形状最適化方法及び形状最適化装置
【課題】産業機械の形状を最適化するにあたり、探索の精度が悪化することを抑制しつつ、短時間で最適解の探索を完了する。
【解決手段】最適化対象部の形状のうち、予め設定された要求性能以上の性能を有する形状を含む複数の形状を主成分分析することによって主成分を抽出する主成分抽出工程と、 主成分に基づいて最適化対象部の新規形状を生成する新規形状生成工程と、新規形状生成工程にて生成された新規形状の最適化対象部の性能を評価する評価工程とを有する。
【解決手段】最適化対象部の形状のうち、予め設定された要求性能以上の性能を有する形状を含む複数の形状を主成分分析することによって主成分を抽出する主成分抽出工程と、 主成分に基づいて最適化対象部の新規形状を生成する新規形状生成工程と、新規形状生成工程にて生成された新規形状の最適化対象部の性能を評価する評価工程とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状最適化方法及び形状最適化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
産業機械においては、流体に晒される翼や流体を用いる圧縮機等の流体に関係する様々な部品や装置が用いられている。
これらの部品や装置の形状(すなわち産業機械の形状)は、産業機械の性能を大きく左右する。このため、より高性能な産業機械を設計するために、産業機械の形状を最適化する試みが広く行われている。
【0003】
流体の支配方程式は非線形性が強いため、線形的な法則に倣って形状を最適化することが難しい。このため、従来から流体に関係する部品や装置の形状最適化は、予め指定される条件を満足する仮想的な探索空間の中で発見的な手法を用いて行われている。
【0004】
発見的な手法としては、例えば、非特許文献1に記載される遺伝的アルゴリズムを用いた手法、非特許文献2に記載される応答曲面法を用いた手法、非特許文献3に記載される逐次二次計画法を用いた局所最適化手法が行われている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Deb, K.: Multi-objective optimization using evolutionary algorithm, John Wiley & Sons, New York, 2001.
【非特許文献2】Myers, R. H. and Montgomery, D. C.: Responce Surface Methodology: process and product optimization using designed experiments, second edition, A Willey-Interscience publication, New York, 2002.
【非特許文献3】勝井辰博,冨田高嗣: CAD/CFD 統合型高効率最適化システムの構築とその検証 −2次元翼型の最適化による最適化システムの検証−, 日本船舶海洋工学会論文集, 4, 175-183 (2006).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一般的に最低限の条件で規定される探索空間は非常に広い。探索空間が広い場合には、発見的な最適化手法を用いて探索空間の全領域を探索して最適解を見つけることは非常に時間がかかり、また探索の精度も悪化する。
【0007】
なお、探索空間を絞る方法としては、予め基準となる形状を複数設定し、この複数の形状を組み合わせて探索を行うことが考えられる。
しかしながら、産業機械あるいはこの部品等は、様々な表現形式によって表されている。例えば、翼は、非特許文献3に示すベジェ曲線を用いた表現手法や、スプライン曲線を用いた表現手法で表されている。
このような異なる表現手法で表された形状同士を組み合わせることはできない。このため、解析可能な形状が限定されてしまい、探索の精度が悪化してしまう。
【0008】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、産業機械の形状を最適化するにあたり、探索の精度が悪化することを抑制しつつ、短時間で最適解の探索を完了することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0010】
第1の発明は、産業機械の一部あるいは全部である最適化対象部の形状を最適化する形状最適化方法であって、予め設定された要求性能以上の性能を有する形状を含む複数の形状を主成分分析することによって主成分を抽出する主成分抽出工程と、上記主成分に基づいて上記最適化対象部の新規形状を生成する新規形状生成工程とを有するという構成を採用する。
【0011】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記主成分抽出工程にて、上記主成分分析で用いられる上記複数の形状が、全てが予め設定された要求性能以上の性能を有する形状であるという構成を採用する。
【0012】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記主成分分析で用いられる上記複数の形状を同一の座標系におけるベクトルに変換するベクトル変換工程を有し、上記主成分抽出工程にて、変換後の上記ベクトルに基づいて上記主成分分析を行うという構成を採用する。
【0013】
第4の発明は、上記第1〜第3いずれかの発明において、上記主成分分析が、上記主成分を基底ベクトルとして抽出する固有直交分解であるという構成を採用する。
【0014】
第5の発明は、上記第4の発明において、予め定められた数だけ低次側から上記基底ベクトルを選択する基底ベクトル選択工程を有し、上記新規形状生成工程にて、上記基底ベクトル選択工程にて選択された上記基底ベクトルに基づいて上記最適化対象部の新規形状を生成するという構成を採用する。
【0015】
第6の発明は、上記第1〜第5いずれかの発明において、上記新規形状生成工程にて生成された上記新規形状の最適化対象部の性能を評価する評価工程を有するという構成を採用する。
【0016】
第7の発明は、産業機械の一部あるいは全部である最適化対象部の形状を最適化する形状最適化装置であって、最適化対象部の形状のうち、予め設定された要求性能以上の性能を有する形状を含む複数の形状を主成分分析することによって主成分を抽出する主成分抽出手段と、上記主成分に基づいて上記最適化対象部の新規形状を生成する新規形状生成手段と、上記新規形状生成工程にて生成された上記新規形状の最適化対象部の性能を評価する評価手段とを備えるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、予め設定された要求性能以上の性能を有する形状を含む複数形状から主成分を抽出する。
このように抽出された主成分には、高性能を引き出す特徴が多く含まれていると考えられる。つまり、この主成分に基づいて作成する新規形状には、より高性能なものが含まれる可能性が高い。
そして、本発明によれば、より高性能なものが含まれる可能性が高い新規形状を中心として評価を繰り返すことにより、最適解を探索することとなる。したがって、本発明によれば、産業機械の形状を最適化するにあたり、探索の精度が悪化することを抑制しつつ、短時間で最適解の探索を完了することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態における形状最適化方法及び形状最適化装置にて用いられるPODの概略を説明する説明図である。
【図2】本発明の一実施形態における形状最適化方法及び形状最適化装置にて用いられるPODにより得られる設計空間を示す概念図である。
【図3】本発明の一実施形態における形状最適化方法の概略を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態における形状最適化装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第1実施形態における形状最適化方法及び形状最適化装置を用いた翼形状最適化を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明の第1実施形態における形状最適化方法及び形状最適化装置で用いる翼形状を示す模式図である。
【図7】本発明の第1実施形態における形状最適化方法及び形状最適化装置で得られる固有ベクトルと基底ベクトルとによる形状を示すグラフである。
【図8】本発明の第1実施形態における形状最適化方法及び形状最適化装置で得られる基底ベクトルのノルムを示すグラフである。
【図9】本発明の第1実施形態における形状最適化方法及び形状最適化装置で得られる揚力係数CLが大きく抗力係数CDとの関係を示すグラフである。
【図10】本発明の第1実施形態における形状最適化方法及び形状最適化装置によって選択された最適解に基づく形状と、他の従来手法にて最適化された最適解に基づく形状とを示すグラフである。
【図11】本発明の第2実施形態における形状最適化方法及び形状最適化装置で用いる流路モデルを示す模式図である。
【図12】本発明の第2実施形態における形状最適化方法及び形状最適化装置で得られる基底ベクトルのノルムを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係る産業機械の形状最適化方法及び産業機械の形状最適化装置の一実施形態について説明する。
まず具体的な実施形態の説明の前に本発明の原理について説明する。
【0020】
一般的な産業機械の歴史は古く、現在にたどり着くまでの改良によって、性能が高いとされる形状(以下、高性能形状)が複数発見されている。そして、このような高性能形状には、高い性能を引き出す要因となる特徴的な形状(以下、特徴形状)を含んでいると考えられる。
このような特徴形状を複数の高性能形状から抽出して組み合わせ、別の形状を生成した場合、この形状には多くの特徴形状が含まれることとなり、より高性能な形状となる可能性が高い。
つまり、探索空間において、高性能形状から抽出した特徴形状を含む領域に最適解が存在する可能性が高いと考えられる。
したがって、探索空間における探索領域を特徴形状が含まれる領域に限定することによって、探索領域が大幅に限定され、短時間で最適解を導き出すことができると考えられる。
【0021】
そして、本発明においては、高性能形状から特徴形状を抽出する手法として、主成分分析を用いる。
この主成分分析は、複数の高性能形状をベクトルとして表現して同一の座標空間に配置し、この座標空間に配置された複数の高性能形状を示す座標の配置傾向から特徴形状を抽出する手法である。
このような主成分分析の手法は、固有直交分解(POD:Proper Orthogonal Decomposition)、カルーネン・レーベ展開(Karhunen-Loeve decomposition)、特異値分解(Singular value decomposition)、スペクトル分解、独立成分分析(Independent component analysis)、因子分析として用いられている。
【0022】
ここで、固有直交分解(以下、PODと称する)を用いて最適解の探索手法(以下、本探索方法と称する)について説明する。
まずPODについて説明する。なお、以下の説明において、ベクトルは下式(1)などの太字で表し、転置ベクトルを下式(2)で表すものとする。また、ベクトルのノルムは全て下式(3)で示すユークリッドノルムとする。また、扱う値は全て実数である。
【0023】
【数1】
【0024】
【数2】
【0025】
【数3】
【0026】
PODは、主成分分析の一手法であり、相関があることが期待される複数のベクトルを、基底ベクトル(主成分)に分解する方法である。なお、基底ベクトルは、特徴形状を示す。
【0027】
図1は、上述したPODの概要を纏めた説明図である。
例えば、予めn個の形状の幾何学情報が下式(4)の形で与えられているものとする。このとき下式(5)のj番目の値を下式(6)で表すと約束すると、式(6)は、各形状に共通するx座標xjに対するy座標値である。相関を求めるために、与えられた式(5)を平均成分とそれ以外の成分に下式(7)と下式(8)に示すように分解する。
【0028】
【数4】
【0029】
【数5】
【0030】
【数6】
【0031】
【数7】
【0032】
【数8】
【0033】
PODでは、下式(9)に示すように、下式(10)を下式(11)の線形和に分解する。
【0034】
【数9】
【0035】
【数10】
【0036】
【数11】
【0037】
ただし、式(11)は直交基底である。また、下式(12)とすると、下式(13)を満たす。
【0038】
【数12】
【0039】
【数13】
【0040】
そして、PODの目的は、式(9)及び式(13)を満たし、添え字jが小さい順に下式(14)が最大となるような式(11)と下式(15)を求めることである。
【0041】
【数14】
【0042】
【数15】
【0043】
ここで、行列Vを下式(16)と定義すると、式(15)及び式(11)は、式(17)の固有値分解を用いて求めることができる。式(9)を用いると、式(17)は、下式(18)のように記述できる。
【0044】
【数16】
【0045】
【数17】
【0046】
【数18】
【0047】
ここで両辺に左から式(19)、右から式(20)をかけると、下式(21)を得る。
【0048】
【数19】
【0049】
【数20】
【0050】
【数21】
【0051】
したがって、下式(22)を固定したとき、下式(23)を最大化する下式(24)は式(22)と直交する。さらにこのとき式(23)を最大化する式(22)は、式(17)の最大固有値に対向する正規固有ベクトルである。同様にして、式(24)は全て式(17)の最大固有値に対応する正規固有ベクトルである。同様にして式(24)は全て式(17)のj番目に大きい固有値に対応する正規固有ベクトルであることが従う。最後に式(24)が直交しているから、下式(25)が従う。
【0052】
【数22】
【0053】
【数23】
【0054】
【数24】
【0055】
【数25】
【0056】
以上のように行列の固有値分解を利用してPODを行うことができる。なお、数値実験においては、行列のサイズが比較的小さいこともあり、固有値分解の方法として実装が簡単なべき乗法を用いた。
【0057】
そして、このようなPODによって得られた直交分解から新しい形状を生成することができる。
ここで、基底ベクトルである式(11)は、n個得られるが、jが大きくなるにつれてそのノルムは小さくなる。特に最初に与えた形状の個数が多く、さらに相関が大きければ高次の基底ベクトルのノルムは無視できるほど小さくなることが期待される。
このため、例えば基底ベクトルとして、そのノルムが閾値以上であるノルムのみを形状最適化のために用いることが考えられる。
具体的には、R=0.01に対して、下式(26)などとして、下式(27)であるような基底ベクトルを用いて新たな形状を生成する。
このとき、新たな形状を表す下式(28)は、下式(29)で表される。
【0058】
【数26】
【0059】
【数27】
【0060】
【数28】
【0061】
【数29】
【0062】
ただし、下式(30)は任意に設定するパラメータであり、与え方の自由度は大きい。今回は、下式(31)の範囲で適当な格子点を選択した。ただし、制約条件が課されている場合にはその制約条件を満たす範囲で式(32)を選択する。
【0063】
【数30】
【0064】
【数31】
【0065】
【数32】
【0066】
式(29)により超平面が与えられる。これに拘束条件を考慮に入れることで超平面上の部分空間が設計空間(探索空間)となる。この設計空間は、予め与えられた高性能形状等の形状を示す形状ベクトルで張られる空間の部分空間でもある。
この設計空間と予め与えられた形状との関係は、図2のようになる。ここでは簡略化するために2次元平面上に描いているが、実際には次元はもっと大きい。
【0067】
式(26)におけるRを適切に選ぶことでPODにより得られる設計空間は図2のように最初に与える幾何情報の点集合の十分近くを通る平面にできる。仮に元の幾何情報の間の相関が小さい場合であってもR=0とすることで式(29)の超平面が元の幾何情報ベクトル(形状ベクトル)をすべて含むようにできる。
ここでRを変化させるとNが変化し、PODにより得られる設計空間の次元が変化することになる。
【0068】
上述のように、超平面上の目的関数値の集合(高性能形状が有する特徴的な形状を含む形状の集合)は比較的良い値を含んでいる可能性が高い。したがって、超平面上の目的関数値の集合を探索するのみで最適解が得られると考えられる。
つまり、PODを用いない場合には、図2の「feasible region」のような広い設計空間全体を探索しなければならないのに対して、PODを用いた場合には図2の「POD-design-space」を探索すれば十分であると考えられる。
すなわち、PODにより高性能な解の集合を抽出しようとしていると考えればよい。
特に目的関数が連続でかつ、Rを正として打ち切った基底ベクトルの影響が無視できるならば、超平面上の目的関数値は、少なくとも元形状に相当する目的関数値の最大値と最小値に挟まれた区間を含む。このとき、この超平面上を探索すれば元形状と同じかそれより高性能な解が求まる。
また、設計空間が狭められたことで応答曲面を生成する場合に曲面の精度が向上して、最適解の精度が向上し探索時間が短縮することが期待できる。
【0069】
上述のような主成分分析を用いて最適解を探索する場合には、図3に示すように、最初に事前にいくつかの性能の良い形状を取得する(ステップS11)。これは経験や知見に従って得るか、あるいはランダムサンプリングにより得ることができる。
次に、それらの形状についてPODを実行する(ステップS12)。続いて、PODにより得られた基底ベクトルのうち、高次の基底ベクトルを削除する(ステップS13)。そして、低次の基底ベクトルだけを用いてパラメトリックに新しい形状を生成する(ステップS14)。そしてパラメータを変数としてRSM等を用いて最適解を探索する(ステップS15)。
【0070】
(第1実施形態)
次に、本発明の第1実施形態として、2次元翼の形状最適化に本発明を適用した例について説明する。つまり、本実施形態は、産業機械の一部である翼を最適化対象部とするものである。
なお、翼形状設計において重要な因子は揚力係数CLと抗力係数CDである。そこで、本実施形態においては、表1に示すような多目的最適化問題を考え、下式(33)が最大となる形状を最適解とする。
【0071】
【表1】
【0072】
【数33】
【0073】
また、一般に翼厚比が大きいほど揚力係数CLが大きく抗力係数CDが小さくなる傾向がある。PODを用いた場合、式(29)において式(32)を大きくすると翼厚比が大きくなり、それだけで揚力係数CLが大きくなることがありえる。すなわち、新規に高性能な形状を生成できたとしても、それがPODの効果であるのか翼厚比を大きくしたことによる効果であるのか判断が困難である。そこで、本実施形態においては、すべての翼について翼厚比が一定の値になるよう縮尺を変える。
【0074】
図4は、本実施形態において形状最適化方法を行う形状最適化装置10のハードウェア構成を概略的に示すブロック図である。
この図に示すように、本実施形態の形状最適化装置10は、パーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータによって構成されるものであり、CPU1、記憶装置2、リムーバブルメディアドライブ3、入力装置4、出力装置5、及び通信装置6を備えている。
【0075】
CPU1は、記憶装置2、リムーバブルメディアドライブ3、入力装置4、出力装置5、及び通信装置6と電気的に接続されており、これらの各種装置から入力される信号を処理すると共に、処理結果を出力するものである。
そして、CPU1は、後述の形状最適化プログラムPに基づいて、形状最適化装置10を、高性能形状を含む複数の翼形状を主成分分析することによって主成分を抽出する主成分抽出手段として機能させる。
また、CPU1は、形状最適化プログラムPに基づいて、形状最適化装置10を、主成分に基づいて翼の新規形状を生成する新規形状生成手段として機能させる。
また、CPU1は、形状最適化プログラムPに基づいて、形状最適化装置10を、新規形状生成工程にて生成された新規形状の最適化対象部の性能を評価する評価手段として機能させる。
【0076】
記憶装置2は、メモリ等の内部記憶装置及びハードディスクドライブ等の外部記憶装置によって構成されており、CPU1から入力される情報を記憶すると共にCPU1から入力される指令に基づいて記憶した情報を出力するものである。
そして、本実施形態において記憶装置2は、プログラム記憶部2aとデータ記憶部2bとを備えている。
【0077】
プログラム記憶部2aは、形状最適化プログラムPを記憶している。この形状最適化プログラムPは、所定のOSにおいて実行されるアプリケーションプログラムであり、コンピュータから構成される本実施形態の形状最適化装置10に形状最適化方法を実行させるものである。
【0078】
データ記憶部2bは、翼形状を示す形状データD1を記憶する。なお、データ記憶部2bには、高性能形状を示す形状データを含む複数の形状データが記憶される。
また、データ記憶部2bは、目的関数データD2、制約条件データD3、計算結果データD4等も記憶する。さらに、データ記憶部2bは、CPU1の処理過程において生成される中間データを一時的に記憶する。
【0079】
リムーバブルメディアドライブ3は、DVD(Digital Versatile Disc)やUSB(Universal Serial Bus)メモリ等のリムーバブルメディアXを取り込み可能あるいは接続可能に構成されており、CPU1から入力される指令に基づいて、リムーバブルメディアメディアXに記憶されるデータを出力するものである。そして、本実施形態においては、リムーバブルメディアメディアXに形状最適化プログラムPが記憶されており、リムーバブルメディアドライブ3は、CPU1から入力される指令に基づいて、リムーバブルメディアメディアXに記憶される数値解析プログラムPを出力する。
なお、形状最適化プログラムPは、必ずしもリムーバルディスクXに格納されている必要はない。例えば、ネットワークNを介して形状最適化プログラムPを取得し、この取得した形状最適化プログラムPを記憶装置2に記憶させるようにしても良い。
【0080】
入力装置4は、本実施形態の形状最適化装置10と作業者とのマンマシンインターフェイスであり、ポインティングデバイスであるキーボード4aやマウス4bを備えている。
出力装置5は、CPU1から入力される信号を可視化して出力するものであり、ディスプレイ5a及びプリンタ5bを備えている。
【0081】
通信装置6は、本実施形態の形状最適化装置10とネットワークNとを電気的に接続し、ネットワークNに接続された他の機器との間においてデータの受け渡しを行うものである。
なお、ネットワークNとしては、社内LAN(Local Area Network)やインターネット等が考えられる。
【0082】
次に、このように構成された本実施形態の形状最適化装置10を用いた形状最適化方法について、図5のフローチャートを参照しながら説明する。
なお、以下の説明においては、プログラム記憶部2aに既に形状最適化プログラムPが格納されているものとする。
【0083】
本実施形態の形状最適化方法では、図5に示すように、まず目的関数の設定及び制約条件の設定が行われる(ステップS21)。
具体的には、作業者が入力装置4を操作し、表1に示す目的関数及び制約条件を入力し、この入力データが目的関数データD2と制約条件データD3としてデータ記憶部2bに記憶されることで目的関数の設定及び制約条件の設定が完了する。
【0084】
続いて、基礎形状の設定が行われる(ステップS22)。
ここでは、まず作業者が、性能が高いとされる既知の形状(高性能形状)を複数選択する。なお、ここでは、高性能形状がどのような表現手法で表現されていても構わない。つまり、複数の高性能形状のうち、いくつかがベジェ曲線で表現され、いくつかがスプライン曲線で表現され、いくつかがフリーハンドで表現されていても良い。
そして、作業者が入力装置4を操作し、選択した高性能形状を入力し、この入力データが形状データD1としてデータ記憶部2bに記憶されることで基礎形状の設定が完了する。
【0085】
なお、本実施形態においては、「Abbot, I. H. and von Doenhoff, A. E.: Theory of wing sections including a summary of airfoil data, Dover publications, INC., New York, 1959.」を参考に、揚力係数CLが比較的大きく抗力係数CDが比較的小さい翼形状として、「NACA2415」、「NACA4415」、「NACA23012」、「NACA631−412」、「NACA641−412」、「NACA651−212」を基礎形状として選択する(図6参照)。ただし、翼厚比は、これらの翼の平均翼厚比である「0.129730」とした。
これらの翼形状は、従来から高性能であると認められている形状であり、予め設定された要求性能以上の性能を有する形状である。つまり、本実施形態においては、後に行うPODで用いられる複数の形状の全てが予め設定された要求性能以上の性能を有する形状とされている。
【0086】
続いて、異なる表現手法で表現された基礎形状を同一の座標系で表現するための幾何学ベクトル変換が行われる(ステップS23)。
ここでは、異なる表現手法で表現された基礎形状が同一の座標系における座標値で表現される幾何学ベクトル(ベクトル)に変換される。この幾何学ベクトルへの変換によって、全ての基礎形状が共通の表現手法によって表されることとなる。
具体的には、各基礎形状をxy直交座標系に投影し、x軸を100分割し、翼正圧側と負圧側のそれぞれに対してx座標に対応するy座標を並べたベクトルを生成し、これらのベクトルをつなげて幾何学ベクトルを生成する。
なお、この幾何学ベクトル変換は、CPU1がプログラム記憶部2aに記憶された形状最適化プログラムP及びデータ記憶部2bに記憶された形状データD1等に基づいて生成する。
そして、この幾何学ベクトル変換(ステップS23)は、本発明におけるベクトル変換工程に相当する。
【0087】
続いて、上記幾何学ベクトルを用いてPODが行われる(ステップS24)。
PODの詳細については、上述したため、ここでの説明は省略する。なお、このPODは、CPU1が、幾何学ベクトルやプログラム記憶部2aに記憶された形状最適化プログラムP等に基づいて実行する。
そして、本実施形態においては、予め設定された要求性能以上の性能を有する形状を含む複数の形状を主成分分析することによって基底ベクトルを主成分として抽出する。
つまり、本実施形態においてPODを行う工程(ステップS24)は、本発明の主成分抽出工程に相当する。
【0088】
このように、本実施形態においては、PODで用いられる複数の形状を同一の座標系におけるベクトルである幾何学ベクトルに変換し、変換後の幾何学ベクトルに基づいてPODが行われる。
そして、本実施形態においては、PODを実行することによって、図7に示すような固有ベクトルと基底ベクトルを得た。
【0089】
続いて、PODの実行によって得られた基底ベクトルの選択が行われる(ステップS25)。この基底ベクトルの選択数が少ないほど、新規形状の数を少なくして後の工程での計算量を削減することができる。一方で、パラメータ基底ベクトルは、次数の低いものほど、特徴の傾向を強く示している。したがって、基底ベクトルを選択する際には、低次のものから順に必要最低限の数を選択することが好ましい。
具体的には、選択する基底ベクトルの数は、例えば、基底ベクトルのノルムが予め定められた閾値に基づいて設定したり、CPU1の処理能力(処理時間等)に基づいて設定したりすることが考えられる。
なお、本実施形態においては、図8に示すように、4次までの基底ベクトルのノルムが卓越している。このため、4次までの基底ベクトルを選択することが考えられるが、後の計算量を考慮して本実施形態においては3次までの基底ベクトルを選択する。
また、基底ベクトルの選択は、作業者が入力装置4を操作することで行う。また、予め記憶される閾値等に基づいてCPU1が自動で行うことも可能である。
そして、この基底ベクトルの選択(ステップS25)は、本発明における基底ベクトル選択工程に相当する。
【0090】
続いて、選択した基底ベクトルを用いて新規形状が生成される(ステップS26)。
具体的には、下式(34)で示される係数ベクトルに対して、式(29)に従って新規形状を生成する。
なお、本実施形態においては、式(32)で示すパラメータを、下式(35)、下式(36)、下式(37)で示すように選択し、新規形状を108個生成した。
また、新規形状の生成は、CPU1が、選択された基底ベクトルやプログラム記憶部2aに記憶された形状最適化プログラムP等に基づいて実行する。
そして、この新規形状が生成される工程(ステップS26)は、本発明における新規形状生成工程に相当する。
【0091】
【数34】
【0092】
【数35】
【0093】
【数36】
【0094】
【数37】
【0095】
最後に、新規形状に対して、揚力係数CLが大きく抗力係数CDが算出されて評価が行われる(ステップS27)。
なお、新規形状の評価は、CPU1が、新規形状やプログラム記憶部2aに記憶された形状最適化プログラムP等に基づいて実行する。
そして、この評価を行う工程(ステップS27)は、本発明の評価工程に相当する。
【0096】
具体的には、本実施形態においては、揚力係数CLと抗力係数CDの計算には、パネル法を実装したソルバを用いた。また、計算条件はレイノルズ数を下式(38)とし、迎角5°とした。
【0097】
【数38】
【0098】
そして、新規形状を元に応答曲面を生成し、最適解を探索し、最終的に式(33)が最大となる翼を最適解とする。
なお、本実施形態においては、応答曲面の生成に、「ModeFRONTIER ver.4.2.1」(「多目的ロバスト設計最適化支援ツール modeFRONTIER,http://www.cdaj.co.jp/product/020000modefrontier/index.html.」参照)を用いた。
【0099】
図9は、元形状と新規形状の揚力係数CLと抗力係数CDの計算結果を示すグラフである。この図に示すように、揚力係数CLと抗力係数CDの分布は、元形状の値の周囲に広範囲に分布しており、元形状よりも高性能な形状が多く存在していることが分かる。
つまり、本実施形態の形状最適化方法及び形状最適化装置10によれば、設計空間をうまく限定することができたことが分かる。
【0100】
図10は、本実施形態によって選択された最適解に基づく形状と、他の従来手法にて最適化された最適解に基づく形状とを示すグラフであり、(a)が本実施形態によって選択された最適解に基づく形状を示し、(b)が他の手法にて最適化された最適解に基づく形状とを示す。
なお、ここでの他の従来手法とは、非特許文献3に示される手法であり、ベジェ曲線を用いて翼を表現し、「NACA0012 」翼を元にして逐次二次計画法による形状最適化を行う手法である。
なお、本実施形態との比較を行うために、翼厚比を本実施形態の条件に合わせて変え、パネル法を用いて再計算した。そのため、引用元の論文とは形状と揚力係数CL、抗力係数CD、揚坑比が異なっている。なお、レイノルズ数と迎角の計算条件は引用元においても本実施形態の条件と同じである。
【0101】
以下の表2は、本実施形態によって選択された最適解に基づく形状と、他の手法にて最適化された最適解に基づく形状とにおける、揚力係数CL、抗力係数CD、揚坑比の比較である。
【0102】
【表2】
【0103】
図10及び表2に示すように、本実施形態によって選択された最適解に基づく形状と、他の手法にて最適化された最適解に基づく形状とにおいて、幾何形状は大きく異なっている。
そして、揚力係数CLはどちらもほぼ同じであるのに対して、抗力係数CDはPODを用いた本実施形態の方が小さい。このため、PODを用いた本実施形態の方が、揚抗比が大きい。したがって、本実施形態の形状最適化方法及び形状最適化装置10の方が、他の従来手法よりも、高性能な解を得ることができていると言える。
【0104】
また、本実施形態の最適解と基底ベクトルの関係について述べる。
本実施形態において最適解を生成する係数パラメータは、下式(39)であった。
【0105】
【数39】
【0106】
そして、元形状として採用した基礎形状の翼はすべてキャンバーが比較的小さいが、選択解はキャンバーが大きいという特徴がある。また翼正圧側後縁が凹な形状をしている。
ここで、1次の基底ベクトルを見るとキャンバーが大きい。また、2次の基底ベクトルは正圧側後縁で凸になっている。PODを用いることでキャンバーを持つ成分と正圧側後縁が凸な成分を独立に抜き出し、これにパラメータを乗じることでキャンバーが大きく後縁側で凹な形状をした選択解を生成することができたことがわかる。また、平板翼よりもキャンバーが大きく後縁側が凹な翼の方が、揚力係数CLが大きくなることが知られておいる。このため、本実施形態の最適解のような翼を選択することは妥当である捉えることができる。
このように、本実施形態の形状最適化方法及び形状最適化装置10によれば、作業者は基底ベクトルを確認することで選択解の妥当性を確認することができる。
【0107】
以上のように、本実施形態の形状最適化方法及び形状最適化装置10によれば、予め設定された要求性能以上の性能を有する形状を含む複数形状から主成分を抽出し、主成分に基づいて最適化対象部(翼)の新規形状を生成する。
つまり、本実施形態は、コンピュータを用いて産業機械の一部あるいは全部である最適化対象部の形状を最適化する形状最適化方法であって、コンピュータがCPUと形状最適化プログラム及び形状データを記憶する記憶装置とを備え、CPUが、形状最適化プログラム及び形状データに基づいて、予め設定された要求性能以上の性能を有する形状を含む複数の形状を主成分分析することによって主成分を抽出する主成分抽出工程と、前記主成分に基づいて前記最適化対象部の新規形状を生成する新規形状生成工程とを行うものである。
このような本実施形態の形状最適化方法及び形状最適化装置10によれば、より高性能なものが含まれる可能性が高い新規形状を中心として評価を繰り返すことにより、最適解を探索することとなる。
したがって、本実施形態の形状最適化方法及び形状最適化装置10によれば、産業機械の形状を最適化するにあたり、探索の精度が悪化することを抑制しつつ、短時間で最適解の探索を完了することが可能となる。
【0108】
また、本記実施形態においては、POD(ステップS24)において基底ベクトルの抽出に用いられる形状が、全て高性能形状(予め設定された要求性能以上の性能を有する形状)であるため、生成される新規形状に、より高性能の形状が含まれる可能性が高くなる。
【0109】
また、本実施形態においては、複数の翼形状を同一の座標系におけるベクトルに変換してからPODを行っている。
このため、異なる表現手法で表現された翼形状同士から基底ベクトルを抽出することが可能となっている。
【0110】
また、本実施形態においては、PODによって主成分分析を行っている。このため、主成分を基底ベクトルとして抽出することができる。
そして、抽出された基底ベクトルのうち、予め定められた数だけ低次側から選択し、性能への影響度合いが低い高次側を捨てることによって、最適解を探索するための計算量を削減することができる。
【0111】
(第2実施形態)
上記実施形態においては、形状が座標値で与えられている例について説明した。一方で、実際の設計においては、部材の肉厚などの決められた部分の寸法を最適化したい場合も多い。
そこで、本発明の第2実施形態として、吸吐弁における寸法を最適化することによって吸吐弁(本実施形態においてはレシプロ圧縮機吸吐弁)の形状の最適化を図る吸吐弁の形状最適化に本発明を適用した例について説明する。つまり、本実施形態は、産業機械の全部である吸吐弁を最適化対象部とするものである。
なお、本実施形態において用いる形状最適化装置のハードウェア構成は、上記第1実施形態と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0112】
図11は、本実施形態において形状の最適化を図る吸吐弁の流路モデルである。なお、図11においては、吸吐弁が開放されている状態の流路モデルである。そして、本実施形態においては、図11に示す10個の寸法を設計変数とした。なお、各設計変数には、加工限界等に基づく制約条件を課している。
図11に示す吸吐弁では、流路が合流する部分(図11において最も拡大されている部分)でバックステップ流れがあり、全圧損失が高い。そこで、本実施形態においては、流路形状に対して最適化を行い、上記全圧損失を小さくすることを目標とする。
【0113】
本実施形態においては、設計変数の値を入力ベクトル(ベクトル)としてPODを実行する。具体的には、タグチメソッドを用いて得られた圧力損失が比較的小さい形状(高性能形状)を5つを用いてPODを実行し、基底ベクトルを得る。
この結果、基底ベクトルのノルムは、図12に示すように、3次までの基底ベクトルが卓越している。
そこで、本実施形態においては、3次までの基底ベクトルを用いて式(29)に従って新たにパラメトリックに48個の設計変数を生成する。
なお、式(32)に示すパラメータは、上記第1実施形態で説明したように設定する。具体的には、パラメータを下式(40)及び下式(41)に示すように選択する。
【0114】
【数40】
【0115】
【数41】
【0116】
続いて、48個の設計変数のうち、制約条件を満たさないものを取り除き、残ったものを元に新規形状を生成する。そして、「Fluent」を用いて新規形状における全圧損失の値を求め、得られた全圧損失の値と式(32)の情報を元に応答曲面を生成し、応答曲面のみを用いて最適解を探索する。
なお、本実施形態において探索された最適解は応答曲面の生成点であったため、再計算は行う必要がなかった。応答曲面を生成する際は、上記実施形態と同様に、「ModeFRONTIER ver.4.2.1」を用いた。
【0117】
表3は、本実施形態による最適解と、他の従来手法による最適解とにおける全圧損失係数との結果を示す表である。なお、表3において、ζが全圧損失係数を示す。また、他の従来手法としては、遺伝的アルゴリズム(GA)を用いた手法を用いた。また、遺伝的アルゴリズムを実行したときの条件は表4に示す。
【0118】
【表3】
【0119】
【表4】
【0120】
従来手法を用いた場合は、全圧損失係数が27.3である。一方で、本実施形態を用いた場合は全圧損失係数が25.6となっている。つまり、PODを用いることでより高性能な解が探索できたことが確認できる。
このように限られた設計変数を元に形状が決まる場合に関してもPODを用いた本実施形態の最適化方法を用いて高性能な解を求めることができる。
【0121】
上述の第1実施形態及び第2実施形態では、まず、流体性能の良い構造物の幾何情報の集合を元にしてPODによりそれらを基底ベクトルに分解する。次に低次の基底ベクトルからパラメトリックに新規形状を表現し、応答曲面法などの非線形最適化手法を用いて最適解を探索する。
この手法を用いることで、上述のように、性能の良い形状に共通する特徴を持った形状が得られる。またパラメータを減らせるため、最適化を行う際の探索領域が狭くなり、発見的手法を用いた場合に、より良い解が求められることができる。
さらに低次の主成分(すなわち低次の基底ベクトル)を分析することで、高性能な形状の特徴を知ることができる。このためブラックボックス化しがちな最適設計の過程が作業者にわかりやすく、ノウハウの蓄積にも繋がる。
また逆に、これまでに得られている高性能な形状を用いて新たな形状を生成することで知識の有効利用が可能である。
【0122】
PODを用いることの最大の利点は探索領域が小さくなることである。例えば、上記第1実施形態の翼形状の最適化では設計変数を3個のパラメータに減少させた場合でも、従来以上の高性能な形状が得られることが確認できた。この利点は特に設計変数の多い大規模な問題において効果が大きい。
【0123】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0124】
例えば、上記実施形態においては、本発明を翼あるいは吸吐弁の形状最適化に適用した構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、流体に関連する産業機械の全体あるいは一部の形状であれば、どのようなものであっても最適化を図ることができる。
例えば、インピンジ冷却に用いるインピンジ孔の形状を本発明によって最適化することも可能である。
【0125】
また、上記実施形態においては、主成分分析がPODである構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、主成分分析として、カルーネン・レーベ展開、特異値分解、スペクトル分解、独立成分分析あるいは因子分析を用いることも可能である。
【0126】
また、上記実施形態においては、POD(ステップS24)において基底ベクトルの抽出に用いられる形状が、全て高性能形状である構成を採用した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、複数の形状のうち、いくつかの形状を高性能形状と異なる形状としても良い。これによって、思わぬ高性能な新規形状が生成される可能性もある。
【符号の説明】
【0127】
10……形状最適化装置、1……CPU(主成分抽出手段、新規形状生成手段、評価手段)、2……記憶装置、3……リムーバブルメディアドライブ、4……入力装置、5……出力装置、6……通信装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状最適化方法及び形状最適化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
産業機械においては、流体に晒される翼や流体を用いる圧縮機等の流体に関係する様々な部品や装置が用いられている。
これらの部品や装置の形状(すなわち産業機械の形状)は、産業機械の性能を大きく左右する。このため、より高性能な産業機械を設計するために、産業機械の形状を最適化する試みが広く行われている。
【0003】
流体の支配方程式は非線形性が強いため、線形的な法則に倣って形状を最適化することが難しい。このため、従来から流体に関係する部品や装置の形状最適化は、予め指定される条件を満足する仮想的な探索空間の中で発見的な手法を用いて行われている。
【0004】
発見的な手法としては、例えば、非特許文献1に記載される遺伝的アルゴリズムを用いた手法、非特許文献2に記載される応答曲面法を用いた手法、非特許文献3に記載される逐次二次計画法を用いた局所最適化手法が行われている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Deb, K.: Multi-objective optimization using evolutionary algorithm, John Wiley & Sons, New York, 2001.
【非特許文献2】Myers, R. H. and Montgomery, D. C.: Responce Surface Methodology: process and product optimization using designed experiments, second edition, A Willey-Interscience publication, New York, 2002.
【非特許文献3】勝井辰博,冨田高嗣: CAD/CFD 統合型高効率最適化システムの構築とその検証 −2次元翼型の最適化による最適化システムの検証−, 日本船舶海洋工学会論文集, 4, 175-183 (2006).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一般的に最低限の条件で規定される探索空間は非常に広い。探索空間が広い場合には、発見的な最適化手法を用いて探索空間の全領域を探索して最適解を見つけることは非常に時間がかかり、また探索の精度も悪化する。
【0007】
なお、探索空間を絞る方法としては、予め基準となる形状を複数設定し、この複数の形状を組み合わせて探索を行うことが考えられる。
しかしながら、産業機械あるいはこの部品等は、様々な表現形式によって表されている。例えば、翼は、非特許文献3に示すベジェ曲線を用いた表現手法や、スプライン曲線を用いた表現手法で表されている。
このような異なる表現手法で表された形状同士を組み合わせることはできない。このため、解析可能な形状が限定されてしまい、探索の精度が悪化してしまう。
【0008】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、産業機械の形状を最適化するにあたり、探索の精度が悪化することを抑制しつつ、短時間で最適解の探索を完了することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0010】
第1の発明は、産業機械の一部あるいは全部である最適化対象部の形状を最適化する形状最適化方法であって、予め設定された要求性能以上の性能を有する形状を含む複数の形状を主成分分析することによって主成分を抽出する主成分抽出工程と、上記主成分に基づいて上記最適化対象部の新規形状を生成する新規形状生成工程とを有するという構成を採用する。
【0011】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記主成分抽出工程にて、上記主成分分析で用いられる上記複数の形状が、全てが予め設定された要求性能以上の性能を有する形状であるという構成を採用する。
【0012】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記主成分分析で用いられる上記複数の形状を同一の座標系におけるベクトルに変換するベクトル変換工程を有し、上記主成分抽出工程にて、変換後の上記ベクトルに基づいて上記主成分分析を行うという構成を採用する。
【0013】
第4の発明は、上記第1〜第3いずれかの発明において、上記主成分分析が、上記主成分を基底ベクトルとして抽出する固有直交分解であるという構成を採用する。
【0014】
第5の発明は、上記第4の発明において、予め定められた数だけ低次側から上記基底ベクトルを選択する基底ベクトル選択工程を有し、上記新規形状生成工程にて、上記基底ベクトル選択工程にて選択された上記基底ベクトルに基づいて上記最適化対象部の新規形状を生成するという構成を採用する。
【0015】
第6の発明は、上記第1〜第5いずれかの発明において、上記新規形状生成工程にて生成された上記新規形状の最適化対象部の性能を評価する評価工程を有するという構成を採用する。
【0016】
第7の発明は、産業機械の一部あるいは全部である最適化対象部の形状を最適化する形状最適化装置であって、最適化対象部の形状のうち、予め設定された要求性能以上の性能を有する形状を含む複数の形状を主成分分析することによって主成分を抽出する主成分抽出手段と、上記主成分に基づいて上記最適化対象部の新規形状を生成する新規形状生成手段と、上記新規形状生成工程にて生成された上記新規形状の最適化対象部の性能を評価する評価手段とを備えるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、予め設定された要求性能以上の性能を有する形状を含む複数形状から主成分を抽出する。
このように抽出された主成分には、高性能を引き出す特徴が多く含まれていると考えられる。つまり、この主成分に基づいて作成する新規形状には、より高性能なものが含まれる可能性が高い。
そして、本発明によれば、より高性能なものが含まれる可能性が高い新規形状を中心として評価を繰り返すことにより、最適解を探索することとなる。したがって、本発明によれば、産業機械の形状を最適化するにあたり、探索の精度が悪化することを抑制しつつ、短時間で最適解の探索を完了することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態における形状最適化方法及び形状最適化装置にて用いられるPODの概略を説明する説明図である。
【図2】本発明の一実施形態における形状最適化方法及び形状最適化装置にて用いられるPODにより得られる設計空間を示す概念図である。
【図3】本発明の一実施形態における形状最適化方法の概略を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態における形状最適化装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第1実施形態における形状最適化方法及び形状最適化装置を用いた翼形状最適化を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明の第1実施形態における形状最適化方法及び形状最適化装置で用いる翼形状を示す模式図である。
【図7】本発明の第1実施形態における形状最適化方法及び形状最適化装置で得られる固有ベクトルと基底ベクトルとによる形状を示すグラフである。
【図8】本発明の第1実施形態における形状最適化方法及び形状最適化装置で得られる基底ベクトルのノルムを示すグラフである。
【図9】本発明の第1実施形態における形状最適化方法及び形状最適化装置で得られる揚力係数CLが大きく抗力係数CDとの関係を示すグラフである。
【図10】本発明の第1実施形態における形状最適化方法及び形状最適化装置によって選択された最適解に基づく形状と、他の従来手法にて最適化された最適解に基づく形状とを示すグラフである。
【図11】本発明の第2実施形態における形状最適化方法及び形状最適化装置で用いる流路モデルを示す模式図である。
【図12】本発明の第2実施形態における形状最適化方法及び形状最適化装置で得られる基底ベクトルのノルムを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係る産業機械の形状最適化方法及び産業機械の形状最適化装置の一実施形態について説明する。
まず具体的な実施形態の説明の前に本発明の原理について説明する。
【0020】
一般的な産業機械の歴史は古く、現在にたどり着くまでの改良によって、性能が高いとされる形状(以下、高性能形状)が複数発見されている。そして、このような高性能形状には、高い性能を引き出す要因となる特徴的な形状(以下、特徴形状)を含んでいると考えられる。
このような特徴形状を複数の高性能形状から抽出して組み合わせ、別の形状を生成した場合、この形状には多くの特徴形状が含まれることとなり、より高性能な形状となる可能性が高い。
つまり、探索空間において、高性能形状から抽出した特徴形状を含む領域に最適解が存在する可能性が高いと考えられる。
したがって、探索空間における探索領域を特徴形状が含まれる領域に限定することによって、探索領域が大幅に限定され、短時間で最適解を導き出すことができると考えられる。
【0021】
そして、本発明においては、高性能形状から特徴形状を抽出する手法として、主成分分析を用いる。
この主成分分析は、複数の高性能形状をベクトルとして表現して同一の座標空間に配置し、この座標空間に配置された複数の高性能形状を示す座標の配置傾向から特徴形状を抽出する手法である。
このような主成分分析の手法は、固有直交分解(POD:Proper Orthogonal Decomposition)、カルーネン・レーベ展開(Karhunen-Loeve decomposition)、特異値分解(Singular value decomposition)、スペクトル分解、独立成分分析(Independent component analysis)、因子分析として用いられている。
【0022】
ここで、固有直交分解(以下、PODと称する)を用いて最適解の探索手法(以下、本探索方法と称する)について説明する。
まずPODについて説明する。なお、以下の説明において、ベクトルは下式(1)などの太字で表し、転置ベクトルを下式(2)で表すものとする。また、ベクトルのノルムは全て下式(3)で示すユークリッドノルムとする。また、扱う値は全て実数である。
【0023】
【数1】
【0024】
【数2】
【0025】
【数3】
【0026】
PODは、主成分分析の一手法であり、相関があることが期待される複数のベクトルを、基底ベクトル(主成分)に分解する方法である。なお、基底ベクトルは、特徴形状を示す。
【0027】
図1は、上述したPODの概要を纏めた説明図である。
例えば、予めn個の形状の幾何学情報が下式(4)の形で与えられているものとする。このとき下式(5)のj番目の値を下式(6)で表すと約束すると、式(6)は、各形状に共通するx座標xjに対するy座標値である。相関を求めるために、与えられた式(5)を平均成分とそれ以外の成分に下式(7)と下式(8)に示すように分解する。
【0028】
【数4】
【0029】
【数5】
【0030】
【数6】
【0031】
【数7】
【0032】
【数8】
【0033】
PODでは、下式(9)に示すように、下式(10)を下式(11)の線形和に分解する。
【0034】
【数9】
【0035】
【数10】
【0036】
【数11】
【0037】
ただし、式(11)は直交基底である。また、下式(12)とすると、下式(13)を満たす。
【0038】
【数12】
【0039】
【数13】
【0040】
そして、PODの目的は、式(9)及び式(13)を満たし、添え字jが小さい順に下式(14)が最大となるような式(11)と下式(15)を求めることである。
【0041】
【数14】
【0042】
【数15】
【0043】
ここで、行列Vを下式(16)と定義すると、式(15)及び式(11)は、式(17)の固有値分解を用いて求めることができる。式(9)を用いると、式(17)は、下式(18)のように記述できる。
【0044】
【数16】
【0045】
【数17】
【0046】
【数18】
【0047】
ここで両辺に左から式(19)、右から式(20)をかけると、下式(21)を得る。
【0048】
【数19】
【0049】
【数20】
【0050】
【数21】
【0051】
したがって、下式(22)を固定したとき、下式(23)を最大化する下式(24)は式(22)と直交する。さらにこのとき式(23)を最大化する式(22)は、式(17)の最大固有値に対向する正規固有ベクトルである。同様にして、式(24)は全て式(17)の最大固有値に対応する正規固有ベクトルである。同様にして式(24)は全て式(17)のj番目に大きい固有値に対応する正規固有ベクトルであることが従う。最後に式(24)が直交しているから、下式(25)が従う。
【0052】
【数22】
【0053】
【数23】
【0054】
【数24】
【0055】
【数25】
【0056】
以上のように行列の固有値分解を利用してPODを行うことができる。なお、数値実験においては、行列のサイズが比較的小さいこともあり、固有値分解の方法として実装が簡単なべき乗法を用いた。
【0057】
そして、このようなPODによって得られた直交分解から新しい形状を生成することができる。
ここで、基底ベクトルである式(11)は、n個得られるが、jが大きくなるにつれてそのノルムは小さくなる。特に最初に与えた形状の個数が多く、さらに相関が大きければ高次の基底ベクトルのノルムは無視できるほど小さくなることが期待される。
このため、例えば基底ベクトルとして、そのノルムが閾値以上であるノルムのみを形状最適化のために用いることが考えられる。
具体的には、R=0.01に対して、下式(26)などとして、下式(27)であるような基底ベクトルを用いて新たな形状を生成する。
このとき、新たな形状を表す下式(28)は、下式(29)で表される。
【0058】
【数26】
【0059】
【数27】
【0060】
【数28】
【0061】
【数29】
【0062】
ただし、下式(30)は任意に設定するパラメータであり、与え方の自由度は大きい。今回は、下式(31)の範囲で適当な格子点を選択した。ただし、制約条件が課されている場合にはその制約条件を満たす範囲で式(32)を選択する。
【0063】
【数30】
【0064】
【数31】
【0065】
【数32】
【0066】
式(29)により超平面が与えられる。これに拘束条件を考慮に入れることで超平面上の部分空間が設計空間(探索空間)となる。この設計空間は、予め与えられた高性能形状等の形状を示す形状ベクトルで張られる空間の部分空間でもある。
この設計空間と予め与えられた形状との関係は、図2のようになる。ここでは簡略化するために2次元平面上に描いているが、実際には次元はもっと大きい。
【0067】
式(26)におけるRを適切に選ぶことでPODにより得られる設計空間は図2のように最初に与える幾何情報の点集合の十分近くを通る平面にできる。仮に元の幾何情報の間の相関が小さい場合であってもR=0とすることで式(29)の超平面が元の幾何情報ベクトル(形状ベクトル)をすべて含むようにできる。
ここでRを変化させるとNが変化し、PODにより得られる設計空間の次元が変化することになる。
【0068】
上述のように、超平面上の目的関数値の集合(高性能形状が有する特徴的な形状を含む形状の集合)は比較的良い値を含んでいる可能性が高い。したがって、超平面上の目的関数値の集合を探索するのみで最適解が得られると考えられる。
つまり、PODを用いない場合には、図2の「feasible region」のような広い設計空間全体を探索しなければならないのに対して、PODを用いた場合には図2の「POD-design-space」を探索すれば十分であると考えられる。
すなわち、PODにより高性能な解の集合を抽出しようとしていると考えればよい。
特に目的関数が連続でかつ、Rを正として打ち切った基底ベクトルの影響が無視できるならば、超平面上の目的関数値は、少なくとも元形状に相当する目的関数値の最大値と最小値に挟まれた区間を含む。このとき、この超平面上を探索すれば元形状と同じかそれより高性能な解が求まる。
また、設計空間が狭められたことで応答曲面を生成する場合に曲面の精度が向上して、最適解の精度が向上し探索時間が短縮することが期待できる。
【0069】
上述のような主成分分析を用いて最適解を探索する場合には、図3に示すように、最初に事前にいくつかの性能の良い形状を取得する(ステップS11)。これは経験や知見に従って得るか、あるいはランダムサンプリングにより得ることができる。
次に、それらの形状についてPODを実行する(ステップS12)。続いて、PODにより得られた基底ベクトルのうち、高次の基底ベクトルを削除する(ステップS13)。そして、低次の基底ベクトルだけを用いてパラメトリックに新しい形状を生成する(ステップS14)。そしてパラメータを変数としてRSM等を用いて最適解を探索する(ステップS15)。
【0070】
(第1実施形態)
次に、本発明の第1実施形態として、2次元翼の形状最適化に本発明を適用した例について説明する。つまり、本実施形態は、産業機械の一部である翼を最適化対象部とするものである。
なお、翼形状設計において重要な因子は揚力係数CLと抗力係数CDである。そこで、本実施形態においては、表1に示すような多目的最適化問題を考え、下式(33)が最大となる形状を最適解とする。
【0071】
【表1】
【0072】
【数33】
【0073】
また、一般に翼厚比が大きいほど揚力係数CLが大きく抗力係数CDが小さくなる傾向がある。PODを用いた場合、式(29)において式(32)を大きくすると翼厚比が大きくなり、それだけで揚力係数CLが大きくなることがありえる。すなわち、新規に高性能な形状を生成できたとしても、それがPODの効果であるのか翼厚比を大きくしたことによる効果であるのか判断が困難である。そこで、本実施形態においては、すべての翼について翼厚比が一定の値になるよう縮尺を変える。
【0074】
図4は、本実施形態において形状最適化方法を行う形状最適化装置10のハードウェア構成を概略的に示すブロック図である。
この図に示すように、本実施形態の形状最適化装置10は、パーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータによって構成されるものであり、CPU1、記憶装置2、リムーバブルメディアドライブ3、入力装置4、出力装置5、及び通信装置6を備えている。
【0075】
CPU1は、記憶装置2、リムーバブルメディアドライブ3、入力装置4、出力装置5、及び通信装置6と電気的に接続されており、これらの各種装置から入力される信号を処理すると共に、処理結果を出力するものである。
そして、CPU1は、後述の形状最適化プログラムPに基づいて、形状最適化装置10を、高性能形状を含む複数の翼形状を主成分分析することによって主成分を抽出する主成分抽出手段として機能させる。
また、CPU1は、形状最適化プログラムPに基づいて、形状最適化装置10を、主成分に基づいて翼の新規形状を生成する新規形状生成手段として機能させる。
また、CPU1は、形状最適化プログラムPに基づいて、形状最適化装置10を、新規形状生成工程にて生成された新規形状の最適化対象部の性能を評価する評価手段として機能させる。
【0076】
記憶装置2は、メモリ等の内部記憶装置及びハードディスクドライブ等の外部記憶装置によって構成されており、CPU1から入力される情報を記憶すると共にCPU1から入力される指令に基づいて記憶した情報を出力するものである。
そして、本実施形態において記憶装置2は、プログラム記憶部2aとデータ記憶部2bとを備えている。
【0077】
プログラム記憶部2aは、形状最適化プログラムPを記憶している。この形状最適化プログラムPは、所定のOSにおいて実行されるアプリケーションプログラムであり、コンピュータから構成される本実施形態の形状最適化装置10に形状最適化方法を実行させるものである。
【0078】
データ記憶部2bは、翼形状を示す形状データD1を記憶する。なお、データ記憶部2bには、高性能形状を示す形状データを含む複数の形状データが記憶される。
また、データ記憶部2bは、目的関数データD2、制約条件データD3、計算結果データD4等も記憶する。さらに、データ記憶部2bは、CPU1の処理過程において生成される中間データを一時的に記憶する。
【0079】
リムーバブルメディアドライブ3は、DVD(Digital Versatile Disc)やUSB(Universal Serial Bus)メモリ等のリムーバブルメディアXを取り込み可能あるいは接続可能に構成されており、CPU1から入力される指令に基づいて、リムーバブルメディアメディアXに記憶されるデータを出力するものである。そして、本実施形態においては、リムーバブルメディアメディアXに形状最適化プログラムPが記憶されており、リムーバブルメディアドライブ3は、CPU1から入力される指令に基づいて、リムーバブルメディアメディアXに記憶される数値解析プログラムPを出力する。
なお、形状最適化プログラムPは、必ずしもリムーバルディスクXに格納されている必要はない。例えば、ネットワークNを介して形状最適化プログラムPを取得し、この取得した形状最適化プログラムPを記憶装置2に記憶させるようにしても良い。
【0080】
入力装置4は、本実施形態の形状最適化装置10と作業者とのマンマシンインターフェイスであり、ポインティングデバイスであるキーボード4aやマウス4bを備えている。
出力装置5は、CPU1から入力される信号を可視化して出力するものであり、ディスプレイ5a及びプリンタ5bを備えている。
【0081】
通信装置6は、本実施形態の形状最適化装置10とネットワークNとを電気的に接続し、ネットワークNに接続された他の機器との間においてデータの受け渡しを行うものである。
なお、ネットワークNとしては、社内LAN(Local Area Network)やインターネット等が考えられる。
【0082】
次に、このように構成された本実施形態の形状最適化装置10を用いた形状最適化方法について、図5のフローチャートを参照しながら説明する。
なお、以下の説明においては、プログラム記憶部2aに既に形状最適化プログラムPが格納されているものとする。
【0083】
本実施形態の形状最適化方法では、図5に示すように、まず目的関数の設定及び制約条件の設定が行われる(ステップS21)。
具体的には、作業者が入力装置4を操作し、表1に示す目的関数及び制約条件を入力し、この入力データが目的関数データD2と制約条件データD3としてデータ記憶部2bに記憶されることで目的関数の設定及び制約条件の設定が完了する。
【0084】
続いて、基礎形状の設定が行われる(ステップS22)。
ここでは、まず作業者が、性能が高いとされる既知の形状(高性能形状)を複数選択する。なお、ここでは、高性能形状がどのような表現手法で表現されていても構わない。つまり、複数の高性能形状のうち、いくつかがベジェ曲線で表現され、いくつかがスプライン曲線で表現され、いくつかがフリーハンドで表現されていても良い。
そして、作業者が入力装置4を操作し、選択した高性能形状を入力し、この入力データが形状データD1としてデータ記憶部2bに記憶されることで基礎形状の設定が完了する。
【0085】
なお、本実施形態においては、「Abbot, I. H. and von Doenhoff, A. E.: Theory of wing sections including a summary of airfoil data, Dover publications, INC., New York, 1959.」を参考に、揚力係数CLが比較的大きく抗力係数CDが比較的小さい翼形状として、「NACA2415」、「NACA4415」、「NACA23012」、「NACA631−412」、「NACA641−412」、「NACA651−212」を基礎形状として選択する(図6参照)。ただし、翼厚比は、これらの翼の平均翼厚比である「0.129730」とした。
これらの翼形状は、従来から高性能であると認められている形状であり、予め設定された要求性能以上の性能を有する形状である。つまり、本実施形態においては、後に行うPODで用いられる複数の形状の全てが予め設定された要求性能以上の性能を有する形状とされている。
【0086】
続いて、異なる表現手法で表現された基礎形状を同一の座標系で表現するための幾何学ベクトル変換が行われる(ステップS23)。
ここでは、異なる表現手法で表現された基礎形状が同一の座標系における座標値で表現される幾何学ベクトル(ベクトル)に変換される。この幾何学ベクトルへの変換によって、全ての基礎形状が共通の表現手法によって表されることとなる。
具体的には、各基礎形状をxy直交座標系に投影し、x軸を100分割し、翼正圧側と負圧側のそれぞれに対してx座標に対応するy座標を並べたベクトルを生成し、これらのベクトルをつなげて幾何学ベクトルを生成する。
なお、この幾何学ベクトル変換は、CPU1がプログラム記憶部2aに記憶された形状最適化プログラムP及びデータ記憶部2bに記憶された形状データD1等に基づいて生成する。
そして、この幾何学ベクトル変換(ステップS23)は、本発明におけるベクトル変換工程に相当する。
【0087】
続いて、上記幾何学ベクトルを用いてPODが行われる(ステップS24)。
PODの詳細については、上述したため、ここでの説明は省略する。なお、このPODは、CPU1が、幾何学ベクトルやプログラム記憶部2aに記憶された形状最適化プログラムP等に基づいて実行する。
そして、本実施形態においては、予め設定された要求性能以上の性能を有する形状を含む複数の形状を主成分分析することによって基底ベクトルを主成分として抽出する。
つまり、本実施形態においてPODを行う工程(ステップS24)は、本発明の主成分抽出工程に相当する。
【0088】
このように、本実施形態においては、PODで用いられる複数の形状を同一の座標系におけるベクトルである幾何学ベクトルに変換し、変換後の幾何学ベクトルに基づいてPODが行われる。
そして、本実施形態においては、PODを実行することによって、図7に示すような固有ベクトルと基底ベクトルを得た。
【0089】
続いて、PODの実行によって得られた基底ベクトルの選択が行われる(ステップS25)。この基底ベクトルの選択数が少ないほど、新規形状の数を少なくして後の工程での計算量を削減することができる。一方で、パラメータ基底ベクトルは、次数の低いものほど、特徴の傾向を強く示している。したがって、基底ベクトルを選択する際には、低次のものから順に必要最低限の数を選択することが好ましい。
具体的には、選択する基底ベクトルの数は、例えば、基底ベクトルのノルムが予め定められた閾値に基づいて設定したり、CPU1の処理能力(処理時間等)に基づいて設定したりすることが考えられる。
なお、本実施形態においては、図8に示すように、4次までの基底ベクトルのノルムが卓越している。このため、4次までの基底ベクトルを選択することが考えられるが、後の計算量を考慮して本実施形態においては3次までの基底ベクトルを選択する。
また、基底ベクトルの選択は、作業者が入力装置4を操作することで行う。また、予め記憶される閾値等に基づいてCPU1が自動で行うことも可能である。
そして、この基底ベクトルの選択(ステップS25)は、本発明における基底ベクトル選択工程に相当する。
【0090】
続いて、選択した基底ベクトルを用いて新規形状が生成される(ステップS26)。
具体的には、下式(34)で示される係数ベクトルに対して、式(29)に従って新規形状を生成する。
なお、本実施形態においては、式(32)で示すパラメータを、下式(35)、下式(36)、下式(37)で示すように選択し、新規形状を108個生成した。
また、新規形状の生成は、CPU1が、選択された基底ベクトルやプログラム記憶部2aに記憶された形状最適化プログラムP等に基づいて実行する。
そして、この新規形状が生成される工程(ステップS26)は、本発明における新規形状生成工程に相当する。
【0091】
【数34】
【0092】
【数35】
【0093】
【数36】
【0094】
【数37】
【0095】
最後に、新規形状に対して、揚力係数CLが大きく抗力係数CDが算出されて評価が行われる(ステップS27)。
なお、新規形状の評価は、CPU1が、新規形状やプログラム記憶部2aに記憶された形状最適化プログラムP等に基づいて実行する。
そして、この評価を行う工程(ステップS27)は、本発明の評価工程に相当する。
【0096】
具体的には、本実施形態においては、揚力係数CLと抗力係数CDの計算には、パネル法を実装したソルバを用いた。また、計算条件はレイノルズ数を下式(38)とし、迎角5°とした。
【0097】
【数38】
【0098】
そして、新規形状を元に応答曲面を生成し、最適解を探索し、最終的に式(33)が最大となる翼を最適解とする。
なお、本実施形態においては、応答曲面の生成に、「ModeFRONTIER ver.4.2.1」(「多目的ロバスト設計最適化支援ツール modeFRONTIER,http://www.cdaj.co.jp/product/020000modefrontier/index.html.」参照)を用いた。
【0099】
図9は、元形状と新規形状の揚力係数CLと抗力係数CDの計算結果を示すグラフである。この図に示すように、揚力係数CLと抗力係数CDの分布は、元形状の値の周囲に広範囲に分布しており、元形状よりも高性能な形状が多く存在していることが分かる。
つまり、本実施形態の形状最適化方法及び形状最適化装置10によれば、設計空間をうまく限定することができたことが分かる。
【0100】
図10は、本実施形態によって選択された最適解に基づく形状と、他の従来手法にて最適化された最適解に基づく形状とを示すグラフであり、(a)が本実施形態によって選択された最適解に基づく形状を示し、(b)が他の手法にて最適化された最適解に基づく形状とを示す。
なお、ここでの他の従来手法とは、非特許文献3に示される手法であり、ベジェ曲線を用いて翼を表現し、「NACA0012 」翼を元にして逐次二次計画法による形状最適化を行う手法である。
なお、本実施形態との比較を行うために、翼厚比を本実施形態の条件に合わせて変え、パネル法を用いて再計算した。そのため、引用元の論文とは形状と揚力係数CL、抗力係数CD、揚坑比が異なっている。なお、レイノルズ数と迎角の計算条件は引用元においても本実施形態の条件と同じである。
【0101】
以下の表2は、本実施形態によって選択された最適解に基づく形状と、他の手法にて最適化された最適解に基づく形状とにおける、揚力係数CL、抗力係数CD、揚坑比の比較である。
【0102】
【表2】
【0103】
図10及び表2に示すように、本実施形態によって選択された最適解に基づく形状と、他の手法にて最適化された最適解に基づく形状とにおいて、幾何形状は大きく異なっている。
そして、揚力係数CLはどちらもほぼ同じであるのに対して、抗力係数CDはPODを用いた本実施形態の方が小さい。このため、PODを用いた本実施形態の方が、揚抗比が大きい。したがって、本実施形態の形状最適化方法及び形状最適化装置10の方が、他の従来手法よりも、高性能な解を得ることができていると言える。
【0104】
また、本実施形態の最適解と基底ベクトルの関係について述べる。
本実施形態において最適解を生成する係数パラメータは、下式(39)であった。
【0105】
【数39】
【0106】
そして、元形状として採用した基礎形状の翼はすべてキャンバーが比較的小さいが、選択解はキャンバーが大きいという特徴がある。また翼正圧側後縁が凹な形状をしている。
ここで、1次の基底ベクトルを見るとキャンバーが大きい。また、2次の基底ベクトルは正圧側後縁で凸になっている。PODを用いることでキャンバーを持つ成分と正圧側後縁が凸な成分を独立に抜き出し、これにパラメータを乗じることでキャンバーが大きく後縁側で凹な形状をした選択解を生成することができたことがわかる。また、平板翼よりもキャンバーが大きく後縁側が凹な翼の方が、揚力係数CLが大きくなることが知られておいる。このため、本実施形態の最適解のような翼を選択することは妥当である捉えることができる。
このように、本実施形態の形状最適化方法及び形状最適化装置10によれば、作業者は基底ベクトルを確認することで選択解の妥当性を確認することができる。
【0107】
以上のように、本実施形態の形状最適化方法及び形状最適化装置10によれば、予め設定された要求性能以上の性能を有する形状を含む複数形状から主成分を抽出し、主成分に基づいて最適化対象部(翼)の新規形状を生成する。
つまり、本実施形態は、コンピュータを用いて産業機械の一部あるいは全部である最適化対象部の形状を最適化する形状最適化方法であって、コンピュータがCPUと形状最適化プログラム及び形状データを記憶する記憶装置とを備え、CPUが、形状最適化プログラム及び形状データに基づいて、予め設定された要求性能以上の性能を有する形状を含む複数の形状を主成分分析することによって主成分を抽出する主成分抽出工程と、前記主成分に基づいて前記最適化対象部の新規形状を生成する新規形状生成工程とを行うものである。
このような本実施形態の形状最適化方法及び形状最適化装置10によれば、より高性能なものが含まれる可能性が高い新規形状を中心として評価を繰り返すことにより、最適解を探索することとなる。
したがって、本実施形態の形状最適化方法及び形状最適化装置10によれば、産業機械の形状を最適化するにあたり、探索の精度が悪化することを抑制しつつ、短時間で最適解の探索を完了することが可能となる。
【0108】
また、本記実施形態においては、POD(ステップS24)において基底ベクトルの抽出に用いられる形状が、全て高性能形状(予め設定された要求性能以上の性能を有する形状)であるため、生成される新規形状に、より高性能の形状が含まれる可能性が高くなる。
【0109】
また、本実施形態においては、複数の翼形状を同一の座標系におけるベクトルに変換してからPODを行っている。
このため、異なる表現手法で表現された翼形状同士から基底ベクトルを抽出することが可能となっている。
【0110】
また、本実施形態においては、PODによって主成分分析を行っている。このため、主成分を基底ベクトルとして抽出することができる。
そして、抽出された基底ベクトルのうち、予め定められた数だけ低次側から選択し、性能への影響度合いが低い高次側を捨てることによって、最適解を探索するための計算量を削減することができる。
【0111】
(第2実施形態)
上記実施形態においては、形状が座標値で与えられている例について説明した。一方で、実際の設計においては、部材の肉厚などの決められた部分の寸法を最適化したい場合も多い。
そこで、本発明の第2実施形態として、吸吐弁における寸法を最適化することによって吸吐弁(本実施形態においてはレシプロ圧縮機吸吐弁)の形状の最適化を図る吸吐弁の形状最適化に本発明を適用した例について説明する。つまり、本実施形態は、産業機械の全部である吸吐弁を最適化対象部とするものである。
なお、本実施形態において用いる形状最適化装置のハードウェア構成は、上記第1実施形態と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0112】
図11は、本実施形態において形状の最適化を図る吸吐弁の流路モデルである。なお、図11においては、吸吐弁が開放されている状態の流路モデルである。そして、本実施形態においては、図11に示す10個の寸法を設計変数とした。なお、各設計変数には、加工限界等に基づく制約条件を課している。
図11に示す吸吐弁では、流路が合流する部分(図11において最も拡大されている部分)でバックステップ流れがあり、全圧損失が高い。そこで、本実施形態においては、流路形状に対して最適化を行い、上記全圧損失を小さくすることを目標とする。
【0113】
本実施形態においては、設計変数の値を入力ベクトル(ベクトル)としてPODを実行する。具体的には、タグチメソッドを用いて得られた圧力損失が比較的小さい形状(高性能形状)を5つを用いてPODを実行し、基底ベクトルを得る。
この結果、基底ベクトルのノルムは、図12に示すように、3次までの基底ベクトルが卓越している。
そこで、本実施形態においては、3次までの基底ベクトルを用いて式(29)に従って新たにパラメトリックに48個の設計変数を生成する。
なお、式(32)に示すパラメータは、上記第1実施形態で説明したように設定する。具体的には、パラメータを下式(40)及び下式(41)に示すように選択する。
【0114】
【数40】
【0115】
【数41】
【0116】
続いて、48個の設計変数のうち、制約条件を満たさないものを取り除き、残ったものを元に新規形状を生成する。そして、「Fluent」を用いて新規形状における全圧損失の値を求め、得られた全圧損失の値と式(32)の情報を元に応答曲面を生成し、応答曲面のみを用いて最適解を探索する。
なお、本実施形態において探索された最適解は応答曲面の生成点であったため、再計算は行う必要がなかった。応答曲面を生成する際は、上記実施形態と同様に、「ModeFRONTIER ver.4.2.1」を用いた。
【0117】
表3は、本実施形態による最適解と、他の従来手法による最適解とにおける全圧損失係数との結果を示す表である。なお、表3において、ζが全圧損失係数を示す。また、他の従来手法としては、遺伝的アルゴリズム(GA)を用いた手法を用いた。また、遺伝的アルゴリズムを実行したときの条件は表4に示す。
【0118】
【表3】
【0119】
【表4】
【0120】
従来手法を用いた場合は、全圧損失係数が27.3である。一方で、本実施形態を用いた場合は全圧損失係数が25.6となっている。つまり、PODを用いることでより高性能な解が探索できたことが確認できる。
このように限られた設計変数を元に形状が決まる場合に関してもPODを用いた本実施形態の最適化方法を用いて高性能な解を求めることができる。
【0121】
上述の第1実施形態及び第2実施形態では、まず、流体性能の良い構造物の幾何情報の集合を元にしてPODによりそれらを基底ベクトルに分解する。次に低次の基底ベクトルからパラメトリックに新規形状を表現し、応答曲面法などの非線形最適化手法を用いて最適解を探索する。
この手法を用いることで、上述のように、性能の良い形状に共通する特徴を持った形状が得られる。またパラメータを減らせるため、最適化を行う際の探索領域が狭くなり、発見的手法を用いた場合に、より良い解が求められることができる。
さらに低次の主成分(すなわち低次の基底ベクトル)を分析することで、高性能な形状の特徴を知ることができる。このためブラックボックス化しがちな最適設計の過程が作業者にわかりやすく、ノウハウの蓄積にも繋がる。
また逆に、これまでに得られている高性能な形状を用いて新たな形状を生成することで知識の有効利用が可能である。
【0122】
PODを用いることの最大の利点は探索領域が小さくなることである。例えば、上記第1実施形態の翼形状の最適化では設計変数を3個のパラメータに減少させた場合でも、従来以上の高性能な形状が得られることが確認できた。この利点は特に設計変数の多い大規模な問題において効果が大きい。
【0123】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0124】
例えば、上記実施形態においては、本発明を翼あるいは吸吐弁の形状最適化に適用した構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、流体に関連する産業機械の全体あるいは一部の形状であれば、どのようなものであっても最適化を図ることができる。
例えば、インピンジ冷却に用いるインピンジ孔の形状を本発明によって最適化することも可能である。
【0125】
また、上記実施形態においては、主成分分析がPODである構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、主成分分析として、カルーネン・レーベ展開、特異値分解、スペクトル分解、独立成分分析あるいは因子分析を用いることも可能である。
【0126】
また、上記実施形態においては、POD(ステップS24)において基底ベクトルの抽出に用いられる形状が、全て高性能形状である構成を採用した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、複数の形状のうち、いくつかの形状を高性能形状と異なる形状としても良い。これによって、思わぬ高性能な新規形状が生成される可能性もある。
【符号の説明】
【0127】
10……形状最適化装置、1……CPU(主成分抽出手段、新規形状生成手段、評価手段)、2……記憶装置、3……リムーバブルメディアドライブ、4……入力装置、5……出力装置、6……通信装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業機械の一部あるいは全部である最適化対象部の形状を最適化する形状最適化方法であって、
予め設定された要求性能以上の性能を有する形状を含む複数の形状を主成分分析することによって主成分を抽出する主成分抽出工程と、
前記主成分に基づいて前記最適化対象部の新規形状を生成する新規形状生成工程と
を有することを特徴とする形状最適化方法。
【請求項2】
前記主成分抽出工程にて、前記主成分分析で用いられる前記複数の形状は、全てが予め設定された要求性能以上の性能を有する形状であることを特徴とする請求項1記載の形状最適化方法。
【請求項3】
前記主成分分析で用いられる前記複数の形状を同一の座標系におけるベクトルに変換するベクトル変換工程を有し、
前記主成分抽出工程にて、変換後の前記ベクトルに基づいて前記主成分分析を行う
ことを特徴とする請求項1または2記載の形状最適化方法。
【請求項4】
前記主成分分析は、前記主成分を基底ベクトルとして抽出する固有直交分解であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の形状最適化方法。
【請求項5】
予め定められた数だけ低次側から前記基底ベクトルを選択する基底ベクトル選択工程を有し、
前記新規形状生成工程にて、前記基底ベクトル選択工程にて選択された前記基底ベクトルに基づいて前記最適化対象部の新規形状を生成する
ことを特徴とする請求項4記載の形状最適化方法。
【請求項6】
前記新規形状生成工程にて生成された前記新規形状の最適化対象部の性能を評価する評価工程を有することを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の形状最適化方法。
【請求項7】
産業機械の一部あるいは全部である最適化対象部の形状を最適化する形状最適化装置であって、
予め設定された要求性能以上の性能を有する形状を含む複数の形状を主成分分析することによって主成分を抽出する主成分抽出手段と、
前記主成分に基づいて前記最適化対象部の新規形状を生成する新規形状生成手段と
を備えることを特徴とする形状最適化装置。
【請求項1】
産業機械の一部あるいは全部である最適化対象部の形状を最適化する形状最適化方法であって、
予め設定された要求性能以上の性能を有する形状を含む複数の形状を主成分分析することによって主成分を抽出する主成分抽出工程と、
前記主成分に基づいて前記最適化対象部の新規形状を生成する新規形状生成工程と
を有することを特徴とする形状最適化方法。
【請求項2】
前記主成分抽出工程にて、前記主成分分析で用いられる前記複数の形状は、全てが予め設定された要求性能以上の性能を有する形状であることを特徴とする請求項1記載の形状最適化方法。
【請求項3】
前記主成分分析で用いられる前記複数の形状を同一の座標系におけるベクトルに変換するベクトル変換工程を有し、
前記主成分抽出工程にて、変換後の前記ベクトルに基づいて前記主成分分析を行う
ことを特徴とする請求項1または2記載の形状最適化方法。
【請求項4】
前記主成分分析は、前記主成分を基底ベクトルとして抽出する固有直交分解であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の形状最適化方法。
【請求項5】
予め定められた数だけ低次側から前記基底ベクトルを選択する基底ベクトル選択工程を有し、
前記新規形状生成工程にて、前記基底ベクトル選択工程にて選択された前記基底ベクトルに基づいて前記最適化対象部の新規形状を生成する
ことを特徴とする請求項4記載の形状最適化方法。
【請求項6】
前記新規形状生成工程にて生成された前記新規形状の最適化対象部の性能を評価する評価工程を有することを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の形状最適化方法。
【請求項7】
産業機械の一部あるいは全部である最適化対象部の形状を最適化する形状最適化装置であって、
予め設定された要求性能以上の性能を有する形状を含む複数の形状を主成分分析することによって主成分を抽出する主成分抽出手段と、
前記主成分に基づいて前記最適化対象部の新規形状を生成する新規形状生成手段と
を備えることを特徴とする形状最適化装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−3971(P2013−3971A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136478(P2011−136478)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年12月20日 社団法人日本流体力学会発行の「第24回数値流体力学シンポジウム講演予稿集 (CFD24講演予稿集)」に発表
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年12月20日 社団法人日本流体力学会発行の「第24回数値流体力学シンポジウム講演予稿集 (CFD24講演予稿集)」に発表
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】
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