弾性クローラ及びクローラ走行装置
【課題】弾性クローラの曲げ抵抗を小さくしつつ、重量を減らすこと。
【解決手段】無端帯状のゴム体12にクローラ周方向Sに間隔をあけて芯金20を埋設する。この芯金20には、駆動輪100が係合する駆動輪係合部26、及び駆動輪係合部26からクローラ幅方向両外側へ転輪104を構成する一対の輪部104Bの通過スペースをあけて一対の転輪制限突起28が設けられている。この転輪制限突起28は、クローラ内周側に突出しており、輪部104Bのクローラ幅方向の外側への移動を該輪部と当接して制限する。ゴム体12の内周部12Aには、クローラ周方向に隣り合う芯金20間で且つ通過スペースに対応する部位に、クローラ内周側に隆起し、頂面36Aで輪部104Bを支持する一対の転輪支持部36が形成されている。
【解決手段】無端帯状のゴム体12にクローラ周方向Sに間隔をあけて芯金20を埋設する。この芯金20には、駆動輪100が係合する駆動輪係合部26、及び駆動輪係合部26からクローラ幅方向両外側へ転輪104を構成する一対の輪部104Bの通過スペースをあけて一対の転輪制限突起28が設けられている。この転輪制限突起28は、クローラ内周側に突出しており、輪部104Bのクローラ幅方向の外側への移動を該輪部と当接して制限する。ゴム体12の内周部12Aには、クローラ周方向に隣り合う芯金20間で且つ通過スペースに対応する部位に、クローラ内周側に隆起し、頂面36Aで輪部104Bを支持する一対の転輪支持部36が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性クローラ及び、この弾性クローラを用いたクローラ走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農業用機械をはじめ、建設機械や土木作業用機械の走行部に無端状のゴムクローラが使用されている。この種のゴムクローラは、通常、機体側のスプロケット(駆動輪)及びアイドラー(遊動輪)に巻き掛けられて用いられる。これらのスプロケット及びアイドラー、さらにスプロケットとアイドラーとの間に配設される転輪は、走行時(ゴムクローラの循環時)に、ゴムクローラの内周側を転動することから、補強用の芯金が周方向に一定間隔で配設されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のゴムクローラでは、ゴム製の無端状のベルト本体に周方向に一定間隔で芯金が埋設されている。この芯金には、ベルト内周面側に突設する一対の芯金突起が幅方向に形成され、この一対の芯金突起間をスプロケット及びアイドラーが通過し、一対の芯金突起の幅方向両外側を転輪の一対の輪部が通過するようになっている。また、ベルト本体の転輪の輪部が通過する部位は、転輪を介して機体の重量を支持するため、他の部位よりも肉厚となるようにベルト内周面から盛り上がっている。この盛り上がり部分は、周方向に連続して延設され、頂面が偏平状の転輪通過面を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−179328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述のゴムクローラでは、転輪の輪部が転輪通過面上の異物(例えば、小石など)を踏んでも、転輪通過面に不具合が生じない程度に盛り上がり部分を厚くしており、重量が増加する傾向にある。
また、前述のゴムクローラでは、肉厚とされる盛り上がり部分を、周方向に連続させていることから、周方向の曲げ抵抗が大きくなっている。
【0006】
一方、上記ゴムクローラが例えば、傾斜地(水平面に対して傾斜した地面)を走行する場合、ゴムクローラの接地側が傾斜地に沿って傾くため、傾斜地の傾き(勾配)によっては、一方の転輪通過面から一方の輪部が離れることがある。このような状態での傾斜地走行が続いた場合、他方の転輪通過面上を転動する他方の輪部が幅方向外側に移動して一方の輪部が芯金突起を乗り越える虞があるため、突起を高くして輪部が乗り越えられないようにする必要があり、芯金の重量が増加する傾向にある。
【0007】
本発明は、曲げ抵抗を小さくしつつ、重量を減らすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に記載の弾性クローラは、駆動輪及び遊動輪に巻き掛けられる無端帯状の弾性体と、前記駆動輪が係合する駆動輪係合部が設けられ、前記弾性体に該弾性体の周方向に間隔をあけて複数埋設された芯金と、前記芯金に設けられ、前記駆動輪係合部から前記弾性体の幅方向両外側へ前記駆動輪と前記遊動輪との間に配設された転輪を構成する一対の輪部の通過スペースをあけてそれぞれ配置され、前記弾性体の内周側に突出し、前記輪部と当接して前記転輪の前記幅方向の移動を制限する一対の転輪制限突起と、前記弾性体の内周部に形成され、前記周方向に隣り合う前記芯金間で且つ前記輪部の通過スペースに対応する部位に配置され、前記弾性体の内周側に隆起し、頂面で前記輪部を支持する一対の転輪支持部と、を有する。
【0009】
本発明の請求項1に記載の弾性クローラでは、駆動輪が駆動輪係合部に係合した状態で、駆動輪が回転すると、駆動力が芯金を介して弾性体へ伝達されて、この無端帯状の弾性体が駆動輪及び遊動輪の間を循環する。このとき、転輪の輪部は、転輪支持部の頂面から弾性体の周方向(以下、単に「弾性体周方向」と記載する。)に隣り合う転輪支持部の頂面へ順次乗り移りながら、各々の転輪支持部の頂面上を転動する。
【0010】
ここで、上記弾性クローラでは、弾性体の内周側(以下、単に「弾性体内周側」と記載する。)へ隆起する転輪支持部を、弾性体内周部の弾性体周方向に隣り合う芯金間で且つ輪部の通過スペースに対応する部位に形成している(すなわち、転輪支持部を弾性体周方向に断続的に形成している)ことから、例えば、上記のような転輪支持部を弾性体周方向に連続して形成するものと比べて、弾性体の周方向の曲げ抵抗を小さくすることができる。
【0011】
また、上記弾性クローラでは、転輪支持部を弾性体周方向に断続的に形成していることから、例えば、転輪支持部を弾性体周方向に連続して形成するものと比べて、重量を減らすことができる。
【0012】
一方、上記弾性クローラでは、一対の転輪制限突起間に輪部の通過スペースを形成していることから、例えば、一対の転輪制限突起の弾性体の幅方向外側(以下、単に「弾性体幅方向外側」と記載する。)に輪部の通過スペースが形成されるものと比べて、用いられる転輪の一対の輪部間の距離が短く、傾斜地走行時に、一方の転輪支持部の頂面から一方の輪部が浮き上がる(離れる)場合の浮上り量が少なくなる。
これにより、上記弾性クローラで傾斜地を走行する場合に、弾性クローラ(弾性体)の接地側が傾斜地に沿って傾いて一方の転輪支持部の頂面から一方の輪部が浮き上がって(離れて)も、上記のように、一方の転輪支持部の頂面からの一方の輪部の浮上り量が少なくなることから、一方の輪部による一方の転輪制限突起の乗り越えが抑制される。このため、輪部の転輪制限突起の乗り越えを抑制するために、転輪制限突起を必要以上に高くすることに起因する芯金の重量増加を抑制することができる。
【0013】
以上のことから、本発明の請求項1に記載の弾性クローラによれば、周方向の曲げ抵抗を小さくしつつ、重量を減らすことができる。
【0014】
なお、ここで言う「弾性体幅方向外側」とは、駆動輪係合部の弾性体の幅方向(以下、単に「弾性体幅方向」と記載する。)の中央から離れる側を指している。また、駆動輪係合部の上記中央に向う側を「弾性体幅方向内側」と言う。
【0015】
本発明の請求項2に記載の弾性クローラは、請求項1に記載の弾性クローラにおいて、前記周方向に隣り合う前記頂面の縁部間の距離が、前記芯金の前記周方向に沿った長さよりも短くなっている。
【0016】
本発明の請求項2に記載の弾性クローラでは、弾性体周方向に隣り合う頂面の縁部間の距離を芯金の弾性体周方向に沿った長さよりも短くしていることから、例えば、上記頂面間の距離が芯金の弾性体周方向に沿った長さよりも長いものと比べて、転輪が転輪支持部の頂面から弾性体周方向に隣り合う転輪支持部の頂面へ乗り移る際の、転輪の下方(弾性体外周側)への落ち込みが抑制されて、転輪の上下動が抑制される。
【0017】
本発明の請求項3に記載の弾性クローラは、請求項1または請求項2に記載の弾性クローラにおいて、前記駆動輪係合部の前記幅方向両端部にそれぞれ形成され、前記弾性体の内周側に突出し、前記駆動輪と当接して該駆動輪の前記幅方向の移動を制限する駆動輪制限突起を有している。
【0018】
本発明の請求項3に記載の弾性クローラでは、一対の駆動輪制限突起との当接により駆動輪の弾性体幅方向の移動が制限される。
【0019】
本発明の請求項4に記載の弾性クローラは、請求項1〜3のいずれか1項に記載の弾性クローラにおいて、前記駆動輪係合部は、前記駆動輪と接触する部分の形状が前記駆動輪の外周形状に対応した形状とされている。
【0020】
本発明の請求項4に記載の弾性クローラでは、駆動輪係合部の駆動輪と接触する部分の形状を、駆動輪の外周形状に対応した形状としていることから、駆動輪を駆動輪係合部に確実に係合させることができる。
【0021】
本発明の請求項5に記載の弾性クローラは、請求項1〜4のいずれか1項に記載の弾性クローラにおいて、前記弾性体の内周部には、前記転輪支持部の前記幅方向外側に前記弾性体の外周側へ窪む窪み部が形成されている。
【0022】
本発明の請求項5に記載の弾性クローラでは、弾性体の内周部の弾性体幅方向外側に弾性体外周側へ窪む窪み部を形成していることから、窪み部の部位で弾性体の肉厚が薄くなるため、弾性体の弾性体周方向の曲げ抵抗を小さくすることができる。また、窪み部を形成することで弾性体の重量も減らすことができる。
【0023】
本発明の請求項6に記載の弾性クローラは、請求項5に記載の弾性クローラにおいて、前記窪み部は、前記転輪支持部から前記弾性体の前記幅方向の端部へ向かって延びている。
【0024】
本発明の請求項6に記載の弾性クローラでは、窪み部を転輪支持部から弾性体の弾性体幅方向の端部へ向けて延ばすことで、弾性体の弾性体周方向の曲げ抵抗を効果的に小さくすることができる。
【0025】
本発明の請求項7に記載のクローラ走行装置は、機体の駆動軸に連結される駆動輪と、
前記機体に回転自在に取付けられる遊動輪と、前記機体の前記駆動輪と前記遊動輪との間に回転自在に取付けられ、回転軸方向の両端側に一対の輪部を備える転輪と、前記駆動輪及び前記遊動輪に巻き掛けられる請求項1〜6のいずれか1項に記載の弾性クローラと、を有している。
【0026】
本発明の請求項7に記載のクローラ走行装置では、請求項1〜6のいずれか1項に記載の弾性クローラを用いることから、重量を減らすことができ、不整地走行における走行性能を確保することができる。また、上記弾性クローラの周方向の曲げ抵抗が小さいことから、弾性体が駆動輪に巻き掛かる際のパワーロスを低減することができ、機体の燃費を改善できる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明の弾性クローラ及びクローラ走行装置は、曲げ抵抗を小さくしつつ、重量を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態に係るクローラ走行装置及び弾性クローラを側方(クローラ幅方向)から見た側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る弾性クローラの内周部を示す平面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る弾性クローラの内周部を示す斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る弾性クローラの外周部を示す平面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る弾性クローラのクローラ幅方向に沿った断面を示す断面図(図2のX−X線断面図)である。
【図6】(A)本発明の第1実施形態に係る弾性クローラに用いられる芯金の平面図である。(B)図6(A)の芯金を矢印6B方向から見た、芯金の正面図である。
【図7】(A)図6(B)の芯金の7A−7A線断面図である。(B)図6(B)の芯金を矢印7B方向から見た、芯金の側面図である。
【図8】第1実施形態に係るクローラ走行装置の駆動輪が弾性クローラの駆動輪係合部に係合している状態を示す、弾性クローラのクローラ幅方向に沿った断面図(図2のX−X線断面図)である。
【図9】第1実施形態に係るクローラ走行装置の転輪が弾性クローラの転輪支持部の頂面上を転動している状態を示す、弾性クローラのクローラ幅方向に沿った断面図(図2のX−X線断面図)である。
【図10】第1実施形態に係るクローラ走行装置の駆動輪が弾性クローラの駆動輪係合部に係合している状態を示す、弾性クローラのクローラ周方向に沿った断面図(図2のY−Y線断面図)である。
【図11】第1実施形態に係るクローラ走行装置の転輪が弾性クローラの転輪支持面上を転動している状態を示す、弾性クローラのクローラ周方向に沿った断面図(図2の中央線CLに沿った断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る弾性クローラ及びクローラ走行装置について図1〜11を用いて説明する。
【0030】
図1に示すように、第1実施形態に係る弾性クローラの一例としての無端状のゴムクローラ10は、機体としてのクローラ車(例えば、コンバインやトラクターなど)の駆動軸に連結される駆動輪100と、クローラ車に回転自在に取付けられる遊動輪102と、駆動輪100と遊動輪102の間に配設されるようにクローラ車に回転自在に取り付けられる複数の転輪104に巻き掛けられて用いられるものである。
【0031】
本実施形態では、無端状のゴムクローラ10の周方向(図3の矢印S方向)を「クローラ周方向」と記載し、ゴムクローラ10の幅方向(図3の矢印W方向)を「クローラ幅方向」と記載する。なお、クローラ周方向とクローラ幅方向は、ゴムクローラ10を外周側または内周側(図2参照)から見た場合に直交している。
また、本実施形態では、駆動輪100、遊動輪102、及び転輪104に巻き掛けて環状(円環状、楕円環状、多角形環状などを含む)となったゴムクローラ10の内周側(図3の矢印IN方向側)を「クローラ内周側」と記載し、上記ゴムクローラ10の外周側(図3の矢印OUT方向側)を「クローラ外周側」と記載する。なお、図3の矢印IN方向(環状の内側方向)、矢印OUT方向(環状の外側方向)は、巻き掛け状態のゴムクローラ10の内外方向を示している。
【0032】
また、駆動輪100、遊動輪102、転輪104、及びこれらに巻き掛けられたゴムクローラ10によってクローラ車の走行部としての第1実施形態に係るクローラ走行装置90(図1参照)が構成される。
【0033】
図1、図8に示すように、駆動輪100は、クローラ車の駆動軸に連結される円盤状の輪部100Aと、輪部100Aの外周部に円周方向に一定間隔で突設された歯部100Bと、を含んで構成されている。この駆動輪100は、ゴムクローラ10にクローラ車からの駆動力を作用させて(詳細は後述)、ゴムクローラ10を駆動輪100及び遊動輪102の間で循環させるものである。
【0034】
図1に示すように、遊動輪102は、クローラ車に回転自在に取付けられる軸部102Aと、軸部102Aの両端側に設けられ該軸部102Aよりも大径な円盤状の一対の輪部102Bと、を含んで構成されている。また、遊動輪102は、クローラ車側が備える図示しない油圧等の加圧機構によって駆動輪100から離間する方向へ押圧されて、ゴムクローラ10のテンション(張力)を保持するものである。
【0035】
図1、図9に示すように、転輪104は、クローラ車の重量を支持するものであり、クローラ車に回転自在に取付けられる軸部104Aと、軸部104Aの両端側に設けられ該軸部104Aよりも大径な円盤状の一対の輪部104Bと、を含んで構成されている。
【0036】
上記遊動輪102及び転輪104は、駆動輪100及び遊動輪102の間を循環するゴムクローラ10に対して従動回転するようになっている。
【0037】
(弾性クローラ)
図1に示すように、ゴムクローラ10は、ゴム材を無端帯状に形成したゴム体12を有している。なお、本実施形態のゴム体12は、本発明の弾性体の一例である。
また、本実施形態のゴム体12の周方向、幅方向、内周側、外周側は、それぞれクローラ周方向、クローラ幅方向、クローラ内周側、クローラ外周側と一致している。
【0038】
図2に示すように、ゴム体12には、金属材料で形成された芯金20がクローラ周方向に間隔(本実施形態では一定間隔)をあけて複数埋設されている。この芯金20は、クローラ幅方向に延在しており、長手方向がクローラ幅方向となっている。
【0039】
なお、本実施形態では、芯金20の幅方向は、ゴムクローラ10の平坦部分(駆動輪100や遊動輪102に巻き掛けられたりなどして湾曲した部分を除く部分であり、例えば、図1の符号Fで示す部分などを指す)において、クローラ周方向と一致している。このため、以下では、芯金20がゴムクローラ10の平坦部分Fにあるものとして、芯金20の各方向をクローラ周方向、クローラ幅方向、クローラ内周側、クローラ外周側、クローラ内周側、及びクローラ外周側を用いて説明する。
【0040】
また、図2に示すように、芯金20は、後述する駆動輪係合部26のクローラ幅方向の中央を通る中央線(センターラインCL)がゴム体12のクローラ幅方向の中央を通る中央線と一致するように配置されている。
なお、本実施形態では、中央線CLに向う側をクローラ幅方向内側、中央線CLから離れる側をクローラ幅方向外側として説明する。
【0041】
図6(A)、図6(B)に示すように、芯金20は、クローラ幅方向に延びる板状の芯金基体21を有している。この芯金基体21は、クローラ幅方向の中央部22と、この中央部22を挟んでクローラ幅方向両外側の一対の翼部24と、で構成されている。
【0042】
図6(B)に示すように、芯金基体21には、中央部22からクローラ内周側へ突出する駆動輪係合部26が設けられている。この駆動輪係合部26には、駆動輪100の歯部100Bが係合するようになっている(図10参照)。
【0043】
図7(A)に示すように、駆動輪係合部26の頂部26Aは、クローラ内周側へ凸となる円弧形状とされている。この円弧形状は、図10に示すように、駆動輪100の輪部100Aの外周面100Dと歯部100Bの周方向の壁面100Eと連なる湾曲面100Fに対応した形状とされている。
【0044】
また、図6(B)、図7(B)に示すように、芯金基体21には、翼部24からクローラ内周側へ突出する転輪制限突起28が駆動輪係合部26のクローラ幅方向両外側にそれぞれ設けられている。この転輪制限突起28は、駆動輪係合部26からクローラ幅方向外側へ輪部104Bの通過スペースをあけて配置されている。
【0045】
また、図6(B)に示すように、転輪制限突起28は、駆動輪係合部26よりもクローラ内周側へ突出している。転輪制限突起28のクローラ幅方向内側の内壁面28Bは、根元側から突出先端側へ向ってクローラ幅方向内側から外側へ傾斜している。なお、本実施形態では、図6(B)に示すように、内壁面28Bのクローラ幅方向に対する傾斜角(鋭角側)が突起突出方向の根元側よりも突出先端側で小さくなっている。すなわち、内壁面28Bは、突起突出方向の根元側よりも突出先端側で傾斜角が緩やかになっている。
【0046】
図6(B)に示すように、芯金基体21には、翼部24の根元からクローラ内周側へ突出する駆動輪制限突起30が形成されている。この駆動輪制限突起30の先端部30Aは、クローラ周方向から見て、駆動輪係合部26の頂部26Aと転輪制限突起28の先端部28Aとの間に位置している。また、駆動輪係合部26のクローラ幅方向の端部と駆動輪制限突起30のクローラ幅方向内側の内壁部とは、つながっている。
【0047】
また、図6(B)に示すように、芯金基体21には、翼部24からクローラ内周側へ突出し、転輪制限突起28と駆動輪制限突起30とを連結するクローラ幅方向に沿って延びる補強リブ32が形成されている。この補強リブ32は、図6(A)に示すように、芯金基体21のクローラ周方向の中央部分に配置されている。また、補強リブ32の最内面32Aは、図6(B)に示すように、クローラ周方向から見て駆動輪係合部26の頂部26Aよりもクローラ外周側(図6(B)では、下側)に位置している。上記補強リブ32により、転輪制限突起28のクローラ周方向及びクローラ幅方向の曲げ剛性が補強される。
【0048】
図8に示すように、駆動輪100は、一対の駆動輪制限突起30間を通過し、図9に示すように、転輪104の輪部104Bは、芯金基体21の駆動輪制限突起30と転輪制限突起28との間を通過するようになっている。また、図1に示すように、本実施形態では、遊動輪102の輪部102Bも転輪104の輪部104Bと同様に、駆動輪制限突起30と転輪制限突起28との間を通過するようになっている。
【0049】
図5に示すように、本実施形態では、芯金20の芯金基体21を含むクローラ外周側部分がゴム体12に埋設されている。また、本実施形態では、ゴム体12の内周部12Aから突出する駆動輪係合部26、一対の転輪制限突起28、及び一対の駆動輪制限突起30をそれぞれゴム材により被覆している。なお、本発明のその他の実施形態では、駆動輪係合部26の少なくとも一部、転輪制限突起28の少なくとも一部、駆動輪制限突起30の少なくとも一部を、ゴム材から露出させてもよい。
【0050】
図2、図3、図11に示すように、ゴム体12の内周部12Aには、クローラ周方向に互いに隣り合う芯金20間でかつ輪部104Bの通過スペースに対応する部位にクローラ内周側に隆起した転輪支持部36が形成されている。この転輪支持部36の頂面36Aは、図5に示すクローラ幅方向に沿った断面において、芯金20の補強リブ32の最内面32Aよりもクローラ内周側に位置している。
【0051】
図9、図11に示すように、転輪支持部36の頂面36Aは、転輪104の外周面104Cと接触して該転輪104を支持するものであり、図3及び図5に示すように平坦状とされている。
【0052】
また、図2に示すように、クローラ周方向に隣り合う頂面36Aの縁部36B間の距離L1は、芯金20の輪部104Bの通過スペースに対応する部位(本実施形態では、翼部24)のクローラ周方向に沿った長さL2よりも短くなっている。
【0053】
さらに、頂面36Aの幅(クローラ幅方向に沿った長さ)は、縁部36B側よりもクローラ周方向の中央部側で広くなっている。とくに、本実施形態では、頂面36Aの幅は、縁部36Bからクローラ周方向の中央部に向って次第に広くなっている。
【0054】
なお、本実施形態では、遊動輪102の輪部102Bも転輪支持部36の頂面36A上を転動するようになっている。
【0055】
図2、図3、図5に示すように、ゴム体12の内周部12Aには、一対の転輪支持部36を挟んでクローラ幅方向両外側にクローラ外周側へ窪む窪み部38が形成されている。この窪み部38は、転輪支持部36からゴム体12のクローラ幅方向の端部12Bへ向かって延びている。具体的には、図2に示すように、窪み部38のクローラ幅方向外側の端部38Aが、翼部24の先端部よりもゴム体12の端部12B側へ延びている。なお、本発明のその他の実施形態では、窪み部38の端部38Aが翼部24の先端部よりもクローラ幅方向内側に位置してもよく、端部38Aがゴム体12の端部12Bまで到達してもよい。また、本実施形態の窪み部38は、端部38A側が転輪支持部36側よりも浅くなっている。
【0056】
図5に示すように、ゴム体12には、芯金20のクローラ外周側にクローラ周方向に沿って延びる無端帯状の補強層14が埋設されている。この補強層14は、クローラ周方向に沿って螺旋状に巻回された1本の補強コード又はクローラ周方向に沿って並列された複数本の補強コードをゴム被覆して形成したものである。なお、本実施形態においては、引張り強度に優れるスチールコードを補強コードとして用いるが、本発明はこの構成に限定されず、十分な引張り強度を有していれば、例えば、有機繊維などで構成したコードを補強コードとして用いてもよい。
【0057】
図1、図4に示すように、ゴム体12の外周部には、クローラ外周側に突出するゴム材により構成されたラグ16A、ラグ16Bがクローラ周方向に間隔をあけて交互に形成されている。なお、これらのラグ16A、16Bは、ゴムクローラ10の地面に接地する部位である。
【0058】
図4に示すように、ラグ16Aは、ゴム体12の一方の端部12B(図4では左側端部)から他方の端部12B(図4では右側端部)へ向かってクローラ幅方向に延びて、先端部が他方の端部12Bと中央線CLとの中間部分に達している。
一方、ラグ16Bは、ゴム体12の他方の端部12Bから一方の端部12Bへ向かってクローラ幅方向に延びて、先端部が一方の端部12Bと中央線CLとの中間部分に達している。
なお、本実施形態では、ラグ16Aとラグ16Bとが中央線CL上の任意の点に対して点対称とされている。
【0059】
また、図4に示すように、ラグ16A、ラグ16Bはともに、クローラ外周側から見て、クローラ周方向に間隔をあけて配置された芯金20に交互に重なっている。
【0060】
次に、本実施形態のゴムクローラ10及びクローラ走行装置90の作用効果について説明する。
クローラ走行装置90では、駆動輪100の歯部100Bがゴムクローラ10の駆動輪係合部26に係合した状態(詳細には、歯部100Bの壁面100Eが駆動輪係合部26の周方向壁面にゴム材を介して当接した状態)で、駆動輪100が回転すると、駆動輪係合部26が歯部100Bにより押圧されて、駆動力が芯金20を介してゴムクローラ10(ゴム体12)へ伝達される。これにより、ゴムクローラ10が駆動輪100及び遊動輪102の間を循環して、クローラ走行装置90を備えるクローラ車が地面の上を移動する。このとき、転輪104の輪部104Bは、転輪支持部36の頂面36Aからクローラ周方向に隣り合う転輪支持部36の頂面36Aへ順次乗り移りながら、各々の転輪支持部36の頂面36A上を転動する。
【0061】
ここで、ゴムクローラ10では、クローラ内周側へ隆起する転輪支持部36を、ゴム体12の内周部12Aのクローラ周方向に隣り合う芯金20間で且つ輪部104Bの通過スペースに対応する部位に形成している(すなわち、転輪支持部36をゴム体12の内周部12Aにクローラ周方向に断続的に形成している)ことから、例えば、上記のような転輪支持部36をクローラ周方向に連続して形成するものと比べて、ゴム体12のクローラ周方向の曲げ抵抗を小さくすることができる。すなわち、ゴムクローラ10のクローラ周方向の曲げ抵抗を小さくすることができる。
【0062】
また、ゴムクローラ10では、転輪支持部36をクローラ周方向に断続的に形成していることから、例えば、転輪支持部36をクローラ周方向に連続して形成するものと比べて、重量を減らすことができる。
【0063】
さらに、ゴムクローラ10では、輪部104Bと転輪制限突起28の内壁面28Bとの当接により転輪104のクローラ幅方向の移動が制限される。またさらに、駆動輪100と一対の駆動輪制限突起30との当接により駆動輪100のクローラ幅方向の移動が制限される。
【0064】
一方、ゴムクローラ10では、一対の転輪制限突起28間に輪部104Bの通過スペースを形成していることから、例えば、一対の転輪制限突起28のクローラ幅方向外側に輪部104Bの通過スペースが形成されるものと比べて、用いられる転輪104の一対の輪部104B間の距離が短く、傾斜地走行時に、一方の転輪支持部36の頂面36Aから一方の輪部104Bが浮き上がる(離れる)場合の浮上り量が少なくなる。
これにより、ゴムクローラ10で傾斜地を走行する場合に、ゴムクローラ10(ゴム体12)の接地側が傾斜地に沿って傾いて一方の転輪支持部36の頂面36Aから一方の輪部104Bが浮き上がって(離れて)も、上記のように、一方の転輪支持部36の頂面36Aからの一方の輪部104Bの浮上り量が少なくなることから、一方の輪部104Bによる一方の転輪制限突起28の乗り越えが抑制される。このため、輪部104Bの転輪制限突起28の乗り越えを抑制するために、転輪制限突起28を必要以上に高くすることに起因する芯金20の重量増加を抑制することができる。
【0065】
以上のことから、ゴムクローラ10は、クローラ周方向の曲げ抵抗を小さくしつつ、重量を減らすことができる。
【0066】
また、ゴムクローラ10では、図5に示すクローラ幅方向に沿った断面において、転輪支持部36の頂面36Aを、芯金20の補強リブ32の最内面32Aよりもクローラ内周側に位置させていることから、輪部104Bが転輪支持部36の頂面36Aからクローラ周方向に隣り合う転輪支持部36の頂面36Aへ順次乗り移る際に補強リブ32の最内面32Aに衝突した場合の衝突音及び振動を抑制することができる。なお、輪部104Bの外周面104Cが最内面32Aに非衝突の場合には、衝突音及び衝突に起因する振動は生じない。そして、上記のように、輪部104Bと補強リブ32との衝突を抑制または回避することで、繰り返し衝突に起因する芯金20(芯金基体21)とその周辺のゴム材との剥離を抑制することができる。なお、遊動輪102についても転輪104と同様に、輪部102Bが転輪支持部36の頂面36Aからクローラ周方向に隣り合う転輪支持部36の頂面36Aへ順次乗り移る際に補強リブ32の最内面32Aに衝突した場合の衝突音及び振動を抑制することができる。
【0067】
さらに、図2、図11に示すように、ゴムクローラ10では、クローラ周方向に隣り合う頂面36Aの縁部36B間の距離L1を、芯金20の輪部104Bの通過スペースに対応する部位(本実施形態では、翼部24)の長さL2よりも短くしていることから、例えば、距離L1が長さL2よりも長いものと比べて、転輪104が転輪支持部36の頂面36Aからクローラ周方向に隣り合う転輪支持部36の頂面36Aへ乗り移る際の、転輪104の下方(クローラ外周側)への落ち込み(図11参照)が抑制されて、転輪104の上下動が抑制される。
【0068】
またさらに、ゴムクローラ10では、転輪支持部36の頂面36Aを平坦状としていることから、例えば、頂面36Aの縁部36Bがクローラ周方向の中央部よりもクローラ内周側に盛り上がっているものと比べて、転輪104が転輪支持部36の頂面36Aからクローラ周方向に隣り合う転輪支持部36の頂面36Aへ乗り移る際の、転輪104と縁部36Bとの衝突による該縁部36Bの材料欠け(ゴム欠け)を抑制させられる。これにより、転輪支持部36の耐久性、すなわち、ゴムクローラ10の耐久性が向上する。
【0069】
そして、ゴムクローラ10では、ゴム体12の内周部12Aの一対の転輪支持部36を挟んでクローラ幅方向両外側にクローラ外周側へ窪む窪み部38をそれぞれ形成していることから、窪み部38の部位でゴム体12の肉厚が薄くなり、ゴム体12のクローラ周方向の曲げ抵抗を小さくすることができる。加えて、窪み部38の形成によってゴム体12の重量も減らすことができる。
【0070】
さらに、本実施形態では、窪み部38を転輪支持部36からゴム体12のクローラ幅方向の端部12Bへ向けて延ばしていることから、例えば、窪み部38をクローラ周方向に延ばしたものと比べて、ゴム体12のクローラ周方向の曲げ抵抗を効果的に小さくすることができる。
【0071】
特に、ゴムクローラ10では、クローラ周方向の曲げの中立面となる補強層14よりもクローラ内周側で圧縮歪が生じ、クローラ外側方向で引張歪が生じるため、ゴム体12の内周部12Aに窪み部38を形成して圧縮歪を緩和することで、効果的にクローラ周方向の曲げ剛性(曲げ抵抗)を小さくすることができる。
【0072】
また、ゴムクローラ10では、駆動輪係合部26の駆動輪100と接触する部分(頂部26A)の形状を、駆動輪100の外周形状(湾曲面100Fの形状)に対応した形状としていることから、歯部100Bと駆動輪係合部26との間の歯飛びが防止される、つまり、駆動輪100を駆動輪係合部26に確実に係合させることができる。
【0073】
また、ゴムクローラ10では、転輪104が内周部12Aから隆起した肉厚な転輪支持部36の頂面36A上を転動するため、転輪支持部36と頂面36Aと輪部104Bの外周面104Cとの間に入り込んだ異物(例えば、小石など)を輪部104Bで踏んだとしても、転輪支持部36が弾性変形して、頂面36Aの不具合(損傷など)が抑制される。
特に、ゴムクローラ10では、転輪支持部36がゴム体12のクローラ周方向に隣り合う芯金20間に形成されることから、例えば、転輪支持部をクローラ周方向に連続して形成したもののように、芯金20に対応する転輪支持部の頂面の不具合を抑制するために芯金20から転輪支持部の頂面までのゴム厚を十分に厚くする必要がないため、転輪支持部36の肉厚(隆起量)を薄く(小さく)することができる。これにより、さらに、ゴム体12のクローラ周方向の曲げ抵抗を小さくしつつ、重量を減らすことが可能となる。
【0074】
そして、ゴムクローラ10では、クローラ外周側から見て、クローラ周方向に間隔をあけて配置された芯金20にラグ16Aとラグ16Bが交互に重なる構成としている、すなわち、ラグ16Aとラグ16Bとの間に転輪支持部36が配置される構成としていることから、例えば、クローラ周方向に間隔をあけて配置された転輪支持部36にラグ16A、16Bとが交互に重なるものと比べて、転輪支持部36が下方(クローラ外周側)へ弾性変形しやすく、転輪支持部36の頂面36Aと輪部104Bの外周面104Cとの間に入り込んだ異物を輪部104Bが踏んだとしても、頂面36Aに不具合が生じるのをさらに抑制することができる。
【0075】
また、例えば、クローラ外周側から見て、隣り合う芯金20間(ここでは、転輪支持部36)にラグ16Aまたはラグ16Bが配置されるゴムクローラの場合には、接地面上の障害物(例えば、石など)を、ラグ16A、16Bのない部分である芯金20の下側(クローラ外周側)のゴム部分で踏んだ場合に、この下側のゴム部分は、芯金20によって拘束されるため十分な逃げ変形(クローラ内周側へ凹むような弾性変形)ができず、障害物の食い込みによる損傷を受け易い傾向にある。特に、上記ゴムクローラでは、芯金20の配置されている部分が非配置部分よりも転輪104などから下方への荷重(機体重量)を大きく受けるため、芯金20の下側のゴム部分に食い込んだ障害物が補強層14に到達する虞がある。
上記事実を考慮して、本実施形態のゴムクローラ10では、クローラ外周側から見て、クローラ周方向に間隔をあけて配置された芯金20にラグ16Aとラグ16Bとが交互に重なる構成としている。この構成により、芯金20の下側のゴム部分の厚みが、ラグ16Aまたはラグ16Bによって大幅に増すため、障害物をラグ16Aまたはラグ16Bで踏んだとしても、障害物が補強層14に到達することがない、すなわち、補強層14の損傷を効果的に防止することができる。一方、本実施形態のゴムクローラ10では、ラグ16A、16Bのない部分、すなわち、転輪支持部36の下側のゴム部分で障害物を踏んだ場合、この下側のゴム部分はクローラ内周側へ凹むような逃げ変形(弾性変形)をするため、障害物が食い込みにくく、該障害物による損傷をある程度防止することができる。
【0076】
本実施形態のクローラ走行装置90では、上述のようなゴムクローラ10を用いることから、重量を減らすことができる。これにより、圃場や湿田などの不整地を走行する際の、ゴムクローラ10の過度の沈み込みを抑えられるため、走行速度や旋回性能などの走行性能を確保することができる。
また、ゴムクローラ10は、上述したように曲げ抵抗が小さいことから、ゴム体12が駆動輪100などに巻き掛かる際のパワーロスを低減することができ、クローラ車の燃費を改善できる。加えて、ゴムクローラ10を、駆動輪100及び遊動輪102に巻き掛ける際の作業が容易になる。
【0077】
(その他の実施形態)
前述した実施形態では、転輪支持部36の頂面36Aを平坦状としているが、本発明はこの構成に限定されず、頂面36Aは、縁部36Bがクローラ周方向の中央部よりもクローラ内周側に盛り上がっている形状(例えば、テーパー形状)としてもよい。この場合には、例えば、頂面が平坦状のものと比べて、転輪支持部36の頂面36Aと遊動輪102との接触面積が増えて、頂面36Aに作用する面圧が低下する。これにより、転輪支持部36の摩耗が低減され、該転輪支持部36の耐久性、すなわち、ゴムクローラ10の耐久性が向上する。
【0078】
前述した実施形態のゴムクローラ10では、クローラ外周側から見て、クローラ周方向に間隔をあけて配置された芯金20にラグ16Aとラグ16Bとが交互に重なる構成としているが、本発明はこの構成に限定されず、クローラ外周側から見て、隣り合う芯金20間にラグ16Aまたはラグ16Bを配置する構成としても勿論構わない。このように構成することにより、ゴムクローラの上下方向のバネがクローラ周方向で均一となるため、転輪104などの上下動(振動)が抑制され、かつ安定性も向上する。なお、クローラ外周側から見た場合の、芯金20に対するラグ16Aとラグ16Bの位置関係は、ゴムクローラの仕様に応じて決定されるものである。
【0079】
前述した実施形態では、ゴム体12の中央線と芯金20の中央線CLとを一致させる構成としているが、本発明はこの構成に限定されず、ゴム体12の中央線に対して芯金20の中央線CLがクローラ幅方向にずれていてもよい。
【0080】
また、前述した実施形態では、ゴムクローラ10の引張応力の補強用に補強層14を埋設しているが、本発明はこの構成に限定されず、補強層14を用いずに、クローラ周方向に互いに隣接する芯金20同士を連結部材(例えば、リング状の連結部材など)で連結、又は、芯金に形成した連結部同士(例えば、フックとピンなど)を連結して無端状とした芯金連結体でゴムクローラ10の引張応力を補強する構成としてもよい。
【0081】
さらに、前述した実施形態では、弾性体の一例としてのゴム材でゴム体12を形成しているが、本発明はこの構成に限定されず、弾性体の一例としてゴム材以外のエラストマーなどを用いてもよい。
【0082】
またさらに、前述した実施形態では、芯金20を金属製としているが、本発明はこの構成に限定されず、ゴムクローラ10の仕様に対して十分な強度を備えるならば、芯金20を例えば、樹脂製としてもよい。
【0083】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0084】
10 ゴムクローラ(弾性クローラ)
12 ゴム体(弾性体)
12A 内周部
12B 端部
20 芯金
26 駆動輪係合部
28 転輪制限突起
30 駆動輪制限突起
36 転輪支持部
36A 頂面
36B 縁部
38 窪み部
90 クローラ走行装置
100 駆動輪
104 転輪
104B 輪部
CL 中央線
S クローラ周方向(弾性体の周方向)
W クローラ幅方向(弾性体の幅方向)
IN クローラ内周側(弾性体の内周側)
OUT クローラ外周側(弾性体の外周側)
L1 距離
L2 長さ1
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性クローラ及び、この弾性クローラを用いたクローラ走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農業用機械をはじめ、建設機械や土木作業用機械の走行部に無端状のゴムクローラが使用されている。この種のゴムクローラは、通常、機体側のスプロケット(駆動輪)及びアイドラー(遊動輪)に巻き掛けられて用いられる。これらのスプロケット及びアイドラー、さらにスプロケットとアイドラーとの間に配設される転輪は、走行時(ゴムクローラの循環時)に、ゴムクローラの内周側を転動することから、補強用の芯金が周方向に一定間隔で配設されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のゴムクローラでは、ゴム製の無端状のベルト本体に周方向に一定間隔で芯金が埋設されている。この芯金には、ベルト内周面側に突設する一対の芯金突起が幅方向に形成され、この一対の芯金突起間をスプロケット及びアイドラーが通過し、一対の芯金突起の幅方向両外側を転輪の一対の輪部が通過するようになっている。また、ベルト本体の転輪の輪部が通過する部位は、転輪を介して機体の重量を支持するため、他の部位よりも肉厚となるようにベルト内周面から盛り上がっている。この盛り上がり部分は、周方向に連続して延設され、頂面が偏平状の転輪通過面を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−179328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述のゴムクローラでは、転輪の輪部が転輪通過面上の異物(例えば、小石など)を踏んでも、転輪通過面に不具合が生じない程度に盛り上がり部分を厚くしており、重量が増加する傾向にある。
また、前述のゴムクローラでは、肉厚とされる盛り上がり部分を、周方向に連続させていることから、周方向の曲げ抵抗が大きくなっている。
【0006】
一方、上記ゴムクローラが例えば、傾斜地(水平面に対して傾斜した地面)を走行する場合、ゴムクローラの接地側が傾斜地に沿って傾くため、傾斜地の傾き(勾配)によっては、一方の転輪通過面から一方の輪部が離れることがある。このような状態での傾斜地走行が続いた場合、他方の転輪通過面上を転動する他方の輪部が幅方向外側に移動して一方の輪部が芯金突起を乗り越える虞があるため、突起を高くして輪部が乗り越えられないようにする必要があり、芯金の重量が増加する傾向にある。
【0007】
本発明は、曲げ抵抗を小さくしつつ、重量を減らすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に記載の弾性クローラは、駆動輪及び遊動輪に巻き掛けられる無端帯状の弾性体と、前記駆動輪が係合する駆動輪係合部が設けられ、前記弾性体に該弾性体の周方向に間隔をあけて複数埋設された芯金と、前記芯金に設けられ、前記駆動輪係合部から前記弾性体の幅方向両外側へ前記駆動輪と前記遊動輪との間に配設された転輪を構成する一対の輪部の通過スペースをあけてそれぞれ配置され、前記弾性体の内周側に突出し、前記輪部と当接して前記転輪の前記幅方向の移動を制限する一対の転輪制限突起と、前記弾性体の内周部に形成され、前記周方向に隣り合う前記芯金間で且つ前記輪部の通過スペースに対応する部位に配置され、前記弾性体の内周側に隆起し、頂面で前記輪部を支持する一対の転輪支持部と、を有する。
【0009】
本発明の請求項1に記載の弾性クローラでは、駆動輪が駆動輪係合部に係合した状態で、駆動輪が回転すると、駆動力が芯金を介して弾性体へ伝達されて、この無端帯状の弾性体が駆動輪及び遊動輪の間を循環する。このとき、転輪の輪部は、転輪支持部の頂面から弾性体の周方向(以下、単に「弾性体周方向」と記載する。)に隣り合う転輪支持部の頂面へ順次乗り移りながら、各々の転輪支持部の頂面上を転動する。
【0010】
ここで、上記弾性クローラでは、弾性体の内周側(以下、単に「弾性体内周側」と記載する。)へ隆起する転輪支持部を、弾性体内周部の弾性体周方向に隣り合う芯金間で且つ輪部の通過スペースに対応する部位に形成している(すなわち、転輪支持部を弾性体周方向に断続的に形成している)ことから、例えば、上記のような転輪支持部を弾性体周方向に連続して形成するものと比べて、弾性体の周方向の曲げ抵抗を小さくすることができる。
【0011】
また、上記弾性クローラでは、転輪支持部を弾性体周方向に断続的に形成していることから、例えば、転輪支持部を弾性体周方向に連続して形成するものと比べて、重量を減らすことができる。
【0012】
一方、上記弾性クローラでは、一対の転輪制限突起間に輪部の通過スペースを形成していることから、例えば、一対の転輪制限突起の弾性体の幅方向外側(以下、単に「弾性体幅方向外側」と記載する。)に輪部の通過スペースが形成されるものと比べて、用いられる転輪の一対の輪部間の距離が短く、傾斜地走行時に、一方の転輪支持部の頂面から一方の輪部が浮き上がる(離れる)場合の浮上り量が少なくなる。
これにより、上記弾性クローラで傾斜地を走行する場合に、弾性クローラ(弾性体)の接地側が傾斜地に沿って傾いて一方の転輪支持部の頂面から一方の輪部が浮き上がって(離れて)も、上記のように、一方の転輪支持部の頂面からの一方の輪部の浮上り量が少なくなることから、一方の輪部による一方の転輪制限突起の乗り越えが抑制される。このため、輪部の転輪制限突起の乗り越えを抑制するために、転輪制限突起を必要以上に高くすることに起因する芯金の重量増加を抑制することができる。
【0013】
以上のことから、本発明の請求項1に記載の弾性クローラによれば、周方向の曲げ抵抗を小さくしつつ、重量を減らすことができる。
【0014】
なお、ここで言う「弾性体幅方向外側」とは、駆動輪係合部の弾性体の幅方向(以下、単に「弾性体幅方向」と記載する。)の中央から離れる側を指している。また、駆動輪係合部の上記中央に向う側を「弾性体幅方向内側」と言う。
【0015】
本発明の請求項2に記載の弾性クローラは、請求項1に記載の弾性クローラにおいて、前記周方向に隣り合う前記頂面の縁部間の距離が、前記芯金の前記周方向に沿った長さよりも短くなっている。
【0016】
本発明の請求項2に記載の弾性クローラでは、弾性体周方向に隣り合う頂面の縁部間の距離を芯金の弾性体周方向に沿った長さよりも短くしていることから、例えば、上記頂面間の距離が芯金の弾性体周方向に沿った長さよりも長いものと比べて、転輪が転輪支持部の頂面から弾性体周方向に隣り合う転輪支持部の頂面へ乗り移る際の、転輪の下方(弾性体外周側)への落ち込みが抑制されて、転輪の上下動が抑制される。
【0017】
本発明の請求項3に記載の弾性クローラは、請求項1または請求項2に記載の弾性クローラにおいて、前記駆動輪係合部の前記幅方向両端部にそれぞれ形成され、前記弾性体の内周側に突出し、前記駆動輪と当接して該駆動輪の前記幅方向の移動を制限する駆動輪制限突起を有している。
【0018】
本発明の請求項3に記載の弾性クローラでは、一対の駆動輪制限突起との当接により駆動輪の弾性体幅方向の移動が制限される。
【0019】
本発明の請求項4に記載の弾性クローラは、請求項1〜3のいずれか1項に記載の弾性クローラにおいて、前記駆動輪係合部は、前記駆動輪と接触する部分の形状が前記駆動輪の外周形状に対応した形状とされている。
【0020】
本発明の請求項4に記載の弾性クローラでは、駆動輪係合部の駆動輪と接触する部分の形状を、駆動輪の外周形状に対応した形状としていることから、駆動輪を駆動輪係合部に確実に係合させることができる。
【0021】
本発明の請求項5に記載の弾性クローラは、請求項1〜4のいずれか1項に記載の弾性クローラにおいて、前記弾性体の内周部には、前記転輪支持部の前記幅方向外側に前記弾性体の外周側へ窪む窪み部が形成されている。
【0022】
本発明の請求項5に記載の弾性クローラでは、弾性体の内周部の弾性体幅方向外側に弾性体外周側へ窪む窪み部を形成していることから、窪み部の部位で弾性体の肉厚が薄くなるため、弾性体の弾性体周方向の曲げ抵抗を小さくすることができる。また、窪み部を形成することで弾性体の重量も減らすことができる。
【0023】
本発明の請求項6に記載の弾性クローラは、請求項5に記載の弾性クローラにおいて、前記窪み部は、前記転輪支持部から前記弾性体の前記幅方向の端部へ向かって延びている。
【0024】
本発明の請求項6に記載の弾性クローラでは、窪み部を転輪支持部から弾性体の弾性体幅方向の端部へ向けて延ばすことで、弾性体の弾性体周方向の曲げ抵抗を効果的に小さくすることができる。
【0025】
本発明の請求項7に記載のクローラ走行装置は、機体の駆動軸に連結される駆動輪と、
前記機体に回転自在に取付けられる遊動輪と、前記機体の前記駆動輪と前記遊動輪との間に回転自在に取付けられ、回転軸方向の両端側に一対の輪部を備える転輪と、前記駆動輪及び前記遊動輪に巻き掛けられる請求項1〜6のいずれか1項に記載の弾性クローラと、を有している。
【0026】
本発明の請求項7に記載のクローラ走行装置では、請求項1〜6のいずれか1項に記載の弾性クローラを用いることから、重量を減らすことができ、不整地走行における走行性能を確保することができる。また、上記弾性クローラの周方向の曲げ抵抗が小さいことから、弾性体が駆動輪に巻き掛かる際のパワーロスを低減することができ、機体の燃費を改善できる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明の弾性クローラ及びクローラ走行装置は、曲げ抵抗を小さくしつつ、重量を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態に係るクローラ走行装置及び弾性クローラを側方(クローラ幅方向)から見た側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る弾性クローラの内周部を示す平面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る弾性クローラの内周部を示す斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る弾性クローラの外周部を示す平面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る弾性クローラのクローラ幅方向に沿った断面を示す断面図(図2のX−X線断面図)である。
【図6】(A)本発明の第1実施形態に係る弾性クローラに用いられる芯金の平面図である。(B)図6(A)の芯金を矢印6B方向から見た、芯金の正面図である。
【図7】(A)図6(B)の芯金の7A−7A線断面図である。(B)図6(B)の芯金を矢印7B方向から見た、芯金の側面図である。
【図8】第1実施形態に係るクローラ走行装置の駆動輪が弾性クローラの駆動輪係合部に係合している状態を示す、弾性クローラのクローラ幅方向に沿った断面図(図2のX−X線断面図)である。
【図9】第1実施形態に係るクローラ走行装置の転輪が弾性クローラの転輪支持部の頂面上を転動している状態を示す、弾性クローラのクローラ幅方向に沿った断面図(図2のX−X線断面図)である。
【図10】第1実施形態に係るクローラ走行装置の駆動輪が弾性クローラの駆動輪係合部に係合している状態を示す、弾性クローラのクローラ周方向に沿った断面図(図2のY−Y線断面図)である。
【図11】第1実施形態に係るクローラ走行装置の転輪が弾性クローラの転輪支持面上を転動している状態を示す、弾性クローラのクローラ周方向に沿った断面図(図2の中央線CLに沿った断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る弾性クローラ及びクローラ走行装置について図1〜11を用いて説明する。
【0030】
図1に示すように、第1実施形態に係る弾性クローラの一例としての無端状のゴムクローラ10は、機体としてのクローラ車(例えば、コンバインやトラクターなど)の駆動軸に連結される駆動輪100と、クローラ車に回転自在に取付けられる遊動輪102と、駆動輪100と遊動輪102の間に配設されるようにクローラ車に回転自在に取り付けられる複数の転輪104に巻き掛けられて用いられるものである。
【0031】
本実施形態では、無端状のゴムクローラ10の周方向(図3の矢印S方向)を「クローラ周方向」と記載し、ゴムクローラ10の幅方向(図3の矢印W方向)を「クローラ幅方向」と記載する。なお、クローラ周方向とクローラ幅方向は、ゴムクローラ10を外周側または内周側(図2参照)から見た場合に直交している。
また、本実施形態では、駆動輪100、遊動輪102、及び転輪104に巻き掛けて環状(円環状、楕円環状、多角形環状などを含む)となったゴムクローラ10の内周側(図3の矢印IN方向側)を「クローラ内周側」と記載し、上記ゴムクローラ10の外周側(図3の矢印OUT方向側)を「クローラ外周側」と記載する。なお、図3の矢印IN方向(環状の内側方向)、矢印OUT方向(環状の外側方向)は、巻き掛け状態のゴムクローラ10の内外方向を示している。
【0032】
また、駆動輪100、遊動輪102、転輪104、及びこれらに巻き掛けられたゴムクローラ10によってクローラ車の走行部としての第1実施形態に係るクローラ走行装置90(図1参照)が構成される。
【0033】
図1、図8に示すように、駆動輪100は、クローラ車の駆動軸に連結される円盤状の輪部100Aと、輪部100Aの外周部に円周方向に一定間隔で突設された歯部100Bと、を含んで構成されている。この駆動輪100は、ゴムクローラ10にクローラ車からの駆動力を作用させて(詳細は後述)、ゴムクローラ10を駆動輪100及び遊動輪102の間で循環させるものである。
【0034】
図1に示すように、遊動輪102は、クローラ車に回転自在に取付けられる軸部102Aと、軸部102Aの両端側に設けられ該軸部102Aよりも大径な円盤状の一対の輪部102Bと、を含んで構成されている。また、遊動輪102は、クローラ車側が備える図示しない油圧等の加圧機構によって駆動輪100から離間する方向へ押圧されて、ゴムクローラ10のテンション(張力)を保持するものである。
【0035】
図1、図9に示すように、転輪104は、クローラ車の重量を支持するものであり、クローラ車に回転自在に取付けられる軸部104Aと、軸部104Aの両端側に設けられ該軸部104Aよりも大径な円盤状の一対の輪部104Bと、を含んで構成されている。
【0036】
上記遊動輪102及び転輪104は、駆動輪100及び遊動輪102の間を循環するゴムクローラ10に対して従動回転するようになっている。
【0037】
(弾性クローラ)
図1に示すように、ゴムクローラ10は、ゴム材を無端帯状に形成したゴム体12を有している。なお、本実施形態のゴム体12は、本発明の弾性体の一例である。
また、本実施形態のゴム体12の周方向、幅方向、内周側、外周側は、それぞれクローラ周方向、クローラ幅方向、クローラ内周側、クローラ外周側と一致している。
【0038】
図2に示すように、ゴム体12には、金属材料で形成された芯金20がクローラ周方向に間隔(本実施形態では一定間隔)をあけて複数埋設されている。この芯金20は、クローラ幅方向に延在しており、長手方向がクローラ幅方向となっている。
【0039】
なお、本実施形態では、芯金20の幅方向は、ゴムクローラ10の平坦部分(駆動輪100や遊動輪102に巻き掛けられたりなどして湾曲した部分を除く部分であり、例えば、図1の符号Fで示す部分などを指す)において、クローラ周方向と一致している。このため、以下では、芯金20がゴムクローラ10の平坦部分Fにあるものとして、芯金20の各方向をクローラ周方向、クローラ幅方向、クローラ内周側、クローラ外周側、クローラ内周側、及びクローラ外周側を用いて説明する。
【0040】
また、図2に示すように、芯金20は、後述する駆動輪係合部26のクローラ幅方向の中央を通る中央線(センターラインCL)がゴム体12のクローラ幅方向の中央を通る中央線と一致するように配置されている。
なお、本実施形態では、中央線CLに向う側をクローラ幅方向内側、中央線CLから離れる側をクローラ幅方向外側として説明する。
【0041】
図6(A)、図6(B)に示すように、芯金20は、クローラ幅方向に延びる板状の芯金基体21を有している。この芯金基体21は、クローラ幅方向の中央部22と、この中央部22を挟んでクローラ幅方向両外側の一対の翼部24と、で構成されている。
【0042】
図6(B)に示すように、芯金基体21には、中央部22からクローラ内周側へ突出する駆動輪係合部26が設けられている。この駆動輪係合部26には、駆動輪100の歯部100Bが係合するようになっている(図10参照)。
【0043】
図7(A)に示すように、駆動輪係合部26の頂部26Aは、クローラ内周側へ凸となる円弧形状とされている。この円弧形状は、図10に示すように、駆動輪100の輪部100Aの外周面100Dと歯部100Bの周方向の壁面100Eと連なる湾曲面100Fに対応した形状とされている。
【0044】
また、図6(B)、図7(B)に示すように、芯金基体21には、翼部24からクローラ内周側へ突出する転輪制限突起28が駆動輪係合部26のクローラ幅方向両外側にそれぞれ設けられている。この転輪制限突起28は、駆動輪係合部26からクローラ幅方向外側へ輪部104Bの通過スペースをあけて配置されている。
【0045】
また、図6(B)に示すように、転輪制限突起28は、駆動輪係合部26よりもクローラ内周側へ突出している。転輪制限突起28のクローラ幅方向内側の内壁面28Bは、根元側から突出先端側へ向ってクローラ幅方向内側から外側へ傾斜している。なお、本実施形態では、図6(B)に示すように、内壁面28Bのクローラ幅方向に対する傾斜角(鋭角側)が突起突出方向の根元側よりも突出先端側で小さくなっている。すなわち、内壁面28Bは、突起突出方向の根元側よりも突出先端側で傾斜角が緩やかになっている。
【0046】
図6(B)に示すように、芯金基体21には、翼部24の根元からクローラ内周側へ突出する駆動輪制限突起30が形成されている。この駆動輪制限突起30の先端部30Aは、クローラ周方向から見て、駆動輪係合部26の頂部26Aと転輪制限突起28の先端部28Aとの間に位置している。また、駆動輪係合部26のクローラ幅方向の端部と駆動輪制限突起30のクローラ幅方向内側の内壁部とは、つながっている。
【0047】
また、図6(B)に示すように、芯金基体21には、翼部24からクローラ内周側へ突出し、転輪制限突起28と駆動輪制限突起30とを連結するクローラ幅方向に沿って延びる補強リブ32が形成されている。この補強リブ32は、図6(A)に示すように、芯金基体21のクローラ周方向の中央部分に配置されている。また、補強リブ32の最内面32Aは、図6(B)に示すように、クローラ周方向から見て駆動輪係合部26の頂部26Aよりもクローラ外周側(図6(B)では、下側)に位置している。上記補強リブ32により、転輪制限突起28のクローラ周方向及びクローラ幅方向の曲げ剛性が補強される。
【0048】
図8に示すように、駆動輪100は、一対の駆動輪制限突起30間を通過し、図9に示すように、転輪104の輪部104Bは、芯金基体21の駆動輪制限突起30と転輪制限突起28との間を通過するようになっている。また、図1に示すように、本実施形態では、遊動輪102の輪部102Bも転輪104の輪部104Bと同様に、駆動輪制限突起30と転輪制限突起28との間を通過するようになっている。
【0049】
図5に示すように、本実施形態では、芯金20の芯金基体21を含むクローラ外周側部分がゴム体12に埋設されている。また、本実施形態では、ゴム体12の内周部12Aから突出する駆動輪係合部26、一対の転輪制限突起28、及び一対の駆動輪制限突起30をそれぞれゴム材により被覆している。なお、本発明のその他の実施形態では、駆動輪係合部26の少なくとも一部、転輪制限突起28の少なくとも一部、駆動輪制限突起30の少なくとも一部を、ゴム材から露出させてもよい。
【0050】
図2、図3、図11に示すように、ゴム体12の内周部12Aには、クローラ周方向に互いに隣り合う芯金20間でかつ輪部104Bの通過スペースに対応する部位にクローラ内周側に隆起した転輪支持部36が形成されている。この転輪支持部36の頂面36Aは、図5に示すクローラ幅方向に沿った断面において、芯金20の補強リブ32の最内面32Aよりもクローラ内周側に位置している。
【0051】
図9、図11に示すように、転輪支持部36の頂面36Aは、転輪104の外周面104Cと接触して該転輪104を支持するものであり、図3及び図5に示すように平坦状とされている。
【0052】
また、図2に示すように、クローラ周方向に隣り合う頂面36Aの縁部36B間の距離L1は、芯金20の輪部104Bの通過スペースに対応する部位(本実施形態では、翼部24)のクローラ周方向に沿った長さL2よりも短くなっている。
【0053】
さらに、頂面36Aの幅(クローラ幅方向に沿った長さ)は、縁部36B側よりもクローラ周方向の中央部側で広くなっている。とくに、本実施形態では、頂面36Aの幅は、縁部36Bからクローラ周方向の中央部に向って次第に広くなっている。
【0054】
なお、本実施形態では、遊動輪102の輪部102Bも転輪支持部36の頂面36A上を転動するようになっている。
【0055】
図2、図3、図5に示すように、ゴム体12の内周部12Aには、一対の転輪支持部36を挟んでクローラ幅方向両外側にクローラ外周側へ窪む窪み部38が形成されている。この窪み部38は、転輪支持部36からゴム体12のクローラ幅方向の端部12Bへ向かって延びている。具体的には、図2に示すように、窪み部38のクローラ幅方向外側の端部38Aが、翼部24の先端部よりもゴム体12の端部12B側へ延びている。なお、本発明のその他の実施形態では、窪み部38の端部38Aが翼部24の先端部よりもクローラ幅方向内側に位置してもよく、端部38Aがゴム体12の端部12Bまで到達してもよい。また、本実施形態の窪み部38は、端部38A側が転輪支持部36側よりも浅くなっている。
【0056】
図5に示すように、ゴム体12には、芯金20のクローラ外周側にクローラ周方向に沿って延びる無端帯状の補強層14が埋設されている。この補強層14は、クローラ周方向に沿って螺旋状に巻回された1本の補強コード又はクローラ周方向に沿って並列された複数本の補強コードをゴム被覆して形成したものである。なお、本実施形態においては、引張り強度に優れるスチールコードを補強コードとして用いるが、本発明はこの構成に限定されず、十分な引張り強度を有していれば、例えば、有機繊維などで構成したコードを補強コードとして用いてもよい。
【0057】
図1、図4に示すように、ゴム体12の外周部には、クローラ外周側に突出するゴム材により構成されたラグ16A、ラグ16Bがクローラ周方向に間隔をあけて交互に形成されている。なお、これらのラグ16A、16Bは、ゴムクローラ10の地面に接地する部位である。
【0058】
図4に示すように、ラグ16Aは、ゴム体12の一方の端部12B(図4では左側端部)から他方の端部12B(図4では右側端部)へ向かってクローラ幅方向に延びて、先端部が他方の端部12Bと中央線CLとの中間部分に達している。
一方、ラグ16Bは、ゴム体12の他方の端部12Bから一方の端部12Bへ向かってクローラ幅方向に延びて、先端部が一方の端部12Bと中央線CLとの中間部分に達している。
なお、本実施形態では、ラグ16Aとラグ16Bとが中央線CL上の任意の点に対して点対称とされている。
【0059】
また、図4に示すように、ラグ16A、ラグ16Bはともに、クローラ外周側から見て、クローラ周方向に間隔をあけて配置された芯金20に交互に重なっている。
【0060】
次に、本実施形態のゴムクローラ10及びクローラ走行装置90の作用効果について説明する。
クローラ走行装置90では、駆動輪100の歯部100Bがゴムクローラ10の駆動輪係合部26に係合した状態(詳細には、歯部100Bの壁面100Eが駆動輪係合部26の周方向壁面にゴム材を介して当接した状態)で、駆動輪100が回転すると、駆動輪係合部26が歯部100Bにより押圧されて、駆動力が芯金20を介してゴムクローラ10(ゴム体12)へ伝達される。これにより、ゴムクローラ10が駆動輪100及び遊動輪102の間を循環して、クローラ走行装置90を備えるクローラ車が地面の上を移動する。このとき、転輪104の輪部104Bは、転輪支持部36の頂面36Aからクローラ周方向に隣り合う転輪支持部36の頂面36Aへ順次乗り移りながら、各々の転輪支持部36の頂面36A上を転動する。
【0061】
ここで、ゴムクローラ10では、クローラ内周側へ隆起する転輪支持部36を、ゴム体12の内周部12Aのクローラ周方向に隣り合う芯金20間で且つ輪部104Bの通過スペースに対応する部位に形成している(すなわち、転輪支持部36をゴム体12の内周部12Aにクローラ周方向に断続的に形成している)ことから、例えば、上記のような転輪支持部36をクローラ周方向に連続して形成するものと比べて、ゴム体12のクローラ周方向の曲げ抵抗を小さくすることができる。すなわち、ゴムクローラ10のクローラ周方向の曲げ抵抗を小さくすることができる。
【0062】
また、ゴムクローラ10では、転輪支持部36をクローラ周方向に断続的に形成していることから、例えば、転輪支持部36をクローラ周方向に連続して形成するものと比べて、重量を減らすことができる。
【0063】
さらに、ゴムクローラ10では、輪部104Bと転輪制限突起28の内壁面28Bとの当接により転輪104のクローラ幅方向の移動が制限される。またさらに、駆動輪100と一対の駆動輪制限突起30との当接により駆動輪100のクローラ幅方向の移動が制限される。
【0064】
一方、ゴムクローラ10では、一対の転輪制限突起28間に輪部104Bの通過スペースを形成していることから、例えば、一対の転輪制限突起28のクローラ幅方向外側に輪部104Bの通過スペースが形成されるものと比べて、用いられる転輪104の一対の輪部104B間の距離が短く、傾斜地走行時に、一方の転輪支持部36の頂面36Aから一方の輪部104Bが浮き上がる(離れる)場合の浮上り量が少なくなる。
これにより、ゴムクローラ10で傾斜地を走行する場合に、ゴムクローラ10(ゴム体12)の接地側が傾斜地に沿って傾いて一方の転輪支持部36の頂面36Aから一方の輪部104Bが浮き上がって(離れて)も、上記のように、一方の転輪支持部36の頂面36Aからの一方の輪部104Bの浮上り量が少なくなることから、一方の輪部104Bによる一方の転輪制限突起28の乗り越えが抑制される。このため、輪部104Bの転輪制限突起28の乗り越えを抑制するために、転輪制限突起28を必要以上に高くすることに起因する芯金20の重量増加を抑制することができる。
【0065】
以上のことから、ゴムクローラ10は、クローラ周方向の曲げ抵抗を小さくしつつ、重量を減らすことができる。
【0066】
また、ゴムクローラ10では、図5に示すクローラ幅方向に沿った断面において、転輪支持部36の頂面36Aを、芯金20の補強リブ32の最内面32Aよりもクローラ内周側に位置させていることから、輪部104Bが転輪支持部36の頂面36Aからクローラ周方向に隣り合う転輪支持部36の頂面36Aへ順次乗り移る際に補強リブ32の最内面32Aに衝突した場合の衝突音及び振動を抑制することができる。なお、輪部104Bの外周面104Cが最内面32Aに非衝突の場合には、衝突音及び衝突に起因する振動は生じない。そして、上記のように、輪部104Bと補強リブ32との衝突を抑制または回避することで、繰り返し衝突に起因する芯金20(芯金基体21)とその周辺のゴム材との剥離を抑制することができる。なお、遊動輪102についても転輪104と同様に、輪部102Bが転輪支持部36の頂面36Aからクローラ周方向に隣り合う転輪支持部36の頂面36Aへ順次乗り移る際に補強リブ32の最内面32Aに衝突した場合の衝突音及び振動を抑制することができる。
【0067】
さらに、図2、図11に示すように、ゴムクローラ10では、クローラ周方向に隣り合う頂面36Aの縁部36B間の距離L1を、芯金20の輪部104Bの通過スペースに対応する部位(本実施形態では、翼部24)の長さL2よりも短くしていることから、例えば、距離L1が長さL2よりも長いものと比べて、転輪104が転輪支持部36の頂面36Aからクローラ周方向に隣り合う転輪支持部36の頂面36Aへ乗り移る際の、転輪104の下方(クローラ外周側)への落ち込み(図11参照)が抑制されて、転輪104の上下動が抑制される。
【0068】
またさらに、ゴムクローラ10では、転輪支持部36の頂面36Aを平坦状としていることから、例えば、頂面36Aの縁部36Bがクローラ周方向の中央部よりもクローラ内周側に盛り上がっているものと比べて、転輪104が転輪支持部36の頂面36Aからクローラ周方向に隣り合う転輪支持部36の頂面36Aへ乗り移る際の、転輪104と縁部36Bとの衝突による該縁部36Bの材料欠け(ゴム欠け)を抑制させられる。これにより、転輪支持部36の耐久性、すなわち、ゴムクローラ10の耐久性が向上する。
【0069】
そして、ゴムクローラ10では、ゴム体12の内周部12Aの一対の転輪支持部36を挟んでクローラ幅方向両外側にクローラ外周側へ窪む窪み部38をそれぞれ形成していることから、窪み部38の部位でゴム体12の肉厚が薄くなり、ゴム体12のクローラ周方向の曲げ抵抗を小さくすることができる。加えて、窪み部38の形成によってゴム体12の重量も減らすことができる。
【0070】
さらに、本実施形態では、窪み部38を転輪支持部36からゴム体12のクローラ幅方向の端部12Bへ向けて延ばしていることから、例えば、窪み部38をクローラ周方向に延ばしたものと比べて、ゴム体12のクローラ周方向の曲げ抵抗を効果的に小さくすることができる。
【0071】
特に、ゴムクローラ10では、クローラ周方向の曲げの中立面となる補強層14よりもクローラ内周側で圧縮歪が生じ、クローラ外側方向で引張歪が生じるため、ゴム体12の内周部12Aに窪み部38を形成して圧縮歪を緩和することで、効果的にクローラ周方向の曲げ剛性(曲げ抵抗)を小さくすることができる。
【0072】
また、ゴムクローラ10では、駆動輪係合部26の駆動輪100と接触する部分(頂部26A)の形状を、駆動輪100の外周形状(湾曲面100Fの形状)に対応した形状としていることから、歯部100Bと駆動輪係合部26との間の歯飛びが防止される、つまり、駆動輪100を駆動輪係合部26に確実に係合させることができる。
【0073】
また、ゴムクローラ10では、転輪104が内周部12Aから隆起した肉厚な転輪支持部36の頂面36A上を転動するため、転輪支持部36と頂面36Aと輪部104Bの外周面104Cとの間に入り込んだ異物(例えば、小石など)を輪部104Bで踏んだとしても、転輪支持部36が弾性変形して、頂面36Aの不具合(損傷など)が抑制される。
特に、ゴムクローラ10では、転輪支持部36がゴム体12のクローラ周方向に隣り合う芯金20間に形成されることから、例えば、転輪支持部をクローラ周方向に連続して形成したもののように、芯金20に対応する転輪支持部の頂面の不具合を抑制するために芯金20から転輪支持部の頂面までのゴム厚を十分に厚くする必要がないため、転輪支持部36の肉厚(隆起量)を薄く(小さく)することができる。これにより、さらに、ゴム体12のクローラ周方向の曲げ抵抗を小さくしつつ、重量を減らすことが可能となる。
【0074】
そして、ゴムクローラ10では、クローラ外周側から見て、クローラ周方向に間隔をあけて配置された芯金20にラグ16Aとラグ16Bが交互に重なる構成としている、すなわち、ラグ16Aとラグ16Bとの間に転輪支持部36が配置される構成としていることから、例えば、クローラ周方向に間隔をあけて配置された転輪支持部36にラグ16A、16Bとが交互に重なるものと比べて、転輪支持部36が下方(クローラ外周側)へ弾性変形しやすく、転輪支持部36の頂面36Aと輪部104Bの外周面104Cとの間に入り込んだ異物を輪部104Bが踏んだとしても、頂面36Aに不具合が生じるのをさらに抑制することができる。
【0075】
また、例えば、クローラ外周側から見て、隣り合う芯金20間(ここでは、転輪支持部36)にラグ16Aまたはラグ16Bが配置されるゴムクローラの場合には、接地面上の障害物(例えば、石など)を、ラグ16A、16Bのない部分である芯金20の下側(クローラ外周側)のゴム部分で踏んだ場合に、この下側のゴム部分は、芯金20によって拘束されるため十分な逃げ変形(クローラ内周側へ凹むような弾性変形)ができず、障害物の食い込みによる損傷を受け易い傾向にある。特に、上記ゴムクローラでは、芯金20の配置されている部分が非配置部分よりも転輪104などから下方への荷重(機体重量)を大きく受けるため、芯金20の下側のゴム部分に食い込んだ障害物が補強層14に到達する虞がある。
上記事実を考慮して、本実施形態のゴムクローラ10では、クローラ外周側から見て、クローラ周方向に間隔をあけて配置された芯金20にラグ16Aとラグ16Bとが交互に重なる構成としている。この構成により、芯金20の下側のゴム部分の厚みが、ラグ16Aまたはラグ16Bによって大幅に増すため、障害物をラグ16Aまたはラグ16Bで踏んだとしても、障害物が補強層14に到達することがない、すなわち、補強層14の損傷を効果的に防止することができる。一方、本実施形態のゴムクローラ10では、ラグ16A、16Bのない部分、すなわち、転輪支持部36の下側のゴム部分で障害物を踏んだ場合、この下側のゴム部分はクローラ内周側へ凹むような逃げ変形(弾性変形)をするため、障害物が食い込みにくく、該障害物による損傷をある程度防止することができる。
【0076】
本実施形態のクローラ走行装置90では、上述のようなゴムクローラ10を用いることから、重量を減らすことができる。これにより、圃場や湿田などの不整地を走行する際の、ゴムクローラ10の過度の沈み込みを抑えられるため、走行速度や旋回性能などの走行性能を確保することができる。
また、ゴムクローラ10は、上述したように曲げ抵抗が小さいことから、ゴム体12が駆動輪100などに巻き掛かる際のパワーロスを低減することができ、クローラ車の燃費を改善できる。加えて、ゴムクローラ10を、駆動輪100及び遊動輪102に巻き掛ける際の作業が容易になる。
【0077】
(その他の実施形態)
前述した実施形態では、転輪支持部36の頂面36Aを平坦状としているが、本発明はこの構成に限定されず、頂面36Aは、縁部36Bがクローラ周方向の中央部よりもクローラ内周側に盛り上がっている形状(例えば、テーパー形状)としてもよい。この場合には、例えば、頂面が平坦状のものと比べて、転輪支持部36の頂面36Aと遊動輪102との接触面積が増えて、頂面36Aに作用する面圧が低下する。これにより、転輪支持部36の摩耗が低減され、該転輪支持部36の耐久性、すなわち、ゴムクローラ10の耐久性が向上する。
【0078】
前述した実施形態のゴムクローラ10では、クローラ外周側から見て、クローラ周方向に間隔をあけて配置された芯金20にラグ16Aとラグ16Bとが交互に重なる構成としているが、本発明はこの構成に限定されず、クローラ外周側から見て、隣り合う芯金20間にラグ16Aまたはラグ16Bを配置する構成としても勿論構わない。このように構成することにより、ゴムクローラの上下方向のバネがクローラ周方向で均一となるため、転輪104などの上下動(振動)が抑制され、かつ安定性も向上する。なお、クローラ外周側から見た場合の、芯金20に対するラグ16Aとラグ16Bの位置関係は、ゴムクローラの仕様に応じて決定されるものである。
【0079】
前述した実施形態では、ゴム体12の中央線と芯金20の中央線CLとを一致させる構成としているが、本発明はこの構成に限定されず、ゴム体12の中央線に対して芯金20の中央線CLがクローラ幅方向にずれていてもよい。
【0080】
また、前述した実施形態では、ゴムクローラ10の引張応力の補強用に補強層14を埋設しているが、本発明はこの構成に限定されず、補強層14を用いずに、クローラ周方向に互いに隣接する芯金20同士を連結部材(例えば、リング状の連結部材など)で連結、又は、芯金に形成した連結部同士(例えば、フックとピンなど)を連結して無端状とした芯金連結体でゴムクローラ10の引張応力を補強する構成としてもよい。
【0081】
さらに、前述した実施形態では、弾性体の一例としてのゴム材でゴム体12を形成しているが、本発明はこの構成に限定されず、弾性体の一例としてゴム材以外のエラストマーなどを用いてもよい。
【0082】
またさらに、前述した実施形態では、芯金20を金属製としているが、本発明はこの構成に限定されず、ゴムクローラ10の仕様に対して十分な強度を備えるならば、芯金20を例えば、樹脂製としてもよい。
【0083】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0084】
10 ゴムクローラ(弾性クローラ)
12 ゴム体(弾性体)
12A 内周部
12B 端部
20 芯金
26 駆動輪係合部
28 転輪制限突起
30 駆動輪制限突起
36 転輪支持部
36A 頂面
36B 縁部
38 窪み部
90 クローラ走行装置
100 駆動輪
104 転輪
104B 輪部
CL 中央線
S クローラ周方向(弾性体の周方向)
W クローラ幅方向(弾性体の幅方向)
IN クローラ内周側(弾性体の内周側)
OUT クローラ外周側(弾性体の外周側)
L1 距離
L2 長さ1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪及び遊動輪に巻き掛けられる無端帯状の弾性体と、
前記駆動輪が係合する駆動輪係合部が設けられ、前記弾性体に該弾性体の周方向に間隔をあけて複数埋設された芯金と、
前記芯金に設けられ、前記駆動輪係合部から前記弾性体の幅方向両外側へ前記駆動輪と前記遊動輪との間に配設された転輪を構成する一対の輪部の通過スペースをあけてそれぞれ配置され、前記弾性体の内周側に突出し、前記輪部と当接して前記転輪の前記幅方向の移動を制限する一対の転輪制限突起と、
前記弾性体の内周部に形成され、前記周方向に隣り合う前記芯金間で且つ前記輪部の通過スペースに対応する部位に配置され、前記弾性体の内周側に隆起し、頂面で前記輪部を支持する一対の転輪支持部と、
を有する弾性クローラ。
【請求項2】
前記周方向に隣り合う前記頂面の縁部間の距離が、前記芯金の前記周方向に沿った長さよりも短くなっている請求項1に記載の弾性クローラ。
【請求項3】
前記駆動輪係合部の前記幅方向両端部にそれぞれ形成され、前記弾性体の内周側に突出し、前記駆動輪と当接して該駆動輪の前記幅方向の移動を制限する駆動輪制限突起を有する請求項1または請求項2に記載の弾性クローラ。
【請求項4】
前記駆動輪係合部は、前記駆動輪と接触する部分の形状が前記駆動輪の外周形状に対応した形状とされている請求項1〜3のいずれか1項に記載の弾性クローラ。
【請求項5】
前記弾性体の内周部には、前記転輪支持部の前記幅方向外側に前記弾性体の外周側へ窪む窪み部が形成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の弾性クローラ。
【請求項6】
前記窪み部は、前記転輪支持部から前記弾性体の前記幅方向の端部へ向かって延びている請求項5に記載の弾性クローラ。
【請求項7】
機体の駆動軸に連結される駆動輪と、
前記機体に回転自在に取付けられる遊動輪と、
前記機体の前記駆動輪と前記遊動輪との間に回転自在に取付けられ、回転軸方向の両端側に一対の輪部を備える転輪と、
前記駆動輪及び前記遊動輪に巻き掛けられる請求項1〜6のいずれか1項に記載の弾性クローラと、
を有するクローラ走行装置。
【請求項1】
駆動輪及び遊動輪に巻き掛けられる無端帯状の弾性体と、
前記駆動輪が係合する駆動輪係合部が設けられ、前記弾性体に該弾性体の周方向に間隔をあけて複数埋設された芯金と、
前記芯金に設けられ、前記駆動輪係合部から前記弾性体の幅方向両外側へ前記駆動輪と前記遊動輪との間に配設された転輪を構成する一対の輪部の通過スペースをあけてそれぞれ配置され、前記弾性体の内周側に突出し、前記輪部と当接して前記転輪の前記幅方向の移動を制限する一対の転輪制限突起と、
前記弾性体の内周部に形成され、前記周方向に隣り合う前記芯金間で且つ前記輪部の通過スペースに対応する部位に配置され、前記弾性体の内周側に隆起し、頂面で前記輪部を支持する一対の転輪支持部と、
を有する弾性クローラ。
【請求項2】
前記周方向に隣り合う前記頂面の縁部間の距離が、前記芯金の前記周方向に沿った長さよりも短くなっている請求項1に記載の弾性クローラ。
【請求項3】
前記駆動輪係合部の前記幅方向両端部にそれぞれ形成され、前記弾性体の内周側に突出し、前記駆動輪と当接して該駆動輪の前記幅方向の移動を制限する駆動輪制限突起を有する請求項1または請求項2に記載の弾性クローラ。
【請求項4】
前記駆動輪係合部は、前記駆動輪と接触する部分の形状が前記駆動輪の外周形状に対応した形状とされている請求項1〜3のいずれか1項に記載の弾性クローラ。
【請求項5】
前記弾性体の内周部には、前記転輪支持部の前記幅方向外側に前記弾性体の外周側へ窪む窪み部が形成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の弾性クローラ。
【請求項6】
前記窪み部は、前記転輪支持部から前記弾性体の前記幅方向の端部へ向かって延びている請求項5に記載の弾性クローラ。
【請求項7】
機体の駆動軸に連結される駆動輪と、
前記機体に回転自在に取付けられる遊動輪と、
前記機体の前記駆動輪と前記遊動輪との間に回転自在に取付けられ、回転軸方向の両端側に一対の輪部を備える転輪と、
前記駆動輪及び前記遊動輪に巻き掛けられる請求項1〜6のいずれか1項に記載の弾性クローラと、
を有するクローラ走行装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−75626(P2013−75626A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217460(P2011−217460)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
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