説明

弾性ホイール

【課題】 本発明は、操縦安定性の著しい悪化を招くことなく走行時の振動や騒音レベルを低減しうる弾性ホイールを提供する。
【解決手段】 タイヤが装着されるリム2と、車軸に固定されるディスク3とが振動を吸収するダンパー8を有した連結手段4を介して弾性的に連結された弾性ホイール1である。前記ダンパー8は、ゴムとコードとを含んだ複合材料からなることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操縦安定性の著しい悪化を招くことなく走行時の振動や騒音レベルを低減しうる弾性ホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
図12に示されるように、タイヤが装着されるリムaと、車軸に固定されるディスクbとの間に、振動吸収用のダンパーcを介在させた弾性ホイールが提案されている(下記特許文献1参照。)。このような弾性ホイールは、路面からタイヤに入力される振動をダンパーcで吸収し、車軸への伝達を抑制する。これにより車両の振動騒音レベルを低減させる。このため、弾性ホイールは、通常の金属ホイールに比べると鉛直方向の剛性である縦剛性が小さい。
【0003】
ところで、車両がコーナリングするときには、ダンパーcの接地面の直上に位置する部分には、タイヤからの横力を受ける。従来の弾性ホイールでは、ダンパーcがゴムからなるため、その回転軸方向の剛性である横剛性も小さなものとなり、横力を車軸へ充分に伝達できない。このため、旋回時の操縦安定性が悪化するという問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開2003−104001号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、縦剛性を小さくしつつも横剛性を大きく確保することにより、操縦安定性の著しい悪化を招くことなく走行時の振動や騒音レベルを低減しうる弾性ホイールを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のうち請求項1記載の発明は、タイヤが装着されるリムと、車軸に固定されるディスクとが振動吸収用のダンパーを有する連結手段を介して弾性的に連結された弾性ホイールであって、前記ダンパーは、ゴムとコードとを含んだ複合材料からなることを特徴としている。
【0007】
また請求項2記載の発明は、前記連結手段は、前記リムの内周面から半径方向内方に突出しかつ円周方向にのびる少なくとも一つの内向きフランジ片と、前記ディスクの外周縁に設けられかつ前記内向きフランジ片とリムの回転軸方向で向き合うとともに前記リムの内周面から離間して位置する少なくとも一つの外向きフランジ片とを含み、かつ前記ダンパーは、前記内向きフランジ片と前記外向きフランジ片との間を連結し円周方向にのびるリング状をなすことを特徴とする請求項1に記載の弾性ホイールである。
【0008】
また請求項3記載の発明は、前記ダンパーは、円周方向にのびるコードを含むことを特徴とする請求項2記載の弾性ホイールである。
【0009】
また請求項4記載の発明は、前記ダンパーは、軸方向にのびるコードを含むことを特徴とする請求項2又は3記載の弾性ホイールである。
【0010】
また請求項5記載の発明は、前記ダンパーは、半径方向にのびるコードを含むことを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の弾性ホイールである。
【0011】
また請求項6記載の発明は、前記コードは、有機繊維コード又はスチールコードである請求項1乃至5のいずれかに記載の弾性ホイールである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の弾性ホイールは、タイヤが装着されるリムと、車軸に固定されるディスクとが振動吸収用のダンパーを有する連結手段を介して弾性的に連結される。従って、リムからディスクへと伝わる振動をダンパーで吸収し、車両の乗り心地の向上や騒音低減を図ることができる。またダンパーは、ゴムとコードとを含んだ複合材料からなることにより、その剛性を容易に調節でき、縦剛性を低下させつつ横剛性を容易に高めることができる。従って、例えばこのような弾性ホイールを乗用車のような車両に採用することにより、操縦安定性の著しい低下なしに乗り心地及び騒音性能などが改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
図1には、本実施形態の弾性ホイール1の断面図が示される。図2はその要部拡大図である。弾性ホイール1は、タイヤTが装着されるリム2と、車軸に固定されるディスク3と、前記リム2と前記ディスク3とを弾性的に連結するための連結部材4とを含む。
【0014】
前記リム2は、タイヤTのビード部が着座する一対のリムシート2a、2aと、各リムシート2aのリム回転軸方向(以下、単に軸方向という。)の外端から半径方向の外側にのびるフランジ部2b、2bと、前記リムシート2a、2aの間に設けられた外径が小さいウエル2cとを含み、図1で示される断面形状が実質的に円周方向に連続する。本実施形態では、自動車用のリム2として前記ウエル2cの外径がより小さく構成されたいわゆる深底リムが示されるが、浅底リムや平底リムであっても良い。リム2は、例えば鉄、アルミ合金又はマグネシウム合金のような実質的に非伸張性の金属材料で形成されている。
【0015】
前記ディスク3は、例えば四輪自動車の車軸Dに固定される。車軸Dは、軸本体D1と、その先端に設けられたハブD2とを含む。ハブD2には、ホイールを取り付けるためのハブボルトBが車両外側に突出して設けられる。ハブボルトBは、軸本体D1の中心から例えば予め規格化された直径(PCD)を有する円周上に複数本が設けられる。
【0016】
ディスク3は、前記ハブD2に取り付けられる中央部3aと、該中央部3aから半径方向外側にのびている外側部3bとを含んで構成される。ディスク3の中央部3aには、その中心にセンターボア12が、その周りには前記ハブボルトBと対応するボルト穴13がそれぞれ設けられている。中央部3aは、ハブD2に組み入れられる。また、そのボルト穴13から外側にはみ出すハブボルトBには、ハブナット14が締め付けられる。これにより、ディスク3は、車軸Dに一体に固定される。
【0017】
またディスク3の外側部3bは、内側部3aから半径方向外側にのびている。剛性を高めるために、外側部3bは適宜湾曲させることができる。軽量化するために、外側部3bは放射状に設けられたスポーク状や、ワイヤーが用いられたメッシュ状に加工され、適宜の空洞部が設けられる。ディスク3は、リム2と同様に、鉄、アルミ合金又はマグネシウム合金のような実質的に非伸張性の金属材料で形成される。なお符号BRは、ハブD2と中央部3aとの間に挟まれて装着されたブレーキロータを示す。
【0018】
前記連結手段4は、本実施形態では、リム2の内周面2iから半径方向内方に突出してかつ円周方向にのびる少なくとも一つの内向きフランジ片5と、前記ディスク3の外周縁に設けられかつ前記内向きフランジ片5と軸方向で向き合うとともに前記リム2の内周面2iから離間して位置する少なくとも一つの外向きフランジ片7と、内向きフランジ片7と外向きフランジ片5との間を連結する振動吸収用のダンパー8とを含むものが例示される。
【0019】
前記リムの内周面2iは、リム2のタイヤTが装着される側と反対側の面である。本実施形態では、リム2の内周面2iにおいて、リム巾中心線RCの両側に距離を隔てた複数個、この例では2個の内向きフランジ片5、5が設けられている。内向きフランジ片5は、半径方向内方に所定の長さで突出し、この例では円周方向に連続してのびている。これにより、向き合う2つの内向きフランジ片5、5及びその間のリム3の内周面2iにより、円周方向にのびる溝状の空所Oが形成される。内向きフランジ片5の内端面は、内径Raの円を描いている。
【0020】
内向きフランジ片5は、例えばリム2とは別に成形された後、該リム2に溶接やネジ止め等によって固着されても良いし、またリム2とともに一体成形されても良い。また内向きフランジ片5は、円周方向に完全に連続する態様に限定されるものではなく、円弧状でも良い。この場合、内向きフランジ片5は、リム2の内周面2iに間欠的に設けられるのが望ましい。
【0021】
内向きフランジ片5が複数個の場合、少なくとも一方は、例えば半径方向内側への突出高さを変えうるように、分割可能な分割式内向きフランジ片6として構成されるものが望ましい。本実施形態の分割式内向きフランジ片6は、リム2の内周面2iに固定された小高さで半径方向内側に突出しかつ円周方向にのびる根元部5aと、この根元部5aに固定具5cを用いて取り外し自在に設けられたリング本体5bとから構成される。固定具5cとしては、例えばボルト等が好適である。根本部5aの最大内径Rcは、内向きフランジ片5の前記内径Raよりも大きく、かつ、ディスク3の外向きフランジ片7の最大外径Rbとほぼ同じかそれよりもさらに大きいことが望ましい。
【0022】
前記外向きフランジ片7は、ディスク3の外側部3bの外周縁に一体に設けられる。この例では、ディスク3の外周縁が外向きフランジ片7を兼ねている。また本実施形態の外向きフランジ片7は、タイヤ半径方向と実質的に平行であり、円周方向に連続してのびている。好ましくは、外向きフランジ片7の端面は滑らかに面取りされたものが望ましい。外向きフランジ片7の外径Rbは、前記内向きフランジ片5の内径Raよりも大きく形成される。しかし、前記外径Rbは、内向きフランジ片5、5間の空所Oにおけるリムの内周面2iの内径Rrよりも小である。また、外向きフランジ片7の軸方向の巾Waは、前記空所Oの巾Wよりも小さい。このため、図2に示されるように、リム2及びディスク3の各軸中心を揃えた状態において、外向きフランジ片7は、前記空所Oの中で抜け止めされつつ軸方向及び半径方向に移動可能な遊びを持って位置することができる。この遊びは、タイヤへの負荷荷重やダンパー8の剛性などに基づいて、適宜設定される。
【0023】
前記ダンパー8は、リムの軸方向で向き合っている内向きフランジ片5と外向きフランジ片7との間を接続し、かつ、円周方向にのびている。図2に示されるように、本実施形態では、外向きフランジ片7の両側にそれぞれダンパー8が設けられている。またダンパー8は、例えば軸方向長い偏平な矩形断面を持っており、図3に示されるように円周方向に連続したリング状で構成される。ダンパー8の両側面は、各フランジ片5ないし7と、例えば加硫接着、ネジ止め及び/又は接着剤などを用いて強固に固着される。この例では、ダンパー8の半径方向の外面8A及び内面8Bは、外部から拘束を受けない非拘束面として設けられる。
【0024】
図4には、ダンパー8の断面図が示される。ダンパー8は、ゴム8aと複数本のコード8bとを含んだ複合材料で構成される。この実施形態のダンパー8は、コード8bの長手方向がリム2の円周方向に沿って配されたものが例示される。このようなダンパー8は、コードプライ9を複数重ねたプライ積層体10を加硫成形して作ることができる。コードプライ9は、平行に配列された複数のコード8bと、これを被覆する未加硫のゴム8aとで構成されたシート状である。またプライ積層体10は、図5(A)に示されるように、コードプライ9を連続して渦巻き状に巻き重ねたものや、図5(B)に示されるように、リング状のコードプライ9を重ねることでも良い。さらには、図5(A)及び(B)の方法を組み合わせたものでも良い。
【0025】
本実施形態の弾性ホイール1は、先ず分割式内向きフランジ片6のリング本体5bを取り外し、そこから、前記空所Oに、外向きフランジ片7の両側に予めダンパー8を仮固着したディスク3が組み入れられる。しかる後、前記リング本体5bが、固定具5cを用いて根元部5aに取り付けられる。このように、一方の内向きフランジ片5を分割式とした場合、リング本体5bを根本部5aから取り外すことで、前記溝状の空所Oへの外向きフランジ片7の挿入や、ダンパー8のメンテナンス等を容易化でき、作業性が大幅に向上する。なお、組立体は例えば加硫されることにより、ダンパー8が各フランジ片5ないし7と一体化される。
【0026】
図6(A)には直進状態の車両に装着されている弾性ホイール1の断面模式図が示され、同図(B)はそのX部拡大図である。路面からの反力により、リム2はディスク3に対して相対的に上昇する。これにより、ダンパー8は、内向きフランジ片5と外向きフランジ片7との間でせん断力を受けせん断変形する。路面からの反力に応じたダンパー8のせん断変形により、車体に伝えられる衝撃、振動が吸収される。この作用は、乗り心地を向上させ、かつ、走行時の騒音を低減させる。また、前記せん断変形は実質的にダンパー8の体積変化を生じない変形である。このため、ダンパー8のゴム8aの部分は、コード8bの影響を受けずに前記せん断変形をなす。従って、弾性ホイール1の鉛直方向の荷重に対する剛性(即ち縦剛性)は、ゴム8aの弾性に依存した小さな値になる。
【0027】
また前記鉛直荷重が大きくなった場合、外向きフランジ片7がリム2の内周面2iと接触し、両者の相対的な変位が規制される。この場合、例えば、外向きフランジ片7の外端部及び/又は前記内周面2iの少なくも一方に、前記接触時の衝撃を緩和しうる緩衝材(図示省略)を設けることが望ましい。
【0028】
他方、図7(A)には旋回状態の車両に装着されている弾性ホイール1の断面模式図が示され、同図(B)はそのX部拡大図である。路面からの横力Fが大きくなると、リム2はディスク3に対して軸方向に相対的に移動する。その移動量は、接地面の上方の位置において最も大きくなる。前記位置において、内向きフランジ片5と外向きフランジ片7との間では、旋回内側のダンパー8iは引張力を、旋回外側のダンパー8oは圧縮力をそれぞれ受けて変形する。前記圧縮力及び引張力は、ダンパー8の体積変化を生じさせる力である。しかし、ゴム8aは、本来体積変化を起こさないため、拘束されていない非拘束面8A、8Bで膨れたり又は縮もうとする。このとき、ゴム8aの中に存在するコード8bは、ゴム8aの動きを抑えるため、ダンパー8の見かけの剛性が大きくなる。以上より、旋回時にはダンパー8の横剛性が相対的に高められる。
【0029】
このように、本発明の弾性ホイール1は、縦剛性を小さくしつつ横剛性を大きく確保することにより、操縦安定性の著しい悪化を招くことなく走行時の振動や騒音レベルを低減することができる。
【0030】
前記ダンパー8のゴム8aとしては、特に限定されないが、例えばニトリルゴム(NBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)等のジエン系ゴム、又はブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)等の非ジエン系ゴムの1種又は2種以上が挙げられる。とりわけ、振動の吸収効果の観点より、複素弾性率E*が0.5〜5.0MPa、より好ましくは1.0〜2.0MPaのゴム組成物が好ましい。また前記ゴム組成物は耐久性の観点より、その損失正接tan δが好ましくは0.05〜0.2、より好ましくは0.05〜0.1であるのが望ましい。なお複素弾性率E及び損失正接tan δは、粘弾性スペクトロメータにて温度70℃、初期伸張10%、動歪み±1.0%、周波数10Hzの条件下で測定した値とする。
【0031】
また前記コード8bとしては、ナイロンコード以外にも、ポリエステル、レーヨン、ビニロン、芳香族ポリアミド、コットン、セルロース樹脂、結晶性ポリブタジエンなどの有機繊維を材料としたコードの他、ボロン、グラスファイバー、カーボンファイバー等の無機材料からなるコードの1種又は2種以上が用いられる。好ましくは、有機繊維コードである。コード8bの太さは、特に限定はされないが、小さすぎると横剛性の向上を十分に期待できない傾向があり、逆に大きすぎてもゴム8aとの接着性が低下する傾向がある。好ましくは有機繊維コードの場合800〜2000dtex程度が望ましく、またスチール等の非有機繊維コードの場合には、外径が0.5〜1.0mm程度のものが望ましい。
【0032】
また本実施形態のダンパー8は、円周方向に沿ってのびるコード8bを有するものが示されているが、例えば、図8(A)に示されるように、軸方向にのびるコード8b2を含むものでも良い。図8(A)の態様では、円周方向に沿ってのびるコード8b1と、軸方向に沿ってのびるコード8b2とを含み、この例では、コード8b1及び8b2は、実質的に90゜の角度で交差する。軸方向に沿ってのびるコード8b2は、旋回時に生じる軸方向の圧縮力及び引張力に対して大きな抵抗性を示す。このため、ダンパー8の横剛性がさらに向上され、より一層操縦安定性を高めるのに役立つ。なお、ダンパー8の全てのコード8bを、軸方向に沿って配列させることも可能である。
【0033】
図8(B)の実施形態では、ダンパー8が、円周方向に対して斜めに傾いたコード8b3、8b4を含むものが例示される。特にこの例では、ダンパー8が、円周方向に対して10゜よりも大かつ80゜未満の角度θ1で傾いたコード8b3と、前記コード8b3とは逆向きかつ円周方向に対して10゜よりも大かつ80゜未満の角度θ2で傾いたコード8b4とが含まれている。前記コード8b3及び8b4は、好ましくは0よりも大かつ90°の交差角度(θ1+θ2)を持つ。このようなコード8b3及び8b4を含むダンパー8は、該ダンパー8の円周方向に高い剛性を持つ。従って、図4の態様と同様に車両の駆動ないし制動時のようにダンパー8に大きなトルク(ねじり)が作用する場合、ダンパー8のねじれ角を抑えることができる。これにより、車両の駆動及び制動時のレスポンスを向上させることができる。
【0034】
また図9(A)、(B)の実施形態では、ダンパー8は、半径方向(放射状又はダンパーの厚さ方向とも言える。)にのびるコード8b5を含むものが例示される。このようなダンパー8は、図9(A)に示されるように、円周方向Yに沿って配列されたコード8bを有するコードプライを半径方向に沿って連続して屈曲させながら折り畳むことにより、半径方向に沿ったコード8b5を形成できる。また同図(B)のように、半径方向に沿ってのびるコード8b5を円周方向Yに重ねることによっても形成できる。
【0035】
また図10に示されるように、ダンパー8は、内向きフランジ片5及び外向きフランジ片7と接着されていない非拘束面8A、8Bに沿って複数本のコード8bを配列し、その間を実質的にゴム層で形成することもできる。この場合、非拘束面の変形を効果的に防止することで、少ないコードの量でダンパー8の横剛性を高めることもできる。
【実施例】
【0036】
図1及び2に示される基本構造の弾性ホイール(リムのサイズ7JJ×16)を表1の仕様に基づいて試作し、実車走行により乗り心地、操縦安定性及び騒音性能をテストした。ダンパーは、ナイロンコードを天然ゴムを主体としたゴムでトッピングしたコードプライを用いて作られ、その断面形状は、厚さ10mm、幅25mmとした。コードプライは、直径0.4mmのナイロンコードがプライ幅1mm当たりに1本打ち込まれたものが使用された。また、従来例として、同サイズの通常のアルミホイールについもテストを行い性能を比較した。テストの方法は、次の通りである。
【0037】
<乗り心地、操縦安定性>
以下の条件にて、タイヤテストコースを走行させ、乗り心地及び操縦安定性(操舵レスポンス、旋回時安定感、レーンチェンジ収束性、駆動制動時グリップ)をドライバーの官能評価により評価した。結果は、各々従来例を6点とする10点法であり、数値が大きいほど良好である。
タイヤ:225/50R16(空入りラジアルタイヤ)
内圧:230kPa
車両:国産乗用車、排気量2000cc(全輪に供試車輪を装着)
走行路面:ドライアスファルト路面
【0038】
<騒音性能>
ロードノイズテストコースを前記車両で速度60km/hにて走行させ、運転席右耳許位置にてオーバオールの騒音を測定し、その周波数分析が行われた。
テストの結果などを表1及び図11に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
表1及び図11に示されるように、実施例の弾性ホイールは、操縦安定性を損ねることなく乗り心地を向上しており、しかも100Hz以上の周波数帯でロードノイズを有意に低減していることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本実施形態の弾性ホイールの断面図である。
【図2】その部分拡大図である。
【図3】ダンパーの斜視図である。
【図4】ダンパーの断面図である。
【図5】(A)、(B)はダンパーの製法を説明する側面略図である。
【図6】(A)は直進走行時の弾性ホイールの作用を説明する断面図、(B)はそのX部拡大図であるである。
【図7】(A)は旋回走行時の弾性ホイールの作用を説明する断面図、(B)はそのX部拡大図であるである。
【図8】(A)、(B)はダンパーの他の実施形態を示す斜視図である。
【図9】(A)、(B)はダンパーの他の実施形態を示す斜視図である。
【図10】ダンパーの他の実施形態を示す断面図である。
【図11】走行ノイズの周波数分析結果を示すグラフである。
【図12】従来の弾性ホイールを示す断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 弾性ホイール
2 リム
3 ディスク
4 連結手段
5 ダンパー
5a、5b リング片
6 内向きフランジ片
7 外向きフランジ片
8 ダンパー
8a ゴム
8b コード
T タイヤ
D 車軸


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤが装着されるリムと、車軸に固定されるディスクとが振動吸収用のダンパーを有する連結手段を介して弾性的に連結された弾性ホイールであって、
前記ダンパーは、ゴムとコードとを含んだ複合材料からなることを特徴とする弾性ホイール。
【請求項2】
前記連結手段は、前記リムの内周面から半径方向内方に突出しかつ円周方向にのびる少なくとも一つの内向きフランジ片と、
前記ディスクの外周縁に設けられかつ前記内向きフランジ片とリムの回転軸方向で向き合うとともに前記リムの内周面から離間して位置する少なくとも一つの外向きフランジ片とを含み、
かつ前記ダンパーは、前記内向きフランジ片と前記外向きフランジ片との間を連結し円周方向にのびるリング状をなすことを特徴とする請求項1に記載の弾性ホイール。
【請求項3】
前記ダンパーは、円周方向にのびるコードを含むことを特徴とする請求項2記載の弾性ホイール。
【請求項4】
前記ダンパーは、軸方向にのびるコードを含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の弾性ホイール。
【請求項5】
前記ダンパーは、半径方向にのびるコードを含むことを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の弾性ホイール。
【請求項6】
前記コードは、有機繊維コード又はスチールコードである請求項1乃至5のいずれかに記載の弾性ホイール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−35987(P2006−35987A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−217592(P2004−217592)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)