説明

後端渦抵抗低減装置

【課題】 より効果的かつ実用的な後端渦抵抗低減装置を提供する。
【解決手段】 流体中を進行する物体の後端に両表面が進行方向に平行となるように設けられた平板(圧力渦抑制板)からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後端渦抵抗低減装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物体が所定の流体(例えば水や空気)に対して相対的に移動する際に物体の後端に渦(後端渦)が発生し、この後端渦に起因して物体と媒質との間に相対移動に伴う渦抵抗が発生することが知られている。そして、このような渦抵抗を低減するための従来の技術は、物体の全体形状を流線形化することによって流体における後端渦の発生を抑制するものである。なお、例えば以下の公知文献には、上述した渦抵抗を低減する技術の一例が開示されている。
【非特許文献1】「FLUID-DYNAMIC DRAG」S.F. HOERNER著,1965年発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、渦抵抗を低減するための従来の技術は、後端渦の発生メカニズムに対する十分な理論検討の上に成り立つものではなく、実際に渦抵抗を十分に低減できるものではない。したがって、後端渦の発生メカニズムに関する十分な理論検討に基づくより効果的かつ実用的な渦抵抗の低減技術の開発が切望されている。
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑みたものであり、より効果的かつ実用的な後端渦抵抗低減装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明では、「防衛庁技術研究本部技報第6814号(平成14年12月)」に掲載された論文『積分型直接シミュレーション解法による乱流境界層解析の研究(第1報)、(初期乱れ圧力分布解析式の構築)』に示す学術的見解を基礎として、以下に説明するような解決手段を採用する。なお、この論文は、本願の発明者の一人による研究成果である。
【0006】
上記論文では、大型計算機を用いた乱流境界層のシミュレーション結果に対する理論的考察として、乱流境界層内で発生する流体の流速の乱れ(この流速の乱れは渦状であり、以後、流速渦という。)は、圧力の渦構造(以後、圧力渦という。)に起因し、当該圧力渦に沿うように巻き上げられて生成されるものであり、この圧力渦は、シミュレーション結果では中心軸が3次元的に種々の方向を有する等圧力面の構造として示されているが、局所的には直線的にある2次元方向を中心軸とする構造を有しており、この局所的に2次元方向を中心軸とする圧力渦が連続することによって上記シミュレーション結果において3次元的方向の等圧力面の構造が示されている、という学術的見解を示している。
【0007】
本発明では、このような学術的見解を基礎として、局所的に3次元的方向の圧力渦は比較的に不安定であるのに対して局所的に2次元方向の圧力渦は比較的に安定であるため流体中に定常的に存在し易いという考えを採用する。よって、物体の表面で発生した2次元方向の多数の圧力渦は、物体の形状に応じて物体表面に形成される3次元的な形状の乱流境界層内に分布するが、これをそのまま放置せず、2次元方向の圧力渦の3次元的発達を2次元の状態のままで抑制することにより流速渦の発生を効果的に抑制することが可能であるという知見に至った。
【0008】
そして、本発明では、流体中を進行する物体の後端に両表面が進行方向に平行となるように設けられた平板(圧力渦抑制板)を設ける、という解決手段を採用する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、物体によって乱流境界層中に局所的に多数発生した圧力渦は後方に設けられた圧力渦抑制板の各々の表面上を順次後方に移動して圧力渦抑制板の後縁部に差し掛かるが、当該各々の表面上における圧力渦は回転方向が互いに逆方向であり、かつ中心軸が互いに平行な関係となる。したがって、このような圧力渦は後縁部において会合することによって圧力が弱められ、この結果圧力渦に起因して圧力渦抑制板の後縁部に発生する流速渦つまり後端渦の発生が抑制され、以って渦抵抗が低減される。
例えば、物体が対称形状で、かつ圧力渦抑制板がこのような対称形状の物体の後方中心位置に設けた場合には、圧力渦抑制板の各表面における圧力渦は大きさが等しくなるので、圧力渦抑制板の後縁部において会合することによって圧力が効果的に弱められ、よって渦抵抗が効果的に低減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の最良の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態の構成を示す斜視図である。この図に示すように、本実施形態は、ポッド式推進装置に本発明を適用したものである。すなわち、船体1の船底にはスラット2を介してポッド式推進装置3(物体)が取り付けられており、船体1は没水状態にあるポッド式推進装置3が発生する推力によって水上を進行方向(x軸方向)に航行する。なお、ポッド式推進装置3に形成される流体の流れ方向は、上記船体1すなわちポッド式推進装置3の進行方向(x軸方向)に対して反対方向である。
【0011】
ポッド式推進装置3は、ポッド本体3a、プロペラ3b、主圧力渦抑制板3c及び副圧力渦抑制板3d,3eから構成されている。このような構成要件のうち、主圧力渦抑制板3c及び副圧力渦抑制板3d,3eは、本実施形態に係る後端渦抵抗低減装置を構成している。ポッド本体3aは、進行方向(x軸方向)に直交する面(y−z面)における断面形状が円形に形成されており、先端部にプロペラ3bが設けられ、また後端部には主圧力渦抑制板3cが設けられている。プロペラ3bは、ポッド本体3a内に収容された動力源によって進行方向(x軸方向)に直交する面(y−z面)を回転面として回転することにより推力を発生するものである。
【0012】
主圧力渦抑制板3cは、図示するようにポッド本体3aの後端に当該ポッド本体3aのx軸に平行な中心軸線上かつ垂直姿勢で連続的に設けられた平板である。つまり、この主圧力渦抑制板3cは、両表面3f,3gがx−z面に平行となるように姿勢設定された状態でポッド本体3aの後端部かつ中心軸線上に設けられている。
【0013】
船体1の進行によって主圧力渦抑制板3cの両表面3f,3g上には所定厚の乱流境界層が形成されるが、当該両表面3f,3gは、この乱流境界層内に発生する圧力渦のx−z面内における2次元方向(第1の2次元方向)に対して平行な関係にある。また、この主圧力渦抑制板3cは、直線状後縁部3hがz軸と平行な直線状となるように形状設定されていると共に、当該直線状後縁部3hが周囲の流体中に形成される剥離域の外側に位置するように形状設定(長さ設定)されている。
【0014】
各副圧力渦抑制板3d,3eは、図示するように同一形状に形成された1対の平板であり、上記主圧力渦抑制板3cに直交する姿勢で当該主圧力渦抑制板3cの両端部(上端部及び下端部)に設けられている。つまり、各副圧力渦抑制板3d,3eは、両表面3i,3j,3m,3nがx−y面内における2次元方向(第2の2次元方向)に対して平行となる姿勢で主圧力渦抑制板3cの上端部と下端部とに設けられている。また、各副圧力渦抑制板3d,3eの形状は、進行方向(x軸方向)に対して後方に傾斜した2つの直線状前端部と、進行方向(x軸方向)に平行な2つの直線状側端部と、進行方向(x軸方向)に対して直交した直線状後縁部3k,3pとから各々構成された五角形である。
【0015】
また、各副圧力渦抑制板3d,3eは、進行方向(x軸方向)における位置関係として上記各直線状後縁部3k,3pが上記主圧力渦抑制板3cの直線状後縁部3hよりも後方に位置するように主圧力渦抑制板3cの両端部に設けられている。つまり、進行方向(x軸方向)における各副圧力渦抑制板3d,3eの各直線状後縁部3k,3pと主圧力渦抑制板3cの直線状後縁部3hとの位置には、図示するように距離D(D>0)が設けられており、この距離Dは、例えば乱流境界層の厚さの2倍以上となるように設定されている。
【0016】
さらに、本後端渦抵抗低減装置では、各副圧力渦抑制板3d,3eにおける各直線状後縁部3k,3pの長さの総和は、主圧力渦抑制板3cの直線状後縁部3hの長さに流体の流れ方向に直交する面(y−z面)におけるポッド本体3aのアスペクト比を乗じた寸法に設定されている。このアスペクト比は、ポッド本体3aにおけるy方向の寸法とz方向の寸法との比である。
【0017】
本実施形態ではポッド本体3aのy−z面における断面形状は上述したように円形(対称形状)であり、よって上記アスペクト比は「1」である。また、本実施形態では2枚の副圧力渦抑制板3d,3eは同一形状であり、よって各直線状後縁部3k,3pの長さは等しいので、副圧力渦抑制板3d,3eにおける各直線状後縁部3k,3pの長さは、主圧力渦抑制板3cの直線状後縁部3hの長さの半分になる。
【0018】
次に、このように構成された本実施形態に係る後端渦抵抗低減装置の作用について図2に示す概念図を参照して詳しく説明する。なお、この図2は、ポッド式推進装置3の表面に形成される圧力渦を示す模式図であり、(a)は斜視図、(b)は一部正面図である。
【0019】
ポッド式推進装置3は、プロペラ3bが回転することによって発生する推力によって船体1と共に進行方向(x軸方向)に航行するが、水中にあるポッド本体3aの表面上、主圧力渦抑制板3cの両表面3f,3g上及び副圧力渦抑制板3d,3eの両表面3i,3j,3m,3n上には所定厚の乱流境界層が形成される。なお、この乱流境界層の厚さは、周知のように航行速度や水の粘性係数等の諸条件に基づいて予め見積もることが可能である。
【0020】
ここで、進行方向において主圧力渦抑制板3c及び副圧力渦抑制板3d,3eよりも先行するポッド本体3aの表面の乱流境界層中には、図2に示するように2次元方向(断面が円形のポッド本体3aの接線方向)を中心軸とする圧力渦eがポッド本体3aを取り囲むように局所的に多数発生する。このポッド本体3aの表面上に当該ポッド本体3aを取り囲むように発生した多数の圧力渦eは、ポッド本体3aが進行方向に進行するので乱流境界層中を後方(流体の流れ方向)に順次移動する。
【0021】
そして、これら圧力渦eは、主圧力渦抑制板3cに到達するが、図2に示すようにポッド本体3aの後方中央に連続して設けられた主圧力渦抑制板3cの各々の表面3f,3g上を順次後方に移動する。
【0022】
ここで、図示するようにポッド本体3aの後端部は剥離が極力発生しないように滑らかに絞られた形状になっているので、上記多数の圧力渦eのうち、上側及び下側の圧力渦eは、中央部の圧力渦eよりも先に主圧力渦抑制板3cに到達する。すなわち、上側及び下側の圧力渦eが主圧力渦抑制板3cに到達した時点で、中央部の圧力渦eはポッド本体3aの表面上にある。この関係で、全ての圧力渦eが主圧力渦抑制板3cに到達した時点では、図示するように上側及び下側の圧力渦eは中央部の圧力渦eよりも流体の流れ方向に先行した状態となる。
【0023】
そして、このように流体の流れ方向において先行する上側及び下側の圧力渦eは副圧力渦抑制板3d,3eに到達し、当該副圧力渦抑制板3d,3eに絡み付くように各表面3i,3j,3m,3n上を流体の流れ方向に移動する。上記上側及び下側の圧力渦eは、主圧力渦抑制板3cの上下のエッジ近傍を流体の流れ方向に移動するものであり不安定であるが、副圧力渦抑制板3d,3eによって安定化されて流体の流れ方向に移動する。
【0024】
ここで、主圧力渦抑制板3cの両表面3f,3g上を流体の流れ方向に移動する各々の圧力渦eは回転方向が互いに逆の関係になる。また、副圧力渦抑制板3dの両表面3i,3j上を流体の流れ方向に移動する各々の圧力渦eも回転方向が互いに逆の関係であり、副圧力渦抑制板3eの両表面3m,3n上を流体の流れ方向に移動する各々の圧力渦eも回転方向が互いに逆の関係である。
【0025】
また、副圧力渦抑制板3d,3eが存在することによって上側及び下側の圧力渦eは移動速度が減速されるので、主圧力渦抑制板3cの両表面3f,3g上を移動する各々の圧力渦eは、図示するように流体の流れ方向において同位置となると共に中心軸が第1の2次元方向を向く状態となり、この状態において主圧力渦抑制板3cの直線状後縁部3hで会合する。そして、このように主圧力渦抑制板3cの両表面3f,3g上を移動してきた各々の圧力渦eは、回転方向が互いに逆の関係にあるので、上記会合によって圧力が中和・低下される。この結果、圧力渦eに起因して発生する流速渦つまり第1の2次元方向を中心軸とする水の流れの渦の発生が抑制されて、以って直線状後縁部3hの後方に発生する渦抵抗が低減される。
【0026】
一方、副圧力渦抑制板3d,3eの両表面3i,3j,3m,3n上を移動する各々の圧力渦eは、図示するように流体の流れ方向において同位置となると共に中心軸が第2の2次元方向を向く状態となり、この状態において各副圧力渦抑制板3d,3eの直線状後縁部3k,3pにおいて会合する。副圧力渦抑制板3dの両表面3i,3j上を移動してきた各々の圧力渦eは回転方向が互いに逆の関係にあり、また副圧力渦抑制板3eの両表面3m,3n上を移動してきた各々の圧力渦eも回転方向が互いに逆の関係にあるので、各直線状後縁部3k,3pにおいて会合する圧力渦eは、圧力が中和・低下される。この結果、第2の2次元方向の圧力渦eに起因して発生する流速渦つまり第2の2次元方向を中心軸とする水の流れの渦の発生が抑制されて、よって直線状後縁部3k,3pの後方に発生する渦抵抗が低減される。
【0027】
ここで、副圧力渦抑制板3d,3eの直線状後縁部3k,3pは、上述した主圧力渦抑制板3cの直線状後縁部3hよりも流体の流れ方向において後方に設けられているので、副圧力渦抑制板3d,3eの直線状後縁部3k,3pにおける第2の2次元方向の圧力渦の会合は、主圧力渦抑制板3cの直線状後縁部3hにおける第1の2次元方向の圧力渦の会合とは流体の流れ方向において異なる場所で発生することになる。
【0028】
したがって、流れ方向における同一位置に副圧力渦抑制板3d,3eの直線状後縁部3k,3pと主圧力渦抑制板3cの直線状後縁部3hを設けた場合、つまり第1の2次元方向の圧力渦eの会合と第2の2次元方向の圧力渦eの会合とを流体の流れ方向において同一場所で発生させた場合に比較して、本実施形態では第1の2次元方向の圧力渦eと第2の2次元方向の圧力渦eとをそれぞれ別の場所で効果的に打ち消すことができ、よって渦抵抗を効果的に低減することができる。
【0029】
また、本実施形態では、副圧力渦抑制板3d,3eにおける各直線状後縁部3k,3pの長さは主圧力渦抑制板3cの直線状後縁部3hの長さの半分に設定されている。これは、ポッド本体3aのアスペクト比が「1」に設定されているので、第1の2次元方向の圧力渦eと第2の2次元方向の圧力渦eとが同等に発生することを念頭に置いたものである。これによって、主圧力渦抑制板3cの直線状後縁部3hにおける第1の2次元方向の圧力渦eの会合と各副圧力渦抑制板3d,3eの直線状後縁部3k,3pにおける第2の2次元方向の圧力渦eの会合とを同程度に発生させることが可能であり、よって第1の2次元方向の流速渦と第2の2次元方向の流速渦とを均等に抑制することが可能でる。
【0030】
続いて、図3は上記主圧力渦抑制板3cの変形例を示す正面図である。
図3(a)に示す主圧力渦抑制板3c1は、中央が流体の流れ方向と逆の方向つまり進行方向(x軸方向)に緩やかに窪む形状の曲線状後縁部3h1を有する。一方、図3(b)に示す主圧力渦抑制板3c2は、中央が流体の流れ方向に緩やかに突出する形状の曲線状後縁部3h2を有する。このような主圧力渦抑制板3c1、3c2では、曲線状後縁部3h1,3h2の長さが上述した主圧力渦抑制板3cの直線状後縁部3hの長さよりも長くなるので曲線状後縁部3h1,3h2における圧力渦の会合がより広範囲で行われ直線状後縁部3hの場合よりも促進して渦抵抗の低減効果が大きくなる。
【0031】
図4は、上記副圧力渦抑制板3d,3eの第1の変形例を示す斜視図である。
図4(a)に示す各副圧力渦抑制板3d1,3e1は、5角形に形成された上記実施形態の副圧力渦抑制板3d,3eを三角形に形状変更し、かつ各頂点に丸みを付与した形状に設定されている。一方、図4(b)は、上記各副圧力渦抑制板3d1,3e1の設置位置を主圧力渦抑制板3cの両端部から上下方向における主圧力渦抑制板3cの途中位置に変更した状態を示している。このような副圧力渦抑制板3d1,3e1及び各副圧力渦抑制板3d1,3e1の設置位置によっても、第1の2次元方向の圧力渦と第2の2次元方向の圧力渦とをそれぞれ別個に打ち消すことができるので、上記実施形態の副圧力渦抑制板3d,3eと同様の効果を奏することができる。
【0032】
図5は、上記副圧力渦抑制板3d,3eの第2の変形例を示す正面図である。
この図5に示す副圧力渦抑制板3d2,3e2は、外開き状態に湾曲したものであり、このように湾曲させることによって内側に位置する表面3j2,3m2における水の流速を増速させ、以って副圧力渦抑制板3d2,3e2の両表面3i2,3j2,3m2,3n2における水の流速を同一化させるものである。副圧力渦抑制板3d2,3e2において内側に位置する表面3j2,3m2を流れる水の流速は、主圧力渦抑制板3cの表面3f及び表面3gとの摩擦によって外側に位置する表面3i2,3n2を流れる水の流速よりも小さくなるので、副圧力渦抑制板3d2,3e2を外開き状態に湾曲させることによってこの流速差を同一化させることができる。
【0033】
そして、このように両表面3i2,3j2,3m2,3n2における水の流速を同一化することにより当該両表面3i2,3j2,3m2,3n2上に発生する圧力渦の圧力を同一化することが可能となり、よって直線状後縁部3k2,3p2における圧力渦を効果的に減圧することが可能である。なお、図4に示す主圧力渦抑制板3c3は、副圧力渦抑制板3d2,3e2の湾曲状態に応じて上端部及び下端部が湾曲した形状に形成されている。
【0034】
図6は、上記副圧力渦抑制板3d,3eの第3の変形例を示す正面図である。
本第3の変形例に係る副圧力渦抑制板3d3,3e3,3d4,3e4は、三角形に形状設定されており、主圧力渦抑制板3cの表面3f及び表面3gに離間して設けられている。これら副圧力渦抑制板3d3,3e3,3d4,3e4は、進行方向(x軸方向)に対して直交した直線状後縁部3k3,3p3,3k4,3p4を有している。
【0035】
また、これら直線状後縁部3k3,3p3,3k4,3p4の進行方向(x軸方向)における位置は、上述した実施形態や変形例の場合とは異なり、主圧力渦抑制板3cの直線状後縁部3hよりも前方に位置している。このような副圧力渦抑制板3d3,3e3,3d4,3e4によっても、第1の2次元方向の圧力渦と第2の2次元方向の圧力渦とをそれぞれ別個に打ち消すことができるので、上述した副圧力渦抑制板3d,3eと同等の作用・効果を奏する。
【0036】
なお、本発明については、上記実施形態や変形例に限定されることなく、さらに以下のような変形例も考えられる。
(1)上記実施形態では、ポッド本体3aのアスペクト比が「1」に設定されているので、主圧力渦抑制板3cと副圧力渦抑制板3d,3eの向きを入れ替えても良い。すなわち、主圧力渦抑制板3cをx−y面に平行に設け、副圧力渦抑制板3d,3eをこれと直交するx−z面に平行に設けても良い。
【0037】
(2)また、例えばポッド本体3aの断面形状が上下方向(z軸方向)の寸法に対して左右方向(y軸方向)の寸法が極端に短い形状の楕円形の場合には、第1の2次元方向の圧力渦に対する第2の2次元方向の圧力渦の発生割合は極端に低くなるので、副圧力渦抑制板を削除することが考えられる。また、第2の2次元方向の圧力渦を減圧する必要がない場合にも、副圧力渦抑制板を削除することが考えられる。
【0038】
(3)一方、ポッド本体3aの断面形状が上下方向(z軸方向)の寸法に対して左右方向(y軸方向)の寸法が極端に長い形状の楕円形の場合には、x−y面に平行な表面を有する主圧力渦抑制板のみを設けるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態に係わる後端渦抵抗低減装置の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態においてポッド式推進装置3の表面に形成される圧力渦を示す模式図である。
【図3】本発明の実施形態における主圧力渦抑制板3cの変形例を示す正面図である。
【図4】本発明の実施形態における副圧力渦抑制板3d,3eの第1の変形例を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施形態における副圧力渦抑制板3d,3eの第2の変形例を示す正面図である。
【図6】本発明の実施形態における副圧力渦抑制板3d,3eの第3の変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
1…船体、2…スラット、3…ポッド式推進装置(物体)、3a…ポッド本体、3b…プロペラ、3c…主圧力渦抑制板、3d,3e…副圧力渦抑制板、e…圧力渦


【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体中を進行する物体の後端に両表面が進行方向に平行となるように設けられた平板からなる、ことを特徴とする後端渦抵抗低減装置。
【請求項2】
平板は、進行方向に平行な主平板と、進行方向に平行かつ前記主平板に直交する副平板とからなることを特徴とする請求項1記載の後端渦抵抗低減装置。
【請求項3】
主平板の後縁部と副平板の後縁部とは流体の流れ方向において異なる位置に設定されることを特徴とする請求項2記載の後端渦抵抗低減装置。
【請求項4】
物体によって流体中に剥離域が形成される場合には、主平板は自らの後縁部が物体によって周囲の流体中に形成される剥離域の外側に位置するように設けられることを特徴とする請求項2または3記載の後端渦抵抗低減装置。
【請求項5】
副平板は主平板の両端近傍に同形状のものが1対設けられることを特徴とする請求項2〜3いずれかに記載の後端渦抵抗低減装置。
【請求項6】
1対の副平板は外開き状態に湾曲するあるいは平行であることを特徴とする請求項5記載の後端渦抵抗低減装置。
【請求項7】
副平板における後縁部の長さは、主平板における後縁部の長さに流体の流れ方向に直交する面における物体のアスペクト比を乗じた寸法に略等しい、ことを特徴とする請求項2〜6いずれかに記載の後端渦抵抗低減装置。
【請求項8】
平板及び/あるいは主平板の後縁部は、中央が流体の流れ方向に緩やかに突出するあるいは中央が流体の流れ方向とは逆方向に緩やかに窪む形状に設定される、ことを特徴とする請求項1〜7いずれかに記載の後端渦抵抗低減装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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