説明

弾塑性エネルギー吸収体の劣化シミュレーション装置

【課題】地震による弾塑性エネルギー吸収体の累積損傷値を解析により予測し、荷重変形履歴を考慮することなく弾塑性エネルギー吸収体の累積損傷値を予測することが出来る弾塑性エネルギー吸収体の劣化シミュレーション装置及び方法並びにそれを用いた建物の設計方法を提供すること。
【解決手段】地震環境情報DB20と、弾塑性エネルギー吸収体6を有する弾塑性エネルギー架構体Aを設けた建物の建物構造情報と、前記地震環境情報と、から想定地震に対する最大変位量を算出する最大変位量算出部16と、地震環境情報から想定地震の地震タイプ情報と、最大変位量算出部16により算出された最大変位量と、相関関係情報DB17に記憶された弾塑性エネルギー吸収体6の最大変位量と累積損傷値との相関関係情報と、から弾塑性エネルギー吸収体6の累積損傷値を算出する累積損傷値算出部18とを有する弾塑性エネルギー吸収体の劣化シミュレーション装置11である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばプレファブ化された建物用の規格化された弾塑性エネルギー吸収体の劣化シミュレーション装置及び弾塑性エネルギー吸収体の劣化シミュレーション方法、並びにそれを用いた建物の設計方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の地震による被害予測、或いは建物の地震発生時の被害推定について、特に弾塑性エネルギー吸収体を有する耐力要素としての弾塑性エネルギー架構体が装備される建物における弾塑性エネルギー吸収体の累積損傷値の予測、推定を的確に且つ早急に行うことにより弾塑性エネルギー吸収体の劣化を診断する技術が望まれている。
【0003】
例えば、特開2005−351742号公報(特許文献1)には、弾塑性エネルギー吸収体に塗布された塗料の剥離状態で弾塑性エネルギー吸収体の累積損傷値を推定出来ることが記載されている。
【0004】
また、日本建築学会構造系論文集No562、p159〜p166(非特許文献1)には、弾塑性エネルギー吸収体の損傷評価方法の記載が有り、地震による荷重変形履歴が影響することが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−351742号公報
【非特許文献1】2002年12月 社団法人 日本建築学会発行 小山雅人,青木博文著「日本建築学会構造系論文集No562 繰返し変形を受ける鋼部材の累積損傷評価指標に関する研究」p.159〜p.166
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述の特許文献1の技術では、地震発生後に弾塑性エネルギー吸収体の損傷を推定することは出来るが、地震が発生する前に弾塑性エネルギー吸収体の損傷を予測する事が出来ないという問題がある。
【0007】
また、非特許文献1の技術では、想定する地震に対しての時刻歴応答解析が必要となるが、時刻歴応答解析は解析に用いた地震波に対する個別解であり、そのばらつきの影響を除去するためには多数の地震波による解析が必要となるという問題があった。
【0008】
本発明は前記課題を解決するものであり、その目的とするところは、地震による弾塑性エネルギー吸収体の累積損傷値を解析により予測すると共に、これを使用することで所望の弾塑性エネルギー吸収体を採用した建物を得ることが出来、建物の設計にあたり、地震により建物に生ずる荷重変形履歴を考慮することなく弾塑性エネルギー吸収体の累積損傷値を予測することが出来る弾塑性エネルギー吸収体の劣化シミュレーション装置及び弾塑性エネルギー吸収体の劣化シミュレーション方法、並びにそれを用いた建物の設計方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するための本発明に係る弾塑性エネルギー吸収体の劣化シミュレーション装置の第1の構成は、建物用の規格化された弾塑性エネルギー吸収体の劣化シミュレーション装置であって、前記建物の建設地の地震環境情報を記憶する地震環境情報記憶手段と、規格化された弾塑性エネルギー吸収体を有する弾塑性エネルギー架構体を設けた建物について該建物の重量情報及び該弾塑性エネルギー架構体の数量情報を含む建物構造情報と、前記地震環境情報記憶手段に記憶された地震環境情報と、から前記建物の建設地で発生し得るとされる想定地震に対する弾塑性エネルギー吸収体の最大変位量を算出する最大変位量算出手段と、地震により発生する前記弾塑性エネルギー吸収体の最大変位量と、該地震に起因する前記弾塑性エネルギー吸収体の累積損傷値との相関関係情報を記憶する相関関係情報記憶手段と、前記最大変位量算出手段により算出された弾塑性エネルギー吸収体の最大変位量と、前記相関関係情報記憶手段に記憶された弾塑性エネルギー吸収体の最大変位量と累積損傷値との相関関係情報と、から前記弾塑性エネルギー吸収体の累積損傷値を算出する累積損傷値算出手段とを有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る弾塑性エネルギー吸収体の劣化シミュレーション装置の第2の構成は、建物用の規格化された弾塑性エネルギー吸収体の劣化シミュレーション装置であって、前記建物の建設地の地震環境情報を記憶する地震環境情報記憶手段と、規格化された弾塑性エネルギー吸収体を有する弾塑性エネルギー架構体を設けた建物について該建物の重量情報及び該弾塑性エネルギー架構体の数量情報を含む建物構造情報と、前記地震環境情報記憶手段に記憶された地震環境情報と、から前記建物の建設地で発生し得るとされる想定地震に対する弾塑性エネルギー吸収体の最大変位量を算出する最大変位量算出手段と、前記地震環境情報記憶手段に記憶された地震環境情報から前記想定地震の地震タイプ情報を算出する地震タイプ情報算出手段と、地震により発生する前記弾塑性エネルギー吸収体の最大変位量と、該地震に起因する前記弾塑性エネルギー吸収体の累積損傷値との相関関係情報を記憶する相関関係情報記憶手段と、前記地震タイプ算出手段により算出された地震タイプ情報と、前記最大変位量算出手段により算出された弾塑性エネルギー吸収体の最大変位量と、前記相関関係情報記憶手段に記憶された弾塑性エネルギー吸収体の最大変位量と累積損傷値との相関関係情報と、から前記弾塑性エネルギー吸収体の累積損傷値を算出する累積損傷値算出手段とを有することを特徴とする。
【0011】
ここで、地震のタイプとは、活断層の変動によって断層が相互にズレる震源の浅い内陸直下型地震と、海洋にある巨大なプレート(岩板)が陸側のプレートの下に沈み込む海溝の近くでプレート境界で滑りが生じて起きる海溝型地震と、更にはその中間型とに大別することが出来る。
【0012】
また、本発明に係る弾塑性エネルギー吸収体の劣化シミュレーション方法の第1の構成は、建物用の規格化された弾塑性エネルギー吸収体の劣化シミュレーション方法であって、規格化された弾塑性エネルギー吸収体を有する弾塑性エネルギー架構体を設けた建物について該建物の重量情報及び該弾塑性エネルギー架構体の数量情報を含む建物構造情報と、前記建物の建設地の地震環境情報と、から前記建物の建設地で発生し得るとされる想定地震に対する弾塑性エネルギー吸収体の最大変位量を決定し、前記弾塑性エネルギー吸収体の最大変位量と、予め作成された地震により発生する前記弾塑性エネルギー吸収体の最大変位量と該地震に起因する前記弾塑性エネルギー吸収体の累積損傷値との相関関係情報と、から前記弾塑性エネルギー吸収体の累積損傷値を算出することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る弾塑性エネルギー吸収体の劣化シミュレーション方法の第2の構成は、建物用の規格化された弾塑性エネルギー吸収体の劣化シミュレーション方法であって、規格化された弾塑性エネルギー吸収体を有する弾塑性エネルギー架構体を設けた建物について該建物の重量情報及び該弾塑性エネルギー架構体の数量情報を含む建物構造情報と、前記建物の建設地の地震環境情報と、から前記建物の建設地で発生し得るとされる想定地震に対する弾塑性エネルギー吸収体の最大変位量を算出すると共に、前記地震環境情報から前記想定地震の地震タイプ情報を決定し、前記地震タイプ情報と、前記弾塑性エネルギー吸収体の最大変位量と、予め作成された地震により発生する前記弾塑性エネルギー吸収体の最大変位量と該地震に起因する前記弾塑性エネルギー吸収体の累積損傷値との相関関係情報と、から前記弾塑性エネルギー吸収体の累積損傷値を算出することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る建物の設計方法の第1の構成は、規格化された弾塑性エネルギー吸収体を有する弾塑性エネルギー架構体を設けた建物の設計方法であって、建物について、請求項4に記載の弾塑性エネルギー吸収体の劣化シミュレーション方法により前記地震タイプ情報と、前記弾塑性エネルギー吸収体の最大変位量と、予め作成された地震により発生する前記弾塑性エネルギー吸収体の最大変位量と該地震に起因する前記弾塑性エネルギー吸収体の累積損傷値との相関関係情報と、から算出された前記弾塑性エネルギー吸収体の累積損傷値が所定の値よりも大きい場合に、前記弾塑性エネルギー架構体の数量を変更することを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る建物の設計方法の第2の構成は、前記建物の設計方法の第1の構成において、前記最大変位量が所定の値よりも大きい場合に、前記弾塑性エネルギー架構体の数量を変更することを特徴とする。
【0016】
ここで、弾塑性エネルギー吸収体の劣化の診断を行なうために用いる累積損傷値とは、疲労破壊や延性破壊による金属の疲労寿命を評価する線形累積損傷則(Miner則)に基づいて求められた値であり、「累積損傷値=1」を限界値とする。
【0017】
ここで、建物の建設地で発生し得るとされる想定地震に対する弾塑性エネルギー吸収体の最大変位量とは、例えば、建物躯体の下階梁と上階梁との間の水平方向の変位量等の最大層間変位量(cm)、柱と梁との間の角度等の最大変位角(rad)、弾塑性エネルギー吸収体等の最大せん断変形量(cm)等が適用出来る。
【0018】
ここで、規格化された弾塑性エネルギー吸収体とは、その形状、材料が規格化されており、更にはその疲労寿命特性から累積損傷値を求めることが出来る弾塑性エネルギー吸収体を言う。
【発明の効果】
【0019】
上記構成によれば、最大変位量算出手段により、建物の建設地で発生し得るとされる想定地震に対する建物の最大変位量を算出することで、予め作成され相関関係情報記憶手段に記憶された弾塑性エネルギー吸収体の最大変位量と累積損傷値との相関関係情報と、から弾塑性エネルギー吸収体の累積損傷値を算出して該弾塑性エネルギー吸収体の劣化を診断することが出来、これにより建物の劣化予測が容易に出来る。
【0020】
また、最大変位量算出手段により、建物の建設地で発生し得るとされる想定地震に対する建物の最大変位量を算出する一方で、建物の建設地で発生し得ると想定される発生地震波を解析して地震タイプ情報算出手段により地震タイプ情報を算出することが出来る。
【0021】
そして、累積損傷値算出手段により、地震タイプ情報算出手段により算出された地震タイプ情報について、最大変位量算出手段により算出された最大変位量と、予め作成され相関関係情報記憶手段に記憶された弾塑性エネルギー吸収体の最大変位量と累積損傷値との相関関係情報と、から弾塑性エネルギー吸収体の累積損傷値を算出して該弾塑性エネルギー吸収体の劣化を診断することが出来、これにより建物の劣化予測が容易に出来る。
【0022】
また、建物にどのような弾塑性エネルギー吸収体を採用するかの設計が容易になり、地震発生時には弾塑性エネルギー吸収体の劣化推定が容易に出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図により本発明に係る弾塑性エネルギー吸収体の劣化シミュレーション装置及び弾塑性エネルギー吸収体の劣化シミュレーション方法、並びにそれを用いた建物の設計方法の一実施形態を具体的に説明する。図1は本発明に係る弾塑性エネルギー吸収体の劣化シミュレーション装置の構成を示す制御系のブロック図、図2は弾塑性エネルギー吸収体を有する弾塑性エネルギー架構体を耐力要素として装備した耐力壁の構成を示す図、図3は弾塑性エネルギー吸収体の一例を示す図、図4は地震のタイプ別に作成した模擬地震波の一例を示す図、図5及び図6は位相差分分布の標準偏差毎に作成された模擬地震の地震のタイプ毎に、異なる複数の地震波の波形及び異なる複数の建物強度に応じてプロットされた最大変位量に対する累積損傷値群を包絡する上限曲線を、該地震により発生する最大変位量と、該地震に起因する弾塑性エネルギー吸収体の累積損傷値との相関関係として設定する様子を示す図、図7及び図8は弾塑性エネルギー吸収体の最大変位量と累積損傷値との相関関係を活用するフローチャート、図9は弾塑性エネルギー吸収体の累積損傷値が所定の値よりも大きい場合に弾塑性エネルギー架構体の数量を変更する様子を示すフローチャートである。
【0024】
図1において、11は建物用の規格化された弾塑性エネルギー吸収体6の劣化シミュレーション装置であり、パーソナルコンピュータ等により構成される。12はキーボードやマウス等により構成される入力部であり、建物の建設地情報及び建物構造情報が所定の入力画面上で入力される。13はCPU(中央演算処理装置)等により構成される制御部である。14はデイスプレイや印刷装置等により構成される出力部である。
【0025】
20は建物の建設地の地震環境情報を記憶する地震環境情報記憶手段となる地震環境情報データベース(以下、「地震環境情報DB」という)である。
【0026】
16は入力部2により入力された、規格化された弾塑性エネルギー吸収体6を有する弾塑性エネルギー架構体を設けた建物について該建物の重量情報及び該弾塑性エネルギー架構体Aの数量情報を含む建物構造情報と、入力部2により入力された建物の建設地情報と地震環境情報DB20に記憶された地震環境情報と、から建物の建設地で発生し得るとされる想定地震に対する最大変位量を算出する最大変位量算出手段となる最大変位量算出部である。
【0027】
15は地震環境情報DB20に記憶された地震環境情報から建物の建設地で発生し得ると想定される地震タイプ情報を算出する地震タイプ算出手段となる地震タイプ算出部である。
【0028】
17は地震により発生する弾塑性エネルギー吸収体6の最大変位量と、該地震に起因する弾塑性エネルギー吸収体6の累積損傷値との相関関係情報を記憶する相関関係情報記憶手段となる相関関係情報データベース(以下、「相関関係情報DB」という)である。
【0029】
18は地震タイプ情報算出部15により算出された地震タイプ情報と、最大変位量算出部16により算出された最大変位量と、予め作成され相関関係情報DB17に記憶された弾塑性エネルギー吸収体6の最大変位量と累積損傷値との相関関係情報と、から弾塑性エネルギー吸収体6の累積損傷値を算出する累積損傷値算出手段となる累積損傷値算出部18である。
【0030】
図2及び図3において、Aは建物の構造体に装備される耐力要素の一例として、中低層住宅の鉄骨建物に取り付けられる規格化された弾塑性エネルギー吸収体6を有する弾塑性エネルギー架構体(耐震要素)Aである。1は上下梁であり、2は上下梁1間に立て付けられた左右柱である。3は上下梁1間に左右柱2に添え付けて立て付けられた主枠体であり、4は主枠体3間の中央部に水平に設置された連結枠材である。
【0031】
弾塑性エネルギー架構体Aは主枠体3、連結枠体5、弾塑性エネルギー吸収体6、連結部材7、及び斜め枠体8からなり、連結枠材4は、主枠体3に接続される左右の連結枠体5と、中央に配置される建物用の規格化された弾塑性エネルギー吸収体6とが連結部材7によって連結されており、該連結部材7には、前記左右の主枠体3に一端が接続されて斜めに設置される複数の斜め枠体8が接続されている。
【0032】
本実施形態では、例えば、上下梁1及び主枠体3をH形鋼(例えば、SS400)、左右柱2を角形鋼管、連結枠体5を角形鋼管(例えば、STKR400)、弾塑性エネルギー吸収体6を低降伏点鋼板(高延性熱延軟鋼板)、連結部材7を鋼板(例えば、SS400)、斜め枠体8を丸形鋼管(例えば、STK400)等により構成されており、弾塑性エネルギー吸収体6と連結部材7とは、図3に示すように、トルシア型高力ボルト9(例えば、M16(S10T))等により固定され、他の部材は互いに溶接によって一体的に組み立てられている。
【0033】
図3に示す実施形態では、例えば、弾塑性エネルギー吸収体6を高延性熱延軟鋼板を断面コ字形状で図3に示す形状にプレス加工して成形されており、板厚4.2mm、全長200mm、両端部の幅110mm、中央部のくびれの幅33.4mm、起立片の高さ14mmで構成されている。またくびれの両端拡張部には拘束部材10がトルシア型高力ボルト9等により固定されており、弾塑性エネルギー吸収体6のくびれの中央部に集中して塑性変形が起きるように構成されている。
【0034】
弾塑性エネルギー吸収体6の素材となる低降伏点鋼材は、一般には、鉄と炭素、その他の微量のマンガン、ニッケル、リン、イオウ等の元素の合金で構成され、炭素を始め、鉄以外の元素の含有量を減らし、純鉄に近づけたり、結晶の粒子を大きくしたり、ニオブ(Nb)等の特殊な元素を微量添加することで、低降伏点鋼材を作ることが出来る。
【0035】
一般の鋼材と比較した低降伏点鋼材の機械的性質は、降伏点が半分程度低められ、伸び能力を高めて、引っ張り強さを低めている。そして、一般の鋼材と同じ高い剛性を有しながら、降伏点が低いので同じ力に対して少ない変形段階から降伏するので、一般の鋼材が弾性変形にとどまる変形量において、塑性歪みエネルギーで振動エネルギーを吸収することが出来る。従って、低降伏点鋼材は、小変形時のエネルギー吸収量が一般の鋼材よりも大きくなる。
【0036】
一方、一般の鋼材を用いた構造と同じ強度になるだけ鋼材の使用量を増して、低降伏点鋼材を用いて構造体を作ると、伸び能力の高い分だけ破壊までの塑性歪みエネルギーが増すので大地震時の耐震性が向上する。
【0037】
従って、連結枠材4を左右の連結枠体5と、中央の弾塑性エネルギー吸収体6とを接続して構成することで、力学的性質の大きく異なる一般の鋼材と、低降伏点鋼材を組み合わせて使い分けることで構造物としての力学的挙動を設計者の意図通りコントロールすることが可能となる。
【0038】
連結枠材4の中央部に配置された弾塑性エネルギー吸収体6は、地震等により鉄骨軸組に作用する所定値を越える外力を受けると、他の部位よりも先に降伏し、塑性変形するように設計された塑性体で構成されている。そして、この弾塑性エネルギー吸収体6の材質,長さ,形状等を適当に変える等してエネルギー吸収量が明確になるように降伏耐力が設計されている。
【0039】
弾塑性エネルギー吸収体6は、図6に示すように、地震により発生する該弾塑性エネルギー吸収体6の最大変位量(本実施形態では「最大層間変位量」を採用している)と、該地震に起因する該弾塑性エネルギー吸収体6の累積損傷値との相関関係が予め設定されており、相関関係情報DB17に記憶して格納されている。その相関関係は地震のタイプをパラメータとしている。そして、その地震タイプ情報のパラメータは、地震の地震波データをフーリエ変換して得られた位相差分分布の標準偏差σとしている。
【0040】
ここで、地震のタイプとは、活断層の変動によって断層が相互にズレる震源の浅い内陸直下型地震と、海洋にある巨大なプレート(岩板)が陸側のプレートの下に沈み込む海溝の近くでプレート境界で滑りが生じて起きる海溝型地震と、更にはその中間型とに大別することが出来る。
【0041】
図5に示すように、地震タイプ情報毎に該地震により発生する弾塑性エネルギー吸収体6の最大変位量(最大層間変位量)と、該地震に起因する弾塑性エネルギー吸収体6の累積損傷値との関係を異なる複数の地震波の波形毎及び異なる複数の建物強度毎に時刻暦応答解析しそれぞれについてプロットし、そのプロットされた最大変位量(最大層間変位量)に対する累積損傷値群を包絡する上限曲線Lを、地震により発生する最大変位量と、該地震に起因する弾塑性エネルギー吸収体6の累積損傷値との相関関係として設定する。
【0042】
そして、図5で求めた地震タイプ情報毎の上限曲線Lを図6に示すように地震により発生する弾塑性エネルギー吸収体6の最大変位量(最大層間変位量)と、該地震に起因する弾塑性エネルギー吸収体6の累積損傷値との相関曲線データとして作成して相関関係情報DB17に格納しており、これを利用して建物用の規格化された弾塑性エネルギー吸収体6の累積損傷値を算出することにより弾塑性エネルギー吸収体6の劣化シミュレーションを行うことが出来る。
【0043】
即ち、相関関係情報DB17に格納された図6の相関曲線データに基づいて、建物構造情報と、地震環境情報DB20に記憶された地震環境情報と、から最大変位量算出部16により算出した最大変位量を地震により発生する弾塑性エネルギー吸収体6の最大変位量(最大層間変位量)として、これに基づいて、累積損傷値算出部18により該地震に起因する弾塑性エネルギー吸収体6の累積損傷値を算出し、該弾塑性エネルギー吸収体6の劣化をシミュレーションする。
【0044】
ここで、模擬地震の位相差分分布を正規分布と仮定し、模擬地震の地震のタイプをその標準偏差σをパラメータとして設定する。模擬地震のパラメータとしては、例えば、図4に示すように、地震波の全データ時間を163.84秒、位相差分分布の平均値を81.92秒、位相差分を0〜2πとした時、直下型地震の地震波の標準偏差σは図4(a)に示すように0.04π、中間型1地震の地震波の標準偏差σは図4(b)に示すように0.15π、中間型2地震の地震波の標準偏差σは図4(c)に示すように0.25π、海溝型地震の地震波の標準偏差σは図4(d)に示すように0.40πである。
【0045】
このように設定した地震のタイプのそれぞれについて、地震波の位相差分の標準偏差σがそれぞれの値になるように異なる模擬地震波を30波ずつ作成する。
【0046】
また、模擬地震波を用いた解析では、中低層鉄骨造建物の1階〜3階の各階層に対応して3質点系のせん断ばねモデルを用いて時刻歴応答解析を行う。せん断ばねには、耐力パネル、軽量気泡コンクリート(ALC)帳壁、石膏ボード等を考慮する。
【0047】
地震のタイプ毎にその位相差分分布に対応して作成した振動の加速度波形からなる各地震波を入力した応答解析の一例を図5に示す。解析では累積損傷値が0.05以上1.0以下の範囲(累積損傷値の最大値を「1.0」とする)で複数の結果が得られるように降伏せん断力係数をパラメータとしている。また、地震のタイプが図5(b)に示すような海溝型地震になるに従い、設定した模擬地震では累積損傷値が1.0に至らない場合が生じるが、この場合には入力振幅の割り増しにより結果を得た。
【0048】
地震タイプ情報算出部15はこのような地震の各種タイプから地震環境情報DB20に格納された地震環境情報から現実の建物の建設地で発生し得ると想定される地震タイプ情報を算出する。例えば、東京地区では直下型地震、東海地方では海溝型地震のように地震タイプ情報が算出され、それに対応した地震波の標準偏差σが選択される。
【0049】
図5(a),(b)において、任意の1地震波について強度を変化させて時刻暦応答解析して得られた弾塑性エネルギー吸収体6の最大変位量(最大層間変位量)と累積損傷値との関係を求めると略同一曲線上に分布する。
【0050】
図6は相関関係情報DB17に格納された、弾塑性エネルギー吸収体6の最大変位量(最大層間変位量)と累積損傷値との相関関係情報であり、図5に示す地震のタイプ毎の弾塑性エネルギー吸収体6の最大変位量(最大層間変位量)と累積損傷値との相関関係において複数プロットした上限値の近似曲線である上限曲線Lを用いて地震のタイプ毎の弾塑性エネルギー吸収体6の最大変位量(最大層間変位量)と累積損傷値との相関関係を地震波の位相差分分布の標準偏差σ(図の左側からσ=0.40π,0.25π,0.15π,0.04π)毎に示したものである。
【0051】
上記のような弾塑性エネルギー吸収体6の最大変位量と累積損傷値との相関関係を活用するに当り、図7のステップSにおいて、先ず、ステップSにおいて、地震タイプ情報算出部15により算出した地震タイプ情報毎に建物の建設地で発生し得るとされる想定地震に対する弾塑性エネルギー吸収体6の最大変位量を最大変位量算出部16により算出して求め、ステップSにおいて、前記ステップSで想定した地震のタイプに対応する最大変位量−累積損傷値曲線から累積損傷値を求める。
【0052】
そして、前記ステップSで求めた最大変位量と、前記ステップSで求めた地震タイプにより、ステップSにおいて、地震のタイプをパラメータとする最大変位量と累積損傷値との相関関係から弾塑性エネルギー吸収体6の累積損傷値を求める。
【0053】
次に建物設計時の劣化シミュレーションにおいては、図8のステップS21において、公知の限界耐力計算法により想定地震に対する弾塑性エネルギー吸収体6の最大変位量(最大層間変位量)を計算する。同時にステップS22において、地震環境情報DB20に格納された建設地の地震環境から地震タイプ情報算出部15により地震タイプ情報を算出し、前記ステップS21で求めた最大変位量と、前記ステップS22で求めた地震タイプ情報により、ステップS23において、地震タイプ情報をパラメータとする最大層間変位量と累積損傷値との相関関係から弾塑性エネルギー吸収体6の累積損傷値を予想する。
【0054】
前記ステップ22において、地震環境情報DB20から地震のタイプを決めにくい場合は、便宜的にこのステップ22では、安全側である海溝型の地震のタイプが最大層間変位量と累積損傷値との相関関係として、これを用いて弾塑性エネルギー吸収体6の累積損傷値を予測する。
【0055】
また、建物の設計方法としては、建物について、劣化シミュレーション装置11の累積損傷値算出部18により算出された弾塑性エネルギー吸収体6の累積損傷値が所定の値よりも大きい場合に、弾塑性エネルギー架構体Aの数量を変更し、更には構造計算完了後の建物について、劣化シミュレーション装置11の最大変位量算出部16により算出された最大変位量が所定の値よりも大きい場合に、弾塑性エネルギー架構体Aの数量を変更する。
【0056】
即ち、図9のステップS31において、予め記憶した地震環境情報DB20から建設地の地震環境情報を取得し、ステップS32において、目標値として、建物の建設地で発生し得るとされる想定地震に対する最大変位量δaと、弾塑性エネルギー吸収体6の累積損傷値Daを設定する。
【0057】
次にステップS33において、地震環境情報DB20に記憶された地震環境情報から想定地震の規模及びタイプを決定或いは算出し、ステップS34において弾塑性エネルギー吸収体6を装備した弾塑性エネルギー架構体Aの数量を設定し、ステップS35において、最大変位量算出部16により最大変位量δを算出する。
【0058】
一方、ステップS36において、前記ステップS33で設定した想定地震の規模及びタイプについて、予め作成した地震により発生する弾塑性エネルギー吸収体6の最大変位量と、該地震に起因する該弾塑性エネルギー吸収体6の累積損傷値との相関関係を決定し、ステップS37において、累積損傷値算出部18により弾塑性エネルギー吸収体6の累積損傷値Dを算出する。
【0059】
そして、ステップS38において、前記ステップS37で累積損傷値算出部18により算出された弾塑性エネルギー吸収体6の累積損傷値Dと、前記ステップS32で目標値として設定した弾塑性エネルギー吸収体6の累積損傷値Daとを比較して、累積損傷値算出部18により算出された弾塑性エネルギー吸収体6の累積損傷値Dが目標値として設定した弾塑性エネルギー吸収体6の累積損傷値Daよりも大きい場合には、前記ステップS34に進んで弾塑性エネルギー架構体Aの数量を変更した後、前記ステップS35、S37、S38を繰り返し、累積損傷値算出部18により算出された弾塑性エネルギー吸収体6の累積損傷値Dが目標値として設定した弾塑性エネルギー吸収体6の累積損傷値Da以下になった時点で処理を終了する。
【0060】
また、前記ステップS38において、前述の弾塑性エネルギー吸収体6の累積損傷値の比較に加えて、必要に応じて、前記ステップS35で最大変位量算出部16により算出された最大変位量δと、前記ステップS32で目標値として設定した最大変位量δaとを比較して、最大変位量算出部16により算出された最大変位量δが目標値として設定した最大変位量δaよりも大きい場合には、前記ステップS34に進んで弾塑性エネルギー架構体Aの数量を変更した後、前記ステップS35、S37、S38を繰り返し、最大変位量算出部16により算出された最大変位量δが目標値として設定した最大変位量δa以下になった時点で処理を終了する。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の活用例として、建物用の規格化された弾塑性エネルギー吸収体の劣化シミュレーション装置及び弾塑性エネルギー吸収体の劣化シミュレーション方法、並びにそれを用いた建物の設計方法に適用出来、特に部材が規格化され、予め地震により被害を受ける階を想定して設計された建物に装備された弾塑性エネルギー吸収体の劣化シミュレーション装置及び弾塑性エネルギー吸収体の劣化シミュレーション方法、並びにそれを用いた建物の設計方法に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は本発明に係る弾塑性エネルギー吸収体の劣化シミュレーション装置の構成を示す制御系のブロック図である。
【図2】弾塑性エネルギー吸収体を有する弾塑性エネルギー架構体を耐力要素として装備した耐力壁の構成を示す図である。
【図3】弾塑性エネルギー吸収体の一例を示す図である。
【図4】地震のタイプ別に作成した模擬地震波の一例を示す図である。
【図5】位相差分分布の標準偏差毎に作成された模擬地震の地震のタイプ毎に、異なる複数の地震波の波形及び異なる複数の建物強度に応じてプロットされた最大変位量に対する累積損傷値群を包絡する上限曲線を、該地震により発生する最大変位量と、該地震に起因する弾塑性エネルギー吸収体の累積損傷値との相関関係として設定する様子を示す図である。
【図6】位相差分分布の標準偏差毎に作成された模擬地震の地震のタイプ毎に、異なる複数の地震波の波形及び異なる複数の建物強度に応じてプロットされた最大変位量に対する累積損傷値群を包絡する上限曲線を、該地震により発生する最大変位量と、該地震に起因する弾塑性エネルギー吸収体の累積損傷値との相関関係として設定する様子を示す図である。
【図7】弾塑性エネルギー吸収体の最大変位量と累積損傷値との相関関係を活用するフローチャートである。
【図8】弾塑性エネルギー吸収体の最大変位量と累積損傷値との相関関係を活用するフローチャートである。
【図9】弾塑性エネルギー吸収体の累積損傷値が所定の値よりも大きい場合に弾塑性エネルギー架構体の数量を変更する様子を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0063】
A…弾塑性エネルギー架構体(耐震要素)
L…上限曲線
1…上下梁
2…左右柱
3…主枠体
4…連結枠材
5…連結枠体
6…弾塑性エネルギー吸収体
7…連結部材
8…斜め枠体
11…劣化シミュレーション装置
12…入力部
13…制御部
14…出力部
15…地震タイプ情報算出部
16…最大変位量算出部
17…相関関係情報DB
18…累積損傷値算出部
20…地震環境情報DB

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物用の規格化された弾塑性エネルギー吸収体の劣化シミュレーション装置であって、
前記建物の建設地の地震環境情報を記憶する地震環境情報記憶手段と、
規格化された弾塑性エネルギー吸収体を有する弾塑性エネルギー架構体を設けた建物について該建物の重量情報及び該弾塑性エネルギー架構体の数量情報を含む建物構造情報と、前記地震環境情報記憶手段に記憶された地震環境情報と、から前記建物の建設地で発生し得るとされる想定地震に対する弾塑性エネルギー吸収体の最大変位量を算出する最大変位量算出手段と、
地震により発生する前記弾塑性エネルギー吸収体の最大変位量と、該地震に起因する前記弾塑性エネルギー吸収体の累積損傷値との相関関係情報を記憶する相関関係情報記憶手段と、
前記最大変位量算出手段により算出された弾塑性エネルギー吸収体の最大変位量と、前記相関関係情報記憶手段に記憶された弾塑性エネルギー吸収体の最大変位量と累積損傷値との相関関係情報と、から前記弾塑性エネルギー吸収体の累積損傷値を算出する累積損傷値算出手段と、
を有することを特徴とする弾塑性エネルギー吸収体の劣化シミュレーション装置。
【請求項2】
建物用の規格化された弾塑性エネルギー吸収体の劣化シミュレーション装置であって、
前記建物の建設地の地震環境情報を記憶する地震環境情報記憶手段と、
規格化された弾塑性エネルギー吸収体を有する弾塑性エネルギー架構体を設けた建物について該建物の重量情報及び該弾塑性エネルギー架構体の数量情報を含む建物構造情報と、前記地震環境情報記憶手段に記憶された地震環境情報と、から前記建物の建設地で発生し得るとされる想定地震に対する弾塑性エネルギー吸収体の最大変位量を算出する最大変位量算出手段と、
前記地震環境情報記憶手段に記憶された地震環境情報から前記想定地震の地震タイプ情報を算出する地震タイプ情報算出手段と、
地震により発生する前記弾塑性エネルギー吸収体の最大変位量と、該地震に起因する前記弾塑性エネルギー吸収体の累積損傷値との相関関係情報を記憶する相関関係情報記憶手段と、
前記地震タイプ算出手段により算出された地震タイプ情報と、前記最大変位量算出手段により算出された弾塑性エネルギー吸収体の最大変位量と、前記相関関係情報記憶手段に記憶された弾塑性エネルギー吸収体の最大変位量と累積損傷値との相関関係情報と、から前記弾塑性エネルギー吸収体の累積損傷値を算出する累積損傷値算出手段と、
を有することを特徴とする弾塑性エネルギー吸収体の劣化シミュレーション装置。
【請求項3】
建物用の規格化された弾塑性エネルギー吸収体の劣化シミュレーション方法であって、
規格化された弾塑性エネルギー吸収体を有する弾塑性エネルギー架構体を設けた建物について該建物の重量情報及び該弾塑性エネルギー架構体の数量情報を含む建物構造情報と、前記建物の建設地の地震環境情報と、から前記建物の建設地で発生し得るとされる想定地震に対する弾塑性エネルギー吸収体の最大変位量を決定し、
前記弾塑性エネルギー吸収体の最大変位量と、予め作成された地震により発生する前記弾塑性エネルギー吸収体の最大変位量と該地震に起因する前記弾塑性エネルギー吸収体の累積損傷値との相関関係情報と、から前記弾塑性エネルギー吸収体の累積損傷値を算出することを特徴とする弾塑性エネルギー吸収体の劣化シミュレーション方法。
【請求項4】
建物用の規格化された弾塑性エネルギー吸収体の劣化シミュレーション方法であって、
規格化された弾塑性エネルギー吸収体を有する弾塑性エネルギー架構体を設けた建物について該建物の重量情報及び該弾塑性エネルギー架構体の数量情報を含む建物構造情報と、前記建物の建設地の地震環境情報と、から前記建物の建設地で発生し得るとされる想定地震に対する弾塑性エネルギー吸収体の最大変位量を算出すると共に、前記地震環境情報から前記想定地震の地震タイプ情報を決定し、
前記地震タイプ情報と、前記弾塑性エネルギー吸収体の最大変位量と、予め作成された地震により発生する前記弾塑性エネルギー吸収体の最大変位量と該地震に起因する前記弾塑性エネルギー吸収体の累積損傷値との相関関係情報と、から前記弾塑性エネルギー吸収体の累積損傷値を算出することを特徴とする弾塑性エネルギー吸収体の劣化シミュレーション方法。
【請求項5】
規格化された弾塑性エネルギー吸収体を有する弾塑性エネルギー架構体を設けた建物の設計方法であって、
建物について、請求項4に記載の弾塑性エネルギー吸収体の劣化シミュレーション方法により前記地震タイプ情報と、前記弾塑性エネルギー吸収体の最大変位量と、予め作成された地震により発生する前記弾塑性エネルギー吸収体の最大変位量と該地震に起因する前記弾塑性エネルギー吸収体の累積損傷値との相関関係情報と、から算出された前記弾塑性エネルギー吸収体の累積損傷値が所定の値よりも大きい場合に、前記弾塑性エネルギー架構体の数量を変更することを特徴とする建物の設計方法。
【請求項6】
前記最大変位量が所定の値よりも大きい場合に、前記弾塑性エネルギー架構体の数量を変更することを特徴とする請求項5に記載の建物の設計方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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