説明

形成異常の改善された診断方法

【課題】生物学的サンプル内で、INK4a遺伝子産物を過剰発現する形成異常細胞を、INK4a遺伝子産物を検出可能なレベルで発現する他の細胞から識別するための方法を提供すること。
【解決手段】上記の方法は、少なくとも1つの単一の細胞内での少なくとも2つのマーカー分子の同時発現を、細胞学的試験手順または組織学的試験手順で決定する工程を包含し、ここで、少なくとも1つのマーカー分子は、INK4a遺伝子によってコードされる発現産物であって、かつ、少なくとも1つのさらなるマーカー分子は、細胞増殖マーカーであって、ここで、少なくとも1つのINK4a遺伝子産物の過剰発現およびこの単一の細胞内での検出可能なレベルでの活性な細胞増殖に対する少なくとも1つのマーカーの発現は、この細胞の形成異常状態の指標である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、INK4a遺伝子産物と細胞増殖に関する少なくとも1つのマーカーとの同時検出に基づいた、形成異常(dysplastic)の改善された診断方法に関する。特に本発明は、それぞれの細胞の増殖特性を特徴付けるのに適したマーカーの検出によって、INK4a遺伝子産物を過剰発現する形成異常細胞を、形成異常せずにINK4a遺伝子産物を過剰発現する細胞から識別する方法を提供する。増殖特性の特徴付けは、活発な細胞増殖に特徴的なマーカーもしくはマーカーのセットおよび/または遅延したかもしくは中断した細胞増殖に特徴的なマーカーもしくはマーカーのセットの検出を包含し得る。従って、本明細書に提示された方法は、組織学的かつ細胞学的な試料における形成異常の特異的な診断を可能にする。
【背景技術】
【0002】
生物学的サンプルにおけるp16INK4aの過剰発現の検出は、肛門性器の病変(例えば、子宮頚の癌腫(特許文献1非特許文献1を参照のこと))の検出において有用なマーカーであると証明されている。p16INK4a特異的免疫化学染色に基づいた方法は、組織切片および細胞学的サンプルにおける感度が良く、かつ特異的な形成異常細胞の同定を可能にする。
【0003】
組織の免疫組織化学的検査において、形成異常細胞および新生物細胞は、p16INK4a特異的抗体媒介性染色手順を使用して染色され得る。従って、新生物病変の組織学的な診断は、肛門性器病変における細胞の形質転換に特徴的な分子マーカーに基づいた染色手順によって支持される。これらの手順における、細胞が新生物細胞であるか否かの診断は、p16INK4a特異的染色に基づくだけでなく、組織学的情報にもまた依存している。
【0004】
このことは、サンプルの約20〜30%において、化生(metaplastic)細胞が、p16INK4a特異的抗体とある程度の免疫反応性を示し、従ってその手順の過程で染色されるという事実に起因する。しかし、これらの化生細胞から産生される染色パターンは、新生物病変から提供されるパターンとは異なる。化生細胞は、斑点状または限局的な染色パターンを生じるが、新生物病変は、散在性の染色パターンを生じる。さらに、化生細胞の染色強度は、大部分は、新生物細胞の染色強度より小さい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第00/01845号パンフレット
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Klaesら、Int.J.Cancer(2001)92、276〜284
【発明の概要】
【0007】
形成異常および/または新生物形成の初期の検出のためのスクリーニング試験に使用される一般的な方法は、組織学に基づいた試験は使用せず、むしろ細胞学的な試験手順に依存している。しかし、特に、組織の構造に関する入手可能な組織学的な情報が存在しない場合(例えば、細胞学的試験において)、p16INK4a過剰発現のみに関する試験は、偽陽性の結果につながり得る。これは、p16INK4aを検出可能な程度に上昇したレベルで発現する化生細胞の画分は組織学的基準によっては分化し得ないためである。
【0008】
p16INK4aの過剰発現を示す細胞の割合は、形成異常の出現の過程で増加する。従って、新生物段階または前新生物(pre−neoplastic)段階において、新生物細胞または前新生物細胞の制限された集団のみがサンプル中に存在する場合、p16INK4aの免疫反応性は弱いこともある。この弱い免疫反応性は、化生細胞によって引き起こされるレベルとほぼ同じレベルとなることもある。形成異常のより後期の段階では、p16INK4aの全体の免疫反応性は、より強く、そのため、新生物病変は、細胞学的試験形式においてでさえ、化生から容易に識別可能である。このことは、p16INK4aを発現する化生細胞の存在が新生物細胞の存在と混同される場合、この手順は、偽陽性の結果を生じるという問題につながり得る。
【0009】
特にスクリーニング試験において、初期段階の新形成の検出が望ましい場合、この状態は、全く好ましくない。このことは、p16INK4aに基づいた診断が組織学的試験における有用なツールであることが証明され、そして、細胞学に基づいたスクリーニング手順における適用がこれらの確立された手順を向上し得るので、特にあてはまる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
細胞学的試験形式における偽陽性の結果を減少させるためおよびp16INK4aに媒介される肛門性器病変の診断の忠実度をさらに向上させるために、新生物病変および形成異常病変から化生病変を識別する方法が所望される。新生物病変および前新生物病変から化生病変を識別するための方法は、本発明に基づいて特許請求された実施形態において提供される。
【0011】
p16INK4aの過剰発現に基づいた試験手順における新生物病変からの化生の識別を支持するために、新生物の細胞および組織ならびに/または前新生物の細胞および組織で発現し、かつ、1つの化生細胞内でINK4a遺伝子産物と同時に発現しないマーカー分子が所望される。
【0012】
当該分野に存在する問題の解決策が、本発明に基づいて特許請求された方法によって提供される。本発明につながる実験の過程において、本発明者らは、細胞増殖に対する少なくとも1つのマーカー(例えば、Ki67、Ki−S2、mcm5またはmcm2)と組み合わせたp16INK4aの存在または非存在の検出および/またはp16INK4aのレベルの検出の組み合わせが、当該分野に存在する問題を解決し得ることを発見した。
【0013】
形成異常の改善された診断のための分子マーカーの組合せの使用に関する、当該分野における2、3の文書が存在する。WO0208764において、HPVマーカーと細胞増殖またはウイルス活性に対するマーカーとの組合せを使用する子宮頚悪性腫瘍の改善された診断のための方法が開示される。p16INK4aは、この発明との関連において、HPVマーカーと組み合わせられるべきウイルス活性マーカーとして言及されている。
【0014】
EP1217377において、1つより多いマーカー分子の検出によって媒介される子宮頚悪性腫瘍の自動検出のための方法が開示される。いくつかの規定されたマーカーの組合せは、この文書内で挙げられる。この文書には、組合せに対する適切なマーカーの選択に関する開示は存在しない。この適用における組合せの目的は、生物学的細胞学的試料における染色パターンの自動化された分析の忠実度を改善することである。この文書は、p16INK4aと他の腫瘍マーカーとの組合せにも言及している。
【0015】
WO02059616は、子宮頚悪性腫瘍の改善された診断のための細胞周期の乱れの検出方法を開示する。この文書は、形成異常細胞が、細胞周期制御における乱れを示すので、細胞におけるG1後物質と一緒にサイクリンE型タンパク質を検出する手段によって同定され得ることを開示する。
【0016】
「Ki67,Cyclin E,and p16INK4a Are Complimentary Surrogate Biomarkers for human papilloma Virus−Related Cervical Neoplasia」(American Journal of Surgical Pathology 25(7):884〜891、2001)において、Jeffrey Keatingは、子宮頚形成異常の診断の過程におけるp16INK4a、Ki67およびサイクリンEの使用の相補性を開示する。この文書は、形成異常および状態の検出における各単一マーカーの問題を言及し、細胞学的試料が試験下に存在する場合には特に、サイクリンEと組み合わせたp16INK4aが単一マーカー分子の欠点を克服するために適している場合があると言及している。増殖細胞に特徴的なマーカー(例えば、Ki67)と合わせたp16INK4aの使用を教示する開示は、示されていない。この文書は、診断方法における使用のためのp16INK4aの組合せを教示しない;さらに、この開示は、子宮頚の鑑別診断におけるKi67の限定された使用に関係し、従って、子宮頚悪性腫瘍の診断におけるこのマーカーの使用から離れて教示する。
【0017】
当該分野では、p16INK4aポジティブ非形成異常細胞をp16INK4aポジティブ形成異常細胞から識別するための改善された識別方法に使用するための、p16INK4aを細胞増殖に特徴的なマーカーと組み合わせた使用を教示する開示は存在しない。WO02059616は、形成異常細胞増殖の検出におけるp16INK4aの使用についてのてがかりを与えない。EP1217377は、分析プロセスの自動化以外に、検出の過程における腫瘍マーカーの組合せの目的を教示しない。子宮頚試料における、例えば、化生細胞からの形成異常細胞の識別のような特異的な識別目的についての組合せの利点に関係する開示は存在しない。
【0018】
本発明の発明者らは、種々の形成異常において過剰発現するp16INK4aがいくつかの他の非形成異常細胞においても検出され得るという当該分野に存在する欠点を克服することを追求した。非形成異常p16INK4aポジティブ細胞とp16INK4aを過剰発現する形成異常細胞との間の識別は、それぞれの細胞の増殖特徴に基づいたものであり得る。正常に制御された細胞では、p16INK4aはcdk4を阻害し、従って増殖を阻害する。対照的に、形成異常細胞では、この調節は、弱められる。従って、p16INK4aは、その極めて高い発現レベルにも関わらず、細胞増殖の阻害を導かない。
【0019】
本発明の発明者らは、p16INK4aと細胞増殖に特徴的なマーカーとの同時検出によって、形成異常細胞が制御された細胞増殖を示す細胞から識別され得ることを見出した。正常細胞において、p16INK4aの上昇したレベルが細胞増殖を阻害するという事実に起因して、p16INK4aを過剰発現する細胞は、それらが活発な細胞増殖の特徴を示す場合、形成異常であるとして分類され得る。
【0020】
本発明は、細胞増殖マーカーと同時にp16INK4a遺伝子を生物学的サンプル中で発現する細胞の存在または非存在の検出に基づいた組織学的試験手順または細胞学的試験手順において、生物学的サンプル中の新生物病変、前新生物病変および/または形成異常病変を、上昇したレベルのp16INK4aを示す非形成異常細胞から識別するための方法に関する。細胞増殖に対して適したマーカーは、例えば、Ki67、Ki−S2、Ki−S5、mcm5またはmcm2であってもよい。本発明の1つの実施形態において、細胞増殖に対するマーカーのタンパク質またはmRNAは、サンプルにおける初期形成異常病変または前新生物病変からの化生の識別のためのマーカーとして役目を果たし得る。
【0021】
本発明の1つの局面は、生物学的サンプルにおいて、INK4a遺伝子産物を過剰発現する形成異常細胞を、INK4a遺伝子産物を検出可能なレベルで発現する他の細胞から識別するための方法を提供することであり、この方法は、細胞学的試験手順または組織学的試験手順において、少なくとも1つの単一細胞内で同時発現する少なくとも2つのマーカー分子を決定する工程を包含し、ここで、少なくとも1つのマーカー分子は、INK4a遺伝子によってコードされる発現産物であって、かつ、少なくとも1つのさらなるマーカー分子は細胞増殖マーカーであって、ここで、少なくとも1つのINK4a遺伝子産物の過剰発現およびこの単一細胞内の免疫化学的に検出可能なレベルでの活発な細胞増殖に対する少なくとも1つのマーカーの発現は、細胞の形成異常の指標であって、ここで、この単一の細胞内での少なくとも1つのINK4a遺伝子産物の過剰発現および老化、細胞分化の終点、アポトーシスまたは細胞周期の停止に対する少なくとも1つのマーカーの検出可能なレベルでの発現は、細胞の非形成異常状態の指標である。
【0022】
本発明の第2の局面は、本明細書に開示された方法に基づいて、サンプル中の形成異常を決定するための試験キットに関する。
【0023】
本発明につながる実験の間に、特定の状況下で、非形成異常細胞はp16INK4aに対する免疫反応性を示し得ることが見いだされた。発明者らは、INK4a遺伝子産物のレベルの上昇に反応して、細胞増殖の順序付けた制御を示すこれらの細胞が、成長停止を受けることを見出した。従って、これらの個々の細胞は、細胞増殖のマーカーに対して免疫反応性を示さない。対照的に、p16INK4aを過剰発現する形質転換した細胞は、細胞増殖の無調節な制御を示し、増殖の停止によってp16INK4aの上昇したレベルには反応しない。従って、これらの形成異常細胞は、細胞増殖に対するマーカーとp16INK4aとの同時発現を示す。従って、発明者らはp16INK4aと細胞増殖に対するマーカーとの同時検出が、p16INK4aを過剰発現する停止した細胞(例えば、化生細胞)から形成異常細胞を識別するのに役立ち得ることを見出した。
【0024】
種々の形成異常におけるp16INK4aの過剰発現は、他のいくつかの非形成異常細胞でもまた検出され得るという発見により、本発明の発明者らは、それぞれの細胞の増殖特徴に基づいて、非形成異常p16INK4aポジティブ細胞とp16INK4aを過剰発現する形成異常細胞とを識別する技術を確立した。正常に制御された細胞では、p16INK4aは、cdk4を阻害し、従って細胞増殖を阻害するのに対して、形成異常細胞では、これはあてはまらない。従って、形成異常細胞において、p16INK4aはその極めて高い発現レベルにも関わらず、細胞増殖の阻害をもたらさない。
【0025】
本明細書に開示された方法は、INK4a遺伝子産物(例えば、p16INK4a)の細胞増殖に特徴的なマーカーとの同時検出によって、形成異常細胞が、正常に制御された細胞増殖を示す細胞から識別され得るという事実に基づいている。
【0026】
用語マーカーならびにマーカー分子とは一般的に、本明細書中では、増殖マーカー遺伝子発現産物ならびにINK4a遺伝子発現産物に関して使用される。
【0027】
本文を通して遺伝子に対して示される名称は一部、任意の生物体から発見された遺伝子またはタンパク質に関する。本発明との関連では、この名称は、本明細書で開示された方法について特に問題になっている生物体内の指定されたマーカーのそれぞれの相同物を与える。本発明の特定の実施形態において、この生物体は哺乳動物であって、1つの実施形態では、ヒトであり得る。本発明のこのような1つの実施形態では、指定されたマーカーは、それぞれの名称のマーカーのヒトホモログである。
【0028】
一般的に、本文を通して、種々の文法形態の用語「(細胞)増殖マーカー」または「細胞増殖のためのマーカー」は、タンパク質マーカーならびに核酸マーカーを称するために使用される。マーカー(例えば、「複製タンパク質」)のタンパク質名称が本明細書中で使用される場合、この使用は、換喩的であり、かつ特定のタンパク質をコードする核酸マーカー分子についてのタンパク質に関係することも理解される。
【0029】
本発明に基づく有用なマーカーは、遺伝子から転写された任意の分子かまたはそのような転写産物から翻訳された任意の分子であり得る。従って、本発明に関して使用される遺伝子産物としては、ポリヌクレオチド(例えば、DNAまたはRNA)およびポリペプチド(例えば、タンパク質、プロテオグリカン、ペプチドなど))が挙げられ得る。本発明に関して使用される発現産物(単数または複数)としては、任意のリーディングフレーム、スプライシング改変体を含む順方向または逆方向の遺伝子座の任意の転写産物が挙げられる。従って、本明細書中で使用される場合、発現産物は、特定の遺伝子座の核酸によってコードされる任意の別の産物を含む。
【0030】
本発明に関して使用される場合、INK4aをコードする遺伝子産物とは、INK4a遺伝子座から転写された任意のmRNAかまたはこのようなmRNAから翻訳された任意のポリペプチドであり得る。本発明の1つの実施形態において、INK4a遺伝子によってコードされる発現産物は、約5〜40kDaの分子量またはその間の任意の値の分子量を示し、好ましくは、約10〜20kDaまたはその間の任意の値の分子量を示し、最も好ましくは、約14〜約19kDaまたはその間の任意の値の分子量を、それぞれ示し得る。
【0031】
本発明に基づいた方法に適したINK4a遺伝子産物としては、例えば、遺伝子産物(例えば、p16INK4aおよびp14ARF)が挙げられ得る。
【0032】
本発明に関して使用される場合、用語「(細胞)増殖マーカー」または「細胞増殖に関するマーカー」は、細胞の増殖状態に特徴的である当該分野で公知の任意のマーカー分子を含み得る。増殖状態は例えば、遅延した細胞増殖、停止した細胞増殖、老化した細胞、分化末期の細胞、アポトーシス細胞などの活発に増殖する細胞の状態であり得る。本発明の1つの実施形態において、細胞増殖マーカーは、活発な細胞増殖に特徴的なマーカー分子である。本発明の別の実施形態において、増殖マーカー分子は、停止した細胞、分化末期の細胞、老化細胞またはアポトーシス細胞に対して特徴的な分子であり得る。
【0033】
特定の実施形態において、本発明に関して使用される増殖マーカーは、DNA複製に関与する遺伝子(例えば、前開始複合体のタンパク質または複製フォークのタンパク質)を含み得る。このような分子としては、例えば、真核生物のヘリカーゼまたはMCMタンパク質(MCM2、MCM3、MCM4、MCM5、MCM6、MCM7)、WO0050451およびWO0217947に開示されるタンパク質TP(HELAD1、Pomfil2、Unc−53とも称される)、複製プロセスに関与するキナーゼまたはホスファターゼ(例えば、CDC6プロテインキナーゼ、CDC7プロテインキナーゼ、Dbf4プロテインホスファターゼ、CDC14プロテインホスファターゼ、CDC45およびMCM10が挙げられ得る。さらなる増殖マーカーとしては、進行中の複製フォークに関与するタンパク質(例えば、PCNAまたはDNAポリメラーゼδ、複製タンパク質A(RPA)、複製因子C(RFC)、FEN1)が挙げられ得る。
【0034】
他の実施形態において、増殖マーカーは、細胞増殖の維持に必要な分子(例えば、Ki67、Ki−S5またはKi−S2)を含み得る。この実施形態において、タンパク質は、例えば、細胞周期全体を通して存在し得る。それらが活発な細胞増殖に特徴的であって、かつ、停止状態の細胞、分化末期状態の細胞、アポトーシス細胞または老化状態の細胞では顕著に発現しない場合、それらは、本発明に基づいた方法を実施するために有用である。本明細書で使用される場合、Ki67、Ki−S2およびKi−S5は、それぞれの抗体ならびにこれらの抗原をコードする核酸によって検出されるタンパク質マーカー分子を称する。
【0035】
別の実施形態において、本発明に基づいた方法において使用するための細胞増殖マーカーは、遅延したかまたは停止した細胞増殖に特徴的なマーカー分子(例えば、老化マーカー、細胞周期停止マーカー、分化末期細胞に特徴的なマーカーまたはアポトーシスマーカー)であり得る。このような分子としては、例えば、p21、p27、カスパーゼ、BAD、CD95、fasリガンド、parpタンパク質などが挙げられる。
【0036】
本発明に関して使用される場合、識別とは、サンプルが1つの方向または別の方向のどちらに分類されるかの評価を含む。本発明の1つの実施形態において、識別は、組織または組織の構成要素が形成異常であるかまたは形成異常ではないかの評価に関する。従って、識別は、本明細書で使用される場合、生物学的サンプルの細胞の増殖特徴についての判断である。
【0037】
本発明の1つの実施形態において、識別は、活発な細胞増殖に特徴的なマーカーの発現の検出と同時に行なうINK4a遺伝子産物の発現の検出を含む。この場合、両方のマーカー分子を同時発現する細胞は、形成異常として分類される。
【0038】
本発明の別の実施形態において、識別は、静止したか、停止したかまたは遅延した細胞増殖に特徴的なマーカーの発現の検出と同時に行なうINK4a遺伝子産物の検出を含む。この場合、両方のマーカー分子を同時発現する細胞は、非形成異常として分類される。
【0039】
本発明の特定の実施形態において、2つより多いマーカー分子の存在もしくは非存在および/またはそのレベルを検出することが有用である。1つの実施形態において、1つのINK4a遺伝子発現産物は、細胞増殖に対する2つ以上のマーカーと合わせて検出される。このことは、サンプル中のINK4a遺伝子産物を発現する細胞の増殖特性の同定を向上させるのに有用である。いくつかの増殖マーカーは、細胞周期の特定の相に限定されるかまたは細胞に少量しか存在しない。この事実のために、いくつかの場合、INK4a遺伝子産物を発現する増殖細胞の検出は、2つ以上の増殖マーカーの検出によって改善され得る。このような場合、例えば、増殖性細胞周期全体の間に発現される1つの増殖は、特異的細胞周期相に特徴的であるマーカーと同時に検出され得る。例えば、Ki67、KiS5またはKi−S2は、mcm5、mcm2、PCNA、rpA、rfCなどと一緒に検出され得る。他の場合には、例えば、DNA複製に関与するタンパク質は、Ki67、Ki−S5またはKi−S2と一緒に検出され得る。なお別の場合には、Ki67は、Ki−S2と一緒に検出され得る。これらの例は、例示的な組合せの可能性を意図し、包括的ではないことが理解されるべきであり、そのため、増殖マーカーの他の種々の組合せが同様に有用であり、本発明に基づいた方法の手順において適していることが理解されるべきである。
【0040】
場合によっては、2つ以上の細胞増殖マーカー分子の組合せが、本明細書に開示された方法に適用され得る。別の実施形態において、細胞周期のより長い期間にわたってまたは全細胞周期にわたってでさえ、または活発に増殖する細胞において検出され得る2つ以上のマーカー分子は、本明細書に開示された方法と合わせて検出され得る。1つより多い細胞増殖マーカー分子の組合せは、一般的に、細胞の増殖特性の検出の感受性の改善に対して有用であり得る。
【0041】
本発明の特定の実施形態において、組合せはさらに、他のマーカー分子(例えば、老化マーカー分子、停止細胞に対するマーカー、分化末期細胞に対するマーカー、アポトーシス細胞に対するマーカー、ウイルス感染に対するマーカーもしくは細胞内のウイルス活性に対するマーカーまたはマーカーとしての細胞周期調節タンパク質)を含み得る。HPV感染と関連する形成異常を伴なう特定の実施形態において、HPVと関連したマーカー分子またはウイルス活性に対するマーカーの検出は、形成異常の検出のために有用であり得る。サンプルのHPV感染の検出に有用な方法は、当業者に公知である。これらの方法は、HPV薬剤に特異的なプローブを使用する方法を包含し得るか、または、核酸増幅反応を使用し得る。ウイルス感染の検出は、INK4aおよび増殖マーカー分子の検出と同時に、またはそれに続いて実施され得る。
【0042】
本発明に関して使用される場合、形成異常とは、軽い形成異常から重篤な形成異常およびその前段階、ならびに癌腫(例えば、インサイチュ癌腫または浸潤癌腫および散在する腫瘍細胞)をいう。従って、形成異常とは、本明細書中で使用される場合、初期段階および前段階の形成異常および癌腫も含む。
【0043】
形成異常なし(本明細書中で使用される場合、非形成異常の)でINK4a遺伝子産物を過剰発現する細胞は、本明細書中で言及される場合、例えば、化生細胞、老化細胞、分化末期細胞、上昇したレベルのINK4a遺伝子産物を示す細胞周期の特定の段階の細胞を含み得る。特定の細胞において、上昇したレベルのINK4a遺伝子産物はさらに、外部シグナル(例えば、ホルモン、伝達物質など)に対する反応として誘発され得る。本発明の1つの実施形態において、INK4a遺伝子産物を過剰発現する非形成異常細胞としては、例えば、化生細胞、子宮内膜細胞などが挙げられる。
【0044】
INK4aをコードする遺伝子産物および/または本発明に基づく増殖マーカー遺伝子産物の発現レベルの検出方法は、例えば、生物学的サンプルにおける非常に少量の特異的生物学的分子の検出に適し得る任意の方法である(しかし、必ずしもその必要はない)。本発明に基づいた検出反応は、核酸のレベルの検出かまたはポリペプチドのレベルの検出のどちらかである。
【0045】
本発明に関して使用される場合、マーカー分子は、そのマーカーが適切な検出手順(例えば、インサイチュハイブリダイゼーション、免疫化学染色、ハイブリッドキャプチャーアッセイ(hybrid capture assay)など)の過程において検出され得るならば、検出可能であると言われる。マーカー分子の発現のレベルは、適切なレポーター反応(例えば、色素に基づいた(chromogenic based)免疫化学染色もしくは蛍光に基づいた免疫化学染色または顕微鏡分析または自動化分析のためのインサイチュハイブリダイゼーション手順)を用いて検出可能になされ得る。当業者に公知のレポーターシグナルを増強するための適切な方法が、本発明に基づく方法の過程において適用され得る。従ってそのマーカーは、染色が、意味のある染色結果を産生するための免疫化学染色手順において本質的に得られるそれぞれのバックグラウンド染色に取って代わる場合、検出可能であると言われる。
【0046】
マーカー分子は、これらの分子を特異的に識別する試薬を使用して検出され得る。INK4a遺伝子産物および/または増殖マーカー遺伝子産物に対する検出反応は、初期マーカー分子を識別するかまたは他の分子を識別するために使用される先行分子を識別するかのどちらかの検出試薬との1つ以上の反応を含み得る。
【0047】
本発明の特定の実施形態において、1つの単一のマーカー分子の検出のために、2つ以上のプローブが使用され得る。例えば、2つ以上の異なった結合物質(例えば、抗体)または1つの単一のマーカー分子に対して指向されたオリゴヌクレオチドプローブ(異なったエピトープまたは異なった配列に対して指向され得る場合)が本明細書に開示された方法の過程において使用され得る。
【0048】
異なった遺伝子産物の検出は、1つの反応容器もしくは封じ込め(containment)、または種々の封じ込めを同時にもしくは後に使用して実施され得る。従って、異なった遺伝子産物が、両方の産物を同時に発現する1つの細胞で同時に検出され得る。他に、細胞において単一のマーカーをそれぞれ検出するために、遺伝子産物を同時に発現する細胞が、分離検出反応(空間的、または時間的に分離)に使用され得る。別の実施形態では、どれか1つのマーカーを発現する細胞が存在し得る。種々の細胞におけるマーカー分子の検出も、時間および/または空間において、同時に、または別々に実施され得る。
【0049】
検出反応はさらに、マーカー分子遺伝子産物の存在もしくは非存在および/またはそのレベルを示すレポーター反応を含み得る。レポーター反応は、例えば、着色化合物を産生する反応、生物発光反応、蛍光反応、一般に、放射線放射反応などであり得る。
【0050】
特定の実施形態において、種々のレポーターシグナルを産生する薬剤によって種々のマーカー分子が識別され得、従ってシグナルとは、識別され得るマーカー分子をいう。本発明の1つの好ましい実施形態において、2つ以上のINK4a遺伝子産物および/または増殖マーカー遺伝子産物の発現の検出は、同時に行なわれる。この場合、レポーター反応は、例えば、種々の検出される分子に対する種々の蛍光標識を使用し得る。
【0051】
しかし、本発明に関して、どれか1つの増殖マーカーまたはINK4aマーカー遺伝子産物が細胞で発現しているか否かについて必ずしも回答しなくてもよい。特定の実施形態において、問題は、何らかの増殖マーカーおよび/またはINK4a遺伝子産物が発現するか否かである。そのような実験の過程において、増殖マーカーの存在の指標として同一の蛍光シグナルを生じる手順が選択され得る。この手順は、細胞増殖特徴(活発な細胞増殖に対して特徴的な種々のマーカー)の検出感度を改善するために適切である。場合によっては、その手順は、細胞増殖に特徴的である3つ、4つまたはそれより多いマーカー分子に対する1つの検出可能なシグナルを与えるために適用され得る。類似または同一の手順が、特定の条件下では、INK4a遺伝子発現産物にあてはまり得る。場合によっては、種々の増殖マーカー分子に対する種々の染色シグナルが所望され得ることが理解されるべきである。この手順は、それぞれの実験の必需品に適用され得る。
【0052】
本発明の特定の実施形態において、1つ以上(例えば、2つの異なる)INK4a遺伝子産物の組合せは、1つ以上、例えば、2つのセット、3つのセット、4つのセット、5つのセットまたはそれより多いセットの細胞増殖に対するマーカーの組合せを用いて検出され得る。場合によっては、細胞増殖に対するマーカー分子の検出は、1つのレポーターシグナルのみを与え得る。他の場合には、細胞増殖に対する各単一マーカーが特定のレポーターシグナルを与え得るかまたはマーカー分子の群が特定のレポーターシグナルを与え得る。
【0053】
免疫反応性の存在の指標のためのシグナルは、当該分野で公知の種々の方法によって産生される呈色(chromogenic)シグナルであり得る。あるいは、蛍光シグナルが使用され得るか、またはさらに蛍光シグナルと組み合わせて使用され得る。適切なレポーターシグナルとしては、例えばフルオレセイン、ローダミンなどのような蛍光標識が挙げられる。
【0054】
本発明に基づく検出反応のための適用可能な形式は、ブロッティング技術(例えば、ウエスタンブロット、サザンブロット、ノーザンブロット、免疫細胞化学手順または免疫組織化学手順)であり得る。ブロッティング技術は、当業者に公知であって、例えば、電気ブロット、半乾燥ブロット、真空ブロットまたはドットブロットとして実施され得る。免疫細胞/組織化学染色手順は、当業者に公知であって、結合物質媒介性ポリペプチドの検出ならびにインサイチュハイブリダーゼーション技術を含み得る。両方の異なる技術が、同時にさえ適用され得る。特定の実施形態において、核酸のハイブリッドキャプチャーが、検出のために使用され得る。増幅反応もまた、例えば核酸分子の検出に適用可能である。
【0055】
本発明の1つの実施形態において、INK4aおよび/または増殖マーカー遺伝子産物のレベルの検出は、サンプル中に存在するそれぞれの核酸(例えば、mRNA)またはそのフラグメントの検出によって行なわれる。核酸分子の検出のための手段は、当業者に公知である。核酸の検出のための手段は、例えば、検出されるべき分子の相補的核酸プローブに対する結合反応、核酸に対して結合特異性を有するタンパク質またはこの核酸を特異的に識別し、結合する他の任意の物により行われ得る。1つの実施形態において、サンプル中の核酸に対するオリゴヌクレオチドプローブのインサイチュハイブリダイゼーションが、発現産物またはマーカーの検出のために使用され得る。
【0056】
本発明に関して使用される場合、プローブは、分子に特異的に結合する任意の薬剤であり得る。核酸の場合には、プローブは特定の配列にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドであり得る。1つの実施形態において、プローブは、例えば、プライマーであり得る。ポリペプチドまたはタンパク質の検出の場合には、本明細書中で使用されるプローブは、例えば、結合剤(例えば、抗体)であり得る。本発明の特定の実施形態において、プローブは、検出可能に標識され得る。この標識は、放射性同位元素、生物発光化合物、化学発光化合物、蛍光化合物、金属キレート剤または酵素を含む群から選択され得る。プローブは、当該分野で公知の任意の検出手順(例えば、インサイチュハイブリダイゼーション手順の過程、ハイブリッドキャプチャーアッセイの過程、免疫化学染色反応の過程、ブロッティング技術の過程など)に適用され得る。
【0057】
この方法は、インビトロだけでなく、インサイチュで直接的にも(例えば、染色反応検出の過程において)実施され得る。本発明に基づいた方法で実施されるサンプル中のマーカーmRNAを検出する別の方法は、核酸の増幅反応であって、これは、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応のような量的な様式で実施され得る。本発明の好ましい実施形態において、形成異常または腫瘍のサンプル(細胞サンプルまたは組織サンプル)中のマーカーmRNAのレベルを定量するために、リアルタイムRT PCRが使用され得る。
【0058】
本発明の別の好ましい実施形態において、INK4aおよび/または増殖マーカー遺伝子産物のレベルの検出は、タンパク質またはそのフラグメントの発現のレベルを決定することによって行われる。タンパク質レベルにおけるマーカー遺伝子産物の検出は、例えば、特定のマーカーポリペプチドの検出に特異的な結合剤を含有する試薬において行われ得る。
【0059】
この結合剤は、多くの異なった検出技術(例えば、ウエスタンブロット、ELISAまたは免疫沈降)において使用され得る。一般に、ポリペプチド結合剤ベースの検出は、インビトロと同様にインサイチュで(例えば、免疫化学染色反応の過程において、)直接実行され得る。生物学的サンプル中の特定のポリペプチドの量を決定するための他の任意の方法は、本発明に従って決定される。
【0060】
本発明に関する使用のための免疫細胞化学画像化手順は、例えば、細胞学的調製物または組織学的調製物の、呈色(chromogenic)色素または蛍光色素を用いた染色工程を包含し得る。染色工程は、例えば、検出されるべき分子の、一次結合剤による結合工程を包含し得、この一次結合剤は、それ自体が標識され得る二次結合剤によって検出される。特定の実施形態において、一次結合剤は核酸結合剤またはタンパク質結合剤(例えば、抗体)であり得、そして二次結合剤は、例えば、一次結合剤を識別する二次抗体であり得る。
【0061】
細胞化学染色または組織化学染色の染色工程を実行するための、当該分野で公知の任意の方法が、本発明に従った方法の過程で適用され得る。
【0062】
p16INK4aポリペプチドまたはp14ARFポリペプチドのようなINK4aポリペプチド、および例えば、mcm5ポリペプチド、mcm2ポリペプチド、KI67ポリペプチド、Ki−S5ポリペプチド、PCNAポリペプチドまたはKi−S2ポリペプチドのような増殖マーカーポリペプチドのレベルの検出のために、本発明に関して使用される結合剤としては、抗体および抗原結合フラグメント、二機能性ハイブリッド抗体、最小抗原結合エピトープを含むペプチド模倣物、抗culline(抗calineTM)などが挙げられ得る。
【0063】
本明細書中で開示されるタンパク質と検出可能レベルで反応する場合、そして他のタンパク質と有意に反応しない場合、抗体または抗原結合剤は、特異的に反応すると言われる。本発明に従う抗体は、モノクローナル抗体であってもポリクローナル抗体であってもよい。本明細書中で使用される場合、抗体またはモノクローナル抗体という用語は、インタクトな分子および抗体フラグメントを意味する。さらに、本発明の抗体としては、キメラ抗体、単鎖抗体、およびヒト化抗体が挙げられる。
【0064】
本発明に従い、結合剤は、単離されて使用されてもまたは組み合わせて使用されてもよい。組み合わせによって、より高い程度の感受性を達成することが可能である。抗体という用語は、好ましくは、明らかなモノクローナル抗体調製物と同様、異なったエピトープ特異性を有するプールされたモノクローナル抗体から本質的に成る抗体に関する。
【0065】
モノクローナル抗体は、本発明のポリペプチドのフラグメントを含む抗原から、当業者に公知の種々の技術のいずれかを用いて作製される;例えば、HarlowおよびLane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988を参照のこと。このような技術の1つにおいて、抗原ポリペプチドまたはその合成部分を含むイムノゲンが、広範な種々の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジおよびヤギ)のいずれかに最初に注射される。この工程において、本発明のポリペプチドは、改変のないイムノゲンとして寄与し得る。あるいは、特に、比較的短いポリペプチドについて、このペプチドがキャリアタンパク質(例えば、ウシ血清アルブミンまたはキーホールリンペットヘモシアニン)と結合する場合、より高い免疫反応が誘発され得る。イムノゲンは、好ましくは1回以上の追加免疫を組み込んだ所定の計画に従って哺乳動物宿主内に注射され、そしてこの動物は、定期的に採血される。次いで、このポリペプチドに特異的なポリクローナル抗体を、このような血清から、例えば、適切な固体支持体に結合したポリペプチドを使用するアフィニティクロマトグラフィーによって精製する。
【0066】
本発明の文脈において、どの1つの増殖マーカーが細胞内で発現するか否かは、必ずしも答えられなければならない訳ではない。特定の実施形態において、主な疑問は、なんらかの増殖マーカーが発現されるか否かであり得る。このような実験の過程において、増殖マーカーの存在の指標と同じ蛍光シグナルを与える手順が、選択された。この手順は、細胞増殖特徴の検出の感度を改善するために適する。この手順が適用され得る場合、3、4、またはより多くの細胞増殖特徴的マーカー分子について検出可能な1つのシグナルを与える。同様に、特定の環境下で、INK4a遺伝子発現産物について、同じことがあてはまることがある。異なった増殖マーカー分子について、異なった染色シグナルであり得る場合が、所望であり得ることが理解されなければならない。この手順は、関連する実験の必要性のために適用され得る。
【0067】
INK4a遺伝子産物および/または増殖マーカー遺伝子産物は、本発明に従って、同時に検出され得る。この文脈において、本発明に従って、同時とは、文字通り同じ時間または同じ試験手順の間を意味するべきであり、これにより、単一の検出工程が、一時的に継続する。
【0068】
本発明に従う検出手順は、細胞または細胞区画の呈色染色または蛍光染色を与える細胞化学染色手順をさらに包含し得る。このような染色手順は、当業者に公知であり、そして例えば、細胞学的試料における亜細胞領域の好酸性構造または好塩基性構造(例えば、核、ミトコンドリア、ゴルジ、細胞質など)についての、特定の分子(染色体、脂質、糖タンパク質、多糖類など)の染色工程を包含する。例えば、DAPI、キナクリン(Quinacrin)、クロモミシン(Chromomycin)などのような蛍光色素が、使用され得る。さらに、例えば、アザン(Azan)、アクリジン−オレンジ(Acridin−orange)、ヘマトキシリン、エオシン、スダン赤(Sudan−red)、チアジン染色(トルイジン青(Toluidin−blue)、チオニン)のような呈色色素が、適用され得る。他の実施形態において、以下のような染色手順が、本明細書中で開示される方法の過程において使用され得る:パップ染色、ギムザ染色、ヘマトキシリン−エオシン染色、バン−ギーセン(van−Gieson)染色、シッフ染色(シッフ試薬を用いる)、金属(例えば、硝酸銀を使用する染色手順における銀)の沈殿を使用する染色手順または例えば、ターンブル青(または他の不溶の金属シアン化物)の染色のような不溶染色。挙げた色素および染色方法は、適用可能な方法の例であるべきであり、そして当該分野で公知の任意の他の方法が、本明細書中で開示される方法に適用され得ることが、理解されなければならない。
【0069】
染色手順は、光学顕微鏡検査のための呈色染色または蛍光顕微鏡条件下の検査のための蛍光染色を生成し得る。本発明の放射線放出手順の別の実施形態において、サンプル中の細胞学的状態を画像化するために、放射線の透過を減じる物質または他の造影剤を使用する手順(例えば、(微小)オートラジオグラフィー像の作製または(微小)X線写真撮影のような手段による最適な像の作製)が、本発明に従う方法のために有用であり得る。
【0070】
全ての染色および画像化手順が、顕微鏡的手順における分析についてのみでなく、フローサイトメトリー、自動化(コンピューター化またはコンピューター補助の)顕微鏡分析、または染色細胞学的試料の分析のための任意の他の方法のような自動化分析手順における分析のためにも、使用され得る。
【0071】
異なった手順の染色結果または画像化結果の分析は、1つの分析工程または異なったその後の工程群において実行され得る。例えば、試料の光学顕微鏡検査は、試料の蛍光顕微鏡検査の前または後に行われ得る。蛍光顕微鏡観察において、異なった励起波長の異なった染色の分析は、同時にまたは引き続いて分析され得る。他の画像化方法は、名を挙げた手順と同時にまたは引き続いて使用され得る。
【0072】
異なった染色方法の組み合わせが適切である、種々の状況があり得る。例えば、十分な細胞学的染色結果が免疫化学的染色によって達成され得ない場合、一般的細胞学的染色技術のさらなる適用が、適切であり得る。
【0073】
本発明の方法に従うサンプルは、細胞を含む任意のサンプルを含み得る。サンプルは、例えば、分泌物、スメア(smear)、体液、および細胞サンプルまたは組織サンプルを含み得る。
【0074】
本発明の1つの実施形態において、サンプルは、肛門性器道、気道、または皮膚およびその付属器の細胞を含む。特定の実施形態において、細胞は、子宮頸、膣、外陰、陰茎、肛門、直腸、気管支、肺、腹膜、腹膜腔(peritoneal space)、鼻咽頭腔、口腔または皮膚の細胞であり得る。本発明の特定の実施形態において、サンプルは、組織学的サンプル、試料、または細胞学的サンプル(例えば、スメア、スワッブ(swab)、洗浄液、細胞を含む体液(痰、分泌液、唾液など))であり得る。本発明の特定の実施形態において、サンプルは、乳糖腫ウイルスに感染している細胞を含み得る。特定の実施形態におけるサンプルとしては、子宮頸のスメア、気管支肺胞洗浄液(bronchioalveolar lavage)などが挙げられる。
【0075】
本発明の特定の特別な実施形態において、サンプルは、細胞学的試料の単層または薄層の調製物として調製され得る。細胞学における単層または薄層の調製物の調製に関連する方法は、当業者に周知である。1つの実施形態において、調製物は、例えば、ThinPrep技術を含み得る。他の方法としては、従来的なスメアまたは細胞学的試料の調製のために細胞の懸濁液を使用する方法が、挙げられる。
【0076】
サンプルの調製は、例えば、組織のサンプル、体液のサンプル、細胞のサンプルを患者から取得する工程を包含し得る。本発明に従って、サンプルの調製はまた、サンプルのさらなる調製の幾つかの工程(例えば、解剖物(dissection)の調製、細胞懸濁物の調製、検査されるべき細胞の顕微鏡スライドへの塗り広げすなわち塗布、組織アレイの調製、ポリペプチドまたは核酸の単離、ペプチドもしくは核酸を固定した固相の調製または決定されるべき分子が共有結合または非共有結合したビーズ、膜、またはスライドの調製)を包含し得る。
【0077】
本発明の特定の実施形態において、本方法は、自動化様式において行われ得る。方法の自動化は、顕微鏡的手段による固相表面上の組織学的試料または細胞学的試料の自動化染色および自動化分析によって達成され得る。別の実施形態において、自動化は、溶液内の細胞の染色のフローサイトメトリー分析を包含し得る。
【0078】
本発明の方法が適用され得る形成異常病変は、INK4a遺伝子産物(例えば、p16INK4aまたはp14ARF)の過剰発現によって特徴付けられる任意の形成異常病変を含む。特定の実施形態において、これらの病変は、HPVのような乳糖腫ウイルスによる感染に伴う形成異常である。1つの実施形態において、HPVは、HPV16、HPV18、HPV31、HPV33、HPV35、HPV39、HPV45、HPV51、HPV52、HPV56、HPV58、HPV59、HPV66、HPV68などのような、高危険度HPVサブタイプであり得る。1つの実施形態において、本発明に従って検出され得る形成異常病変としては、肛門性器病変、気道の病変、頭部および首の病変、または皮膚およびその付属器の病変が挙げられる。このような病変としては、例えば、肛門または直腸の形成異常、外陰の形成異常、膣の形成異常、子宮頸または陰茎の形成異常、気管支、肺、口腔または鼻咽頭腔の形成異常が、挙げられる。
【0079】
本発明の別の局面は、本発明に従う方法を実践するキットを試験することである。このキットは、例えば、診断キットまたは研究キットであり得る。
【0080】
本発明に従うキットは、INK4a遺伝子産物を検出するために適した、少なくとも1つの薬剤を含む。
【0081】
従って、本発明に従うキットは、以下を含み得る:
1つ以上のINK4a遺伝子産物の検出のための試薬
1つ以上の増殖マーカー遺伝子産物の検出のための試薬
検出反応を行うために一般に使用される試薬および緩衝液(例えば、緩衝液、レポーター反応物(色素など)、キャリア物質他)
ポジティブコントロール反応を行うためのINK4a遺伝子産物サンプル
ポジティブコントロール反応を行うための増殖マーカー遺伝子産物サンプル。
【0082】
マーカー遺伝子産物の検出のための試薬としては、マーカー遺伝子産物に結合可能な任意の薬剤が挙げられ得る。このような試薬としては、タンパク質、ポリペプチド、核酸、ペプチド核酸、糖タンパク質、プロテオグリカン、多糖類または脂質が挙げられ得る。
【0083】
ポジティブコントロールを行うためのINK4a遺伝子産物サンプルおよび増殖マーカー遺伝子産物サンプルとしては、例えば、適用可能形態(例えば、溶液または塩)の核酸、適用可能形態のペプチド、組織切片サンプルまたはポジティブ細胞が挙げられ得る。
【0084】
本発明の好ましい実施形態において、マーカー遺伝子産物の検出は、ポリペプチドのレベルにおいて実施される。この実施形態において、結合剤は、例えば、マーカー遺伝子産物またはそのフラグメントに特異的な抗体であり得る。
【0085】
試験キットの別の実施形態において、マーカー遺伝子産物の検出は、核酸レベルにおいて実施される。本発明のこの実施形態において、検出のための試薬は、例えば、核酸プローブまたは該マーカー核酸に対する逆相補的なプライマーであり得る。
【0086】
本発明は、新生物病変および/または形成異常病変および前新生物病変の識別のための方法を提供し、これらは、p16INK4aの過剰発現の評価によって、やはり検出可能にp16INK4aを発現する他の細胞から、組織学的試験手順および/または細胞学的試験手順の過程で同定され得る。この方法は、2つ以上のINK4a遺伝子産物の発現された遺伝子産物の検出に基づく。
【0087】
従って、解決するべき問題は、形成異常細胞および悪性増殖能を有さない他の細胞との間を識別するための方法の提供である。この方法は、形成異常の任意の段階で適用され得、p16INK4a過剰発現に基づく細胞学的診断方法が、化生細胞の同定のためのさらなる情報を必要とする場合、特に初期段階では有用で有り得る。
【0088】
その上、本発明は、本発明に従う方法を行うキットを提供する。
【0089】
したがって、本発明は、以下の項目を提供する:
(項目1)
生物学的サンプル内で、INK4a遺伝子産物を過剰発現する形成異常細胞を、INK4a遺伝子産物を検出可能なレベルで発現する他の細胞から識別するための方法であって、この方法は、少なくとも1つの単一の細胞内での少なくとも2つのマーカー分子の同時発現を、細胞学的試験手順または組織学的試験手順で決定する工程を包含し、ここで、少なくとも1つのマーカー分子は、INK4a遺伝子によってコードされる発現産物であって、かつ、少なくとも1つのさらなるマーカー分子は、細胞増殖マーカーであって、ここで、少なくとも1つのINK4a遺伝子産物の過剰発現およびこの単一の細胞内での検出可能なレベルでの活性な細胞増殖に対する少なくとも1つのマーカーの発現は、この細胞の形成異常状態の指標であって、ここで、この単一の細胞内における少なくとも1つのINK4a遺伝子産物の過剰発現、および老化、細胞末期分化、アポトーシスまたは細胞周期停止についての少なくとも1つのマーカーの検出可能なレベルでの発現は、細胞の非形成異常状態の指標である、方法。
(項目2)
2つ以上の細胞増殖マーカーのセットが検出される、項目1に記載の方法。
(項目3)
少なくとも1つのINK4a遺伝子産物が、13kDaと19kDaとの間の分子量を有する、項目1または項目2に記載の方法。
(項目4)
少なくとも1つのINK4a遺伝子産物が、p16INK4aおよびp14ARFを含む群から選択される、項目1〜3に記載の方法。
(項目5)
少なくとも1つの細胞増殖マーカーが、細胞増殖の維持に必要な増殖なマーカー、DNA複製に関係する増殖マーカー、進行中の複製フォークのメンバーであるかもしくは進行中の複製フォークのメンバーをコードする増殖マーカー、老化マーカー、細胞周期停止マーカーおよびアポトーシスマーカーを含む群から選択される、項目1〜4のいずれか1項に記載の方法。
(項目6)
上記細胞増殖の維持に必要な遺伝子産物が、Ki67分子、Ki−S5分子およびKi−S2分子を含む群から選択される分子である、項目5に記載の方法。
(項目7)
上記DNA複製に関係する遺伝子産物が、ヘリカーゼもしくはそのサブユニット、細胞分裂サイクル(cdc)分子、ホスファターゼ分子およびキナーゼ分子を含む群から選択される、項目6に記載の方法。
(項目8)
上記ヘリカーゼまたはそのサブユニットが、MCM2、MCM3、MCM4、MCM5、MCM6、MCM7およびHELAD1を含む群から選択される、項目7に記載の方法。
(項目9)
上記cdc分子、キナーゼおよびホスファターゼが、CDC6、CDC7、プロテインキナーゼ、Dbf4、CDC14プロテインホスファターゼ、CDC45およびMCM10を含む群から選択される、項目7に記載の方法。
(項目10)
進行中の複製フォークに関係する上記分子が、PCNAおよびPOLDを含む群から選択される、項目5に記載の方法。
(項目11)
上記遺伝子産物が、ポリペプチドまたは核酸分子である、項目1〜10のいずれか1項に記載の方法。
(項目12)
少なくとも1つのさらなるマーカー分子が診断または予後の評価の改善のためにさらに検出される、項目1〜11のいずれか1項に記載の方法。
(項目13)
上記さらなるマーカー分子が少なくとも1つのさらなる増殖マーカー分子である、項目12に記載の方法。
(項目14)
上記さらなるマーカー分子が、老化マーカー、アポトーシスマーカー、細胞周期停止マーカー、細胞の末期分化に対するマーカー、ウイルス感染に対するマーカー、ウイルス活性に対するマーカー、細胞周期調節タンパク質、細胞増殖の維持に必要な遺伝子産物、DNA複製に関係する遺伝子産物、進行中の複製フォークのメンバーである遺伝子産物を含む群から選択される、項目12または項目13に記載の方法。
(項目15)
DAPI、キナクリン、クロモマイシン、アザン、アクリジン−オレンジ、ヘマトキシリン、エオシン、スダン赤、トルイジン青およびチオニンからなる群から選択される少なくとも1つの色素を使用するさらなる細胞学的な染色手順、または、PAP染色、ギムザ染色、ヘマトキシリン−エオシン染色、ワンギーソン染色、シッフ染色、金属沈殿物による染色、ターンブル青染色および金属シアン化物による染色を含む群から選択される染色方法が適用される、項目1〜14のいずれか1項に記載の方法。
(項目16)
上記形成異常細胞が癌性病変または前癌性病変の細胞である、項目1〜15のいずれか1項に記載の方法。
(項目17)
上記形成異常細胞が乳頭腫ウイルスと関連する形成異常の細胞である、項目16に記載の方法。
(項目18)
上記乳頭腫ウイルスが、HPV16、HPV18、HPV31、HPV33、HPV35、HPV39、HPV45、HPV51、HPV52、HPV56、HPV58、HPV59、HPV66およびHPV68を含む群から選択される危険性の高いヒト乳頭腫ウイルスである、項目17に記載の方法。
(項目19)
上記病変が、肛門性器道の病変、気道の病変ならびに皮膚およびその付属器の病変を含む群から選択される、項目16〜18のいずれか1項に記載の方法。
(項目20)
上記病変が、子宮頚の病変、膣の病変、外陰の病変、陰茎の病変、肛門の病変、直腸の病変、気管支の病変、肺の病変、腹膜腔の病変、鼻咽頭腔の病変、口腔の病変または皮膚の病変を含む群から選択される、項目17または項目19に記載の方法。
(項目21)
上記生物学的サンプルが、肛門性器道、気道または皮膚およびその付属体に由来する細胞を含有するサンプルである、項目1〜20のいずれか1項に記載の方法。
(項目22)
上記細胞が、子宮頚、膣、外陰、陰茎、肛門、直腸、気管支、肺、鼻咽頭腔、口腔または皮膚に由来する細胞である、項目21に記載の方法。
(項目23)
上記生物学的サンプルが、細胞学的調製物または組織学的調製物である、項目1〜22のいずれか1項に記載の方法。
(項目24)
上記INK4a遺伝子産物および/または上記細胞増殖マーカー分子の検出が、検出されるべきそれぞれの分子を少なくとも1つ特異的に識別する少なくとも1つのプローブを使用して実施される、項目1〜23のいずれか1項に記載の方法。
(項目25)
少なくとも1つのプローブが検出可能に標識される、項目24に記載の方法。
(項目26)
少なくとも1つの標識が、放射性同位体、生物発光化合物、化学発光化合物、蛍光化合物、金属キレート剤または酵素からなる群から選択される項目25に記載の方法。
(項目27)
少なくとも1つのプローブがタンパク質および/または核酸である、項目24〜26のいずれか1項に記載の方法。
(項目28)
少なくとも1つのプローブがINK4aをコードする遺伝子産物または細胞増殖マーカー遺伝子産物に対して指向された抗体である、項目27に記載の方法。
(項目29)
免疫細胞化学染色手順を包含する、項目28に記載の方法。
(項目30)
少なくとも1つのプローブがINK4a遺伝子産物または細胞増殖マーカー遺伝子産物に特異的にハイブリダイズする核酸である、項目25または項目26に記載の方法。
(項目31)
インサイチュハイブリダーゼーション反応を包含する、項目30に記載の方法。
(項目32)
核酸増幅反応を包含する、項目30に記載の方法。
(項目33)
上記核酸増幅反応がPCR、NASBAまたはLCRである、項目32に記載の方法。
(項目34)
核酸プローブおよびポリペプチドプローブを使用する検出反応が同時に実施される、項目1〜33のいずれか1項に記載の方法。
(項目35)
項目1〜34のいずれか1項に記載の方法を実施するためのキットであって、生物学的サンプル中の少なくとも1つのINK4a遺伝子産物および少なくとも1つの細胞増殖マーカー遺伝子産物の存在もしくは非存在および/または過剰発現のレベルの検出のための少なくとも1つ以上のプローブを備える、診断キットまたは研究キット。
(項目36)
上記INK4a遺伝子産物が、p16INK4aおよびp14ARFを含む群から選択される、項目35に記載のキット。
(項目37)
上記細胞増殖マーカー遺伝子産物が、CDC6、MCM3、MCM3、MCM4、MCM5、MCM6、MCM7、CDC7プロテインキナーゼ、Dbf4、CDC14プロテインホスファターゼ、CDC45およびMCM10、Ki67、Ki−S2、PCNAまたはPOLDを含む群から選択される、項目35または項目36に記載のキット。
(項目38)
項目35〜37に記載のキットであって、このキットは、以下
a.ポジティブコントロール反応を行なうためのp16INK4aサンプル
b.ポジティブコントロール反応を行なうためのp14ARFサンプル
c.ポジティブコントロール反応を行なうためのKi67サンプル
d.ポジティブコントロール反応を行なうためのKi−S2サンプル
e.ポジティブコントロール反応を行なうためのMCM5サンプル
f.ポジティブコントロール反応を行なうためのMCM2サンプル
g.ポジティブコントロール反応を行なうためのPCNAサンプル
h.p16INK4aの存在もしくは非存在および/またはレベルの検出のための試薬
i.p14ARFの存在もしくは非存在および/またはレベルの検出のための試薬
j.Ki67の存在もしくは非存在および/またはレベルの検出のための試薬
k.Ki−S2の存在もしくは非存在および/またはレベルの検出のための試薬
l.MCM5の存在もしくは非存在および/またはレベルの検出のための試薬
m.MCM2の存在もしくは非存在および/またはレベルの検出のための試薬
n.PCNAの存在もしくは非存在および/またはレベルの検出のための試薬
o.ポジティブコントロール反応を実施するためのINK4a遺伝子産物の1つ以上のサンプル
p.ポジティブコントロール反応を実施するための細胞増殖マーカー遺伝子産物の1つ以上のサンプル
q.他のINK4a遺伝子産物の存在もしくは非存在および/またはレベルの検出のための1つ以上の試薬
r.他の細胞増殖マーカー遺伝子産物の存在もしくは非存在および/またはレベルの検出のための1つ以上の試薬
の内の少なくとも1つをさらに備える、キット。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】子宮頸の組織学的試料の蛍光染色;図1は、p16INK4aに対する抗体を使用する重篤な形成異常の染色を示す;実験の詳細に関しては実施例1を参照のこと;p16INK4aについての免疫反応性は、緑色蛍光を与える。病変のほぼ全ての細胞は、細胞質および核において、拡散的にポジティブに染まる。
【図2】子宮頸の組織学的試料の蛍光染色;図2は、Ki67に対する抗体を使用する重篤な形成異常の染色を示す;実験の詳細に関しては実施例1を参照のこと;Ki67についての免疫反応性は、赤色蛍光を与える。形成異常の多くの細胞は、Ki67についてポジティブな核を示す。
【図3】子宮頸の組織学的試料の蛍光二重染色;図3は、Ki67に対する抗体およびp16INK4aに対する抗体を使用する重篤な形成異常の染色を示す;実験の詳細に関しては実施例1を参照のこと;Ki67についての免疫反応性は、赤色蛍光を与える;p16INK4aについての免疫反応性は、緑色蛍光を与える;赤色蛍光と緑色蛍光の重なりは、黄色蛍光を与える。形成異常の多くの細胞は、Ki67およびp16INK4aについてポジティブである核を示し、黄色蛍光を生じる。
【図4】子宮頸の組織学的試料の蛍光染色;図4は、p16INK4aに対する抗体を使用する扁平上皮化生の染色を示す;実験の詳細に関しては実施例1を参照のこと;p16INK4aについての免疫反応性は、緑色蛍光を与える。化生の幾つかの細胞は、細胞質および核において、拡散的にポジティブに染まる。
【図5】子宮頸の組織学的試料の蛍光染色;図5は、Ki67に対する抗体を使用する扁平上皮化生の染色を示す;実験の詳細に関しては実施例1を参照のこと;Ki67についての免疫反応性は、赤色蛍光を与える。扁平上皮化生の多数の細胞がKi67についてポジティブな核を示す。p16INK4aをポジティブに発現することが同定されている領域は、Ki67についてのいかなるポジティブの染色も示さず、これは、それらの領域における抗原の発現の欠損を示す。
【図6】子宮頸の組織学的試料の蛍光二重染色;図6は、Ki67に対する抗体およびp16INK4aに対する抗体を使用する扁平上皮化生の染色を示す;実験の詳細に関しては実施例1を参照のこと;Ki67についての免疫反応性は、赤色蛍光を与える;p16INK4aについての免疫反応性は、緑色蛍光を与える;赤色蛍光と緑色蛍光の重なりは、黄色蛍光を与える。p16INK4aをポジティブに発現する領域は、Ki67についてのいかなるポジティブの染色も示さず、これは、それらの領域における抗原の発現の欠損を示す。試料において、黄色蛍光を生じる細胞は存在しない。
【図7】子宮頸の組織学的試料の呈色二重染色;図7は、Ki67に対する抗体およびp16INK4aに対する抗体を使用する重篤な形成異常の染色を示す;実験の詳細に関しては実施例6を参照のこと;Ki67についての免疫反応性は、赤色核染色を与える;p16INK4aについての免疫反応性は、細胞全体にわたって茶色の染色を与える;二重染色は、赤色の核を有する茶色の細胞を与える。形成異常の多くの細胞は、核についてKi67ポジティブでありそしてp16INK4aについてポジティブであることを示し、従って、赤色の核を有する茶色の細胞のパターンを生じる。
【図8】子宮頸の細胞学的試料の呈色二重染色;図8は、Ki67に対する抗体およびp16INK4aに対する抗体を使用する重篤な形成異常の染色を示す;実験の詳細に関しては実施例7を参照のこと;Ki67についての免疫反応性は、赤色核染色を与える;p16INK4aについての免疫反応性は、細胞全体にわたって茶色の染色を与える;二重染色は、赤い核を有する茶色の細胞を与える。形成異常の多くの細胞は、核についてKi67ポジティブでありそしてp16INK4aポジティブであることを示し、従って、赤い核を有する茶色の細胞のパターンを生じる。
【発明を実施するための形態】
【0091】
以下の実施例は、例示の目的でのみ提示されており、本明細書中で開示される発明の範囲を限定することを意図しない。例示の目的のために、本明細書中で開示される方法は、組織学的調製物を用いて例証される。組織学的実施例は、どの方法において染色される細胞が、形成異常または化生として分類されるか否かを判定することを助ける。プロトコル適切な様式に改変することによって、この方法を、容易に細胞学的試料に移行し得る。これらの改変は、当業者に公知である。
【0092】
(実施例1:子宮頸のサンプルにおけるp16INK4aおよびKi67の過剰発現の免疫蛍光検出(二重染色))
ホルマリン固定し、パラフィン包埋した子宮頸の組織サンプルの切片を、p16INK4aおよびKi67に特異的な抗体を用いて免疫蛍光染色した。
【0093】
組織切片を、キシレンおよび段階的なエタノ−ル中でのインキュベーションを通して再水和し、Aqua bidestに移した。抗原検索(Antigen Retrieval)を、10mMクエン酸緩衝液(pH 6.0)で、p16INK4aおよびKi67について行った。その結果、スライドを95℃〜98℃の湯浴中で40分間熱した。スライドを、室温まで20分間冷却し、洗浄緩衝液(50mM Tris−HCl、150mM NaCl、0.05% Tween 20/DakoCytomation:コード番号S3006)に移した。
【0094】
二次抗体(種:ヤギ)の非特異結合を避けるために、試料を、10%ヤギ血清と共に30分間室温でインキュベートした。
【0095】
次いで、スライドを、一次抗体であるマウス抗ヒトp16INK4a抗体(3.48μg/ml)およびウサギ抗Ki67(1:25)と共に室温で30分間インキュベートし、次いで、スライドを洗浄緩衝液でリンスし、そして新鮮な緩衝液浴中に5分間置いた。過剰な緩衝液を捨て、そして各試料を、AlexaFluor(登録商標)488が結合したヤギ抗マウス抗体およびAlexaFluor(登録商標)546が結合したヤギ抗ウサギ抗体を含有する二次試薬200μlで覆い、次いで、室温で30分間インキュベートした。次いで、スライドを以前のように2回洗浄し、そして蛍光のための特別なマウンティング培地(special mounting medium)で直接マウントした。
【0096】
スライドの顕微鏡検査は、p16INK4aに対して免疫反応性でありかつKi67についても免疫反応性である細胞が、形成異常病変のサンプルとして顕微鏡的に同定され得るサンプル中にのみ見出され得ることを明らかにする。化生に由来するp16INK4a特異的反応によって染色された細胞は、Ki67に特異的な反応によって染色されない。細胞増殖マーカー染色の顕微鏡検査は、p16INK4aを過剰増殖する化生細胞が、Ki67に対する抗体に対して免疫反応性でないことを示す。対照的に、形成異常組織領域を含むサンプルは、Ki67に免疫反応性であり、かつp16INK4aに対する抗体に免疫反応性である細胞を含む。従って、形成異常とは対照的に、化生(metaplasia)において、Ki67特異的抗体およびp16INK4a特異的抗体を用いて二重染色される細胞は存在しない。
【0097】
図1〜6は、子宮頸の重篤な形成異常および扁平上皮化生についてのKi67に対する抗体およびp16INK4aに対する抗体を用いた染色結果を示す。Ki67についての免疫反応性は、赤色蛍光を与え、p16INK4aについての免疫反応性は、緑色蛍光を与え、そして赤色および緑色の蛍光の重なりは、黄色の蛍光を与える。形成異常試料(図1〜3)において、形成異常の多くの細胞は、Ki67について核がポジティブであること、およびp16INK4aについてポジティブであることを示し、従って、黄色蛍光を生じる(図3参照)。対照的に、化生試料(図4〜6)において、p16INK4aをポジティブに発現する領域は、Ki67に対していかなるポジティブな染色も示さず、これらの領域において抗原の発現を欠くことを示す。二重染色は、この試料において観察され得(図6)、その結果、この試料において黄色蛍光を生じる細胞はない。
【0098】
この結果は、Ki67に特異的な試薬による細胞の二重染色が、形成異常からのp16INK4a過剰発現する化生の識別を可能にすることを示す。
【0099】
(実施例2:インサイチュハイブリダイゼーションによる、子宮頸のサンプル中のp14ARFおよびmcm2を同時発現する細胞の検出)
子宮頸のスメアを、インサイチュ染色反応において、p16INK4aおよびmcm2のmRNAレベルについて半定量的に分析し得る。染色反応は、以下のように行う:
再水和のために、スプレー固定したスメア(spray−fixed smear)を、新鮮な50% EtOHにおいて震盪デバイス上でインキュベートする。固定手順によって産生されたPEGフィルムを、徹底したリンスによって除去する。次いで、スメアをaqua bidest中でリンスする。スメアを、プロテイナーゼK(PBS中10μg/ml)と共に37℃で10分間インキュベートする。次いで、スライドを洗浄緩衝液(PBS/0.1% Tween 20)に移し、そして最後に、細胞を含む領域を脂質ペンシル(lipid−pencil)で囲った。
【0100】
ハイブリダイゼーション混合物を、50μlの調製済み(ready to use)ハイブリダイゼーション緩衝液(DAKO A/S,Glostrup,Danmark)と約5〜10pmolのプローブとを混合することにより調製する。プローブは、それぞれのmRNAに対して相補的な配列のビオチン標識化オリゴヌクレオチドおよびジゴキシゲニン標識化オリゴヌクレオチドである。
【0101】
ハイブリダイゼーション混合物を、95℃まで加熱し、そしてその後、37℃で平衡化する。煮沸手順の後、スメアを各50μlのハイブリダイゼーション混合物とともに42℃で4時間インキュベートする。サンプルを、過剰量の洗浄緩衝液中で(2×SSC中37℃で15分間を2回、1×SSC中37℃で15分間を1回)洗浄する。次いで、スメアを2×SSC中で室温で2回リンスする。この洗浄手順後、解剖物をブロッキング緩衝液(NEN,Blockingbuffer)と共に室温で30分間インキュベートする。次いで、続けて1:100希釈(ブロッキング緩衝液中、上記参照)ストレプトアビジン−アルカリホスファターゼおよびモノクローナルマウスHRP標識化抗ジゴキシゲニン抗体(Molecular Probes)と共に1時間インキュベーションする。次いで、スメアを1×PBS/0.1% Triton X−100において室温で10分間2回洗浄し、続けて1×PBS、50mM MgCl(pH 9.2)で室温で10分間の洗浄工程を1回行う。次いで、ELF 97ホスフェート(Molecular Probes)を用いて室温で10秒間〜7分間の染色反応を行う。過剰な基質を、1×PBS/0.1% TritonX−100で室温で10分間3回洗浄する。第2の染色工程において、切片を、Tyramides−Alexa−Fluor 594と共に10秒間〜7分間インキュベートする。過剰な基質を、1×PBS/0.1% TritonX−100で室温で10分間3回洗浄する。最後に、スメアをHdest.中に浸し、そして蛍光マウンティング培地(DakoCytomation)で包埋する。次いで、染色した解剖物を、蛍光顕微鏡によって分析し得る。
【0102】
スライドの顕微鏡検査は、p16INK4aの発現についてポジティブでありかつmcm2を発現する細胞が、顕微鏡的に形成異常病変のサンプルとして同定され得るサンプルにおいてのみ見出され得ることを明らかにする。p16INK4a特異的反応(化生として同定可能である)によって染色された細胞は、mcm2特異的反応によって染色されない。mRNAハイブリダイゼーションの顕微鏡検査は、p16INK4aを過剰発現する化生細胞が、mcm2のmRNAを有意に発現しないことを示す。対照的に、形成異常細胞は、mcm2に特異的なプローブおよびp16INK4aに対するプローブでのインサイチュハイブリダイゼーションによって染色され得る。従って、形成異常細胞におけるのとは対照的に、化生細胞において、Ki67特異的プローブおよびp16INK4a特異的プローブを用いた観察され得る二重染色は、存在しない。
【0103】
この結果は、mcm2について特異的な試薬を用いた細胞の二重染色は、p16INK4aを過剰発現する化生の形成異常からの識別を可能にする。
【0104】
(実施例3:子宮頸のサンプルにおけるp16INK4aおよびKi−S2の過剰発現の免疫蛍光検出(二重染色))
Merckofix(登録商標)固定した子宮頸の細胞学的サンプル(従来的なスメアおよび液体ベースの細胞学(ThinPreps(登録商標)))を、p16INK4aおよびKi−S2に特異的な抗体を用いて免疫蛍光染色した。
【0105】
従来的なスメアおよび液体ベースの細胞学的サンプル(ThinPreps(登録商標))を、エタノール(50%)中で10分間再水和し、そしてAqua bidest中に移した。抗原検索を、10mMクエン酸緩衝液(pH 6.0)で、p16INK4aおよびKi67について行った。次いで、スライドを95℃〜98℃の湯浴中で40分間加熱した。スライドを、室温まで20分間冷却し、洗浄緩衝液(50mM Tris−HCl、150mM NaCl、0.05% Tween 20/DakoCytomation:コード番号S3006)に移し、そして最後に、サンプルを脂質ペンシル(lipid−pencil)で囲った。
【0106】
二次抗体(種:ヤギ)の非特異結合を避けるために、試料を、10%ヤギ血清と共に30分間室温でインキュベートした。
【0107】
次いで、スライドを、一次抗体であるマウス抗ヒトp16INK4a抗体(クローンE6H4)(3.48μg/ml)およびウサギ抗Ki−S2(1:25)と共に室温で30分間インキュベートし、次いで、スライドを洗浄緩衝液でリンスし、そして新鮮な緩衝液浴中に5分間置いた。過剰な緩衝液を捨て、そして各試料を、AlexaFluor(登録商標)488が結合したヤギ抗マウス抗体およびAlexaFluor(登録商標)546が結合したヤギ抗ウサギ抗体を含有する二次試薬200μlで覆い、次いで、室温で30分間インキュベートした。次いで、スライドを以前のように2回洗浄し、そして蛍光のための特別なマウンティング培地(special mounting medium)で直接マウントした。
【0108】
スライドの顕微鏡検査は、p16INK4aに対して免疫反応性でありかつKi−S2についても免疫反応性である細胞は、形成異常細胞として顕微鏡的に同定され得ることを明らかにする。化生に由来するp16INK4a特異的反応によって染色された細胞は、Ki−S2に特異的な反応によって染色されず、熟練した病理学者によって化生起源であるかまたは子宮内膜起源であるかのどちらかに分類され得る。細胞増殖マーカー染色の顕微鏡検査は、p16INK4aを過剰発現する化生細胞が、Ki−S2に対する抗体に対して免疫反応性でないことを示す。対照的に、形成異常細胞は、Ki−S2に免疫反応性であり、そしてp16INK4aに対する抗体に免疫反応性である。従って、形成異常細胞におけるのとは対照的に、化生において、Ki−S2特異的抗体およびp16INK4a特異的抗体を用いて二重染色され得る細胞は存在しない。
【0109】
この結果は、Ki−S2に特異的な試薬を用いる細胞の二重染色が、p16INK4aを過剰発現する化生細胞を形成異常細胞から識別することを可能にすることを示す。
【0110】
(実施例4:小細胞肺癌と診断された個体の気管支肺胞洗浄液のサンプルにおけるp16INK4a、Ki67およびPCNAの過剰発現の免疫蛍光検出(二重染色))
患者の気管支肺胞洗浄液試料に含まれる細胞を、ThinPrep技術に従って調製した。小細胞肺癌と診断された患者の洗浄液のMerckofix(登録商標)固定した細胞学的サンプルを、p16INK4a、Ki67およびPCNAに特異的な抗体を用いて免疫蛍光染色した。
【0111】
この実験において、2つの増殖マーカーPCNAとKi67とに対する免疫反応性に由来する染色の間を識別しない手順を使用した。本発明の文脈において、細胞において、どれか1つの増殖マーカーが発現されるか否かを必ずしも答えなければいけない訳ではない。主な疑問は、何らかの増殖マーカーが発現されるか否かである。このように、実験の過程において、増殖マーカーの存在の指標である同じ蛍光シグナルを生じる手順を選択した。この手順は、細胞増殖特徴の検出感度を改善するために適している。場合によっては、この手順を、3つ、4つまたはそれより多い細胞増殖を特徴付けるマーカー分子についての1つの検出可能シグナルを与えるように適用し得る。同様に、特定の状況下で、INK4a遺伝子発現産物についても同じことがいえることがある。場合によっては、異なった増殖マーカー分子についての異なった染色シグナルが、所望され得ることが理解されなければならない。この手順は、それぞれの実験の必需品に適用され得る。
【0112】
組織切片を、キシレンおよび段階的なエタノ−ル中でのインキュベーションを通して再水和し、Aqua bidestに移した。従来的なスメアおよび液体ベースの細胞学サンプル(ThinPreps(登録商標))を、エタノール(50%)中で10分間再水和し、そしてAqua bidest中に移した。抗原検索を、10mMクエン酸緩衝液(pH 6.0)で、p16INK4a、Ki67およびPCNAについて行った。次いで、スライドを95℃〜98℃の湯浴中で40分間加熱した。スライドを、室温まで20分間冷却し、洗浄緩衝液(50mM Tris−HCl、150mM NaCl、0.05% Tween 20/DakoCytomation:コード番号S3006)に移し、そして最後に、サンプルを脂質ペンシル(lipid−pencil)で囲った。
【0113】
二次抗体(種:ヤギ)の非特異結合を避けるために、試料を、10%ヤギ血清と共に30分間室温でインキュベートした。
【0114】
次いで、スライドを、一次抗体であるマウス抗ヒトp16INK4a抗体(3.48μg/ml)、ウサギ抗Ki67およびウサギ抗PCNA(各1:25)と共に室温で30分間インキュベートし、次いで、スライドを洗浄緩衝液でリンスし、そして新鮮な緩衝液浴中に5分間置いた。過剰な緩衝液を捨て、そして各試料を、AlexaFluor(登録商標)488が結合したヤギ抗マウス抗体およびAlexaFluor(登録商標)546が結合したヤギ抗ウサギ抗体を含有する二次試薬200μlで覆い、次いで、室温で30分間インキュベートした。次いで、スライドを以前のように2回洗浄し、そして蛍光のための特別なマウンティング培地(special mounting medium)で直接マウントした。
【0115】
スライドの顕微鏡検査は、p16INK4aに対して免疫反応性でありかつKi67またはPCNAについても免疫反応性である細胞は、小細胞肺癌の細胞として顕微鏡的に同定され得ることを明らかにする。化生に由来するp16INK4a特異的反応によって染色された細胞は、Ki67およびPCNAに特異的な反応によっては染色されない。細胞増殖マーカー染色の顕微鏡検査は、p16INK4aを過剰発現する化生細胞が、Ki67およびPCNAに対する抗体に対して免疫反応性でないことを示す。対照的に、形成異常細胞を含むサンプルは、Ki67/PCNAに免疫反応性であり、かつp16INK4aに対する抗体に免疫反応性である細胞を含む。従って、形成異常におけるのとは対照的に、化生において、Ki67およびPCNAならびにp16INK4aに特異的な抗体を用いて三重染色され得る細胞は存在しない。
【0116】
この結果は、Ki67/PCNAに特異的な試薬を用いた細胞の三重染色が、p16INK4a過剰発現非形成異常細胞を形成異常細胞から識別することを可能にすることを示す。
【0117】
(実施例5:子宮頸由来細胞におけるmcm5 mRNA、p14ARFタンパク質およびKi67タンパク質の同時検出による形成異常細胞のフローサイトメトリー検出)
子宮頸の細胞学的サンプル(PBS(pH 7.4)中の細胞懸濁物)を、p14ARF特異的抗体およびKi−67特異的抗体、ならびにmcm−5についてのオリゴプローブを用いて蛍光染色し、3色蛍光FACS分析によって評価した。
【0118】
細胞を遠心分離し、上清をデカントし、そして100mlのPermeafix(Ortho Diagnostic,Raitan,NJ,USA)を用いて、室温で1時間、固定および透過処理した。細胞を、滅菌したPBS(pH 7.4)中で洗浄し、ペレットにし、そして100mlのPermeafix中に室温で1時間再懸濁した。細胞を滅菌したPBS(pH 7.4)中で洗浄し、ペレットにし、そして滅菌したPBS中に再懸濁した。これらを、PE結合体化抗p14ARF抗体およびPE−Cy5−結合体化抗Ki67抗体と共に、+4℃で1時間インキュベートした。細胞を滅菌したPBS(pH 7.4)中で洗浄し、ペレットにし、そして100mlのPermeafix中に室温で30分間再懸濁した。細胞を滅菌したPBS中で洗浄し、遠心分離によってペレットにし、次いで、2×標準クエン酸生理食塩水(SSC)中で再度洗浄した。遠心分離後、細胞ペレットを500ngの5−カルボキシ−フルオレセイン両端標識mcm5特異的オリゴヌクレオチドプローブ含有のハイブリダイゼーション溶液(2×SSC、30%ホルムアミド、超音波処理したサケ精子、酵母運搬DNA)中に再懸濁した。細胞間ハイブリダイゼーションを42℃で1時間実行し、その後、続けて2×SSC、0.5% TritonX−100中および1×SSC、0.5% TritonX−100中で、42℃で洗浄した。細胞を、分析のためにPBS(pH 8.3)中に再懸濁し、そしてフローサイトメーター(FACScan,Becton Dickinson,IS)で分析した。各分析につき、30.000〜100.000のゲート通過事象(gated event)を収集した。データ分析を、CellQuest(Becton Dickinson,IS)を用いて行った。
【0119】
フローサイトメーター分析は、p14ARFに対して免疫反応性でありかつKi−67および/またはmcm5のオリゴプローブについても免疫反応性である細胞が、子宮頸の形成異常病変を有する患者のサンプルにおいてのみ見出され得ることを明らかにする。形成異常病変を有さない女性由来のサンプルは、p14ARFとKi67またはmcm5との同時染色を示さなかった。この結果は、Ki67および/またはmcm5に特異的な試薬を用いた細胞の二重染色または三重染色が、p14ARF過剰発現形成異常細胞からのp14ARF過剰発現非形成異常細胞の識別を可能にすることを示す。
【0120】
(実施例6:子宮頸の組織学的サンプルにおけるp16INK4aおよびKi67の過剰発現の免疫酵素学的検出(連続的二重染色))
ホルマリン固定し、パラフィン包埋した子宮頸の組織サンプルの切片を、p16INK4aおよびKi67に特異的な抗体を用いて免疫酵素学的二重染色した。
【0121】
組織切片を、キシレンおよび段階的なエタノ−ル中でのインキュベーションを通して再水和し、Aqua bidestに移した。抗原検索を、10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)で、p16INK4aおよびKi67について行った。次いで、スライドを95℃〜98℃の湯浴中で40分間加熱した。スライドを、室温まで20分間冷却し、洗浄緩衝液(DakoCytomation)に移した。
【0122】
内因性ペルオキシダーゼ活性を、3% H(DakoCytomation)で室温で5分間ブロックした。
【0123】
室温で5分間スライドを洗浄した後、これらを、一次抗体であるマウス抗ヒトp16INK4a抗体(MTM)と共に室温で30分間インキュベートし、次いで、洗浄緩衝液でリンスし、そして新鮮な緩衝液浴中に5分間置いた。過剰な緩衝液を捨て、そして各試料を200μlの二次試薬(EnVisionヤギ抗マウス−ペルオキシダーゼ/DakoCytomation)で覆い、室温で30分間インキュベートした。次いで、スライドを以前のように3回洗浄した。DAB(DakoCytomation)を使用し、スライドを基質色素原(chromogen)複合体と共に室温で10分間インキュベートすることにより、呈色可視化した。反応を脱イオン化水中で停止させ、スライドを洗浄緩衝液中に置いた。
【0124】
洗浄後、スライドを二次抗体(ウサギ抗ヒトKi67抗体(Dianova,clone Ab−3))と共に室温で30分間インキュベートし、次いで、洗浄緩衝液でリンスし、新鮮な緩衝液浴中に5分間置いた。過剰な緩衝液を捨て、そして各試料を200μlの二次試薬(ヤギ抗ウサギ−アルカリホスファターゼ標識/DakoCytomation)で覆い、室温で30分間インキュベートした。次いで、スライドを以前のように3回洗浄した。FastRed(BioGenex)を使用し、スライドを基質色素原複合体と共に室温で30分間インキュベートすることにより、呈色可視化した。反応を脱イオン化水中で停止させた。
【0125】
ヘマトキシリン(DakoCytomation)による室温で2分間の対比染色後、スライドを水道水の流水中で室温で10分間インキュベートし、次いで、水性マウンティング培地(Aquatex/MERCK)でマウントした。
【0126】
スライドの顕微鏡検査は、p16INK4aに対して免疫反応性でありかつKi67についても免疫反応性である細胞は、形成異常病変のサンプルとして顕微鏡的に同定され得るサンプル中にのみ見出され得ることを明らかにする。化生に由来するp16INK4a特異的反応によって染色された細胞は、Ki67に特異的な反応によって染色されない。細胞増殖マーカー染色の顕微鏡検査は、p16INK4aを過剰発現する化生細胞が、Ki67に対する抗体に対して免疫反応性でないことを示す。対照的に、形成異常組織領域を含むサンプルは、Ki67に免疫反応性であり、そしてp16INK4aに対する抗体に免疫反応性である細胞を含む。従って、形成異常におけるのとは対照的に、化生において、Ki67特異的抗体およびp16INK4a特異的抗体を用いて二重染色され得る細胞はない。
【0127】
図7において示される結果は、Ki67およびp16INK4aに特異的な試薬を用いた細胞の二重染色が、呈色染色手順においてもまた、特異的二重染色パターンを可能にすることを示す。
【0128】
(実施例7:子宮頸の細胞学的サンプルにおけるp16INK4aおよびKi67の過剰発現の免疫酵素学的検出(連続的二重染色))
Merckofix(登録商標)固定した子宮頸の細胞学的サンプル(従来的なスメアおよび液体ベースの細胞学的サンプル(ThinPreps(登録商標)))を、p16INK4aおよびKi67に特異的な抗体を用いて免疫酵素学的二重染色した。
【0129】
従来的なスメアおよび液体ベースの細胞学的サンプルを、エタノール(50%)中で室温で10分間再水和し、そしてAqua bidest中に移した。抗原検索を、10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)で、p16INK4aおよびKi67について行った。次いで、スライドを95℃〜98℃の湯浴中で40分間加熱した。スライドを、室温まで20分間冷却し、洗浄緩衝液に移した。
【0130】
内因性ペルオキシダーゼ活性を、3% Hで室温で5分間ブロックした。
【0131】
スライドを洗浄した後、これらを、一次抗体であるマウス抗ヒトp16INK4a抗体と共に室温で30分間インキュベートし、次いで、洗浄緩衝液でリンスし、そして新鮮な緩衝液浴中に5分間置いた。過剰な緩衝液を捨て、そして各試料を200μlの二次試薬(EnVisionヤギ抗マウス−ペルオキシダーゼ)で覆い、室温で30分間インキュベートした。次いで、スライドを以前のように3回洗浄した。DAB(DakoCytomation)を使用し、スライドを基質色素原複合体と共に室温で10分間インキュベートすることにより、呈色可視化した。反応を脱イオン化水中で停止させ、スライドを洗浄緩衝液中に置いた。
【0132】
洗浄後、スライドを二次抗体(ウサギ抗ヒトKi67抗体(Dianova,cloneAb−3))と共に室温で30分間インキュベートし、次いで、洗浄緩衝液でリンスし、新鮮な緩衝液浴中に5分間置いた。過剰な緩衝液を捨て、そして各試料を200μlの二次試薬(ヤギ抗ウサギ−アルカリホスファターゼ標識/DakoCytomation)で覆い、室温で30分間インキュベートした。次いで、スライドを以前のように3回洗浄した。FastRed(BioGenex)を使用し、スライドを基質色素原複合体と共に室温で30分間インキュベートすることにより、呈色可視化した。反応を脱イオン化水中で停止させた。
【0133】
ヘマトキシリン(DakoCytomation)による室温での2分間の対比染色後、スライドを水道水の流水中で室温で10分間インキュベートし、次いで、水性マウンティング培地(Aquatex/MERCK)でマウントした。
【0134】
スライドの顕微鏡検査は、p16INK4aに対して免疫反応性でありかつKi67についても免疫反応性である細胞は、それらの形態学に基づいて形成異常細胞と同定されることを明らかにする。化生に由来するp16INK4a特異的反応によって染色された細胞は、Ki67に特異的な反応によって染色されない。細胞増殖マーカー染色の顕微鏡検査は、p16INK4aを過剰増殖する化生細胞が、Ki67に対する抗体に対して免疫反応性でないことを示す。対照的に、形成異常細胞は、Ki67に免疫反応性であり、そしてp16INK4aに対する抗体に免疫反応性である。従って、化生細胞とは対照的に、形成異常細胞における1細胞の二重染色は、Ki67特異的抗体およびp16INK4a特異的抗体を用いて産生され得る。
【0135】
図8において示される結果は、Ki67およびp16INK4aに特異的な試薬を用いた細胞の二重染色が、呈色染色手順においてもまた、特異的二重染色パターンを可能にすることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−142294(P2009−142294A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71043(P2009−71043)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【分割の表示】特願2005−501536(P2005−501536)の分割
【原出願日】平成15年10月21日(2003.10.21)
【出願人】(504341793)エムティーエム ラボラトリーズ アクチェンゲゼルシャフト (9)
【Fターム(参考)】