む組成物の服用量は患者の体表面積当たりmg/m2の単位で計量される。さらに他の実施形態において、抗IFNα又はIFNαR抗体を含む組成物の服用量は、ある患者に投与される服用量当たりのmg単位で計量される。本発明の組成物及び方法に関連して服用量のいずれの計量方法も使用することができ、投薬単位は当技術分野において標準的な方法で変換することができる。
【0064】
当業者により、被験者の年齢、性別、人種及び状況(例えば強皮症の進行段階)、望まれる細胞喪失の程度、治療を受ける疾患並びに/又は使用される特定の抗体若しくは抗原結合性フラグメントを含む多くの因子に基づいて投薬量が選択され得ること、そして決定され得ることを、当業者は理解するであろう。例えば、本発明の組成物の有効量は、in vitro試験系又は動物モデル(例えばコットンラット又はサル)試験系から得られる用量反応曲線から推定され得る。抗体の効果の評価についてのモデル及び方法は当技術分野で周知である(Wooldridgeら, Blood, 89(8): 2994 2998 (1997)、参照により本明細書に全体が援用される)。
【0065】
本発明の方法において使用され得る投与方式の例には、1日1回、週3回(断続的)、週1回、又は14日に1回が含まれるが、それに限定されない。一部の実施形態において、投与方式には、月1回投与、又は6〜8週間に1回投与、又は一定の期間の間週1回が含まれるが、それに限定されない。一実施形態において、投与は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12週間、週1回実施され得る。
【0066】
初期治療では、維持療法に比べ投薬量が一般に多く、及び/又は投与頻度が頻繁であることを当業者は理解するであろう。全ての前記服用量は例示であり本発明の組成物及び方法と共に使用され得るが、抗IFNα又はIFNαR抗体が抗炎症薬と共に使用される場合は、前記記載の中でより低用量が使用され得る。
【0067】
一部の実施形態において、本発明の組成物及び方法に対する患者の免疫反応に基づいて投薬量及び送達速度を調整することができ、及び/又は注入速度を減少させることができる。本発明の方法の別の形態に従って、免疫反応を検出し最小限にするため、又は本発明の組成物及び方法の副作用を最小限にするため、患者は本発明の組成物及び方法で予め処理されてよい。
【0068】
I型インターフェンロン拮抗薬
本明細書で使用されるように、「I型IFNの拮抗薬」という用語はインターフェロンアルファ受容体(IFNAR)を介したシグナル伝達及び/又はIFNARの活性化を阻害、阻止、抑圧、中和化、低下又はそうでなければ妨害若しくは抑止するいずれの薬剤をも指す。I型IFNの拮抗薬は、いずれかのI型IFNとIFNARの相互作用を妨害することによって機能し得る。従ってI型IFNの拮抗薬は、I型IFNに結合して拮抗することにより、又はIFNARに結合して拮抗することにより機能し得る。I型IFNの拮抗薬はIFNARのIFNAR1鎖若しくはIFNARのIFNAR2鎖の一方に結合し得るか、又は2つの鎖の組み合わせの結果生じる抗原決定基に結合し得る。特別な実施形態において、I型IFNの拮抗薬は、米国特許出願公開第2006/0029601号、同第2006/0020118号、及び米国特許第6,713,609号に開示されるもののような、IFNARのIFNAR1鎖に結合する抗体であり、これらは参照により全体が本明細書に援用される。
【0069】
本発明の一部の実施形態において、例えば可溶性受容体鎖(例えば可溶性IFNAR1若しくはIFNAR2)又はそれらのフラグメントのような、I型IFNリガンド結合を妨害する拮抗薬が提供される。他の関連する実施形態は、1以上のI型インターフェロンに選択的に結合するか、又は、例えば競合的、非競合的若しくは不競合的阻害によりリガンド結合を妨害するようにIFNARに結合する抗体若しくはその抗原結合性フラグメントを提供する。別の実施形態は、IFNARによるシグナル伝達を妨害する拮抗薬を提供する。さらなる実施形態は、I型インターフェロンの下流の効果に拮抗する拮抗薬を提供する。
【0070】
I型インターフェロンの拮抗薬を患者に投与してよく、又は薬剤若しくは治療薬の投与候補として患者をみなしてよい。一部の実施形態において、I型インターフェロンの拮抗薬は、I型IFN、IFNα、又はIFNAR活性を結合して阻害するあらゆる分子である。拮抗薬は小分子又は生物的薬剤であってよい。拮抗薬が小分子の場合、合成してよく、又は天然原材料から同定し単離してよい。
【0071】
I型インターフェロン拮抗抗体
本発明の一部の実施形態において、I型インターフェロン拮抗薬には、I型インターフェロン受容体に結合し、それによりリガンド(すなわちインターフェロンアルファ、インターフェロンベータ又はインターフェロンオメガ)の結合を阻害する抗IFNAR抗体及び/又はそのフラグメントが含まれる。或いは又は加えて、I型インターフェロン拮抗薬は、I型インターフェロン(すなわちインターフェロンアルファ、インターフェロンベータ又はインターフェロンオメガ)に結合して、それによりその受容体(すなわちIFNαR)への結合を阻害する抗I型インターフェロン抗体及び/又はそのフラグメントであってよい。抗体を介したリガンド結合の阻害は、競合的、非競合的又は不競合的阻害により生じ得る。或いは、抗体を基礎とする拮抗薬は、I型インターフェロン受容体を介した細胞内シグナル伝達を阻止することにより機能し得る。
【0072】
従って、本発明の範囲には、キメラ、霊長類化、張り合わせ型(veneered)、ヒト化、脱免疫化及びヒト抗IFNAR及び抗I型インターフェロン抗体並びに/又はその抗原結合性フラグメントが含まれる。本発明の治療方法における使用に適する抗体拮抗薬は、例えば非ヒト、キメラ、霊長類化、ヒト化、脱免疫化及び/又は完全ヒト抗体若しくはその抗原結合性フラグメントのようなモノクローナル抗体を含む。抗体拮抗薬はさらに、例えばポリエチレングリコールへの架橋(すなわちPEG化)のような、抗体又はその抗原結合性フラグメントの循環半減期を増加させる1以上の化学修飾を含んでよい。
【0073】
一実施形態において、抗体はI型IFN又はIFNαの任意の亜型に特異的であってよい。例えば、抗体は、IFNα1、IFNα2、IFNα4、IFNα5、IFNα6、IFNα7、IFNα8、IFNα10、IFNα14、IFNα17、IFNα21、IFNβ、又はIFNωの任意の一つに特異的であってよい。或いは、抗体は、I型IFN又はIFNαの任意の2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12の亜型に特異的であってよい。抗体が1種以上のI型IFN亜型に特異的である場合、抗体はIFNα1、IFNα2、IFNα4、IFNα5、IFNα8、IFNα10、及びIFNα21に特異的であってよく;又はIFNα1、IFNα2、IFNα4、IFNα5、IFNα8、及びIFNα10に特異的であってよく;又はIFNα1、IFNα2、IFNα4、IFNα5、IFNα8、及びIFNα21に特異的であってよく;又はIFNα1、IFNα2、IFNα4、IFNα5、IFNα10、及びIFNα21に特異的であってよく;又はこれらの亜型の任意の組み合わせに特異的であってよい。I型IFN又はIFNαに特異的な抗体には、MEDI-545、MEDI-545以外の任意の生物製剤又は抗体、2004年12月10日出願の米国特許出願第11/009,410号及び2005年6月20日出願の同第11/157,494号に記載の抗体、米国特許第7,087,726号に記載の9F3(及びそのヒト化バリアント)及びその他抗体、NK-2及びYOK5/19(WO 84/03105)、LO-22(米国特許第4,902,618号)、144 BS(米国特許第4,885,166号)、並びにEBI-1、EBI-2、及びEBI-3(EP119476)が含まれる。
【0074】
一実施形態において、抗体拮抗薬はMEDI-545である。MEDI-545は複数のインターフェロンアルファ(IFN-a)亜型に結合する、完全ヒト、147,000ダルトンIgG1kモノクローナル抗体(Mab)である。MEDI-545は100%ヒトタンパク質配列からなり、そのため完全ヒトモノクローナル抗体である。完全ヒトモノクローナル抗体は、キメラ、ヒト化抗体等の他の形式のモノクローナル抗体に比べて、より好ましい安全特性を有すること、並びに人の体から急速には除去されないであろうために投与頻度を減少させる可能性があることにより、優位であり得る。MEDI-545は、潜在的な治療薬として最も望ましい特性を有するとして機能性試験に基づいて選択されたIgG4k抗体、13H5に由来する。13H5はその後IgG1抗体アイソタイプに変換され、CHO細胞中で産生され、さらなる特性評価及び前臨床開発のために、当初MDX-1103と命名(現在MEDI-545と呼称)して選抜された。米国特許出願公開第2007/0014724号、米国仮出願第60/909,232号、発明の名称「Antibodies with Decreased Deamidation Profiles」、米国仮出願第60/909,117号、発明の名称「Antibody Formulation」、国際公開第WO/08070137A2号、発明の名称「Interferon Alpha-induced Pharmacodynamic Markers」及び国際公開第WO/08070135A2号、発明の名称「Methods of Treating Systemic Lupus Erythematosus」を参照。これらはそれぞれ参照により本明細書に援用される。特定の実施形態において、抗体はMEDI-545でない。
【0075】
本発明の抗体は合成抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組み換えにより生成された抗体、細胞内抗体、多重特異性抗体(二重特異性抗体を含む)、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、合成抗体、一本鎖Fv(scFv)(二重特異性scFvを含む)、BiTE分子、一本鎖抗体Fabフラグメント、F(ab')フラグメント、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、及び抗イデオタイプ(抗Id)抗体、並びに上記のいずれの抗原決定基結合性フラグメントも含むが、それに限定されない。特に、本発明の抗体は免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫活性部分を含む。さらに、本発明の抗体はいずれのアイソタイプでもあり得る。一実施形態において、本発明の抗体はIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4アイソタイプである。本発明の抗体は可変領域及び定常領域を含む全長抗体であり得、又は一本鎖抗体又はFab若しくはFab'2フラグメントのような、それらの抗原結合性フラグメントであり得る。
【0076】
本発明はまた、サイトトキシン又は放射性同位元素のような治療薬剤に結合させた、本発明の抗体又はその抗原結合性部分を含む免疫複合体も提供する。本発明はまた、本発明の抗体又はその抗原結合性部分であって、該抗体又部分とは異なる結合特異性を有する二次機能性部分に結合させた該抗体又は部分を含む二重特異性分子も提供する。
【0077】
本発明の抗体若しくはその抗原結合性部分、又は免疫複合体又は二重特異性分子並びに製薬上許容可能な担体を含む組成物も提供される。
【0078】
IFNαRに結合する抗体は当技術分野で周知である。これらの抗体の非限定的な例は、例えば、米国特許出願公開第2006/0029601号に見出すことができ、これは参照により全体が本明細書に援用される。I型インターフェロンに結合する抗体は当技術分野で周知である。これらの抗体の非限定的な例は、例えば、2008年2月8日出願の米国仮特許出願第61/006,962号、2008年3月7日出願の同第61/034,618号及び2008年3月2日出願の同第61/049,970号、それぞれ発明の名称「Anti-IFNAR1 Antibodies with Reduced Fc Ligand Affinity」に見出すことができる。インターフェロンαの複数の亜型に結合する抗体は当技術分野で周知である。これらの抗体の非限定的な例は、例えば、米国特許第7,087,726号及び米国特許出願公開第2007/0014724号に見出すことができ、これらは参照により全体が本明細書に援用される。
【0079】
一部の実施形態において、上記に議論されるように、インターフェロンαの特異的な亜型、又は亜型の組み合わせの活性を変更することは望ましいであろう。
【0080】
一部の実施形態において、抗I型インターフェロン、抗インターフェロンα抗体又は抗IFNAR抗体の半減期を変更することは望ましいであろう。一実施形態において、抗体の生体内半減期を減少させることは望ましいであろう。別の実施形態において、抗体の生体内半減期を増加させることは望ましいであろう。例えば、米国特許出願公開第2006/0198840 A1号を参照。これは参照により全体が本明細書に援用される。
【0081】
抗体又はそのフラグメントは、抗体の生成、合成、及び作製について当技術分野で周知の多くの方法のいずれによっても、特に化学合成又は組み換え発現技術によって作製することができる。例えば、Brinkmanら, 1995, J. Immunol. Methods 182:41-50; Amesら, 1995, J. Immunol. Methods 184:177-186; Kettleboroughら, 1994, Eur. J. Immunol. 24:952-958; Persicら, 1997, Gene 187:9-18; Burtonら, 1994, Advances in Immunology 57:191-280; 国際出願第PCT/GB91/01134号; 国際公開第WO 90/02809号, 同第WO 91/10737号, 同第WO 92/01047号, 同第WO 92/18619号, 同第WO 93/11236号, 同第WO 95/15982号, 同第WO 95/20401号, 同第W097/13844号; 米国特許第5,698,426号, 同第5,223,409号, 同第5,403,484号, 同第5,580,717号, 同第5,427,908号, 同第5,750,753号, 同第5,821,047号, 同第5,571,698号, 同第5,427,908号, 同第5,516,637号, 同第5,780,225号, 同第5,658,727号, 同第5,733,743号, 同第5,969,108号, 国際公開第WO 92/22324号; Mullinaxら, 1992, BioTechniques 12(6):864-869; Sawaiら, 1995, AJRI 34:26-34, Betterら, 1988, Science 240:1041-1043, 米国特許第4,444,887号, 同第4,716,111号, 国際公開第WO 98/46645号, 同第WO 98/50433号, 同第WO 98/24893号, 同第W098/16654号, 同第WO 96/34096号, 同第WO 96/33735号, 同第WO 91/1074号, 国際公開第WO 98/24893号, 同第WO 96/34096号, 同第WO 96/33735号, 米国特許第5,413,923号, 同第5,625,126号, 同第5,633,425号, 同第5,569,825号, 同第5,661,016号, 同第5,545,806号, 同第5,814,318号, 同第5,939,598号, Morrison, 1985, Science 229:1202, Oiら, 1986, BioTechniques 4:214; Gilliesら, 1989, J. Immunol. Methods 125:191-202, 米国特許第5,807,715号, 同第4,816,567号, 同第4,816,397号, 同第6,311,415号, 欧州特許第EP 239,400号, 国際公開第WO 91/09967号, 米国特許第5,225,539号, 同第5,530,101号, 同第5,585,089号, 欧州特許第EP 592,106号, 同第EP 519,596号, Padlan, 1991, Molecular Immunology 28(4/5):489-498, Studnickaら, 1994, Protein Engineering 7(6):805-814, Roguskaら, 1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:969-973), 米国特許第5,565,332号, 米国特許第6,407,213号, 同第5,766,886号, 第WO 9317105号, Tanら, J. Immunol. 169:1119-25 (2002), Caldasら, Protein Eng. 13(5):353-60 (2000), Moreaら, Methods 20(3):267-79 (2000), Bacaら, J. Biol. Chem. 272(16):10678-84 (1997), Roguskaら, Protein Eng. 9(10):895-904 (1996), Coutoら, Cancer Res. 55 (23 Supp):5973s-5977s (1995), Coutoら, Cancer Res. 55(8):1717-22 (1995), Sandhu J S, Gene 150(2):409-10 (1994), 及びPedersenら, J. Mol. Biol. 235(3):959-73 (1994), Queenら, 米国特許第5,585,089号; Riechmannら, 1988, Nature 332:323, Kutmejerら, 1994, BioTechniques 17:242), 国際公開第WO 86/05807号, 国際公開第WO 89/01036号, 及び米国特許第5,122,464号, 及び米国特許第5,807,715号を参照。これらはそれぞれ参照により全体が本明細書に援用される。
【0082】
拮抗的ポリペプチド及び小分子
一部の実施形態において、I型IFN拮抗薬はポリペプチドである。特定の実施形態において、拮抗薬はI型IFNのフラグメント又はIFNARの一つの鎖のフラグメントであり得る短いポリペプチド又はペプチドである。例えば、IFNAR1鎖のペプチドフラグメント、特にIFNAR1鎖の細胞外部分のペプチドフラグメントがI型IFN拮抗薬として使用され得る。このようなIFNARフラグメントペプチドは米国特許出願公開第2004/0067888号に開示され、参照により全体が本明細書に援用される。特別な実施形態において、ペプチド拮抗薬はIFNAR1鎖の約9〜12アミノ酸残基のフラグメントである。IFNAR鎖由来であるが、ペプチドのI型IFN拮抗薬としての作用能力を保持する、1以上のアミノ酸の置換(例えば1以上の保存的置換)及び/又は欠失及び/又は付加を有するペプチドアナログを使用することができる。
【0083】
本発明のペプチドは、該ペプチドをコードする対応する核酸を生体内で発現させることにより投与され得る。従って、さらに別の形態において、本発明は、I型IFN拮抗薬として使用するための本発明のペプチド又はポリペプチドを被験者/患者の適切な細胞内で発現することができる核酸を提供する。このような核酸は、人の細胞に本発明の核酸を送達する形でパッケージングされているウイルスベクター又は非ウイルスベクターであってよい。従って、本発明の核酸にはウイルスベクター治療に適する形、例えば組み換えレトロウイルス、アデノウイルス又は弱毒インフルエンザウイルスのウイルスベクターが含まれる。或いは、本発明の核酸は非ウイルスベクターであってよく、例えばリポソーム中に、又はサーファクチン含有ベクター送達粒子中にパッケージングされてよい。
【0084】
本発明のペプチド又はポリペプチドは、従来の技術を用いた合成により、又は宿主細胞における核酸の発現により製造され得る。より長い配列の断片化、例えば、本発明の所望のペプチド又はポリペプチドを得るように切断されるための適切なプロテアーゼ切断部位を有する融合ポリペプチドの断片化により製造され得る。
【0085】
一実施形態において、モジュレーターはタンパク質であり、大抵天然に存在するタンパク質又は天然に存在するタンパク質のフラグメントである。一部の実施形態において、これらのタンパク質は、INFαRに拮抗的に作用するインターフェロンアルファ突然変異タンパク質のような、拮抗的なインターフェロン突然変異タンパク質であってよい。従って例えば、タンパク質を含む細胞抽出物、又はタンパク質性細胞抽出物のランダム若しくは指令性消化物を使用してよい。こうして、本発明の方法におけるスクリーニングのためのタンパク質ライブラリーが作製され得る。特別な実施形態は細菌、真菌、ウイルス、及び哺乳類タンパク質のライブラリーであり、後者が好ましく、ヒトタンパク質が特に好ましい。特に有用な試験化合物は、標的が属するタンパク質のクラス、例えば酵素に対する基質又はリガンドと受容体、を標的とする。
【0086】
一部の実施形態において、モジュレーターは約5〜約30アミノ酸、より詳細には約5〜約20アミノ酸、そしてさらに詳細には約7〜約15アミノ酸のペプチドである。ペプチドは、上記記述したような天然に存在するタンパク質の消化物、ランダムペプチド、又は「偏った」ランダムペプチドであってよい。本明細書において「ランダム化」は、核酸又はペプチドがそれぞれヌクレオチド及びアミノ酸の基本的にランダムな配列からなることを意味する。これらのランダムペプチド(又は核酸、以下に説明する)は大抵化学的に合成されるので、任意のヌクレオチド又はアミノ酸を任意の位置に取り込み得る。ランダム化タンパク質又は核酸を生成し、配列の全体に渡ってあらゆる又はほとんどの可能な組み合わせの形成を許容するように合成過程を設定することができ、こうして生物活性タンパク質性薬剤のランダム化候補のライブラリーを形成することができる。
【0087】
一実施形態において、ライブラリーは完全にランダム化され、いずれの位置においても配列選択性又は一定性はない。好ましい実施形態において、ライブラリーは偏っている。つまり、配列内のいくつかの位置が一定に保たれているか、又は限られた数の可能性から選択される。好ましい実施形態において、核酸結合ドメインの作出、架橋のためのシステイン、SH-3ドメインのためのプロリン、リン酸化部位のためのセリン、トレオニン、チロシン若しくはヒスチジン等の作出に向けて、ヌクレオチド又はアミノ酸残基は一定のクラス内、例えば疎水性アミノ酸、親水性残基、立体的に偏った(小さい又は大きい)残基内でランダム化される。
【0088】
抗体に基づくI型インターフェロン拮抗薬に加え、本発明はまた、例えばI型インターフェロンとその受容体(すなわちIFNAR)との結合を妨害する小分子のような、1種以上の小分子を含むI型インターフェロン拮抗薬、及びそれらの組成物も意図する。
【0089】
いくつかの実施形態において、潜在的な小分子拮抗薬のコンビナトリアルライブラリー(combinatorial library)を、I型インターフェロン又はI型インターフェロン受容体への結合能力のためのスクリーニングに供してよい。従来法では有用な特性を有する新規化学物質は、ある所望の特性又は活性を有する化合物(「リード化合物」と呼ばれる)を同定することにより、例えば活性を阻害し、リード化合物の変種を作出し、それら変種化合物の特性及び活性を評価することにより、作出される。大抵、このような解析にはハイスループットスクリーニング(HTS)法が用いられる。
【0090】
ある好ましい実施形態において、ハイスループットスクリーニング法は、多数の潜在的な治療用化合物(候補化合物)を含むライブラリーを提供することを含む。このような「コンビナトリアル化学ライブラリー」はその後、所望の特徴的活性を呈するライブラリーメンバー(特定の化学種又はサブクラス)を同定する1以上のアッセイでスクリーニングされる。こうして同定された化合物は従来の「リード化合物」となり得るか、又はそれ自体が潜在的な若しくは実際のIBD治療法として使用され得る。
【0091】
コンビナトリアル化学ライブラリーは、試薬のような多くの化学的「構成成分」を組み合わせることによる化学合成又は生物合成のいずれかにより生成される多様な化合物の集合である。例えばポリペプチド(例えば突然変異タンパク質)ライブラリーのような直線的コンビナトリアル化学ライブラリー(linear combinatorial chemical library)は、アミノ酸と呼ばれる一連の化学的構成成分を、一定の化合物長(すなわちポリペプチド化合物におけるアミノ酸数)についてあらゆる可能な方法で組み合わせることにより形成される。膨大な数の化合物が、こうした化学的成分のコンビナトリアル混合を通して合成され得る。Gallopら, J. Med. Chem. 37(9): 1233-1251 (1994)。
【0092】
コンビナトリアル化学ライブラリーの生成及びスクリーニングは当業者に周知である。このようなコンビナトリアル化学ライブラリーは、ペプチドライブラリー(例えば米国特許第5,010,175号、Furka, Pept. Prot. Res. 37: 487-493 (1991), Houghtonら, Nature, 354: 84-88 (1991))、ペプトイド(peptoid)(PCT公開第WO 91/19735号)、コードされたペプチド(PCT公開第WO 93/20242号)、ランダムバイオオリゴマー(random bio-oligomer)(PCT公開第WO 92/00091号)、ベンゾジアゼピン(米国特許第5,288,514号)、ヒダントイン、ベンゾジアゼピン及びジペプチドのようなダイバーソマー(diversomer)(Hobbsら, Proc. Nat. Acad. Sci. USA 90: 6909-6913 (1993))、ビニル性ポリペプチド(Hagiharaら, J. Amer. Chem. Soc. 114: 6568 (1992))、ベータ−D−グルコース骨格をもつ非ペプチド性ペプチド模倣分子(nonpeptidal peptidomimetic)(Hirschmannら, J. Amer. Chem. Soc. 114: 9217-9218 (1992))、小化合物ライブラリーの類似有機合成物(analogous organic synthese)(Chenら, J. Amer. Chem. Soc. 116: 2661 (1994))、オリゴカルバメート(oligocarbamate)(Choら, Science 261: 1303 (1993))、並びに/又はホスホン酸ペプチジル(peptidyl phosphonate)(Campbellら, J. Org. Chem. 59: 658 (1994))を含むが、それに限定されない。一般に、Gordonら, J. Med. Chem. 37: 1385 (1994)、核酸ライブラリー(例えばStrategene, Corp.参照)、ペプチド核酸ライブラリー(例えば米国特許第5,539,083号参照)、抗体ライブラリー(例えばVaughnら, Nature Biotechnology 14(3: 309-314 (1996)、及びPCT/US96/10287参照)、炭水化物ライブラリー(例えばLiangら, Science 274: 1520-1522 (1996)、及び米国特許第5,593,853号参照)、並びに小有機分子ライブラリー(例えばベンゾジアゼピン, Baum, C&EN, January 18, page 33 (1993); イソプレノイド, 米国特許第5,569,588号; チアゾリジノン(thiazolidinone)及びメタチアザノン(metathiazanone), 米国特許第5,549,974号; ピロリジン, 米国特許第5,525,735号及び同第5,519,134号; モルフォリノ化合物, 米国特許第5,506,337号; ベンゾジアゼピン, 米国特許第5,288,514号; 等参照)を参照。
【0093】
コンビナトリアルライブラリーの生成のための装置は市販されている(例えば357 MPS, 390 MPS, Advanced Chem Tech, Louisville Ky., Symphony, Rainin, Woburn, Mass., 433A Applied Biosystems, Foster City, Calif., 9050 Plus, Millipore, Bedford, Mass.参照)。
【0094】
多くの周知のロボットシステムも溶液相化学のために開発されている。これらのシステムには、武田薬品工業(大阪、日本)により開発された自動合成装置、及び化学者による手動合成操作を模倣するロボットアームを利用した多くのロボットシステム(Zymate II, Zymark Corporation, Hopkinton, Mass.; Orca, Hewlett-Packard, Palo Alto, Calif.)のような自動ワークステーションが含まれる。上記装置は、適切な改良を加えて、本発明における使用に適する。さらに、多くのコンビナトリアルライブラリー自体が市販されている(例えばComGenex, Princeton, N.J., Asinex, Moscow, Ru, Tripos, Inc., St. Louis, Mo., ChemStar, Ltd, Moscow, RU, 3D Pharmaceuticals, Exton, Pa., Martek Biosciences, Columbia, Md.等参照)。
【0095】
インターフェロン−受容体相互作用検出のため、培養ヒト腫瘍細胞株におけるIFNを介した細胞増殖阻害のような、IFNを介したシグナル伝達を検出するアッセイが使用され得る。さらに、例えばIFN感受性遺伝子プロモーターにより発現するレポーター遺伝子を用いて、レポーター遺伝子アッセイが使用され得る。Lallemandら, J. Leukocyte Biol. 60: 137-146 (1996)。適切なレポーター遺伝子には、ルシフェラーゼ及び緑色蛍光タンパク質をコードする遺伝子が含まれる。このようなアッセイにおいて、レポーター遺伝子発現はIFN活性に依存し、IFN拮抗薬が選択的にIFN誘導性遺伝子発現を阻害する。
【0096】
特定のポリペプチドの存在、不在、定量、又はその他特性を評価するためのハイスループットアッセイは当業者に周知である。同様に、結合アッセイ及びレポーター遺伝子アッセイは同じように周知である。例えば、米国特許第5,559,410号はタンパク質のハイスループットスクリーニング法を開示し、米国特許第5,585,639号は核酸結合のハイスループットスクリーニング法(すなわちアレイで)を開示し、さらに米国特許第5,576,220号及び同第5,541,061号はリガンド/抗体結合のハイスループットスクリーニング法を開示する。
【0097】
さらに、ハイスループットスクリーニングシステムは市販されている(例えばZymark Corp., Hopkinton, Mass.; Air Technical Industries, Mentor, Ohio; Beckman Instruments, Inc. Fullerton, Calif.; Precision Systems, Inc., Natick, Mass.等参照)。これらのシステムは典型的には、試料及び試薬のピペッティング、液体分注、時間を計測したインキュベーション、並びにアッセイに適した検出器におけるマイクロプレートの最終的な読み出しを含む手順を自動化する。これらの設定可能なシステムは、ハイスループットで素早いスタートアップの他に、高度な柔軟性及びカスタマイズ化を提供する。このようなシステムのメーカーは様々なハイスループットシステムのための詳細なプロトコールを提供する。従って、例えばZymark Corp.は遺伝子転写、リガンド結合等の調節を検出するためのスクリーニングシステムを記載した技術情報を提供する。
【0098】
併用療法
一部の実施形態において、I型IFN活性、より詳細にはIFNα活性に結合して拮抗する薬剤以外の第二薬剤を患者に投与してよい。第二薬剤には、イブプロフェン、ナプロキセン、スリンダク、ジクロフェナク、ピロキシカム、ケトプロフェン、ジフルニサル、ナブメトン、エトドラク、及びオキサプロジン、インドメタシンのような非ステロイド性抗炎症薬;ヒドロキシクロロキンのような抗マラリア薬;プレドニゾン(prednisone)、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾンのような副腎皮質ステロイドホルモン;メトトレキサート;アザチオプリン及びシクロホスファミドのような免疫抑制剤;並びに、例えばアレファセプト及びエファリズマブのようにT細胞を標的とするか、又はエンブレル、レミケード、及びフミラ(Humira)のようにTNFαを標的とする生物的薬剤が含まれるが、それに限定されない。
【0099】
他の実施形態において、強皮症性血管障害の悪影響を弱めるために使用する第二薬剤を、本発明の拮抗薬と組み合わせて使用してよい。例えば、カルシウムチャンネルブロッカーは皮膚や心臓への血流を促進すると報告されており;アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬は強皮症腎クリーゼの血管けいれんを改善し;並びに、ボセンタン(新規エンドセリン-1受容体阻害剤)又はエポプロステノール(プロスタサイクリン)は肺中の血流を改善し得る。さらに、血管けいれんを改善する薬剤(カルシウムチャンネルブロッカー、ボセンタン、プロスタサイクリン、又は一酸化窒素)は全て、病気の経過を改善する可能性がある。未治療の強皮症性血管障害の最終的な結果は、血栓形成又は重度の内膜線維症のいずれかによる血管閉塞である。従って、低用量アスピリンの形での抗血小板療法を、本発明の拮抗薬と組み合わせて使用してよい。コルヒチン、パラアミノ安息香酸(PABA)、ジメチルスルホキシド、及びD-ペニシラミンを含むがそれに限定されない抗線維化薬を、本発明の拮抗薬と組み合わせて使用してよい。
【0100】
本発明の組成物は、例えば抗I型IFN抗体若しくはそのフラグメント、抗IFNAR抗体若しくはそのフラグメント、ペプチドを含むタンパク質、並びに小化学分子のような、1種以上のI型インターフェロン拮抗薬を含むことが想定される。
【0101】
医薬組成物
本発明において使用するための抗インターフェロンα抗体を含む医薬組成物の非限定的な例を、米国特許出願第60/909,117号、発明の名称「Antibody Formulation」に見出すことができ、これは参照により全体が本明細書に援用される。抗I型インターフェロン抗体を含む医薬組成物の例を、特許出願公開第2006/0029601号に見出すことができ、これは参照により全体が本明細書に援用される。
【0102】
一実施形態において、本発明の製剤は非経口投与用である。一実施形態において、本発明の製剤は注射製剤である。一実施形態において、本発明の製剤は静脈、皮下、又は筋内投与用である。特定の実施形態において、本発明の製剤は、該製剤が皮下注射用である、抗I型IFN又は抗インターフェロンアルファ又は抗IFNαR抗体を含む。特定の実施形態において、抗I型IFN又は抗インターフェロンアルファ又は抗IFNαR抗体は薬剤充填済み注射器に入れて皮下投与用に製剤化される。
【0103】
一実施形態において、本発明の製剤は、約20 mg/ml〜約40 mg/mlの抗I型IFN又は抗インターフェロンアルファ又は抗IFNαR抗体又はそれらのフラグメントを含む、静脈内投与用である。特定の実施形態において、本発明の製剤は、約20 mg/ml〜約40 mg/mlの抗I型IFN又は抗インターフェロンアルファ又は抗IFNαR抗体を含む、静脈内投与用である。
【0104】
一実施形態において、本発明の製剤は、約70 mg/ml〜約250 mg/mlの抗I型IFN又は抗インターフェロンアルファ又は抗IFNαR抗体又はそれらのフラグメントを含む、皮下投与用である。特定の実施形態において、本発明の製剤は、約70 mg/ml〜約250 mg/mlの抗I型IFN又は抗インターフェロンアルファ又は抗IFNαR抗体を含む、皮下投与用である。
【0105】
一実施形態において、本発明の製剤はエアロゾル投与用である。
【0106】
本発明はまた、適切な容器における抗I型IFN又は抗インターフェロンアルファ又は抗IFNαR抗体製剤を含む、人への非経口投与に適する薬剤単位投薬形も提供する。一実施形態において、本発明の薬剤単位投薬は、抗I型IFN又は抗インターフェロンアルファ又は抗IFNαR抗体を含む。一実施形態において、本発明の薬剤単位投薬は、抗I型IFN又は抗インターフェロンアルファ又は抗IFNαR抗体を静脈内、皮下、又は筋内に送達する製剤を含む。別の実施形態において、本発明の薬剤単位投薬は、抗I型IFN又は抗インターフェロンアルファ又は抗IFNαR抗体をエアロゾルで送達する製剤を含む。特定の実施形態において、本発明の薬剤単位投薬は、抗I型IFN又は抗インターフェロンアルファ又は抗IFNαR抗体を皮下に送達する製剤を含む。別の実施形態において、本発明の薬剤単位投薬は、抗I型IFN又は抗インターフェロンアルファ又は抗IFNαR抗体をエアロゾルで送達する製剤を含む。さらなる実施形態において、本発明の薬剤単位投薬は、抗I型IFN又は抗インターフェロンアルファ又は抗IFNαR抗体を鼻腔内に投与する製剤を含む。
【0107】
一実施形態において、本発明の製剤は密封された容器において提供される。
【0108】
本発明はさらに、本発明のI型インターフェロン拮抗薬製剤を含むキットを提供する。
【0109】
抗IFNα又はIFNαR抗体組成物は、製薬上許容可能な担体と共に製剤化され得る。「製薬上許容可能」という用語は、有効成分の生物学的活性の有効性を妨害しない1種以上の非毒性物質を意味する。このような製剤は、通常、塩、緩衝剤、保存料、適合担体、及び任意で他の治療薬を含んでよい。このような製薬上許容可能な製剤はまた、通常、人への投与に適する適合固体若しくは液体充填剤、希釈剤又はカプセル化用の物質を含んでもよい。医薬として使用する際、塩は製薬上許容可能であるべきだが、製薬上許容可能でない塩は、それらの製薬上許容可能な塩を製造するために便宜的に使用されてよく、本発明の範囲から除外されない。このような薬理学上及び製薬上許容可能な塩には、以下の酸から製造されるものが含まれるが、それに限定されない:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ホウ酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、等。また、製薬上許容可能な塩は、ナトリウム、カリウム又はカルシウム塩のようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩として製造され得る。「担体」という用語は、有効性を促進するために有効成分と組み合わせられる、天然又は合成の、有機又は無機成分を意味する。医薬組成物のこれらの成分は、所望の製薬上の有効性を実質的に損なう相互作用がないようにして、本発明の抗体と混合することもでき、互いに混合することもできる。
【0110】
本発明の一部の形態によると、抗IFNα又はIFNAαR抗体組成物は、所望の純度を有する抗体又は免疫複合体を、任意の生理学的に許容可能な担体、賦形剤又は安定化剤と混合することにより、凍結乾燥製剤又は水溶液の形での貯蔵用に製造することができる(Remington’s Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Osol, A. Ed. (1999))。許容可能な担体、賦形剤、又は安定化剤は使用する投薬量及び濃度においてレシピエントに対して毒性がないもので、以下を含む;リン酸、クエン酸、及びその他有機酸のような緩衝液;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル若しくはベンジルアルコール;メチル若しくはプロピルパラベンのようなアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3 ペンタノール;及びm クレゾールのような)保存料;(約10残基未満の)低分子量ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、若しくは免疫グロブリンのようなタンパク質;ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、若しくはリシンのようなアミノ酸;グルコース、マンノース、若しくはデキストリンを含む単糖類、二糖類、及びその他炭水化物;EDTAのようなキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロース若しくはソルビトールのような糖類;ナトリウムのような塩形成対イオン;金属複合体(例えば亜鉛タンパク質複合体);並びに/又はTWEEN、PLURONICSTM若しくはポリエチレングリコール(PEG)のような非イオン性界面活性剤。
【0111】
抗IFNα又はIFNαR抗体組成物はまた、塩化ベンザルコニウム;クロロブタノール;パラベン及びチメロサールのような適切な保存料を任意で含んでもよい。
【0112】
抗IFNα又はIFNαR抗体組成物を、便宜的に単位投薬形で提供してよく、薬学の分野で周知ないずれの方法で製造してもよい。全ての方法は、活性薬剤を、1種以上の補助成分を構成する担体と混合するステップを含む。一般に抗IFNα又はIFNαR抗体組成物は、活性化合物を液体担体、細分した固体担体、又は両者と均一且つ密に混合し、必要な場合にはその後製品を賦形することにより製造される。
【0113】
一実施形態において、組成物は実質的にピロゲン(pyrogen)を含まない。
【0114】
非経口投与に適する組成物は便宜的に、抗IFNα又はIFNαRの滅菌水性又は非水性製剤を含み、それらはレシピエントの血液と等張であることが好ましい。この製剤は適切な分散若しくは湿潤剤並びに懸濁剤を使用した周知の方法によって製剤化され得る。滅菌注射用製剤はまた、例えば1,3 ブタンジオール溶液のような、非毒性で、非経口で許容可能な希釈剤又は溶剤中の滅菌注射用溶液又は懸濁液であってもよい。使用し得る許容可能な溶媒及び溶剤の中に、水、リンガー液、及び塩化ナトリウム等張液がある。さらに、滅菌固定油が、溶剤又は懸濁媒体として通常使用される。このために、合成のモノ又はジグリセリドを含むいずれの普通の固定油も使用してよい。さらに、オレイン酸のような脂肪酸を、注射用製剤の製造において使用してよい。経口、皮下、静脈、筋内等の投与に適する担体製剤はRemington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, PAに見出すことができる。一部の実施形態において、様々な投与方法に適する担体製剤はRITUXANTMについて記載されたものと同じか類似であり得る。Physicians’ Desk Reference (Medical Economics Company, Inc., Montvale, NJ, 2005), pp. 958 960及び1354 1357を参照。これは参照により全体が本明細書に援用される。本発明の一部の実施形態において、抗IFNα又はIFNαR抗体組成物は、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム二水和物、ポリソルベート80、及び滅菌水を用いて、さらに該組成物のpHを約6.5に調整して、静脈内投与用に製剤化される。血液循環が完全であるために、静脈注射が抗体を素早く行き渡らせるのに有効な投与方法を提供することを、当業者は知っている。しかし、静脈内投与は、血管系内皮細胞及び内皮下マトリックスを含む血管障壁により制限を受ける。一部の実施形態において、本発明の組成物及び方法の抗IFNα又はIFNαR抗体は、皮下に自己投与される。このような実施形態において、組成物は凍結乾燥薬として、又は緩衝液(例えばPBS及び/若しくはクエン酸)中で約50 mg/mLで製剤化される。
【0115】
本発明の製剤はまた、治療される特定の適応症に対する必要に応じて1種より多くの活性化合物を含んでもよく、該活性化合物は互いに悪影響を及ぼさない相補的な活性を有するものであることが好ましい。例えば、付加的な免疫抑制剤をさらに提供することは望ましくあり得る。このような分子は意図する目的のために有効な量で組み合わせて適切に存在する。
【0116】
活性成分はまた、例えばコアセルベーション技術又は界面重合により製造されたマイクロカプセル、例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロース若しくはゼラチンマイクロカプセル並びにポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中に、コロイド性ドラッグデリバリーシステム(例えば、リポソーム、アルブミン小球体、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)中に、又はマイクロエマルジョン中に封入されてもよい。このような技術はRemington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)に開示される。
【0117】
生体投与に使用される製剤は典型的には滅菌されている。これは、滅菌ろ過メンブレンを通したろ過により容易に達成される。一実施形態において、滅菌とは実質的にピロゲンを含まないことを意味する。
【0118】
持続放出性製剤が製造され得る。持続放出性製剤の適切な例は、抗IFNα又はIFNαR抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスを含み、該マトリックスは成形された物、例えばフィルム、又はマイクロカプセルの形である。持続放出性マトリックスの例には、ポリエステル、ハイドロゲル(例えばポリ(2 ヒドロキシエチル メタクリレート)、若しくはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L グルタミン酸及びγ エチル L グルタメートのコポリマー、難分解性エチレン酢酸ビニル、LUPRON DEPOTTMのような分解性乳酸グリコール酸コポリマー(乳酸グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドからなる注射用マイクロスフェア)、並びにポリ D( ) 3 ヒドロキシ酪酸が含まれる。エチレン酢酸ビニル及び乳酸グリコール酸のようなポリマーは100日を越えて分子の放出を可能にするのに対し、いくつかのハイドロゲルはより短期間でタンパク質を放出する。封入された抗体は長期間体内にとどまると、37℃で水分にさらされる結果として変性又は凝集し、その結果生物活性を失い、免疫原性が変化する可能性がある。関連するメカニズムによって、安定化のための合理的な策略が考案され得る。例えば、もし凝集メカニズムがチオ ジスルフィド置換を介した分子内S S結合形成であることがわかれば、スルフヒドリル基を修飾し、酸溶液から凍結乾燥し、水分含量を調整し、適切な添加物を使用し、そして特異的なポリマーマトリックス組成物を開発することにより安定化が達成され得る。一部の実施形態において、本発明の組成物に使用する製薬上許容可能な担体は人のADCC又はCDCに作用しない。
【0119】
本明細書で開示する抗IFNα又はIFNαR抗体組成物はまた、免疫リポソームとして製剤化され得る。「リポソーム」は、(本明細書に開示する抗IFNα又はIFNαR抗体のような)薬剤を人へ送達するために有用な、様々な種類の脂質、リン脂質及び/又は界面活性剤からなる小胞である。リポソームの成分は通常、生体膜の脂質配置と同様に、二重層形成で配置される。本発明の抗体を含むリポソームは、Epsteinら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82:3688 (1985); Hwangら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77:4030 (1980); 米国特許第4,485,045号及び同第4,544,545号に記述されるような当技術分野で周知な方法により製造される。循環時間が改善されたリポソームは米国特許第5,013,556号に開示される。特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG PE)を含む脂質組成で、逆相蒸発法により生成することができる。リポソームは一定の孔径のフィルターを通して押し出され、所望の直径を持つリポソームが産出される。本発明の抗体は、Martinら, J. Biol. Chem., 257:286 288 (1982)に記述されるように、ジスルフィド置換反応によってリポソームと結合させることができる。治療薬をリポソーム内に含むこともできる。Gabizonら, J. National Cancer Inst., (19)1484 (1989)を参照。
【実施例】
【0120】
以下の実施例を参照してここに本発明を記述する。これらの例は説明のためだけに提供され、本発明はこれらの例に限定されると解釈されるべきではなく、本明細書で提供される教示の結果として明らかになるあらゆる変形を含むと解釈されるべきである。
【実施例1】
【0121】
移植片対宿主(graft-versus-host(GVH))全身性硬化症(SSc)マウスモデルの誘導
皮膚線維症におけるI型インターフェロン(IFN)の役割をより深く理解するために、本発明者は、以下に記述するように全身性硬化症マウスモデルでI型IFNシグナルを妨害するため、IFNAR-1に対するモノクローナル抗体を使用した。IFNシグナル伝達が皮膚線維症を促進し得る可能性のあるメカニズムを同定するため、本発明者は皮膚及び腎臓において、臨床的、組織学的、血清学的、及び分子的な疾患評価項目に対する抗IFNARの影響を調べた。
【0122】
成熟B及びT細胞欠損マウスに、非主要組織適合性抗原(miHag)を共有しない類似遺伝子(congenic)マウス由来の脾臓細胞を移植することによって、マウスでSScを誘発することができる。6〜10週齢メスB10.D2-Hc1H2dH2-T18c/nSnJ(B10.D2)マウスから脾細胞の単細胞懸濁液を単離し、0.8%塩化アンモニウム溶液で4分間インキュベートして赤血球を溶解する。200xgで遠心して白血球を沈殿させ、リン酸緩衝食塩液(PBS)でよく洗浄し、細胞30 x 106個を外側尾静脈からレシピエントホスト129S6(B6)-Rag2tm1FwaN12 (RAG2-/-)マウスに注入する。IFNシグナル伝達阻害実験のため、10 mg/kg抗IFNAR mAb又はアイソタイプコントロールIgG1を、移植1日前に開始して週2回、0.1mL PBS溶媒で腹腔内経路から投与し、解析のため2及び4週に組織を摘出する。
【実施例2】
【0123】
SScにおけるI型IFNシグナル伝達の阻害
強皮症臨床スコア及び症状
週2回の10mpk抗IFNAR mAbによる予防処置により、SScマウスにおける皮膚病変は有意に減少した(**p<.001)。皮膚は週1回、次のように評価した:0 = 正常;1 = 病変 <1cm2;2= 病変 1-2cm2;3 = 病変 > 2cm2。鱗状に見える末端部(耳、尾、足)にはスコア0.3を与え、動物当たり最大合計スコア3.9とした。3回の反復実験の代表的な結果を図2Aに示す。
【0124】
SSc誘導タンパク尿:中程度のタンパク尿が抗IFNAR及びIgコントロール処理群の両者で見られたが、同系移植レシピエントでは見られなかった(図2B参照)。
【0125】
SScの臨床症状:抗IFNAR及びコントロールIg処理群から、移植後4週の代表的なマウスを図2Cに示す。全てのコントロールIg処理動物において広汎で重度の病変及び脱毛症が見られたのに対し、1/5の抗IFNAR処理動物にのみ重度の病変が発生した。
【実施例3】
【0126】
SSc皮膚の組織病理学的解析
移植後4週に、SSc及びコントロールマウスの同一背側部位から皮膚を採取して、非移植RAG2-/-皮膚試料と比較した。5μm H&E及びマッソントリクローム染色した切片で炎症(0 = 正常;1= わずな細胞浸潤;2 = 中程度の浸潤;3 = 広汎性皮膚浸潤)及びコラーゲン沈着(0 = 正常;1 = 軽度;2 = 中程度;3 = 重度)を評価した。炎症及びコラーゲン沈着スコアは合計して、最大スコア6の組織病理学的スコアとした。抗IFNAR処理は皮膚病状の合計を75%減少させた(p<0.001)。3回の反復実験を合わせて得られたデータを図3Aに示す(n= 20 SSc + 抗IFNAR; n= 18 SSc + Igコントロール)。抗IFNAR及びコントロールIg処理SSc皮膚の代表的なH&E(左)及びマッソントリクローム(右)染色を示す図3Bに見られるように、抗IFNAR抗体はSSc皮膚において炎症及び皮膚の肥厚化を減少させた。
【実施例4】
【0127】
SSc真皮におけるIg及び補体沈着
5μM凍結皮膚切片をアセトン中で10分間固定し、ヤギ抗マウスIg-FITC(緑)又はラット抗マウスC1q-PEポリクローナル抗体(赤)のいずれかで30分間インキュベートし、その後DAPI(青)にマウントした。結果を図4A〜4Fに示す。Ig及びC1qは同系移植コントロール(それぞれA及びD)では検出されなかったが、IgはIgコントロール(B)及び抗IFNAR(C)両者の皮膚線維芽細胞で強く検出された。C1q沈着は、Igコントロール処理動物(E)の皮膚線維芽細胞(矢印)、表皮、及びその他皮膚構造に観察されたが、抗IFNAR処理皮膚(F)では検出されなかった。
【実施例5】
【0128】
SSc動物における自己抗体の産生及びクラススイッチ
血清抗Scl-70及び抗SSA自己抗体(IgG、IgA、IgM)はELISAによりSSc動物では検出されたが、コントロールでは検出されなかった;抗IFNAR処理血清において総Igに違いは見られなかった。結果を図5Aに示す。本発明者は、抗IFNAR処理マウスにおいてIgクラススイッチは損なわれないことを見出した。図5Bに示す結果は、IgG1が抗Scl-70及び抗SSA自己抗体のクラスにおいて優勢であることを反映し、IFN阻害後クラススイッチにおいて異常は観察されなかった。本発明者はまた、移植後4週のSSc動物における脾臓構築を調べた。結果を図5Cに示す。5um凍結脾臓切片はCD45R/B220(茶)、及び胚中心(GC)を同定するためのピーナッツ凝集素(赤)で染色した。GCはSScにおいてコントロール脾臓より多いが、GC密度又はサイズにおいて抗IFNAR及びIgコントロール群で違いが見られなかった。
【実施例6】
【0129】
ドナーpDCはGVH-SScにおけるI型IFNの主要な供給源である
本発明者は、移植後2週のミスマッチ移植レシピエントにおける脾臓pDC(B220+/Gr-1lo/CD11c+/CD11b-)数のFACSによる量的解析を行うことによって、SSc誘導形質細胞様樹状細胞の増殖を調べた。結果を図6Aに示す。同系移植レシピエントにおける脾臓pDC数は非移植RAG2-/-コントロールと同程度であった(図示せず)。pDC欠損ドナー脾細胞を移植することにより、GVH-SScモデルにおいてドナーpDCはI型IFNの主要な供給源であることが示された。結果を図6Bに示す。Gr-1(+)脾細胞は、ラット抗マウス抗Gr1抗体(クローンRB68C5)で30分間細胞をラベルし、その後、メーカーの指示に従ってヒツジ抗ラットIgG結合磁性ビーズと30分間インキュベートすることにより除去される。Gr-1lo細胞の除去をFACSで確認した後、残った脾細胞をRAG2-/-レシピエントに移植する(細胞30 x 106個/マウス)。4週以内に、全脾細胞及びGr-1(-)移植ホスト両者は中程度のタンパク尿を発症したが、全脾細胞移植だけがホストマウスにおいて皮膚病変を誘発した(**p<0.01; ***p< 0.001)。
【実施例7】
【0130】
抗IFNAR mAb処理により抑制された、皮膚における過剰発現遺伝子のヒートマップ表示
全ゲノムアレイ(WGA)データ解析により、皮膚において、308プローブセットの発現がIgアイソタイプコントロール抗体処理群において少なくとも2倍(p<0.05)上方制御され、抗IFNAR mAb処理により少なくとも50%中和化されることが見出された。結果を図7に示す。細胞接着、MAPK又はJak/Statを介したオンコスタチンMシグナル伝達、CCR3は皮膚において活性化される最も重要な経路に含まれ、IFNAR抗体により中和化される。腎臓において、10プローブセットがIgアイソタイプコントロール抗体処理群においてp<0.05で少なくとも2倍上方制御され、IFNAR抗体により少なくとも50%中和化された。抗IFNAR mAbにより抑制されるI型IFN誘導性遺伝子には、RSAD2、Ube2l6、Ube2S、Nfil3、Lysmd2が含まれた。I型IFN誘導性遺伝子は以前、I型IFNファミリーメンバーを用いた、健全人ドナー全血の体外刺激によって決定された。抗IFNAR mAb処理により抑制される経路には、細胞接着、炎症、細胞骨格再構築及びアポトーシスに関するものがあった。それに対し、SSc腎臓における、コントロールIg処理と比較した抗IFNAR mAb処理の影響は限定的であった(図示せず)。全試料はAffymetrixマウスゲノム430v2.0アレイを用いて測定された。階層クラスター解析はSpotFire (http://www.spotfire.com/)を用いて行い、遺伝子発現データの経路及びネットワーク解析はGeneGo, Inc. (St. Joseph, MI)のMetaCoreTM統合ソフトウェアスイートで行った。
【実施例8】
【0131】
IFNAR1阻害後のSSc遺伝子発現のリアルタイムPCR定量
実施例1に記述されるGVH誘導SScマウスモデルを、炎症及び組織再構築に伴う様々な遺伝子発現を測定するために使用した。これらの実験結果は図9A〜9Cにまとめて示す。背側皮膚試料を急速凍結し、精製したmRNAの逆転写によりcDNAを生成した。IFN誘導性遺伝子IFI44、MX1、OASL、及びOAS2、炎症性遺伝子MPO、TNFa、IL-6、及びiNOS、並びに再構築遺伝子KLF10、TIMP、EPGN、及びMMPに特異的なプローブをBiomark 48.48 Dynamic Arrayチップ(Fluidigm Corp.)にプレーティングし、遺伝子発現についてcDNAを分析した。IFNAR1阻害mAb 5A3は、4週時点でIFN誘導性遺伝子4つ全ての誘導を有意に阻害したが(IFI44について93%、P<0.006; MX1について85%、P<0.0001; OASLについて57%、P<0.02; OAS2について81% P<0.0001)、2週では発現に有意な影響を与えなかった。同様の結果が炎症促進性遺伝子の誘導に見られ、5A3は4週でMPO、TNFa、IL-6、及びiNOS発現上昇を完全に中和化したが、2週では統計的有意に満たない阻害傾向も見られた。最後に、5A3処理は、KLF10、TGF-ベータ応答性遺伝子、の誘導を2週で47%(P<0.06)、4週で91%(P<0.0001)減少させたが、このことは主要な線維症経路の強い阻害を示唆する。EPGN、上皮細胞分裂促進因子、も両時点で>95%(P<0.03)中和化され、マトリックス恒常性関連遺伝子TIMP及びMMP9は4週で5A3により有意に阻害された(それぞれ100%、P<0.05及び92%、P<0.03)。まとめるとこれらのデータは、IFNAR1阻害が、皮膚炎症阻害に加え、GVH-SScにおいて上皮及び線維芽細胞再構築に劇的な影響を与えることを実証する。
【0132】
要約
本発明者の研究は、全身性硬化症のマウスモデルで、I型IFNシグナル伝達が皮膚線維症において重要な役割を果たすことを示す。IFNαRを介するIFNシグナル伝達に拮抗することは、皮膚炎症及び皮膚再構築の発症率及び重症度の両者を有意に減少させ、タンパク尿及び強皮症付随自己抗体レベルは疾患コントロールと同程度であった。ドナー脾細胞からpDC含有Gr-1(+)細胞集団を予め欠損させると、宿主マウスにおいて皮膚病変を誘導できなかったが、やはりタンパク尿に影響を与えなかったという結果は、本発明者の抗体データを支持している。
【0133】
一方、本発明の特定の実施形態が、説明する目的で上記に記述されてきたが、特許請求の範囲から逸脱することなく、細部に多くの変形がなされ得ることは当業者により理解されるであろう。
【0134】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願は、各刊行物、特許及び特許出願が特的に及び個々に参照により本明細書に援用されることが示されるのと同程度に、参照により本明細書に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
I型インターフェロン(IFN)の拮抗薬を治療上有効量投与することを含む、強皮症治療の必要な患者における強皮症治療方法。
【請求項2】
I型インターフェロンの拮抗薬を治療上有効量投与することを含む、強皮症随伴症状治療の必要な患者における、1種以上の強皮症随伴症状の緩和方法。
【請求項3】
前記拮抗薬が抗体である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗体が抗IFNαR抗体である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記抗体が抗IFNα抗体である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
症状が皮膚線維症、皮膚病変、脱毛症、炎症、皮膚肥厚、コラーゲン沈着、タンパク尿、及び補体沈着からなる群より選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
抗体が約0.03 mg/kg〜約30 mg/kgの服用量で投与される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記治療が改良型ロッドナンスキンスコアで測定される症状の改善をもたらす、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
前記治療がレイノー状態スコア(RCS)で測定される症状の改善をもたらす、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項10】
前記治療が患者皮膚試料に対して行うqPCR解析で測定される症状の改善をもたらす、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項11】
前記治療がMPO、TNFα、IL-6、及びINOSからなる群より選択される炎症性遺伝子発現を減少させる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記治療がKLF10、TIMP、EPGN、及びMMP9からなる群より選択される組織再構築関連遺伝子発現を減少させる、請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【公表番号】特表2011−503008(P2011−503008A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532334(P2010−532334)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/082481
【国際公開番号】WO2009/061818
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(504333972)メディミューン,エルエルシー (108)
【Fターム(参考)】