説明

形状適応性ショルダーを有する摩擦攪拌工具

本発明は、回転駆動可能な工具本体(2)を備え、駆動部から遠い方に向いたその端にショルダー(3;30)が設けられ、そこから駆動部から遠い方に向いた工具本体(2)の端の方向にショルダー(3;30)よりも小さな直径を有する回転可能な棒状突起(4)が伸びている摩擦攪拌工具(1)に関し、ショルダー(3;30)の突起(4)の方向に向いた表面(5;50)が形状適応性である、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求の範囲の請求項1の前文限定条項に記載される摩擦攪拌工具に関し、特に摩擦攪拌接合において、及び摩擦攪拌加工として知られるものにおいて用いられる摩擦攪拌工具に関する。
【背景技術】
【0002】
摩擦攪拌接合(FSW)は、公知のように、航空宇宙工学、鉄道技術、そして自動車製造でますます多用されるようになっている。この単純で、清けつで、革新的な組立方法は、高い自動化の可能性、リベットを不要にすること、生産コストの低下、そして製造された構造の重量の低減などで際だっている。
【0003】
公知のように、例えば、特許文献1に記載されている摩擦攪拌接合では、溶接しようとする二つの被加工物を接触させてその位置に保持する。溶接棒又は対応する工具の棒状突起が、被加工物の接合領域に回転運動によって、工具上で溶接棒の上に配置されたショルダーが被加工物の表面に載るまで引き込まれる。この場合、工具と被加工物の相対運動によって摩擦熱が発生し、接合領域における隣接する物質領域が可塑化された状態になる。回転する溶接棒が接合領域と接触している間に、工具が被加工物の接合線に沿って前へ進められ、溶接棒のまわりの物質が可塑化され、その後固化する。物質が完全に硬化する前に溶接棒が接合領域又は被加工物から引き離される。溶接の間被加工物表面と接触しているショルダーによってさらに摩擦熱が発生し、可塑化した物質の散逸が防止される。
【0004】
このようにして、例えば、金属、合金、金属複合材料(MCCsと呼ばれるもの)、又は適当なプラスチック、などの物質を突き合わせ接合、オーバラップ接合、又はT−ジョイント接合として溶接できる。もちろん、スポット接合も生成でき、その場合は接合領域と回転して接触する溶接棒の前進運動、又は回転する溶接棒と被加工物の間の相対平行運動はなくなる。
【0005】
しかし、摩擦攪拌法はまた、修理、被加工物の機械加工及び仕上げでも用いられ、通常、摩擦攪拌加工と呼ばれる。この場合、上述のように、棒状突起が回転運動によって少なくともひとつの被加工物に導入され(すなわち、固体での溶接が起こり)、少なくとも溶接棒との接触領域において被加工物の物質が変質する。ほんの一例をあげると、修理のために回転する溶接棒が、例えば、被加工物のクラックに導入される。
【0006】
しかし、摩擦攪拌接合と摩擦攪拌加工の欠点は、曲がったコンポーネント、特に球面コンポーネントの溶接又は加工は、ある半径を超えるとショルダーが支持できなくなるために、又は凹面のコンポーネント表面の場合は接合点より高くなるために、これまでは不可能であったということである。同じことは、例えば、パイプ、半シェル、又は半球の接合で発生するような軌道シーム(orbital seam)の生成にもあてはまる。同様に、他の表面輪郭を有する(例えば、アングル状隙間(angular clearance)を有する)コンポーネントの溶接又は加工もこれまで可能でなかった。
【特許文献1】国際公開WO93/10935号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、摩擦攪拌工具であって、それによって曲面をもつコンポーネント又はその他の形状のコンポーネントであっても高い品質で溶接又は加工でき、軌道シーム又は周面シーム(circumferential seam)を単純なやり方によって高い信頼性で生成できる摩擦攪拌工具を提供することである。
【0008】
この目的は請求項1に記載の特徴を有するデバイスによって達成される。従属する請求項は本発明の有利な実施の形態を記載する。
【0009】
本発明に係わる摩擦攪拌工具は、回転駆動可能な工具本体を備え、駆動部と反対方向のその端にショルダーが設けられ、そこから駆動部から遠い方に向いた工具本体の端の方向にショルダーよりも小さな直径の回転可能な棒状の突起が伸び、突起の方向に向いたショルダー表面が形状適応性の設計である、ことを特徴とする。ここにおいて“駆動部から遠い方に向いた工具本体の端の方向に”とは、回転可能な棒状突起が工具本体と反対側にある又は工具本体から離れる方に向いたショルダーの側から伸びていることを意味するものと理解すべきである。
【0010】
本発明の中心にあるアイデアは、摩擦攪拌工具にショルダーを設け、突起の方向に(又は被加工物((単数又は複数)の方向に)向いたショルダー表面を、接合しようとする又は機械加工しようとする被加工物の輪郭に適応させて、前記ショルダーが被加工物表面にしっかりとフィットさせられるようにする、すなわち、突起の方向に向いたショルダー表面形状の輪郭が可変になるようにするということである。この性質を“形状適応性”という用語で表現する。
【0011】
このために、突起の方向に向いたショルダー表面は可撓的に設計され、被加工物と接触したときに自動的に、すなわち、ひとりでに接合される又は機械加工される被加工物にしっかりとフィットする、又は能動的に、すなわち、外からの作用によって(機械的に、油圧で、電気的に、又は空気圧で)コントロールされた仕方で変形されて対応する被加工物の形、特に曲がった形に適応できるように設計される。
【0012】
この方法の利点は、一次元的又は二次元的に曲がったコンポーネントの接合又は機械加工においても、ショルダー表面が回転する棒状突起の前方、隣接、及び背後の領域で被加工物表面に載り、各方向で回転する棒状突起の回転軸に関して軸方向に被加工物表面に載り、ショルダーの表面全体で可塑化下物質が軸方向に逃げることを防止できることである。
【0013】
好ましくは、突起の方向に向いたショルダー表面は可逆的に変形できる;すなわち、ショルダー表面は、ほとんどの場合荷重されていない初期状態に、例えば、変形していない平面に再び戻る。例えば、本発明の摩擦攪拌工具の突起が回転運動と力の作用によって被加工物に、又は互いに載置された二つの被加工物の接合領域に挿入される場合、突起の方向に向いたショルダー表面は最初は初期形状をとるが、突起の方向に向いたショルダー表面が被加工物と接触するや否や、後者の形に適応して、ショルダー表面は被加工物の形に連続的に、すなわち隙間も、ギャップも、波打つこともなしに、しっかりとフィットする。工具又は突起を被加工物物質から引き抜くとショルダー表面は初期の形に戻る。もちろん、既に述べたように、被加工物表面と接触させる前又はその間に、突起の方向に向いたショルダー表面を能動的にコントロールされた仕方で、すなわち外部コントロールによって、変形させることも可能である。
【0014】
好ましい実施形態では、ショルダーは少なくとも部分的に突起の方向に開かれた支持体(carrier body)を備え、そこに軸方向に移動可能な及び/又は少なくとも突起の方向に向いた側面が弾力的に設計されている少なくともひとつのエレメントが配置されている。序論で述べたような形状適応性がそれによって実現されるものであり、“軸方向の移動”という用語は、長手方向の移動、すなわち摩擦攪拌工具の回転軸に沿った移動を意味すると理解すべきである。これによって、ショルダー表面のいろいろな領域が必要に応じてショルダー表面に対して直角方向に異なる変位をすることができるようになる。
【0015】
普通、支持体におけるエレメントは棒状突起を同心的に囲むように配置される。回転対称な配置は、ショルダー表面の断面全体にわたって信頼できる適応性を生み出す。
【0016】
特に好ましい第一の実施形態では、支持体に軸方向移動可能な複数のエレメントが配置され、突起の方向に向いたその側面が突起の方向に向いたショルダー表面を形成する。したがって、ショルダー表面の輪郭を変えるためには、個々のエレメントを軸方向に移動させることができ、エレメントは、例えば金属、セラミック、又は複合材料から固定された、すなわち非弾力性の外側輪郭を有するように構成される。その他に、もちろん、突起の方向に向いたエレメントの側面を可撓的に設計する可能性も排除されない。しかし、これは追加の出費がかかる。
【0017】
本発明のこの第一の実施形態では、エレメントは普通、棒状セグメントとして長手方向が本質的に軸方向になるように設計される。この場合、好ましくは、棒状セグメント(複数)の断面が突起を同心的に囲む円形リングを形成し、棒状セグメント(複数)の突起の方向に向いた側面によってほぼ連続な面が形成される。この場合、このほぼ連続な面がショルダー表面を構成し、ショルダー表面の任意の点でショルダー表面を軸方向に変位させることができるので、非常に良好な形状適応性が保証される。
【0018】
このためには、各エレメントを単独で、すなわち個別に作動させて軸方向に移動できることが有利である。これは機械的に、油圧で、又は空気圧で、電気的に、又は他の任意の適当な仕方で行うことができる。好ましくは、各エレメントはじく方向に弾力的なばね要素を介して支持体に結合される。各エレメントが被加工物表面と接触したときに軸方向に移動して、突起の方向に向いた好ましくは棒状エレメントの個々の側面から構成されるショルダー表面を被加工物表面の形状に適応させるので、ショルダー表面の受動的な形状適応性がこれにより単純な仕方で保証される。
【0019】
本発明の別の第二の実施形態では、少なくともひとつの自由成形体が支持体内に配置される。自由成形体は、特に流体クッションであってもよいが、別のバルーン形のボディー又は弾性的又は弾力的な物質であってもよく、いずれにせよ接合又は機械加工しようとする被加工物にショルダーが十分な圧力を及ぼして、FSWプロセスの間ショルダーと被加工物表面の間に間隙が形成されることを防止して可塑化された物質が(例えば、半径方向に)逃げることができないように保証するものである。しかし、異なる半径のリングの形に設計された二つの自由成形体を突起のまわりに同心的に配置することもできる。もちろん、他のいろいろな可能性も考えられる。
【0020】
この第二の実施形態では、突起の方向に向いた少なくともひとつの自由成形体の側面が突起の方向に向いたショルダー表面を形成することが特に好適である。自由成形体の弾力性、特に突起の方向に向いた側面の弾力性によって、ショルダー表面全体にわたってショルダー表面の形状又は輪郭を変えることができる。
【0021】
さらに、この第二の実施形態を次のように変形することができる、すなわち、支持体の内部に少なくともひとつの自由成形体と支持体の開いた端の間に、少なくとも軸方向に移動可能なばらばらの充填体を配置し、それによって突起の方向に向いたショルダー表面を形成する。この場合、ばらばらの充填体は支持体内で移動可能に配置され、被加工物と接触すると、被加工物表面の輪郭をコピーするようにそれに適応する。このタイプのばらばらの充填体は、特に、硬い金属、セラミック、又はプラスチックの球であり、典型的な直径は0.1〜5 mmである。
【0022】
さらに、本発明の第一の実施形態でも第二の実施形態でも、支持体の少なくとも部分的に開いた端を可撓的な物質、例えば、可撓的な金属シートで閉じてしまうことが好適である。この可撓的な物質には、少なくとも突起の方向に向いたその側面にさらにコーティングを施して、摩擦を減らす又は耐摩耗性を高めることもできる。このようなコーティングは、もちろん、特に棒状のエレメントの突起の方向に向いた側面に(第一の実施形態を見よ)、及び自由成形体の少なくとも突起の方向に向いた側面に(第二の実施形態を見よ)直接施すこともできる。
【0023】
本発明に係わる摩擦攪拌工具は、特に摩擦攪拌接合において、又は摩擦攪拌加工と呼ばれるもの(すなわち、被加工物の修理、機械加工、及び仕上げ)に用いられる。
【0024】
本発明のその他の特徴及び利点は、本発明のいろいろな実施形態についての添付図面を参照した以下の例示的な説明によって明らかになるであろう。
【0025】
図では、同様のコンポーネントは同じ参照数字で表される。互いに対応するコンポーネントは10倍した参照数字で表される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1は、本発明の第一の実施形態に係わる回転対称な摩擦攪拌工具1の長手方向の断面図を線図で示す。公知のように、摩擦攪拌工具1は、回転駆動できる工具本体2を備え、駆動部から遠い方のその端にショルダー3が設けられ、そこから、駆動部から遠い方に向いた工具本体2の端の方向に、すなわち、“A”と記された方向に、回転可能な棒状突起4が伸びており、その直径はショルダー3よりも小さい。言い換えると、棒状突起4は、ショルダー3の工具本体2と反対の側から伸びる、すなわち、後者から遠くなる方向を指している。
【0027】
普通、棒状突起4は工具本体2と一体で作られ、図1に示された実施形態では、別のコンポーネントとして設計されたショルダー3は棒状突起4の回りに回転対称に配置される。摩擦攪拌工具1の単純な組立がそれによって可能になる、例えば、ショルダー3を棒状突起4に“A”と記された方向と反対向きに押し込むことによって組み立てられる。これはまた、ショルダー3の簡単な交換を可能にする。さらに、ショルダー3は別個に、すなわち、突起4の回転又は工具本体2の回転と独立に作動させることができる。この場合、本発明に係わる摩擦攪拌工具は静止したショルダーで(すなわち、回転速度n=0)又は5〜5000 rpmという典型的な回転速度で作動させることができる。
【0028】
図1に示されたショルダー3は、突起4の方向に向いた、図1では破線によって線図で示されたショルダー表面5が被加工物100の形、特に表面輪郭に、ショルダー表面5と被加工物が接触したときに自動的に適応するように設計される。このために、複数のエレメント7が、例えば、金属、セラミック、複合材料などから成る支持体6内に配置され、個々のエレメント7は図1に二重の矢印で示されている軸方向に移動可能である。個別エレメント7の突起4の方向に向いた側面がこの場合ショルダー表面5を形成する。ほとんど連続な、すなわち切れ目のないショルダー表面5が得られるように、エレメント7は互いにできるだけ密に隣り合って配置されなければならない。個別エレメント7の間に大きすぎるギャップ又は細隙が生ずると、可塑化した物質がこれらのギャップ又は細隙に逃げ込む可能性があり、それが問題になる。
【0029】
好ましくは、個別エレメント7は硬い、すなわち非弾力的な又は非変形性の物質(例えば、金属、セラミック、又は複合材料)から成る。個別エレメント7の軸方向の移動可能性は特に簡単な仕方で実現される、すなわち、各個別エレメント7は支持体6の上部側に、すなわち、支持体6の工具本体2の方向に向いた側に軸方向に弾力的なばね要素9を介して配置される。被加工物100に摩擦攪拌工具1が回転する突起4によってショルダー表面5と被加工物表面が互いに接触するまで引き込まれると、ショルダー表面5は被加工物表面の形又は輪郭に適応して各個別エレメント7は軸方向に突起4の方向に向いた各個別エレメント7の側面8が被加工物100の表面に力を及ぼすように移動し、被加工物表面100にしっかりとフィットした連続ショルダー表面5を形成する。この場合、原則として、突起4の方向に向いたエレメント7の側面8の形は変化しないが、それが基本的に排除されるわけではない。原理的には、第二の実施形態と同様な、弾力的なエレメント側面8を有する変形例が可能であるが、追加の出費がかかる。
【0030】
エレメント7は普通、長手方向の拡がりが本質的に軸方向に伸びた棒状のセグメントとして設計される。図1二示されたショルダー3の断面図を示している図7の左側の図から推測されるように、エレメント7は突起4のまわりに同心的に配置され、エレメント7の断面が突起4を同心的に囲む円形リングの形のセグメント(図7で斜線によって示されている)を形成する。
【0031】
さらに、支持体6の開いた端は突起4の方向に向いているが、この端を可撓的な物質、例えば、弾性的な曲げられる金属シートで閉じてしまうこともできる。これは図1には示されていないが、図5を参照して以下でさらに詳しく説明する。さらに、可撓的物質に、少なくとも突起4の方向に向いた側面に、摩擦を減らす、又は耐摩耗性を高めるコーティングを設けることもできる。
【0032】
図1に関連して説明したエレメント7は、もちろん、別の形態を有しても、又は別の仕方で、例えば圧力の作用によって軸方向に移動してもよい。図2で“P”と記した矢印によって示された圧力の作用は、例えば、電気的に、油圧で、空気圧で、又は別の適当な仕方で加えてもよい。ここでもやはり各個別エレメント7は他のエレメント7と別に作動させることが有利である。こうしてショルダー表面5は、能動的に、すなわち、外部のコントロールによって特定の形又は輪郭に設定できる。動作と機能のタイプは、それ以外は図1に関連して説明した通りである。
【0033】
図3は、本発明の第二の実施形態に係わる摩擦攪拌工具1の線図による長手方向の断面図を示す。図3は、棒状突起4が被加工物100とまだ接触していない初期状態を示す。摩擦攪拌工具1は工具本体2を備え、駆動部から遠い方のその端にショルダーが設けられているが、図1による実施形態と区別するために、ショルダーは参照数字30で表されている。ショルダー30から駆動部から遠い方に向いた工具本体2の端の方向に回転可能な棒状突起4が伸びており、その直径は第一の実施形態に関連して既に説明したように(図1と2)ショルダー30より小さい。ショルダー30の動作と機能のタイプはやはり第一の例示的実施形態の動作と機能に対応する。
【0034】
図3から分かるように、ショルダー30は突起4の方向に少なくとも部分的に開いている支持体60を有し、その中に少なくともひとつの自由成形体70が、特に流体クッションが配置されている。流体クッションの代わりに、一方において弾力的又は変形可能であるが、他方においてショルダー30が被加工物100に十分な押圧力を及ぼして被加工物状にショルダー30が信頼できるように載ることができる物質を用いてもよい。流体クッション70は、例えば、リングの形に設計し、突起4を同心的に囲むように配置することができる。自由成形体70の突起4の方向に向いた側面がこの場合ショルダー表面50を形成し、それが図3でもやはり破線で示されている。もちろん、複数の自由成形体70であってもいろいろな仕方で支持体60内に配置することができる。
【0035】
摩擦攪拌工具1が回転する突起4によって図4に示されるように被加工物100に導入されると、ショルダー表面50は被加工物表面と接触したときに変形する。流体クッション70の弾力性によって、流体クッションは特に突起の方向に向いた側面80が変形し、被加工物100の表面に連続的にしっかりとフィットするようになる。
【0036】
流体クッション70のための別の装着部又は固定部が支持体60に設けられていない場合、支持体60の下向きの端、すなわち、被加工物100の方向に向いた端も可撓的物質61,特に変形可能な金属シートによって閉じてしまうことができる(図5を見よ)。
【0037】
第二の実施形態の変形例が図6に示されている。支持体60内に、さらにばらばらの充填体71が配置され、それらは自由成形体70と支持体60の開いた端の間に配置される。このタイプのばらばらの充填体は、例えば、硬い金属、セラミック、又はプラスチックの球であり、それらは少なくとも軸方向に移動可能である。この場合、ショルダー表目50がばらばらの充填体71によって形成される。図6のような配置も同様に、ショルダー60の表面50が被加工物100の形に自動的に適応して、被加工物100の表面に連続的に圧接することを保証する。さらに、図5に関連して既に述べたように、支持体60の開いた端は可撓的物質によって閉じてしまうことができるが、図6にはそれは示されていない。
【0038】
図7は、右側に、ばらばらの充填体71が充填されているショルダー30の断面図を示す。好ましくは、ばらばらの球は、曲がったコンポーネントに対して最適な適応を保証するために、棒状突起4を同心的に囲むように配置される。この場合、ばらばらの充填体71は、位置によって異なる強度を有する、及び/又は異なる圧力を受ける。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、本発明の第一の実施形態に係わる摩擦攪拌工具を線図で示す断面図である。
【図2】図2は、図1に示された摩擦攪拌工具の変形例を示す。
【図3】図3は、本発明の第二の実施形態に係わる摩擦攪拌工具を線図で示す断面図である。
【図4】図4は、図3に示された摩擦攪拌工具の溶接又は機械加工の状態を示す。
【図5】図5は、図4に示された摩擦攪拌工具の変形例を示す。
【図6】図6は、図3−5に示された摩擦攪拌工具の別の変形例を示す。
【図7】図7は、図1及び2又は図6と合わせて説明される工具ショルダーの断面図を示す。
【符号の説明】
【0040】
1 摩擦攪拌工具
2 工具本体
3 ショルダー
4 棒状突起
5 ショルダー表面
6 支持体
7 個別エレメント
8 個別エレメント表面
9 ばね要素
30 ショルダー
50 ショルダー表面
60 支持体
61 可撓的物質
70 流体クッション
71 充填体
80 流体クッション表面
100 被加工物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦攪拌工具(1)であって、
回転駆動可能な工具本体(2)を備え、
工具本体(2)の駆動部から遠い方に向いた端部にショルダー(3;30)が設けられ、
ショルダー(3;30)から工具本体(2)の駆動部から遠い方に向いた端部の方向にショルダー(3;30)よりも小さな直径を有する回転可能な棒状突起(4)が伸びている、ものにおいて、
ショルダー(3;30)が突起(4)の方向に少なくとも部分的に開いている支持体(6;60)を含み、その中に軸方向に移動可能な、及び/又は少なくとも突起(4)の方向に向いた側面(80)が弾力的に設計された少なくともひとつのエレメント(7;70)が配置されていて、
ショルダー(3;30)の突起(4)の方向に向いた表面(5;50)が形状適応性を有する、
ことを特徴とする摩擦攪拌工具(1)。
【請求項2】
突起(4)の方向に向いたショルダー表面(5;50)が可逆的に変形可能である、ことを特徴とする請求項1に記載の摩擦攪拌工具(1)。
【請求項3】
エレメント(7;70)が、突起(4)を同心的に囲むように配置される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の摩擦攪拌工具(1)。
【請求項4】
支持体(6)内に複数の軸方向に移動可能なエレメント(7)が配置され、突起(4)の方向に向いたその側面(8)が突起(4)の方向に向いたショルダー表面(5)を形成する、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の摩擦攪拌工具(1)。
【請求項5】
エレメント(複数)(7)が棒状セグメント(複数)として設計され、その長手軸が本質的に軸方向に向いており、棒状セグメントの断面が突起(4)を囲んで同心円形リングを形成する、ことを特徴とする請求項4に記載の摩擦攪拌工具(1)。
【請求項6】
各エレメント(7)が軸方向に弾力的なばね要素(9)を介して支持体(6)に結合される、ことを特徴とする請求項4又は5に記載の摩擦攪拌工具(1)。
【請求項7】
少なくともひとつの自由成形体(70)、特に流体クッション、が支持体(6)内に配置されている、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の摩擦攪拌工具(1)。
【請求項8】
少なくともひとつの自由成形体(70)の突起(4)の方向に向いた側面(80)が弾力的であり突起(4)の方向に向いたショルダー表面(50)を形成する、ことを特徴とする請求項7に記載の摩擦攪拌工具(1)。
【請求項9】
支持体(60)がその内部に、少なくともひとつの自由成形体(70)と支持体(60)の開いた端の間に、ばらばらの充填体(複数)(71)が配置され、それらが少なくとも軸方向に移動可能であり、突起(4)の方向に向いたショルダー表面(50)を形成する、ことを特徴とする請求項7に記載の摩擦攪拌工具(1)。
【請求項10】
支持体(6;60)の少なくとも部分的に開いた端は可撓的物質によって閉じてしまうことができる、ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の摩擦攪拌工具(1)。
【請求項11】
摩擦攪拌接合又は摩擦攪拌加工のための請求項1から10のいずれか1項に記載の摩擦攪拌工具の利用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−519135(P2009−519135A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544863(P2008−544863)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【国際出願番号】PCT/EP2006/011976
【国際公開番号】WO2007/068456
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(508178711)エアバス ソシエテ パ アクシオンス シンプリフィエ (3)
【Fターム(参考)】