説明

後頭頚椎固定システム

(a)頭蓋にプレートを固定するのに適した骨留め具を受容するための1つ又は複数の孔を有するプレートと、(b)前記プレートの対向する両側面から外側に向かって延びる2本のレールと、(c)それぞれ本体部及び受容部を含む2つのロッドレセプタクルであって、各レールの少なくとも一部及び前記ロッド及び前記ねじ山が前記ロッドレセプタクルの内部に収容されるように、前記本体部は前記レールの一方がスライド通過する通路を画定し、前記受容部はロッドを受容するための空洞と、止めねじと螺合するための前記空洞上部のねじ山とを画定するロッドレセプタクルと、を含む後頭プレートシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照することにより本願の一部に含まれる、2005年9月30日提出の米国仮出願第60/722310号に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明は脊椎安定化システムに関する。より詳しく言うと、本発明は、後頭プレートシステムであって、患者の後頭部に頚椎固定システムを固定するものに関する。
【背景技術】
【0003】
後頭頚椎固定システムは、頚部に対する頭蓋底(又は後頭部)の安定化をもたらす。効果的に機能するよう、後頭頚椎固定システムは多くの設計基準を満たさなければならない。例えば、この種のシステムは非常に強くかつ剛でなければならないが、低侵襲でかつ丈が低くなければならない。また、この種のシステムは、組付け、移植及び維持が比較的容易でなければならない。これらの設計基準を満たすよう脊柱の腰椎部及び胸椎部のための脊椎システムは開発されてきたが、後頭頚椎部は、更に小さく、識別して回避される必要のある神経や動脈の集中度が高いため、移植にとって更なる困難をもたらしている。更に、後頭部にはインプラントを覆う筋肉量がより少ない。
【0004】
後頭頚椎固定システムは、一般的に、後頭プレート(頭蓋後頭部に取り付けられる)と、脊椎両側のロッド(ねじ又はフックで椎骨に固着される)と、ロッドレセプタクル(後頭プレートにロッドを装着する)とを含む。本明細書において特に関心があるのは後頭プレート及びロッドレセプタクルであり、本明細書ではまとめて後頭プレートシステムと称する。近年、プレート及びロッド要素が装着時のより大きな柔軟性を許容するために分離された、後頭プレートシステムが開発されている。これにより、この種の後頭プレートシステムは、ロッドを頭蓋後頭部に固着する機能を果たす一方、通常は何らかの方法でロッドレセプタクルを締め付けることでシステムが「固定」される前に、プレートに対するロッドの調節を許容する。
【0005】
例えば、US 6,477,790は、ロッドをプレートに固着するためのプレート・ロッド連結機構を開示する。この機構は、ロッドを受容するスロットを備えたボルトと、ボルトに適合するロッド支持台と、ナット(ロッドを支持台に作用させてプレートに押し込むべくボルトに締め込まれる)とを含む。ボルトの座部は、深座ぐりされたプレート孔内で自由に回転するよう丸められる。支持台は、ボルトの座部の上に置かれかつロッドを受容するための丸みを帯びた溝を有する厚い環状の座金である。装着されると、プレートはボルトの座部と支持台との間に挟まれる。
【0006】
'790特許に開示されるような近年開発されたシステムは柔軟性/構成可能性をもたらすが、本出願人らは、これらのシステムはボルトがスロット内に在るために「接触領域」が小さくなる傾向があると認識している。本明細書で使用する通り、「接触領域」という用語は、ロッドとプレートとの間の界面のことを言う。この界面は、後頭プレートシステムが所定の位置に固定されると圧縮力を受ける。一般に、上記システムが一旦締め付けられるとロッドとプレートとの間で相対移動が生じないよう、ロッドとプレートとの間には−直接又はインサート/座金を介して−十分な接触領域が存在しなければならない。'790特許のシステムでは、プレートとロッドとが交わる部分は、ボルトが存する孔の縁の部分だけに限定される。この限定された接触領域を補うため、'790特許のシステムは、デバイスの接触領域を相当拡大して移動に抗するのに十分なものとするよう、支持基板を使用している。
【0007】
'790特許の支持基板はロッドと後頭プレートとの間の接触領域を増しはするが、その使用には多くの短所が付随する。例えば、支持基板の使用は後頭プレートシステムに更に別の要素を付け加えることになり、このことは翻ってシステムの複雑性を高め、その装着を面倒にする。更に、支持基板はボルトを取り囲むのでシステムの体積が増大し、これは後頭スペースが制限されているゆえに問題である。
【特許文献1】US 6,477,790
【特許文献2】US 10/124,945
【特許文献3】US 10/369,158
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、ロッドをプレートにしっかり固定するが、同時にかさばりと複雑性を回避する後頭プレートシステムに対するニーズが存在する。本発明はとりわけこのニーズを満たすものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記脊椎ロッドと前記プレートとの間にこれら二者を強く固定する適切な接触領域を有する一方で、外側ナット及び支持基板の複雑性、及びかさばりを回避する後頭プレートシステムを提供する。そのため、本発明の後頭プレートシステムは、前記ロッドと前記後頭プレートとの間の前記接触領域がロッドレセプタクルの範囲内にあるように構成される。つまり、留め具が前記後頭プレートの孔内をスライドする(この場合、前記接触領域は前記留め具周りの孔縁の部分だけに限定される)のではなく、本発明は前記後頭プレートのレールが前記ロッドレセプタクル内をスライドする後頭プレートシステムを提供する。
【0010】
この構成は多くの利点をもたらす。第一に、前記留め具周りの前記孔の前記縁のみが使用される従来の技術とは異なり、前記レールの幅全体が接触領域として使用される。これは支持基板又は接触領域を増すための類似の要素の必要性をなくし、これにより、本発明の前記後頭板システムを簡素化すると共にその大きさを最小化する。
【0011】
更に、前記レールは前記ボルト用の孔を含む必要がないため、より細身のレールを使用することができる。これは後頭の限定されたスペースにおいて重大な、前記後頭板システムのフォームファクタを減少させるという利点を有する。更に、レールの大きさを減少させることにより、骨ねじ用の付加的な孔を備えた、より広い面を有する、より大きな後頭プレートを使用することができる。付加的な骨ねじを備えたより大きな後頭プレートは、頭蓋に対する更に堅牢な結合に匹敵する。
【0012】
最後に、前記ロッドと前記後頭プレートとの間の前記接触領域は、前記止めねじの直ぐ下に配置される。これは前記ロッドレセプタクルの範囲内における要素間の直接の接触をもたらし、これにより、前記止めねじによって与えられる圧縮力を最適化し、従来の技術において使用された外側ナットの必要性をなくする。これは、フォームファクタを小さいままにするという利点だけでなく、前記プレートに対して前記ロッドを固定保持する前記止めねじの力を最適化するという利点も有している。
従って、本発明の一態様は、前記プレートと前記脊椎ロッドとの間の前記接触領域が前記ロッドレセプタクルの内部にある後頭プレートシステムである。好ましい実施形態において、前記システムは、(a)前記プレートを前記頭蓋に固定するのに適合された骨留め具を受容するための1つ又は複数の孔を有するプレートと、(b)前記プレートから外側に向かって延びる少なくとも1本のレールと、(c)本体部及び受容部をそれぞれ含む少なくとも1つのロッドレセプタクルであって、前記レールの少なくとも一部、ロッド、及び止めねじが前記ロッドレセプタクルの内部に収容されるよう、前記本体部は前記レールがスライドする通路を画定し、かつ、前記受容部は、ロッドを受容するための空洞と、止めねじを受容するための前記空洞上部のねじ山とを画定する、ロッドレセプタクルと、を含む。好ましくは、前記レールの少なくとも一部と、前記ロッドと、前記止めねじとは垂直軸に沿って重なり合っており、より好ましくは、前記垂直軸は前記止めねじの中心軸である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1(a)及び1(b)には、本発明の後頭プレートシステム100の好ましい実施形態の斜視図が示されている。後頭プレートシステム100は脊椎ロッド104の遠位端104aを患者頭蓋140の後頭に固定するのに適している。本システムの様々な要素の相対位置を説明するために、システムは表面121(これは、図1において、ページから突き出ている)と、裏面122(これはページの中に突き出ている)と、上端117a(ページの天頂に向いている)と、下端117b(ページの下底に向いている)とを有していると考えられる。この位置付けは説明のみを目的としたものであり、本発明の範囲を制限するために用いられるものではないと理解されなければならない。
【0014】
後頭プレートシステム100は、(a)プレート101を患者頭蓋に固定するのに適合させた骨留め具105を受容するための1つ又は複数の孔106を有するプレート101と、(b)プレート101から外側に向かって延びる2本のレール102a,102bと、(c)それぞれ本体部107及び受容部108を含む2つのロッドレセプタクル103とを含んでいる。本体部107はレール102a,102bがスライドする通路109を画定している。受容部はロッド104を受容するための空洞110と、止めねじ112を受容するための、空洞110の上部のねじ山111とを画定している。この構成において、レール102aの少なくとも一部、ロッド104、及び止めねじ112はロッドレセプタクルの内部に収容されている。好ましくは、レール102aの少なくとも一部、ロッド104、及び止めねじ112は1本の垂直軸に沿って重なり合っており、より好ましくは、前記垂直軸は止めねじの中心軸113である。以下に、これらの要素の各々が詳細に考察される。ただし、これらの要素への後頭プレートシステムの類別は説明のみを目的として行われるものであり、これらの要素の1つ又は複数を1つの共通の要素に統合し又はこれらの要素の1つ又は複数を付加的な要素に分割することも本発明の範囲に含まれると理解されなければならない。
後頭プレート
【0015】
ここで図1(a)及び1(b)を参照して、プレート101を詳細に考察する。プレート101は患者頭蓋に後頭システムを固定する機能を果たす。そのため、プレートは、前述したように、骨ねじ105を受容するように構成された複数の孔106を含んでいる。かかる骨ねじは当該技術分野において周知であり、本明細書において詳細には論じない。好ましい実施形態において、ねじは、図4に示したように、一旦ねじ込まれると孔周囲でプレートを係止するテーパ座面440を有している。好ましい実施形態において、装着されると、ねじの頭はプレートの表側と面一をなすように形成されている。
【0016】
後頭部の中心線に沿った骨量は比較的厚く、骨ねじにとって最適な係着点を供することが判明した。従って、好ましい実施形態において、後頭プレートの中央に複数の孔が位置している。
【0017】
好ましくは、後頭プレートの裏面側は装着の間の不動性を高めるために粗面化されている。粗面化された面はまた、プレートと頭蓋骨との一体性を高めることにもなる。
【0018】
本出願人らは、後頭の限定されたスペースに適合させるために、後頭プレートは屈曲可能であることが必要な旨見出した。そのため、好ましい実施形態において、プレート101はプレートの一部がその他の部分に対して曲がることを可能とするための複数の狭間溝116を含んでいる。好ましい実施形態において、これらの狭間溝はプレートを様々な部分に分離する。例えば、図2に示した実施形態を参照すると、プレートは、上下端117a,117b及び正中部117cを有する中央部117を含んでいる。正中部117cからは側方部119,118が延びており、同所からそれぞれレール102a,102bが延びている。
【0019】
プレートを屈曲可能にするのに加えて、後頭の限定されたスペースに適合させるために取外し可能な一定部分を有することが好ましい場合がある。そのため、図2の実施形態において、中央部は正中部117cの下部にテール部120を含んでいる。このテール部はテール狭間溝116aによってプレート101の残りの部分から仕切られている。この狭間溝の配置によって、後頭に十分な余地がない場合に、テール部120を残りのプレート101から分離するのが容易になる。
【0020】
(以下に論ずる)プレートから延びるレールが細身であるために、プレートにとって、側方部(レールの上方又は下方)に付加的な骨ねじを受容する十分な余地が生ずる。一般に、図1(a)及び1(b)に示したように、プレートの中央部に沿った穴の数を増やすのが好ましいが、後頭が相対的に小さい場合には、プレートに設けられるねじ穴の大きさと数を減少させるのが好ましい場合がある。例えば、図5には、プレート501の代替的実施形態が示されている。このプレートは図1(a)及び2に示したプレートよりも小さく、骨ねじの数も少ない。本開示に照らして、当業者は、本発明の範囲内で、代替的なプレート構成及び大きさを設定することができよう。
レール
【0021】
ここで、図1及び2を参照して、レール102(a)及び(b)が詳細に考察される。レールは、ロッドレセプタクルと後頭プレートとの間の可変的な連結点を供する機能を果たす。好ましくは、前記レールは、プレートとほぼ同じ面内で、プレートから外側に向かって延びている。特に、図1(b)から看取されるように、レールはプレートの下端部117bから基本的に外側かつ下方に向かって延びている。図2の実施形態において、レールは後頭プレートの側方部118,119の底部から延びている。実際のところ、その他の構成も本発明の範囲内で可能である。例えば、レールは外側に向かって延びる前に後頭プレートの側方部から下方に向かって延びていてよく、また、レールは下方に向かって延びる前に外側に向かって延びていてもよく、又は、レールの上をロッドレセプタクル103がスライド可能である場合にはレールは下方かつ外側に向かって曲線又は弧を描いて延びてもよい。
【0022】
レール周りのロッドレセプタクルの動きにつき以下に更に詳細に論ずるように、好ましい実施形態において、レールの周りをロッドレセプタクルが旋回するのを防止するため、レールの断面形状は非円形である。かかる非円形断面は多角形構造、好ましくは矩形構造である。最も好ましくは、レール断面は、図3の断面図に示されているように、細長い長方形の形状144を有している。かかる実施形態は数多くの理由からして好ましい。第一に、該形状は上/下方向の丈が低い。これは後頭にロッドレセプタクルの高さに見合ったスペースがほとんどないことからして重要である。対照的に、図4に示したような円形断面は、それが以下に述べるようにその他の利点を有するとしても、ロッドレセプタクルの全高を増すことになる。
【0023】
更に加えて、高さが低い点を別として、細長い長方形のレールは平坦な上面145を供する(図3を参照)。平坦な上面は、レール周りの旋回を防止するとの理由からのみならず、広い接触領域をもたらす点からしても望ましい。広い面は、例えば、インサートが使用されない場合に接触領域がレール頂部の1本の細い線だけに限られてしまう円形レール402とは対照的に、インサート203又はロッド104さえも着座し得る優れた底面を供することになる。最後に、平坦な面はインサート203又はロッド104がその上で容易に旋回し得る支持面として機能する。これに対して、円形レール402によって形成される凸面は、インサートが分割されて以下に述べるように平坦な支持面が供されない限り、その上でのインサートの旋回を容易にすることはない。
【0024】
不可欠ではないが、ロッドレセプタクルは一旦レール上に配置されるともはやスライド変位できないように後頭プレートシステムを構成するのが好ましい場合がある。かかる構成は、ロッドをプレートに固定しようとする間、医師はすべての要素を一体に保持しておくことに集中する必要がないために、インプランテーションを容易にする。そのため、一実施形態において、レール102の遠位端は同所に一旦ロッドレセプタクルがスライド可能に取り付けられると該ロッドレセプタクルが滑り落ちないように変形させられる。この変形は、一旦ロッドレセプタクルがスライドされて位置決めされると、それぞれのレールの遠位端がかしめられて該ロッドレセプタクルが後退して落ちないように突起がつくりだされることによって達成することができる。かしめ、及び変形させる又はその他の方法でロッドレセプタクルのスライド運動を阻止する突起ないし異形面をつくり出すその他の技法、はよく知られている技術である。
【0025】
別法として、レールの変形よりも、レールはその全長の一部にわたる内側溝150を含んでいてもよい。図3から看取されるように、この内側溝150は(以下に詳細に説明する)インサート203から下方に延伸する突起220を受容するように構成されている。従って、ロッドレセプタクル103がレール102(b)上にあり、インサート203がロッドレセプタクルに挿着されていれば、インサートからの突起220は溝150内に配置される。以下に述べるように、好ましい実施形態において、インサートはロッドレセプタクルにスナップ嵌めされてロッドレセプタクル内に保持される。好ましくは、突起が内部溝から外れることが防止されるように、インサートが一旦所定の位置にスナップ係止されるとロッドレセプタクル内でのインサートの軸方向運動は制限される。こうして、インサートの突起は内部溝に補足されたままとなり、これにより、ロッドレセプタクルはレール上に保持されると同時にスライド可能となる。
【0026】
好ましい実施形態において、レールはプレートと一体に形成されているが、プレートから分離されるのも本発明の範囲に含まれる。例えば、レールが、患者の後頭スペースにフィットするように調節可能であるように後頭プレートに対して独立に可動可能であることが好ましい場合がある。更に、レールをプレートの両側から延びる、より大きな部材の一部とすることも考えられる。例えば、各レールは、より大きなアームに沿って突起した稜を含んでよい。
ロッドレセプタクル
【0027】
ロッドレセプタクルの機能は、ある1つの状態においてプレートに対するロッドの相対運動を容易にすることであり、別の状態においてプレートに対するロッドの相対位置を固定することである。前記第1の状態は、止めねじが締め付けられる前の状態として定義され、前記第2の状態は止めねじが締め付けられた後の状態として定義される。プレートに対するロッドの運動を説明するには、2本の軸(レールに沿って走るx軸及び基本的にロッドレセプタクルの中心軸に沿って走るy軸)に対してロッドレセプタクルを一致させるのが便利である。これらの軸は図1(a)に点線で表されている。好ましい実施形態において、ロッドレセプタクル103(複数)は同一であり、従って、本明細書における一方のロッドレセプタクルの説明はすべて他方のロッドレセプタクルにも同様に当てはまる。
【0028】
上述したように、それぞれのロッドレセプタクルは本体部107と受容部108とを含んでいる。受容部の機能はロッド104を受容して固定することである。好ましい実施形態において、受容部は直円筒状又はテーパ状の円筒壁207を有し、空洞110及び、ロッドを収容するロッド用開口142を形成している。好ましい実施形態において、円筒壁207はまたロッド用開口142から受容部の頂部121まで延びるスロット141も含んでいる。スロット141はロッド104を受容して、ロッドが、ロッド用開口142に螺挿されるのではなく、頂部から受容部内に滑り入ることができる大きさに形成されている。受容部はまた、止めねじ112のねじ山と連係するねじ山111も含んでいる。従って、ねじ山111は空洞110上部の円筒壁207の内側に配されている。好ましい実施形態において、受容部のねじ機構は米国出願公開第10/124,945号及び同第10/369,158号明細書に開示されたものと基本的に同一であり、前記文献は参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0029】
ロッドレセプタクルの本体部107の機能は、受容部を後頭プレートのレールに取り付けることである。特に、本体部107の通路109はスライド可能にレールを受け入れる。別法として、通路がレールを包囲するのではなく、通路の1又は複数の側面が開いているのが好ましい場合がある。例えば、ロッドレセプタクルをレールに固定するために本体部107の大半がレールを包囲している場合に、通路はc形に形成されてもよい。好ましい実施形態において、本体部と受容部とは図1(a)及び図2に示したように一体に成形されている。別法として、前記2つの部分は図6(a)及び6(b)に示したように不連続であってもよい。
【0030】
図1(a)に立ち戻って同図から看取されるように、ロッドとプレートとの間の接触領域を増すために、好ましい実施形態の後頭プレートシステム100はインサート203を含んでいる。該インサートは円形ロッドと後頭プレートのレールとの間のインタフェースとしての役割を果たす。円形ロッドを収容するため、インサート203は凹面204を含んでいる。凹面204の反対側の面205はレール102(a)の上面115と相補的な形状をなしている。以下に論ずるように、好ましい実施形態において、レールの上面は平坦であり、それゆえ、インサートの底面も同じく平坦である。
【0031】
図4に示されているように、レール402が円形上面を有する実施形態においては、ロッドとレールとの間のインサートは分割されるのが好ましい。つまり、ロッドはロッドレセプタクルが第1の状態にあればy軸周りを旋回するように適合されていることから、インサートはこの動きを受け入れるのに適していなければならない。そのため、ロッドに適合する第1の半体203aとレールに適合する第2の半体203bとを有する分割インサートが好ましい。第1と第2の半体は双方共にレール又はロッドを受容する凹面を含み、それぞれの反対側の面は他方のインサート半体の平坦な面と適合するために平坦とされる点で形態的に類似している。こうして、ロッドがy軸周りを旋回すれば、第1と第2のインサート203a,203bはそれぞれの平坦面上で互いに相対旋回する。
【0032】
図1(a)に立ち戻って同図から看取されるように、インサート203は好ましくは該インサートを所定の位置に保持するロッドレセプタクルにスナップ嵌めされるように構成される。この実施形態において、インサート203は、自由端に突起206aを備えた弾性反撥式アーム206を有している。ロッドレセプタクル103は突起206aを受け入れるための穴143を有している。インサートがロッドレセプタクル103内に下方に向かって押し込まれると、反撥式アーム206は突起206aが穴143に整合するまで内側に向かってたわむ。前記整合が実現される点において、アーム206の弾性によって突起206aが穴143にスナップ式に係合して、インサートはロッドレセプタクル内に保持される。好ましくは、インサートの突起220は図3に示したように溝150に係合したままとなるように、インサート203の軸方向運動(即ち、上下運動)は制限される。その他のスナップ嵌め機構の使用も可能である旨理解されなければならない。例えば、弾性アームをインサートに配置するのではなく、アームがロッドレセプタクルに配置され、突起がインサートに配置されるようにすることもできる。
【0033】
また、ロッドと止めねじ112との間のインタフェースを形成する第2のインサートを使用するのも好ましい場合がある。例えば、第2のインサートはロッド104に適合する凹面と、止めねじに適合する反対側の面とを含んでいてよい。止めねじの端面が平坦であると仮定すれば、第2のインサートの反対側の面も平坦な面を有することになろう。
【0034】
第2の状態(即ち、止めねじが締め付けられた後の状態)において後頭プレートに対するロッドの固定性を高めるために、レール102の表面及び場合によりロッド104の表面の機能性を高めて摩擦を増させるか又は機械的連動を促進するのが好ましい。例えば、レール102a,102bの表面を溝115によって起伏化するのが好ましい。更に、好ましい実施形態において、インサートは、止めねじによる圧縮力に応じて変形し、起伏化された表面の輪郭内に突出するする材料からなっている。好適な材料には、例えば、純チタン又はPEEKが挙げられる。好ましくは、前記材料は基本的に純チタンである。別法として、インサートをレールよりも軟質に設計する代わりに、レールがインサートよりも軟質であるように設計してもよい。硬質インサートの適切な材料は、例えば、コバルトクロム合金であってもよい。
【0035】
本発明のロッドレセプタクルはプレートに対する当該相対運動において高度な柔軟性を実現するように構成することができる。即ち、ロッドレセプタクルはどの軸周りにも運動し得るか又はどの軸周りにも不動であるように構成することができる。ロッドレセプタクルの自由度は好みの問題である。
【0036】
一般に、ロッドはプレートに対してx軸に沿って(即ち、レールに沿って)動く(スライドする)のが好ましい。かかる運動により医師は脊椎に対するロッドの横方向位置を調節することができ、これはロッドを曲げる必要性を回避するので重要である。ロッドの曲げは、外科手術を妨げ、システムを弱め、場合により不首尾を結果することからして、一般に望ましくない。横方向運動は通路109内でのレール102a,102bのスライド変位によって達成される。
【0037】
ロッドと後頭プレートとの間の運動の自由は一般に望ましいが、第1の状態においてロッドレセプタクルがx軸周りを旋回し得るとの要望よりも、第2の状態においてロッドレセプタクルがこの軸周りに絶対的固定性を有する必要性の方が重要である。従って、レールがx軸周りのロッドレセプタクルの旋回を容易にする円形断面を有するように構成する(例えば、図4に示した後頭プレートのレールを参照)よりも、そうした旋回を阻止するために非円形断面144をレールが有するようにするのが好ましい。
【0038】
x軸周りの本体部の旋回を防止することは好ましいが、それは決して本発明の範囲に含まれないわけではない。例えば、図4から看取されるように、同図にはロッドレセプタクル401が円形レール402を収容する円形通路403を有するように構成された後頭プレートシステム400が示されている。かかる構成は、ロッドレセプタクルが第1の状態にある場合に、ロッドレセプタクル401がレール402周り(即ち、x軸周り)を旋回することを可能にする。円形レールを有した実施形態において、本体部は、別法として、円形レールの周囲に配された弾性ストラップを備えた従来のパイプクランプに類似していてもよい。このストラップが締め付けられて、第2の状態におけるx軸周りの運動を阻止する。かかるパイプは既知であり、例えば足場で及びパイプ・ハンガーとして使用されている。
【0039】
また、ロッドがy軸周りを旋回するのも好ましい。この場合も先と同様に、かかる運動により医師は、ロッドを曲げる必要なしに、プレートに対するロッドの相対位置の調節を行なうことができる。第1の状態においてプレートに対してロッドが相対旋回し得る程度は本明細書において旋回角と称される。最小旋回角は約5°が好ましく、約15°がより好ましく、約20°が更にいっそう好ましいことが判明している。
【0040】
本発明は所望の最小旋回角を達成し得る様々な機構を意図している。これらの旋回機構は、(1)レールに対するロッドレセプタクルの旋回、(2)ロッドレセプタクルに対するロッドの旋回、(3)本体部に対する受容部の旋回、を行なうものに分類することができる。
【0041】
図1(a)、1(b)には、旋回機構の第1のカテゴリーの一例が図示されている。同図から判明するように、本体部に画定された通路109は両端がラッパ状に拡がって、本体部106がレール102上で旋回することを可能にする。通路109のラッパ状拡開の程度が第1の状態における旋回角の程度を決定する。
【0042】
第2の状態における前記機構の固定は図3に示されている。止めねじ112によって加えられる力によりロッド104はインサート203に作用し、該インサートは翻ってレール102(b)に作用を及ぼし、これによって、ロッドレセプタクル103全体に上向きの反力が付与される。この上向きの反力は本体部108の底部310をレール102(b)の底面311に対して作用させる。レールに対するインサートの接触に加えてこの接触が第2の状態におけるレールに対する本体部の運動を阻止する。
【0043】
この構成は幾つかの理由からして有益である。第一に、ロッド用開口がロッド周囲に密着するため、ロッドは受容部内に固定的に保持される。換言すれば、ロッドが第1又は第2の状態において受容部に対して運動又は旋回する機会は存在しない。更に、本体部の底部310とレールの底面311との間の接触領域は従来の技術の接触領域に比較して広いため、第2の状態において、その他のシステムに比較して、より大きな固定性を供する傾向がある。
【0044】
図2を参照すると、旋回機構の、第2のカテゴリーの一例が示されている。y軸周りの旋回運動は受容部108に設けられた短冊穴201によって達成される。短冊穴はロッド104の直径よりも長いため、ロッドは第1の状態において受容部内で旋回することができる。従って、ロッドレセプタクル全体がレール上で旋回するのではなく、レール上におけるロッドレセプタクルの半径方向位置は固定されている一方で、ロッドは受容部内で旋回する。
【0045】
図4を参照すると、第2の旋回機構の一実施形態が円形断面のレールと共に示されている。この機構が第2の状態においてプレートに対してロッドを固定する方法は図3に示した実施形態の場合と基本的に同じである。簡単に言えば、止めねじ(不図示である)が締め込まれると、ロッド104を包囲する第1と第2のインサート203a,203bがレール402に向かって作用し、これによってレールに対してロッドが固定される。
【0046】
旋回機構の第2のカテゴリーはロッドレセプタクルが第1の状態及び第2の状態のいずれにあってもプレートに対して常に固定的である点で有利である。
【0047】
旋回機構の第3のカテゴリーは図6(a)〜6(c)に示されている。この場合、ロッドとプレートとの間の旋回は、第1の状態において本体部602に対して旋回する受容部601によって達成される。保持部601は、図1(a)の実施形態と同様に、ロッド用スロット603にロッド609をぴったりフィットさせて受容するように構成されており、他方、本体部602は、図2の実施形態と同様に、通路607にレール608をぴったりフィットさせて受容する。しかしながら、保持部は第1の状態において本体内部で可動するように構成されている。より詳細に言えば、この実施形態における保持部601は、円筒壁613が本体部602の頭頂穴614を通過するように本体部602内に挿入され、円筒壁613はロッド用スロット603を画定する。このようにして組み付けられると、保持部の第1の支持面604は本体部の第2の支持面606上に着座し、これによって、受容部601は第1の状態において本体部の内部で旋回することが可能になる。
【0048】
ロッドをレールに適合させるには、インサート611,612が好ましく、インサート611,612は図3に関連して先に説明した第1と第2のインサート203a,203bと同じである。簡単に言えば、インサート611はロッドを収容するために頂部は凹面を形成し、インサート612と適合するために底面は平坦である。同様に、インサート612は円形レール608を収容するために底部は凹面であり、インサート611と適合するために頂部は平坦である。双方のインサートのこれら2つの平坦面は、保持部(及びロッド)が本体部(及びレール)に対して旋回すると、第1の状態において互いに自由に滑動することができる。ただし、もしもレールの上面が平坦であれば、第2のインサート612は不要であり、図1に示した実施形態におけるように1つのインサートが使用されるだけでよい旨を明確にしておかなければならない。
【0049】
この構成は、例えば、高い整合性、ロッドと受容部との間及びレールと本体部との間の機械的連動継手を含んだ、多くの利点を供する。加えて、この構成は、ロッドレセプタクルが第2の状態にあるとき、受容部と本体部との間の固定継手を提供する。この固定性は2つのメカニズムに基づいている。第一に、図1に示した実施形態におけるように、止めねじが締め付けられると、それはロッドに作用を及ぼし、ロッドは翻ってインサート611,612に作用を及ぼし、これらのインサートは翻ってレールに作用を及ぼして、これらの要素は上述したような相対位置に基本的にロックされる。しかしながら、先に考察した実施形態とは異なり、受容部と本体部もそれらのそれぞれの支持面に沿って連係している。特に、受容部は本体部と別個であることから、実際に止めねじによって加えられた下向きの力は受容部を本体部に対して相対的に浮揚させ、こうして、受容部の第1の支持面604と本体部の第2の支持面606とが互いに接触して第2の状態における各要素の相対運動を阻止する。好ましい実施形態において、これらの支持面の表面は摩擦/機械的連動を高めるために粗くされている。
【0050】
上述した後頭プレートシステムの各要素は説明を目的としたものであり、本発明の範囲内で多くの変更を行うことが可能である旨理解されなければならない。更に、上述した様々な要素を特定の使用目的に合わせて、組合わせ及び適合させることが可能であることが予想される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1a】本発明による後頭プレートシステムの好ましい実施形態の斜視図。
【図1b】患者の後頭にインプラントされた、図1(a)に示した後頭プレートの斜視図。
【図2】図1(a)に示した後頭プレートの若干相違した構造を示す図。
【図3】図1(a)の後頭プレートのロッドレセプタクルの断面斜視図。
【図4】レールが円形断面を有する後頭プレートの代替的実施形態の側面図。
【図5】図1(a)に示した後頭プレートの代替的実施形態を示す図。
【図6(a)】ロッドレセプタクルの代替的実施形態を示す図。
【図6(b)】ロッドレセプタクルの代替的実施形態を示す図。
【図6(c)】ロッドレセプタクルの代替的実施形態を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の頭蓋に脊椎ロッドの遠位端を固定するための後頭システムであって、頂/底及び上/下方向を有するものにおいて、
前記プレートを前記頭蓋に固定するのに適合された骨留め具を受容するための1つ又は複数の孔を有するプレートと、
前記プレートから外側に向かって延びる少なくとも1本のレールと、
本体部及び受容部を含む少なくとも1つのロッドレセプタクルと、
を含むと共に、
前記レールの少なくとも一部、ロッド、及び止めねじが、前記ロッドレセプタクル内に収容されるよう、前記本体部は、前記レールをスライド可能に係合させるための通路を画定し、かつ、前記受容部は、前記ロッドを受容するための空洞と、前記止めねじを受容するための前記空洞上部のねじ山とを画定すること、
を特徴とする後頭システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、前記レールの少なくとも一部と、前記ロッドと、前記止めねじとが、垂直軸に沿って重なり合うことを特徴とするもの。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムであって、前記垂直軸が前記止めねじの中心軸であることを特徴とするもの。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムであって、前記本体部および前記受容部が一体に成形されることを特徴とするもの。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムであって、前記止めねじが前記ロッドに対して下向きに締め込まれる前に、前記本体部が前記レールの一部上で回転することを許容するため、前記通路がその開口にてラッパ状に拡がっていることを特徴とするもの。
【請求項6】
請求項5に記載のシステムであって、前記ねじ山が雌ねじ山であることを特徴とするもの。
【請求項7】
請求項5に記載のシステムであって、前記受容部が、前記短冊開口から前記受容部の頂部まで通常は延びるスロットを画定する円筒壁を含み、かつ、前記スロットが、前記ロッドを受容する大きさであることを特徴とするもの。
【請求項8】
請求項1に記載のシステムであって、該システムが、更に、前記ロッドと前記レールとの間にインサートを含み、かつ、前記インサートが前記ロッドと前記レールとの間の接触領域を増大させることを特徴とするもの。
【請求項9】
請求項8に記載のシステムであって、前記インサートが、前記ロッドを受容する凹部と、前記レールに接触する平坦部とを含むことを特徴とするもの。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムであって、前記インサートが前記受容部内に押し込まれると、突起が前記孔にスナップ式に係合して前記インサートを前記受容部内に固定するよう、前記インサートが、前記突起を備えた弾性アームを含み、かつ、前記受容部が、前記突起を受容するのに適合された孔を含むことを特徴とするもの。
【請求項11】
請求項10に記載のシステムであって、
前記レールが、その全長の一部を走行する内部溝を含み、かつ
前記インサートが、その底面から延びる底面突起を含むと共に、
前記溝が前記底面突起を受容し、これにより、前記ロッドレセプタクルが前記内部溝を越えて前記レール上をスライドすることが防止されること、
を特徴とするもの。
【請求項12】
請求項8に記載のシステムであって、前記レールが、起伏化された表面を含むことを特徴とするもの。
【請求項13】
請求項12に記載のシステムであって、前記インサートが、前記起伏化された表面の輪郭の内部に突き出るよう前記止めねじによって加えられた圧縮力に応じて変形する材料を含むことを特徴とするもの。
【請求項14】
請求項13に記載のシステムであって、前記インサートが純チタンを含むことを特徴とするもの。
【請求項15】
請求項8に記載のシステムであって、該システムが、更に、前記止めねじと前記ロッドとの間のインタフェースを形成する上方インサートを含み、かつ、前記上方インサートが、前記ロッドを受容するための凹部と、前記止めねじと接触するための平坦部とを含むことを特徴とするもの。
【請求項16】
請求項1に記載のシステムであって、前記レールが前記プレートと一体に成形されていることを特徴とするもの。
【請求項17】
請求項1に記載のシステムであって、前記レールが平らな上面を有していることを特徴とするもの。
【請求項18】
請求項1に記載のシステムであって、前記プレートが、前記プレートの屈曲可能部分を画定する1つ又は複数の狭間溝を含むことを特徴とするもの。
【請求項19】
請求項1に記載のシステムであって、該システムが更に前記ロッドを含むことを特徴とするもの。
【請求項20】
請求項1に記載のシステムであって、該システムが更に前記骨留め具を含むことを特徴とするもの。
【請求項21】
請求項1に記載のシステムであって、2本のレールと2つのロッドレセプタクルが存在することを特徴とするもの。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図6(c)】
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【公表番号】特表2009−509649(P2009−509649A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533500(P2008−533500)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【国際出願番号】PCT/US2006/037385
【国際公開番号】WO2007/041085
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(502154016)アエスキュラップ アーゲー (61)
【住所又は居所原語表記】Am Aesculap−Platz, 78532 Tuttlingen Germany
【Fターム(参考)】