説明

弾性クローラ

【課題】弾性クローラの走行時の騒音や振動を抑制しつつ、周方向の曲げ抵抗の増加を抑制する。
【解決手段】駆動輪100及び遊動輪102に巻き掛けられる無端帯状のゴム体12(弾性体の一例)と、ゴム体12にクローラ周方向に間隔をあけて複数埋設された芯金20と、内周部12Aのクローラ周方向に隣り合う芯金20間に形成され駆動輪100に設けられた左右一対の歯部100Bがそれぞれ挿入係合される一対の係合凹部28と、内周部12Aのクローラ周方向に隣り合う芯金20間でかつ一対の係合凹部28間に形成されクローラ内周側に隆起し頂面30Aで遊動輪102を支持する支持部30と、支持部30に形成され一方の係合凹部28から他方の係合凹部28へ延びて頂面30Aをクローラ周方向に分割する分割溝34と、をゴムクローラ10(弾性クローラの一例)が有すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性クローラに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農業用機械をはじめ、建設機械や土木作業用機械の走行部に無端状のゴムクローラが使用されている。この種のゴムクローラは、通常、機体側の駆動輪、遊動輪、及び転輪に巻き掛けられて用いられる。これらの駆動輪、遊動輪、及び転輪は、ゴムクローラの内周側を転動することから、ゴムクローラの内周部には補強用の芯金がクローラ周方向に一定間隔で埋設されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示のゴムクローラでは、内周部に、芯金に設けられた一対の角部をゴム被覆した一対の駆動突起がクローラ周方向に間隔をあけて複数形成されており、これら一対の駆動突起間を駆動輪が通過するようになっている。また、ゴムクローラの内周部には、クローラ周方向に隣り合う芯金間でかつ一対の角部間にクローラ内周側に隆起して頂面で駆動輪を支持するゴム支持部が形成されている。このゴム支持部により、駆動輪がゴム支持部の頂面から隣り合うゴム支持部の頂面へ乗り移る際の芯金との衝突による騒音や振動が抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−222170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示のゴムクローラでは、内周部に駆動輪を支持するゴム支持部を形成しているため、駆動輪や遊動輪に巻き掛かる際のクローラ周方向の曲げ(内曲げ)に対する抵抗が増加している。
【0006】
本発明は、走行時の騒音や振動を抑制しつつ、周方向の曲げ抵抗の増加を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に記載の弾性クローラは、駆動輪及び遊動輪に巻き掛けられる無端帯状の弾性体と、前記弾性体に該弾性体の周方向に間隔をあけて複数埋設された芯金と、前記弾性体の内周部の前記周方向に隣り合う前記芯金間に形成され、前記駆動輪に設けられた左右一対の歯部がそれぞれ挿入係合される一対の係合凹部と、前記内周部の前記周方向に隣り合う前記芯金間でかつ前記一対の係合凹部間に形成され、前記弾性体の内周側に隆起し、頂面で前記遊動輪を支持する支持部と、前記支持部に形成され、一方の前記係合凹部から他方の前記係合凹部へ延びて前記頂面を前記周方向に分割する分割溝と、を有している。
【0008】
本発明の請求項1に記載の弾性クローラでは、駆動輪の左右一対の歯部が係合凹部に挿入係合した状態で駆動輪が回転すると、駆動力が無端帯状の弾性体へ伝達されて、この弾性体が駆動輪及び遊動輪の間を循環する。このとき、遊動輪は、支持部の頂面から弾性体の周方向(以下、単に「弾性体周方向」と記載する。)に隣り合う支持部の頂面へ順次乗り移りながら、各々の支持部の頂面上を転動する。
【0009】
ここで、上記弾性クローラでは、内周部にクローラ内周側に隆起し、頂面で遊動輪を支持する支持部を形成していることから、例えば、上記のような支持部を形成しないものと比べて、遊動輪が支持部の頂面から弾性体周方向に隣り合う支持部の頂面へ乗り移る際の、該遊動輪と芯金との衝突を回避、または、該遊動輪と芯金との衝突を和らげる(緩衝する)ことができる。これにより、走行時における騒音や振動が抑制される。
【0010】
なお、ここで言う、遊動輪と芯金の衝突は、直接的または間接的な衝突を含むものであり、間接的な衝突とは、芯金を被覆する弾性体を介して該芯金と遊動輪とが衝突することを指す。
【0011】
一方、上記弾性クローラでは、支持部に一方の係合凹部から他方の係合凹部へ延びて頂面を弾性体周方向に分割する分割溝を形成していることから、例えば、上記のような支持部に分割溝を形成せずに頂面が弾性体周方向に連続しているものと比べて、支持部の弾性体周方向の曲げ抵抗が減少する。これにより、上記弾性クローラの弾性体周方向の曲げ抵抗の増加が抑制される。
【0012】
なお、ここでいう、弾性体周方向の曲げ抵抗とは、弾性体クローラが駆動輪や遊動輪に巻き掛かり、これら駆動輪や遊動輪の各々の外周に沿って曲げられるときの曲げ変形に対する抵抗を指している。
【0013】
以上のことから、本発明の請求項1に記載の弾性クローラによれば、走行時の騒音や振動を抑制しつつ、周方向の曲げ抵抗の増加を抑制することができる。
【0014】
本発明の請求項2に記載の弾性クローラは、請求項1に記載の弾性クローラにおいて、前記分割溝は、前記幅方向に沿って直線状に延びている。
【0015】
本発明の請求項2に記載の弾性クローラでは、分割溝を弾性体の幅方向(以下、単に「弾性体幅方向」と記載する。)に沿って直線状に延ばしていることから、例えば、分割溝を弾性体幅方向に対して傾斜する方向に直線状に延ばしたものと比べて、支持部の弾性体周方向の曲げ抵抗をさらに減少させることができる。
【0016】
本発明の請求項3に記載の弾性クローラは、請求項1または請求項2に記載の弾性クローラにおいて、1本の前記分割溝が、前記周方向に隣り合う前記芯金間の中央を通る直線上に形成されている。
【0017】
弾性体クローラが駆動輪や遊動輪に巻き掛かりこれら駆動輪や遊動輪の各々の外周に沿って曲げられると、弾性体周方向の隣り合う芯金間の中央を通る直線上に曲げ応力が集中するため、本発明の請求項3に記載の弾性クローラでは、1本の分割溝を弾性体周方向に隣り合う芯金間の中央を通る直線上に形成している。これにより、上記弾性クローラの弾性体周方向の曲げ抵抗の増加を効果的に抑制することができる。
【0018】
本発明の請求項4に記載の弾性クローラは、請求項1に記載の弾性クローラにおいて、前記頂面は、前記分割溝によって複数の小頂面に分割され、前記小頂面の一部が前記周方向に隣り合う前記小頂面の一部と前記幅方向に重なる。
【0019】
本発明の請求項4に記載の弾性クローラでは、小頂面の一部を弾性体周方向に隣り合う小頂面の一部と弾性体幅方向に重ねていることから、遊動輪が小頂面から弾性体周方向に隣り合う小頂面へ乗り移る際の下方(クローラ外周側)への落ち込みが抑制され、遊動輪の上下動が抑制される。
【0020】
本発明の請求項5に記載の弾性クローラは、請求項1〜4のいずれか1項に記載の弾性クローラにおいて、前記頂面を基準にした前記分割溝の深さと前記係合凹部の深さとが同じである。
【0021】
本発明の請求項5に記載の弾性クローラでは、頂面を基準にした分割溝の深さと該頂面を基準にした係合凹部の深さを同じにしている、言い換えれば、弾性体の内周部よりも分割溝の溝底が下方(クローラ外周側)に位置していることから、例えば、頂面を基準にした分割溝の深さが該頂面を基準にした係合凹部の深さよりも浅いものと比べて、弾性体周方向の曲げ抵抗を減少させることができる。
【0022】
本発明の請求項6に記載の弾性クローラは、請求項1〜5のいずれか1項に記載の弾性クローラにおいて、前記支持部は、前記頂面で転輪を支持する。
【0023】
本発明の請求項6に記載の弾性クローラでは、支持部が頂面で転輪を支持することから、無端帯状の弾性体の内周部に転輪が転動する専用部位を形成する必要がなく、例えば、転輪が転動する専用部位が形成されるものと比べて、重量を減らすことができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明の弾性クローラは、走行時の騒音や振動を抑制しつつ、周方向の曲げ抵抗の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係る弾性クローラの一部断面を含む斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る弾性クローラの内周部を示す平面図である。
【図3】図2の弾性クローラのX1−X1線断面図である。
【図4】駆動輪が転動している状態の図2の弾性クローラのY−Y線断面図である。
【図5】遊動輪及び転輪が転動している状態の図2の弾性クローラのY−Y線断面図である。
【図6】駆動輪に巻き掛かった状態の図2の弾性クローラのX2−X2線断面図である。
【図7】遊動輪に巻き掛かった状態の図2の弾性クローラのX1−X1線断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る弾性クローラの内周部を示す平面図である。
【図9】図8の弾性クローラのX1−X1線断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る弾性クローラの内周部を示す平面図である。
【図11】図10の弾性クローラのX1−X1線断面図である。
【図12】本発明の第3実施形態に係る弾性クローラの支持部の変形例を示す平面図である。
【図13】本発明の第4実施形態に係る弾性クローラの内周部を示す平面図である。
【図14】本発明の第5実施形態に係る弾性クローラの支持部の頂面上を転輪が転動している状態の該弾性クローラの中央線に沿った断面図である。
【図15】本発明の第1実施形態の芯金の変形例を備えた弾性クローラが駆動輪に巻き掛かった状態の図2のX2−X2線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る弾性クローラについて図1〜7を用いて説明する。
【0027】
図1に示すように、第1実施形態に係る弾性クローラの一例としての無端状のゴムクローラ10は、機体としてのクローラ車(例えば、コンバインやトラクターなど)の駆動軸に連結される駆動輪100と、クローラ車に回転自在に取付けられる遊動輪102(図5、図7参照)と、駆動輪100と遊動輪102の間に配設されるようにクローラ車に回転自在に取り付けられる複数の転輪104(図5参照)に巻き掛けられて用いられるものである。
【0028】
本実施形態では、無端状のゴムクローラ10の周方向(図2の矢印S方向)を「クローラ周方向」と記載し、ゴムクローラ10の幅方向(図2の矢印W方向)を「クローラ幅方向」と記載する。なお、クローラ周方向とクローラ幅方向は、ゴムクローラ10を外周側または内周側(図2参照)から見た場合に直交している。
また、本実施形態では、駆動輪100、遊動輪102、及び転輪104に巻き掛けて環状(円環状、楕円環状、多角形環状などを含む)となったゴムクローラ10の内周側(図3、図4の矢印IN方向側)を「クローラ内周側」と記載し、上記ゴムクローラ10の外周側(図3、図4の矢印OUT方向側)を「クローラ外周側」と記載する。なお、図3、図4の矢印IN方向(環状の内側方向)、矢印OUT方向(環状の外側方向)は、巻き掛け状態のゴムクローラ10の内外方向を示している。
【0029】
また、駆動輪100、遊動輪102、転輪104、及びこれらに巻き掛けられたゴムクローラ10によってクローラ車の走行部としての第1実施形態に係るクローラ走行装置90(図1参照)が構成される。
【0030】
図1、図6に示すように、駆動輪100は、クローラ車の駆動軸に連結される円盤状の輪部100Aと、輪部100Aの外周側の両縁部に円周方向に一定間隔で設けられ径方向外側へ突出する左右一対の歯部100Bと、を含んで構成されている。この駆動輪100は、ゴムクローラ10にクローラ車からの駆動力を作用させて(詳細は後述)、ゴムクローラ10を駆動輪100及び遊動輪102の間で循環させるものである。
【0031】
図5、図7に示すように、遊動輪102は、円盤状とされ、クローラ車に回転自在に取付けられている。また、遊動輪102は、クローラ車側が備える図示しない油圧等の加圧機構によって駆動輪100から離間する方向へ押圧されて、ゴムクローラ10のテンション(張力)を保持するものである。
【0032】
転輪104は、クローラ車の重量を支持するものであり、クローラ車に回転自在に取付けられる軸部(図示省略)と、軸部の両端側に設けられ該軸部よりも大径な円盤状の一対の輪部104Aと、を含んで構成されている(図5参照)。
【0033】
上記遊動輪102及び転輪104は、駆動輪100及び遊動輪102の間を循環するゴムクローラ10に対して従動回転するようになっている。
【0034】
図1に示すように、ゴムクローラ10は、ゴム材を無端帯状に形成したゴム体12を有している。なお、本実施形態のゴム体12は、本発明の弾性体の一例である。また、本実施形態のゴム体12の周方向、幅方向、内周側、外周側は、それぞれクローラ周方向、クローラ幅方向、クローラ内周側、クローラ外周側と一致している。
【0035】
図2に示すように、ゴム体12には、金属材料で形成された芯金20がクローラ周方向に間隔(本実施形態では一定間隔)をあけて複数埋設されている。この芯金20は、図2、図4に示すように、クローラ幅方向に延在し、クローラ幅方向の中央部22の両端部からクローラ幅方向外側にそれぞれ延出する一対の翼部24を有している。また、この芯金20は、翼部24の根元部分(クローラ幅方向の中央部22側)からクローラ内周側に突出する芯金突起26を有している。
【0036】
また、図2に示すように、芯金20は、クローラ幅方向の中央を通る中央線CLがゴム体12のクローラ幅方向の中央を通る中央線と一致するように配置されている。なお、本実施形態では、中央線CLに向う側をクローラ幅方向内側、中央線CLから離れる側をクローラ幅方向外側として説明する。
【0037】
中央部22のクローラ内周側には、一方の芯金突起26の根元部から他方の芯金突起26の根元部に向けて延びて両者を連結固定する突条の補強リブ23が設けられている。この補強リブ23により一対の芯金突起26のクローラ周方向及びクローラ幅方向の曲げ剛性が補強されている。
【0038】
また、補強リブ23の頂面23A(クローラ内周側の面)は、ゴム体12から露出している(図2、図4参照)。
【0039】
図3に示すように、芯金突起26は、クローラ側面視(クローラ幅方向から見て)で、先端部から根元部までの中間部分に括れ部分26Aが形成されている。また、図4に示すように、芯金突起26は、先端部側が内周部12Aから突出している。この芯金突起26の内周部12Aから突出した部分は、ゴム体12を構成するゴム材と同様のゴム材によって被覆されて、内周部12Aに複数のゴム突起14を形成している。
【0040】
図3に示すように、ゴム突起14は、クローラ側面視で略三角形状とされており、芯金突起26の括れ部分26Aに対応した部分のゴム厚が他の部分よりも肉厚とされている(図6参照)。本実施形態では、ゴム突起14の括れ部分26Aに対応した肉厚部分に駆動輪100の歯部100Bの根元側が当接するようになっている。
【0041】
なお、本実施形態では、図4〜図7に示すように、駆動輪100及び遊動輪102は、ゴム突起14によってガイドされながら一対のゴム突起14間を通過し、転輪104の一対の輪部104Aは、一対のゴム突起14を跨いでクローラ幅方向両外側をそれぞれ通過するようになっている。
【0042】
図2、図6に示すように、ゴム体12の内周部12Aには、クローラ周方向に隣り合う芯金20間に前述の駆動輪100の左右一対の歯部100Bがそれぞれ挿入係合される一対の係合凹部28が形成されている。具体的には、係合凹部28は、クローラ周方向に隣り合うゴム突起14間に形成されたクローラ外周側へ窪む窪みであり、図6に示すクローラ側断面図で逆台形状とされている。
【0043】
また、図6に示すように、係合凹部28のクローラ周方向の凹壁面28Aは、ゴム突起14のクローラ周方向の傾斜壁面14Aと連続するように傾斜している。この構成により、走行時において、係合凹部28に対する駆動輪100の歯部100Bの抜き差しがスムーズに行なわれる。
【0044】
図2、図6に示すように、係合凹部28の凹壁面28Aと凹底面28Bとの境界部分には、クローラ幅方向に延びる横溝29が形成されている。この横溝29は、クローラ側面視で、略半円状となっている。この横溝29により、凹壁面28Aに駆動輪100の歯部100Bの先端側が当接して駆動力が入力されることで生じる凹壁面28Aと凹底面28Bとの境界部分の歪が抑制される。
【0045】
図2に示すように、ゴム体12の内周部12Aには、クローラ周方向に隣り合う芯金20間でかつ一対の係合凹部28間にクローラ内周側に隆起したブロック状の支持部30が形成されている。この支持部30の頂面30Aは、図5に示すクローラ幅方向に沿った断面において、補強リブ23の頂面23Aよりもクローラ内周側に位置している。
【0046】
図7に示すように、支持部30の頂面30Aは、遊動輪102の外周面102Aと接触して該遊動輪102を支持するものであり、図3及び図4に示すように平坦状とされている。
【0047】
また、本実施形態では、図4、図6に示すように、支持部30の頂面30Aは、駆動輪100の輪部100Aの外周面100Cと接触して該駆動輪100を支持する。このとき、歯部100Bの先端部(駆動輪100(輪部100A)の径方向外側の端部)は、係合凹部28の凹底面28Bから離間している(浮いている)が、本発明はこの構成に限定されず、歯部100Bの先端部が係合凹部28の凹底面28Bに接触していてもよい。
【0048】
なお、本発明に係るその他の実施形態では、歯部100Bの先端部が係合凹部28の凹底面28Bに接触して駆動輪100を支持し、代わりに輪部100Aの外周面100Cが支持部30の頂面30Aから離間している(浮いている)構成としてもよい。
【0049】
また、支持部30の頂面30Aと補強リブ23の頂面23Aとのクローラ内外方向の高低差は、頂面30Aが駆動輪100又は遊動輪102からの荷重を受けて支持部30が圧縮弾性変形した場合においても、ゼロとならないように設定されている。
【0050】
図2に示すように、頂面30Aのクローラ周方向の両端部30B間の長さL1は、芯金20の配置間隔(ピッチ)Pの半分よりも大きく設定されている。この構成により、例えば、頂面30Aの長さL1がピッチPの半分以下に設定されているものと比べて、遊動輪102及び遊動輪102が支持部30の頂面30Aからクローラ周方向に隣り合う支持部30の頂面30Aへ乗り移る際の、遊動輪102の下方(クローラ外周側)への落ち込みが抑制されて、駆動輪100及び遊動輪102の上下動が抑制される。
【0051】
図2、図3に示すように、支持部30には、一方の係合凹部28から他方の係合凹部28へ延びて頂面30Aをクローラ周方向に分割する分割溝34が1本形成されている。この分割溝34は、図2に示すように、クローラ周方向に隣り合う芯金20間の中央を通る直線SL上に形成され、クローラ幅方向に沿って直線状に延びている。また、本実施形態の分割溝34は、溝幅W1が略一定とされ(図2参照)、溝底の形状がクローラ外周側に凸となる円弧形状とされている(図3参照)。なお、本発明に係るその他の実施形態では、分割溝34を、溝幅W1がクローラ幅方向に沿って変化する構成(一例として、溝幅が狭い部分と広い部分とが形成される構成、溝幅が狭い部分と広い部分とが交互に形成される構成など)としてもよい。この場合の溝幅W1は溝幅の平均値となる。
【0052】
図3、図4に示すように、頂面30Aを基準にした分割溝34の深さD1(分割溝34の溝底の最深部で測定)と該頂面30Aを基準にした係合凹部28の深さD2(凹底面28Bの最深部で測定)とが同じ値に設定されている。このため、支持部30は、クローラ周方向に複数(本実施形態では2個)に分割されている。なお、以下では、分割された支持部を小支持部32、この小支持部32の小頂面(頂面30Aをクローラ周方向に分割したもの)を符号32Aで表す。
【0053】
図2、図4に示すように、ゴム体12の内周部12Aには、一対のゴム突起14を挟んでクローラ幅方向両側にクローラ内周側に隆起した転輪支持部36がそれぞれ形成されている。この転輪支持部36は、クローラ周方向に沿って連続しており、クローラ側面視で頂面36Aが平坦状とされ、転輪104の輪部104Aの外周面104Bと接触して該転輪104を支持するものである。
【0054】
なお、図4、図5に示すように、本実施形態では、内周部12Aを基準として該内周部12Aよりもゴム突起14がクローラ内周側に突出し、支持部30がクローラ内周側に隆起し、係合凹部28がクローラ外周側に窪んでいる。
【0055】
図3、図4に示すように、ゴム体12には、芯金20のクローラ外周側にクローラ周方向に沿って延びる無端帯状の補強層18が埋設されている。この補強層18は、クローラ周方向に沿って螺旋状に巻回された1本の補強コード又はクローラ周方向に沿い且つクローラ幅方向に並列された複数本の補強コードをゴム被覆して形成したものである。なお、本実施形態においては、引張り強度に優れるスチールコードを補強コードとして用いるが、本発明はこの構成に限定されず、十分な引張り強度を有していれば、例えば、有機繊維などで構成したコードを補強コードとして用いてもよい。
【0056】
図1、図3に示すように、ゴム体12の外周部には、クローラ外周側に隆起しクローラ幅方向に延びるブロック状の長ラグ16Aが中央線CLを挟んでクローラ幅方向に一対形成されている。
また、ゴム体12の外周部には、クローラ外周側に隆起しクローラ幅方向に延びるブロック状の短ラグ16Bが中央線CLを挟んでクローラ幅方向に一対形成されている。
これら一対の長ラグ16A及び一対の短ラグ16Bは、クローラ周方向に間隔(ここでは、一定間隔)をあけて交互に形成されている。
【0057】
長ラグ16Aは、クローラ幅方向外側の端部がゴム体12のクローラ幅方向の端部12Bへそれぞれ到達している。一方、短ラグ16Bは、長ラグ16Aよりもクローラ幅方向の長さが短く、クローラ幅方向外側の端部がゴム体12の端部12Bよりもクローラ幅方向内側に位置している。
【0058】
図3に示すように、一対の長ラグ16Aと一対の短ラグ16Bは、クローラ周方向に隣接する芯金20間に配置されている。具体的には、クローラ側面視(図3参照)で、支持部30のクローラ外周側に配置されている。これら長ラグ16Aと短ラグ16Bにより、車両の重量が支えられ、かつゴムクローラ10の牽引力が発揮される。
【0059】
次に、本実施形態のゴムクローラ10の作用効果について説明する。
ゴムクローラ10では、駆動輪100の左右一対の歯部100Bが係合凹部28に挿入係合した状態で、駆動輪100が回転すると、駆動力がゴムクローラ10(ゴム体12)へ伝達される。これにより、ゴムクローラ10が駆動輪100及び遊動輪102の間を循環して、クローラ走行装置90を備えるクローラ車が地面の上を移動する。このとき、遊動輪102は、支持部30の頂面30Aからクローラ周方向に隣り合う支持部30の頂面30Aへ順次乗り移りながら、各々の支持部30の頂面30A上を転動する。同様に、駆動輪100も、支持部30の頂面30Aからクローラ周方向に隣り合う支持部30の頂面30Aへ順次乗り移りながら、各々の支持部30の頂面30A上を転動する。
【0060】
ここで、ゴムクローラ10では、内周部12Aにクローラ内周側に隆起し、頂面30Aで遊動輪102を支持する支持部30を形成していることから、例えば、上記のような支持部30を形成しないものと比べて、遊動輪102が支持部30の頂面30Aからクローラ周方向に隣り合う支持部30の頂面30Aへ乗り移る際の、該遊動輪102と芯金20(詳細には、補強リブ23の頂面23A)との衝突を回避、または、該遊動輪102と芯金20との衝突を和らげる(緩衝する)ことができる。なお、遊動輪102と芯金20との衝突が回避された場合には、衝突音、及び衝突に起因する振動は生じない。また、上記のように、遊動輪102と芯金20との衝突を回避または和らげる(緩衝する)ことで、繰り返し衝突に起因する芯金20とその周辺のゴムとの剥離を抑制することができる。また、駆動輪100と芯金20(詳細には、補強リブ23の頂面23A)との衝突を回避、または、該駆動輪100と芯金20との衝突を和らげる(緩衝する)こともでき、繰り返し衝突に起因する芯金20とその周辺のゴムとの剥離を抑制することができる。これにより、走行時における騒音や振動が抑制される。
【0061】
なお、ここで言う、駆動輪100及び遊動輪102と芯金20の衝突は、直接的または間接的な衝突を含むものであり、間接的な衝突とは、補強リブ23の頂面23Aがゴム被覆されている場合に該ゴムを介して芯金20(具体的には、補強リブ23)と駆動輪100及び遊動輪102とが衝突することを指す。
【0062】
一方、ゴムクローラ10では、支持部30に一方の係合凹部28から他方の係合凹部28へ延びて頂面30Aをクローラ周方向に分割する分割溝34を形成していることから、例えば、上記のような支持部30に分割溝34を形成せずに頂面がクローラ周方向に連続しているものと比べて、支持部30のクローラ周方向の曲げ抵抗が減少する。これにより、ゴムクローラ10は、弾性体周方向の曲げ抵抗の増加が抑制されて、駆動輪100や遊動輪102に巻き掛かった際に、これらの外周面100Cや102Aに沿って曲がり易くなる。
【0063】
なお、ここでいう、クローラ周方向の曲げ抵抗とは、ゴムクローラ10が駆動輪100や遊動輪102に巻き掛かり、これら駆動輪100や遊動輪102の各々の外周に沿って曲げられるときの曲げ変形に対する抵抗を指している。
【0064】
また、支持部30は、分割溝34を形成したことで、例えば、支持部30に分割溝34を形成しないものと比べて、全体としてゴム量が減少しているため、上記曲げ変形時の発熱量が減少する。特に、支持部30は、クローラ周方向の曲げ変形において主に曲がる部分である分割溝34の底部側のゴム量が減少しているため、発熱量を低く抑えられる。また、支持部30は、分割溝34を形成していることから、放熱面積が増加しており、高い冷却効果が得られる。以上のことから、支持部30は、クローラ周方向の曲げによるゴムの熱劣化が抑制され、この熱劣化に起因する不具合(例えば、亀裂の発生など)が抑制される。これにより、ゴムクローラ10の耐久性が向上する。
【0065】
以上のことから、ゴムクローラ10によれば、走行時の騒音や振動を抑制しつつ、クローラ周方向の曲げ抵抗の増加を抑制することができる。
【0066】
また、ゴムクローラ10では、分割溝34をクローラ幅方向に沿って直線状に延ばしていることから、支持部30のクローラ周方向の曲げ抵抗をさらに減少させることができる。
【0067】
ゴムクローラ10が駆動輪100や遊動輪102に巻き掛かり、これら駆動輪100や遊動輪102の各々の外周に沿って曲げられると、クローラ周方向の隣り合う芯金20間の中央を通る直線SL上に曲げ応力が集中する。このため、ゴムクローラ10では、1本の分割溝34を直線SL上に形成している。これにより、ゴムクローラ10のクローラ周方向の曲げ抵抗の増加を効果的に抑制することができる。
【0068】
そして、ゴムクローラ10では、頂面30Aを基準にした分割溝34の深さD1と頂面30Aを基準にした係合凹部28の深さD2を同じにしている、言い換えれば、内周部12Aよりも分割溝34の溝底が下方(クローラ外周側)に位置していることから、例えば、分割溝34の深さD1が係合凹部28の深さD2よりも浅いものと比べて、クローラ周方向の曲げ抵抗をさらに減少させることができる。
【0069】
また、ゴムクローラ10では、支持部30の頂面30A上に入り込んだ異物(例えば、小石など)を駆動輪100や遊動輪102で踏んだとしても、支持部30の下側(クローラ外周側)に、芯金20などの剛体が配置されていないことから、支持部30を構成するゴムなどが弾性変形して、頂面30Aの不具合(損傷など)を抑制する。これにより、ゴムクローラ10の支持部30の損傷による亀裂の進展や、ゴム欠けなどを効果的に抑制することができる。
【0070】
またさらに、ゴムクローラ10では、支持部30の頂面30Aを平坦状としていることから、例えば、頂面30Aのクローラ周方向の端部30Bが該頂面30Aのクローラ周方向の中央側(具体的には、分割溝34の縁部)よりもクローラ内周側に盛り上がっているものと比べて、遊動輪102が支持部30の頂面30Aからクローラ周方向に隣り合う支持部30の頂面30Aへ乗り移る際の、頂面30Aの端部30B及びその周辺と遊動輪102との衝突による端部30B及びその周辺の材料欠け(ゴム欠け)を抑制させられる。これにより、支持部30の耐久性、すなわち、ゴムクローラ10の耐久性が向上する。
【0071】
上記のようにクローラ周方向の曲げ抵抗の増加が抑制されたゴムクローラ10を用いるクローラ走行装置90では、ゴムクローラ10(ゴム体12)が駆動輪100や遊動輪102に巻き掛かる際のパワーロスを低減することができ、クローラ車の燃費を改善できる。加えて、ゴムクローラ10を、駆動輪100、遊動輪102及び転輪104に巻き掛ける際の作業も容易になる。さらに、加速性能を向上させることもできる。
【0072】
また、ゴムクローラ10では、駆動輪100の歯部100Bが係合凹部28に挿入係合することから、例えば、歯部100Bがゴム突起14に係合するものと比べて、駆動輪100の歯部100Bから駆動力が入力される位置がクローラ外周側(図6に示すように、芯金突起26の根元側)となり、ゴム体12内の芯金20の傾く動きが抑制される。このようにゴム体12内の芯金20の傾く動きが抑制されることにより、芯金20まわりのゴムの変形も小さくなる。その結果、芯金20まわりのゴムの疲労が低減され、かつ芯金20と該芯金20まわりのゴムとの接着耐久性の低下が抑制される。なお、ここでいう芯金20の傾きは、クローラ側面視(図3など)でのクローラ内外方向に対する傾きを指す。
【0073】
また、例えば、クローラ側面視で芯金20のクローラ外周側に長ラグ16A及び短ラグ16Bがクローラ周方向に交互に形成された場合、頂面30A上を駆動輪100及び遊動輪102が転動する際に駆動輪100及び遊動輪102からの荷重によって支持部30の頂面30Aが下がり、走行時の振動が増す虞がある。このため、ゴムクローラ10では、芯金20のクローラ外周側に長ラグ16A及び短ラグ16Bを形成せずに、支持部30の頂面30Aのクローラ外周側に長ラグ16A及び短ラグ16Bを形成している。これにより、支持部30の位置でのゴム材の厚みが増すため、駆動輪100及び遊動輪102からの荷重によって頂面30Aが下がるのが抑制され、走行時の振動が抑制される。
【0074】
第1実施形態では、クローラ側面視で支持部30の頂面30Aを平坦状とする構成にしているが、本発明はこの構成に限定されず、クローラ側面視で支持部30の頂面30Aを平坦状以外とする構成にしてもよい。例えば、頂面30Aを、クローラ周方向の端部30Bがクローラ周方向の中央側(具体的には、分割溝34の縁部)よりもクローラ内周側に盛り上がる形状(例えば、テーパー形状)としてもよい。詳細には、頂面30Aを形成する各頂面32Aが各々傾き、全体として頂面30Aがクローラ周方向の中央側よりも端部30Bでクローラ内周側に盛り上がっている形状とされている。この場合には、例えば、クローラ側面視で頂面30Aが平坦状のものと比べて、支持部30の頂面30Aと遊動輪102との接触面積が増えて、頂面30Aに作用する面圧が低下する。これにより、支持部30の摩耗が低減され、支持部30の耐久性、すなわち、ゴムクローラ10の耐久性が向上する。なお、クローラ側面視で頂面30Aを端部30Bがクローラ周方向の中央側よりもクローラ内周側に盛り上がる形状にすることについては、後述する第2〜第5実施形態の各ゴムクローラに適用してもよい。
【0075】
また、第1実施形態の芯金20では、図3に示すように、クローラ側面視で芯金突起26の形状を、先端部から根元部までの中間部分に括れ部分26Aが形成される形状としているが、本発明はこの構成に限定されず、クローラ側面視で芯金突起26の形状を、先端部から根元部までの中間部分に括れ部分26Aが形成されない形状としてもよい。例えば、芯金20の変形例である図15に示す芯金86のように、クローラ側面視で芯金突起88の形状を、先端部から根元側に向けてクローラ周方向の長さが次第に長くなる形状(図15では一例として略三角形状としている)としてもよい。なお、芯金突起88は、突起根元側が翼部24に対してクローラ周方向に張り出している。上記のように芯金86では、クローラ側面視で芯金突起88の形状を、先端部から根元側に向けてクローラ周方向の長さが次第に長くなる形状としている、すなわち、括れ部分26Aを形成しない形状(構成)としていることから、芯金突起88の剛性(曲げ剛性など)を向上させることができる。なお、芯金86は、後述する第2〜第5実施形態の各ゴムクローラの芯金として用いてもよい。
【0076】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態の弾性クローラについて図8、図9を参照しながら説明する。なお、第1実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0077】
図8、図9に示すように、本実施形態のゴムクローラ50に設けられた支持部52は、第1実施形態に記載の支持部30と同一の構成であり、この支持部52に形成される分割溝56は、第1実施形態に記載の分割溝34と構成が異なっている。従って、以下では、分割溝56について詳細に説明する。
【0078】
上記支持部52には、一方の係合凹部28から他方の係合凹部28へ延びて頂面52Aをクローラ周方向に分割する分割溝56が1本形成されている。この分割溝56は、図8に示すように、クローラ周方向に隣り合う芯金20間の中央を通る直線SL上に形成され、クローラ幅方向に沿って直線状に延びている。また、本実施形態の分割溝56は、溝幅W1が略一定とされ(図8参照)、溝底の形状がクローラ外周側に凸となる円弧形状とされている(図9参照)。なお、本発明に係るその他の実施形態では、分割溝56を、第1実施形態の分割溝34のように、溝幅W1がクローラ幅方向に沿って変化する構成としてもよい。この場合の溝幅W1は溝幅の平均値となる。また、図8中の符号52Bは、頂面52Aのクローラ周方向の端部を示している。
【0079】
また、図9に示すように、頂面52Aを基準にした分割溝56の深さD1は、頂面52Aを基準にした係合凹部28の深さD2よりも浅くなっている。このため、支持部52は、頂面52A側がクローラ周方向に複数(本実施形態では2個)に分割されている。なお、以下では、分割された部分を小支持部54、この小支持部54の小頂面(頂面52Aをクローラ周方向に分割したもの)を符号54Aで表す。
【0080】
次に、第2実施形態のゴムクローラ50の作用効果について説明する。
なお、本実施形態の作用効果のうち、第1実施形態と同様の作用効果については、その説明を省略する。
【0081】
本実施形態のゴムクローラ50では、頂面52Aを基準にした分割溝56の深さD1を、該頂面52Aを基準にした係合凹部28の深さD2よりも浅くしていることから、例えば、深さD1と深さD2とが同じ、または深さD1が深さD2よりも深いものと比べて、支持部52のクローラ周方向の剛性の低下が抑制され、駆動輪100及び遊動輪102が頂面52A上を転動する際の、小支持部54の倒れ込みを抑制することができる。これにより、支持部52の耐久性が向上し、ゴムクローラ50の耐久性が向上する。
【0082】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る第3実施形態の弾性クローラについて図10、図11を参照しながら説明する。なお、第1実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0083】
図10、図11に示すように、本実施形態のゴムクローラ60に設けられた支持部62は、第1実施形態に記載の支持部30と同一の構成であり、この支持部62に形成される分割溝65は、第1実施形態に記載の分割溝34と構成が異なっている。従って、以下では、分割溝65について詳細に説明する。
【0084】
上記支持部62には、一方の係合凹部28から他方の係合凹部28へ延びて頂面62Aをクローラ周方向に分割する分割溝65が1本形成されている。この分割溝65は、図10に示すように、クローラ周方向に隣り合う芯金20間の中央を通る直線SLに対して傾斜する方向に直線状に延びている。また、本実施形態の分割溝65は、溝幅W1が略一定とされ(図10参照)、溝底の形状がクローラ外周側に凸となる円弧形状とされている(図11参照)。なお、本発明に係るその他の実施形態では、分割溝65を、第1実施形態の分割溝34のように、溝幅W1がクローラ幅方向に沿って変化する構成としてもよい。この場合の溝幅W1は溝幅の平均値となる。また、図10中の符号62Bは、頂面62Aのクローラ周方向の端部を示している。
【0085】
図11に示すように、頂面62Aを基準にした分割溝65の深さD1と該頂面62Aを基準にした係合凹部28の深さD2とが同じ値に設定されている。このため、支持部62は、クローラ周方向に複数(本実施形態では2個)に分割されている。なお、以下では、分割された支持部を小支持部64、この小支持部64の小頂面(頂面62Aをクローラ周方向に分割したもの)を符号64Aで表す。
【0086】
また、図11に示すように、小支持部64の頂面64Aの一部がクローラ周方向に隣り合う小支持部64の頂面64Aの一部とクローラ幅方向に重なっている。
【0087】
次に、第3実施形態のゴムクローラ60の作用効果について説明する。
なお、本実施形態の作用効果のうち、第1実施形態と同様の作用効果については、その説明を省略する。
【0088】
第3実施形態のゴムクローラ60では、小支持部64の頂面64Aの一部とクローラ周方向に隣り合う小支持部64の頂面64Aの一部とがクローラ幅方向に重なるように、支持部62を分割溝65でクローラ周方向に分割していることから、駆動輪100や遊動輪102が頂面64Aからクローラ周方向に隣り合う頂面64Aへ乗り移る際の下方(クローラ外周側)への落ち込みが抑制され、遊動輪102の上下動が抑制される。
【0089】
なお、本実施形態においても、第2実施形態のように、頂面62Aを基準にした分割溝65の深さD1を、該頂面62Aを基準にした係合凹部28の深さD2よりも浅くしてもよい。
【0090】
また、第3実施形態のゴムクローラ60の支持部62及び分割溝65の変形例として、例えば、図12に示す支持部66及び分割溝69を用いてもよい。この分割溝69は、クローラ幅方向に沿ってクランク状に延びており、支持部66をクローラ周方向に2分割している。なお、分割された小支持部68の小頂面68Aと、これにクローラ周方向に隣り合う小支持部68の小頂面68Aとがクローラ幅方向に重なっている。これにより、変形例の支持部66は、支持部62と同様の作用効果を得ることができる。なお、本発明の分割溝は、クローラ幅方向にジグザグ状に延びるものなど、小支持部の頂面とこれにクローラ周方向に隣り合う小支持部の頂面とがクローラ幅方向に重なるように支持部を分割することができれば、どのような形状であってもよい。なお、図12中の符号66Bは、頂面66Aのクローラ周方向の端部を示している。
【0091】
(第4実施形態)
次に、本発明に係る第4実施形態の弾性クローラについて図13を参照しながら説明する。なお、第2実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0092】
図13に示すように、本実施形態のゴムクローラ70に設けられた支持部72は、第2実施形態に記載の支持部52と同一の構成であり、この支持部72に形成される分割溝76も、第2実施形態に記載の分割溝56と同一の構成であるが、支持部72には、複数(本実施形態では3本)の分割溝76が形成されている。
【0093】
分割溝76は、1本が中央線CL上に形成され、残りが中央線CLを挟んでクローラ周方向両側に等間隔で形成されている。このため、支持部72は、頂面72A側がクローラ周方向に複数(本実施形態では4個)に分割されている。なお、以下では、分割された部分を小支持部74、この小支持部74の小頂面(頂面72Aをクローラ周方向に分割したもの)を符号74Aで表す。
なお、本発明に係るその他の実施形態では、分割溝76を、第1実施形態の分割溝34のように、溝幅W1がクローラ幅方向に沿って変化する構成としてもよい。この場合の溝幅W1は溝幅の平均値となる。また、図13中の符号72Bは、頂面72Aのクローラ周方向の端部を示している。
【0094】
次に、第4実施形態のゴムクローラ70の作用効果について説明する。
なお、本実施形態の作用効果のうち、第2実施形態と同様の作用効果については、その説明を省略する。
【0095】
本実施形態のゴムクローラ70では、支持部72に複数の分割溝76を形成していることから、例えば、支持部に分割溝76を複数形成しないものと比べて、支持部72のクローラ周方向の曲げ抵抗を減少させることができる。これにより、ゴムクローラ70のクローラ周方向の曲げ抵抗の増加を抑制することができる。
そして、支持部72に複数の分割溝76が形成されることから、発熱量が減少し、放熱面積が増加するため、支持部72の熱劣化を抑制することができる。これにより、ゴムクローラ70の耐久性を向上させることができる。
【0096】
なお、本実施形態のゴムクローラ70では、支持部72に分割溝76を形成する構成としているが、本発明はこの構成に限定されず、支持部72に第1実施形態の34、第3実施形態の分割溝65、69あるいは、第4実施形態の分割溝76をそれぞれ複数、または2種類以上の分割溝を選択して形成してもよい。もちろん、分割溝76とそれ以外の分割溝を選択して支持部72に形成してもよい。
【0097】
(第5実施形態)
次に、本発明に係る第5実施形態の弾性クローラについて図14を参照しながら説明する。なお、第1実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0098】
第5実施形態のゴムクローラ80は、駆動輪100、遊動輪102、及び転輪105に巻き掛けられる。この転輪105は、円盤状とされ、クローラ車に回転自在にとりけられ、ゴムクローラ80の一対のゴム突起14間を通過すると共に、支持部30の頂面30Aで支持されて該頂面30A上を転動するようになっている。このため、ゴムクローラ80には、一対の係合凹部28を挟んでクローラ幅方向両外側に転輪支持部36を形成していない。なお、ゴムクローラ80のその他の構成は、第1実施形態のゴムクローラ10と同一である。
【0099】
次に、第5実施形態のゴムクローラ70の作用効果について説明する。
なお、本実施形態の作用効果のうち、第1実施形態と同様の作用効果については、その説明を省略する。
【0100】
ゴムクローラ80の走行時には、図14に示すように、転輪105は、支持部30の頂面30Aからクローラ周方向に隣り合う支持部30の頂面30Aへ順次乗り移りながら、各々の支持部30の頂面30A上を転動する。このため、転輪105が支持部30の頂面30Aからクローラ周方向に隣り合う支持部30の頂面30Aへ乗り移る際の、該転輪105と芯金20(詳細には、補強リブ23の頂面23A)との衝突を回避、または、該転輪105と芯金20との衝突を和らげる(緩衝する)ことができる。なお、転輪104と芯金20との衝突が回避された場合には、衝突音、及び衝突に起因する振動は生じない。また、上記のように、転輪104と芯金20との衝突を回避または和らげる(緩衝する)ことで、繰り返し衝突に起因する芯金20とその周辺のゴムとの剥離を抑制することができる。これにより、走行時における騒音や振動がさらに抑制される。
【0101】
なお、ここで言う、転輪105と芯金20の衝突は、直接的または間接的な衝突を含むものであり、間接的な衝突とは、補強リブ23の頂面23Aがゴム被覆されている場合に該ゴムを介して芯金20(具体的には、補強リブ23)と駆動輪100及び遊動輪102とが衝突することを指す。
【0102】
また、ゴムクローラ80では、上記のように、転輪105が支持部30の頂面30A上を転動する構成としていることから、一対の係合凹部28を挟んでクローラ幅方向両外側に転輪支持部36を形成しない構成としている。このため、ゴムクローラ80は、例えば、転輪支持部36を一対の芯金突起26のクローラ幅方向両外側にそれぞれ形成するものと比べて、重量を減らすことができ、さらには、クローラ周方向の曲げ抵抗を低下させることができる。
【0103】
なお、第5実施形態のゴムクローラ80の、転輪105を用いて転輪支持部36を形成しない構成は、第2〜第4実施形態のいずれのゴムクローラに適用してもよい。
【0104】
(その他の実施形態)
第1実施形態のゴムクローラ10では、クローラ周方向に間隔をあけて複数形成された支持部30のクローラ外周側に長ラグ16A及び短ラグ16Bをクローラ周方向に交互に形成する構成としているが、本発明はこの構成に限定されず、クローラ周方向に間隔をあけて複数配置された芯金20のクローラ外周側に長ラグ16Aと短ラグ16Bとがクローラ周方向に交互に配置される構成としてもよい。この構成により、芯金20の下側(クローラ外周側)のゴム部分の厚みが、長ラグ16Aまたは短ラグ16Bによって大幅に増すため、接地面上の障害物を長ラグ16Aまたは短ラグ16Bで踏んだとしても、障害物が補強層18に到達することがない、すなわち、補強層18の損傷を効果的に防止することができる。一方で、長ラグ16A及び短ラグ16Bのない部分、すなわち、支持部30の下側のゴム部分で障害物を踏んだ場合、この下側のゴム部分はクローラ内周側へ凹むような逃げ変形(弾性変形)をするため、障害物が食い込みにくく、該障害物による損傷をある程度防止することができる。なお、クローラ外周側から見た場合の、芯金20に対する長ラグ16Aと短ラグ16Bの位置関係は、ゴムクローラの仕様に応じて決定されるものである。また、上記したクローラ周方向に間隔をあけて複数配置された芯金20のクローラ外周側に長ラグ16Aと短ラグ16Bをクローラ周方向に交互に配置するラグ配置パターンは、第2〜第5実施形態のいずれのゴムクローラにも適用することができる。
【0105】
前述した実施形態では、ゴム体12の中央線と芯金20の中央線CLとを一致させる構成としているが、本発明はこの構成に限定されず、ゴム体12の中央線に対して芯金20の中央線CLがクローラ幅方向にずれていてもよい。
【0106】
また、前述した実施形態では、ゴムクローラ10の引張応力の補強用に補強層18を埋設しているが、本発明はこの構成に限定されず、補強層18を用いずに、クローラ周方向に互いに隣接する芯金20同士を連結部材(例えば、リング状の連結部材など)で連結、又は、芯金に形成した連結部同士(例えば、フックとピンなど)を連結して無端状とした芯金連結体でゴムクローラ10の引張応力を補強する構成としてもよい。
【0107】
さらに、前述した実施形態では、弾性体の一例としてのゴム材でゴム体12を形成しているが、本発明はこの構成に限定されず、弾性体の一例としてゴム材以外のエラストマーなどを用いてもよい。
【0108】
またさらに、前述した実施形態では、芯金20を金属製としているが、本発明はこの構成に限定されず、ゴムクローラ10の仕様に対して十分な強度を備えるならば、芯金20を例えば、樹脂製としてもよい。
【0109】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0110】
10、50、60、70、80 ゴムクローラ(弾性クローラ)
12 ゴム体(弾性体)
12A 内周部
20、90 芯金
28 係合凹部
30、52、62、72 支持部
30A、52A、62A、72A 頂面
32A、54A、64A、74A 小頂面
34、56、65、69、76 分割溝
100 駆動輪
100B 歯部
102 遊動輪
104 転輪
D1 深さ
D2 深さ
CL 中央線
S クローラ周方向(弾性体の周方向)
W クローラ幅方向(弾性体の幅方向)
IN クローラ内周側(弾性体の内周側)
OUT クローラ外周側(弾性体の外周側)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪及び遊動輪に巻き掛けられる無端帯状の弾性体と、
前記弾性体に該弾性体の周方向に間隔をあけて複数埋設された芯金と、
前記弾性体の内周部の前記周方向に隣り合う前記芯金間に形成され、前記駆動輪に設けられた左右一対の歯部がそれぞれ挿入係合される一対の係合凹部と、
前記内周部の前記周方向に隣り合う前記芯金間でかつ前記一対の係合凹部間に形成され、前記弾性体の内周側に隆起し、頂面で前記遊動輪を支持する支持部と、
前記支持部に形成され、一方の前記係合凹部から他方の前記係合凹部へ延びて前記頂面を前記周方向に分割する分割溝と、
を有する弾性クローラ。
【請求項2】
前記分割溝は、前記幅方向に沿って直線状に延びている請求項1に記載の弾性クローラ。
【請求項3】
1本の前記分割溝が、前記周方向に隣り合う前記芯金間の中央を通る直線上に形成されている請求項1または請求項2に記載の弾性クローラ。
【請求項4】
前記頂面は、前記分割溝によって複数の小頂面に分割され、
前記小頂面の一部が前記周方向に隣り合う前記小頂面の一部と前記幅方向に重なる請求項1に記載の弾性クローラ。
【請求項5】
前記頂面を基準にした前記分割溝の深さと前記係合凹部の深さとが同じである請求項1〜4のいずれか1項に記載の弾性クローラ。
【請求項6】
前記支持部は、前記頂面で転輪を支持する請求項1〜5のいずれか1項に記載の弾性クローラ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2013−107472(P2013−107472A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253081(P2011−253081)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)