説明

復号器及び再生装置

【課題】信頼度の伝播により、復号を行う再生装置において、小さな媒体欠陥を検出して、信頼度情報の訂正を行う。
【解決手段】内復号器(234)と、外復号器(236)と、軟入力信号の移動平均値を計算し、これからスケーリング係数を得て、内復号器(234)の信頼度情報を操作する欠陥検出器(230)を設ける。微小な欠陥を精度良く検出し、内復号器(234)の信頼度情報を操作するため、小さな欠陥による誤り伝播を抑圧できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内復号器と外復号器との間で、信頼度情報を伝播して復号する復号器及び再生装置に関し、特に、媒体から読み出した信号から欠陥部分を検出して、内復号器の信頼性情報を操作する復号器及び情報再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代信号処理技術として、信頼度を伝播するターボ(Turbo)符号や低密度パリティ検査(LDPC: Low density parity check)符号といった反復復号を行うデジタル信号処理方式が注目されている。
【0003】
例えば、磁気ディスク等の記憶媒体における誤りには、大きく分けて、ランダム誤りとバースト誤りがある。ランダム誤りは、誤りが長く連続しない広く分布する誤りである。それに対して、バースト誤りは、媒体欠陥やハードディスクドライブ特有のサーマル・アスペリティ(TA:Thermal Asperity)により発生する連続誤りである。
【0004】
反復復号方式の最大の特徴は、大きなブロックとランダム性とから得られる大きな関連性を持つ符号を、信頼度情報の伝播によって、誤った情報を離れた複数の正しい情報から訂正できることにある。反復復号方式では、ランダムに分散した情報を、信頼度伝播によって、高い誤り訂正能力を有する。
【0005】
図16は、従来の反復復号を用いた再生装置の構成図である。図16に示すように、反復復号方式は、反復復号器640として、複数の復号器(例えば、PRチャネルに対する軟入力軟出力(SISO: Soft-input soft-output)復号器642及び低密度パリティ検査符号に対する信頼度伝播(BP: Belief propagation)復号器644)を持ち、お互いに、“0”及び“1”となる信頼度情報(尤度情報とも言う)を、伝播することにより、誤り訂正を行う。又、信頼度伝播復号器644内のみで、反復復号する形式のものも存在する。
【0006】
即ち、記録媒体からヘッドを介して再生した再生波形は、PR波形等化器602により既知の符号間干渉を与えられる。即ち、PR波形等化器602では、再生波形は、アナログフィルタ610を通り、アナログ・ディジタル変換器(A/Dコンバータ)612に入力する。A/Dコンバータ612は、サンプリングクロックに従って、ディジタルサンプリングする。ディジタルサンプリングされたサンプリング波形は、ディジタルフィルタ614を通り、所望のパーシャル・レスポンス(PR)に波形等化され、PR等化系列が得られる。
【0007】
PRチャネルに対する第一の復号器(SISO復号器)642は、記録したデータの“0”及び“1”に対応する最も確からしい信頼度情報を出力する。さらに、予め、記録データに付加した検査情報(例えば、パリティビット)を元に、第二の復号器(BP復号器)644は、誤り検査を行い、信頼度情報を更新する。
【0008】
そして、更新した信頼度情報を、第一の復号器642にフィードバックする。この反復動作を既定条件行い、最終的に信頼度情報を、“0”及び“1”の2値データに判定することで、反復復号が完了する。反復復号された復号データは、ECC訂正回路等のエラー訂正器630で、エラー訂正され、復号データ列を得る。
【0009】
しかし、例えば、記録装置において、媒体欠陥によって発生する信号振幅の低下に起因するバースト誤りが発生した場合、誤った信頼度情報をランダムに分散し、伝播することにより誤り情報が波及し、復号が破綻してしまう。
【0010】
このバースト誤りの対策として、サーマル・アスペリティ検出器620を設け、再生波形を、固定のしきい値で、判定し、サーマル・アスペリテイ検出し、消失フラグを出力する。この消失フラグを、第1の復号器642に入力し、その位置の信頼度情報を「0」(不定)とすることにより、誤った信頼度情報の伝播を抑制する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0011】
又、RLL符号変調を使用する場合には、第1の復号器642の出力から、RLL符号の制約違反を認識することで、バースト誤り箇所を特定し、第1の復号器642の出力である信頼度情報を、不定とする方法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0012】
また、媒体欠陥の対策法ではないが、通信路における再生信号の瞬時的な振幅低下に応じて、最尤復号器における枝メトリックの補正を行う方式も提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2004−127408号公報
【特許文献2】特開2005−166089号公報
【特許文献3】特開2002−164946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、従来の反復復号方式における反復復号器の信頼度情報の訂正方法は、バースト的な誤りを対象としているため、明確な振幅異常(低下やレベル飽和)が発生した場合のみ、信頼度情報を「0」(不定)とするものであった。
【0014】
しかしながら、媒体の欠陥は、このように広い箇所に渡るものばかりでなく、局所的な欠陥(マイクロデフェクトという)もある。このような小さな欠陥も、重大な誤り波及を引き起こすおそれがあり、従来技術では、このような小さな欠陥して、信頼度情報を補正することが困難である。又、欠陥検出により、信頼度情報を「0」としてしまうため、小さな欠陥に対しては、信頼度情報を有効に訂正することが困難であった。
【0015】
又、通信路の再生信号を対象とした従来技術では、再生される信号が信号間干渉しており、多値のレベルを検出する必要がある場合には、即ち、PR信号のように、符号間干渉を持つチャネル再生信号を復号する場合には、正しい識別点信号を誤補正するおそれがあり、性能劣化を生じる。
【0016】
従って、本発明の目的は、媒体の小さな欠陥により誤り伝播を抑制し、符号間干渉を持つチャネル再生信号を、信頼度情報の伝播により復号する復号器及び再生装置を提供することにある。
【0017】
又、本発明の他の目的は、符号間干渉を持つチャネル再生信号から、媒体の小さな欠陥による誤りの程度を検出して、信頼度情報を訂正する復号器及び再生装置を提供することにある。
【0018】
更に、本発明の他の目的は、媒体の小さな欠陥による信頼度情報の誤り伝播を抑制し、安定な復号を実現するための復号器及び再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この目的の達成のため、本発明の復号器は、符号間干渉を持つチャネル再生信号を復号する軟入力軟出力復号器と、外符号化に対して復号する軟入力復号器と、前記軟入力軟出力復号器の軟入力信号の両側振幅変動を検出し、振幅低下に応じた重み付け値を出力する重み付け演算器とを有し、前記重み付け値により前記軟入力軟出力復号器の軟出力値を小さくするとともに、前記軟入力軟出力復号器と前記軟入力復号器との間で、信頼度情報の伝播により復号する。
【0020】
又、本発明の情報再生装置は、再生波形を等化し、符号間干渉を持つチャネル再生信号に等化する波形等化器と、前記チャネル再生信号を復号する軟入力軟出力復号器と、外符号化に対して復号する軟入力復号器と、前記軟入力軟出力復号器の軟入力信号の両側振幅変動を検出し、振幅低下に応じた重み付け値を出力する重み付け演算器とを有し、前記重み付け値により前記軟入力軟出力復号器の軟出力値を小さくするとともに、前記軟入力軟出力復号器と前記軟入力復号器との間で、信頼度情報の伝播により復号する。
【0021】
更に、本発明は、好ましくは、前記重み付け演算器は、前記軟入力信号を振幅中心値で折り返す処理を行う絶対値信号化部と、所定の範囲の移動平均演算を行う移動平均演算部と、前記移動平均値を全絶対値信号の平均値により除算する規格化演算部と、前記規格化演算値が「1」以上の場合は「1」の、「1」を越えない場合には、前記規格化演算値を前記重み付け値として、生成する重み付け生成部とからなる。
【0022】
更に、本発明は、好ましくは、前記重み付け生成部は、前記規格化演算値が、しきい値T以下の場合には、「0」以上T未満の重み付け値を更に生成する。
【0023】
更に、本発明は、好ましくは、前記重み付け演算部は、前記軟入力信号の振幅中心値を0とし、0以上の信号を上側信号、0未満の信号を下側信号として分離する分離部と、前記上側信号を所定の範囲の移動平均演算を行う上側信号移動平均演算部と、前記下側信号を所定の範囲の移動平均演算を行う下側信号移動平均演算部と、前記上側移動平均値を、全上側信号の平均値により除算する上側規格化演算部と、前記下側移動平均値を、全下側信号の平均値により除算する下側規格化演算部と、前記上側及び下側規格化演算値を合成する合成演算部と、前記合成演算値が「1」以上の場合は「1」の、「1」を越えない場合には、前記規格化演算値を前記重み付け値として、生成する重み付け生成部とからなる。
【0024】
更に、本発明は、好ましくは、前記重み付け生成部は、前記規格化演算値が、しきい値T以下の場合には、「0」以上T未満の重み付け値を更に生成する。
【0025】
更に、本発明は、好ましくは、前記軟入力軟出力復号器は、前記軟出力信号である信頼度情報に、前記重み付け演算部から出力された重み付け値をn乗(nは1以上)したn乗重み付け値を掛けた重み付け信頼度情報を生成する信頼度重み付け部を備えた。
【0026】
更に、本発明は、好ましくは、前記軟入力軟出力復号器は、前記軟入力信号と軟入力期待値とのユークリッド距離を元に信頼度情報を生成するブランチメトリック演算部と、前記軟入力期待値に、前記重み付け演算部から出力した重み付け値を掛ける重み付け軟入力期待値演算部とを有する。
【0027】
更に、本発明は、好ましくは、前記軟入力軟出力復号器は、前記軟入力信号と軟入力期待値とのユークリッド距離を元に信頼度情報を生成するブランチメトリック演算部と、前記ブランチメトリック演算結果に前記重み付け演算部から出力した重み付け値をn乗(nは1以上)したn乗重み付け値を掛けた重み付けブランチメトリックを生成する重み付けブランチメトリック演算部とを有する。
【0028】
更に、本発明は、好ましくは、前記規格化演算部は、前記軟入力軟出力復号器の軟入力期待値の中心値を0とし、その絶対値の総和を2で割った値を、前記絶対値の平均値として用いる。
【0029】
更に、本発明は、好ましくは、前記第1及び第2の規格化演算部は、前記軟入力軟出力復号器における軟入力期待値の中心値を0とし、0以上の期待値の総和を2で割った値を前記全上側信号平均値、0未満の期待値の総和を2で割った値を全下側信号平均値として用いる。
【発明の効果】
【0030】
単純なしきい値検出に対して、移動平均値を計算し、これからスケーリング係数を得るため、微小な欠陥を精度良く検出し、軟入力軟出力復号器の信頼度情報を操作するため、小さな欠陥による誤り伝播を抑圧できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を、記録再生装置、欠陥検出器、欠陥補正復号器の第1の実施の形態、欠陥補正復号器の第2の実施の形態、欠陥補正復号器の第3の実施の形態、欠陥補正復号器の第4の実施の形態、欠陥検出器の他の実施の形態、記録再生装置の他の実施の形態、他の実施の形態の順で説明するが、本発明は、この実施の形態に限られない。
【0032】
(記録再生装置)
図1は、本発明の記録再生装置の一実施の形態のブロック図、図2は、図1の媒体欠陥検出による信頼度情報訂正の動作説明図、図3及び図4は、図1及び図2のスケーリング補正による信頼度情報の説明図である。図1は、磁気ディスク装置の反復復号方式の記録再生装置を示す。
【0033】
図1の再生波形は、磁気デイスクのデータをヘッドが読み取り、図示しないプリアンプで増幅されたものである。この磁気デイスクのデータは、ユーザデータに、誤り訂正符号(ECC)が付加され、且つKビットのデータに対し、Mビットのパリティを付加され、記録されたものである。このパリティ符号としては、例えば、LDPC(低密度パリティ符号)、SPC(シングルパリティ符号)、ターボ符号等を使用できる。
【0034】
このヘッドからの再生波形は、図示しない可変利得アンプで、振幅調整され、PR波形等化部220に入力する。PR波形等化部220では、アナログ(ローパス)フィルタ(LPF)223が、振幅調整された再生信号の高周波数域をカットし、A/Dコンバータ(ADC)224が、そのアナログ出力をデジタル信号へ変換する。その後、FIR(Finite Impulse Response)フィルタ等のデジタルフィルタ225で、波形等化を行い、PR等化系列yを得る。
【0035】
PR等化系列yは、遅延器210で、欠陥検出器230の欠陥検出動作による遅延分、遅延され、反復復号器232に入力する。反復復号器232は、PR等化系列yに対する軟入力軟出力(SISO: Soft-input soft-output)復号器234と、低密度パリティ検査(LDPC: Low density parity check)符号に対する信頼度伝播(BP: Belief propagation)復号器236とで構成される。
【0036】
軟入力軟出力復号器234は、例えば、BCJR(Bahl-Cocke-Jelinek-Raviv)、MAP(Maximum a posteriori)復号及びSOVA(Soft output viterbi algorithm)などが用いられる。
【0037】
また、信頼度伝播復号器236は、例えば、Sum−product(SP)復号や、Min−Sum復号などが用いられる。さらに、反復復号法は、LDPCを例としたが、ターボ符号や、シングルパリティ検査(SPC: Single parity check)符号などに対する復号などでも良い。
【0038】
反復復号されたデータ列は、誤り訂正復号器238で、誤り訂正符号を使用した誤り訂正を行い、ユーザデータを出力する。誤り訂正復号器238は、例えば、ECC復号器で構成される。
【0039】
反復復号器232では、SISO復号器234とBP復号器236間と、BP復号器236とSISO復号器234間とを、記録データ“0”または“1”に対する信頼度情報Le(uk),La(uk)を、定められた条件のもと、繰り返し伝播する。反復終了後、信頼度情報を、“0”と“1”に硬判定し、エラー訂正器238に出力する。
【0040】
次に、欠陥検出器230は、図2に示すように、軟入力軟出力復号器の入力信号yを、信号の中心レベルで折り返した信号(「0」中心の場合には、絶対値信号)を、Lサンプリング長の移動平均演算を行う。
【0041】
移動平均した信号を、入力信号yの平均レベル値(Lより充分長いサンプリング長の平均値)で除算し、正規化する。そして、除算値から、除算値が、「1」以上の値を、“1”に制限したスケーリング係数αを生成する。即ち、図2に示すように、スケーリング係数αは、除算値が「1」以上であれば、“1”であり、「1」を越えないと、除算値そのものである。
【0042】
このスケーリング係数αで、SISO復号器234の信頼度情報を操作する。このスケーリング係数αをn(nは、1以上の値)でべき乗する。そして、SISO復号器234での操作方法は、次のいずれかの方法を、採用する。
【0043】
A.SISO復号器234の出力値(信頼度情報)Le(uk)に、スケーリング係数αを直接乗算する。この方法は、SISO復号器234の構成を変更せずに、実現できる。
【0044】
B.SISO復号器234が、複数の状態遷移を持つ最尤復号器である場合、状態遷移における枝メトリックに、スケーリング係数αを掛ける。この方法は、BP復号器236の直前の状態を残して、復号を継続でき、信頼度情報の精度を向上できる。
【0045】
C.SISO復号器234が、複数の状態遷移を持つ最尤復号器である場合、状態遷移における期待値(識別点レベル)に、スケーリング係数αを掛ける。この方法は、期待値を、信号振幅に追従させる、一種のAGC機能を発揮し、欠陥も充分復号できる。
【0046】
D.前記C項と、A項又はB項を同時に用いる。
【0047】
ここで、操作するスケーリング係数をαのべき乗としたのは、図2に示すように、αは、“1”以下のため、べき数nが、大きく成る程、操作量αは、小さくなる。前述のように、スケーリング係数は、等化信号の振幅の移動平均値から求められ、サンプル点の移動平均値は、サンプル点前後の振幅値を加味するため、図2に示すように、等化信号の振幅低下に対し、なだらかに低下する。
【0048】
このため、ノイズ(特に、回路ノイズ)の混入が少ない場合には、べき数nを小さくし、ノイズの混入が多い場合には、べき数nを大きくして、移動平均へのノイズの影響を少なくする。
【0049】
図3、図4は、SISO復号器234の状態に対するスケーリング係数の乗算による信頼度情報の分布を示す。図3、図4とも図2の小欠陥部分の尤度(信頼度情報)の分布を示し、図3が、スケーリング係数の乗算前の分布、図4が、スケーリング係数の乗算後の分布を示す。
【0050】
図3では、欠陥により尤度がばらついている。一方、図4のスケーリング係数で補正した場合には、欠陥部の尤度が「0」近傍の所定範囲に収まっている。即ち、図4に示すように、媒体欠陥の影響を排除でき、誤り伝播を抑制することが可能となる。
【0051】
このように、従来技術では、検出することが困難な小さな媒体欠陥においても、それによって発生する誤り伝播を抑制し、安定した反復復号によるデータ再生を提供できる。
【0052】
(欠陥検出器)
次に、図1の欠陥検出器230の構成を説明する。図5は、図1の欠陥検出器230のブロック図である。
【0053】
図5に示すように、欠陥検出器230は、絶対値演算部240と、移動平均演算部242と、正規化部244と、スケーリング係数変換部246とからなる。
【0054】
絶対値演算部240は、図2に示したように、PR等化系列yの信号の中心値(平均値)を「0」とし、PR等化系列の絶対値|y|を演算する。即ち、PR等化系列yの平均値を計算し、平均値を「0」として、PR等化系列yの絶対値を計算する。
【0055】
移動平均演算部242は、PR等化系列の絶対値|y|について、範囲Lサンプルの移動平均演算を行う。移動平均値vkは、下記式(1)で計算する。
【0056】
【数1】

即ち、kサンプルでの移動平均値vkは、サンプル点kを中心に、範囲Lサンプルの絶対値|y|を加算し、範囲Lで割り、計算する。この範囲Lは、除算における計算量を削減するため、2のべき乗としたほうが良い。即ち、ビットシフトで、除算計算できる。
【0057】
また、このとき、L=2と表し、mは、PR拘束長(例えば、PR−4なら、1,0、−1のため、拘束長は、「3」)より大とする(m>PR拘束長)。即ち、mが、PR拘束長以下であるときは、全てのPRパターンの発生が保証されないため、誤検出を引き起こす可能性がある。
【0058】
この移動平均演算部230は、前述のLサンプルのためのL段のシフトレジスタ241と、L段のシフトレジスタ241の値を加算する加算回路243と、加算結果を、サンプル数Lで割る除算回路245からなる。
【0059】
次に、正規化部244は、下記(2)式のように、移動平均値vkを、PR信号振幅の絶対値の平均値|y|avgで割り、正規化した移動平均値vk‘を計算する。
【0060】
【数2】

PR信号振幅の絶対値の平均化の長さは、移動平均範囲Lより充分長いサンプリング期間を対象にして、式(1)と同様の演算による逐次演算により求めても良く。あるいは、事前に設定したものでもよい。予め設定する際は、例えば、SISO復号器234における信号検出期待値の絶対値を、平均した値とすると良い。
【0061】
又、この時、記録符号にそれぞれの期待値の発生確率に影響を与える制約がある場合には、平均値に発生確率を考慮する。
【0062】
スケーリング係数変換部246は、式(3)のように、v‘kが、“1”以上となる時は、“1”の、v’kが、閾値Th未満は、任意値“a”のスケーリング係数に変換する。但し、0≦a≦Thを満たす。又、v‘kが、閾値Th以上、“1”より小さい場合には、スケーリング係数を、v’kそのままとする。
【0063】
【数3】

即ち、スケーリング係数αは、欠陥と思われる部分以外は、SISO復号器234の尤度(信頼度情報)に影響しない値「1」とし、欠陥の可能性がある部分は、その振幅低下程度に応じた値「v‘k」とする。更に、閾値Thより小さい欠陥と判定できる部分は、スケーリング係数αを、強制的に、「a」とする。このaを「0」とすると、信頼度情報を不定にできる。
【0064】
又、閾値Thを「0」とすると、スケーリング係数αは、欠陥と思われる部分以外は、SISO復号器234の尤度(信頼度情報)に影響しない値「1」となり、欠陥の可能性がある部分は、その振幅低下程度に応じた値「v‘k」となる。
【0065】
(欠陥補正復号器の第1の実施の形態)
図6は、図1の欠陥補正復号器(SISO復号器)の第1の実施の形態のブロック図、図7は、図6の詳細ブロック図、図8は、図6の説明のための状態遷移図、図9は、図6の復号器のトレリス線図、図10は、図6のSOVA法の説明図である。
【0066】
図6は、SISO復号器234として、SOVA法を使用した復号器を示す。図6及び図7に示すように、SISO復号器234は、期待値(復号器入力)dと、雑音分散値σを格納するレジスタ250と、入力値ykに対し、期待値dと雑音分散値を用いて、ブランチメトリック値BMを計算するBM演算部251と、パスメトリック値を格納するパスメトリックメモリ252と、事前尤度情報La(uk)と、ブランチメトリック値で、パスメトリック値を更新し、2つのパスメトリック値を比較し、パスを選択するACS演算部253とを有する。更に、SISO復号器234は、パスの選択情報を格納するパスメモリ254と、差分を計算するΔ演算部256と、尤度を更新する尤度更新部257と、尤度を格納する尤度メモリ258と、尤度メモリ258の尤度と事前尤度情報とから出力尤度Le(uk)を計算する出力尤度計算部259とを有する。
【0067】
次に、図7乃至図10を用いて、SISO復号器234の動作を、PR(1,2,1)等化を行った等化系列を、SOVA法によって復号する方法を例に、説明する。
【0068】
図8は、PR(1,2,1)に対する、復号器における状態遷移表を示す。この表は、記録データに対して期待される復号器入力信号値(期待値)dを示したものである。復号器は、この期待値dから、最も確からしい記録データを推定していく。図9は、PR(1,2,1)に対する復号器のトレリス線図を示し、図8を線図に図示したものである。
【0069】
即ち、(k−1)時点の4つの状態S0〜S3と、k時点の4つの状態S0〜S3へのそれぞれの枝に、期待値が与えられ、その誤差が最小となるように最適なパスを選択していく。
【0070】
以下、図7を基に、説明する。但し、σは雑音分散値、dは,図8に示す期待値(復号器入力)、La(uk)は、時刻kにおける事前尤度情報である。又、i,jは,それぞれk-1時刻における状態Siからk時刻における状態Sjの遷移を示す。
【0071】
先ず、BM演算部251は、入力サンプル値ykを受けると、レジスタ250の期待値dと、雑音分散値を用いて、下記式(4)により、ブランチメトリック値BMk(2つのブランチメトリック値)を演算する。
【0072】
【数4】

ACS演算部253の加算演算部253−1は、下記式(5)により、パスメトリックメモリ252のパスメトリック値PMと、演算されたブランチメトリック値BMと、事前尤度情報La(uk)とから、k時刻のパスメトリック値を演算する。
【0073】
【数5】

ACS演算部253の比較演算部253−2は、下記式(6)により、演算されたk時刻のパスメトリック値の大小を比較して、小さい方を、k時刻のパスメトリック値とし、パスメトリックメモリ252を更新する。
【0074】
【数6】

ACS演算部253の選択演算部253−3は、パスメモリ254のパス選択情報を比較演算部253−2の比較結果に応じて、更新する。
【0075】
Δ演算部256は、加算演算部253−1で演算された2つのパスメトリック値の差分Δk(S0)を、下記式(7)により、演算する。
【0076】
【数7】

次に、L(u)を情報シンボルuに対する対数尤度比(LLR:Log−likelihood ratio)とする。対数尤度比は、2値の記録データに対する信頼度情報である。尤度更新部257は、尤度メモリ258の対数尤度比L(u)と、Δ演算部256の差分との小さい方を、対数尤度比に選択し、尤度メモリ258を更新する。
【0077】
出力尤度計算部259は、尤度メモリ258の対数尤度比から事前尤度La(uk)を差し引き、出力尤度Le(uk)を出力する。
【0078】
以下に、具体的な動作原理を、図10に対応させ、説明する。情報シンボルu(記録データ)は、“1”または“0”の二値であり、符号の上に、”^”が付くものは、復号された値を示す。また、前述のように、L(u)は、情報シンボルuに対する対数尤度比とする。
【0079】
SOVA法では、ビタビ復号で用いられるパスメモリに加えて、各状態S0〜S3に、パスメモリ長の尤度メモリ258を持つ。SOVA法における信頼度情報L(u)の更新は、以下の規則により行う。
【0080】
時点(l−1)での状態S0l−1における生き残りパスを、path-0とし、この状態において時点kのシンボルu^kに関して,保持する尤度を,下記式(8)とする。
【0081】
【数8】

同様に、時点(l−1)において、S1−1における生き残りパスをpath-1とし、この状態において時点kにおけるシンボルu^kに関して、保持する尤度を、下記式(9)とする。
【0082】
【数9】

時点lにおいて、path-0とpath-1が合流の上、path-0が生き残りパスとなると仮定し、パスメトリック差をΔとする。
【0083】
u^k≠u^kのとき、生き残りパスであるpath-0と競合するパスは、u^k≠u^kより、path-pと、さらに、u^k≠u^kより,path-1である。尚、u^k≠u^kにより、path-qは対象外となる。それぞれのpath-0とのメトリック差は、L^k,Δであるため、時点lの信頼度情報は、下記式(10)となる。
【0084】
【数10】

逆に、u^k=u^kのとき、生き残りパスであるpath-0と競合するパスは、u^k≠u^kより、path-pと、さらに、u^k≠u^k=u^kより,path-qである。それぞれのpath-0とのメトリック差は、L^k,Δ+L^kであるため、時点lの信頼度情報は、下記式(11)となる。
【0085】
【数11】

反復復号において、出力される対数尤度比は、図7の出力尤度計算部259で説明したように、下記式(12)となる。
【0086】
【数12】

第1の実施の形態は、図5の欠陥検出器により得たスケーリング係数αをn乗(nは1以上)し、図6の乗算器260で、上記SISO復号器出力である(12)式の結果に、次式(13)のようにαnを掛けることにより実現する。
【0087】
【数13】

以上のようにして、スケーリング係数で、信頼度情報を補正することにより、誤り伝播を抑制できる。
【0088】
(欠陥補正復号器の第2の実施の形態)
図11は、図1の欠陥補正復号器(SISO復号器)の第2の実施の形態のブロック図ある。図11において、図6で示したものと同一のものは、同一の記号で示してあり、SISO復号器234として、SOVA法を使用した復号器を示す。
【0089】
図11に示すように、SISO復号器234は、期待値(復号器入力)dと、雑音分散値σを格納するレジスタ250と、入力値ykに対し、期待値dと雑音分散値を用いて、ブランチメトリック値BMを計算するBM演算部251と、パスメトリック値を格納するパスメトリックメモリ252と、事前尤度情報La(uk)と、ブランチメトリック値で、パスメトリック値を更新し、2つのパスメトリック値を比較し、パスを選択するACS演算部253とを有する。更に、SISO復号器234は、パスの選択情報を格納するパスメモリ254と、差分を計算するΔ演算部256と、尤度を更新する尤度更新部257と、尤度を格納する尤度メモリ258と、尤度メモリ258の尤度と事前尤度情報とから出力尤度Le(uk)を計算する出力尤度計算部259とを有する。
【0090】
この第2の実施の形態は、図5の欠陥検出器より得たスケーリング係数αをn乗(nは1以上)し、上記SISO復号器234の計算である(4)式中のBMijに,乗算器261により、次式(14)のように、αnを掛けることにより実現する。
【0091】
【数14】

(欠陥補正復号器の第3の実施の形態)
図12は、図1の欠陥補正復号器(SISO復号器)の第3の実施の形態のブロック図ある。図12において、図6で示したものと同一のものは、同一の記号で示してあり、SISO復号器234として、SOVA法を使用した復号器を示す。
【0092】
図12に示すように、SISO復号器234は、期待値(復号器入力)dと、雑音分散値σを格納するレジスタ250と、入力値ykに対し、期待値dと雑音分散値を用いて、ブランチメトリック値BMを計算するBM演算部251と、パスメトリック値を格納するパスメトリックメモリ252と、事前尤度情報La(uk)と、ブランチメトリック値で、パスメトリック値を更新し、2つのパスメトリック値を比較し、パスを選択するACS演算部253とを有する。更に、SISO復号器234は、パスの選択情報を格納するパスメモリ254と、差分を計算するΔ演算部256と、尤度を更新する尤度更新部257と、尤度を格納する尤度メモリ258と、尤度メモリ258の尤度と事前尤度情報とから出力尤度Le(uk)を計算する出力尤度計算部259とを有する。
【0093】
この第3の実施の形態は、図5の欠陥検出器より得たスケーリング係数αをn乗(nは1以上)し、上記SISO復号器234の計算である(4)式中のレジスタ250内のdijに,次式(15)のように、αnを掛けることにより実現する。
【0094】
【数15】

(欠陥補正復号器の第4の実施の形態)
図13は、図1の欠陥補正復号器(SISO復号器)の第4の実施の形態のブロック図ある。図13において、図6で示したものと同一のものは、同一の記号で示してあり、SISO復号器234として、SOVA法を使用した復号器を示す。
【0095】
図13に示すように、SISO復号器234は、期待値(復号器入力)dと、雑音分散値σを格納するレジスタ250と、入力値ykに対し、期待値dと雑音分散値を用いて、ブランチメトリック値BMを計算するBM演算部251と、パスメトリック値を格納するパスメトリックメモリ252と、事前尤度情報La(uk)と、ブランチメトリック値で、パスメトリック値を更新し、2つのパスメトリック値を比較し、パスを選択するACS演算部253とを有する。更に、SISO復号器234は、パスの選択情報を格納するパスメモリ254と、差分を計算するΔ演算部256と、尤度を更新する尤度更新部257と、尤度を格納する尤度メモリ258と、尤度メモリ258の尤度と事前尤度情報とから出力尤度Le(uk)を計算する出力尤度計算部259とを有する。
【0096】
この第4の実施の形態は、第2の実施の形態と第3の実施の形態とを組み合わせたものであり、図5の欠陥検出器より得たスケーリング係数αをn乗(nは1以上)し、上記SISO復号器234の計算である(4)式中のBMijに,次式(16)のように、αnを乗算する。
【数16】

【0097】
この場合に、期待値dに乗算するスケーリング係数と、ブランチメトリックBMに乗算するスケーリング係数の値は、必ずしも同一でなくてよく、例えば、期待値dに乗算するスケーリング係数をα1、ブランチメトリックBMに乗算するスケーリング係数をα2と、異なる値に設定することが望ましい。
【0098】
(欠陥検出器の他の実施の形態)
次に、図1の欠陥検出器230の他の構成を説明する。図14は、図1の欠陥検出器230の他の実施の形態のブロック図である。
【0099】
図14に示すように、欠陥検出器230は、等化信号yを中心値で上下に分離する分離部247と、上側移動平均演算部242−1と、下側移動平均演算部242−2と、上側正規化部244−1と、下側正規化部244−2と、合成部248、除算部249と、スケーリング係数変換部246とからなる。
【0100】
分離部247は、PR等化系列yを、直流レベルを中心に、図2に示したように、PR等化系列yの信号の上側と、下側に分離する。即ち、PR等化系列yの平均値を計算し、平均値を「0」として、PR等化系列yを上下に分離する。
【0101】
第1の移動平均演算部242−1、第2の移動平均演算部242−2は、各々、PR等化系列の上側信号yuと下側信号ydについて、範囲Lサンプルの移動平均演算を行う。上側、下側移動平均値vuk、vdkは、下記式(17)で計算する。
【0102】
【数17】

即ち、kサンプルでの移動平均値vuk,vdkは、サンプル点kを中心に、範囲Lサンプルの上側振幅、下側振幅を加算し、範囲Lで割り、計算する。この範囲Lは、除算における計算量を削減するため、2のべき乗としたほうが良い。即ち、ビットシフトで、除算計算できる。
【0103】
また、このとき、L=2と表し、mは、PR拘束長(例えば、PR−4なら、1,0、−1のため、拘束長は、「3」)より大とする(m>PR拘束長)。即ち、mが、PR拘束長以下であるときは、全てのPRパターンの発生が保証されないため、誤検出を引き起こす可能性がある。
【0104】
この第1、第2の移動平均演算部242−1,242−2は、前述のLサンプルのためのL段のシフトレジスタ241−1,241−2と、L段のシフトレジスタ241−1,241−2の値を加算する加算回路243−1,243−2と、加算結果を、サンプル数L/2で割る除算回路245−1,245−2からなる。
【0105】
次に、正規化部244−1,242−2は、下記(18)式のように、移動平均値vuk,vdkを、PR信号振幅の上側振幅の平均値、下側振幅の平均値で割り、正規化した移動平均値vuk‘,vdk’を計算する。
【0106】
【数18】

PR信号振幅の平均化の長さは、移動平均範囲Lより充分長いサンプリング期間Nを対象にして、式(17)と同様の演算による逐次演算により求めても良く。あるいは、事前に設定したものでもよい。
【0107】
合成部248、除算部249は、上側と下側の移動平均値を次式(19)により合成する。
【0108】
【数19】

スケーリング係数変換部246は、図5と同様に、式(3)のように、v‘kが、“1”以上となる時は、“1”の、v’kが、閾値Th未満は、任意値“a”のスケーリング係数に変換する。但し、0≦a≦Thを満たす。又、v‘kが、閾値Th以上、“1”より小さい場合には、スケーリング係数を、v’kそのままとする。
【0109】
即ち、スケーリング係数αは、欠陥と思われる部分以外は、SISO復号器234の尤度(信頼度情報)に影響しない値「1」とし、欠陥の可能性がある部分は、その振幅低下程度に応じた値「v‘k」とする。更に、閾値Thより小さい欠陥と判定できる部分は、スケーリング係数αを、強制的に、「a」とする。このaを「0」とすると、信頼度情報を不定にできる。
【0110】
又、閾値Thを「0」とすると、スケーリング係数αは、欠陥と思われる部分以外は、SISO復号器234の尤度(信頼度情報)に影響しない値「1」となり、欠陥の可能性がある部分は、その振幅低下程度に応じた値「v‘k」となる。
【0111】
このように、単純なしきい値検出に対して、移動平均値を計算し、これからスケーリング係数を得るため、微小な欠陥を精度良く検出し、誤検出により誤り訂正能力の劣化を抑えることができる。
【0112】
又、磁気ヘッドの特性等により、信号振幅の非対称性が強い場合は、本実施例を用いることで、良好な検出を行うことが可能となる。
【0113】
(記録再生装置の他の実施の形態)
図15は、本発明の記録再生装置の他の実施の形態のブロック図であり、磁気ディスク装置の反復復号方式の記録再生装置を例に示す。図15において、図1で示したものと同一のものは、同一の記号で示してある。
【0114】
図1と同様に、図15の再生波形は、磁気デイスクのデータをヘッドが読み取り、図示しないプリアンプで増幅されたものである。この磁気デイスクのデータは、ユーザデータに、誤り訂正符号(ECC)が付加され、且つKビットのデータに対し、Mビットのパリティを付加され、記録されたものである。このパリティ符号としては、例えば、LDPC(低密度パリティ符号)等を使用できる。
【0115】
このヘッドからの再生波形は、図示しない可変利得アンプで、振幅調整され、PR波形等化部220に入力する。PR波形等化部220では、アナログ(ローパス)フィルタ(LPF)223が、振幅調整された再生信号の高周波数域をカットし、A/Dコンバータ(ADC)224が、そのアナログ出力をデジタル信号へ変換する。その後、FIR(Finite Impulse Response)フィルタ等のデジタルフィルタ225で、波形等化を行い、PR等化系列yを得る。
【0116】
PR等化系列yは、遅延器210で、欠陥検出器230の欠陥検出動作による遅延分、遅延され、SISO復号器234に入力する。SISO復号器234は、PR等化系列yに対する復号を行う軟入力軟出力(SISO: Soft-input soft-output)復号器で構成される。SISO復号器234の軟出力(信頼度情報)Le(uk)は、低密度パリティ検査(LDPC: Low density parity check)符号に対する軟入力(Soft-input)復号器236に入力する。
【0117】
軟入力軟出力復号器234は、例えば、BCJR(Bahl-Cocke-Jelinek-Raviv)、MAP(Maximum a posteriori)復号及びSOVA(Soft output viterbi algorithm)などが用いられる。
【0118】
また、軟入力復号器236は、例えば、Sum−product(SP)復号や、Min−Sum復号などが用いられ、反復的に尤度(信頼度情報)の更新を行う。軟入力復号器236は、軟入力軟出力復号器234からの信頼度情報Le(uk)を受け、反復的に信頼度情報La(uk)の更新を行い、規定の回数、或いはパリテイ検査において、誤り無しと判断された場合に、閾値により、信頼度情報を、「1」、「0」に判定し、誤り訂正復号器228が、誤り訂正符号を使用した誤り訂正を行い、ユーザデータを出力する。誤り訂正復号器228は、例えば、ECC復号器で構成される。
【0119】
即ち、SI復号器236は、記録データ“0”または“1”に対する信頼度情報La(uk)を、定められた条件のもと、繰り返し,反復する構成の。終了後、信頼度情報を、“0”と“1”に硬判定し、エラー訂正器238に出力する。
【0120】
この実施の形態においても、欠陥検出器230は、軟入力軟出力復号器の入力信号yのLサンプリング長の移動平均演算を行い、移動平均した信号を、入力信号yの平均レベル値(Lより充分長いサンプリング長の平均値)で除算し、正規化して、除算値から、除算値が、「1」以上の値を、“1”に制限したスケーリング係数αを生成する。
【0121】
そして、このスケーリング係数αで、SISO復号器234の信頼度情報を操作する。このスケーリング係数αをn(nは、1以上の値)でべき乗する。そして、SISO復号器234での操作方法は、前述のように、A,B,Cのいずれかの方法を、採用する。
【0122】
この実施の形態は、反復復号の形式が、第1の実施の形態(図1)と異なり、SI復号器236のみで、反復復号する例であり、SISO復号器234を、スケーリング係数で操作する点では、同じである。
【0123】
(他の実施の形態)
前述の実施の形態の他に、欠陥補正復号器の第1の実施の形態と、第3の実施の形態とを組み合わせることもできる。又、磁気ディスク装置の記録再生装置の適用の例で説明したが、光ディスク装置、テープ装置等の他の媒体記憶装置にも適用できる。
【0124】
以上、本発明を、実施の形態で説明したが、本発明は、その趣旨の範囲内で種々の変形が可能であり、これを本発明の範囲から排除するものではない。
【0125】
(付記1)符号間干渉を持つチャネル再生信号を復号する軟入力軟出力復号器と、外符号化に対して復号する軟入力復号器と、前記軟入力軟出力復号器の軟入力信号の両側振幅変動を検出し、振幅低下に応じた重み付け値を出力する重み付け演算器とを有し、前記重み付け値により前記軟入力軟出力復号器の軟出力値を小さくするとともに、前記軟入力軟出力復号器と前記軟入力復号器との間で、信頼度情報を伝播して復号することを特徴とする復号器。
【0126】
(付記2)前記重み付け演算器は、前記軟入力信号を振幅中心値で折り返す処理を行う絶対値信号化部と、所定の範囲の移動平均演算を行う移動平均演算部と、前記移動平均値を全絶対値信号の平均値により除算する規格化演算部と、前記規格化演算値が「1」以上の場合は「1」の、「1」を越えない場合には、前記規格化演算値を前記重み付け値として、生成する重み付け生成部とからなることを特徴とする付記1の復号器。
【0127】
(付記3)前記重み付け生成部は、前記規格化演算値が、しきい値T以下の場合には、「0」以上T未満の重み付け値を更に生成することを特徴とする付記2の復号器。
【0128】
(付記4)前記重み付け演算部は、前記軟入力信号の振幅中心値を0とし、0以上の信号を上側信号、0未満の信号を下側信号として分離する分離部と、前記上側信号を所定の範囲の移動平均演算を行う上側信号移動平均演算部と、前記下側信号を所定の範囲の移動平均演算を行う下側信号移動平均演算部と、前記上側移動平均値を、全上側信号の平均値により除算する上側規格化演算部と、前記下側移動平均値を、全下側信号の平均値により除算する下側規格化演算部と、前記上側及び下側規格化演算値を合成する合成演算部と、前記合成演算値が「1」以上の場合は「1」の、「1」を越えない場合には、前記規格化演算値を前記重み付け値として、生成する重み付け生成部とからなることを特徴とする付記1の復号器。
【0129】
(付記5)前記重み付け生成部は、前記規格化演算値が、しきい値T以下の場合には、「0」以上T未満の重み付け値を更に生成することを特徴とする付記4の復号器。
【0130】
(付記6)前記軟入力軟出力復号器は、前記軟出力信号である信頼度情報に、前記重み付け演算部から出力された重み付け値をn乗(nは1以上)したn乗重み付け値を掛けた重み付け信頼度情報を生成する信頼度重み付け部を備えたことを特徴とする付記1の復号器。
【0131】
(付記7)前記軟入力軟出力復号器は、前記軟入力信号と軟入力期待値とのユークリッド距離を元に信頼度情報を生成するブランチメトリック演算部と、前記軟入力期待値に、前記重み付け演算部から出力した重み付け値を掛ける重み付け軟入力期待値演算部とを有することを特徴とする付記1の復号器。
【0132】
(付記8)前記軟入力軟出力復号器は、前記軟入力信号と軟入力期待値とのユークリッド距離を元に信頼度情報を生成するブランチメトリック演算部と、前記ブランチメトリック演算結果に前記重み付け演算部から出力した重み付け値をn乗(nは1以上)したn乗重み付け値を掛けた重み付けブランチメトリックを生成する重み付けブランチメトリック演算部とを有することを特徴とする付記1の復号器。
【0133】
(付記9)前記規格化演算部は、前記軟入力軟出力復号器の軟入力期待値の中心値を0とし、その絶対値の総和を2で割った値を、前記絶対値の平均値として用いることを特徴とする付記2の復号器。
【0134】
(付記10)前記第1及び第2の規格化演算部は、前記軟入力軟出力復号器における軟入力期待値の中心値を0とし、0以上の期待値の総和を2で割った値を前記全上側信号平均値、0未満の期待値の総和を2で割った値を全下側信号平均値として用いることを特徴とする付記4の復号器。
【0135】
(付記11)再生波形を等化し、符号間干渉を持つチャネル再生信号に等化する波形等化器と、前記チャネル再生信号を復号する軟入力軟出力復号器と、外符号化に対して復号する軟入力復号器と、前記軟入力軟出力復号器の軟入力信号の両側振幅変動を検出し、振幅低下に応じた重み付け値を出力する重み付け演算器とを有し、前記重み付け値により前記軟入力軟出力復号器の軟出力値を小さくするとともに、前記軟入力軟出力復号器と前記軟入力復号器との間で、信頼度情報を伝播して復号することを特徴とする再生装置。(6)
(付記12)前記重み付け演算器は、前記軟入力信号を振幅中心値で折り返す処理を行う絶対値信号化部と、所定の範囲の移動平均演算を行う移動平均演算部と、前記移動平均値を全絶対値信号の平均値により除算する規格化演算部と、前記規格化演算値が「1」以上の場合は「1」の、「1」を越えない場合には、前記規格化演算値を前記重み付け値として、生成する重み付け生成部とからなることを特徴とする付記11の再生装置。
【0136】
(付記13)前記重み付け生成部は、前記規格化演算値が、しきい値T以下の場合には、「0」以上T未満の重み付け値を更に生成することを特徴とする付記12の再生装置。
【0137】
(付記14)前記重み付け演算部は、前記軟入力信号の振幅中心値を0とし、0以上の信号を上側信号、0未満の信号を下側信号として分離する分離部と、前記上側信号を所定の範囲の移動平均演算を行う上側信号移動平均演算部と、前記下側信号を所定の範囲の移動平均演算を行う下側信号移動平均演算部と、前記上側移動平均値を、全上側信号の平均値により除算する上側規格化演算部と、前記下側移動平均値を、全下側信号の平均値により除算する下側規格化演算部と、前記上側及び下側規格化演算値を合成する合成演算部と、前記合成演算値が「1」以上の場合は「1」の、「1」を越えない場合には、前記規格化演算値を前記重み付け値として、生成する重み付け生成部とからなることを特徴とする付記11の再生装置。
【0138】
(付記15)前記重み付け生成部は、前記規格化演算値が、しきい値T以下の場合には、「0」以上T未満の重み付け値を更に生成することを特徴とする付記14の再生装置。
【0139】
(付記16)前記軟入力軟出力復号器は、前記軟出力信号である信頼度情報に、前記重み付け演算部から出力された重み付け値をn乗(nは1以上)したn乗重み付け値を掛けた重み付け信頼度情報を生成する信頼度重み付け部を備えたことを特徴とする付記11の再生装置。
【0140】
(付記17)前記軟入力軟出力復号器は、前記軟入力信号と軟入力期待値とのユークリッド距離を元に信頼度情報を生成するブランチメトリック演算部と、前記軟入力期待値に、前記重み付け演算部から出力した重み付け値を掛ける重み付け軟入力期待値演算部とを有することを特徴とする付記11の再生装置。
【0141】
(付記18)前記軟入力軟出力復号器は、前記軟入力信号と軟入力期待値とのユークリッド距離を元に信頼度情報を生成するブランチメトリック演算部と、前記ブランチメトリック演算結果に前記重み付け演算部から出力した重み付け値をn乗(nは1以上)したn乗重み付け値を掛けた重み付けブランチメトリックを生成する重み付けブランチメトリック演算部とを有することを特徴とする付記11の再生装置。
【0142】
(付記19)前記規格化演算部は、前記軟入力軟出力復号器の軟入力期待値の中心値を0とし、その絶対値の総和を2で割った値を、前記絶対値の平均値として用いることを特徴とする付記12の再生装置。
【0143】
(付記20)前記第1及び第2の規格化演算部は、前記軟入力軟出力復号器における軟入力期待値の中心値を0とし、0以上の期待値の総和を2で割った値を前記全上側信号平均値、0未満の期待値の総和を2で割った値を全下側信号平均値として用いることを特徴とする付記14の再生装置。
【産業上の利用可能性】
【0144】
単純なしきい値検出に対して、移動平均値を計算し、これからスケーリング係数を得るため、微小な欠陥を精度良く検出し、軟入力軟出力復号器の信頼度情報を操作するため、小さな欠陥による誤り伝播を抑圧できる。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】本発明の記録再生装置の一実施の形態を示す構成図である。
【図2】図1の欠陥検出器の欠陥検出及び信頼度訂正動作の説明図である。
【図3】本発明の比較例の信頼度情報の分布図である。
【図4】本発明の実施の形態による信頼度情報の分布図である。
【図5】図1の欠陥検出器の第1の実施の形態のブロック図である。
【図6】図1の欠陥訂正復号器の第1の実施の形態のブロック図である。
【図7】図6の詳細ブロック図である。
【図8】図6の説明のための状態遷移図である。
【図9】図8のトレリス線図である。
【図10】図6のSOVA法の動作説明図である。
【図11】図1の欠陥訂正復号器の第2の実施の形態のブロック図である。
【図12】図1の欠陥訂正復号器の第3の実施の形態のブロック図である。
【図13】図1の欠陥訂正復号器の第4の実施の形態のブロック図である。
【図14】図1の欠陥検出器の第2の実施の形態のブロック図である。
【図15】本発明の記録再生装置の一実施の形態を示す構成図である。
【図16】従来の反復復号方式のブロック図である。
【符号の説明】
【0146】
220 PR波形等化部
210 遅延器
238 誤り訂正復号器
230 媒体欠陥検出器
232 反復復号器
234 SISO復号器
236 BP復号器(又はSI復号器)
240 絶対値演算部
242 移動平均演算部
244 正規化部
246 スケーリング係数変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
符号間干渉を持つチャネル再生信号を復号する軟入力軟出力復号器と、
前記軟入力軟出力復号器の出力に対して復号する軟入力復号器と、
前記軟入力軟出力復号器の軟入力信号の両側振幅変動を検出し、振幅低下に応じた重み付け値を出力する重み付け演算器とを有し、
前記重み付け値により前記軟入力軟出力復号器の軟出力値を小さくするとともに、
前記軟入力軟出力復号器と前記軟入力復号器との間で、信頼度情報の伝播により復号する
ことを特徴とする復号器。
【請求項2】
前記重み付け演算器は、
前記軟入力信号を振幅中心値で折り返す処理を行う絶対値信号化部と、
所定の範囲の移動平均演算を行う移動平均演算部と、
前記移動平均値を全絶対値信号の平均値により除算する規格化演算部と、
前記規格化演算値が「1」以上の場合は「1」の、「1」を越えない場合には、前記規格化演算値を前記重み付け値として、生成する重み付け生成部とからなる
ことを特徴とする請求項1の復号器。
【請求項3】
前記重み付け生成部は、
前記規格化演算値が、しきい値T以下の場合には、「0」以上T未満の重み付け値を更に生成する
ことを特徴とする請求項2の復号器。
【請求項4】
前記重み付け演算部は、
前記軟入力信号の振幅中心値を0とし、0以上の信号を上側信号、0未満の信号を下側信号として分離する分離部と、
前記上側信号を所定の範囲の移動平均演算を行う上側信号移動平均演算部と、
前記下側信号を所定の範囲の移動平均演算を行う下側信号移動平均演算部と、
前記上側移動平均値を、全上側信号の平均値により除算する上側規格化演算部と、
前記下側移動平均値を、全下側信号の平均値により除算する下側規格化演算部と、
前記上側及び下側規格化演算値を合成する合成演算部と、
前記合成演算値が「1」以上の場合は「1」の、「1」を越えない場合には、前記規格化演算値を前記重み付け値として、生成する重み付け生成部とからなる
ことを特徴とする請求項1の復号器。
【請求項5】
前記軟入力軟出力復号器は、
前記軟出力信号である信頼度情報に、前記重み付け演算部から出力された重み付け値をn乗(nは1以上)したn乗重み付け値を掛けた重み付け信頼度情報を生成する信頼度重み付け部を備えた
ことを特徴とする請求項1の復号器。
【請求項6】
再生波形を等化し、符号間干渉を持つチャネル再生信号に等化する波形等化器と、
前記チャネル再生信号を復号する軟入力軟出力復号器と、
第1の軟入力軟出力復号器の出力に対して復号する軟入力復号器と、
前記軟入力軟出力復号器の軟入力信号の両側振幅変動を検出し、振幅低下に応じた重み付け値を出力する重み付け演算器とを有し、
前記重み付け値により前記軟入力軟出力復号器の軟出力値を小さくするとともに、前記軟入力軟出力復号器と前記軟入力復号器との間で、信頼度情報の伝播により復号する
ことを特徴とする再生装置。
【請求項7】
前記重み付け演算器は、
前記軟入力信号を振幅中心値で折り返す処理を行う絶対値信号化部と、所定の範囲の移動平均演算を行う移動平均演算部と、
前記移動平均値を全絶対値信号の平均値により除算する規格化演算部と、
前記規格化演算値が「1」以上の場合は「1」の、「1」を越えない場合には、前記規格化演算値を前記重み付け値として、生成する重み付け生成部とからなる
ことを特徴とする請求項6の再生装置。
【請求項8】
前記重み付け生成部は、
前記規格化演算値が、しきい値T以下の場合には、「0」以上T未満の重み付け値を更に生成する
ことを特徴とする請求項7の再生装置。
【請求項9】
前記重み付け演算部は、
前記軟入力信号の振幅中心値を0とし、0以上の信号を上側信号、0未満の信号を下側信号として分離する分離部と、
前記上側信号を所定の範囲の移動平均演算を行う上側信号移動平均演算部と、
前記下側信号を所定の範囲の移動平均演算を行う下側信号移動平均演算部と、
前記上側移動平均値を、全上側信号の平均値により除算する上側規格化演算部と、
前記下側移動平均値を、全下側信号の平均値により除算する下側規格化演算部と、
前記上側及び下側規格化演算値を合成する合成演算部と、
前記合成演算値が「1」以上の場合は「1」の、「1」を越えない場合には、前記規格化演算値を前記重み付け値として、生成する重み付け生成部とからなる
ことを特徴とする請求項6の再生装置。
【請求項10】
前記軟入力軟出力復号器は、
前記軟入力信号と軟入力期待値とのユークリッド距離を元に信頼度情報を生成するブランチメトリック演算部と、
前記軟入力期待値に、前記重み付け演算部から出力した重み付け値を掛ける重み付け軟入力期待値演算部とを有する
ことを特徴とする請求項6の再生装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate