説明

弾性的に伸縮可能な織物状力センサアレイ及びその作製方法

力又は圧力トランスデューサアレイ30は、平行な行及び列に配置された弾性的に伸縮可能なポリマー導電糸31,32を有し、これら導電糸は、その交点では、その上に作用する圧力又は力に反比例的に変動する電気抵抗率を有するピエゾ抵抗材37に接触して、力又は圧力センサ素子のマトリクスアレイを形成する。導電糸は、可撓性のある弾性的に伸縮可能な基材シート33,35のうちの1つ又はこれらの対に固定され、基材シート33,35は、PVC等の絶縁ポリマー製の薄いシート、又は、さらに大きい弾性を有し且つ人の身体部分等の不規則な形状の物に形状適合するようにライクラ若しくはスパンデックス等の弾性的に伸縮可能な織物の薄いシートから作製される。センサアレイの弾性的伸縮能力は、行方向導電糸201−1及び列方向導電糸201−2のいずれか又は双方を直線ではなく波状に湾曲した蛇行経路に配置することによって、任意に向上される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に作用する力又は圧力を測定するのに用いられるトランスデューサ又はセンサに関する。より詳細には、本発明は、弾性的に伸縮可能なピエゾ抵抗糸センサ素子を用い且つ人が着用可能な衣類に組み込めるほど不規則な形状の物に十分形状適合可能である織物状力センサアレイ、及びそのようなアレイの作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人の体が椅子又はベッドのような物によって支持されるときはいつでも、個人の重量に応じて生成される垂直力及びせん断力が、支持面から、皮膚、脂肪組織、筋肉等を通じて骨格に伝達される。支持面によって身体の各部に作用する力は、体重の力と等しく且つ逆向きであるが、場合によっては組織に損傷を引き起こす可能性がある。身体の各部への力は、内部の血管を圧迫し、組織からの栄養素を閉塞させる可能性があり、これらの力の大きさ及び継続期間の積によって組織の損傷又は病的状態が発生するか否かが決まる。通常、高圧のみでは組織に有害な影響を与えるのには十分でない。例えば深海に潜るダイバーは、大きいが均等に分布した垂直力を受け、組織の損傷を被らない。しかしながら、例えば高圧エリアに隣接して低圧エリアがあることに起因して、身体部分に十分大きな外圧の勾配が存在する場合には、内部の体液はより低圧のエリアに移動する可能性がある。身体部分に対して外部から作用する接線力又はせん断力は、内部の毛細血管及び血管をその長手方向軸に沿ってねじ曲げることによって、それらを潰してしまう可能性もある。それ故、組織に対して作用する、表面力の勾配(圧力勾配)及び外部から加わるせん断力の双方を知ることは、非常に重要である。なぜなら、組織の緊張及びそれに続く組織死をもたらすものが、上記の要因を組み合わせたものであるからである。このため、互いに独立しているかもしれない比較的小さな外部からのせん断力及び垂直力であっても、組み合わさると、内部組織に対し損傷を起こす程大きなせん断応力を生む可能性がある。褥瘡のような組織の損傷を発症する危険性が最も高い人体のエリアは、かかと、坐骨結節、大転子、後頭部及び仙骨である。
【0003】
人体の組織に対して作用する垂直力及びせん断力を測定するのに使用することができる様々な圧力/力センサ、せん断センサ及びセンサアレイは、利用可能である。例えば、1996年11月5日付の本発明者の特許文献1「Multi-Directional Piezoresistive Shear And Normal Force Sensors For Hospital Mattresses And Seat Cushions」は、横になった又は座った患者の身体に対してマットレス又は椅子のパッドによって加えられる反力を測定するための、薄型で平面状のセンサを開示している。特許文献1の明細書に開示される発明の1つの実施形態は、絶縁されたセンサ素子パッドの二次元アレイで構成されるセンサを備え、センサ素子パッドはそれぞれ、導電性の粒子で満たされた非導電性のエラストマーポリマーのマトリクスから形成された薄型の平坦な層からなる。各センサパッドの上側及び下側と電気的に接触した上下の導電素子からなるマトリクスによって、各パッドの電気抵抗を別々に測定することが可能になる。例えば人の身体によってセンサマトリクスに作用する垂直力に対応した各パッドに作用する圧力は、センサパッドの厚みを減少させ、それ故ピエゾ抵抗のバルク効果又は体積効果によってそのセンサパッドの電気抵抗を低くする。
【0004】
また、本発明者は、2001年4月17日付の特許文献2「Piezoresistive Foot Pressure Measurement」において、人間の足又は馬の蹄に作用する圧力を測定するための新規の方法及び装置も開示した。特許文献2において開示された新規の装置は、薄く可撓性のあるポリマーのパッケージ内に封入されたピエゾ抵抗力センサ素子からなる矩形状のアレイを備えている。各センサ素子は、シリコーンゴムのようなエラストマーのマトリクス内で懸濁する導電性粒子が含浸されたポリマーの織物状メッシュを備えている。ピエゾ抵抗のメッシュ層は、好ましくはプリント金属経路を含浸させたナイロンメッシュから作製される行と列の導体ストリップを積層させたものからなるアレイの間に、挟まれている。行方向導体と列方向導体との間に挟まれるピエゾ抵抗物質の各領域は、センサの矩形状アレイ内に、個々にアドレス指定可能な垂直力又は圧力のセンサを備えている。このセンサの抵抗は、このセンサに作用する圧力の関数として予め設定された形で反比例的に変動し、それ故、アレイに接触している物体によって加えられる力又は圧力の分布のマッピングを可能にする。
【0005】
2003年4月8日付の特許文献3「Pressure Measurement Sensor With Piezoresistive Thread Lattice」では、本発明者は、表面に対して加えられる力又は圧力を測定するためのトランスデューサセンサアレイを開示した。このアレイは、個々の力又は圧力センサトランスデューサ素子からなる織物状の二次元格子を有し、この素子は、細長く可撓性のある糸の対が交差する領域を含み、糸はそれぞれ、ピエゾ抵抗物質に対して加えられる圧力と反比例的に変動する電気抵抗性を有するピエゾ抵抗物質層によって覆われる中心の導電性ワイヤーコアからなる。
【0006】
2007年4月10日付の特許文献4「Normal Force Gradient/Shear Force Sensors And Method Of Measuring Internal Biological Tissue Stress」では、本発明者は、椅子又はベッドによって支持される人の組織における内部応力を測定するための垂直力勾配/せん断力センサ装置及び測定方法を開示した。この装置は、中央のせん断力センサから半径方向に離れて配置されて周囲にある垂直力センサからなる平面状マトリクスアレイを備えている。せん断力センサはそれぞれ、周方向に間隔をあけて配置された電極によって縁どられた円形の開口内に位置する導電性のディスクを備えている。ディスク及び電極は、ポリウレタンのような伸縮性物質から作製される上下の被覆シートの間に位置する。一方の被覆シートはディスクに接着され、他方の被覆シートは電極の支持シートに接着される。アレイに対して加えられるせん断力に応じた被覆シート同士の間での動きによって、電極に対するディスクの圧迫が増減し、それによってディスクと電極との間の導電性が、せん断力の大きさ及び方向に比例して変動する。各垂直力センサは、行方向導体と列方向導体との間で圧迫される導電膜を有している。センサの対におけるコンダクタンスの測定値は、センサに対して加えられる垂直力に比例して変動するが、身体部分によってセンサアレイに対して加えられる垂直力の勾配ベクトルを計算するのに使用される。この勾配ベクトルは、アルゴリズムにおいてせん断力ベクトルと合成されて、例えば骨ばった隆起に近い肉での内部せん断反力を算出する。
【0007】
2008年3月15日付で出願された同時係属中の米国特許出願第12/075,937号明細書において、本発明者は「an Adaptive Cushion Method And Apparatus For Minimizing Force Concentrations On A Human Body」を開示した。この装置は、マットレス又は椅子の上に置くための適応緩衝体を有しており、この緩衝体は、空気圧縮機及びバルブを用いて変化する圧力に個々に合わせることができる複数の空気袋のセルからなるマトリクスを有している。また、上記出願において開示された装置は、新規な構成をもつ力センサトランスデューサからなり且つ可撓性があって伸縮可能である平面状アレイも有している。このアレイは、好ましくは緩衝体の上側表面の上に位置決めされる。このアレイは、緩衝体の各空気袋のセルと垂直な向きに並ぶ少なくとも1つのセンサを有している。
【0008】
上述で引用した特許出願において開示されたセンサアレイは、伸縮可能な織物状の行方向導体及び列方向導体を有し、これらの導体は、その内側で対面する導電性表面同士の間に、ピエゾ抵抗材料で被覆された伸縮可能な織物シートを挟んでいる。このように構成された平面状センサアレイは、空気袋のセルの上に重なっているセンサアレイの上側表面の上で支持される人体の重量によってセンサアレイに作用する力に応じて、弾性的に変形することが可能である。好ましい状態では、センサアレイは、空気袋のセルの上側表面の上に置かれ、そして、形状が合致し耐水性を有する外形シートによってその位置に維持される。行方向導体及び列方向導体の双方のための織物状マトリクスだけでなく中央のピエゾ抵抗層は全てが、その素材の面内で任意の方向に弾性的に変形可能な素材から作製される。好ましい実施形態では、織物状マトリクス、又は行方向導体シート及び列方向導体シートは、銅の基礎被覆及びニッケルのカバーコートを用いてめっきが施される。中央のピエゾ抵抗シートは、ピエゾ抵抗被覆を用いて被覆された合成繊維マトリクスからなる。また、センサアレイは、二方向の伸縮特性をもつ即ち直交方向に弾性的に伸縮可能であるライクラ(Lycra)のような繊維で作製される上側カバーシートも有する。
【0009】
センサアレイ内の個々のセンサの抵抗の測定同士の間(この測定によってセンサに作用する力が求められる)でのクロストーク(cross-talk)を回避するために、センサは、非両方向性で非対称である電流対電圧のインピーダンス特性をセンサに与える新規の方法で構成された。センサは、上記特許出願の開示で詳細に説明された新規の方法によって、中央のピエゾ抵抗シートの上側表面又は下側表面のいずれかの上に半導体型P−N接合を形成するようにこの上側表面又は下側表面を変えることにより、ダイオードのような特性を有するように改造された。
【0010】
上述した可撓性のある力センサアレイは、その目的とする機能を実行するのには非常に効果的であることを証明している。しかしながら、従来のセンサアレイによって提供されていない幾分異なる特性を有する力センサアレイを利用可能にすることが望ましいような状況が存在する。
【0011】
例えば、典型的な既存の可撓性のあるセンサアレイを用いて、非常に形状がフィットし共形の車椅子の座席クッション又は非常に形状がフィットし極低圧のベッドのマットレス若しくはクッションによって人体に作用する圧力を測定する場合、そのようなセンサアレイは、多くの場合にクッション又はベッドの支持表面の機能と干渉し、ベッド又は椅子が人をどのように支持しているかをマッピングするのに用いられる力の測定値として誤った測定値を与える。そのような誤りによって「ハンモック」効果が結果として生じる。なお、この効果は、固定された支持位置同士の間に展開された可撓性があるがドレープ性(drapable)がないセンサアレイが、患者の形状に正確に適合することができないことである。この効果は、例えば、センサアレイを本質的に伸縮不能にするワイヤーコアの検出素子を用いたセンサアレイを使用すると、生じる可能性がある。センサアレイの形状適合性が欠如することによって、クッション又はベッドによる患者の支持の仕方が変化し、また結果として、センサアレイ内の個々のセンサに作用する力又は圧力が、センサアレイがない場合に患者が実際に受ける力又は圧力よりも大きくなることも、頻繁に生じる。
【0012】
人の身体部分に対して作用する力を測定及びマッピングするためのこの力センサアレイが満足のいくものでなくなる別の状況は、足のような複雑な形状を有する身体部分に対し、目立たず邪魔にならない方法でそのような測定を行うことを試みる際に発生する。
【0013】
例えば、糖尿病患者は多くの場合に足の感覚を失う。糖尿病患者は、足に合わない靴が足の各部に過度の圧力をかけているときを感じ取ることができないので、圧力が作用する点が潰瘍につながる可能性があり、この潰瘍によって、次には足の切断が必要になるかもしれない。よって、そのような望ましくない結果を阻止するために、そのような問題を識別するのに用いることができるセンサアレイを有することが望ましく、それによって、靴のサイズ又は形状を変更する等の矯正措置を適時に取ることができる。
【0014】
人の足等の複合曲線を有する複雑な形状に対して作用する力を測定及びマッピングする問題に対処するために、人の足のような複雑で複合的に湾曲した物に容易に適合することが可能であるという点で、衣類の繊維と類似したセンサアレイを利用可能にすることが望ましいであろう。そのようなセンサアレイは、靴下等の衣類品の中に組み込むことができる。本発明は、上記のセンサアレイが上述の要件を満たすのに利用できないということに少なくとも部分的に対応して、着想された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第5,751,973号明細書
【特許文献2】米国特許第6,216,545号明細書
【特許文献3】米国特許第6,543,299号明細書
【特許文献4】米国特許第7,201,063号明細書
【発明の概要】
【0016】
本発明の目的は、人の身体部分等の複雑で曲線が複合した形状を有する物に形状適合する、力又は圧力検出トランスデューサの弾性的に伸縮可能なアレイを提供して、そのような物に作用する力又は圧力の測定及びマッピングを容易にすることである。
【0017】
本発明の別の目的は、人が装着可能な衣類品の中に組み込むのに十分軽量で形状適合するようにドレープ性があり弾性的に伸縮可能な織物のような圧力又は力センサアレイを、提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は、弾性的に伸縮可能な織物マトリクスの中に組み込まれ且つ薄く可撓性のある個々の力センサからなるマトリクスを含む、圧力又は力センサアレイを提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、靴下又は他の衣類品の中に組み込まれ且つピエゾ抵抗力センサ又はピエゾ抵抗圧力センサからなり薄く弾性的に伸縮可能でドレープ性がある、平面状アレイを提供することである。
【0020】
本発明の別の目的は、ピエゾ抵抗力センサ又はピエゾ抵抗圧力センサからなり薄く弾性的に伸縮可能でドレープ性があるアレイ、及びこのアレイに電気的に結合した電子制御モジュールを提供することであり、このモジュールは、個々のセンサの電気抵抗を測定するのに有効であり、それ故、アレイの様々な部分に作用する力又は圧力のマッピングを容易にする。
【0021】
本発明の別の目的は、弾性的に伸縮可能な織物のようなアレイを備える力又は圧力測定システムを提供することであり、このアレイは、行及び列からなるマトリクスに配列され且つ行電極及び列電極によって抵抗測定電子モジュールに接続された、個々のピエゾ抵抗圧力センサ素子又はピエゾ抵抗力センサ素子からなる。各センサ素子への導電経路は、ダイオードのような回路素子を有し、これによって個々のセンサのマトリクスアドレス指定におけるクロストークを最小限にする。
【0022】
本発明の別の目的は、行及び列に配列された導電糸の群を用いて、弾性的に伸縮可能で可撓性のある織物のような力又は圧力センサアレイを作製するための方法を提供することである。
【0023】
本発明の別の目的は、X−Yマトリクスに配列された可撓性があり弾性的に伸縮可能であり織物のような力又は圧力センサを製造するための方法を提供することであり、このセンサは、導電糸を交差させることによって接触するピエゾ抵抗物質を含む。
【0024】
本発明の別の目的は、ピエゾ抵抗材料で被覆された弾性的に伸縮可能であり可撓性のある導電糸を含む織物のような力又は圧力センサアレイを製造するための方法を提供することである。
【0025】
本発明の別の目的は、弾性的に伸縮可能な導電糸が非導電糸を用いて織物マトリクスに縫い付けられた、織物のような力又は圧力センサアレイを製造するための方法を提供することである。
【0026】
本発明の別の目的は、ピエゾ抵抗特性を有する弾性的に伸縮可能な導電糸を製造するための方法を提供することである。
【0027】
本発明の別の目的は、ダイオードのような非両方向性の電気的インピーダンス特性を有する弾性的に伸縮可能なピエゾ抵抗導電糸を製造するための方法を提供することである。
【0028】
本発明の別の目的は、導電糸を用いた弾性的に伸縮可能で可撓性のある力又は圧力センサアレイを提供することであるが、この導電糸は、弾性的に伸縮可能であることによってセンサアレイの伸縮性を向上させる。
【0029】
本発明の別の目的は、導電糸を用いた弾性的に伸縮可能で可撓性のある力又は圧力センサアレイを提供することであるが、この導電糸は、波状に配置され且つ弾性的に伸縮可能な基材に取り付けられることによってセンサアレイの弾性的な伸縮能力を向上させる。
【0030】
当業者であれば、添付の明細書、図面及び特許請求の範囲を読むことによって、本発明の様々な他の目的及び利点、並びに本発明のほとんどの新規な特徴が明らかとなるであろう。
【0031】
本明細書において開示される本発明は、その目的を達成し、記載される利点を提供することが十分に可能であるが、本明細書に記載される本発明の特徴は、好ましい実施形態を単に例示するものであることを理解されたい。よって、本発明者は、本発明における本発明者の排他的権利及び特権の範囲が記載される実施形態の詳細に限定されるのを意図していない。本発明者は、本明細書に含まれる記載から当然に推測できる本発明の均等物、適応形態及び変形形態が、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本発明の範囲内に含まれることを意図している。
【0032】
簡潔に述べると、本発明は、個別の力検出素子を有する新規の圧力又は力検出トランスデューサを含み、力検出素子は、薄く可撓性のあるポリマーシート又は織布若しくは不織布の薄いシートからなる基材の上又はこの基材の中の平面状アレイに、配列されている。本発明による圧力又は力センサアレイは、弾性的に伸縮可能な導電糸を利用し、この導電糸は、新規の製造技法を用いる絶縁ポリマーシート又は織物シートからなる薄く弾性的に可撓性のある基材シートに取り付けられる。センサアレイは、靴下等の衣類品の中に組み込めるように、十分に可撓性があり、ドレープ性があり且つ弾性的に伸縮可能である。この新規な構成によって、本発明による弾性的に伸縮可能で形状適合するようにドレープ性のある圧力又は力センサアレイは、人の足のような曲線が複合し且つ複雑な形状の物の上での力又は圧力の分布を測定及びマッピングするために使用することが可能になる。
【0033】
本発明による圧力センサアレイは、例えば、糖尿病又は他の病気に起因して足の感覚を失った患者の足に対して、合わない靴によって作用する圧力又は力の集中を測定及びマッピングするのに、有利に用いることができる。本発明による形状適合性のあるセンサアレイを用いて生成可能な圧力マップにより提供される情報を用いることによって、合わない靴をサイズ変更する、改造する又は交換して、患者の足に対する圧力の集中を、足における健康を脅かす潰瘍の形成をなくすように十分低い値のものに低減することが可能になる。
【0034】
本発明による弾性的に伸縮可能な力又は圧力センサアレイの基本的な実施形態は、例えば約2mm〜4mmの範囲の比較的小さな直径を有する可撓性のある導電糸を利用する。本発明のポリマーフィルム基材を用いる基本的な形態では、アレイ内の各センサ素子は、薄い上側絶縁ポリマー基材シートの下側表面に取り付けられた第1の導電糸、例えば上側行方向導電糸と、薄い下側絶縁ポリマー基材シートの上側表面に取り付けられた別の下側列方向導電糸との交差部によって形成される。上側ポリマー基材シート及び下側ポリマー基材シートの双方が、0.05mm〜0.076mm厚のエラストマーポリ塩化ビニル(PVC)等の可撓性があり弾性的に伸縮可能な材料から作製されるのが好ましい。
【0035】
本発明によれば、行方向糸と列方向糸との交差部等のセンサアレイ内における導電糸の各対の交差部は、糸同士の間に挟まれて、ピエゾ抵抗材料から作製された層、被覆、又は小さな点状体(dot)を含み、その電気抵抗は、その上に作用する力又は圧力に反比例的に変動する。ピエゾ抵抗材料は、センサ上の周期的圧力変動がセンサにおける電気抵抗対圧力の伝達関数で過度のヒステリシス効果を生じないように、弾性特性又はエラストマー特性を有するのが好ましい。上記の要件を満たす適切なピエゾ抵抗材料は、カーボンブラック(carbon black)又はカーボンファイバー等の導電性粒子で満たされたシリコーンゴムの固溶体からなる。
【0036】
交差する導電糸の対の間におけるピエゾ抵抗材料が、垂直力が導電糸を互いにより接近するように付勢する結果として圧縮されるとき、導電糸の対の間で測定される電気抵抗は、力又は圧力の大きさに比例して減少する。抵抗の減少は、ピエゾ抵抗の表面効果及び体積効果を組み合わせたものに起因すると考えられている。
【0037】
ピエゾ抵抗の表面効果において、導電糸の対とピエゾ抵抗地点(piezoresistive spot)との間の交差接触領域のサイズは、導電糸が共に押し付けられてこれによって導電糸同士の間の導電性が増大したとき、増大する。エラストマーのピエゾ抵抗材料が圧縮されることによって、ピエゾ抵抗の体積効果により導電性が明らかなほど増大するが、このことは、ピエゾ抵抗地点のエラストマーマトリクス内の導電性粒子が互いにより近接するように付勢され、ピエゾ抵抗地点の厚みが減少することの結果である。
【0038】
本発明の1つの態様によれば、ポリマーシート基材を用いる本発明の基本的な実施形態は、行方向導電糸及び列方向導電糸がそれぞれ取り付けられた上側ポリマーシート及び下側ポリマーシートの間に挟まれたピエゾ抵抗材料の薄いシートを用いる。本発明のこの実施形態は、3つの別個の層を有する。
【0039】
本発明によるポリマーフィルムのセンサアレイからなる好ましい二層の実施形態では、ピエゾ抵抗材料は、行方向導電糸、列方向導電糸、又は好ましくは行方向導電糸及び列方向導電糸の両方の外側表面に直接被覆され、これによってピエゾ抵抗材料を含む第3の中間基材シートが必要でなくなる。
【0040】
上述した本発明の2つの基本的な実施形態のいずれかのセンサ素子のようなQ個の個別のセンサ素子のアレイでは、各センサに作用する圧力又は力の大きさを明確に求めるのに必要とされる個別のセンサそれぞれの抵抗を明確に測定することは、Q個のセンサ素子に対して、R=Q+1個の導出導体を必要とする。このため、Q個のセンサ素子のそれぞれは、センサ素子の一方の端子が共通の導電可能な導出導体に接続され、各センサ素子の反対側の端子に別の導出導体を接続させることができる。
【0041】
m×n=Q個のセンサからなる四角形マトリクスについて、m行及びn列のセンサ導電糸におけるQ個の交点に位置するQ個のセンサのそれぞれをアドレス指定するのに必要とされる導出導体の数は、R=2√Q個のみである。このため、例えば、64個のセンサ素子のアレイでは、センサ素子のそれぞれの抵抗を個々に測定するには、65個の電気的に絶縁された導出導体が必要となる。一方で、マトリクスアドレス指定の配置を用いると、総計16個の導出導体、すなわち8個の行方向導体及び8個の列方向導体しか必要とならない。従って、各センサ素子の抵抗を測定するのにマトリクスアドレス指定を利用することが望ましい。
【0042】
しかしながら、センサ素子のマトリクスアドレス指定を用いてアレイ内のセンサ素子の抵抗を測定することに関連する問題が存在する。この問題は次の要因によって生じ、この要因は、アレイ内のアドレス指定されていない全てのセンサ素子の電気抵抗が、アドレス指定されたセンサ素子それぞれの抵抗に分路を形成し(shunt)、その結果、個々のセンサ素子の抵抗の測定値、そしてそれ故これらの測定値から推測される圧力の測定値にクロストーク誤差が生じるということである。
【0043】
クロストークの問題を回避するために、本発明によるセンサは、非対称でダイオードのような電流対電圧の伝達関数を有するように製造されるのが好ましい。ダイオードのような伝達関数は、導電糸の表面の上のピエゾ抵抗被覆を処理してこの被覆の上にP−N接合を形成することによって、達成される。代替として、行方向導電糸と列方向導電糸との間のピエゾ抵抗フィルムの上側表面及び下側表面のいずれか又は双方が、P−N接合特性を与えられるように処理される。下記で詳細に説明するように、P−N接合特性は、銅又は他の金属の酸化物を含む無電解の被覆を、カーボンを含有するピエゾ抵抗層の表面に堆積させることによって、与えられる。
【0044】
本発明による圧力センサアレイの好ましい実施形態は、ポリマーフィルムのシートではなく弾性のある織布のシートを用いて製造されるのが好ましい。織布は、結果として、より伸縮可能でドレープ性があり且つそれ故不規則に湾曲した表面により容易に形状適合するセンサアレイをもたらす。
【0045】
本発明による織布基材を用いた力センサアレイの基本的な実施形態では、横方向に間隔をあけて縦方向に配置された導電糸が、第1の上側織物シートの下側表面に固定される。導体糸は、導電糸よりも直径が小さい非導電糸を用いて縫い付けるジグザグ縫いによって上側織物基材シートに固定されるのが好ましい。
【0046】
第2の下側織物基材シートは、上側シートと同様にして作製され、このとき、導電糸は下側シートの上側に位置する。
【0047】
上側シート及び下側シートは、導電糸が1つの表面の上に縫い付けられた単一の基材織物シートから任意選択的に製作することができ、このシートは2つに切断され、半割れのうちの一方が裏返されて90度回転され、それによって2つの半割れのシートの対面する表面が、導電糸の行及び導電糸の列で構成される交差部からなるマトリクスを形成する。次いで、ピエゾ抵抗フィルム層が、上側織物基材シートと下側織物基材シートとの間に位置決めされ、そして、3つのシートは、それらの周囲の縁に沿って一緒に固定され、これによって個々のセンサ素子からなるマトリクスを含む二次元平面状アレイを形成する。
【0048】
本発明による織物基材を用いた力センサアレイの好ましい実施形態では、センサの行方向導電糸と列方向導電糸との間に位置決めされたピエゾ抵抗フィルム層は、導電糸の外面に施されたピエゾ抵抗物質の被覆からなる。ピエゾ抵抗被覆は、本発明による新規の処理によって行方向導体又は列方向導体の外面に施すことができるが、行方向糸及び列方向糸の双方に施されるのが好ましい。
【0049】
本発明による新規の構成を有するセンサアレイは、軽量でドレープ性がある織物から作製されて対面する1対の基材パネルにおいて内側で対面する表面に縫い付けられた、高い可撓性があり弾性的に伸縮可能な行方向導体糸及び列方向導体糸を用いており、そして、上記センサアレイは、不規則な表面に容易に形状適合し、これによって不規則な形状の物の表面に作用する力の測定を容易にする。
【0050】
本発明による織物基材のピエゾ抵抗力センサアレイの好ましい実施形態は、基材材料としてスパンデックス(Spandex)又はライクラを含む伸縮可能な織物を利用することによって、向上した伸縮性、ドレープ性及び形状適合性が与えられる。伸縮可能な織物基材は、等方性の伸縮特性、又は少なくとも二方向の伸縮特性を有することが好ましく、それによって、センサアレイは、弾性的に伸縮して、全ての方向又は少なくとも2つの直交する方向でそれぞれ、同等のコンプライアンス(compliance)を有して不規則な形状の物に形状適合することができる。この構成を有すると、導電糸自体がセンサアレイの伸縮性を制限することができる。本発明によるセンサアレイの伸縮性及び形状適合性は、以下の2つの方法のいずれかによって増大されるのが好ましい。
【0051】
本発明によるセンサアレイの伸縮性を向上させる第1の方法によれば、アレイの伸縮性は、行方向導電糸及び列方向導電糸に対して、モノフィラメント(monofilament)の糸ではなく伸縮性のある導電性のヤーンを用いることによって、増大する。導電性のあるヤーンは、行方向ピエゾ抵抗糸又は列方向ピエゾ抵抗糸のいずれかのためのコアとして用いることができるが、二方向での伸縮性の向上をもたらすために、行方向導体糸及び列方向導体糸の双方に対して用いられるのが好ましい。
【0052】
本発明によるセンサアレイの伸縮性を向上させる第2の方法では、行方向ピエゾ抵抗糸及び列方向ピエゾ抵抗糸のいずれか又は双方は、行方向糸又は列方向糸の両端の間の直線状の基線の上をたどるのではなく、この基線に対し蛇行した線又は波状に配置された線に配列される。この波状の配列をもつことで、導電糸における側方に配置された部分によって形成される弛みは、波状に湾曲した導電糸における山と谷との間の長手方向の間隔に、織物が導電糸の基線の方向に伸長された場合に増大させ、織物が伸長されていない状態に緊張を緩めた場合に減少させることを、可能にする。換言すれば、波状に湾曲した導電糸の空間波長は、センサアレイが弾性的に伸長されている場合に増大し、センサアレイに対する伸長力が緩んだ場合に減少し、これによってセンサアレイが未伸長形状に弾性的に戻ることが可能になる。
【0053】
本発明によるセンサアレイは、センサアレイの弾性的な伸縮能力を最大にするように、伸縮性があり弾性的な導電糸と導電糸の波状に湾曲した配列との双方を、任意選択的に利用することができる。
【0054】
本発明の別の実施形態によれば、軽量で形状適合性が高い単層の織物基材センサアレイが提供される。本発明によるセンサアレイのこの実施形態は、ピエゾ抵抗物質を含浸した単一の織物基材パネルを用いる。行方向導電糸及び列方向導電糸は、織物基材の対向する両側の外表面に縫い付けられる。この実施形態に対する伸縮性及び形状適合性の向上は、上述したように、伸縮性のあるヤーンと導電糸を波状に湾曲させることとうちのいずれか又は双方を用いることによって、任意選択的にもたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明による三層のピエゾ抵抗糸圧力センサアレイの基本的な実施形態を部分的に切り欠いた斜視図であり、この実施形態は、1対のポリマーフィルムの外側基材と中央のピエゾ抵抗層とを用いている。
【図2】図1の方向2−2から見たセンサアレイの垂直な方向の横断面図すなわち端面図である。
【図3】本発明によるピエゾ抵抗糸圧力センサアレイの第2となる二層の実施形態を部分的に切り欠いた上側からの斜視図であり、この実施形態では、図1及び図2の基本的な実施形態で示される中央のピエゾ抵抗層が、センサアレイの導電糸の上のピエゾ抵抗被覆によって置き換えられている。
【図4】図3の方向4−4から見たセンサアレイの垂直な方向の横断面図すなわち端面図である。
【図5】図1及び図3のセンサアレイの変形形態の部分斜視図であり、この変形形態では、より緊密に詰め込まれた行方向導体糸及び列方向導体糸の隣接する対が、非導電糸によって互いから空間的且つ電気的に遮断されている。
【図6A】縮尺をさらに拡大した図1及び図2のセンサアレイの部分横断面図であり、交差した行方向導電糸及び列方向導電糸が中央のピエゾ抵抗層に接触して力検出素子を形成する配置を示しており、これらの力検出素子に外力が加わっていない状態である。
【図6B】図6Aの部分横断面図と同様であるが、センサ素子に中程度の垂直力が加わっている状態の図である。
【図6C】より大きな外力が加わった状態のセンサ素子を示す図である。
【図7】図1及び図3に示すセンサアレイのセンサ素子に作用する力又は圧力の関数として描かれた電気抵抗を示すグラフである。
【図8A】さらに縮尺を拡大した図3及び図4のセンサアレイの部分横断面図であり、力検出素子を形成する行方向ピエゾ抵抗糸及び列方向ピエゾ抵抗糸の配置を示しており、センサアレイに外力が加わっていない状態である。
【図8B】図8Aの部分横断面図と同様であるが、センサ素子に中程度の垂直力が加わっている状態の図である。
【図8C】より大きな外力が加わった状態のセンサ素子を示す図である。
【図9】本発明によるピエゾ抵抗糸圧力センサアレイの第3となる三層の実施形態を部分的に切り欠いた斜視図であり、この実施形態は、1対の外側織物基材と中央のピエゾ抵抗層とを用いる。
【図10】図9のセンサアレイの縮尺を拡大した断片図であり、センサアレイにおける上側となる横方向の行方向導体部分の下側からの平面図を示している。
【図11】図9のセンサアレイの縮尺を拡大した断片図であり、センサアレイにおける下側となる縦方向の列方向導体部分の上側からの平面図を示している。
【図12】方向12−12から見た図9のセンサアレイの垂直な方向の横断面図である。
【図13A】本発明による織物基材を用いた第4となる二層のピエゾ抵抗糸圧力センサアレイを部分的に切り欠いた上側からの分解斜視図であり、このセンサアレイでは、図9に示す実施形態の中央のピエゾ抵抗層が、センサアレイの導電糸の上のピエゾ抵抗被覆によって置き換えられている。
【図13B】方向13B−13Bから見た図13Aのセンサアレイの垂直な方向の横断面図である。
【図14】単一の織物基材を有する、本発明によるピエゾ抵抗糸圧力センサアレイの第5となる単層の実施形態を部分的に切り欠いた上側からの斜視図であり、この実施形態では、行方向ピエゾ抵抗糸及び列方向ピエゾ抵抗糸の双方が単一の絶縁基材シートの同じ側に固定されている。
【図15】図14のセンサアレイの上側からの平面図である。
【図16】方向16−16から見た図14のセンサアレイの垂直な方向の横断面図である。
【図17】図9、図13又は図14の織物基材センサアレイの変形形態を部分的に切り欠いた上側からの分解斜視図であり、この変形形態では、センサアレイの下側の列方向導電糸が、下側織物基材パネルの上に波状の配列で配置されている。
【図18】図14の単層の織物基材センサアレイの別の変形形態の上側からの斜視図であり、この変形形態では、行方向導電糸及び列方向導電糸の双方が、波状に配列されて、ピエゾ抵抗基材シートの対向する両側に位置している。
【図19】図18のセンサアレイの上側からの平面図である。
【図20】図18のセンサアレイの下側からの平面図である。
【図21】図19のセンサアレイの垂直な方向の横断面図である。
【図21A】単層の織物基材センサアレイの上側からの断片的な斜視図であり、このセンサアレイでは、上側行方向ピエゾ抵抗糸及び下側列方向ピエゾ抵抗糸の双方が、波状に配列されて、単一の絶縁基材シート同じ側に固定されている。
【図22A】線形配列にある個々のセンサ素子の抵抗を測定するのに必要とされる導電性の導出部の数を示す概略図である。
【図22B】必ずしも線形配列とならないセンサ素子を示す図である
【図23】マトリクスアレイで配列されたセンサ素子のアレイをマトリクスアドレス指定するのに必要な導出体の数が減少しているのを示す回路図である。
【図24】ダイオードの接合部を含むように変更が加えられた図23のアレイのセンサ素子を示す回路図である。
【図25】図5に示すタイプの二層センサアレイを用いる力測定センサ装置の上側からの斜視図である。
【図26】信号処理及びディスプレイの電気回路と相互接続されて力測定システムを構成する図1及び図3のセンサアレイを示すブロック図である。
【図27A】図14〜図16又は図17〜図20のセンサアレイを組み込んだ靴下の斜視図である。
【図27B】図27Aの靴下の水平な方向の横断面図である。
【図28】本発明によるセンサでの典型的な電気抵抗対垂直力の図である。
【図29】図1のセンサアレイのセンサ素子の好ましい変形形態の部分的な回路図であり、この変形形態では、センサアレイのセンサ素子は、ダイオード型P−N接合を備えるように変更が加えられている。
【図30】図27のセンサ素子での電流対電圧の図である。
【図31】本発明による力センサアレイの別の実施形態の分解斜視図である。
【図32】図31のセンサアレイの斜視図である。
【図33】本発明による力センサアレイの別の実施形態における構成要素の分解斜視図である。
【図34】図33のセンサアレイの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
米国特許第6,543,299号明細書(特許文献3)の開示全体が、参照によって本開示に援用される。
【0057】
図1〜図34は、本発明による、弾性的に伸縮可能で形状適合性のある織物状力センサアレイの様々な態様及びこれらのアレイを作製する方法を示している。
【0058】
まず図1及び図2を参照すると、本発明による力センサアレイにおける第1となる基本的な三層の実施形態が示されている。
【0059】
図1及び図2に示すように、本発明による三層力センサアレイ30は、複数m本の伸長されて直線状の細い行方向導電糸31−1〜31−mと、複数n本の伸長されて直線状の細い列方向導電糸32−1〜32−nとを含んでいる。
【0060】
本発明によれば、行方向導電糸31及び列方向導電糸32は、弾性的に伸縮可能なモノフィラメントの又は編み込まれたポリマーコア31C,32Cから構成され、これらのコア31C,32Cは糸を導電性にするように処理されており、それは、コアに銀めっきをして、コア31C,32Cそれぞれの上に被覆31P,32Pを形成するようなことによって処理されている。
【0061】
本発明によるセンサアレイ30における1つのタイプの例示的な実施形態では、LESS EMF社(住所:809 Madison Avenue, Albany, New York 12208, USA)から得られカタログ#A264にある太さ117/17 2plyの銀めっきナイロン糸から作製された行方向導電糸31及び列方向導電糸32が、用いられた。その導電糸は、1フィートあたり約75オームの線抵抗を有し、約1パーセントの弾性伸縮能力、すなわち同様の直径のステンレス鋼線よりも少なくとも10倍大きい弾性伸縮能力を有していた。
【0062】
本発明によるセンサアレイにおけるもう1つのタイプの例示的な実施形態では、伸縮性のある銀めっきナイロンヤーンから作製された行方向導電糸及び列方向導電糸が、用いられたが、そのめっきされたヤーンは、W. Zimmerman, GmbH & Co. KG社(住所:Riederstrasse7, D-88171, Weiter-Simmerberg, Germany)から得られる、ライクラ20デシテックス(dtex)である呼称Shieldex(登録商標)を有している。その導電糸は、1フィートあたり約500オームの線抵抗を有していた。その導電性ヤーンの弾性伸縮能力は、30パーセントより大きく、すなわち同様の直径のステンレス鋼線よりも少なくとも300倍大きい。
【0063】
図1及び図2に示すように、行方向糸31及び列方向糸32は、平行になった平面内に位置するが、互いに対して、90度等の角度で傾いている。例示的な実施形態30では、行方向導電糸31は上側基材シート33の下側表面34に固定され、列方向導電糸32は下側基材シート35の上側表面36に固定される。
【0064】
図2を参照することによって最もよく見て取ることができるように、センサアレイ30は、ピエゾ抵抗材料から作製された薄い中央の積層体又はシート37を含んでいる。図2に示すように、行方向導電糸及び列方向導電糸における内側に面した対向する外面38,39は、中央のピエゾ抵抗シート37の上側表面40及び下側表面41それぞれに接線接触する。このため、図1及び図2に示すように、行方向導電糸31及び列方向導電糸32の交わる点又は交差部のそれぞれによって、ピエゾ抵抗センサ素子48が形成され、このピエゾ抵抗センサ素子48は、行方向導電糸及び列方向導電糸が導電可能に接触する、中央ピエゾ抵抗シート37の小さな部分から構成される。
【0065】
センサアレイ32の例示的な実施形態では、ピエゾ抵抗シート37は、伸縮性のある、”すなわち弾性的に伸縮可能な薄いライクラ状織物シートをピエゾ抵抗材料を用いて被覆することによって、作り上げられた。ピエゾ抵抗材料を支持するためのマトリクスを形成する適切な織物シートは、製造者Milliken & Company(住所:Spartenburg, South Carolina, USA)から得られる商標Platinum,Milliken、型番#247579によって知られる織物であった。その織物は、69%のナイロン及び31%のスパンデックスからなる繊維含有率、1インチ(約25.4mm)あたり約88糸の糸使用量、及び0.010インチ(約0.254mm)の厚みを有していた。
【0066】
織物マトリクスを被覆するのに使用されるピエゾ抵抗材料は、以下のように作製される。
【0067】
黒鉛、炭素粉末、ニッケル粉末及びアクリル接着剤からなる溶液が、所望の抵抗特性及びピエゾ抵抗特性を得るために、必要に応じた比率で混合される。銀被覆ニッケルのフレークは、0psi(0重量ポンド毎平方インチで0パスカル)〜1psi(1重量ポンド毎平方インチで約6.895キロパスカル)の低い力の範囲での力への応答を達成するために用いられ、黒鉛は、1psi〜5psi(5重量ポンド毎平方インチで約34.474キロパスカル)の中間の範囲に対して用いられ、そして、Charcoal Lamp Blackは、5psi〜1000psi(1000重量ポンド毎平方インチで約6894.757キロパスカル)の高い力の範囲に対して用いられる。以下は、ピエゾ抵抗材料の構成成分である物質の説明である:
銀被覆ニッケルフレーク:
厚さ約1ミクロンで直径約5ミクロンの小板
ふるい分析(−325メッシュ)95%
見掛け密度2.8
マイクロトラック(Microtrac) d50(メジアン径)/12〜17ミクロン
入手可能先:Novamet Specialty Products社(住所:681 Lawlins Road, Wyckoff, NJ 07481)
黒鉛粉末:
合成黒鉛、AC−4722T
入手可能先:Anachemia Science(住所:4-214 DeBaets Street Winnipeg, MB R2J 3W6)
Charcoal Lamp Black粉末:
Anachemia製品番号AC−2155
入手可能先:Anachemia Science(住所:4-214 DeBaets Street Winnipeg, MB R2J 3W6)
アクリル接着剤:
Staticide Acrylic High Performance Floor Finish
P/N(製品番号)4000−1 Ph8.4〜9.0
入手可能先:Static Specialties Co. Ltd(住所:1371-4 Church Street Bohemia, New York 11716)
【0068】
以下は、様々な感度を有するピエゾ抵抗材料を作製するのに用いられる混合物の例である:
0psi〜30psi(30重量ポンド毎平方インチで約206.843キロパスカル)の範囲内の力に対する例I
・200mlのアクリル接着剤
・10mlのニッケルフレーク粉末
・10mlの黒鉛粉末
・20mlのカーボンブラック
0psi〜100psi(100重量ポンド毎平方インチで約689.476キロパスカル)の範囲内の力に対する例II
・200mlのアクリル接着剤
・5mlのニッケルフレーク粉末
・5mlの黒鉛粉末
・30mlのカーボンブラック
0psi〜1000psiの範囲内の力に対する例III
・200mlのアクリル接着剤
・1mlのニッケルフレーク粉末
・1mlの黒鉛粉末
・40mlのカーボンブラック
【0069】
ピエゾ抵抗シート37のための織物マトリクスは、ピエゾ抵抗被覆混合物の中に浸される。余分な材料は巻き取られ(rolled off)され、シートは吊るされ空気乾燥させることができる。
【0070】
本発明によれば、上側基材シート33及び下側基材シート34は、0.002インチ(約0.0508mm)厚のポリウレタン又はポリ塩化ビニル(PVC)等の薄く可撓性のある絶縁材料から作製される。基材シート33,34は、比較的高い弾性伸縮能力を有するエラストマー材料から作製されるのが好ましく、それによってセンサアレイ30は、容易に伸縮することができ、不規則な形状の物の表面に対し形状を適合することができる。しかしながら、センサアレイ30の伸縮性を促進するために、導電糸31,32も弾性的に伸縮可能であるべきであることは、理解することができる。これは、導電糸31,32が、図2に示すように、例えば接着剤の塊(blob)42によって、基材シート33,34にそれぞれ貼り付けられているためである。また、ピエゾ抵抗シート37も、にかわの塊(blobs of glue)42によって上側基材シート33及び下側基材シート34に固定されている。
【0071】
図6A〜図6Cは、図1及び図2に示すセンサアレイ30における中央のピエゾ抵抗層37と組み合わせた行方向導電糸31及び列方向導電糸32の配置が、どのように個々の力検出素子48を形成するかを示している。各力センサ素子48は、センサ素子の行方向導電糸(例えばM×Nのマトリクスの31−1,31−2,・・・・,31−m)と、列方向導電糸(例えばM×Nのマトリクスの32−1,32−2,・・・・,32−n)との重なる部分すなわち交点49に位置する。このため、個々のセンサ素子は、48−XXX−YYYと名前をつけることによって識別することができる。ここで、XXXは行番号を表し、YYYは列番号を表す。
【0072】
図2及び図6Aに示すように、外力がセンサアレイ30に加えられないとき、センサアレイ30の行方向導電糸31及び列方向導電糸32の重なる点49それぞれでは、中央のピエゾ抵抗層37と上側行方向導電糸との間に導電可能な上側接線接触領域43が存在し、ピエゾ抵抗層と下側列方向導電糸との間に導電可能な下側接線接触領域44が存在する。
【0073】
センサアレイ30に外力が加えられないとき、行方向導電糸31と列方向導電糸32との間の電気抵抗は、比較的高い。この電気抵抗は、上側接触領域43と、下側接触領域44と、これら上側接触領域及び下側接触領域の間におけるピエゾ抵抗層37のピエゾ抵抗材料45の実効抵抗との直列抵抗から構成される。この比較的高い抵抗は、この場合、接線接触領域43及び44が比較的小さく、圧縮されていないピエゾ抵抗の体積45の厚さがその最大値にあることに起因する。しかしながら、図6B及び図6Cに示すように、センサアレイ30が支持表面Sの上に配置され、センサアレイ30の上側表面47に加えられる垂直力Nの大きさが増加しているとき、行方向導電糸31と列方向導電糸32との間の電気抵抗が次に説明するように減少する。
【0074】
図2及び図6Aをなおも参照すると、センサアレイ30に外力が加えられないとき、行方向導電糸31及び列方向導電糸32と中央のピエゾ抵抗層37との間の接線接触領域43,44は、比較的小さいことが見て取ることができる。なぜなら、導電糸は、ピエゾ抵抗層の平坦な平面に接線接触する外側が円形の断面形状を有するためである。これらの状況の下では、接触領域43,44のサイズが小さいことによって、結果として中央のピエゾ抵抗層37と行方向導電糸31及び列方向導電糸32との間の電気抵抗が比較的高くなる。さらに、中央のピエゾ抵抗層37が圧縮をうけていないとき、このピエゾ抵抗層の厚みは最大値となり、それ故抵抗が最大値となる。
【0075】
図6B及び図6Cは、センサアレイ30に作用する外部垂直力又は圧力が増える作用を示している。図6B及び図6Cに示すように、センサアレイ30は、このアレイの下側表面46が表面Sの上で支持されるように配置され、力Nがこのアレイの上側表面47の上に垂直に下方向に作用し、その結果、このアレイの下側表面46の上で表面Sを支持することによって反力Uが上向きに作用する。中央のピエゾ抵抗層37が弾性的に変形することができるので、このピエゾ抵抗層上への圧縮力によって、行方向導電糸31と列方向導電糸32との間となるこのピエゾ抵層の一部の厚みTが減少する。行方向導電糸31と列方向導電糸32との間のピエゾ抵抗層37を貫通する経路長においてこの減少が生じることによって、導電糸同士の間の電気抵抗Rの値が減少する。
【0076】
図6Bに示すように、垂直力Nの値が抑えられた中程度である場合、中央のピエゾ抵抗層37の弾性的な変形は比較的小さく、その結果、導電糸同士の間の電気抵抗Rにおける減少は比較的小さい。図6Cに示すように、センサアレイ30に作用する力Nが大きくなるほど、中央のピエゾ抵抗層の変形は大きくなり、その結果、抵抗Rにおける減少率が大きくなる。図7は、行方向導電糸31と列方向導電糸32との間で測定可能な電気抵抗の減少を、これらの観点でのアレイ30に作用する垂直力又は圧力の関数として一般的に示している。
【0077】
図3及び図4は、本発明によるピエゾ抵抗糸圧力センサアレイの別の実施形態50を示している。この実施形態では、図1及び図2に示し且つ上述した中央のピエゾ抵抗層が、行方向導電糸51及び列方向導電糸52のいずれかの上のピエゾ抵抗被覆、又は好ましくは行方向導電糸51及び列方向導電糸52の双方の上のピエゾ抵抗被覆に、置き換えられている。
【0078】
センサアレイ50は、米国特許第6,543,299号明細書(特許文献3)の図1及び図2に開示され且つ図示されたセンサアレイ20に、表面上は類似しているが、このセンサアレイと重要な点で異なっている。このため、センサアレイ50における行方向ピエゾ抵抗糸51及び列方向ピエゾ抵抗糸52は、弾性的に伸縮可能なポリマーコア51C,52Cから作製され、これらのポリマーコア51C,52Cは、これらのコアを銀めっきして糸の上に導電性の被覆51P,52Pをそれぞれ形成することによって、処理されている。コア51C,52Cのいずれか又は双方の上の被覆は、ピエゾ抵抗特性を有する材料からなる層51R,52Rがそれぞれクラッディングされている。本発明によれば、ピエゾ抵抗導電糸51,52のコア51C,52Cにおけるめっきされた表面51P,52Pの上にクラッディング層(cladding layer)51R,52Rを形成するのに用いられるピエゾ抵抗材料は、ピエゾ抵抗のシート層37を作製するための上述した組成と類似した組成を有することができる。
【0079】
本発明による、導電糸をピエゾ抵抗材料の層でクラッディングすることによってピエゾ抵抗センサ糸を作製するための方法は、上記の例1、2及び3において説明した組成を有するピエゾ抵抗材料のスラリーを調合することを含む。次に、LESS EMF社(住所:804 Madison Avenue, Albany, New York 12208)から入手可能であるカタログ#124にある太さ117/17 2plyの銀めっきナイロン糸等の高い導電性のポリマー糸が、スラリーが入った容器内に約10秒間浸される。浸されている糸の端部は、容器から引き出され、そして、まだ濡れている間にスクレーパプレートを貫通する円形の開口を通して伸線される。
【0080】
例示的な実施形態では、0.25mmのコアの直径を有し且つ約0.4mm〜0.5mmの範囲の直径で湿式コーティングされた導電糸は、0.45mmの直径を有する#360のスクレーパーを通じて伸線され、その結果、約0.45mmの直径で湿式スクレーピングされることになる。次に、スクレーピングされた導電糸は、70℃の温度に加熱された空気流の中に、100mm/分の直線的な進行速度で5分間通され、これによって、約0.4mmの直径を有する固まった被覆を形成した。
【0081】
図3及び図4に示すように、行方向ピエゾ抵抗糸51及び列方向ピエゾ抵抗糸52は、接着性のある塊74のような適切な手段によって、上側基材シート63及び下側基材シート65に固定される。基材シート63,64は、比較的弾性度の高い0.003インチ(約0.0762mm)厚のエラストマーポリウレタン又はポリ塩化ビニル(PVC)等の薄く可撓性のある材料から作製される。
【0082】
図3及び図8A〜図8Cは、センサアレイ50の行方向ピエゾ抵抗糸51及び列方向ピエゾ抵抗糸52の配列が、どのようにして個々の力検出素子69を形成するかを示している。垂直圧縮力が次第に大きくなるのに応じて、行方向導電コア糸51C及び列方向導電コア糸52Cの上のピエゾ抵抗クラッディング層51R,52Rは、径が小さくなる楕円断面形状に次第に圧縮される。このため、図8A〜図8Cに示すように、各センサ素子70の電気抵抗が、図7に示すように加えられた圧力に反比例して減少する。
【0083】
図5は、図1及び図3に示し且つ上述したセンサアレイの変形形態70を示している。変更が加えられたセンサアレイ70は、代替として、図1に示す三層構造のセンサアレイ30又は図3に示す二層構造のセンサアレイ50を採用してもよい。変形形態は、導電糸の隣接する行同士及び/又は列同士の間に電気的に絶縁する材料を有するセンサアレイ70を作り上げることによって構成される。このため、例えば、図3に示す二層センサ50の変形形態70は、細長い絶縁糸71を含み、この絶縁糸71は、隣接する行方向導電糸51の各対の間及び隣接する列方向導電糸52の各対の間に配置された、例えば0.012インチ(約0.305mm)の直径のポリエステルから作製される。
【0084】
絶縁糸71は、基材シート63,65(図2及び図4を参照されたい)に絶縁糸71を接着結合する等の任意の適切な手段によって、適所に固定される。このように構成することによって、センサアレイ70は、隣接する行方向導電糸51の対又は列方向導電糸52の対において、互いに接触してそれによる結果として誤ったセンサ素子抵抗の測定値及び力算出値をもたらすことになる短絡を生じる可能性がない状態で、不規則な形状の表面に形状が適合するように実質的にしわを入れられるか又は他のかたちで変形することが可能になる。任意選択的に、行方向導電糸及び列方向導電糸の隣接する対の間における絶縁は、導電糸を適所に保持するようにエアロゾルのアクリル絶縁塗料を軽く吹き付けることによって施されることができる。
【0085】
図9〜図12は、本発明によるピエゾ抵抗糸力センサアレイの三層の実施形態80を示している。センサアレイ80は、図1及び図2に示し且つ上述したセンサアレイの基本的な実施形態30に類似している。しかしながら、センサアレイ80は、ポリマーフィルムではなく織布から作製された上側基材シート83及び下側基材シート85を、用いている。この構成は、めっきされたナイロンコア又はめっきされたライクラコアから作製された伸縮性のある行方向導電糸81及び列方向導電糸82の使用を伴って、結果としてセンサアレイ30よりもさらに、可撓性があり、弾性的に伸縮可能であり、且つドレープ性があるセンサアレイをもたらす。
【0086】
図10を参照することによって最もよく見て取ることができるように、センサアレイ80は、上側織物基材シート83の下側表面84に固定され且つ平行で側方に間隔をあけて配置された行方向導電糸81を複数含んでいる。行方向導電糸81は、任意の適切な手段によって上側基材シート83の下側表面84に固定されている。好ましい実施形態では、図10に示すように、各行方向導電糸81は、より小さな直径の非導電糸90で織物基材シート83にこの行方向導電糸81を縫いつけることによって、基材シートに固定され、非導電糸90は、細長いジグザグ縫いのパターンで配列されて縫い付けている。例示的な実施形態では、糸90は、0.005インチ(約0.127mm)〜0.010インチ(約0.254mm)の直径のポリエステル100%の編糸(woven thread)から構成される。より大きな力を測定するのに用いられるセンサアレイに対して必要なより大きな強度を有するために、糸90は、任意選択的にモノフィラメントとすることができる。
【0087】
本発明によるセンサアレイ80の例示的な実施形態では、上側基材シート83及び下側基材シート85は、軽量で弾性的に伸縮可能な織物から作製され、以下の2つの織物のいずれもが、試験され、基材シート83,85に適切であることがわかった。これら2つの織物は、(1)ナイロン69%及びスパンデックス31%で組成され1.8oz./sq.yd.(1.8オンス/平方ヤードで約0.061kg/m2)の重量を有する、Millikenのブランド「Millglass」の型番#247579と、(2)ナイロン82%及びライクラ18%で組成され3.2oz./sq.yd.(3.2オンス/平方ヤードで約0.108kg/m2)〜3.4oz./sq.yd.(3.4オンス/平方ヤードで約0.115kg/m2)の重量を有する、Millikenのブランド「Interlude」の製品番号#247211とである。上述した織物の双方が、Miliken & Company社(住所:23 Fiddler’s Way, Lafayette, NJ 07848)から入手可能である。
【0088】
図11に示すように、下側列方向導電糸82は、非導電糸90と同じタイプの非導電糸91によって、同じジグザグの縫い方で下側織物基材シート85の上側表面86に固定されている。
【0089】
図9及び図12に示すように、三層の織物基材センサアレイ80は、上述したセンサアレイ30の中央のピエゾ抵抗シート37と同様の組成及び構成を有することができる中央のピエゾ抵抗シート87を含んでいる。
【0090】
図13Bを参照することによって最もよく見て取ることができるように、上側の行方向ピエゾ抵抗糸101は、ジグザグ縫いで配列された絶縁性縫製糸90によって、上側織物基材シート113の下側表面114に取り付けられている。同様に、下側の列方向ピエゾ抵抗糸102は、ジグザグ縫いで配列された縫製糸91によって、下側基材シート115の上側表面116に取り付けられている。
【0091】
図13A及び図13Bは、本発明によるピエゾ抵抗糸力センサアレイにおける二層の別の実施形態100を示している。センサアレイ100はセンサアレイ80に類似している。しかしながら、センサアレイ100では、行方向導電糸81及び列方向導電糸82はピエゾ抵抗糸101,102に置き換えられており、これらのピエゾ抵抗糸は、図3及び図4に示し且つ上述した二層のポリマーフィルム基材センサアレイ50のピエゾ抵抗糸51,52と同じ特性を有している。この構成によって、上述した三層織物センサアレイ80の中央のピエゾ抵抗シート87が必要でなくなる。
【0092】
図14〜図16は、力センサアレイにおける第5となる単層の実施形態120を示し、この実施形態では、行方向ピエゾ抵抗糸及び列方向ピエゾ抵抗糸は、絶縁性の単一の織物基材シート127の片側に取り付けられている。
【0093】
図14〜図16に示すように、単層の織物状力センサアレイ120は、軽量で弾性的に伸縮可能な織物から作製された単一の基材シート127を有している。以下の2つの織物のいずれもが、リストに挙げられ、基材シート127の作製に適切であることがわかった。これらの織物は、(1)ナイロン69%及びスパンデックス31%で組成され1.8oz./sq.yd.(1.8オンス/平方ヤードで約0.061kg/m2)の重量を有する、Millikenのブランド「Millglass」の型番#247579と、(2)ナイロン82%及びライクラ18%で組成され3.2oz./sq.yd.(3.2オンス/平方ヤードで約0.108kg/m2)〜3.4oz./sq.yd.(3.4オンス/平方ヤードで約0.115kg/m2)の重量を有する、Millikenのブランド「Interlude」の製品番号#247211とである。上述した織物の双方がMiliken & Company社から入手可能である。
【0094】
平行で側方に間隔をあけて配置された複数の列方向ピエゾ抵抗糸122が、基材シートの上側表面130に固定されている。列方向ピエゾ抵抗糸は、LESS EMFから得られるカタログ#A−264の銀めっきナイロン糸、又は好ましくは伸縮性のある銀めっきナイロンヤーンから作製され、これらの双方がセンサアレイ30の説明に伴って上述で詳細に説明されている。
【0095】
単一の織物基材シートのセンサアレイ120における好ましい実施形態では、各列方向ピエゾ抵抗糸122は、細長いジグザグの縫いのパターンで配列されたより小さな直径の非導電糸91によって、基材シート127に固定される。例示的な実施形態では、糸91は、0.005〜0.010の直径で100%ポリエステルからなる。
【0096】
図14、図15及び図16に示すように、センサアレイ120は、平行で側方に間隔をあけて配置された複数の行方向ピエゾ抵抗糸121を含み、これら行方向ピエゾ抵抗糸121も、基材シート127の上側表面130に固定されている。図16に示すように、m本の行方向ピエゾ抵抗糸121は、糸91と同じタイプの非導電糸90によって同じジグザグの縫い方で、基材シート127に固定されている。
【0097】
図16に示すように、行方向ピエゾ抵抗糸121と列方向ピエゾ抵抗糸122とにおける対向する内側に面した外面128,129は、互いに接線接触している。このため、図14〜図16に示すように、行方向ピエゾ抵抗糸121と列方向ピエゾ抵抗糸122との各交差部が、ピエゾ抵抗センサ素子138を形成しており、このピエゾ抵抗センサ素子138は、互いに接線接触する行方向ピエゾ抵抗糸及び列方向ピエゾ抵抗糸におけるピエゾ抵抗被覆の小さな部分から構成される。
【0098】
図17は、図9、図13又は図14に示し且つ上述した織物基材シートを用いた力センサアレイの変形形態を示している。図17に示すように、変更が加えられた力センサアレイ140の下側織物基材シート145は、このシートに下側の列方向ピエゾ抵抗導電糸142が取り付けられており、この導電糸142は、各糸の両端の間で、図11に示すセンサアレイ80の列方向導電糸82のように平行な直線状の基線の真上に位置するのではなく、この基線に対し波状に湾曲している。この配列を有することによって、下側織物基材シート145は、列方向糸の基線に平行な方向において、より一層容易に弾性的に伸縮することができ、なぜなら、織物基材シート上の長手方向に離れた各点は、弾性的な伸縮能力がより低い導電糸によって、最大長が制限されることがないからである。このため、列基材シート145の伸縮性は、これが本来備えている伸縮性によってのみ制限され、なぜなら、列方向導電糸142の配列は、列方向導電糸142が、波状に湾曲した導電糸の山と谷との間の間隔を変更することによって、すなわち導電糸によって形成される波状曲線の空間波長(spatial wavelength)を変えることによって、基材シートのサイズに容易に適合することを可能にするからである。
【0099】
任意選択的に、上側行方向ピエゾ抵抗糸141は、図17に示す下側列方向ピエゾ抵抗糸と同様の方法で波状に配列されてもよく、それによって行方向導電糸と平行な方向でも、そして列方向ピエゾ抵抗糸に平行な方向でも、センサアレイ140の弾性コンプライアンス又は伸縮能力を向上させることができる。また、図1に示したタイプのような三層センサアレイの行方向導電糸及び列方向導電糸のいずれか又は双方を、向上した一軸の伸縮能力又は二軸の伸縮能力をもたらすように波状に配列することもできる。
【0100】
図18〜図21は、図14の単一の織物基材シートのセンサアレイ120における別の変形形態180を示している。センサアレイ180は、上側の行方向導電糸181及び下側の列方向導電糸182を有し、これらの導電糸181,182は双方とも、中央のピエゾ抵抗織物基材シート187の両側に波状に配列されている。この構成は、アレイ180に、列方向導電糸182に平行な方向でも、そして行方向導電糸181に平行な方向でも、より大きな弾性を与える。
【0101】
図21Aは、別の変形形態200を示しており、この変形形態200では、行方向ピエゾ抵抗糸201及び列方向ピエゾ抵抗糸202が双方とも、図16に示すかたちで、波状に配列され且つ絶縁基材シート210の上側表面211に取り付けられている。
【0102】
図22Aは、線形配列のセンサ素子の個々の素子の抵抗を測定することで、各センサ素子に作用する力又は圧力の数値を求めるのに必要とされる導電性リード線の数を、示している。図22Aに示すように、単一で共通の導出導体(lead-out conductor)Cが、線形配列である交差させる導出導体Li〜Lnに、各交点でピエゾ抵抗材料によって接続され、それにより複数のセンサ素子Sl〜Snを形成する。このため、総計n個のセンサSに対して、各センサ素子Sl〜Snの個々の抵抗を測定してそれにより個々のセンサ素子それぞれに作用する力F1〜Fnを求めるためには、n+1個に等しい総計Rの導出導体が必要である。
【0103】
図22Bは、必ずしも線形配列されずに例えば個々の指先状部分に位置付けられる複数のセンサ素子Sn+1,Sn+2,Sn+3を、示している。図22Bに示すように、この構成にもn+1個の導出導体が必要とされる。
【0104】
図7は、図1及び図2に示す例示的なセンサアレイ30に対して列挙された配合を有し且つ上述したように作り上げられたピエゾ抵抗シート37を用いた1平方インチ(約6.45cm2)のピエゾ抵抗力センサ素子48の電気抵抗を、センサアレイ30の上側基材シート33の上側表面47上に作用する垂直力又は圧力の関数として、示している。図7に示すように、この抵抗は、垂直力の関数のとき反比例的に変化する。
【0105】
図1に示すように、列方向導電糸32−l〜32−nと垂直な配置にある行方向導電糸31−l〜31−mは、列方向導電糸と行方向導電糸との間のピエゾ抵抗層シート37と共に、m×nの力素子48からなるm×nのマトリクスの矩形アレイを形成する。
【0106】
各センサ素子48への上側の電気的接続部及び下側の電気的接続部が、他の各センサ素子への接続部から電気的に遮断されている場合、センサのそれぞれに対して導出導体の対が別々に必要となる。すなわち、Q個のセンサ素子に対して総計2Q個の導出導体が必要となり、或いは、図22に示すように単一で共通の電極導出体が用いられる場合、総計Q+1個の導出体が必要となる。
【0107】
好ましい状態として、図1に示すように、センサアレイ30は、m行n列のマトリクスに配置され、これによってR=m×n個のみの導出導体を必要とする。しかしながら、図23に示すように、センサアレイ30におけるマトリクスアドレス指定が、個々のセンサ48の抵抗を測定しそれによってセンサに対して作用する垂直力を求めるために、用いられる場合、アドレス指定されていないセンサへの並列電流路があることに起因して、アドレス指定されたセンサ48の抵抗と選択されていないセンサの抵抗との間で実質的なクロストークが存在する。このクロストークの問題を回避するために、本発明者は、ダイオードのような特性をセンサ48に与えるようにセンサ48を改造するための方法を開発した。図24を参照することによって確認できるように、非両方向性であり且つ極性の検出可能な伝達機能を有するセンサ素子40同士の間のクロストークは、図23に示す対称的な導電性があるセンサ48のマトリクスにおいて存在するクロストークの問題を、軽減する。
【0108】
センサ素子48は、以下のようにピエゾ抵抗層シート37の作製(preparation)に変更を加えることによってダイオードのような特性を有するように改造される。つまり、最初に、ピエゾ抵抗層シート37は、上述したプロセスによって作製される。次に、ピエゾ抵抗シート37のピエゾ抵抗被覆37Aにおける上側表面40又は下側表面41が、その上にP−N半導体型接合を形成するように変更が加えられる。
【0109】
ピエゾ抵抗被覆37AにP−N接合を形成するように変更を加えることは、最初に次のスラリーを調合することによって実施される。なお、このスラリーは、上述した3つの混合物例のうちの1つの組成を有するが、50ミクロン径の粒子の微粉の形態で酸化銅(CuO)をそれぞれ5ml加え、且つ50ミクロン径の粒子の微粉の形態で亜酸化銅(Cu2O)を5ml加え、そして上記の原料を十分にかき混ぜることによって、変更が加えられている。次に、その結果得られた溶液は、テトラヒドロホウ酸ナトリウム(NaBH4)又はリン酸アンモニウムとしても知られる水素化ホウ素ナトリウムの溶液約30mgを用いて希釈され、約5.5のpHを有する溶液を形成する。次に、この溶液は、ピエゾ抵抗シート37の上のピエゾ抵抗被覆37Bにおける上側表面40又は下側表面41の上に塗られる。この塗布処理は、ローラー塗りの処理を用いて実施される。この処理の結果、1平方センチメートルあたり約0.5mlの溶液が加えられる。表面の塗膜は次に、室温で且つ20%未満の相対湿度で4時間で空気乾燥することができる。塗布された面が乾くと、この面は、P−N接合ダイオードのP型半導体として機能し、一方、塗膜37Bが塗布されていない側は、P−N接合ダイオードのN型半導体として機能する。
【0110】
図29は、上述したように作製されてダイオードのような特性が与えられたセンサ素子48と、センサのI−V(電流対電圧)の伝達関数を得るための回路とを示している。図30は、図29のセンサ素子48の場合の典型的なI−V曲線を示している。
【0111】
上述したように、ダイオードのように作用する半導体特性の層を付加することによってセンサアレイ30のセンサ素子48に変更を加えることの利点は、これによってセンサ同士の間のクロストークが低減することである。図23に示すように、このクロストークは、いわゆる「平方完成(completing the square)」の現象に起因して発生する。この現象では、四角形の3つの角を形成するアドレス指定されていない3つの抵抗からなる正方マトリクスの配列において、3つの接続部が形成される。このため、縦の列にあるいずれの2つの接続部及び同じ行にある第3の接続部が、導体のX−Yアレイ内のいずれの接続部としても機能する。四角形の第4の角にある抵抗は、アドレス指定された抵抗と並列の疑似(phantom)として現れる。これは、電流がこの抵抗を通って逆方向に流れると共に他の抵抗器を通って順方向に流れることができるためである。この疑似の影響(contribution)を排除するためには、電子機器では、管理及びさらなる費用の追加を行わなくてはならない。例えば、図23に示すように、電位Vが行方向導体X1と列方向導体Y1との間に印加され、それによってピエゾ抵抗センサ抵抗R11の抵抗値を求める場合、「疑似」抵抗R22を通って流れる逆方向電流によって、抵抗値R12+R22+R22の集合がR11に分路を形成し、その結果、図23において矢印によって示される並列電流路が生じる。この並列電流路によって、結果として以下の誤った抵抗値をうむ:
x11=R11//(R12+[R22]+R21)、Rx11=R11(R12+[R22]+R21)/(R11+R12+[R22]+R21
ここでは、抵抗値を囲む角括弧は、時計回りの方向すなわち左斜め下方の方向ではなく、反時計回りの方向に電流がその抵抗器を通ることを示している。このため、例えば、上記で列挙した4つの抵抗のうちのそれぞれが10オームの値を有している場合、R11の測定値は、
11=10(10+10+10)/(10+10+10+10)=300/40=7.5オーム
となり、すなわちR11の実際の値10オームを25%下回る。3つのアドレス指定されていないピエゾ抵抗センサ48の抵抗値R12、R22及びR21がそれぞれ、より低く、例えば1オームである場合、これらのセンサ素子48に集まる力がより大きくなるため、R11の測定値は、
11=10(1+1+1)/(10+1+1+1)=30/13=2.31オーム
となり、すなわちR11の実際の値を約77%下回る値となる。
【0112】
一方で、図24に示すように、ダイオードを各ピエゾ抵抗センサ素子48と直列に配置することによって、センサ素子、例えばR22を通る試験電流が逆方向である反時計回り方向に流れる際に測定される素子の電気抵抗は、実際上任意の大きさであるか、又は図23及び図24に示す他の抵抗を通る電流の時計周りの順方向の経路を流れる場合と比較して無限大である。このケースでは、それぞれが10オームの値を有する2×2のマトリクスの4つの抵抗に対して測定される抵抗値は、
x1y1=10(1+∞+1)/(10+1+∞+1)=10オーム
となり、すなわち正しい値となる。このため、各センサ素子48に、p−n接合を含みそれによってこのセンサ素子にダイオードのような特性を与えるように変更を加えることは、各センサ素子48を通って流れる逆電流を電気的に分離する、すなわち阻止する。このことによって、各センサ素子48の電気抵抗の正しい値及びそれによる各センサ素子48に対して加えられる力は、センサ素子毎に別々になった導体の対を必要とするのではなく、行及び列のマトリクスのアドレス指定をRx11が用いて、正確に測定することが可能になる。
【0113】
図25は、本発明による力測定装置150を示している。本装置は、上述したセンサアレイのうちの任意のタイプを用いることができるが、図25に示す特定の例では、図5に示すタイプのセンサアレイ70を用いている。
【0114】
図25に示すように、力測定装置150は、16本ずつの行方向導電糸及び列方向導電糸のマトリクスをそれぞれが有する4つのセンサアレイ70−1、70−2、70−3及び70−4を用いた。4つのアレイは、正方マトリクスに配列され、これによって、導電糸の交差部で32×32=1024個のセンサ素子88を形成する32行×32列の導電糸からなる複合センサアレイ70−Cを形成する。図25に示すように、32本の行方向導電糸の導出線のそれぞれ及び32本の列方向導電糸の導出線のそれぞれが、1対の電気的インタフェースコネクタ153−1,153−2の複数のコネクタピン154−1〜154−64における別々になった導電性コネクタピンに接続される。
【0115】
図26は、上述した力センサ装置150を利用する力測定システム160を示している。
【0116】
図26に示すように、力測定システム160は、力センサインタフェースモジュール162を通じて力センサ装置160の力センサアレイ70に双方向に結合されたコンピュータ161を備えている。このセンサインタフェースモジュール162は、デジタル−アナログ(Digital-to-Analog)変換器(DAC)163を備え、DAC163は、コンピュータ161からの制御信号に応答して、マトリクスアドレス指定された個々の力センサ88に向けられる試験電圧又は試験電流を生成するためのものである。
【0117】
図26に示すように、個々の力センサ素子88は、DAC163により制御される電流源又は電圧源の一方の端子を、Xマルチプレクサ164によってX行方向導体51−l〜51−mのうちの選択された1つに接続し、且つ、上記電流源又は電圧源の他方の端子をYマルチプレクサ165によってY列方向導体52−l〜52−mのうちの選択された1つに接続することによって、アドレス指定される。また、センサインタフェースモジュール162は、アナログ−デジタル(Analog-to-Digital)変換器(ADC)166も備え、ADC166は、試験電流又は試験電圧の印加の結果として生じるセンサ素子88を通じた電圧降下又は電流を測定し、測定値をコンピュータ161に入力する。所定の基準化因子(scale factor)を使用して、コンピュータ161は、選択されたアドレス指定センサ素子88の電気抵抗の瞬時値を計算し、その抵抗値から、そのアドレス指定センサに対して瞬間的に加えられた対応する垂直力を計算する。
【0118】
コンピュータ161によって周期的に発信される制御信号に応答して、Xマルチプレクサ164及びYマルチプレクサ165は、各力センサ素子88の抵抗を、例えば毎秒3000サンプルの比較的高速なレートで周期的に測定するように、用いられ、コンピュータ161が上記サンプリングレートで各力センサ88に作用する力を計算することを可能にする。
【0119】
測定システム160は、オペレータインタフェースブロック167を有し、このオペレータインタフェースブロック167は、センサ素子88によって測定された力又は圧力の値が、数値、グラフ或いは圧力/力マップ、若しくは、数値及びグラフ或いは圧力/力マップとしてコンピュータモニタ168のディスプレイ画面上に表示されること、又は、プリンタ等の周辺デバイス若しくはインターネット等のネットワークにI/Oブロック169を通じて出力されることを可能にする。
【0120】
図27A及び図27Bは、上述した導電糸を用いた新規なセンサアレイのうちの1つを備える靴下170を示しており、この新規なセンサアレイは、図14〜図16又は図17〜図20に示す単層である織物基材ピエゾ抵抗糸センサアレイ等である。
【0121】
図17に示すように、靴下170は、図14〜図16に示し且つ上述した平面状力センサアレイ120の変形形態である単層の織物状力センサアレイ180を備えている。力センサアレイ180を形成するための力センサアレイ120の変形は、力センサアレイ120の左側の縁及び右側の縁を紙面上から上方に持ち上げて合わせ、そして中空の円筒管を形成するのを考えることで、最も良好に想像することができる。
【0122】
そして、センサアレイの位置がそろった縁からの行方向導体糸の突出部121は、第1の行方向導体リボンケーブル181に導電可能に固定される。巻かれたセンサアレイの1つの縁から突出する列方向導電糸は、第2の列方向導体リボンケーブル182に導電可能に固定される。センサアレイ120の縁から突出する外側端部183,184は、図26に示し且つ上述したような抵抗測定回路に電気的に接続される。
【0123】
図31〜図34は、本発明による導電糸を用いた織物基材力センサアレイの変形形態を示している。この変形形態では、導電糸は、縫い付けによる固定を用いることなく、導電糸に直接塗布された接着剤によって織物基材シートに固定されている。このため、まず、三層の織物状センサアレイ190は、平行で間隔をあけて配置された複数の行方向弾性導電糸191を有し、この導電糸191は、3ミリ厚のポリエステル又は上述のMillikenの2つの織物のいずれかのうちから作製された伸縮可能な上側織物基材シート193の下側表面194に、接着結合されている。また、センサアレイ190は、伸縮可能な下側織物基材シート195の上側表面196に接着結合された、平行で間隔をあけて配置された複数の列方向弾性導電糸192も有している。上述した方法でピエゾ抵抗特性が与えられるように作製された伸縮可能な織物の薄いシートは、行方向導電糸191と列方向導電糸192との間に位置決めされた中央のピエゾ抵抗層197を構成している。次に、上述した3つの層は互いの上に積み重ねられ、そして、これら3つの層を一緒に接着してこれにより完成したセンサアレイ190を形成するために、3つ全ての層の織物基材の網目の開口を通ってドット状のにかわが注入される。
【0124】
図33に示すセンサアレイ200は、単一の基材シート207を利用している。絶縁糸210,211によって分離される行方向導電糸191及び列方向導電糸192は、両面テープの帯213,214によって、シート207の上側表面212及び下側表面213に接着されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作用する力を測定するための力センサトランスデューサであって、
a.細長く弾性的に伸縮可能な行方向導電糸と、
b.細長く弾性的に伸縮可能な列方向導電糸と、
c.前記行方向糸と前記列方向糸との間で前記行方向糸及び前記列方向糸と導電可能に接触して位置するピエゾ抵抗材と
を備える力センサトランスデューサ。
【請求項2】
前記ピエゾ抵抗材は、前記行方向導電糸及び前記列方向導電糸の少なくとも一方の上の弾性的に変形可能な被覆に含まれるとしてさらに定義される請求項1に記載の力センサトランスデューサ。
【請求項3】
前記ピエゾ抵抗材は、前記行方向導電糸が接触し且つ前記列方向導電糸が接触する、ピエゾ抵抗物質を含んだ弾性的に変形可能なピエゾ抵抗基材シートに含まれるとしてさらに定義される請求項1に記載の力センサトランスデューサ。
【請求項4】
前記ピエゾ抵抗基材シートは前記ピエゾ抵抗物質を含浸させている請求項3に記載の力センサトランスデューサ。
【請求項5】
前記行方向導電糸及び前記列方向導電糸の少なくともいずれかにおける弾性的な伸縮能力は、少なくとも約1パーセント程度である請求項1に記載の力センサトランスデューサ。
【請求項6】
前記行方向導電糸及び前記列方向導電糸の少なくともいずれかはポリマーコアを有する請求項5に記載の力センサトランスデューサ。
【請求項7】
前記ポリマーコアは糸の形態である請求項6に記載の力センサトランスデューサ。
【請求項8】
前記ポリマーコアはヤーンの形態である請求項6に記載の力センサトランスデューサ。
【請求項9】
前記ポリマーコアは、前記ポリマーコアの上に導電性被覆を形成している請求項6に記載の力センサトランスデューサ。
【請求項10】
前記導電性被覆は、前記導電性被覆の上にピエゾ抵抗被覆を形成している請求項9に記載の力センサトランスデューサ。
【請求項11】
前記ポリマーコアは、前記ポリマーコアの上にピエゾ抵抗被覆を形成している請求項6に記載の力センサトランスデューサ。
【請求項12】
前記行方向導電糸及び前記列方向導電糸の少なくともいずれかの弾性的な伸縮能力は、少なくとも約10パーセント程度である請求項1に記載の力センサトランスデューサ。
【請求項13】
前記行方向導電糸及び前記列方向導電糸の少なくともいずれかの弾性的な伸縮能力は、少なくとも約30パーセント程度である請求項1に記載の力センサトランスデューサ。
【請求項14】
1つの前記行方向導電糸は、複数m本の平行な行方向導電糸のうちの1つによって構成される請求項1に記載の力センサトランスデューサ。
【請求項15】
前記列方向導電糸は、前記複数の行方向導電糸に対し角度を付けられる請求項14に記載の力センサトランスデューサ。
【請求項16】
1つの前記列方向導電糸は、複数n本の列方向導電糸のうちの1つによって構成される請求項15に記載の力センサトランスデューサ。
【請求項17】
前記複数の行方向導電糸は第1の表面に位置する請求項16に記載の力センサトランスデューサ。
【請求項18】
前記複数の列方向導電糸は第2の表面に位置する請求項17に記載の力センサトランスデューサ。
【請求項19】
前記第1の表面及び前記第2の表面は互いに平行である請求項18に記載の力センサトランスデューサ。
【請求項20】
前記行方向糸及び前記列方向糸は、弾性的に変形可能な基材シートの対における内側で対面する側に取り付けられる請求項2に記載の力センサトランスデューサ。
【請求項21】
前記基材シートの少なくとも1つは織布から作製される請求項20に記載の力センサトランスデューサ。
【請求項22】
前記行方向導電糸及び前記列方向導電糸の少なくとも一方は、絶縁性縫製糸によって基材シートに取り付けられる請求項21に記載の力センサトランスデューサ。
【請求項23】
前記行方向導電糸及び前記列方向導電糸は、弾性的に変形可能な絶縁基材シートの片側に取り付けられる請求項2に記載の力センサトランスデューサ。
【請求項24】
前記基材シートの少なくとも1つは織布から作製される請求項23に記載の力センサトランスデューサ。
【請求項25】
前記行方向導電糸及び前記列方向導電糸の少なくとも一方は、絶縁性縫製糸によって基材シートに取り付けられる請求項24に記載の力センサトランスデューサ。
【請求項26】
前記行方向糸及び前記列方向糸は、前記ピエゾ抵抗基材シートの対向する両側の平坦な表面に取り付けられる請求項3に記載の力センサトランスデューサ。
【請求項27】
前記行方向糸及び前記列方向糸の少なくとも一方は、弾性的に変形可能な基材シートに取り付けられる請求項26に記載の力センサトランスデューサ。
【請求項28】
前記行方向導電糸及び前記列方向導電糸の少なくともいずれかは、前記導電糸の第1の端部及び第2の端部を結ぶ線に対して波状に配列された経路に配置される請求項1に記載の力センサトランスデューサ。
【請求項29】
前記行方向導電糸及び前記列方向導電糸の少なくともいずれかは、モノフィラメント糸、編糸、及び編ヤーンからなる群から選択されたポリマーから作製される請求項1に記載の力センサトランスデューサ。
【請求項30】
空間的に分離された部分に作用する力を測定するための力センサトランスデューサアレイであって、
a.互いに空間的に分離され、細長く弾性的に伸縮可能である複数m本の行方向導電糸と、
b.互いに空間的に分離され、細長く弾性的に伸縮可能である複数n本の列方向導電糸と、
c.前記行方向導電糸と前記列方向導電糸との間で前記行方向導電糸及び前記列方向導電糸と導電可能に接触して位置し、それにより前記導電糸のp=m×n個の交差部で複数p個のセンサ素子を形成するピエゾ抵抗材と
を備える力センサトランスデューサアレイ。
【請求項31】
前記ピエゾ抵抗材は、回路素子を含むとしてさらに定義され、前記回路素子は、前記p個のセンサのうちの少なくとも1つと直列で非両方向性電気的インピーダンス特性を有し、それにより、前記行方向導電糸及び前記列方向導電糸における選択される対のマトリクスアドレス指定によって、前記センサ素子の電気的インピーダンスの測定同士の間でのクロストークを低減する請求項30に記載の力センサトランスデューサアレイ。
【請求項32】
前記非両方向性電気的インピーダンス特性はダイオードのような特性であるとしてさらに定義される請求項31に記載の力センサトランスデューサアレイ。
【請求項33】
前記ピエゾ抵抗材は、エラストマー固溶体内に懸濁する導電性粒子を含むとしてさらに定義される請求項32に記載の力センサトランスデューサアレイ。
【請求項34】
前記ダイオードのような特性は、前記ピエゾ抵抗材の表面を少なくとも1つの金属酸化物で被覆することによって形成される請求項33に記載の力センサトランスデューサアレイ。
【請求項35】
前記金属酸化物は、少なくとも1つの酸化銅を含むとしてさらに定義される請求項34に記載の力センサトランスデューサアレイ。
【請求項36】
前記ピエゾ抵抗材は、前記行方向導電糸及び前記列方向導電糸のうちの少なくとも一方の上の弾性的に変形可能な被覆に含まれるとしてさらに定義される請求項33に記載の力センサトランスデューサアレイ。
【請求項37】
前記ピエゾ抵抗材は、前記行方向導電糸が接触し且つ前記列方向導電糸が接触する、ピエゾ抵抗基材を含む弾性的に変形可能なピエゾ抵抗基材シートに含まれるとしてさらに定義される請求項33に記載の力センサトランスデューサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図21A】
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【図22A】
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【図22B】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27A】
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【図27B】
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【図27C】
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【図27D】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公表番号】特表2012−519846(P2012−519846A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552938(P2011−552938)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【国際出願番号】PCT/US2010/000645
【国際公開番号】WO2010/101633
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(595148888)ストライカー コーポレイション (52)
【氏名又は名称原語表記】STRYKER CORPORATION
【Fターム(参考)】