強磁性粒子間の交換相互作用を制御した垂直磁気記録媒体
【課題】垂直磁気記録媒体の磁気記録密度を増大させ、かつ、SN比を向上させる。
【解決手段】垂直磁気記録媒体は、基板上に少なくとも軟磁性下地層、中間層、磁気記録層、保護層が積層されている。磁気記録層は基板側から第1磁気記録層161、第2磁気記録層162の2層から構成され、第1磁気記録層161、第2磁気記録層162はそれぞれ柱状の強磁性体粒子および、柱状の強磁性体粒子を取り囲む粒界材料から構成されている。第1磁気記録層161における粒界材料を第2磁気記録層162における粒界材料の材料と異ならせ、第1磁気記録層161の交換相互作用を負とすることによって、記録密度を増大させ、かつ、再生時のSN比を向上させる。
【解決手段】垂直磁気記録媒体は、基板上に少なくとも軟磁性下地層、中間層、磁気記録層、保護層が積層されている。磁気記録層は基板側から第1磁気記録層161、第2磁気記録層162の2層から構成され、第1磁気記録層161、第2磁気記録層162はそれぞれ柱状の強磁性体粒子および、柱状の強磁性体粒子を取り囲む粒界材料から構成されている。第1磁気記録層161における粒界材料を第2磁気記録層162における粒界材料の材料と異ならせ、第1磁気記録層161の交換相互作用を負とすることによって、記録密度を増大させ、かつ、再生時のSN比を向上させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超高密度磁気記録技術に係り、特に、垂直磁気記録媒体における記録密度の上昇、再生時のSN比の向上ための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
情報処理技術の発達に促され、様々な分野でディジタル化が急速に進行しつつある。従来ハードウェアの代表格であったパーソナルコンピュータやサーバに加え、家電・オーディオ・医療機器などでも大量のディジタルデータを貯える必要性が高まってきた。これら膨大なデータを蓄えるため、不揮発性ファイルシステムの中核である磁気ディスク装置(HDD)はこれまでにも増して急速な大容量化を求められている。磁気ディスク装置の大容量化とは、面記録密度即ち媒体上に記録するビット密度をより高めることを意味する。
【0003】
現在実用化されているHDDでは、面内記録・垂直記録いずれの記録方式においても強磁性多結晶薄膜からなる記録媒体が用いられている。図1は、従来の磁気記録媒体における記録状態の模式図である。従来の多結晶薄膜は高い一軸磁気異方性をもつ磁性粒子101と、それを取り囲む非磁性材料を主とする粒界材料102からなるのが一般的である。
【0004】
情報を記録するための基本操作は、記録媒体上の任意の位置に局所的な磁界を印加し、磁化極性を適当なタイミングで反転させることで磁化がほぼ180°変化する境界(磁化遷移103)を形成することであり、この磁化遷移103をディジタル情報の1に対応させている。また、この磁化遷移103付近における漏洩磁界分布の空間変化を適当な磁界センサで検出することがデータ再生に相当する。実際には、この記録再生動作の前後に符号化・復号化などの処理を経てHDDにおける情報の入出力が行われている。
【0005】
さて、記録密度とはすなわち磁化遷移103を単位面積内にいくつ書き込めるかであり、これを高めるには磁化遷移103の一つひとつをいかに急峻かつスムースに形成できるかが最も重要となる。この磁化遷移103は通常、図1に示したように、結晶粒界に沿ったジグザグのミクロ構造を有している。そしてこのジグザグの平均的な幅(遷移幅)が、いわば磁化遷移の急峻性を表しているということができる。
【0006】
この幅が広すぎる場合、ビットの間隔を詰められないために記録密度が増えないというだけでなく、再生信号に大きなノイズが加わるので、低いビット誤り率(BER)での安定した読み取りができないという問題がある。それゆえ現行の磁気記録システムにおいては、遷移幅が記録密度を制限する最も大きな要因のひとつとなっている。この遷移幅には上記の強磁性結晶粒自身のサイズとともに粒子間に働く磁気的な相互作用も強い影響を及ぼしていることが分かっている。
【0007】
図1には磁化反転する単位のサイズが結晶粒径の数倍と大きい場合の磁化状態の模式図を示した。このような場合に磁化反転の単位を小さくして磁化遷移103の幅を狭くするには、直接的には磁性粒子101を小さくすることが考えられる。
【0008】
しかしながら磁性粒子101を過度に微細化すると、交換相互作用とそのばらつきがかえって大きくなり、クラスタサイズおよびそのばらつきを増大させて却ってBERが増大してしまうことになる。従って結晶粒子サイズよりクラスタサイズを大きくしている原因である交換相互作用を抑制することが重要である。
【0009】
垂直磁気記録媒体の層構造が記載されているものとして「特許文献1」が挙げられる。「特許文献1」には、磁性層を構成する磁性粒子相互間の磁気的相互作用を小さくするために、六方最密構造のRuを下地層として用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−71401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
垂直磁気記録においては、記録時における媒体磁化の反転単位が磁気記録層の結晶粒子サイズの数倍と大きくなって(クラスタリング)いるため、ビットに対応する磁化遷移を充分狭くすることが出来ず、これが高記録密度化の障害となっていた。このクラスタリングの原因は強磁性粒子間に働く交換相互作用によるものである。
【0012】
図2は、横軸に交換磁界(Hexch)、すなわち磁性粒子間に働く交換相互作用の絶対値をとり、縦軸に交換相互作用の頻度を、磁性粒子の平均サイズをパラメータとしてプロットしたグラフである。図1において、A、B、Cの順に磁性粒子の平均径の大きさが小さくなっている。図2に示すように、磁性粒子の平均サイズを小さくすると交換相互作用のばらつきが大きくなる。
【0013】
このように、反転単位を小さくしようとして結晶粒子サイズを小さくすると、交換相互作用磁界とそのばらつきが増大し、かえってクラスタサイズを増大させたり、クラスタサイズのばらつきを増大させるなどして記録性能が劣化していた。従ってクラスタサイズ低減のためには交換相互作用自体を小さくすることが必要であった。しかしながら、単一の粒間材料を用いて交換相互作用を小さくすることは非常に困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
垂直記録媒体の磁気記録層は特性の異なる複数の層に分けて形成されている。このうち少なくともひとつの層に負の交換相互作用を導入すると、各層間の磁気的な結合により磁気記録層全体としてあたかも交換相互作用が極小であるようにすることができる。なお、負の交換相互作用とは、強磁性体粒子間の磁化を互いに反平行に向けようとする力である。
【発明の効果】
【0015】
磁気記録層の交換相互作用が極小になったことにより、各磁性粒子の磁化はあたかも独立しているように振舞うことができる。このため磁化遷移のジグザグの幅をほとんど磁性粒子サイズと同等にすることができるようになった。以上から1Tb/in2を超える超高記録密度が実現され、小型大容量かつ転送レートの高い磁気ディスク装置を低コストで実現することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】垂直磁気記録における磁化遷移近傍の反転単位を示した模式図。
【図2】交換磁界のばらつきを磁性粒子の径をパラメータとして表したグラフである。
【図3】磁気記録層における磁性粒子の状態を示す模式図である。
【図4】第2磁気記録層の断面模式図である。
【図5】第1磁気記録層の断面模式図である。
【図6】第1磁気記録層および第2磁気記録層における交換磁界の分布を示すグラフである。
【図7】交換相互作用エネルギーとSN比の関係を示すグラフである。
【図8】上層の磁気記録層の交換相互作用エネルギーがプラスの場合、下層の磁気記録層の交換相互作用エネルギーを変化させた場合のSN比の変化を示すグラフである。
【図9】本発明による磁気ディスクの断面構造である。
【図10】図9の磁気ディスクを製造するための製造条件である。
【図11】磁気ディスク装置の動作を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用した具体的な磁気記録媒体及び磁気ディスク装置について、実施例によって詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
図3は、本発明による磁気ディスク(磁気記録媒体)において、磁気記録層16のみを取り出した模式図である。図3において、磁気記録層16は第1磁気記録層161、第2磁気記録層162から形成されている。第2磁気記録層162が磁気ディスクの表面側、すなわち、磁気ヘッド側に位置している。第1磁気記録層161の磁性粒子1611、第2磁気記録層162の磁性粒子1621とも円柱構造であるとして近似している。図3の例では、第1磁気記録層161、第2磁気記録層162とも厚さは例えば、10nm程度である。なお、本明細書でいる磁性粒子とは強磁性体磁性粒子である。
【0019】
各磁性粒子の径が異なっていることに対応して、各円柱構造の径が異なっている。第1磁気記録層161と第2磁気記録層162の磁性粒子の径は同じである。つまり、円柱構造の直径が等しい。各層において、磁性粒子の径がばらついていることに対応して、円柱構造の直径が異なっている。以後円柱構造を磁性粒子という。
【0020】
図3において、第2磁気記録層162の磁性粒子1621と第1磁気記録層161の磁性粒子1611との間には、正の強い交換交互作用が働いている。図3において、この様子をHexch>>0として表している。正の交換交互作用は、磁気モーメントを同じ向きに向けようとする作用を有しているので、第1磁気記録層161の磁性粒子と第2磁気記録層162の磁性粒子とは、同じ向きに磁気モーメントを有している。
【0021】
図4は図3に示す第2磁気記録層162の断面模式図であり、図5は第1磁気記録層161の断面模式図である。図4と図5は同じ構造であるが、材料が異なっている。図4において、第2磁気記録層162における磁性粒子1621は64Co−12Cr−14Pt−10Bの合金によって形成されている。第2磁気記録層162における磁性粒子1621間には粒界材料1622としてSiO2が充填されている。図4において、磁性粒子の径Dの平均は10nm程度であり、サイズの分散は20〜30%である。また、磁性粒子と磁性粒子の間隔dは2〜3nm程度である。
【0022】
図5において、第1磁気記録層161における磁性粒子1611は61Co−21Cr−18Pt−6molSiO2の合金によって形成されている。第1磁気記録層161における磁性粒子1611間には粒界材料1612としてRuが充填されている。なお、粒界材料1612としてRuの替わりにCr、Ir、Rhあるいはそれらの酸化物が充填される場合もある。図5において、磁性粒子の径Dの平均は10nm程度であり、サイズの分散は20〜30%である。また、磁性粒子と磁性粒子の間隔dは2〜3nm程度であり、図4におけるのと同等である。
【0023】
第2磁気記録層161における磁性粒子1611と第2磁気記録層162における磁性粒子1621とは同じ磁気モーメントを持つ必要があるので、第1磁気記録層161の磁性粒子1611と第2磁気記録層162の磁性粒子1621との間では、強い正の交換相互作用が働いている必要がある。しかし、第1磁気記録層161と第2磁気記録層162との間で、強い正の交換相互作用が働いていると、粒界材料として従来から用いられているSiO2を使用すると、第1磁気記録層161内あるいは第2磁気記録層162内における隣りあう磁性粒子間において、正の交換相互作用エネルギーが働くことになる。この様子を図3および図4において、J>0として表している。
【0024】
同じ層の隣り同士の磁性粒子間において、正の交換相互作用エネルギーが働くと、磁気記クラスタのサイズとばらつきを大きくする。したがって、磁化遷移の幅を大きくすることになり、記録密度増大の障害となる。つまり、記録密度を上げようとして磁性粒子のサイズを小さくしても、磁気クラスタの大きさを小さくできず、記録密度を上げることが出来ない。
【0025】
本発明は、これを対策するために、第1磁気記録層161と第2磁気記録層162における粒界材料を異ならせている。すなわち、図4に示すように、上層の第2磁気記録層162においては、磁性粒子間の粒界材料1622を従来のようにSiO2としているのに対し、下層の第1磁気記録層161においては、磁性粒子間の粒界材料1612をRuとしている。
【0026】
第2磁気記録層162においては、隣り合った磁性粒子間では、粒界材料にSiO2を用いているので、正の交換相互作用エネルギーが働く。一方、第1磁気記録層161においては、粒界材料にRuを用いているので、隣り合った磁性粒子間では、負の交換相互作用エネルギーが働く。この様子を図3および図5において、J<0として表している。なお、Ruの替わりにIr、Cr、Rhあるいはそれらの酸化物を用いても同じ磁気記録層161における隣り合った磁性粒子1611間に負の交換相互作用エネルギーが働くようにすることが出来る。
【0027】
一方、第1磁気記録層161と第2磁気記録層162における磁性粒子は、連続した同じ柱状構造をしている。このような構成にすると、第2磁気記録層162と第1磁気記録層161における磁性粒子間では、交換相互作用エネルギーが相殺されてゼロになる。この様子を図6に示す。図6において、横軸は交換磁界(Hexch)であり、縦軸は交換相互作用の頻度である。
【0028】
図6において、右側、すなわち、交換磁界が正の場合は、第2磁気記録層162における交換相互作用の頻度を表し、左側、すなわち、交換磁界は負の場合は、第1磁気記録層161における交換相互作用の頻度を表している。第2磁気記録層162における磁性粒子と第1磁気記録層161における磁性粒子とは、同じ柱状構造をしているので、交換磁界に対する頻度の曲線は、y軸を挟んで鏡面対称の関係になっている。このことは、第1磁気記録層161および第2磁気記録層162において、隣りあう磁性粒子間の交換相互作用をゼロにすることが出来ることを示している。
【0029】
このように、隣りあう磁性粒子間の交換相互作用をゼロにすることによって、磁気クラスタのサイズを小さくすることが出来る。また、遷移幅を小さくすることが出来るので、記録密度を上げるとともに、再生信号に対するノイズも減少させることが出来る。
【0030】
図7は、横軸に交換相互作用エネルギーJをとり、縦軸に再生信号のSN比をとったものである。すなわち、図7は、同じ層内での、磁性粒子間の交換相互作用エネルギーJの値によって、再生信号のSN比がどのように変化するかをシミュレーションしたものである。なお、交換相互作用エネルギーの単位は10−13J/mである。
【0031】
記録層が第1磁気記録層161と第2磁気記録層162に分かれている場合、図7の横軸は、第1磁気記録層161における磁性粒子と第2磁気記録層162における磁性粒子の合計の交換相互作用エネルギーである。交換相互作用エネルギーの合計がプラスに大きくなるにしたがって、SN比は小さくなっていく。また、交換相互作用エネルギーの合計が負の側に大きくなっていくにしたがって、SN比は小さくなっていく。交換相互作用エネルギーの合計がゼロのときにSN比が最も大きい。すなわち、交換相互作用エネルギーの絶対値が大きいほどSN比は低下する。
【0032】
図8は、図3における磁気ディスクの表面側、すなわち、第2磁気記録層162の交換相互作用エネルギーの値をプラスにした場合において、下層側、すなわち、第1磁気記録層161の交換相互作用エネルギーを変化させた場合にSN比がどのように変化するかを評価したグラフである。
【0033】
図8において、横軸は、第1磁気記録層161の交換相互作用エネルギーであり、縦軸は再生信号のSN比である。図8からわかるように、第1磁気記録層161の交換相互作用エネルギーを正側に大きくするにしたがって、SN比は低下する。第2磁気記録層162の交換相互作用エネルギーがプラスなので、第1磁気記録層161と第2磁気記録層162の合計の交換相互作用エネルギーの絶対値が大きくなるからである。
【0034】
一方、図8において、第1磁気記録層161の交換相互作用エネルギーを負の側に大きくしていくと、SN比は除々に大きくなり、交換相互作用エネルギーが−5×10−13J/mでSN比は最大となる。これは、磁気ディスクの表面側である第2磁気記録層162の交換相互作用エネルギーがプラスなので、下層の第1磁気記録層161の交換相互作用エネルギーの値が−5×10−13J/mとなった時に、第1磁気記録層161と第2磁気記録層162の交換相互作用エネルギーが相殺されてゼロになったためである。第1磁気記録層161の交換相互作用エネルギーをさらに負の側に大きくするとSN比は低下していく。つまり、第1磁気記録層161の値をさらに負の側に大きくすると交換相互作用エネルギーの合計の絶対値が大きくなるので、SN比が低下することを示している。
【0035】
このように、本発明によって、第2磁気記録層162における粒界材料1622と、第1磁気記録層161における粒界材料1612とを異ならせ、第1磁気記録層161における交換相互作用エネルギーの符号と第2磁気記録層162における交換相互作用エネルギーの符号を逆にすることによって、SN比を向上させることが出来る。
【0036】
具体的には、第2磁気記録層162における粒界材料1622をSiO2とすることによって第2磁気記録層162の交換相互作用エネルギーを正にする。一方、第1磁気記録層161における粒界材料1612をRuとすることによって第1磁気記録層161の交換相互作用エネルギーを負にする。第1磁気記録層161、第2磁気記録層162の膜厚等を制御することによって、最適な条件、すなわち、交換相互作用エネルギーの合計をゼロにすることが出来る。なお、第1磁気記録層161の粒界材料をCr、Ti、Ir、あるいはそれらの酸化物を用いても第1磁気記録層161の交換相互作用エネルギーの値を負にすることが出来る。
【0037】
図9は、本発明による磁気ディスクの詳細断面構造の例であり、図10に示す表は、図9の磁気ディスクを製造するための製造条件である。本実施例では、図9に示す磁気ディスクの各層は全てスパッタリングによって形成される。
【0038】
図9において、基板11にはガラス、または、NiP合金をめっきしたAl基板が使用される。基板11の上には、記録媒体の各層と基板との密着性を向上させるための密着層12が形成される。密着層12は、図10に示すように、65Ni35Taのターゲットを1Paのアルゴン雰囲気中でスパッタリングすることによって形成される。密着層の厚さは10nmである。
【0039】
図9に示すように、密着層12の上には軟磁性下地層13が形成される。軟磁性下地層13は記録層に磁気信号を書き込む際、書き込みヘッドからの磁束を吸い寄せることによって、磁気記録層16における記録密度を上げる役割を有する。軟磁性下地層13は3層で形成され、下から、第1軟磁性層131、非磁性層132、第2軟磁性層133となっている。
【0040】
図10に示すように、第1軟磁性層131は51Fe−34−Co−10Ta−5ZrのターゲットをArガス圧が0.5Paの雰囲気中でスパッタリングすることによって形成される。第1軟磁性層131の厚さは15nmである。
【0041】
第1軟磁性層131の上には、非磁性層132として、RuがArガス圧1Paの下でスパッタリングによって0.4nmの厚さに形成される。非磁性層132の上には、第2軟磁性層133が、51Fe−34−Co−10Ta−5ZrのターゲットをArガス圧が0.5Paの雰囲気中でスパッタリングすることによって形成される。第2軟磁性層133の厚さは5.5nmである。第2軟磁性層133は第1軟磁性131と成分は同じであるが、厚さが異なっている。
【0042】
軟磁性下地層13を1層でなく、3層とすることによって軟磁性下地層13の磁化状態を安定化させている。すなわち、第1軟磁性層131と第2軟磁性層133との間に、非磁性層であるRu層132を配置し、第1軟磁性層131と第2軟磁性133との間の交換相互作用エネルギーを負にすることによって、第1軟磁性層131と第2軟磁性層133との磁化モーメントを逆方向とすることにより、軟磁性下地層13の磁化状態を安定化させている。
【0043】
図9に示すように、軟磁性下地層13の上にはシード層14が形成される。シード層14は磁気記録層16における結晶配向性を向上させる役割を有する。これによって記録層の磁気異方性を高くすることが出来る。シード層14は2層から形成される。
【0044】
図10に示すように、第1シード層141はArガス圧が0.5Paの雰囲気中で、85.5Co−9.5Fe−5Taのターゲットをスパッタリングすることによって形成される。第1シード層141の厚さは7nmである。第2シード層142はArガス圧が1Paの雰囲気中で、94Ni−6Wのターゲットを85.5Co−9.5Fe−5Taをスパッタリングすることによって形成される。第2シード層142の厚さは3nmである。
【0045】
図9に示すように、シード層14の上には、中間層15が形成される。中間層15は軟磁性下地層13と磁気記録層16との緩衝層としての役割と、磁気記録層16の粒径を制御する役割を有する。中間層15には、非磁性体であるRuが使用される。図10に示すように、中間層15はArガス圧が1Paの雰囲気中で、Ruのターゲットをスパッタリングすることによって、厚さ4nmに形成される。なお、仕様によって中間層を厚く形成する場合は、中間層は、Arガス圧が5Paの雰囲気中で、Ruのターゲットをスパッタリングすることによって、厚さ8nmに形成される。中間層15の材料としてはTiが使用される場合もある。
【0046】
図9に示すように、中間層15の上には磁気記録層16が形成される、磁気記録層16は2層構造であり、下から順に第1磁気記録層161、第2磁気記録層162となっている。図9における第1磁気記録層161と第2磁気記録層162の厚さは、図3とは異なっている。第1磁気記録層161は、磁性粒子と磁性粒子間に充填された粒界材料によって構成されている。図10に示すように、第1磁気記録層161の磁性粒子は、Arガス圧が4.5Paの雰囲気中で、61Co−21Cr−18Pt−6molSiO2のターゲットをスパッタリングすることによって形成される。
【0047】
一方、第1磁気記録層161における粒界材料は同じ雰囲気のArガス中で、Ruをスパッタリングすることによって形成される。第1磁気記録層161は、まず、61Co−21Cr−18Pt−6molSiO2によって構成される磁性粒子の核が成長し、その核を取り囲むように、Ruによる粒界材料が成長する。これによって磁性粒子間をRuによる粒界材料が充填する構造が形成される。第1磁気記録層161の厚さは13nmである。第1磁気記録層161は、粒界材料がRuであるので、交換相互作用エネルギーJは負の値をとる。
【0048】
図9に示すように、第1磁気記録層161の上には第2磁気記録層162が形成される。第2磁気記録層162も、磁性粒子と磁性粒子間に充填された粒界材料によって構成されている。図10に示すように、第2磁気記録層162の磁性粒子は、Arガス圧が0.6Paの雰囲気中で、64-Co−12Cr−14Pt−10Bのターゲットをスパッタリングすることによって形成される。
【0049】
一方、第2磁気記録層162における粒界材料は同じ雰囲気のArガス中で、SiO2をスパッタリングすることによって形成される。第2磁気記録層162は、まず、64Co−12Cr−14Pt−10Bによって構成される磁性粒子の核が成長し、その核を取り囲むように、SiO2による粒界材料が成長する。これによって磁性粒子間をSiO2による粒界材料が充填する構造が形成される。第2磁気記録層162の厚さは3nmである。第2磁気記録層162は、粒界材料がSiO2であるので、交換相互作用エネルギーJは正の値をとる。
【0050】
図9に示すように、磁気記録層16の上には、磁気記録層16を保護するための保護層が形成されている。図10に示すように、保護層は、Arガス圧が0.6Paの雰囲気中で、Carbonをスパッタリングすることによって形成される。保護膜の厚さは3nmである。
【0051】
このようにして形成された磁気ディスクは、第1磁気記録層161の交換相互作用エネルギーと第2磁気記録層162の交換相互作用エネルギーとが逆の符号を有しているので、交換相互作用エネルギーの絶対値を小さくすることが出来、磁気クラスタのサイズを小さく抑えることが出来る。その結果、遷移幅を小さく抑え、記録密度を増大させることが出来るとともに、再生時のSN比を向上させることが出来る。
【0052】
以上の説明では、磁気記録層16は2層で形成されているとしたが、本発明は、磁気記録層16が3層以上の複数の磁気記録層16によって形成されている場合にも適用することが出来る。磁気記録層16が3層以上の磁気記録層16で形成されている場合、少なくとも1層の磁気記録層16の交換相互作用エネルギーを負の交換相互作用エネルギーとすることによって、本発明の効果を得ることが出来る。すなわち、各層の交換相互作用エネルギーの合計の絶対値を小さくするような層配置とすることによって、本発明の効果を得ることが出来る。
【0053】
図11は、磁気ディスク装置の各コンポーネント間の関係を示す概念図である。磁気ヘッド31を搭載したスライダはサスペンションアーム32により支持され、アクチュエータ33によりディスク状磁気記録媒体34上で位置決めされて所望の場所で情報の読み書きを行う。磁気記録媒体34はスピンドルモータ35により回転が制御され、その上にあるサーボ領域にはあらかじめ位置を示す信号(サーボ信号)が記録されており、ヘッドが読み取ったサーボ信号を機構制御系45で処理したうえでアクチュエータ33にフィードバックすることで閉ループ制御が行われている。
【0054】
外部インターフェイス44を通して入力されたユーザデータは、コントローラ43及びデータ符号・復号系42で磁気記録系に好適な方法で符号化・整形されて記録再生アンプ41において記録電流波形に変換され、この電流が磁気ヘッド31の記録素子を励磁することで磁気記録媒体34のユーザデータ領域にビットが書き込まれる。逆に書き込まれたビットから出る漏洩磁界は、磁気ヘッド31の再生素子がセンスすることで電気的信号に変換され、記録再生アンプ41及びデータ符号・復号系42で磁気記録系に好適な方法で波形整形・復号化処理を経てユーザデータが再現される。
【0055】
本発明による磁気ディスクを図11に示す磁気ディスク装置に用いることにより、記録密度が大きく、かつ、SN比の大きい磁気ディスクを実現することが出来る。
【符号の説明】
【0056】
11…基板、12…密着層、13…軟磁性下地層、14…シード層、15…中間層、16…記録層、17…保護層、18…非磁性層、131…第一軟磁性層、132…非磁性層、133…第二軟磁性層、141…第一シード層、142…第二シード層、143…第三シード層、31…磁気ヘッド、33…アクチュエータ、34…磁気記録媒体、35…スピンドルモータ、41…記録再生アンプ、42…データ符号・復号系、43…コントローラ、44…外部インターフェイス、45…機構制御系、101…磁性粒子、102…粒界材料、103…磁化遷移。
【技術分野】
【0001】
本発明は、超高密度磁気記録技術に係り、特に、垂直磁気記録媒体における記録密度の上昇、再生時のSN比の向上ための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
情報処理技術の発達に促され、様々な分野でディジタル化が急速に進行しつつある。従来ハードウェアの代表格であったパーソナルコンピュータやサーバに加え、家電・オーディオ・医療機器などでも大量のディジタルデータを貯える必要性が高まってきた。これら膨大なデータを蓄えるため、不揮発性ファイルシステムの中核である磁気ディスク装置(HDD)はこれまでにも増して急速な大容量化を求められている。磁気ディスク装置の大容量化とは、面記録密度即ち媒体上に記録するビット密度をより高めることを意味する。
【0003】
現在実用化されているHDDでは、面内記録・垂直記録いずれの記録方式においても強磁性多結晶薄膜からなる記録媒体が用いられている。図1は、従来の磁気記録媒体における記録状態の模式図である。従来の多結晶薄膜は高い一軸磁気異方性をもつ磁性粒子101と、それを取り囲む非磁性材料を主とする粒界材料102からなるのが一般的である。
【0004】
情報を記録するための基本操作は、記録媒体上の任意の位置に局所的な磁界を印加し、磁化極性を適当なタイミングで反転させることで磁化がほぼ180°変化する境界(磁化遷移103)を形成することであり、この磁化遷移103をディジタル情報の1に対応させている。また、この磁化遷移103付近における漏洩磁界分布の空間変化を適当な磁界センサで検出することがデータ再生に相当する。実際には、この記録再生動作の前後に符号化・復号化などの処理を経てHDDにおける情報の入出力が行われている。
【0005】
さて、記録密度とはすなわち磁化遷移103を単位面積内にいくつ書き込めるかであり、これを高めるには磁化遷移103の一つひとつをいかに急峻かつスムースに形成できるかが最も重要となる。この磁化遷移103は通常、図1に示したように、結晶粒界に沿ったジグザグのミクロ構造を有している。そしてこのジグザグの平均的な幅(遷移幅)が、いわば磁化遷移の急峻性を表しているということができる。
【0006】
この幅が広すぎる場合、ビットの間隔を詰められないために記録密度が増えないというだけでなく、再生信号に大きなノイズが加わるので、低いビット誤り率(BER)での安定した読み取りができないという問題がある。それゆえ現行の磁気記録システムにおいては、遷移幅が記録密度を制限する最も大きな要因のひとつとなっている。この遷移幅には上記の強磁性結晶粒自身のサイズとともに粒子間に働く磁気的な相互作用も強い影響を及ぼしていることが分かっている。
【0007】
図1には磁化反転する単位のサイズが結晶粒径の数倍と大きい場合の磁化状態の模式図を示した。このような場合に磁化反転の単位を小さくして磁化遷移103の幅を狭くするには、直接的には磁性粒子101を小さくすることが考えられる。
【0008】
しかしながら磁性粒子101を過度に微細化すると、交換相互作用とそのばらつきがかえって大きくなり、クラスタサイズおよびそのばらつきを増大させて却ってBERが増大してしまうことになる。従って結晶粒子サイズよりクラスタサイズを大きくしている原因である交換相互作用を抑制することが重要である。
【0009】
垂直磁気記録媒体の層構造が記載されているものとして「特許文献1」が挙げられる。「特許文献1」には、磁性層を構成する磁性粒子相互間の磁気的相互作用を小さくするために、六方最密構造のRuを下地層として用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−71401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
垂直磁気記録においては、記録時における媒体磁化の反転単位が磁気記録層の結晶粒子サイズの数倍と大きくなって(クラスタリング)いるため、ビットに対応する磁化遷移を充分狭くすることが出来ず、これが高記録密度化の障害となっていた。このクラスタリングの原因は強磁性粒子間に働く交換相互作用によるものである。
【0012】
図2は、横軸に交換磁界(Hexch)、すなわち磁性粒子間に働く交換相互作用の絶対値をとり、縦軸に交換相互作用の頻度を、磁性粒子の平均サイズをパラメータとしてプロットしたグラフである。図1において、A、B、Cの順に磁性粒子の平均径の大きさが小さくなっている。図2に示すように、磁性粒子の平均サイズを小さくすると交換相互作用のばらつきが大きくなる。
【0013】
このように、反転単位を小さくしようとして結晶粒子サイズを小さくすると、交換相互作用磁界とそのばらつきが増大し、かえってクラスタサイズを増大させたり、クラスタサイズのばらつきを増大させるなどして記録性能が劣化していた。従ってクラスタサイズ低減のためには交換相互作用自体を小さくすることが必要であった。しかしながら、単一の粒間材料を用いて交換相互作用を小さくすることは非常に困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
垂直記録媒体の磁気記録層は特性の異なる複数の層に分けて形成されている。このうち少なくともひとつの層に負の交換相互作用を導入すると、各層間の磁気的な結合により磁気記録層全体としてあたかも交換相互作用が極小であるようにすることができる。なお、負の交換相互作用とは、強磁性体粒子間の磁化を互いに反平行に向けようとする力である。
【発明の効果】
【0015】
磁気記録層の交換相互作用が極小になったことにより、各磁性粒子の磁化はあたかも独立しているように振舞うことができる。このため磁化遷移のジグザグの幅をほとんど磁性粒子サイズと同等にすることができるようになった。以上から1Tb/in2を超える超高記録密度が実現され、小型大容量かつ転送レートの高い磁気ディスク装置を低コストで実現することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】垂直磁気記録における磁化遷移近傍の反転単位を示した模式図。
【図2】交換磁界のばらつきを磁性粒子の径をパラメータとして表したグラフである。
【図3】磁気記録層における磁性粒子の状態を示す模式図である。
【図4】第2磁気記録層の断面模式図である。
【図5】第1磁気記録層の断面模式図である。
【図6】第1磁気記録層および第2磁気記録層における交換磁界の分布を示すグラフである。
【図7】交換相互作用エネルギーとSN比の関係を示すグラフである。
【図8】上層の磁気記録層の交換相互作用エネルギーがプラスの場合、下層の磁気記録層の交換相互作用エネルギーを変化させた場合のSN比の変化を示すグラフである。
【図9】本発明による磁気ディスクの断面構造である。
【図10】図9の磁気ディスクを製造するための製造条件である。
【図11】磁気ディスク装置の動作を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用した具体的な磁気記録媒体及び磁気ディスク装置について、実施例によって詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
図3は、本発明による磁気ディスク(磁気記録媒体)において、磁気記録層16のみを取り出した模式図である。図3において、磁気記録層16は第1磁気記録層161、第2磁気記録層162から形成されている。第2磁気記録層162が磁気ディスクの表面側、すなわち、磁気ヘッド側に位置している。第1磁気記録層161の磁性粒子1611、第2磁気記録層162の磁性粒子1621とも円柱構造であるとして近似している。図3の例では、第1磁気記録層161、第2磁気記録層162とも厚さは例えば、10nm程度である。なお、本明細書でいる磁性粒子とは強磁性体磁性粒子である。
【0019】
各磁性粒子の径が異なっていることに対応して、各円柱構造の径が異なっている。第1磁気記録層161と第2磁気記録層162の磁性粒子の径は同じである。つまり、円柱構造の直径が等しい。各層において、磁性粒子の径がばらついていることに対応して、円柱構造の直径が異なっている。以後円柱構造を磁性粒子という。
【0020】
図3において、第2磁気記録層162の磁性粒子1621と第1磁気記録層161の磁性粒子1611との間には、正の強い交換交互作用が働いている。図3において、この様子をHexch>>0として表している。正の交換交互作用は、磁気モーメントを同じ向きに向けようとする作用を有しているので、第1磁気記録層161の磁性粒子と第2磁気記録層162の磁性粒子とは、同じ向きに磁気モーメントを有している。
【0021】
図4は図3に示す第2磁気記録層162の断面模式図であり、図5は第1磁気記録層161の断面模式図である。図4と図5は同じ構造であるが、材料が異なっている。図4において、第2磁気記録層162における磁性粒子1621は64Co−12Cr−14Pt−10Bの合金によって形成されている。第2磁気記録層162における磁性粒子1621間には粒界材料1622としてSiO2が充填されている。図4において、磁性粒子の径Dの平均は10nm程度であり、サイズの分散は20〜30%である。また、磁性粒子と磁性粒子の間隔dは2〜3nm程度である。
【0022】
図5において、第1磁気記録層161における磁性粒子1611は61Co−21Cr−18Pt−6molSiO2の合金によって形成されている。第1磁気記録層161における磁性粒子1611間には粒界材料1612としてRuが充填されている。なお、粒界材料1612としてRuの替わりにCr、Ir、Rhあるいはそれらの酸化物が充填される場合もある。図5において、磁性粒子の径Dの平均は10nm程度であり、サイズの分散は20〜30%である。また、磁性粒子と磁性粒子の間隔dは2〜3nm程度であり、図4におけるのと同等である。
【0023】
第2磁気記録層161における磁性粒子1611と第2磁気記録層162における磁性粒子1621とは同じ磁気モーメントを持つ必要があるので、第1磁気記録層161の磁性粒子1611と第2磁気記録層162の磁性粒子1621との間では、強い正の交換相互作用が働いている必要がある。しかし、第1磁気記録層161と第2磁気記録層162との間で、強い正の交換相互作用が働いていると、粒界材料として従来から用いられているSiO2を使用すると、第1磁気記録層161内あるいは第2磁気記録層162内における隣りあう磁性粒子間において、正の交換相互作用エネルギーが働くことになる。この様子を図3および図4において、J>0として表している。
【0024】
同じ層の隣り同士の磁性粒子間において、正の交換相互作用エネルギーが働くと、磁気記クラスタのサイズとばらつきを大きくする。したがって、磁化遷移の幅を大きくすることになり、記録密度増大の障害となる。つまり、記録密度を上げようとして磁性粒子のサイズを小さくしても、磁気クラスタの大きさを小さくできず、記録密度を上げることが出来ない。
【0025】
本発明は、これを対策するために、第1磁気記録層161と第2磁気記録層162における粒界材料を異ならせている。すなわち、図4に示すように、上層の第2磁気記録層162においては、磁性粒子間の粒界材料1622を従来のようにSiO2としているのに対し、下層の第1磁気記録層161においては、磁性粒子間の粒界材料1612をRuとしている。
【0026】
第2磁気記録層162においては、隣り合った磁性粒子間では、粒界材料にSiO2を用いているので、正の交換相互作用エネルギーが働く。一方、第1磁気記録層161においては、粒界材料にRuを用いているので、隣り合った磁性粒子間では、負の交換相互作用エネルギーが働く。この様子を図3および図5において、J<0として表している。なお、Ruの替わりにIr、Cr、Rhあるいはそれらの酸化物を用いても同じ磁気記録層161における隣り合った磁性粒子1611間に負の交換相互作用エネルギーが働くようにすることが出来る。
【0027】
一方、第1磁気記録層161と第2磁気記録層162における磁性粒子は、連続した同じ柱状構造をしている。このような構成にすると、第2磁気記録層162と第1磁気記録層161における磁性粒子間では、交換相互作用エネルギーが相殺されてゼロになる。この様子を図6に示す。図6において、横軸は交換磁界(Hexch)であり、縦軸は交換相互作用の頻度である。
【0028】
図6において、右側、すなわち、交換磁界が正の場合は、第2磁気記録層162における交換相互作用の頻度を表し、左側、すなわち、交換磁界は負の場合は、第1磁気記録層161における交換相互作用の頻度を表している。第2磁気記録層162における磁性粒子と第1磁気記録層161における磁性粒子とは、同じ柱状構造をしているので、交換磁界に対する頻度の曲線は、y軸を挟んで鏡面対称の関係になっている。このことは、第1磁気記録層161および第2磁気記録層162において、隣りあう磁性粒子間の交換相互作用をゼロにすることが出来ることを示している。
【0029】
このように、隣りあう磁性粒子間の交換相互作用をゼロにすることによって、磁気クラスタのサイズを小さくすることが出来る。また、遷移幅を小さくすることが出来るので、記録密度を上げるとともに、再生信号に対するノイズも減少させることが出来る。
【0030】
図7は、横軸に交換相互作用エネルギーJをとり、縦軸に再生信号のSN比をとったものである。すなわち、図7は、同じ層内での、磁性粒子間の交換相互作用エネルギーJの値によって、再生信号のSN比がどのように変化するかをシミュレーションしたものである。なお、交換相互作用エネルギーの単位は10−13J/mである。
【0031】
記録層が第1磁気記録層161と第2磁気記録層162に分かれている場合、図7の横軸は、第1磁気記録層161における磁性粒子と第2磁気記録層162における磁性粒子の合計の交換相互作用エネルギーである。交換相互作用エネルギーの合計がプラスに大きくなるにしたがって、SN比は小さくなっていく。また、交換相互作用エネルギーの合計が負の側に大きくなっていくにしたがって、SN比は小さくなっていく。交換相互作用エネルギーの合計がゼロのときにSN比が最も大きい。すなわち、交換相互作用エネルギーの絶対値が大きいほどSN比は低下する。
【0032】
図8は、図3における磁気ディスクの表面側、すなわち、第2磁気記録層162の交換相互作用エネルギーの値をプラスにした場合において、下層側、すなわち、第1磁気記録層161の交換相互作用エネルギーを変化させた場合にSN比がどのように変化するかを評価したグラフである。
【0033】
図8において、横軸は、第1磁気記録層161の交換相互作用エネルギーであり、縦軸は再生信号のSN比である。図8からわかるように、第1磁気記録層161の交換相互作用エネルギーを正側に大きくするにしたがって、SN比は低下する。第2磁気記録層162の交換相互作用エネルギーがプラスなので、第1磁気記録層161と第2磁気記録層162の合計の交換相互作用エネルギーの絶対値が大きくなるからである。
【0034】
一方、図8において、第1磁気記録層161の交換相互作用エネルギーを負の側に大きくしていくと、SN比は除々に大きくなり、交換相互作用エネルギーが−5×10−13J/mでSN比は最大となる。これは、磁気ディスクの表面側である第2磁気記録層162の交換相互作用エネルギーがプラスなので、下層の第1磁気記録層161の交換相互作用エネルギーの値が−5×10−13J/mとなった時に、第1磁気記録層161と第2磁気記録層162の交換相互作用エネルギーが相殺されてゼロになったためである。第1磁気記録層161の交換相互作用エネルギーをさらに負の側に大きくするとSN比は低下していく。つまり、第1磁気記録層161の値をさらに負の側に大きくすると交換相互作用エネルギーの合計の絶対値が大きくなるので、SN比が低下することを示している。
【0035】
このように、本発明によって、第2磁気記録層162における粒界材料1622と、第1磁気記録層161における粒界材料1612とを異ならせ、第1磁気記録層161における交換相互作用エネルギーの符号と第2磁気記録層162における交換相互作用エネルギーの符号を逆にすることによって、SN比を向上させることが出来る。
【0036】
具体的には、第2磁気記録層162における粒界材料1622をSiO2とすることによって第2磁気記録層162の交換相互作用エネルギーを正にする。一方、第1磁気記録層161における粒界材料1612をRuとすることによって第1磁気記録層161の交換相互作用エネルギーを負にする。第1磁気記録層161、第2磁気記録層162の膜厚等を制御することによって、最適な条件、すなわち、交換相互作用エネルギーの合計をゼロにすることが出来る。なお、第1磁気記録層161の粒界材料をCr、Ti、Ir、あるいはそれらの酸化物を用いても第1磁気記録層161の交換相互作用エネルギーの値を負にすることが出来る。
【0037】
図9は、本発明による磁気ディスクの詳細断面構造の例であり、図10に示す表は、図9の磁気ディスクを製造するための製造条件である。本実施例では、図9に示す磁気ディスクの各層は全てスパッタリングによって形成される。
【0038】
図9において、基板11にはガラス、または、NiP合金をめっきしたAl基板が使用される。基板11の上には、記録媒体の各層と基板との密着性を向上させるための密着層12が形成される。密着層12は、図10に示すように、65Ni35Taのターゲットを1Paのアルゴン雰囲気中でスパッタリングすることによって形成される。密着層の厚さは10nmである。
【0039】
図9に示すように、密着層12の上には軟磁性下地層13が形成される。軟磁性下地層13は記録層に磁気信号を書き込む際、書き込みヘッドからの磁束を吸い寄せることによって、磁気記録層16における記録密度を上げる役割を有する。軟磁性下地層13は3層で形成され、下から、第1軟磁性層131、非磁性層132、第2軟磁性層133となっている。
【0040】
図10に示すように、第1軟磁性層131は51Fe−34−Co−10Ta−5ZrのターゲットをArガス圧が0.5Paの雰囲気中でスパッタリングすることによって形成される。第1軟磁性層131の厚さは15nmである。
【0041】
第1軟磁性層131の上には、非磁性層132として、RuがArガス圧1Paの下でスパッタリングによって0.4nmの厚さに形成される。非磁性層132の上には、第2軟磁性層133が、51Fe−34−Co−10Ta−5ZrのターゲットをArガス圧が0.5Paの雰囲気中でスパッタリングすることによって形成される。第2軟磁性層133の厚さは5.5nmである。第2軟磁性層133は第1軟磁性131と成分は同じであるが、厚さが異なっている。
【0042】
軟磁性下地層13を1層でなく、3層とすることによって軟磁性下地層13の磁化状態を安定化させている。すなわち、第1軟磁性層131と第2軟磁性層133との間に、非磁性層であるRu層132を配置し、第1軟磁性層131と第2軟磁性133との間の交換相互作用エネルギーを負にすることによって、第1軟磁性層131と第2軟磁性層133との磁化モーメントを逆方向とすることにより、軟磁性下地層13の磁化状態を安定化させている。
【0043】
図9に示すように、軟磁性下地層13の上にはシード層14が形成される。シード層14は磁気記録層16における結晶配向性を向上させる役割を有する。これによって記録層の磁気異方性を高くすることが出来る。シード層14は2層から形成される。
【0044】
図10に示すように、第1シード層141はArガス圧が0.5Paの雰囲気中で、85.5Co−9.5Fe−5Taのターゲットをスパッタリングすることによって形成される。第1シード層141の厚さは7nmである。第2シード層142はArガス圧が1Paの雰囲気中で、94Ni−6Wのターゲットを85.5Co−9.5Fe−5Taをスパッタリングすることによって形成される。第2シード層142の厚さは3nmである。
【0045】
図9に示すように、シード層14の上には、中間層15が形成される。中間層15は軟磁性下地層13と磁気記録層16との緩衝層としての役割と、磁気記録層16の粒径を制御する役割を有する。中間層15には、非磁性体であるRuが使用される。図10に示すように、中間層15はArガス圧が1Paの雰囲気中で、Ruのターゲットをスパッタリングすることによって、厚さ4nmに形成される。なお、仕様によって中間層を厚く形成する場合は、中間層は、Arガス圧が5Paの雰囲気中で、Ruのターゲットをスパッタリングすることによって、厚さ8nmに形成される。中間層15の材料としてはTiが使用される場合もある。
【0046】
図9に示すように、中間層15の上には磁気記録層16が形成される、磁気記録層16は2層構造であり、下から順に第1磁気記録層161、第2磁気記録層162となっている。図9における第1磁気記録層161と第2磁気記録層162の厚さは、図3とは異なっている。第1磁気記録層161は、磁性粒子と磁性粒子間に充填された粒界材料によって構成されている。図10に示すように、第1磁気記録層161の磁性粒子は、Arガス圧が4.5Paの雰囲気中で、61Co−21Cr−18Pt−6molSiO2のターゲットをスパッタリングすることによって形成される。
【0047】
一方、第1磁気記録層161における粒界材料は同じ雰囲気のArガス中で、Ruをスパッタリングすることによって形成される。第1磁気記録層161は、まず、61Co−21Cr−18Pt−6molSiO2によって構成される磁性粒子の核が成長し、その核を取り囲むように、Ruによる粒界材料が成長する。これによって磁性粒子間をRuによる粒界材料が充填する構造が形成される。第1磁気記録層161の厚さは13nmである。第1磁気記録層161は、粒界材料がRuであるので、交換相互作用エネルギーJは負の値をとる。
【0048】
図9に示すように、第1磁気記録層161の上には第2磁気記録層162が形成される。第2磁気記録層162も、磁性粒子と磁性粒子間に充填された粒界材料によって構成されている。図10に示すように、第2磁気記録層162の磁性粒子は、Arガス圧が0.6Paの雰囲気中で、64-Co−12Cr−14Pt−10Bのターゲットをスパッタリングすることによって形成される。
【0049】
一方、第2磁気記録層162における粒界材料は同じ雰囲気のArガス中で、SiO2をスパッタリングすることによって形成される。第2磁気記録層162は、まず、64Co−12Cr−14Pt−10Bによって構成される磁性粒子の核が成長し、その核を取り囲むように、SiO2による粒界材料が成長する。これによって磁性粒子間をSiO2による粒界材料が充填する構造が形成される。第2磁気記録層162の厚さは3nmである。第2磁気記録層162は、粒界材料がSiO2であるので、交換相互作用エネルギーJは正の値をとる。
【0050】
図9に示すように、磁気記録層16の上には、磁気記録層16を保護するための保護層が形成されている。図10に示すように、保護層は、Arガス圧が0.6Paの雰囲気中で、Carbonをスパッタリングすることによって形成される。保護膜の厚さは3nmである。
【0051】
このようにして形成された磁気ディスクは、第1磁気記録層161の交換相互作用エネルギーと第2磁気記録層162の交換相互作用エネルギーとが逆の符号を有しているので、交換相互作用エネルギーの絶対値を小さくすることが出来、磁気クラスタのサイズを小さく抑えることが出来る。その結果、遷移幅を小さく抑え、記録密度を増大させることが出来るとともに、再生時のSN比を向上させることが出来る。
【0052】
以上の説明では、磁気記録層16は2層で形成されているとしたが、本発明は、磁気記録層16が3層以上の複数の磁気記録層16によって形成されている場合にも適用することが出来る。磁気記録層16が3層以上の磁気記録層16で形成されている場合、少なくとも1層の磁気記録層16の交換相互作用エネルギーを負の交換相互作用エネルギーとすることによって、本発明の効果を得ることが出来る。すなわち、各層の交換相互作用エネルギーの合計の絶対値を小さくするような層配置とすることによって、本発明の効果を得ることが出来る。
【0053】
図11は、磁気ディスク装置の各コンポーネント間の関係を示す概念図である。磁気ヘッド31を搭載したスライダはサスペンションアーム32により支持され、アクチュエータ33によりディスク状磁気記録媒体34上で位置決めされて所望の場所で情報の読み書きを行う。磁気記録媒体34はスピンドルモータ35により回転が制御され、その上にあるサーボ領域にはあらかじめ位置を示す信号(サーボ信号)が記録されており、ヘッドが読み取ったサーボ信号を機構制御系45で処理したうえでアクチュエータ33にフィードバックすることで閉ループ制御が行われている。
【0054】
外部インターフェイス44を通して入力されたユーザデータは、コントローラ43及びデータ符号・復号系42で磁気記録系に好適な方法で符号化・整形されて記録再生アンプ41において記録電流波形に変換され、この電流が磁気ヘッド31の記録素子を励磁することで磁気記録媒体34のユーザデータ領域にビットが書き込まれる。逆に書き込まれたビットから出る漏洩磁界は、磁気ヘッド31の再生素子がセンスすることで電気的信号に変換され、記録再生アンプ41及びデータ符号・復号系42で磁気記録系に好適な方法で波形整形・復号化処理を経てユーザデータが再現される。
【0055】
本発明による磁気ディスクを図11に示す磁気ディスク装置に用いることにより、記録密度が大きく、かつ、SN比の大きい磁気ディスクを実現することが出来る。
【符号の説明】
【0056】
11…基板、12…密着層、13…軟磁性下地層、14…シード層、15…中間層、16…記録層、17…保護層、18…非磁性層、131…第一軟磁性層、132…非磁性層、133…第二軟磁性層、141…第一シード層、142…第二シード層、143…第三シード層、31…磁気ヘッド、33…アクチュエータ、34…磁気記録媒体、35…スピンドルモータ、41…記録再生アンプ、42…データ符号・復号系、43…コントローラ、44…外部インターフェイス、45…機構制御系、101…磁性粒子、102…粒界材料、103…磁化遷移。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に少なくとも軟磁性下地層、中間層、磁気記録層、保護層が積層されてなる垂直磁気記録媒体であって、前記磁気記録層は基板側から第1磁気記録層、第2磁気記録層の2層から構成され、前記第1磁気記録層、前記第2磁気記録層はそれぞれ柱状の強磁性体粒子の集合体からなり、前記第1磁気記録層における前記強磁性体粒子を取り囲む粒界材料の材料と、前記第2の磁気記録層における前記強磁性体粒子を取り囲む粒界材料は異なることを特徴とする垂直磁気記録媒体。
【請求項2】
前記第1磁気記録層あるいは前記第2磁気記録層うち一層は、前記強磁性体粒子間の磁化を互いに反平行に向けようとする負の交換相互作用を有することを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項3】
前記第1磁気記録層あるいは前記第2磁気記録層のうち少なくとも一層は、前記粒界材料としてRu,Cr,Ti、Irあるいはこれらの金属の酸化物を含むことを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項4】
前記第1磁気記録層は、前記粒界材料としてRu,Cr,Ti、Irあるいはこれらの金属の酸化物を含み、前記第2磁気記録層は前記粒界材料としてSiO2を含むことを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項5】
前記第1磁気記録層は負の交換相互作用を有し、前記第2磁気記録層は正の交換相互作用を有することを特徴とする請求項1に記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項6】
基板上に少なくとも軟磁性下地層、中間層、磁気記録層、保護層が積層されてなる垂直磁気記録媒体であって、前記磁気記録層は基板側から第1磁気記録層、第2磁気記録層を含む複数の磁気記録層から構成され、前記複数の磁気記録層はそれぞれ柱状の強磁性体粒子の集合体からなり、前記複数の磁気記録層のうち、少なくとも1層は、前記強磁性体粒子を取り囲む粒界材料の材料が、他の磁気記録層における前記強磁性体粒子を取り囲む粒界材料とは異なることを特徴とする垂直磁気記録媒体。
【請求項7】
基板上に少なくとも軟磁性下地層、中間層、磁気記録層、保護層が積層されてなる垂直磁気記録媒体であって、前記磁気記録層は基板側から第1磁気記録層、第2磁気記録層を含む複数の磁気記録層から構成され、前記複数の磁気記録層はそれぞれ柱状の強磁性体粒子と、前記強磁性体粒子を取り囲む粒界材料からなり、前記複数の磁気記録層のうち、少なくとも1層は、前記強磁性体粒子間の磁化を互いに反平行に向けようとする負の交換相互作用を有することを特徴とする垂直磁気記録媒体。
【請求項1】
基板上に少なくとも軟磁性下地層、中間層、磁気記録層、保護層が積層されてなる垂直磁気記録媒体であって、前記磁気記録層は基板側から第1磁気記録層、第2磁気記録層の2層から構成され、前記第1磁気記録層、前記第2磁気記録層はそれぞれ柱状の強磁性体粒子の集合体からなり、前記第1磁気記録層における前記強磁性体粒子を取り囲む粒界材料の材料と、前記第2の磁気記録層における前記強磁性体粒子を取り囲む粒界材料は異なることを特徴とする垂直磁気記録媒体。
【請求項2】
前記第1磁気記録層あるいは前記第2磁気記録層うち一層は、前記強磁性体粒子間の磁化を互いに反平行に向けようとする負の交換相互作用を有することを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項3】
前記第1磁気記録層あるいは前記第2磁気記録層のうち少なくとも一層は、前記粒界材料としてRu,Cr,Ti、Irあるいはこれらの金属の酸化物を含むことを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項4】
前記第1磁気記録層は、前記粒界材料としてRu,Cr,Ti、Irあるいはこれらの金属の酸化物を含み、前記第2磁気記録層は前記粒界材料としてSiO2を含むことを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項5】
前記第1磁気記録層は負の交換相互作用を有し、前記第2磁気記録層は正の交換相互作用を有することを特徴とする請求項1に記載の垂直磁気記録媒体。
【請求項6】
基板上に少なくとも軟磁性下地層、中間層、磁気記録層、保護層が積層されてなる垂直磁気記録媒体であって、前記磁気記録層は基板側から第1磁気記録層、第2磁気記録層を含む複数の磁気記録層から構成され、前記複数の磁気記録層はそれぞれ柱状の強磁性体粒子の集合体からなり、前記複数の磁気記録層のうち、少なくとも1層は、前記強磁性体粒子を取り囲む粒界材料の材料が、他の磁気記録層における前記強磁性体粒子を取り囲む粒界材料とは異なることを特徴とする垂直磁気記録媒体。
【請求項7】
基板上に少なくとも軟磁性下地層、中間層、磁気記録層、保護層が積層されてなる垂直磁気記録媒体であって、前記磁気記録層は基板側から第1磁気記録層、第2磁気記録層を含む複数の磁気記録層から構成され、前記複数の磁気記録層はそれぞれ柱状の強磁性体粒子と、前記強磁性体粒子を取り囲む粒界材料からなり、前記複数の磁気記録層のうち、少なくとも1層は、前記強磁性体粒子間の磁化を互いに反平行に向けようとする負の交換相互作用を有することを特徴とする垂直磁気記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−119006(P2011−119006A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277617(P2009−277617)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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