説明

徐放昆虫忌避性を有する組成物

本発明は、粘土組成物の分野に、そして粘土を含有するダニまたは昆虫忌避組成物に、特にジヒドロネペタラクトン、ネペタラクタム、ジヒドロネペタラクタムおよび/またはそれらのそれぞれの誘導体と粘土とを含んでなるダニまたは昆虫忌避調合物であって、徐放を提供して活性成分の利用を改善し、そしてより少ない頻度の更新を必要とする調合物に関する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、あらゆる目的のために本明細書の一部としてその全体が援用される、2005年3月9日出願の米国仮特許出願第60/660,368号の優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、粘土を含有する組成物、特にその中で粘土が昆虫忌避活性成分と混合されているそれらの組成物に関する。かかる組成物は、活性昆虫忌避剤の徐放を提供してその利用を改善し、その結果、頻繁な更新の必要性を回避する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1は、殺虫剤成分のゆっくりした放出のための殺虫剤組成物およびその製造方法を記載している。その中に有機アンモニウム錯体を介在させた60〜99.9重量%の粘土鉱物、0.1〜26%の殺虫剤、および25℃で1〜9.5のpKaを有する0.01〜26%の酸を含んでなる組成物が開示されている。広範囲の粘土が好適であると述べられている。有機アンモニウム錯体は好ましくは少なくとも1つのフェニルまたはベンジル基および脂肪族基と結合している。明らかに公知の広範囲の殺虫剤が用いられる。有機酸および無機酸の両方が好適であると述べられている。そのように記載された組成物は徐放性組成物として用いられ得ると述べられている。あるいはまた、そのように調合された組成物はいわゆる担体と組み合わせられて最終徐放性組成物を提供するかもしれない。無機担体は粘土および他の鉱物である。
【0004】
非特許文献1は、殺虫剤の制御された放出のための殺虫剤−金属−モンモリロナイト錯体を開示している。スメクタイト粘土の層間での金属との錯化による殺虫剤のカプセル化が開示されている。錯体は、金属−モンモリロナイトおよび配位子の組成物をメタノール中で還流させることによって製造された。実際に用いられた金属は銅およびコバルトである。リンおよびカーバメート配位子が用いられる。
【0005】
特許文献2は、害虫を忌避させるための成分とタルク、カオリン、モンモリロナイト、陶土、ベントナイト、または珪藻土などの鉱物の中から選択された1つもしくはそれ以上の微粉;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、酸化チタン、または硫酸バリウムなどの無機微粉;およびクリーム、ローション、エアゾール、もしくは他の調合物での昆虫忌避物質と一緒のデンプン、カルボキシメチルセルロース、またはラクトースなどの有機微粉とを含んでなる昆虫忌避組成物を開示している。昆虫忌避剤には、N,N−ジエチルメタトルアミド(DEET)、フタル酸ジメチル、フタル酸ジブチル、2,3,4,5−ビス(Δ−ブチレン)テトラヒドロフルフラール、イソシンコメロン酸ジ−n−プロピル、またはコハク酸ジ−n−ブチルおよび他の忌避成分が含まれる。昆虫忌避効果の増加した耐久性がその結果である。微粉媒体との錯化のおかげで適用忌避剤のヒト皮膚による吸収の減少が該明細書に開示されている。この参考文献に使用される鉱物、無機、または有機微粉の平均粒度は望ましくは50μmもしくはそれ未満である。微粉は、それが混合される昆虫忌避物質の0.1〜50重量%で用いられる。
【0006】
特許文献3および特許文献4は、徐放性昆虫忌避組成物および使用を教示している。DEETなどの昆虫忌避剤、少なくとも2つの反応性シリコ−ンおよびデンプンを含んでなる昆虫忌避組成物で処理されている布基材が開示されている。この発明の一目的は、昆虫忌避剤が組成物から、従って同様に布からもゆっくりと放出されるような、昆虫忌避組成物およびその製造方法を提供することである。
【0007】
特許文献5は、情報化学物質の制御された放出が可能な複合ポリマー・ディスペンサーの使用を教示している。ディスペンサーは、ある期間(数日)にわたった情報化学物質の放出を可能にするために透過性ポリマー膜中に含有される固体エラストマーマトリックス溜めを使用している。これらのデバイスは昆虫を防除するのに有用であると述べられている。
【0008】
あらゆる目的のために本明細書の一部としてその全体が援用される、同時係属の特許文献6は、蚊、サシバエおよび鹿ダニをはじめとする、人々に特に関心のある幾つかの種の昆虫に対して有効な昆虫忌避剤として、ネペタラクトンの水素化によって誘導されるジヒドロネペタラクトン(DHN)ジアステレオマー、およびその組成物を開示している。DEETに実質的に同等の結果が実証されている。
【0009】
【特許文献1】欧州特許第548,940号明細書
【特許文献2】特開昭59−199,602号公報
【特許文献3】米国特許第6,015,570号明細書
【特許文献4】米国特許第6,326,015号明細書
【特許文献5】米国特許第5,750,129号明細書
【特許文献6】米国特許出願第10/392,455号明細書
【非特許文献1】チャウダリー(Choudary)ら著、J.Agric.Food Chem.37(1989年)、1422−1425ページ
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態は、隙間のある層状構造を有する粘土と、ジヒドロネペタラクトン、ジヒドロネペタラクトンの誘導体、ネペタラクタム、N−置換ネペタラクタム、ジヒドロネペタラクタム、N−置換ジヒドロネペタラクタム、およびそれらの混合物よりなる群から選択される成分とを含んでなる組成物である。
【0011】
本発明の別の実施形態は、成分を溶媒中に溶解させて溶液を形成し、該溶液と隙間のある層状構造を有する粘土を接触させ、該溶媒を除去して乾燥粉末を生成することによる上記のような組成物の製造方法である。
【0012】
本発明はさらに、上記のような組成物を含む芳香調合物またはダニ−もしくは昆虫忌避調合物または製品を提供し、こうして対応して上記のような組成物から調合物を形成することによる、または組成物を物品中へ組み入れることによる芳香調合物またはダニ−もしくは昆虫忌避調合物または製品の製造方法を提供する。
【0013】
特に、本発明はさらに、上記のような組成物を含む、香料もしくは香水、またはダニもしくは昆虫用の忌避剤などの、皮膚用の局所処理剤を提供する。
【0014】
本発明はまた、上記のような組成物にダニまたは昆虫を曝すことによる1つもしくはそれ以上のダニまたは昆虫の忌避方法を提供する。特に、本発明は、宿主の皮膚、ハイド、毛髪、毛皮もしくは羽毛などの、ダニまたは昆虫のための宿主の表面に上記のような組成物を塗布することによるダニまたは昆虫の忌避方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
一実施形態では、本発明は、隙間のある層状構造を有する粘土と、ジヒドロネペタラクトンまたはその誘導体、ネペタラクタム、N−置換ネペタラクタム、ジヒドロネペタラクタムおよびN−置換ジヒドロネペタラクタムよりなる群から選択される1つもしくはそれ以上の成分とを含有する組成物を提供する。好ましい実施形態では、ジヒドロネペタラクトン、ネペタラクタム、ジヒドロネペタラクタム、もしくはそれぞれの誘導体、またはそれらの混合物が粘土組成物で昆虫忌避活性成分として機能する。
【0016】
用語「ジヒドロネペタラクトン」および「DHN」は本明細書では、ジヒドロネペタラクトンの任意の立体異性体、または該立体異性体の任意の組み合わせ、ならびに下に記載されるようなDHNの誘導体をさらに含んでもよいそれらの組み合わせを包含すると解釈されるものとする。DHNの立体異性体は図1に示される。特に興味深いものは
(1S,9S,5R,6R)−5,9−ジメチル−3−オキサビシクロ[4.3.0]ノナン−2−オン、
(1S,5S,9S,6S)−5,9−ジメチル−3−オキサビシクロ[4.3.0]ノナン−2−オン、
(1S,9S,6S,5R)−5,9−ジメチル−3−オキサビシクロ[4.3.0]ノナン−2−オン、
(9S,5S,1R,6R)−5,9−ジメチル−3−オキサビシクロ[4.3.0]ノナン−2−オン、および
(9S,1R,5R,6R)−5,9−ジメチル−3−オキサビシクロ[4.3.0]ノナン−2−オン
である。
【0017】
本発明の実施に好適な、DHN、またはその誘導体は式(I)
【0018】
【化1】

【0019】
(式中、Rは水素、C〜C20アルキルまたはC〜C20アリールであり、そして
は水素またはC〜C20アルキルである)
で表される。Rおよび/またはRの代表的な対価物には、水素に加えて、直鎖のまたは第二ブチルもしくはネオペンチルのような分岐のC〜C20アルキルが含まれてもよく、好ましくはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルもしくはヘキシルなどの直鎖C〜C12アルキルであり、またはRおよび/またはRは置換もしくは非置換のC〜C20フェニルであってもよく、好ましくは非置換フェニルまたは、フェニル上の置換基がC〜C12アルキルもしくはアルコキシ、またはハロゲンであってもよいメタ−もしくはパラ−置換フェニルである。ある誘導体では、Rおよび/またはRは最も好ましくはメチルもしくはエチル、フェニル、またはパラ−もしくはメタ−トリルである。
【0020】
立体化学を示していない式(I)は、DHNの誘導体の1つもしくはそれ以上の異性体と一緒にDHNの1つもしくはそれ以上の異性体の任意の組み合わせだけでなく、DHNの任意の立体異性体、およびDHNの誘導体の任意の立体異性体、DHN立体異性体の任意の組み合わせ、DHN誘導体の立体異性体の任意の組み合わせを包含すると本明細書では解釈されるものとする。
【0021】
DHNは、直接合成によって製造されても、様々な天然源から単離されても、またはネペタラクトンの接触水素化によって製造されてもよい。ネペタ(キャットニップ)植物の精油から抽出されたネペタラクトンの水素化は、DHNの製造のための好ましい方法である。ネペタラクトンは、ネペタ植物葉の精油中に大量に存在し、それから容易に精製される。これは、DHNへの非常に望ましい天然物ルートを生み出す。
【0022】
DHNへのネペタラクトンの接触水素化は、酸化白金および炭酸ストロンチウムに担持されたパラジウムなどの触媒が24〜90%収率でジヒドロネペタラクトンを与える、レニエ、F.E.(Regnier,F.E.)ら著、Phytochemistry、6(1967年)、1281〜1289ページの方法に従って行われてもよい。好ましくは、DHNは、あらゆる目的のために本明細書の一部としてその全体が援用される、同時係属米国特許出願第10/405,444号明細書の方法による接触水素化によって製造される。この方法は、ルテニウム、レニウム、ロジウム、イリジウム、それらの化合物、およびそれらの組み合わせなどの触媒金属、ならびに、使用されるとき、炭素、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、チタニア、チタニア−アルミナ、チタニア−シリカ、バリウム、カルシウム、それらの化合物、およびそれらの組み合わせなどの担体の使用を伴う。
【0023】
DHNはまたネペタラクトンを水性塩基と接触させることによって製造されてもよい。好適な塩基には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム水酸化物が含まれる。ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、およびテトラアルキルアンモニウム水酸化物が好ましい。塩基混合物の形成の工程に、ネペタル酸を形成するための酸での酸性化の工程が次に続く。上記のように、抽出された水溶液は、この工程で約4より下のpH、好ましくは約3もしくはそれより下のpHへの段階的酸性化にかけられる。酸性化は好ましくは、塩酸、硝酸、または硫酸などの、強い鉱酸を使用して達成される。
【0024】
上記のように製造されたネペタル酸は次に脱プロトン化に、およびその生成物のDHNへの還元にかけられる。この目的のために、ネペタル酸は、一実施形態では、水素化物などの非水性塩基と接触させられて0℃〜約25℃の範囲の温度で脱プロトン化を達成してもよい。アミン、特にトリエチルアミンもまた脱プロトン化に有用である。脱プロトン化工程の後に、生じた塩は還元剤と接触させられてDHN生成物を形成する。好適な還元剤には、ボロハイドライドおよびジアルキルボランが含まれる。好ましい実施形態では、別個の脱プロトン化工程は、過剰の還元剤(NaBHなどの)−すなわち、1当量より多い、好ましくは2当量よりわずかに多い還元剤を用いることによって排除されて脱プロトン化および還元の両方を単一工程で達成する。DHN、その使用およびその製造方法のさらなる記載は、あらゆる目的のために一部としてその全体が援用される、同時係属米国特許出願第11/017,254号明細書に開示されている。
【0025】
天然源から製造されたDHNは、具体的な用途の要件に依存して、その成分部分へ分離されてもされなくてもよい立体異性体の混合物を必然的に表すであろう。組成の変動はネペタ属の異なる種にわたって変わり、幾つかの種では組成の変動は同じ種の植物間に存在することが観察された。後者の種は出発原料のあまり好ましくない源である。
【0026】
分別蒸留は本発明の実施で精油からネペタラクトンを精製するための、およびそれから製造されたジアステレオマーDHNペアを分離するための両方に有効な方法であることが分かった。クロマトグラフ分離もまた好適である。
【0027】
単一立体異性体、ジアステレオマーペア、または異性体の混合物の形態にあるかもしれない、任意の方法に従って製造されたDHNは、式(I)に示されるような位置4での置換によってその誘導体に転化されてもよい。式(I)中のC−4位での置換は、親電子的ネペタル酸、ネペタラクトンの水和形態へのグリニャール試薬求核的付加によって成し遂げられてもよい。ネペタル酸は脱プロトン化工程において非水性塩基で処理されてカルボン酸塩を形成する。一実施形態では、例えば、ネペタル酸はアルカリ金属水素化物、好ましくはKHで処理される。この実施形態では、脱プロトン化工程に、DHN誘導体を形成するためのグリニャール試薬での処理が続く。さらなる実施形態では、ネペタル酸は1当量より多いグリニャール試薬、好ましくは少なくとも2当量のグリニャール試薬で処理されて誘導体の形成を達成する。この方法は、アルカリ金属水素化物などの別個の非水性塩基でのネペタル酸の最初の処理の工程を排除する。2当量よりわずかに過剰の量のグリニャール試薬の使用は、所望の生成物への高い転化を確実にする。
【0028】
典型的なグリニャール試薬には、通常エーテルの存在下におよび水の完全な不存在下に金属マグネシウムと有機塩化物、臭化物またはヨウ化物との結合によって製造されるものが含まれるが、それらに限定されない。塩化アルキルマグネシウム、臭化アルキルマグネシウム、塩化アリールマグネシウム、および臭化アリールマグネシウムを含むがそれらに限定されない、アルデヒドと反応する任意のグリニャール試薬がかかる方法での使用に好適である。ジアルキル亜鉛、ジアリール亜鉛ならびにアルキルリチウムおよびアリールリチウムもまた含まれる。好適なグリニャール試薬に存在してもよい代表的な置換基には、メチル、エチル,n−プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、フェニル、パラ−およびメタ−トリル、ならびにパラ−メトキシ−フェニルをはじめとするパラ−およびメタ−置換フェニルが含まれる。DHNの誘導体、それらの使用およびそれらの製造方法のさらなる記載は、あらゆる目的のために一部としてその全体が援用される、同時係属米国特許出願第10/997,279号明細書に開示されている。
【0029】
DHNはあるいはまた、式(I)中のC−1位での置換によってさらに誘導体化されてもよく、それは、橋頭で非水素置換基を導入するためのヨードメタン(親電子試薬)などのアルキル化剤でのラクトンのエノレート(求核試薬)のアルキル化によって成し遂げられてもよい。一般に、ジイソプロピルアミンリチウムまたはLDAなどの塩基がエノレート生成のために使用されるが、多くの塩基が反応の特定の要件に依存して好適である。アルキルハロゲン化物などのアルキル化剤が好ましいが、多くのアルキル化剤が具体的な反応の要件に依存して好適である。
【0030】
昆虫忌避活性成分として本明細書での使用に好適な、ネペタラクタム、およびN−置換ネペタラクタムなどのその誘導体は、式(III)
【0031】
【化2】

【0032】
(式中、Rはアルカン、アルケン、アルキンまたは芳香族である)
によって図式的に表されてもよい。
【0033】
様々な実施形態で、式(III)中のRは、1)HまたはC、2)C〜C20直鎖、分岐または環式のアルカンまたはアルケン、3)O、NおよびSよりなる群から選択されるヘテロ原子を含んでなるC〜C20直鎖、分岐または環式のアルカンまたはアルケン、4)非置換または置換のC〜C20芳香族であって、置換基がC〜C12直鎖、分岐または環式のアルカンまたはアルケンよりなる群から選択される芳香族、ならびに5)O、NおよびSよりなる群から選択されるヘテロ原子を含んでなる非置換または置換のC〜C20芳香族であって、置換基がC〜C12直鎖、分岐または環式のアルカンまたはアルケンよりなる群から選択される芳香族よりなる群から選択されてもよい。式(III)の置換または非置換のネペタラクタム化合物は単一化合物の単一立体異性体であってもよいし、単一化合物の立体異性体の混合物であってもよいし、またはRが異なる化合物の立体異性体の混合物であってもよい。
【0034】
上記のようなネペタラクタムは、アイゼンブラウン(Eisenbraun)ら著、J.Org.Chem.、53(1988年)、3968−3972ページによって記載されている方法に従ってネペタラクトンを無水アンモニアと接触させることによって製造されてもよい。N−置換ネペタラクタムは次に、ネペタラクタムを適切な金属水素化物と反応させてネペタラクタム塩を形成し、引き続きネペタラクタム塩を適切なアルキル化剤と接触させてN−置換ネペタラクタムを形成することによって形成される。ネペタラクタムおよびN−置換ネペタラクタム、それらの使用およびそれらの製造方法のさらなる記載は、あらゆる目的のために一部としてその全体が援用される、同時係属米国特許出願第60/639,945号明細書に開示されている。
【0035】
昆虫忌避活性成分として本明細書での使用に好適な、ジヒドロネペタラクタムおよびN−置換ジヒドロネペタラクタムなどのその誘導体は式(IV)
【0036】
【化3】

【0037】
(式中、Rはアルカン、アルケン、アルキンまたは芳香族である)
で図式的に表されてもよい。
【0038】
様々な実施形態で、式(IV)の化合物中のRは、1)HまたはC、2)C〜C20直鎖、分岐または環式のアルカンまたはアルケン、3)O、NおよびSよりなる群から選択されるヘテロ原子を含んでなるC〜C20直鎖、分岐または環式のアルカンまたはアルケン、4)非置換または置換のC〜C20芳香族であって、置換基がC〜C12直鎖、分岐または環式のアルカンまたはアルケンよりなる群から選択される芳香族、ならびに5)O、NおよびSよりなる群から選択されるヘテロ原子を含んでなる非置換または置換のC〜C20芳香族であって、置換基がC〜C12直鎖、分岐または環式のアルカンまたはアルケンよりなる群から選択される芳香族よりなる群から選択されてもよい。式(IV)の置換または非置換のネペタラクタム化合物は単一化合物の単一立体異性体であってもよいし、単一化合物の立体異性体の混合物であってもよいし、またはRが異なる化合物の立体異性体の混合物であってもよい。
【0039】
上記のようなジヒドロネペタラクタムは、ネペタラクタムのアルキル化、引き続く水素化によって、またはジヒドロネペタラクタムのアルキル化によって製造されてもよい。ネペタラクタムは、上記アイゼンブラウンによって記載された方法に従ってネペタラクトンを無水アンモニアと接触させることによって製造されてもよい。N−置換ジヒドロネペタラクタムは、ジヒドロネペタラクタムへのネペタラクタムの水素化、引き続くラクタム窒素のアルキル化によって、またはネペタラクタムのアルキル化、引き続くN−置換ネペタラクタムの水素化によって合成される。ネペタラクタムの水素化は、オーガスティン(Augustine)著、「合成化学者のための不均一触媒作用(Heterogeneous Catalysis for the Synthetic Chemist)」、ニューヨーク州ニューヨーク、Marcel Decker社、1996年に記載されているものなどの好適な活性金属水素化触媒の存在下に達成されてもよい。N−置換ジヒドロネペタラクタムはまた、ジヒドロネペタラクタムを適切な金属水素化物と反応させてジヒドロネペタラクタム塩を形成し、引き続きジヒドロネペタラクタム塩を適切なアルキル化剤と接触させてN−置換ジヒドロネペタラクタムを形成することによって形成されてもよい。金属水素化物がジヒドロネペタラクタムのアミド−金属塩を発生させるために使用される。好適な金属水素化物には、水素化カリウムおよび水素化ナトリウムが含まれるが、それらに限定されない。ジヒドロネペタラクタム塩のN−アルキル化に好適なアルキル化剤には、アルカニル、アルケニル、アルキニルまたはアリール塩化物、臭化物、ヨウ化物、スルフェート、メシレート、トシレートおよびトリフレートが含まれる。ジヒドロネペタラクタムおよびN−置換ジヒドロネペタラクタム、それらの使用およびそれらの製造方法のさらなる記載は、あらゆる目的のために一部としてその全体が援用される、同時係属米国特許出願第60/640,129号明細書に開示されている。
【0040】
上記のような粘土組成物で、ジヒドロネペタラクトン、ネペタラクタム、ジヒドロネペタラクタムまたはそれぞれの誘導体は、一化合物の単一立体異性体、一化合物の立体異性体の混合物、2つ以上の別個の化合物のそれぞれの単一立体異性体、または2つ以上の別個の化合物の立体異性体のそれぞれの混合物のブレンドであってもよい。
【0041】
本発明の組成物に使用されたときの昆虫忌避活性成分の有効性は、1つであろうとそれ以上であろうと、それが塗布される宿主表面上の活性成分の表面濃度に依存する。本発明による昆虫忌避組成物では、1%よりはるかに下の活性成分の濃度は、有効な表面濃度を達成するために繰り返し塗布を必要とする。一方、50%より上の濃度は、無駄である過度の表面濃度をもたらす。
【0042】
昆虫忌避組成物では、昆虫忌避効果を引き延ばすために活性成分の蒸発の速度を下げることが典型的には望ましい。本発明の組成物および方法は、皮膚への減少した吸収、延長した昆虫忌避効果、従って活性成分の効果的な使用を提供する。本発明の方法は、活性成分がアルコール溶液から表面へ直接塗布される昆虫忌避組成物よりも大いに延長した昆虫忌避性を提供する。さらに、本明細書の粘土組成物は、ヒトまたは動物皮膚への活性成分の吸収を大いに減らすかまたは排除する。
【0043】
本発明の組成物を製造する際に、上記のような成分が溶媒に溶解されて溶液を形成し、隙間のある層状構造を有する粘土が該溶液と接触させられ、そして溶媒が除去されて隙間のある層状構造を有する粘土を含んでなる乾燥粉末が生成される。好ましい実施形態では、昆虫忌避活性成分などの成分は該隙間内に配置される。溶媒は典型的には真空下に除去され、そして真空下に容易に除去することができる非毒性溶媒が従って好ましい。アルコールが好ましく、イソプロパノールが最も好ましい。
【0044】
活性成分は、隙間のある層状構造を有する粘土と組み合わせられ、このように形成された組成物は、1:5〜5:1、好ましくは3:5〜5:3、より好ましくは4:5〜5:4の活性成分対粘土濃度比を有してもよい。濃度比は、そもそも、異なる量の活性成分の溶液を使用することによるか、溶液中の活性成分の濃度を変えることによるかのどちらかで変えることができる。一実施形態では、活性成分対粘土の1:1重量ローディングは、粘土をイソプロパノール中の活性成分の10重量パーセント溶液と接触させることによって達成される。本実施形態では、例えば、溶媒が除去された後に粘土/活性成分の1:1重量ローディングにするために10mLの10重量%溶液(1g活性成分全体)が1gの粘土と混合される。
【0045】
好ましい一実施形態では、本発明の組成物は水溶液に分散されて水性調合物またはゲルを提供する。これは、ヒト皮膚への塗布のための好ましい一実施形態である。いかに塗布されようとも、粘土粒子は、皮膚表面上にある活性成分のための溜めとしての機能を果たし、皮膚表面でそれは図4に示されるように身体温度で活性成分をゆっくり放出する。
【0046】
隙間のある層状構造を有する多くの粘土は自然界に存在し、全く安価であり、本明細書での使用に好適である。しかしながら、化学組成、結晶化度、および層状モルホロジに関して粘土に似ている合成無機材料もまた本発明の一部として考慮される。隙間のある層状構造を有する好適な粘土には、スメクタイト、カオリン、白雲母、バーミキュライト、金雲母、脆雲母、およびクリソタイル、ならびにそれらの混合物が含まれる。スメクタイト粘土およびカオリン粘土が好ましい。スメクタイト粘土には、モンモリロナイト、バイデル石、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、サウコナイト(sauconite)などが含まれる。カオリン粘土には、カオリナイト、デッカイト、ナクライト、アンチゴライトなどが含まれる。モンモリロナイトが最も好ましい。平均粒度は0.5〜50マイクロメートルの範囲である。
【0047】
異なる粘土は、活性成分の組み入れについて異なる能力を有するであろう。粘土が飽和しているとき、過剰の活性成分は粘土に不安定な水性懸濁液を形成させるかもしれない。これは、下で実施例3および比較例3に例示される。
【0048】
本発明の組成物に使用される昆虫忌避活性成分は、様々な種のダニまたは昆虫の忌避のために有効な量での活性剤としてのその使用に加えて様々な目的のために使用されてもよい。例えば、それは、香水組成物中の芳香化合物として、またはヒトもしくはペット(例えば、犬、猫もしくは鳥)もしくは家畜(例えば、牛、豚、羊もしくは家禽)などの家畜哺乳類のような他の動物の表面のための局所処理剤として使用されてもよい。活性成分は従って、ダニまたは昆虫の忌避性に加えて快適な香りまたは芳香をそれらに与えるために、それらの皮膚、ハイド、毛髪、毛皮もしくは羽毛などの、ヒトまたは家畜哺乳類の表面に、または成育中の植物もしくは作物に局所的やり方で塗布されてもよい。
【0049】
ある種のケースでは、粘土と昆虫忌避活性成分との組成物をさらなる担体と混合することが望ましいかもしれない。好適な担体には、スキン製品もしくは昆虫忌避製品の調合に使用できる、様々な商業的に入手可能な有機および無機液体、固体、もしくは半固体担体または担体調合物の任意の1つが含まれる。スキン製品もしくは局所昆虫忌避剤を調合するとき、皮膚科学的に許容される担体を選択することが好ましい。例えば、担体には、水、アルコール、シリコーン、ペトロラタム、ラノリンまたは幾つかの他の周知の担体成分の多くが含まれるかもしれない。有機液体担体の例には、液体脂肪族炭化水素(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ノナン、デカンおよびそれらの類似体)ならびに液体芳香族炭化水素が挙げられる。
【0050】
他の液体炭化水素の例には、石炭の蒸留ならびに石油の分別蒸留によって得られる灯油をはじめとする、様々なタイプおよびグレードの石油化学ストックの蒸留によって生産されるオイルが挙げられる。他の石油には、農業スプレー油(例えば、石油の蒸留における中間留分よりなる、そしてわずかに揮発性であるにすぎない、いわゆる軽いおよび中間のスプレー油)と一般に言われるものが含まれる。かかる油は通常高度に精製されており、微量の不飽和化合物を含有するにすぎないかもしれない。さらに、かかる油は一般にパラフィン油であり、従って水および乳化剤で乳化させ、より低い濃度に希釈し、スプレーとして使用することができる。木材パルプのサルフェート消化から得られたトール油は、パラフィン油のように、同様に使用することができる。他の有機液体担体には、アルファ−ピネン、ジペンテン、テルピネオールなどの液体テルペン炭化水素およびテルペンアルコールが含まれ得る。
【0051】
他の担体には、シリコーン、石油、ラノリン、液体炭化水素、農業スプレー油、パラフィン油、トール油、液体テルペン炭化水素およびテルペンアルコール、脂肪族および芳香族アルコール、エステル、アルデヒド、ケトン、鉱油、高級アルコール、細分された有機および無機固体材料が含まれる。上述の液体炭化水素に加えて、担体は、本発明の組成物を最終使用用途向けに水に分散させる、および水で希釈させるために使用できる通常の乳化剤を含有することができる。さらに他の液体担体には、脂肪族および芳香族アルコール、エステル、アルデヒド、およびケトンなどの有機溶媒が含まれ得る。脂肪族一価アルコールには、メチル、エチル、ノルマル−プロピル、イソプロピル、ノルマル−ブチル、第二ブチル、および第三ブチルアルコールが含まれる。好適なアルコールには、グリコール(エチレンおよびプロピレングリコールなど)ならびにピナコールが含まれる。好適なポリヒドロキシアルコールには、グリセロール、アラビトール、エリスリトール、ソルビトールなどが含まれる。最後に、好適な環式アルコールには、シクロペンチルおよびシクロヘキシルアルコールが含まれる。
【0052】
通常の芳香族および脂肪族エステル、アルデヒドおよびケトンは、担体として使用することができ、時々上述のアルコールと組み合わせて使用される。さらに他の液体担体には、鉱油などの比較的高い沸点の石油製品および高級アルコール(セチルアルコールなど)が含まれる。さらに、通常のまたはいわゆる「安定剤」(例えば、第三ブチルスルフィニルジメチルジチオカーボネート)は、担体または本発明の組成物を含んでなる担体と併せて、またはその成分として使用することができる。
【0053】
忌避剤が物品中にまたは物品として存在する実施形態をはじめとする、局所昆虫忌避剤の望ましい特性には、低毒性、水浸または発汗による損失に対する抵抗性、低もしくは無臭気または少なくとも快適な香り、塗布の容易さ、および塗布された表面上での乾燥した粘着性なし表面フィルムの速い形成が含まれる。これらの特性を得るために、局所昆虫忌避剤用の調合物は、ダニまたは昆虫がはびこっているまたはそれらの影響を受けやすい宿主に、かかる害虫に対して有効な忌避性を確立するための容易な処理を提供するべきである。かかる目的のために、調合物は、ヒト、またはペット(例えば、犬、猫もしくは鳥)もしくは家畜(例えば、牛、豚、羊もしくは家禽)などの家畜哺乳類のような他の動物の表面のための局所処理剤として使用されてもよい。活性成分は従って、ヒトまたは家畜哺乳類などの他の動物の表面であって、それらの皮膚、ハイド、毛髪、毛皮もしくは羽毛を含んでもよい表面に局所的やり方で、有効量で塗布されてもよい。
【0054】
空気中への忌避剤の分散、または液体ミストとしての、もしくは泡、粉末もしくはダスト中へ組み入れられた忌避剤の分散は、従って忌避剤が所望の宿主表面上に落ちることを可能にするであろう。本発明の組成物をスプレーの形態での塗布のための一過性媒体と組み合わせることによって昆虫忌避剤を調合することもまた望ましいかもしれない。かかる組成物は、圧縮ガス、または機械ポンプスプレーを用いて粘土/活性成分組成物を大気中へ分散させるようにアレンジされたエアゾールであってもよい。同様に、宿主への液体/半固体/固体忌避性組成物の直接散布は、宿主の表面を有効量の忌避剤と接触させる有効な方法である。
【0055】
本発明の組成物で、活性成分はまた他の昆虫忌避物質と組み合わせられてもよい。かかる目的のために組み合わせることができる好適な他の昆虫忌避剤には、ベンジル、安息香酸ベンジル、2,3,4,5−ビス(ブチレ−2−ン)テトラヒドロフルフラール、ブトキシポリプロピレングリコール、N−ブチルアセトアニリド、ノルマル−ブチル−6,6−ジメチル−5,6−ジヒドロ−1,4−ピロン−2−カルボキシレート、アジピン酸ジブチル、フタル酸ジブチル、コハク酸ジ−ノルマル−ブチル、N,N−ジエチル−メタ−トルアミド(DEET),ジメチルカルベート(carbate)、フタル酸ジメチル、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、イソシンコメロン酸ジ−ノルマル−プロピル、2−フェニルシクロヘキサノール、p−メンタン−3,8−ジオール、およびノルマル−プロピルN,N−ジエチルスクシナメートが含まれるが、それに限定されない。
【0056】
上記のような昆虫忌避活性成分に加えて、本発明の組成物はまた、1つもしくはそれ以上の精油および/または精油の活性成分を含んでもよい。「精油」は、香りおよび植物の他の特有の性質を有する植物から得られた任意のクラスの揮発性油と定義される。有用な精油の例には、苦扁桃油、アニス油、メボウキ油、ベイ油、カラウェー油、カルダモン油、シダー油、セロリ油、カモミール油、桂皮油、シトロネラ油、丁子油、コリアンダー油、クミン油、ジラ油、ユーカリ油、ウィキョウ油、ジンジャー油、グレープフルーツ油、レモン油、ライム油、ハッカ油、オランダセリ油、ペパーミント油、コショウ油、バラ油、スペアミント油(メントール)、オレンジ油、サイム油、ウコン油、およびウィンターグリーンの油が挙げられる。精油中の活性成分の例は、シトロネラール、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、サリチル酸プロピル、シトロネロール、サフロール、およびリモネンである。
【0057】
本発明の組成物によって忌避するかもしれない昆虫には、成熟状態で(非成熟昆虫状態には、幼虫およびサナギが含まれる)、頭部、胸部、および腹部、3対の脚、ならびにしばしば(しかし必ずとは限らない)2対の膜質翼への身体の分割によって特徴づけられる無脊椎動物の大集団の任意の一員が含まれるかもしれない。この定義にはそれ故、様々な咬む昆虫(例えば、アリ、ハチ、ツツガムシ類、ノミ、蚊、ダニ、ヌカカ、サシガメ虫(Reduviid bug)、カリバチ)、咬むハエ[例えば、ブヨ、緑頭ハエ、サシバエ、ノサシバエ(ヘマトビア・イリタンス(haematobia irritans)]、木喰虫(例えば、シロアリ)、有害昆虫(例えば、イエバエ、コックローチ、シラミ、ゴキブリ、ワラジムシ)、および家庭害虫(例えば、コクヌストモドキおよびビーンビートル、チリダニ、ガ、セイヨウシミ,ゾウムシ)が含まれる。それから昆虫を忌避させることが望まれるかもしれない宿主には、昆虫によって影響を受ける任意の植物または動物(ヒトをはじめとする)が含まれるかもしれない。典型的には、宿主は昆虫に受け入れられる食料源かまたは昆虫に受け入れられる生息環境であると考えられる。一実施形態では、本発明の方法にはこのように、昆虫を本発明の組成物に曝すことによる、上記のものなどの1つもしくはそれ以上の昆虫の忌避方法が含まれる。対応して、本発明の別の実施形態は、昆虫宿主の皮膚、毛皮または羽毛に本発明の組成物を塗布することによって昆虫宿主の皮膚、毛皮または羽毛を処理する方法である。
【0058】
しかしながら、別の実施形態では、本発明の組成物は芳香配合物としてまたは芳香組成物中に使用され、スキンローションおよび香水でのように、心地良い芳香を与えるために、ヒトまたは動物の皮膚、ハイド、毛髪、毛皮または羽毛に局所的なやり方で塗布されてもよい。特に本明細書の組成物と関係する快適な芳香のために、本発明のさらなる実施形態は、別々にまたは昆虫忌避剤としてのその使用と一緒に他の目的に向けられる製品としての使用のために本発明の組成物がさらなる組成物へ調合されているものである。かかる製品の芳香および/または昆虫忌避性は、それらでの本発明の組成物の存在によって高められるであろう。
【0059】
かかる製品の中には、コロン、ローション、スプレー、クリーム、ゲル、軟膏、バスおよびシャワーゲル、発泡製品(例えば、髭剃りクリーム)、メークアップ、デオドラント、シャンプー、ヘアラッカー/ヘアリンス、および個人用石鹸組成物(例えば、ハンドソープおよびバス/シャワーソープ)が含まれる(しかしそれらに限定されない)。本発明の組成物は、勿論、単に心地良い芳香を与えるためにかかる製品へ組み入れられてもよい。当該技術で実施されるような組み入れのいかなる方法も満足できる。
【0060】
上に議論されたような、本発明の組成物から得ることができる多種多様な製品の相当する態様は、本発明のさらなる代わりの実施形態であり、それは、組成物として提供すること、または本発明の粘土/活性成分組成物を、組成物、表面処理剤または物品へ組み入れることによる、組成物、表面用の局所処理剤、または製造品の製造方法である。かかる製品、ならびに上記の方法およびプロセスは、ダニまたは昆虫忌避剤としての、芳香配合物または香水としての、または芳香組成物もしくは調合物での、または表面用の局所処理剤での、または製品での本発明の組成物の使用を例示する。
【0061】
本発明の組成物はまた、昆虫忌避剤、芳香製品、または他のパーソナルケア製品として製造されるかにかかわらず、パーソナルケア業界で典型的であるような他の治療的にまたは美容上活性な添加剤または成分を含有してもよい。これらの例には、殺菌剤、日焼け止め剤、日光遮断剤、ビタミン、なめし剤、植物抽出物、抗炎症剤、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、レチノイド、アルファ−ヒドロキシ酸、消毒剤、抗生物質、抗菌剤、抗ヒスタミン剤、増粘剤などの添加剤、緩衝剤、キレート剤、防腐剤、ゲル化剤、安定剤、界面活性剤、エモリエント、着色剤、アロエ、ワックス、および浸透促進剤、ならびにそれらの任意の2つ以上の混合物が挙げられる。
【0062】
本発明の組成物がさらなる調合物へ組み入れられるとき、該調合物に含有される本発明の組成物の量は一般に、最終製品の重量を基準にして約80重量%を超えないであろうが、より多くの量がある種の用途では用いられてもよく、この量は限定的ではない。より好ましくは、本発明の組成物の存在に好適な量は、最終調合物、物品または製品の重量を基準にして、少なくとも約0.001重量%、好ましくは約0.01重量%〜約50重量%以下であり、より好ましくは、約0.01重量%〜約20重量%であろう。
【0063】
本発明のさらなる実施形態では、本発明の組成物は、ダニまたは昆虫を忌避させる効果を生み出すために物品へ組み入れられる。本実施形態内に入ると考えられる物品には、衣類、蚊帳のような屋外または軍装備品などの繊維製品をはじめとする製品、製材などの天然品、または昆虫に弱い植物の葉が含まれる。
【0064】
本発明の別の実施形態では、本発明の組成物は、忌避性または人に心地良い芳香を生み出すために物品へ組み入れられるか、または本発明の組成物は、それに忌避性または香りを与えるために対象の表面に塗布される。塗布の特定のやり方は、問題になっている表面および必要な忌避性または香りの強さを与えるために必要とされる濃度に依存するであろう。これらの実施形態内に入ると考えられる物品には、繊維製品、空気清浄剤、ろうそく、様々な良い香りのする物品、繊維、シート、紙、ペイント、インク、粘土、木材、家具(例えば、パティオおよびデッキ用の)、カーペット、衛生用品、プラスチック、ポリマーなどをはじめとする製品が含まれる。
【0065】
本発明の組成物の調合物についての他の用途は、そのそれぞれが本明細書の一部としてその全体が援用される、米国特許出願公開第2003/062,357号明細書、同第2003/079,786号明細書、および同第2003/191,047号明細書に開示されている。
【0066】
本発明は次の具体的な実施形態でさらに説明されるが、それによって限定されない。
【実施例】
【0067】
一般的な手順
すべての反応および操作は、オープンの標準実験室ドラフトにおいて標準実験室ガラス器具で実施した。ネペタラクトンは、バージェ(ニュージャージー州ブルームフィールド)(Berje,(Bloomfield,NJ)から入手した、キャットニップからの商業的に入手可能なキャットニップ油の水蒸気蒸留によって得た。すべての無機塩および有機溶媒は、無水THFを除いて、VWRサイエンティフィック(VWR Scientific)から入手した。次の手順で使用されるDEETおよび水素化触媒をはじめとするすべての他の試薬は、シグマ−アルドリッチ・ケミカル(ウィスコンシン州ミルウォーキー)(Sigma−Aldrich Chemical(Milwaukee,WI))から入手し、受け取ったまま使用した。pHの測定はマイクロ・エッセンシャル・ラボラトリー(Micro Essential Laboratory)製のピーハイドリオン(pHydrion)ペーパーで行った。NMRスペクトルは、ケンブリッジ・アイソトープ・ラボラトリーズ(Cambridge Isotope Laboratories)から入手した重水素化溶媒を用いてブルッカーDRXアドバンス(Bruker DRX Advance)(500MHz H、125MHz 13C)で得た。クロイサイト(Cloisite)およびラポナイト(Laponite)粘土は、サザーン・クレー・プロダクツ(テキサス州ゴンザレス)(Southern Clay Products(Gonzales,Texas))から入手した。
【0068】
本明細書に用いられる省略形は
DEET=N,N−ジエチル−メタ−トルアミド
DHN=ジヒドロネペタラクトン
THF=テトラヒドロフラン
RT=室温
TLC=薄層クロマトグラフィー
FTIR=フーリエ変換赤外分光法
TGA=熱重量分析
no.=数
である。
【0069】
次の実施例では、表記法「w/v」は、100mLの溶液当たりの活性成分のグラム単位の重量を意味する。
【0070】
実施例1
ネペタラクトンの精製
おおよそ75%トランス,シス−ネペタラクトンを含有するキャットニップ油(60g、ロット番号22941)を500mL丸底フラスコへ入れ、室温で撹拌しながら石油エーテル(200mL)で処理した。0℃への冷却時に、白色固体が溶液から沈澱し、フラスコの底部に沈降した。白色固体を濾過し、0℃に冷却した石油エーテルで洗浄し、真空下に乾燥させた。得られた白色固体生成物(30g、50%)は、NMR分析によってトランス,シス−ネペタラクトンであると測定され、27〜29℃の融点を与えた。観察されたスペクトル特性は、式IVbに表されるトランス,シス−ネペタラクトンの構造表現と一致した。
【0071】
【化4】

【0072】
ネペタラクトンの水素化
そのように製造した10gのトランス,シス−ネペタラクトンを100mLのエタノールに溶解させた。生じた溶液を500mLフィッシャー−ポーター(Fisher−Porter)ボトルに加え、2重量%パラジウム−炭酸ストロンチウム(1.2g)で処理し、水素ラインに連結した。フラスコに2回水素を装入し、次に排気し、次に水素で15psiに加圧し、室温で撹拌した。17時間後に、容器をガス抜きし、生じた混合物を、セライトを通して濾過し、エタノール(100mL)で洗浄した。濾液を排気にかけて溶媒を除去し、油状残渣を残した。油状残渣をヘキサン中の10%酢酸エチルで溶出する、シリカゲルでのカラムクロマトグラフィーで精製し、TLCを用いて生成物含有分画を特定した。生成物含有分画を組み合わせ、真空下の溶媒の除去は、31〜32℃の融点を与える白色固体(10g、100%)として生成物を与えた。NMR分析および生成物の観察されたスペクトル特性は、式IXに表されるDHNジアステレオマーの構造表現と一致した。
【0073】
【化5】

【0074】
DHN/クロイサイト粘土サンプルの製造
そのように製造した500mgのDHNを5mLのイソプロパノールに溶解させた。生じた溶液を20mLシンチレーション・バイアル中で500mgのクロイサイト粘土と組み合わせ、VWRサイエンティフィック・ボルテックス−ゲニーII振盪機(VWR Scientific Vortex−Genie II Shaker)で一晩振盪した。溶媒を次に混合物から真空下に除去し、白色粉末(1.0g)が生成された。生成物のFTIR分析は、1768cm−1でのカルボニル・ピークによってDHNの存在を示唆した。
【0075】
比較例1
ネペタラクトン/クロイサイト粘土サンプルの製造
実施例1で製造した500mgのトランス,シス−ネペタラクトンを5mLのイソプロパノールに溶解させた。生じた溶液を実施例1の手順に従って500mgのクロイサイト粘土と組み合わせた。溶媒を次に振盪した混合物から真空下に除去して白色粉末(1.0g)が生成された。生成物のFTIR分析は、1786cm−1でのカルボニル・ピークによってトランス,シス−ネペタラクトンの存在を示唆した。
【0076】
比較例2
DEET/クロイサイト粘土サンプルの製造
500mgのDEETを5mLのイソプロパノールに溶解させた。生じた溶液を実施例1の手順に従って500mgのクロイサイト粘土(500mg)と組み合わせた。溶媒を振盪した混合物から真空下に除去して白色粉末(1.0g)が生成された。生成物のFTIR分析は、1666cm−1でのカルボニル・ピークによってDEETの存在を示唆した。
【0077】
実施例2
DHN/ラポナイト−XLG粘土サンプルの製造
実施例1で製造した1gのDHNを1mLのイソプロパノールに溶解させた。生じた溶液の0.100mLを実施例1の手順に従って500mgのラポナイト−XLG粘土および10mLの蒸留水と組み合わせた。混合物は放置時にゲル化した。
【0078】
実施例3および比較例3
DHN/ラポナイト−RDS粘土サンプルの製造
実施例1で製造した0.6gのDHNを1mLのイソプロパノールに溶解させた。生じた溶液の0.100mLを実施例1の手順に従って500mgのラポナイト−RDS粘土および10mLの蒸留水と組み合わせた。無色透明の安定した混合物が得られた。
【0079】
1mLのイソプロパノール中の1gのDHNよりなる溶液を0.6g/1mLサンプルの代わりに用いたとき、放置時に、生じた分散系は不安定であり、粘土粒子が凝集し分離し始めた。
【0080】
実施例4
サンプルのTGA/FTIR分析
表1に「サンプル・サイズ」として示される量で実施例1、比較例1、および比較例2の処理粘土組成物のサンプルをガラスるつぼに入れ、ニコレ・ネクサス(Nicolet Nexus)670FTIR分光器にインターフェース接続されたメトラー−トレド(Mettler−Toledo)TGA/SDTA 851熱重量分析器中で加熱した。検体を5分間の等温保持付きで10℃/分で25℃から300℃まで加熱した。機器を80mL/分での乾燥空気でパージした。全オフガスを、それらが20cm路程ガスセルを通過するときに4cm−1分解能および共添加(co−added)28スキャンで操作されるFTIR分光器で監視して実験の間ずっと約30秒ごとにスペクトルをもたらした。全ガスを、10M−ガスセルでの実験後分析のためにポリフッ化ビニル・ガスバッグに集めた。増加した路程(50×)は、オンライン分析によって検出されないマイナーのまたはゆっくり発生するガスの検出を可能にする。TGA結果を図2に示す。FTIR分析は、発生中の物質が粘土を処理した昆虫忌避剤であることを確認した。観察された総減量を表1に示す。
【0081】
【表1】

【0082】
実施例5
37℃でのサンプルの等温TGA
デュポン・インスツルメント・モデル(DuPont Instruments Model)951 TGAを用い、実施例1、比較例1、および比較例2からの忌避剤処理粘土のサンプルを白金サンプル皿へロードし、窒素を100cc/分でサンプル上方に流しながら、37℃に加熱し、37℃で4,200分間保持した。減量を全サンプルについて観察した。実験の継続期間にわたって残っている重量の百分率を表2および図3に示す。サンプル・サイズ、および実験の継続期間にわたる減量の平均速度を表3に示す。
【0083】
【表2】

【0084】
【表3】

【0085】
実施例6
サンプルの蚊忌避性
5つの液溜めを含有するグプタ(Gupta)ボックス中の各液溜めに、26mLの血液当たりクエン酸ナトリウムおよび72mgのATP二ナトリウム塩を含有するウシ血液を加えた。そのように製造した各液溜めを次にバウドルッチェ(Baudruche)(動物腸)膜でカバーした。液溜めを次に37℃に加熱した。表4に指定されるような量の製造粘土検体をそれぞれ、膜のそれぞれに適用した。5分後に、おおよそ250匹の4日齢の雌ネッタイシマカ(Aedes aegypti)をチャンバーに加えた。各処理剤について膜上に着陸する蚊の数を20分にわたって2分間隔で記録した。
【0086】
表4に示されるように、幾つかの対照サンプルをこの実験の目的のために製造した。イソプロパノール中の実施例1で製造したDHNの1g/100mL溶液を、昆虫忌避剤を塗布するための共通手段を表す対照として、すなわちイソプロパノール溶液を製造した。さらに、DHNまたは任意の他の昆虫忌避剤なしの、純粘土だけの組み合わせを製造した。粘土検体は、水と混合し、一晩振盪することによって製造した。
【0087】
【表4】

【0088】
表5の結果は、表4のサンプル3をサンプル4と比較して、「プローブ」とも呼ばれる昆虫着陸の数を示す。図4は全5検体の結果の合成画像を示す。図4は各2分間隔中に起こる着陸を示す。
【0089】
【表5】

【0090】
上の実施例で実証されるように、本発明の組成物がネペタラクトンの類似組成物の有効昆虫忌避性の約4倍の継続期間を提供するが、同時に、DEETの類似組成物から達成されるものよりかなり有効な程度の忌避性を提供することは本発明の驚くべき態様である。
【0091】
本発明の組成物または方法がある種の成分または工程を含んでなる、含む、含有する、有する、それらよりなるまたはそれらによって構成されるとして述べられるまたは説明される場合、該記述または説明がそれと反対に明白に規定しない限り、明白に述べられるまたは説明されるもの以外の1つもしくはそれ以上の成分または工程が組成物または方法に存在してもよいと理解されるべきである。しかしながら、代わりの実施形態では、本発明の組成物または方法はある種の成分または工程より本質的になるとして述べられてもまたは説明されてもよく、その実施形態では組成物または方法の操作の原理または際立った特徴を実質的に変えるであろう成分または工程はその中には存在しないであろう。さらなる代わりの実施形態では、本発明の組成物または方法はある種の成分または工程よりなるとして述べられてもまたは説明されてもよく、その実施形態では述べられたようなもの以外の成分または工程はその中に存在しないであろう。
【0092】
不定冠詞「a」または「an」が本発明の、組成物中の成分、または方法での工程の存在の記述または説明に関して用いられる場合、該記述または説明がそれと反対に明白に規定しない限り、かかる不定冠詞の使用は組成物中の成分の、または方法での工程の存在を数の上で1つに限定しないことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】DHNの様々な立体異性体を表す。
【図2】DEET−粘土組成物およびネペタラクトン−粘土組成物の熱重量分析と並置される本発明のDHN−粘土組成物の熱重量分析(TGA)を表す。
【図3】DEET−粘土組成物およびネペタラクトン−粘土組成物のそれらと並置される本発明のDHN−粘土組成物の4000分にわたる37℃での等温減量を表す。
【図4】DHNとラポナイト−粘土との組成物の蚊忌避性を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隙間のある層状構造を有する粘土と、ジヒドロネペタラクトン、ジヒドロネペタラクトンの誘導体、ネペタラクタム、ジヒドロネペタラクタム、N−置換ネペタラクラム、N−置換ジヒドロネペタラクタム、およびそれらの混合物よりなる群から選択される成分とを含んでなる組成物。
【請求項2】
成分がジヒドロネペタラクトンである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
成分が
(1S,9S,5R,6R)−5,9−ジメチル−3−オキサビシクロ[4.3.0]ノナン−2−オン、
(1S,5S,9S,6S)−5,9−ジメチル−3−オキサビシクロ[4.3.0]ノナン−2−オン、
(1S,9S,6S,5R)−5,9−ジメチル−3−オキサビシクロ[4.3.0]ノナン−2−オン、
(9S,5S,1R,6R)−5,9−ジメチル−3−オキサビシクロ[4.3.0]ノナン−2−オン、および
(9S,1R,5R,6R)−5,9−ジメチル−3−オキサビシクロ[4.3.0]ノナン−2−オン
ならびにそれらの混合物
よりなる群から選択されるジヒドロネペタラクトンの異性体である請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
成分が次の構造式
【化1】


(式中、Rは水素、C〜C20アルキルまたはC〜C20アリールであり、Rは水素またはC〜C20アルキルである)
で表されるジヒドロネペタラクトンの誘導体である請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
成分がネペタラクタムである請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
成分が次の構造式
【化2】


(式中、Rはアルカン、アルケン、アルキンまたは芳香族である)
で表されるN−置換ネペタラクタムである請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
成分がジヒドロネペタラクタムである請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
成分が次の構造式
【化3】


(式中、Rはアルカン、アルケン、アルキンまたは芳香族である)
で表されるN−置換ジヒドロネペタラクタムである請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
一化合物の単一立体異性体、一化合物の立体異性体の混合物、2つ以上の別個の化合物のそれぞれの単一立体異性体、または2つ以上の別個の化合物の立体異性体のそれぞれの混合物のブレンドである請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
粘土がスメクタイト、カオリン、白雲母、バーミキュライト、金雲母、脆雲母、およびクリソタイル、ならびにそれらの混合物よりなる群から選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
成分が粘土の隙間内に配置される請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
美容用添加剤をさらに含んでなる請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
液体、発泡体、粉末、半固体または固体として調合される請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
成分を溶媒に溶解させて溶液を形成し、該溶液と隙間のある層状構造を有する粘土を接触させ、該溶媒を除去して乾燥粉末を生成することを含んでなる請求項1に記載の組成物の製造方法。
【請求項15】
ダニ、昆虫を請求項1に記載の組成物に曝すことを含んでなる1つもしくはそれ以上のダニまたは昆虫の忌避方法。
【請求項16】
昆虫が、咬むハエ、ツツガムシ類、ノミ、蚊、およびシラミよりなる群の一員もしくはそれ以上から選択される請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−533043(P2008−533043A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501011(P2008−501011)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際出願番号】PCT/US2006/008787
【国際公開番号】WO2006/096876
【国際公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】