説明

復帰構造を具えた丸編み機のジャガード針

【課題】復帰構造を具えた丸編み機のジャガード針の提供。
【解決手段】復帰構造を具えた丸編み機のジャガード針に関し、ジャガード針支点21と、ジャガード針支点より延伸された頸部22と、頸部に接続された受力部24と、受力部より延伸された針足部26と、頸部22より延伸された復帰構造25を包含し、ジャガード針支点21は編針4に接続されて、針足部26は常態でカム構造3のスライド軌道内に位置し、復帰構造25の末端には、針足部の下方に位置する折り曲げ端251を具え、折り曲げ端が上針盤5の内壁面を押圧し、選針片に受力部24を押し下げ、並びに頸部22により圧力が伝送されて復帰構造25が湾曲して弾力を発生し、これにより該受力部を跳ね返して復帰させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一種の復帰構造を具えた丸編み機のジャガード針に係り、特に、丸編み機において選針装置により駆動されて、編針の進針、出針を駆動するジャガード針に関する。
【背景技術】
【0002】
編物表面にジャガード模様を形成するため、丸編み機には選針装置が設置され、該選針装置が編針が出針或いは不出針の二種類の状態下で、編地に編成或いは無編成のエリアを形成する。更に具体的には、該選針装置は複数の選針片を有し、各編針にジャガード針が接続され、該ジャガード針は該編針に係合された支点端と、該支点端より延伸された選針部を有し、該選針部の後端に針足が設けられて、該針足が少なくとも一つのカムブロックが形成する軌道中を運行する。そのうち、該選針部には複数の針踵があり、選針装置が移動してこれら選針片から乖離する時、該選針部後端の針足は複数の編針を駆動してカムブロックの形成する軌道に沿って出針し、これによりその引っかける糸にパイルを形成させる。選針装置が任意の選針片を駆動して移動させ、該針踵を押動する時、該ジャガード針は針踵の受力により押圧され該カムブロックより離脱し、ジャガード針がカムブロックにそれ以上駆動されないために編針は出針して編成できず、これにより編成の形成と不形成は該選針装置が該ジャガード針を押動してカムブロックを離脱させるか否かにかかっている。
【0003】
ジャガード針の復帰メカニズムを改善するため、本出願人は、1997年に特許文献1を提出し、それにおいて、該選針片は常態で上げカムに駆動されて選針片前端の編針に糸を掛けさせてパイルを形成するか、或いは、選針装置は少なくとも一つの選針片により選針片を押動して該上げカムより乖離させ、これにより該上げカムが該選針片により編針を駆動してパイルを形成することができなくさせる。特に該選針片は復帰機構を有し、該復帰機構は弾性を有する板体、棒体或いは柱体とされて上針盤上に圧接し、該選針片の針踵に自動回復の力を提供する。
【0004】
しかし、上述の特許文献1は実施上、いくつかの欠点があった。まず、該復帰機構が該ジャガード針の針足に設けられ、これにより該復帰機構の長さが制限され、このために該復帰機構が該ジャガード針が沈む時に距離が比較的長い移動行程を形成する。該復帰機構の移動行程が長いことにより、該復帰機構の受ける応力が比較的大きくなり、且つ該丸編み機内の空間は有限であり復帰機構の厚さを増したとしても、該復帰機構の寿命が短くなる。さらに、該復帰機構の移動行程が比較的長いために、ジャガード針の針足を押動し復帰させる弾力が比較的大きくなり、このため、ジャガード針の針足がカムブロックに衝突する力が大きくなり、長期の使用によりジャガード針が損壊しやすくなる。
【0005】
もし、ジャガード針が損傷すると、編み機の編地に傷が発生するが、丸編み機の体積は膨大であり、部品数量も非常に多いために、損壊した部品を見つけ出すのは容易なことではなく、このため復帰機構が形成する損耗の問題を極力改善する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】台湾特許公告第435457号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
周知の復帰機構は、ジャガード針の磨耗損傷が比較的厳重となり、ジャガード針の寿命を短縮する。これにより、本発明の目的はジャガード針の寿命を短縮することがなく、ジャガード針を押動して復帰させることのできる復帰構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は一種の復帰構造を具えた丸編み機のジャガード針であり、それは、丸編み機内に複数の編針を具え、且つ編針が複数のカム構造及び複数のコンピュータ選針装置の制御を受け、該コンピュータ選針装置は複数の選針片と、上針盤上に位置する複数のジャガード針を包含し、該ジャガード針は常態で該カム構造に駆動されて該編針を駆動し、該選針片が該ジャガード針を押下げる時、該ジャガード針を押動して該カム構造を離脱させることができる、丸編み機のジャガード針に応用される。
【0009】
該ジャガード針は、ジャガード針支点と、該ジャガード針支点より延伸された頸部と、該頸部に接続された受力部と、該受力部より延伸された針足部と、該頸部より延伸された復帰構造を包含する。
【0010】
そのうち、該ジャガード針支点は該編針に接続されて、該ジャガード針の移動により該編針を駆動させる。該受力部に、複数の、選針片の押下を受ける針踵が設けられ、並びに該受力部より該針足部が延伸され、該針足部は常態でカム構造のスライド軌道内に位置する。該復帰構造の末端には、該針足部の下方に位置する折り曲げ端を具え、該折り曲げ端が該上針盤の内壁面を押圧し、且つ該復帰構造と該受力部の間に退縮間隙があり、該選針片に該受力部を押し下げさせる時、移動の空間を具え、並びに該頸部により圧力が伝送されて該復帰構造が湾曲して弾力を発生し、これにより該受力部を跳ね返して復帰させる。
【発明の効果】
【0011】
該ジャガード針の構造の改変と、該復帰構造の接続位置の改変により、該ジャガード針が圧力を受けた時の応力が明かに低減し、並びに復帰の弾力が直接に受力部にかからなくなり、受力部の復帰時のカム構造との衝突が緩和され、復帰機能を具備するとともに、ジャガード針の使用寿命を確保する目的を達成する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のコンピュータ選針装置と編針の立体図である。
【図2】本発明のジャガード針と編針の第1状態表示図(一)である。
【図3】本発明のジャガード針と編針の第1状態表示図(二)である。
【図4】本発明のジャガード針と編針の第1状態表示図(一)である。
【図5】本発明のジャガード針と編針の第1状態表示図(二)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の復帰構造を具えた丸編み機のジャガード針について、図1、図2及び図3を参照されたい。図1は丸編み機の部分拡大図であり、この丸編み機は複数のコンピュータ選針装置及び複数のカム構造(3)を包含して複数の編針(4)を駆動する。編針(4)の進針、出針により編地にパイルを形成するか否かが決定される。該編針(4)の運転は該コンピュータ選針装置及び該カム構造(3)により制御される。そのうち、該コンピュータ選針装置は、選針装置本体(1)に取付けられた複数の選針片(11)、及び、上針盤(5)に位置する複数のジャガード針(2)を包含する。該ジャガード針(2)の一端は、該編針(4)に接続されて協働し、該ジャガード針(2)の別端は、常態でカム構造(3)の駆動を受け(第1状態)、これにより、該編針(4)を駆動し移動させる。該選針装置本体(1)の選針片(11)は該ジャガード針(2)を押し下げることができ(図4のとおり)、並びに該ジャガード針(2)を押動して該カム構造(3)より離脱させて、それにより該ジャガード針(2)を該カム構造(3)の制御から離脱させられ(第2状態)、これにより、ジャガード針(2)と編針(4)に動作停止させる。ジャガード針(2)を、選針片(11)に押し下げられた後にカム構造(3)の形成する軌道に自動復帰させるため、該ジャガード針(2)に、回復弾力を提供する復帰構造(25)が設置される。該ジャガード針(2)の細部構造については、図1、図2及び図3を参照されたい。図2と図3に示されるように、該ジャガード針(2)は、ジャガード針支点(21)、頸部(22)、該頸部(22)に接続された受力部(24)、該受力部(24)より延伸された針足部(26)及び前述の復帰構造(25)を包含する。そのうち、該ジャガード針支点(21)は該編針(4)と接続され、該ジャガード針支点(21)より該頸部(22)が延伸され、該頸部(22)より該上針盤(5)と垂直な方向に肩部(23)が延伸され、該頸部(22)は肩部(23)を介して該受力部(24)と接続され、並びに該肩部(23)を介し、該受力部(24)の丸編み機内における水平高さが該頸部(22)より高くされる。該受力部(24)に選針片(11)による押下を受ける複数の針踵(241)が設けられ、該受力部(24)より針足部(26)が延伸される。該針足部(26)は常態でカム構造(3)の形成するスライド軌道内に位置する。該頸部(22)よりさらに該復帰構造(25)が延伸され、該復帰構造(25)の末端に針足部(26)の下方に位置する折り曲げ端(251)が設けられ、且つ該復帰構造(25)は針足部(26)の下方の折り曲げ端(251)まで円弧状に延伸されている。該折り曲げ端(251)は該上針盤(5)の内壁面に圧接し、且つ該復帰構造(25)と該受力部(24)との間に退縮間隙(27)が設けられ、選針片(11)が該受力部(24)を押し下げる時の移動の空間を有し、該退縮間隙(27)内で、該肩部(23)の該退縮間隙(27)に向いた一端に円弧形切欠き(231)が設けられている。図4と図5に示されるように、該選針装置本体(1)が該選針片(11)を駆動して該受力部(24)の針踵(241)を押し下げる時、該受力部(24)は該退縮間隙(27)の空間により下に沈み、連帯して該針足部(26)を該カム構造(3)の形成する軌道より離脱させ、これにより、ジャガード針(2)及び編針(4)に、進針、出針の動作を停止させる。該受力部(24)が下に沈むことで頸部(22)を介して圧力が伝えられて該復帰構造(25)が湾曲して弾力を発生する。該ジャガード針(2)の受力部(24)が該選針片(11)の圧迫より離脱した後、該復帰構造(25)の発生する弾力は該受力部(24)を跳ね返して復帰させ、これにより該針足部(26)が該カム構造(3)の駆動を受ける常態位置に戻り、該ジャガード針(2)及び該編針(4)が続いてカム構造(3)により駆動されて進針、出針する。
【0014】
本発明は周知の復帰構造に較べて、多くの異なるところがあり、まず、本発明の復帰構造(25)は直接には該受力部(24)に接続されておらず、頸部(22)に接続され、並びに該受力部(24)と該復帰構造(25)がそれぞれに頸部(22)に接続され、該受力部(24)の下に沈む圧力及び該復帰構造(25)の弾力が頸部(22)により緩衝され、圧力と弾力が相互に直接復帰構造(25)或いは受力部(24)にかかることがない。該復帰構造(25)は頸部(22)に接続され、末端の折り曲げ端(251)は針足部(26)の下方に延伸され、該復帰構造(25)は非常に明かに増長され、且つ円弧状をなし、これにより、圧力を受けるとき或いは弾力を釈放するときのいずれであっても、該復帰構造(25)の受ける応力は大幅に低減され、その使用寿命を確保する。また、上述の特徴により、圧力と弾力が緩和され、該針足部(26)の復帰時に該カム構造(3)に衝突して損壊するのが防止される。さらに、該肩部(23)に、退縮間隙(27)に向けて円弧形切欠き(231)が設けられ、該円弧形切欠き(231)の内側が受力部(24)が下に沈む時に受ける力を分散し、該肩部(23)或いは頸部(22)を長期使用の金属疲労を緩和する。総合すると、該ジャガード針(2)の受力部(24)、復帰構造(25)及び両者の間の頸部(22)と肩部(23)の構造特徴により、あきらかに長期使用で受ける応力を緩和せき、針足部(26)を復帰させる機能を達成できるほか、復帰構造(25)がジャガード針(2)の使用寿命を損耗するのを防止できる。
【0015】
上述の復帰構造(25)を弾性を有する板体、棒体或いは柱体とされ得る。本発明は上述の実施例で説明されるが、それは本発明を限定するものではなく、当業者が本発明の精神と範囲より逸脱せずに行う変更或いは修飾は、いずれも本発明の範囲に属するものとする。
【符号の説明】
【0016】
(1)選針装置本体
(2)ジャガード針
(3)カム構造
(4)編針
(5)上針盤
(11)選針片
(21)ジャガード針支点
(22)頸部
(241)針踵
(24)受力部
(26)針足部
(25)復帰構造
(251)折り曲げ端
(27)退縮間隙
(23)肩部
(231)円弧形切欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
復帰構造を具えた丸編み機のジャガード針であって、該丸編み機は複数の編針(4)を具え、且つ該編針(4)は複数のカム構造(3)及び複数のコンピュータ選針装置に制御され、該コンピュータ選針装置は複数の選針片(11)及び上針盤(5)上に位置する複数のジャガード針(2)を包含し、該ジャガード針(2)は常態で該カム構造(3)に駆動されて該編針(4)を駆動し、該選針片(11)が該ジャガード針(2)を押下げる時、該ジャガード針(2)を押動して該カム構造(3)を離脱させることができる、復帰構造を具えた丸編み機のジャガード針において、
該ジャガード針(2)は、
該編針(4)に接続されたジャガード針支点(21)と、
該ジャガード針支点(21)より延伸された頸部(22)と、
該頸部(22)に接続されて、該選針片(11)の押下を受ける複数の針踵(241)が設けられた受力部(24)と、
該受力部(24)より延伸されて、常態で該カム構造(3)が形成するスライド軌道内に位置する針足部(26)と、
復帰構造(25)であって、該復帰構造(25)は該頸部(22)より延伸され、末端に該針足部(26)の下方に位置する折り曲げ端(251)を具え、該折り曲げ端(251)が該上針盤(5)の内壁面を押圧し、且つ該復帰構造(25)と該受力部(24)の間に退縮間隙(27)があり、該選針片(11)に該受力部(24)を押し下げさせる時、移動の空間を具え、並びに該頸部(22)により圧力が伝送されて該復帰構造(25)が湾曲して弾力を発生し、これにより該受力部(24)を跳ね返して復帰させる上記復帰構造(25)と、
を包含したことを特徴とする、復帰構造を具えた丸編み機のジャガード針。
【請求項2】
請求項1記載の復帰構造を具えた丸編み機のジャガード針において、該復帰構造(25)は円弧度を有して該頸部(22)より該折り曲げ端(251)に延伸されたことを特徴とする、復帰構造を具えた丸編み機のジャガード針。
【請求項3】
請求項1記載の復帰構造を具えた丸編み機のジャガード針において、該頸部(22)は肩部(23)を介して該受力部(24)に接続され、該肩部(23)は該頸部(22)より上向きに延伸されて、該受力部(24)の丸編み機内の水平高さを該頸部(22)より高くすることを特徴とする、復帰構造を具えた丸編み機のジャガード針。
【請求項4】
請求項3記載の復帰構造を具えた丸編み機のジャガード針において、該肩部(23)の該退縮間隙(27)に面した一端に円弧形切欠き(231)が設けられて応力を減らすことを特徴とする、復帰構造を具えた丸編み機のジャガード針。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の復帰構造を具えた丸編み機のジャガード針において、該復帰構造(25)が弾性を有する板体、棒体或いは柱体のいずれかとされることを特徴とする、復帰構造を具えた丸編み機のジャガード針。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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