説明

形状更新可能な3次元表面作成装置

【課題】3D表面が一旦形成された後も、繰り返し形状を望み通りの他の形状に変えることができ、しかも、一つの3D表面が表示されている間に他の3D表面の作成準備ができる3次元表面作成装置を提供する。
【解決手段】可撓性と弾性を有するシート(12)と、シートの下側にマトリックス状に配置された、シートに所望の形状を形作るためのメモリロッド(14)と、メモリロッドの下方にマトリックス状に配置され、入力される制御信号に基づいて、前記メモリロッドに接近する方向及び離間する方向に移動可能なコントロールロッド(19)と、コンピュータからのデータを用いて前記コントロールロッドの各ロッドの位置を制御する手段(13;15,16;17,18)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状更新可能な3次元表面作成装置、すなわち、コンピュータからのデータを用いて3次元表面を作成するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元表面(以下、3D表面という。)は、いくつかの方法で形成することが可能である。例えば、コンピュータ制御のフライス盤を用いて、数値入力データで記述された表面を作成することができる。表面のフライス削りは、金属,プラスチック又は木材などの各種の材料に対して行うことができる。あるいは、架橋結合ポリマーに対してレーザーを用いる立体リソグラフィ装置が開発されている。ポリマーに対するレーザービームの相対的位置関係は、要求される表面を記述する入力データを用いるコンピュータシステムにより制御される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来技術は、いずれも高額な装置を必要とするという問題がある。また、従来技術による場合は、一旦、表面が形成されると、固定化されてしまい、その上に別形状の表面の形成又は同形状の表面の再生が不可能である。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、数値データに基づいて3D表面を形成する装置において、従来技術と異なり、3D表面が一旦形成された後も、繰り返し形状を望み通りの他の形状に変えることができ、しかも、一つの3D表面が表示されている間に、他の3D表面の作成準備ができる3次元表面作成装置を提供しようとするものである。
本発明は、3D地形マップ又は海底マップの作成、表面射出成形用金型の製造、その他各種3次元イメージ作成などの多くの応用例に適用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、可撓性と弾性を有するシートと、前記シートの下側にマトリックス状に配置された、前記シートに所望の形状を形作るためのメモリロッドと、前記メモリロッドの下方にマトリックス状に配置され、入力される制御信号に基づいて、前記メモリロッドに接近する方向及び離間する方向に移動可能なコントロールロッドと、コンピュータからのデータを用いて前記コントロールロッドの各ロッドの位置を制御する手段とを含むことを特徴している。
上記構成により、可撓性を有するシートの形状は、コントロールロッドのマトリックスの位置により決定される。各ロッドの位置はコンピュータ制御によるシステムにより決定される。各ロッドには二つのロック機構が備えられている。すなわち、一つはX座標用ロック機構、もう一つはY座標用ロック機構である。特定の一つのロッドに対する二つのロック機構がロックを解除するときは、そのロッドはエレベータにより決定される新しい位置に移動することができる。全ロッドが一度位置決めをされると、その場に固定され、形成されるべき表面の形状を表す。そのロッド群の位置は、第2セットのロッドに転写することができ、第2セットのロッドには、第1セットのロッドの位置を記憶することができるロック機構を備えている。一つの応用例として、本発明の3D表面形成装置による表面は、レプリカの射出成形用金型として、また、他の例として、イメージ投影システムにおけるスクリーンとして利用可能である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、入力されるデータに基づいて下側のコントロールロッドに3D表面が形成され、そのコントロールロッドが上昇されて、メモリロッドに転写され、そのメモリロッドがロックされるので、シートにより3D表面が表示されている間に、コントロールロッドを下げて、これに次に表示させる3D表面を形成することができ、そのコントロールロッドを上昇させてロックを解除されたメモリロッドに転写することができるから、短時間に異なる3D表面を形成することができる。
【0007】
請求項6の発明によれば、コントロールロッドの所定の位置がコンピュータにより制御されるので、各種の任意の形状の3D表面の成形が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る形状更新可能なシステムの基本的構成要素を示し、図2はコントロールロッドの位置を制御するための流体駆動式のロック機構を示し、図3はメモリロッドが用いられていない場合の形状更新可能なシステムの断面を示し、図4は3D表面を形成する際の一連の作用を示し、図5はメモリロッドが用いられる場合の形状更新可能なシステムの断面を示し、図6はメモリロッドを用いて3D表面を形成する際の一連の作用を示し、図7は3D表面の制御システムの概略構成を示す。
【0009】
図1に示すように、本発明に係る3D表面形成装置は、筐体11の中の上側に配置された一揃いのメモリロッド14と、その下側に配置された一揃いのコントロールロッド19との2組のロッド群を有し、メモリロッド14の上にシート12が載置され、筐体の端部に固定されている。筐体内が減圧されると、シートはメモリロッドの上端部に引き下げられて、所定の3D表面を形成するようになっている。メモリロッド14は、直交する流体チューブ17と18により所定の位置にロック可能である。コントロールロッド19は、直交する流体チューブ15と16により所定の位置にロック可能である。筐体11の中に取り付けられたエレベータ13は、コンピュータ制御による流体駆動システム又は電気的駆動システムにより昇降可能である。エレベータ13は、流体圧による締め付けチューブ15と16を昇降させる。コントロールロッド19を選択的に締め付け、エレベータを移動することにより、パターンが書き込まれる。このパターンは、エレベータを上昇させ、かつ、メモリロッドのロックを解除することにより、コントロールロッドからメモリロッドに転写される。メモリロッドは再びロックされる。その後、エレベータを下げると、コントロールロッド19に別のパターンを書き込むことができる。その第2のパターンはメモリロッドに転写され、シート12のパターンが更新される。
【0010】
図2はコントロールロッドをロックするための好ましいロック機構を示す。コントロールロッド26は固定ガイド24の孔27の中に保持されている。固定ガイド24の中にはラテックスゴム又は類似の材料で作られた流体チューブ25が収容されている。その流体チューブ25とコントロールロッド26の間に自由移動が可能な押圧板28が設けられている。流体チューブが膨脹されると、押圧板28をコントロールロッド26に向けて押圧させ、これにより、コントロールロッドをその場にロックする。メモリロッドも同様のロック機構によりロックされたりロックを解除されたりする。
【0011】
図3は、コントロールロッド19にパターンを形成する機構の一実施態様を示す。ラテックス・ゴムシート31がハウジング32の端部に固着されていて、そのハウジングはポート33を介して吸気されることができる。コントロールロッド34はプレート35の孔と固定板36の孔の中を通されて一定の位置に保持されている。固定板には、直交する2セットの流体チューブが備えられている。1セットは断面で示され、他のセットは固定板36の下側部分に直交するように配置されている。
【0012】
固定板36は、昇降機構38により上げ下げが可能である。その昇降機構は、流体駆動方式でも電的駆動方式でも構わない。
【0013】
図4は、二つのパターンを連続的に書き込む場合の一連の動きを示す。コントロールロッドのロック及びロック解除の一連の制御を行い、エレベータの動きを制御することによりシート31に所望の形状を形成することができる。
【0014】
ある3D表面を形成するには、まず全ての流体チューブから空気が抜かれ、全てのコントロールロッドのロックが解除されるとともに、エレベータが図4(a)に示すように最下位のスタート位置に移動される。その後、筐体から適量のエアを吸引して圧力が減圧される。次に、流体チューブが膨張されて、ロッドがその位置にロックされる。次いで、エレベータが高い位置に移動されて、ロックされたロッドがエレベータとともに上昇し、シートが高い位置に押される。図4(b)はこの時の状態を示す。このとき、選択された流体チューブが収縮され、それにより、選択されたロッドのロックが解除され、そのロックを解除されたロックは、重力とシートから加わる力との結合により筐体の床まで落下することができる。続いて、全てのコントロールロッドが再びロックされる。この状態は、図4(c)に示されている。
【0015】
その後、エレベータが図4(d)に示す位置までさらに上昇される。次に、選択されたコントロールロッドが解放され、筐体の床に落下可能になる。この状態は、図4(c)に示されている。この選択されたロッドのロック、上昇、及び解放のための処理は、所望のパターンが得られるまで、繰り返される。
【0016】
全てのチューブ内の圧力を廃棄し、ロッドを解放することにより、新しい形状を書き込むことができる。続いて、エレベータがスタート位置まで下方に移動され、新しいプログラムの実行が可能になる。
【0017】
図5は、第2の実施の態様を示す。この場合は、第2のパターンが書き込み中に一つのパターンを検討することができる。シート59は真空ボックス55に固着されている。コントロールロッド57はロック機構53に保持されている。ロック機構は持ち上げ機構54により上げ下げ可能である。1セットのメモリロッド56がコントロールロッド57の上側に整列して設けてある。メモリロッドは直交するロック機構50と51により所定の位置に保持される。
【0018】
下側のコントロールロッドに一旦パターンが書き込まれると、持ち上げ機構により上昇させ、かつ、メモリロッドを一時的に解放することにより、そのパターンを上側のメモリロッドに転写することができる。メモリロッドはコントロールロッドの上に落下して、同じ形状を再現する。その後、メモリロッドはその場にロックされ、コントロールロッドは下方に移動されて、他の書き込みのサイクルに供される。
【0019】
図6は、二つの形状を引き続き書き込むために用いられる場合の一連の動きを示す。同図(a)は全てのロッドがロックを解除されているときの下側のコントロールロッド及び上側のメモリロッドの位置を示す。コントロールロッドの選択的ロック及びロック解除と、エレベータの上昇により、図4に順次示すように、コントロールロッドにパターンが書き込まれる。この段階で、ロッド群は図6(b) に示す位置にある。その後、コントロールロッドは、全体で上昇され、メモリロッドと接触する。メモリロッドはロックを解除されて、弾性シートを押し上げ 、所望の形状を形成することができる。その後、メモリロ ッドはもう一度ロックされる。この状態は、図6(c)に示されている。次に、コントロールロッドがロックを解除され、図6(d)に示すように、最下位まで下げられる。続いて、図6(e)に示すように、コントロールロッドに新しいパターンが書き込まれる。その後、上側のメモリロッドのロックが解除されて最下位の位置に復帰することかできる。続いて、エレベータが上昇されて、図6(g)に示すように、その新規パターンがメモリロッドに転写される。その後、コントロールロッドは解放され、図6(h)に示すように、最下位に下げられる。この時点で、コントロールロッドに他のパターンの書き込みが可能であり、サイクルが繰り返される。
【0020】
図7は、上記3D表面形成装置により3D表面を形成するために用いられる制御系統の構成を示すブロック図である。表面形状を規定する3Dマップデータ、等高線地図が書き込まれる場合の高さデータがパソコン72にロードされる。このデータは正視画像を含み、成形された表面の上にプロジェクタ71により投影可能なものであり、モニタ73でも見ることができる。その3Dマップデータはプログラマブル・コントローラ74に与えられる。プログラマブル・コントローラ74はエアコンプレッサ77,バキュームポンプ76、そして、エレベータコントローラ75に適当な信号を与える。その信号は電磁弁78にも送られ、コンプレッサからマニホールド79を介して流体ラインへの圧縮空気の通路を制御するようになっている。これらのラインは、コントロールロッドとメモリロッドの位置指定をするために用いられる、直交する2セットのロックの一部を構成するゴムチューブに結合されている。
【0021】
流体駆動方式のロックは、ここでは、ロッドの締め付け機能を実現するものとして既述されたが、機械的ロック、磁気的ロックなど他の多くの代替物があることを理解されたい。図示の例では、コントロールロッド及びメモリロッドが垂直状態に配設されたが、他の配置例が可能である。また、等高線表面を形成するゴムシートは、ロッドを保持するので、この3D表面は、水平に設置したり、例えば、壁掛けにすることもできる。
【0022】
本発明の他の特長として、応用の仕方によっては、ロッド群の一部分のみを更新することにより、再書き込み時間を節約したり、又は、あるイメージのモーフィングなどの特別の効果を達成したりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る形状更新可能なシステムの基本的構成要素を示す一部破断斜視図。
【図2】コントロールロッドの位置を制御するための流体駆動式のロック機構を示す一部破断斜視図。
【図3】メモリロッドが用いられていない場合の形状更新可能なシステムの断面図。
【図4】3D表面を形成する際の一連の作用を示す説明図。
【図5】メモリロッドが用いられる場合の形状更新可能なシステムの断面図。
【図6】モリロッドを用いて3D表面を形成する際の一連の作用を示す説明図。
【図7】3D表面の制御システムの概略構成を示す図。
【符号の説明】
【0024】
11 筐体
12 シート
13 エレベータ
14 メモリロッド
19 コントロールロッド
15、16 流体チューブ
17,18 流体チューブ
24 固定ガイド
25 流体チューブ
26 ロッド
27 溝
28 自由移動可能な押圧板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性と弾性を有するシートと、
前記シートの下側にマトリックス状に配置された、前記シートに所望の形状を形作るためのメモリロッドと、
前記メモリロッドの下方にマトリックス状に配置され、入力される制御信号に基づいて、前記メモリロッドに接近する方向及び離間する方向に移動可能なコントロールロッドと、
コンピュータからのデータを用いて前記コントロールロッドの各ロッドの位置を制御する手段と、
を含む形状更新可能な3次元表面作成装置。
【請求項2】
シートはメモリロッド群に支持され、その先端に接触されていることを特徴とする請求項1に記載の形状更新可能な3次元表面作成装置。
【請求項3】
メモリロッド群の各ロッドは、シートに対して垂直方向に移動可能であり、対応するコントロールロッドにより所定の位置に押された後にその場にロックされることを特徴とする請求項1に記載の形状更新可能な3次元表面作成装置。
【請求項4】
コントロールロッド群の各ロッドは、スタート位置からメモリロッド群の対応する各ロッドに対して垂直方向に移動可能であり、所定の位置まで移動されたときにロックされることを特徴とする請求項1に記載の形状更新可能な3次元表面作成装置。
【請求項5】
コントロールロッドは、各メモリロッドから下方に移動されてスタート位置に復帰されることを特徴とする請求項4に記載の形状更新可能な3次元表面作成装置。
【請求項6】
コントロールロッドの所定の位置は、コンピュータにより制御されることを特徴とする請求項3に記載の形状更新可能な3次元表面作成装置。
【請求項7】
コントロールロッドの各ロッドには、二つの流体駆動式のロック機構が備えられ、それらのロック手段は同期的位置指定により特定のコントロールロッドを解放して自由に移動させることを特徴とする請求項3に記載の形状更新可能な3次元表面作成装置。
【請求項8】
流体駆動式ロック機構は、コントロールロッド及びメモリロッド用のX座標用の第1ロック機構とY座標用の第2ロック機構とを含むことを特徴とする請求項7に記載の形状更新可能な3次元表面作成装置。
【請求項9】
シートがメモリロッド群の先端に対して吸引されることを特徴とする請求項2に記載の形状更新可能な3次元表面作成装置。
【請求項10】
メモリロッドとコントロールロッドを収容する筐体をさらに有し、その筐体は、シートを前記メモリロッドの先端に吸い付けるための吸引力を生成するためにエアが抜かれることを特徴とする請求項9に記載の形状更新可能な3次元表面作成装置。
【請求項11】
コントロールロッドのロック及びロック解除が可能なロック機構はエレベータに接続され、コントロールロッドを上げ下げ可能であることを特徴とする請求項10に記載の形状更新可能な3次元表面作成装置。
【請求項12】
エレベータは、入力描画データがコントロールロッドからメモリロッドに転写された後に全コントロールロッドのロックが解除された状態で、最下位に復帰されることを特徴とする請求項11に記載の形状更新可能な3次元表面作成装置。
【請求項13】
同時に位置指定を受けたコントロールロッドはエレベータが上昇するときはロックされ、エレベータが下降されるときはロックを解除される請求項11に記載の形状更新可能な3次元表面作成装置。
【請求項14】
膨張されたときにメモリロッド及びコントロールロッドをその場にロックするブレーキとなる膨張可能なチューブをさらに備えている請求項3に記載の形状更新可能な3次元表面作成装置。
【請求項15】
膨張可能なチューブは、同時位置指定のために二次元に整列されている請求項14に記載の形状更新可能な3次元表面作成装置。
【請求項16】
膨張可能なチューブは、二つの直交する方向に整列されている請求項15に記載の形状更新可能な3次元表面作成装置。
【請求項17】
コントロールロッドとメモリロッドを案内する孔及び膨張可能な流体チューブとコントロールロッド用及びメモリロッド用の自由移動が可能な押圧板を保持する水平な溝を有する第1のフレームを備えていることを特徴とする請求項1に記載の形状更新可能な3次元表面作成装置。
【請求項18】
メモリロッドの各ロッドには、二つの流体駆動式のロック機構が備えられ、それらのロック手段は同期的位置指定により特定のメモリロッドを解放して自由に移動させることを特徴とする請求項1に記載の形状更新可能な3次元表面作成装置。
【請求項19】
シートはバーチャルなものである請求項1に記載の形状更新可能な3次元表面作成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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