説明

待ち時間報知システムおよび制御プログラム

【課題】会計を受けられるまでの待ち時間を精度よく予測して客に知らせ、待ち時間の短いチェックアウトカウンタを容易に把握可能とする。
【解決手段】一実施形態における待ち時間報知システムは、無線読取手段と、算出手段と、報知手段とを備えている。無線読取手段は、チェックアウトレーンR1〜R3に並んだ客の買い物籠4に付された第1無線タグおよびその客の買い上げ商品に付された第2無線タグを、無線通信により読み取る。算出手段は、無線読取手段によって読み取られた第1無線タグの数および第2無線タグの数に基づいてチェックアウトレーンR1〜R3での会計待ち時間を算出する。例えばディスプレイ31〜33である報知手段は、算出手段によって算出された会計待ち時間を報知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、店舗の会計場における会計待ち時間を算出し、報知する待ち時間報知システムおよび制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
コンビニエンスストアやスーパーマーケット等の小売店では、混雑時等に会計待ちの行列が生じることがある。例えば複数のチェックアウトレーンが設けられた店舗において上記会計待ちの行列が生じた場合、会計を受けようとする客は、各待ち行列の人数や各客が購入しようとする商品の数量等に基づいて待ち時間が最短となるであろうチェックアウトレーンを予測し、そのレーンの待ち行列に並んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−269453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような場合、客が正確に待ち時間が最短のチェックアウトレーンを予測することや、各チェックアウトレーンの待ち時間が実際にどの程度になるかを予測することは極めて困難である。そのため、客が判断を誤って他よりも待ち人数が多いチェックアウトレーンに並んでしまうことがある。このような場合、その客を長時間待たせかねない。また、各チェックアウトレーンに並ぶ客は、後どの程度待てば会計を受けられるのかが判らずに、不安や苛立ちを感じることがある。
【0005】
このような事情から、会計を受けられるまでの待ち時間を精度よく予測して客に知らせ、待ち時間の短いチェックアウトカウンタを容易に把握可能とする手段を講じる必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、一実施形態における待ち時間報知システムは、無線読取手段と、算出手段と、報知手段とを備えている。
前記無線読取手段は、チェックアウトレーンに並んだ客の買い物籠に付された第1無線タグおよびその客の買い上げ商品に付された第2無線タグを、無線通信により読み取る。前記算出手段は、前記無線読取手段によって読み取られた前記第1無線タグの数および前記第2無線タグの数に基づいて前記チェックアウトレーンでの会計待ち時間を算出する。前記報知手段は、前記算出手段によって算出された会計待ち時間を報知する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態における会計場の概略構成を示す平面図。
【図2】同実施形態における制御構成を示すブロック図。
【図3】同実施形態における制御装置のCPUが実行する処理のフローチャート。
【図4】同実施形態におけるディスプレイの表示例を示す図。
【図5】第2の実施形態における制御構成を示すブロック図。
【図6】同実施形態におけるアンテナの通信領域を説明するための模式図。
【図7】同実施形態における制御装置のCPUが実行する処理のフローチャート。
【図8】同実施形態における会計待ち時間算出の具体例を説明するための図。
【図9】同実施形態におけるディスプレイの表示例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、以下に説明する各実施形態では、複数のチェックアウトレーンが設けられたスーパーマーケット等の小売店にて稼働する待ち時間報知システムを例示する。
【0009】
(第1の実施形態)
[会計場の概略構成]
図1は、第1の実施形態における待ち時間報知システムが設けられた店舗の会計場の概略構成を示す平面図である。この会計場には、会計業務を担当する店員(キャッシャともいう)の立ち位置と客の立ち位置とを隔てる長尺のレジカウンタ1,2,3が互いに平行に設けられている。レジカウンタ1〜3に対する客の立ち位置側(図中、レジカウンタ1〜3の上側等)が、それぞれチェックアウトレーン(CHレーン)R1,R2,R3となる。
【0010】
レジカウンタ1〜3には、客の買い上げ商品の商品コード入力に使用されるスキャナ装置11,12,13がそれぞれ載置されている。スキャナ装置11〜13は、例えば筐体面に設けられた読み取り窓に翳された商品のバーコードから商品コードを読み取るスキャナと、商品コードが割当てられたプリセットキーを表示するタッチパネル付きのディスプレイとを備える。さらに、スキャナ装置11〜13よりもチェックアウトレーンR1〜R3の前方(図中、左側)には、それぞれPOS(Point Of Sales)端末21,22,23が配置されている。POS端末21〜23は、それぞれスキャナ装置11〜13のスキャナによるバーコードの読み取りや、プリセットキーの操作によって入力された商品コードに基づいて、客の買い上げ商品を精算処理する。
【0011】
図中に示した各破線S1,S2,S3は、それぞれチェックアウトレーンR1〜R3の床下に設けられたアンテナA1,A2,A3(図2参照)の通信領域である。通信領域S1〜S3は、その一端が混雑時に生じる会計待ちの行列が伸びると予想される最後端よりもチェックアウトレーンR1〜R3の後方(図中、右側)に位置し、他端がスキャナ装置11〜13の近傍に位置するように調整されている。また、通信領域S1〜S3の幅は、それぞれチェックアウトレーンR1〜R3に並ぶ客の買い物籠4およびスキャナ装置11〜13よりも各レーンR1〜R3の後方側のレジカウンタ1〜3上に置かれた買い物籠4が含まれるように調整されている。
【0012】
さらに、チェックアウトレーンR1〜R3には、各レーンR1〜R3での会計待ち時間を報知するためのディスプレイ31,32,33(報知手段)がそれぞれ設けられている。ディスプレイ31〜33は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)やVFD(Vacuum Fluorescent Display)であり、その表示面が対応するチェックアウトレーンR1〜R3に並ぶ客から視認できるようにして、会計場の天井等に固定されている。
【0013】
当該店舗にて買い物をするにあたり、先ず客は店舗の入口等に置かれた買い物籠4を手に取り、それを手持あるいはショッピングカートに載置して店内を移動し、商品棚等に陳列された商品を収納していく。そして、買い物籠4に収納した商品の代金を精算する際には会計場に移動し、いずれかのチェックアウトレーンR1〜R3に並んで自分の会計順を待つ。やがて自分の会計順になると、客は買い物籠4をレジカウンタ1〜3のスキャナ装置11〜13よりもチェックアウトレーンR1〜R3の後方側に載置する。このとき買い物籠4が載置される位置は、各通信領域S1〜S3に属している。
【0014】
キャッシャは、上記のようにレジカウンタ1〜3に載置された買い物籠4から商品を取り出し、スキャナ装置11〜13を用いて商品コードを入力していく。商品コードを入力し終えた商品は、上記買い物籠4が載置された位置のスキャナ装置11〜13を挟んだ反対側に置かれた他の買い物籠4やレジ袋等に収納する。すなわち、商品コードを入力済みの商品は、各通信領域S1〜S3から外れる。やがて、全ての商品の商品コードを入力し終えると、キャッシャは、各POS端末21〜23を操作して買い上げ商品の精算処理を行う。この精算処理の後に客は退店し、キャッシャは当該客の買い物籠4をレジカウンタ1〜3上から取り除き、近辺に設けられた籠置き場に置く。このとき、買い物籠4は通信領域S1〜S3から外れる。その後、次の客に対する会計が行われる。
【0015】
[制御構成]
図2は、本実施形態における待ち時間報知システムの制御構成を示すブロック図である。図示したように、バックヤード等に設置されたストアサーバ等の制御装置5に対し、上記ディスプレイ31〜33と、上記アンテナA1〜A3がそれぞれ接続されたリーダ装置61,62,63とを接続して、当該待ち時間報知システムが構成されている。
【0016】
上記買い物籠4の底面にはRFID(Radio Frequency Identification)タグである籠タグ100(第1無線タグ)が取り付けられており、当該店舗にて販売される各商品には同じくRFIDタグである商品タグ200(第2無線タグ)が取り付けられている。各タグ100,200は、小型のタグアンテナとICとを備えており、各籠タグ100のICには籠タグであることを示すタグデータが記憶され、各商品タグ200のICには商品タグであることを示すタグデータが記憶されている。
【0017】
リーダ装置61〜63は、それぞれアンテナA1〜A3に弱レベルの電波強度で籠タグ読取用の電波を放射させるとともに、強レベルの電波強度で商品タグ読取用の電波を放射させる。籠タグ100は上記籠タグ読取用の電波をタグアンテナで受信したときにICに記憶されたタグデータを示す応答電波を同タグアンテナから放射し、商品タグ200は上記商品タグ読取用の電波をタグアンテナで受信したときにICに記憶されたタグデータを示す応答電波を同タグアンテナから放射する。各タグ100,200からの応答電波をアンテナA1〜A3が受信したとき、リーダ装置61〜63は、自身に接続されたアンテナが受信した応答電波に基づいてタグデータを復調し、制御装置5に出力する。ここに、各リーダ装置61〜63および各アンテナA1〜A3は、本実施形態における無線読取手段を構成する。
【0018】
制御装置5は、CPU(Central Processing Unit)51と、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)で構成されたメモリ52とを備えている。メモリ52は、制御装置5の制御プログラム等の固定的データを記憶するとともに、処理場面に応じて各種の作業用記憶領域を形成する。CPU51は、当該待ち時間報知システムの動作を統括的に制御する。特に本実施形態において、CPU51は、各リーダ装置61〜63によって読み取られた籠タグ100および商品タグ200の数に基づいて、各チェックアウトレーンR1〜R3の会計待ち時間Tを算出する算出手段として機能する。
【0019】
[動作]
次に、当該待ち時間報知システムの動作について説明する。
制御装置5のCPU51は、メモリ52に記憶された制御プログラムを実行し、図3のフローチャートに示した処理を所定周期で実行する。
【0020】
この処理において、先ずチェックアウトレーンR1に対する処理が開始される。すなわち、CPU51は、リーダ装置61に籠タグ100の読み取り試行を指令する(ステップS101)。この指令を受けたとき、リーダ装置61がアンテナA1に弱レベルの電波強度で籠タグ読取用の電波を放射させる。アンテナA1の通信領域S1内に買い物籠4が所在するならば、その買い物籠4の籠タグ100から応答電波が返され、アンテナA1によって受信される。この場合には応答した籠タグ100分のタグデータがリーダ装置61から制御装置5に出力される。このようにリーダ装置61から出力される籠タグ100のタグデータが入力されると、CPU51は、入力された各タグデータをメモリ52に記憶する。
【0021】
籠タグ100の読み取り試行の後、CPU51は、籠タグ100が読み取られたか否かを判定する(ステップS102)。ステップS101の処理にてメモリ52に籠タグ100のタグデータが記憶されている場合、CPU51は、籠タグ100が読み取られたと判定し(ステップS102のYes)、リーダ装置61に商品タグ200の読み取り試行を指令する(ステップS103)。この指令を受けたとき、リーダ装置61がアンテナA1に強レベルの電波強度で商品タグ読取用の電波を放射させる。今、少なくとも買い物籠4がアンテナA1の通信領域S1に所在するため、その買い物籠4に収納された商品の商品タグ200から応答電波が返される。この応答電波はアンテナA1によって受信され、応答した商品タグ200分のタグデータがリーダ装置61から制御装置5に出力される。このようにリーダ装置61から出力される商品タグ200のタグデータが入力されると、CPU51は、入力された各タグデータをメモリ52に記憶する。
【0022】
商品タグ200の読み取り試行の後、CPU51は、ステップS101の処理にてメモリ52に記憶された籠タグ100のタグデータを計数し、計数結果を数値Bとしてメモリ52に記憶する(ステップS104)。数値Bは、アンテナA1の通信領域S1内に所在する買い物籠4の数と同値となる。さらに、CPU51は、ステップS103の処理にてメモリ52に記憶された商品タグ200のタグデータを計数し、計数結果を数値Cとしてメモリ52に記憶する(ステップS105)。数値Cは、アンテナA1の通信領域S1内に所在する商品の数と同値となる。
【0023】
しかる後、CPU51は、ステップS104,S105の処理にてメモリ52に記憶した数値B,Cに基づいてチェックアウトレーンR1の会計待ち時間Tを算出する(ステップS106)。会計待ち時間Tは、次の計算式によって算出される。
【数1】

【0024】
ここに、Bpは登録済み商品の代金精算に要する時間、すなわちキャッシャがPOS端末21〜23により現金やカードによる代金の支払を受け付け、POS端末21〜23から発行されるレシートや釣銭等を客に手渡し終えるまでの時間の予測値である。また、Cpは1つの商品の商品登録に要する時間、すなわちキャッシャが会計中の客の買い物籠4から商品を取り出し、その商品の商品コードをスキャナ装置11〜13により入力し終えるまでの時間の予測値である。これら予測値Bp,Cpの具体的な値は、経験的ないしは実験的に定めればよい。上記のように会計待ち時間Tを算出すると、CPU51は、当該会計待ち時間Tをディスプレイ31に表示させる(ステップS107)。
【0025】
その後、CPU51は、未処理のチェックアウトレーンがあるか否かを判定する(ステップS108)。今、チェックアウトレーンR1に対する処理が完了したのみである。したがって、CPU51は、未処理のチェックアウトレーンがあると判定し(ステップS108のYes)、ステップS101の処理に戻ってチェックアウトレーンR2のアンテナA2,リーダ装置62,ディスプレイ32を対象としたステップS101〜S107の処理を実行する。その結果、ディスプレイ32にチェックアウトレーンR2の会計待ち時間Tが表示される。さらにチェックアウトレーンR2に対する処理が完了した後においても未処理のチェックアウトレーンがあると判定し(ステップS108のYes)、ステップS101の処理に戻ってチェックアウトレーンR3のアンテナA3,リーダ装置63,ディスプレイ33を対象としたステップS101〜S107の処理を実行する。その結果、ディスプレイ33にチェックアウトレーンR3の会計待ち時間Tが表示される。
【0026】
このようにして各チェックアウトレーンR1〜R3に対する処理が完了すると、CPU51は、未処理のチェックアウトレーンがないと判定し(ステップS108のNo)、一連の処理を終了する。
【0027】
上記処理を経た後のディスプレイ31〜33の表示例を図4に示している。この例は、図1に示したように通信領域S1に2つの買い物籠4が所在し、これら買い物籠4に合計7品の商品が収納され、通信領域S2に3つの買い物籠4が所在し、これら買い物籠4に合計11品の商品が収納され、通信領域S3に2つの買い物籠4が所在し、これら買い物籠4に合計5品の商品が収納されたている場合に、予測値Cpを10秒とし、予測値Bpを20秒として上記処理が実行された後の状態を示している。
【0028】
ステップS106の処理において、チェックアウトレーンR1については1分50秒(2×20+7×10)が算出され、チェックアウトレーンR2については2分50秒(3×20+11×10)が算出され、チェックアウトレーンR3については1分30秒(2×20+5×10)が算出される。したがって、ディスプレイ31〜33には、それぞれ「会計待ち時間約1分50秒」、「会計待ち時間約2分50秒」、「会計待ち時間約1分30秒」と表示される。
【0029】
以上説明したように、本実施形態における待ち時間報知システムは、各チェックアウトレーンR1〜R3の会計待ち時間を、それぞれディスプレイ31〜33を用いて報知する。このような構成であれば、客は、各ディスプレイ31〜33の表示を確認することで最短の待ち時間で会計を受けられるチェックアウトレーンを容易に判別することができる。また、会計待ち時間は、商品タグ200の数、すなわち買い物籠4に収納された商品数をも考慮して算出されるので正確である。
【0030】
また、籠タグ100および商品タグ200は、いずれも共通の読取手段であるアンテナA1〜A3およびリーダ装置61〜63によって読み取られる。したがって、別々の読取手段を用いて籠タグ100および商品タグ200を読み取る場合に比べて待ち時間報知システムの構成が単純なものになり、同システムが低コストで実現できるとともにメンテナンスに要する費用や時間も抑えることができる。
【0031】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
この実施形態では、チェックアウトレーンR1〜R3毎に全体の待ち時間を報知するだけでなく、各チェックアウトレーンR1〜R3に並んでいる客毎にも、会計を受けるまでの待ち時間を報知する点で第1の実施形態と異なる。第1の実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0032】
[制御構成]
図5は、本実施形態における待ち時間報知システムの制御構成を示すブロック図である。本実施形態ではアンテナA1に代えてより小型のアンテナA11,A12,A13,A14,A15,A16がリーダ装置61に接続され、アンテナA2に代えてより小型のアンテナA21,A22,A23,A24,A25,A26がリーダ装置62に接続され、アンテナA3に代えてより小型のアンテナA31,A32,A33,A34,A35,A36がリーダ装置63に接続されている。
【0033】
リーダ装置61は各アンテナA11〜A16を選択的に用いて電波の放射および応答電波の受信を行い、リーダ装置62は各アンテナA21〜A26を選択的に用いて電波の放射および応答電波の受信を行い、リーダ装置63は各アンテナA31〜A36を選択的に用いて電波の放射および応答電波の受信を行う。
なお、各リーダ装置61〜63は、応答電波からタグデータを生成して制御装置5に出力する際に、その応答電波を受信したアンテナの通信領域を示す領域情報を付加する。
【0034】
本実施形態における制御装置5のCPU51は、各リーダ装置61〜63によって読み取られた籠タグ100および商品タグ200の数と、これら各タグ100,200が読み取られた通信領域の位置関係とに基づいて、各チェックアウトレーンR1〜R3に並ぶ各客の会計待ち時間を算出する算出手段として機能する。
【0035】
図6は、各アンテナA11〜A16,A21〜A26,A31〜A36の通信領域を説明するための模式図である。
アンテナA11〜A16はこの順でチェックアウトレーンR1の前方から後方に向けて同レーンR1の床下に設けられており、アンテナA11〜A16の通信領域S11〜S16は同レーンR1の前方から後方にかけて互いに重複せぬよう調整されている。アンテナA21〜A26はこの順でチェックアウトレーンR2の前方から後方に向けて同レーンR2の床下に設けられており、アンテナA21〜A26の通信領域S21〜S26は同レーンR2の前方から後方にかけて互いに重複せぬよう調整されている。アンテナA31〜A36はこの順でチェックアウトレーンR3の前方から後方に向けて同レーンR1の床下に設けられており、アンテナA31〜A36の通信領域S31〜S36は同レーンR3の前方から後方にかけて互いに重複せぬよう調整されている。各通信領域の調整には、隣り合うアンテナを密着させるとともに各アンテナに真上方向への指向性を有する電波を放射させるなどの手段を用いればよい。
【0036】
なお、通信領域S11〜S16全体の大きさ、通信領域S21〜S26全体の大きさ、および通信領域S31〜S36全体の大きさは、それぞれ第1の実施形態における通信領域S1,S2,S3の大きさと一致する。
【0037】
[動作]
次に、本実施形態における待ち時間報知システムの動作について説明する。
制御装置5のCPU51は、メモリ52に記憶された制御プログラムを実行し、図7のフローチャートに示した処理を所定周期で実行する。
【0038】
この処理において、先ずチェックアウトレーンR1に対する処理が開始される。すなわち、CPU51は、メモリ52にカウンタN(N:整数)を生成してその値を「1」とし(ステップS201)、リーダ装置61に籠タグ100の読み取り試行を指令する(ステップS202)。この指令を受けたとき、リーダ装置61がアンテナA11〜A16を選択的に用いて弱レベルの電波強度で籠タグ読取用の電波を放射させる。アンテナA11〜A16のいずれかが応答電波を受信したならば、リーダ装置61は、その応答電波からタグデータを生成し、その応答電波を受信したアンテナの通信領域を示す領域情報を付加して制御装置5に出力する。このようにリーダ装置61から出力される籠タグ100のタグデータおよび領域情報が入力されると、CPU51は、入力された各タグデータをそれらに付加された領域情報とセットでメモリ52に記憶する。
【0039】
籠タグ100の読み取り試行の後、CPU51は、籠タグ100が読み取られたか否かを判定する(ステップS203)。ステップS202の処理においてメモリ52に籠タグ100のタグデータが記憶されている場合、CPU51は、籠タグ100が読み取られたと判定する(ステップS203のYes)。そして、ステップS202の処理にてメモリ52に記憶された籠タグ100のタグデータを計数し、その計数結果を数値Nmaxとしてメモリ52に記憶する(ステップS204)。
【0040】
次に、CPU51は、リーダ装置61に商品タグ200の読み取り試行を指令する(ステップS205)。この指令を受けたとき、リーダ装置61がアンテナA11〜A16を選択的に用いて強レベルの電波強度で商品タグ読取用の電波を放射させる。商品タグ200からの応答電波をアンテナA11〜A16のいずれかが受信したならば、リーダ装置61は、その応答電波からタグデータを生成し、その応答電波を受信したアンテナの通信領域を示す領域情報を付加して制御装置5に出力する。このようにリーダ装置61から出力される商品タグ200のタグデータおよび領域情報が入力されると、CPU51は、入力された各タグデータをそれらに付加された領域情報とセットでメモリ52に記憶する。
【0041】
次に、CPU51は、ステップS205の処理にてメモリ52に記憶された商品タグ200のタグデータのうち、チェックアウトレーンR1の前方からN番目の籠タグ100が読み取られた通信領域およびそれよりも前方の通信領域で読み取られたものを計数し、計数結果を数値Cとしてメモリ52に記憶する(ステップS206)。具体的には、メモリ52に記憶した各籠タグ100のタグデータに付加された領域情報を比較して前方からN番目のタグデータを特定し、特定したタグデータに付加された領域情報が示す通信領域およびそれよりも前方の通信領域を示す領域情報が付加された商品タグ200のタグデータを計数する。
【0042】
次に、CPU51は、N番目の籠タグ100が読み取られた通信領域およびそれよりも前方の通信領域で読み取られた籠タグ100のタグデータ数B(=N)と、ステップS207の処理にてメモリ52に記憶した数値Cとを前記した数式1に代入し、待ち時間TNを算出する(ステップS207)。
【0043】
そして、CPU51は、カウンタNの値がステップS204の処理にてメモリ52に記憶したNmaxに達したか否かを判定する(ステップS208)。カウンタNの値がNmaxに達していない場合(ステップS208のNo)、CPU51は、ステップS207の処理にて算出した待ち時間TNを、N番目に並ぶ客の会計待ち時間としてディスプレイ31に表示する(ステップS209)。その後、CPU51は、カウンタNの値を1つインクリメントし(ステップS210)、ステップS206の処理に戻る。
【0044】
やがて、ステップS206〜S210の処理を繰り返すうちにカウンタNの値がNmaxに達すると(ステップS208のYes)、CPU51は、直前のステップS207の処理にて算出した待ち時間TNをチェックアウトレーンR1全体の待ち時間としてディスプレイ31に表示する(ステップS211)。以上でチェックアウトレーンR1に対する一連の処理が完了する。
【0045】
続いてCPU51は、未処理のチェックアウトレーンがあるか否かを判定する(ステップS212)。今、チェックアウトレーンR1に対する処理が完了したのみである。したがって、CPU51は、未処理のチェックアウトレーンがあると判定し(ステップS212のYes)、ステップS201の処理に戻ってチェックアウトレーンR2のアンテナA21〜A26,リーダ装置62,ディスプレイ32を対象としたステップS201〜S211の処理を実行する。その結果、ディスプレイ32にチェックアウトレーンR2に並ぶ各客の会計待ち時間および同レーンR2全体の会計待ち時間が表示される。さらにチェックアウトレーンR2に対する処理が完了した後においても未処理のチェックアウトレーンがあると判定し(ステップS212のYes)、ステップS201の処理に戻ってチェックアウトレーンR3のアンテナA31〜A36,リーダ装置63,ディスプレイ33を対象としたステップS201〜S211の処理を実行する。その結果、ディスプレイ33にチェックアウトレーンR3に並ぶ各客の会計待ち時間および同レーンR3全体の会計待ち時間が表示される。
【0046】
このようにして各チェックアウトレーンR1〜R3に対する処理が完了すると、CPU51は、未処理のチェックアウトレーンがないと判定し(ステップS212のNo)、一連の処理を終了する。
【0047】
上記処理の具体例を図8,図9を用いて説明する。なお、この具体例においては数式1の予測値Bpを20秒とし、予測値Cpを10秒として説明する。
図8は、チェックアウトレーンR1に対するステップS202,S205の処理にて読み取られた籠タグ100,商品タグ200が所在する通信領域を示す一例であり、通信領域S11にて籠タグ100が1個と商品タグ200が3個読み取られ、通信領域S12にて籠タグ100が1個と商品タグ200が2個読み取られ、通信領域S13にて籠タグ100が1個と商品タグ200が5個読み取られた状態を示している。この場合、前方から順に通信領域S11で読み取られた籠タグ100は会計中の客の買い物籠4に付されたものであり、通信領域S12で読み取られた籠タグ100は1番目に並ぶ客の買い物籠4に付されたものであり、通信領域S13で読み取られた籠タグ100は2番目に並ぶ客の買い物籠4に付されたものとなる。
【0048】
この例においてカウンタNの値が「1」のとき、チェックアウトレーンR1の前方から1番目の籠タグ100とともに通信領域S11で読み取られた商品タグ200のタグデータ数が計数され(ステップS206)、その計数結果である数値C(=3)と数値B(=N=1)とを用いて待ち時間T1が50秒(1×20+3×10)と算出される(ステップS207)。この待ち時間T1は1番目の客の待ち時間として、図9に示した「1番目のお客様約50秒」のようにディスプレイ31に表示される(ステップS209)。
【0049】
また、カウンタNの値が「2」の場合、チェックアウトレーンR1の前方から2番目の籠タグ100とともに通信領域S12で読み取られた商品タグ200と、その前方である通信領域S11で読み取られた商品タグ200のタグデータ数が計数され(ステップS206)、その計数結果である数値C(=5)と数値B(=N=2)とを用いて待ち時間T2が1分30秒(2×20+5×10)と算出される(ステップS207)。この待ち時間T2は2番目の客の待ち時間として、図9に示した「2番目のお客様約1分30秒」のようにディスプレイ31に表示される(ステップS209)。
【0050】
また、カウンタNの値が「3」の場合、チェックアウトレーンR1の前方から3番目の籠タグ100とともに通信領域S13で読み取られた商品タグ200と、その前方である通信領域S11,S12で読み取られた商品タグ200のタグデータ数が計数され(ステップS206)、その計数結果である数値C(=10)と数値B(=N=3)とを用いて待ち時間T3が2分40秒(3×20+10×10)と算出される(ステップS207)。このとき、カウンタNの値がNmax(=3)に達しているので、待ち時間T3はチェックアウトレーンR1全体の待ち時間として、図9に示した「会計待ち時間約2分40秒」のようにディスプレイ31に表示される(ステップS209)。
【0051】
さらに、チェックアウトレーンR2,R3についてステップS201〜S211が実行された結果、図9に示したようにチェックアウトレーンR2,R3全体の会計待ち時間および客毎の会計待ち時間がそれぞれディスプレイ32,33に表示される。
【0052】
以上説明したように、本実施形態における待ち時間報知システムは、各チェックアウトレーンR1〜R3全体の会計待ち時間だけでなく、各レーンR1〜R3に並ぶ客毎にその待ち時間を算出し、報知する。このような構成であれば、各チェックアウトレーンR1〜R3に並ぶ客が会計を受けるまでにどの程度の時間を要するかを知ることができ、待ち時間が多い場合には他のレーンに移動するなどの対応が可能となる。
【0053】
なお、各チェックアウトレーンR1〜R3全体の待ち時間も報知されるため、第1の実施形態と同様の効果を奏することはいうまでもない。
【0054】
(変形例)
上記各実施形態に開示された構成は、実施段階において各構成要素を適宜変形して具体化できる。具体的な変形例としては、例えば次のようなものがある。
【0055】
[1]上記各実施形態では、籠タグ100の数および商品タグ200の数のみを用いて会計待ち時間を算出する場合を例示した。しかしながら、籠タグ100の数および商品タグ200の数に加え、他の要素を用いて会計待ち時間を算出するようにしてもよい。他の要素としては、POS端末21〜23に同時に責任者登録されたキャッシャの人数、日時、キャッシャの熟練度(例えば経験年数)等、種々のものを採用し得る。
【0056】
[2]上記各実施形態では、各チェックアウトレーンR1〜R3の床下に籠タグ100および商品タグ200を読み取るためのアンテナが設けられている場合を例示した。しかしながら、アンテナは天井に設けられていてもよいし、各チェックアウトレーンの左右側方に設けられていてもよい。
【0057】
[3]上記各実施形態では、所定周期で図3,図7に示した処理が実行されるとした。しかしながら、外部から制御装置5に何らかのトリガが入力されたときに、各処理が実行されるようにしてもよい。例えば、各POS端末21〜23と制御装置5とを通信接続し、各POS端末21〜23にて会計の締めが宣言された際に各POS端末21〜23から制御装置5に上記トリガを入力させる。そして、制御装置5に上記トリガが入力されたとき、そのトリガの出力元であるPOS端末が配置されたチェックアウトレーンを対象として図3のステップS101〜S107の処理,あるいは図7のステップS201〜S211の処理を実行させる。このようにすれば、各チェックアウトレーン上の客数が変化する適確なタイミングでディスプレイ31〜33の表示が更新される。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0059】
R1〜R3…チェックアウトレーン、S1〜S3…通信領域、A1〜A3…アンテナ、1〜3…レジカウンタ、4…買い物籠、5…制御装置、11〜13…スキャナ装置、21〜23…POS端末、31〜33…ディスプレイ、51…CPU、52…メモリ、61〜63…リーダ装置、100…籠タグ、200…商品タグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チェックアウトレーンに並んだ客の買い物籠に付された第1無線タグおよびその客の買い上げ商品に付された第2無線タグを、無線通信により読み取る無線読取手段と、
前記無線読取手段によって読み取られた前記第1無線タグの数および前記第2無線タグの数に基づいて前記チェックアウトレーンでの会計待ち時間を算出する算出手段と、
前記算出手段によって算出された会計待ち時間を報知する報知手段と、
を備えていることを特徴とする待ち時間報知システム。
【請求項2】
前記無線読取手段は、
前記チェックアウトレーン上に電波を放射するアンテナと、
前記アンテナに電波を放射させ、前記チェックアウトレーン上に所在する前記第1無線タグおよび前記第2無線タグを読み取るリーダ装置と、
で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の待ち時間報知システム。
【請求項3】
前記算出手段は、前記無線読取手段によって読取られた前記第1無線タグの数に予め定められた客1人当たりの精算予測時間を乗じて得られる時間と、前記無線読取手段によって読取られた前記第2無線タグの数に予め定められた1商品当たりの登録予測時間を乗じて得られる時間とを加算して前記会計待ち時間を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の待ち時間報知システム。
【請求項4】
チェックアウトレーンに並んだ客の買い物籠に付された第1無線タグおよびその客の買い上げ商品に付された第2無線タグを、前記チェックアウトレーンの所定領域毎に、無線通信により読み取る無線読取手段と、
前記無線読取手段によって読み取られた前記第1無線タグの数および前記第2無線タグの数と、これら各無線タグが読み取られた領域の位置関係とに基づいて、前記チェックアウトレーンに並ぶ各客の会計待ち時間を算出する算出手段と、
前記算出手段によって算出された各客の会計待ち時間を報知する報知手段と、
を備えていることを特徴とする待ち時間報知システム。
【請求項5】
前記無線読取手段は、
前記チェックアウトレーンの前記各領域毎に設けられ、対応する前記領域に電波を放射する複数のアンテナと、
前記各アンテナから選択的に電波を放射させ、前記各領域に所在する前記第1無線タグおよび前記第2無線タグを読み取るリーダ装置と、
で構成されていることを特徴とする請求項4に記載の待ち時間報知システム。
【請求項6】
コンピュータに、
無線通信により無線タグを読み取る無線読取手段に、チェックアウトレーンに並んだ客の買い物籠に付された第1無線タグおよびその客の買い上げ商品に付された第2無線タグを読み取らせる機能と、
前記無線読取手段によって読み取られた前記第1無線タグの数および前記第2無線タグの数に基づいて前記チェックアウトレーンでの会計待ち時間を算出する機能と、
算出された前記会計待ち時間を報知手段に報知させる機能と、
を実現させるための制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−53763(P2012−53763A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196942(P2010−196942)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】