説明

形態変化玩具

【課題】従来の形態変化玩具と同様に各部材が回動可能に連結されているだけでありながら、自動的に形態を変化させることができる新しい発想の形態変化玩具を提供
【解決手段】箱状の形態からロボットの形態に変化する形態変化玩具Aで、箱状の形態において形態変化玩具Aを上下及び前後に二分割し、上部前部材B1、上部後部材B2、下部前部材B3及び下部後部材B4とで構成し、内部には上記各部材を支持するフレーム1を配置し、上部前部材B1と上部後部材B2とはそれぞれ上記フレーム1に直接又はリンク4を介して回動可能に連結されるとともに、上部前部材B1と上部後部材b2とは折畳可能に連結し、上記フレーム1と上部後部材B2との連結部には折畳方向に付勢する弾性部材15を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物や動物等の一つの形態からロボット等の他の形態に相互に形態を変化する形態変化玩具であって、特に弾性部材の弾性力を利用して自動的に形態を変化させることのできる形態変化玩具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、形態変化玩具の形態を変化させて遊ぶときには構成部品を一つひとつ手動で操作しなければならず、操作の手順が煩雑であったため簡単な操作で玩具の形態を変化させることができる形態変化玩具が提案されている(例えば、特許文献1)。この形態変化玩具は後部材には前後にスライド自在にスライド部材が設けられ、該スライド部材にはラックが形成されるとともに一部が後部材の上部に露出し操作体が取着されているので、操作体を操作してスライド部材を前方にスライドさせると、該スライド部材に形成されたラックが前方にスライドする。該ラックには連結リンクの端部に形成されたギヤが噛合しているので、連結リンクは回動軸を中心に回動しながら折り畳まれる。この連結リンクには前部材が回動自在に連結されるとともに、該前部材は後部材に折り曲げ可能に連結されているので、前部材は後部材に対して折り曲げられ、例えば他の形態がロボット形態であれば前部材と後部材とで他の形態の一部であるロボット形態における胴体部を構成するようにしたものである。
【特許文献1】特開平9−10442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする問題点は、上述の形態変化玩具はスライド部材にはラックギヤを形成し、連結リンクにはラックギヤに噛み合う歯車を設け、スライド部材のスライド操作で連結リンクを駆動するようにしたものであるため、従来の形態変化玩具にはなかった歯車が必要不可欠なものであり、歯車が露出して外観が損なわれるし、変形部位が多くなればかみ合わせる歯車も多くなり製造、組立のコストがかかる問題があった。
【0004】
本発明は、上記問題点を解決し、従来の形態変化玩具と同様に歯車を用いることなく、視覚的には各部材が回動可能に連結されているだけでありながら、自動的に形態を変化させることができる新しい発想の形態変化玩具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために本発明に係る形態変化玩具は、弾性部材の弾性力を用いて一つの形態から他の形態に形態を変化させる、以下の要件を備えることを特徴とする。
(イ)上記形態変化玩具の一つの形態は箱状の形態で、他の形態はロボットの形態であること
(ロ)上記形態変化玩具は箱状の形態で上下に二分割するとともに前後に二分割し、上部前部材、上部後部材、下部前部材及び下部後部材とで構成したこと
(ハ)上記形態変化玩具の内部には上記各部材を支持するフレームを配置したこと
(二)上部前部材と上部後部材とはそれぞれ上記フレームに直接又はリンクを介して回動可能に連結されるとともに、上部前部材と上部後部材とは折畳可能に連結されていること
(ホ)上記フレームと上部前部材又は上部後部材との連結部には折畳方向に付勢する弾性部材を設けたこと
(へ)上記下部前部材は左右の二部材で構成され上記フレームの前部両側にそれぞれ回動可能に連結され、下部後部材は左右の二部材で構成され上記フレームの後部両側にそれぞれ回動可能に連結されていること
(ト)上記下部後部材には上記上部後部材の回動時に該上部後部材に係合する係合部を設け、係合時には下部後部材はそれぞれ外方に回動させられること
【0006】
そして、前記上部前部材と上部後部材とは折畳時には、上部前部材はロボットの胸部を、上部後部材はロボットの背部をそれぞれ構成し、外方に回動した下部後部材はロボットの腕部を構成することが好ましい。
【0007】
なお、前記下部後部材と前記フレームとの連結部には、前記弾性部材の弾性力に抗して作用する第2の弾性部材を設け、該第2の弾性部材の弾性力を前記弾性部材の弾性力よりも小さく設定すればよい。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、全ての部材は歯車などを介さずに単に回動可能に連結したので、形態変化時に歯車などの形態に関係ないものが見えることがなく、従来の形態変化玩具と外観上は同じであっても自動的に形態を変化させることができ、見るものに驚きを与えることができる新しい発想の形態変化玩具を提供することができる。
【0009】
請求項2の発明によれば、弾性部材の弾性力で上部後部材が後方に回動すると、この下部後部材に連係して上部前部材と下部後部材とが回動し、ロボットの形態に瞬時に変化させることができる。
【0010】
請求項3の発明によれば、弾性部材の弾性力で一つの形態から他の形態に形態を変化させるときは第2の弾性部材の弾性力は相殺されるが、外力を用いて弾性部材の弾性力に抗して上部後部材を復帰移動させると、第2の弾性部材の弾性力が発揮されて下部後部材は内方に回動するので第1の形態に簡単に戻すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明に係る形態変化玩具Aの一つの形態の一例を示し、この一つの形態は箱状の形態をなし、この箱状の形態は本発明では走行体を模して構成するとともに、他の形態に形態を変化させると、図2に示すように、ロボットの形態に形態を変化させることができるようにしたものである。
【0012】
形態変化玩具Aは箱状の形態である走行体の形態において、上下に二分割されるとともに、前後にそれぞれに二分割され、前席に対応する屋根を構成する上部前部材B1、後席に対応する屋根を構成する上部後部材B2、ボンネットを構成する下部前部材B3及びドアパネルを構成する下部後部材B4の4部材で構成され、下部前部材B3は左右に二分割されて左ボンネットB3aと右ボンネットB3bで構成され、下部後部材B4は左ドアパネルB4a、右ドアパネルB4bで構成されている。
【0013】
そして、形態変化玩具Aの内部には上記各部材B1〜B4が回動可能に連結されたフレーム1が配置されている。
【0014】
図3は、上記形態変化玩具Aの基本部分の構成を説明する分解斜視図を示し、上部前部材B1は下面に設けられた軸受2がフレーム1の前部に軸3で回動可能に連結されたリンク4の先端に軸5を介して連結され、上部後部材B2は下面に設けられた軸受6が軸7を介してフレーム1の後部に前後方向に回動可能に連結され、上部前部材B1の後端下部に設けられた軸受8と上部後部材B2の前端下部に設けられた軸受9とが軸10を介して連結され、上部前部材B1と上部後部材B2とは軸10を支点に折り畳めるように構成され、折り畳まれた状態では上部前部材B1の後面に取り付けられたロボットの頭部11が露出するようになっている。
【0015】
なお、上部後部材B2とフレーム1との連結部には、弾性部材であるバネ15が取り付けられ、このバネ15の弾性力で上部後部材B2は軸7を中心に後方に回動するように付勢されている。
【0016】
そして、上部前部材B1と上部後部材B2との間には、上記バネ15の弾性力に抗して上部後部材B2の回動を阻止するロック機構Cが設けられている。このロック機構Cは上部後部材B2の前部から上部前部材B1の内部に突出して形成された凹型フック16と、上部前部材B1の内部に上下動可能に配置されるとともにスプリング17で上方に付勢された凸型フック18とで構成され、凸型フック18の上面には上方に突出して操作ボタン19が形成されている。この操作ボタン19はスプリング17に付勢されて上部前部材B1の上面から上方に突出し、上から押し操作ができるようになっている。
【0017】
左ボンネットB3a、右ボンネットB3bはそれぞれジョイント部材20を介してフレーム1に連結されている。このジョイント部材20は内側面に形成された嵌合凹部20aがフレーム1の前部両側部からそれぞれ左右に突出して形成されたジョイント軸21に回動可能に遊嵌し、後端に形成された軸受20bと左ボンネットB3a、右ボンネットB3bの先端に形成された軸受22とが軸23でそれぞれ回動可能に連結されている。
【0018】
一方、左ドアパネルB4a、右ドアパネルB4bはそれぞれフレーム1から後方に張り出したアーム1aから下方に突出した支軸27に回動可能に取り付けられた回動部材25にジョイント部材26を介して連結されている。この回動部材25には係合部である張出片28が形成され、張出片28が上部後部材B2の後端から下方に張り出して形成された係合板30に当接する方向に回動するようにスプリング(第2の弾性部材)29で付勢されている。
【0019】
なお、この回動部材25は支軸27の下端に固定されたリング31で支軸27から離脱しないようになっている。この回動部材25の張出片28の前面にはジョイント軸32が突出して形成され、上述したジョイント部材26は嵌合凹部26aをジョイント軸32の先端に遊嵌させたので左ドアパネルB4aと右ドアパネルB4bとは回動部材25に対し自由に向きを変えられるようになっている。
【0020】
上記構成の形態変化玩具Aの形態を変化させる過程を、図4(a)〜(d)に基づいて説明する。この形態の変化は、上部前部材B1と上部後部材B2とが折り畳まれる状態を説明するもので、図4(a)に示す乗用車の形態において、上部前部材B1の上面から突出した操作ボタン19を押下すると、図4(b)に示すように、凹型フック16から凸型フック18が離反しロック状態が解除されるので、上部後部材B2はバネ15に付勢されて軸7を中心にフレーム1に対し後方に回動する。
【0021】
上部前部材B1と上部後部材B2とは軸10を介して回動可能に連結されているので、上部前部材B1は後方に引っ張られるが上部前部材B1はフレーム1の先端にリンク4を介して連結されているのでフレーム1に対して水平状態を維持して後方に移動することになる(図4(c)参照)。上部後部材B2はバネ15に付勢されているので、係合板30の下端がフレーム1の底面に当接するまで回動するが、この時、上部前部材B1は、後端が上部後部材B2に軸10で連結され、前部はリンク4でフレーム1に連結されているので、上部前部材B1はフレーム1の上面に重なるように移動し、上部前部材B1と上部後部材B2とは軸10を支点に折り畳まれた状態になり、上部前部材B1がロボットの形態における胸を構成し、上部後部材B2が背中を構成するとともに、上部前部材B1に設けられたロボットの頭部11が露出することになる(図4(d)、図5参照)。
【0022】
次に、図6に基づいて、上部後部材B2の回動に伴って下部後部材B4が左右に広がる過程を説明する。図6(a)は図4(a)の状態の形態変化玩具Aを底面側から見たもので、操作ボタン19が押される前の状態を示している。この状態では支軸27に支持された回動部材25がスプリング29で付勢されて張出片28が係合板30に当接した状態になっており、この時はジョイント部材26を介して張出片28に連結された左ドアパネルB4a、右ドアパネルB4bは内方に回動し走行体の形態において、図1に示すように、ドアパネルを構成している。
【0023】
操作ボタン19を押下してロックを解除すると、後部材B2はバネ15に付勢されて軸7を中心にフレーム1に対し後方に回動を始めるので、図4(c)に示すように、係合板30がフレーム1の下に回り込むようになる。
【0024】
係合板30には回動部材25に設けた張出片28がスプリング29に付勢されてq当接しているので、この張出片28が押されると回動部材25は支軸27を中心に外側に回動を始めるので、張出片28にジョイント部材26を介して取り付けられた左ドアパネルB4a、右ドアパネルB4bはそれぞれ支軸27を中心に外側に回動させられる(図6(b)参照)。
【0025】
上部後部材B2は係合板30の下端がフレーム1の下面に当接するまで回動すると(図4(d)参照)、張出片28は係合板30に代わって上部後部材B2の側面でさらに押されるので、回動部材25は支軸27を中心にさらに外側に回動し、左ドアパネルB4a、右ドアパネルB4bはほぼ水平になるまで回動する(図6(c)参照)。
【0026】
この状態では、図7に示すように、上部前部材B1の上から頭部11が顔を出し、左ドアパネルB4a、右ドアパネルB4bが水平状態になるので、ロボットが腕を左右に伸ばした状態になり、他の形態に形態が変化したことになるが、さらに完璧なロボットの形態にするためには、張出片28に対してジョイント部材26を下向きに回動して左ドアパネルB4a、右ドアパネルB4bを下向きにしてロボットが腕を下げた状態にし、左ボンネットB3aと右ボンネットB3bをジョイント部材20に対して前方に回動させ、ロボットの形態における足を構成することにより、図2示すような、他の形態であるロボットに形態を変化させることができる。
【0027】
なお、ロボットの形態から走行体の形態に戻す場合は、腕を構成していた下部後部材B4(B4a、B4b)を水平な状態に戻し、足を構成していた下部前部材B3(B3a、B3b)を後方に回動させて、図7に示すような状態にした後、上部後部材B2をバネ15に抗して強制的に上方に回動させれば、凹型フック16と凸型フック18とが噛み合ってロック機構Cが働き、上部前部材B1と上部後部材B2とがロックされた状態になり、胸部と背部を構成していた上部前部材B1と上部後部材B2とで走行体の屋根を構成するとともに、上部後部材B2による回動部材25の押圧が解除されるので、回動部材25はスプリング29に弾性力に付勢されて支軸27を中心に内方に回動し、腕部を構成していた下部後部材B4(B4a、B4b)は走行体のドアパネルにそれぞれ手をかけることなく自動的に復帰させることができるので、ロボットの形態である他の形態から走行体の形態である一つの形態に容易に戻すことができる。
【0028】
また、上述の形態変化玩具では一つの形態である箱状の形態を走行体で説明したが、この箱状の形態は走行体の形態に限定されるものではなくビルのような建物やタンカーなどの船舶であっても構わない。これによって、走行体とは異なってスケールの大きなロボットのイメージに変形させることができるので迫力があるとともに予想しないものがロボットへの変化する状態を楽しむことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の形態変化玩具の一つの形態を説明する斜視図
【図2】上記形態変化玩具が他の形態に変化した状態を説明する斜視図
【図3】上記形態変化玩具の基本構成を説明する分解斜視図
【図4】(a)〜(d)は一つの形態から他の形態に形態を変化させる過程の説明図
【図5】上記形態変化玩具が他の形態に変化した状態の側面図
【図6】(a)〜(c)は一つの形態から他の形態に形態を変化させる過程の説明図
【図7】上記形態変化玩具が他の形態に変化した状態の正面図
【符号の説明】
【0030】
1 フレーム
4 リンク
15 弾性部材(バネ)
28 係合部(張出片)
29 第2の弾性部材(スプリング)
A 形態変化玩具
B1 上部前部材
B2 上部後部材
B3 下部前部材
B4 下部後部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性部材の弾性力を用いて一つの形態から他の形態に形態を変化させる、以下の要件を備えることを特徴とする、形態変化玩具。
(イ)上記形態変化玩具の一つの形態は箱状の形態で、他の形態はロボットの形態であること
(ロ)上記形態変化玩具は箱状の形態で上下に二分割するとともに前後に二分割し、上部前部材、上部後部材、下部前部材及び下部後部材とで構成したこと
(ハ)上記形態変化玩具の内部には上記各部材を支持するフレームを配置したこと
(二)上記上部前部材と上部後部材とはそれぞれ上記フレームに直接又はリンクを介して回動可能に連結されるとともに、上部前部材と上部後部材とは折畳可能に連結されていること
(ホ)上記フレームと上部前部材又は上部後部材との連結部には折畳方向に付勢する弾性部材を設けたこと
(へ)上記下部前部材は左右の二部材で構成され上記フレームの前部両側にそれぞれ回動可能に連結され、下部後部材は左右の二部材で構成され上記フレームの後部両側にそれぞれ回動可能に連結されていること
(ト)上記下部後部材には上記上部後部材の回動時に該上部後部材に係合する係合部を設け、係合時には下部後部材はそれぞれ外方に回動させられること
【請求項2】
前記上部前部材と上部後部材とは折畳時には、上部前部材はロボットの胸部を、上部後部材はロボットの背部をそれぞれ構成し、外方に回動した下部後部材はロボットの腕部を構成する、請求項1記載の形態変化玩具。
【請求項3】
前記下部後部材と前記フレームとの連結部には、前記弾性部材の弾性力に抗して作用する第2の弾性部材を設け、該第2の弾性部材の弾性力を前記弾性部材の弾性力よりも小さく設定した、請求項1記載の形態変化玩具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−189521(P2009−189521A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−32550(P2008−32550)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000003584)株式会社タカラトミー (248)
【Fターム(参考)】