説明

循環型集塵装置

【課題】粉塵が大量に発生する作業室から粉塵を効率よく除去しつつ、空調設備によって消費される電力の低減を可能にする循環型集塵装置を提供する。
【解決手段】作業室2の空気を吸引するためのブロワー13と、ブロワー13によって吸引された空気を濾過し、吸引された空気中に含まれる粉塵を除去する除塵フィルター14と、除塵フィルター14によって濾過された空気の少なくとも一部分を作業室2に帰還させるための帰還ダクト15と、帰還ダクト15に設けられ、作業室2に帰還される空気をさらに濾過するための浄化フィルター16を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルターにより集塵し、浄化した空気を元の作業室に帰還させる循環型集塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップなどを封止するための半導体封止用樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、離型剤、難燃剤、着色剤などの各成分をミキサーで攪拌した後、シート状に成形し、さらにそれをハンマーで粉砕して所望する形状のタブレットに成形する。その際、大量の粉塵が発生し、設備の汚染による成型品の信頼性の低下や、作業環境の悪化などを生じさせている(特許文献1参照)。このような粉塵が大量に発生する環境においては、集塵装置によって飛散した粉塵を回収することが一般的に行われている。
【0003】
また、所定形状に成形されたタブレットを用いて半導体チップを封止する際、タブレットを振動コンベアなどによって封止成形装置に供給されるが、タブレット自体から粉塵が発生したり、タブレットに付着した粉塵が飛散したりする。そこで、封止成形装置自体に集塵装置を取り付け、成形金型付近に粉塵が付着しないようにすることも提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
従来の集塵装置によれば、フィルターによって粉塵が除去され、浄化された排気はそのまま屋外に捨てられていた。ところが、集塵装置によって作業室(例えば工場の建築物内)の空気を屋外に排気すると、作業室が負圧になり、作業室外(例えば屋外)から新たな空気が流入する。通常、作業室は、気温15〜20℃、湿度30〜50%に調温・調湿されている。作業室外から温度差及び/又は湿度差を有する新たな空気が流入すると、空調設備を作動させて調温・調湿を行わなければならず、空調設備によって消費される電力が増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−128742号公報
【特許文献2】特開平9−219414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来例の問題を解決するためになされたものであり、粉塵が大量に発生する作業室から粉塵を効率よく除去しつつ、空調設備によって消費される電力の低減を可能にする循環型集塵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る循環型集塵装置は、作業室の空気を吸引するためのブロワーと、前記ブロワーによって吸引された空気を濾過し、前記吸引された空気中に含まれる粉塵を除去する除塵フィルターと、前記除塵フィルターによって濾過された空気の少なくとも一部分を前記作業室に帰還させるための帰還ダクトと、前記帰還ダクトに設けられ、前記作業室に帰還される空気をさらに濾過するための浄化フィルターを備えたことを特徴とする。
【0008】
上記構成において、前記浄化フィルターは、材質の異なる少なくとも2種類のフィルターで構成されていることが好ましい。
【0009】
さらに、前記帰還ダクトの少なくとも一部は、浮遊粉塵を静電吸着するように帯電処理されていることが好ましい。
【0010】
前記帰還ダクトから前記作業室に空気を帰還させるための開口の総面積は、前記ブロワーの吸引側開口の面積よりも広いことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の構成によれば、従来、屋外に捨てられていた排気の少なくとも一部分を元の作業室に帰還させているので、作業室の気圧低下が低減され、作業室外から流入する新たな空気量が低減される。また、作業室に帰還される空気の温度及び湿度は、元の作業室の温度及び湿度とあまり差がない。そのため、空調設備を作動させて調温・調湿を行う際に、空調設備によって消費される電力を従来のものに比べて大幅に低減させることができる。なお、除塵フィルターによって濾過されているとはいえ、屋外に捨てられる排気中には微量の粉塵が含まれるが、屋外に捨てられる排気量も少なくなるため、屋外環境の汚染をさらに低減させることができる。さらに、作業室に帰還される空気は、浄化フィルターによってさらに濾過されるため、作業室に粉塵が循環することはほとんどない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る循環型集塵装置の基本構造及び設置状態を示す図。
【図2】本発明の一実施形態に係る循環型集塵装置の変形例を示す図。
【図3】本発明の一実施形態に係る循環型集塵装置の他の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係る循環型集塵装置について説明する。図1は、循環型集塵装置1の基本構造、及び、例えば半導体チップの封止作業など、粉塵が大量に発生する作業室2に循環型集塵装置1を設置した状態を示す。作業室2は、工場などの建築物3の内部にあり、半導体チップの封止装置4などが設置されている。また、建築物3の作業室2側の壁面3aには、作業室2内の温度及び湿度を一定の範囲に制御する調温・調湿装置5が設けられている。建築物3の作業室2側の天井部3bには、封止装置4などに対応して複数のフード(吸気口)11が取り付けられている。各フード11は、吸引ダクト12を介してブロワー13に接続されている。例えば、吸引ダクト12とブロワー13の結合部(ブロワー13の吸気側)には、除塵フィルター14が設けられている。また、ブロワー13の排気側には、除塵フィルター14によって濾過された空気の一部分又は全部を作業室2に帰還させるための帰還ダクト15が接続されている。帰還ダクト15には、作業室2に帰還される空気をさらに濾過するための除塵フィルター14が設けられている。さらに、帰還ダクト15には、必要に応じて、ブロワー13によって吸引された空気の一部又は全部を屋外に排気するためのベンチレーター17が設けられている。
【0014】
図1に示す構成例では、ブロワー13及び除塵フィルター14は、作業室2の天井3bに取り付けられており、帰還ダクト15の主要部は建築物3の壁面3aに沿って垂直に設けられている。帰還ダクト15の空気帰還側の開口15aは建築物3の壁面3aの下部に形成されている。この構成例では、作業室2内の空気は、天井部3bから吸引され、集塵装置1によって浄化された空気は、建築物3の作業室2の床面3cの近傍から帰還される。なお、ブロワー13、除塵フィルター14、浄化フィルター16及び帰還ダクト15の空気帰還側の開口15aの位置は特に限定されず、その他の位置に設けられていてもよい。
【0015】
除塵フィルター14及び浄化フィルター16は、比較的粒子径の大きい粗塵除去用の一次フィルターと、一次フィルターでは除去しきれない微粒子を除去するための、微粒子除去用の二次フィルターなど、複数種類のフィルターの組み合わせによって構成されている。作業室2において行われる作業や発生される粉塵の種類に応じて、使用されるフィルターの種類及び組み合わせは適宜変更される。上記半導体チップの封止作業の場合、二次フィルターとしては、例えば準HEPAフィルターなどが用いられ、例えば粒子径0.3μmの粉塵を95%以上除去可能である。HEPAフィルターを用いた場合は、さらに高い効率で粉塵を除去することができる。
【0016】
ブロワー13を駆動すると、作業室2内の空気が、フード11を介して吸引ダクト12に吸引され、除塵フィルター14を透過する。その際、吸引された空気中に含まれる粉塵のほとんどは、除塵フィルター14によって濾過される。ブロワー13によって吸引され、除塵フィルター14によって粉塵が濾過された空気の一部又は全部は、帰還ダクト15を通り、さらに浄化フィルター16を透過して、作業室2に帰還される。すなわち、循環型集塵装置1によって濾過されながら循環は、循環型集塵装置1によって濾過されながら循環される。除塵フィルター14によって濾過された空気を、浄化フィルター16によって再度濾過するので、作業室2に帰還される空気には粉塵はほとんど含まれておらず、作業室に粉塵が循環することはほとんどない。
【0017】
循環型集塵装置1によって濾過されながら作業室2内の空気が循環されるとはいえ、作業室2及び循環型集塵装置1は完全な密閉構造ではないため、ブロワー13によって吸引された空気が屋外に漏れたり、作業室2の内部に外部から空気が流れ込んだりする。また、定期的に、ベンチレーター17を解放して、ブロワー13によって吸引された空気の一部を屋外に排気し、新鮮な空気を吸気口(図示せず)から取り込んで補充するようにしてもよい。一方、作業室2の内部は、調温・調湿装置5によって、例えば気温15〜20℃、湿度30〜50%に調温・調湿されている。ところが、この循環型集塵装置1によれば、ブロワー13によって吸引され、従来は屋外に捨てられていた、作業室2内の空気の一部又は全部を元の作業室に帰還させている。そのため、作業室2の気圧低下が低減され、作業室2の外部から流入する新たな空気量が低減される。また、作業室2に帰還される空気の温度及び湿度は、元の作業室の温度及び湿度とあまり差がない。そのため、調温・調湿装置5を作動させて調温・調湿を行う際に、調温・調湿装置5によって消費される電力を従来のものに比べて大幅に低減させることができる。
【0018】
また、フード11、吸引ダクト12、帰還ダクト15などは、一般的に金属板を筒状に成形して製造されている。そこで、循環型集塵装置1から作業室2に帰還される空気の温度及び湿度を元の作業室の温度及び湿度からあまり変化させないようにするため、これらフード11、吸引ダクト12、帰還ダクト15の外気に触れる部分を断熱材18で覆うようにしてもよい。外気が作業室2の室温に比べて低い場合であっても、フード11、吸引ダクト12、帰還ダクト15の外気に触れる部分を断熱材18で覆うことにより、温度低下だけでなく、結露による乾燥やカビの発生などを防止することができる。
【0019】
ブロワー13によって発生された空気流は、帰還ダクト15を通り、さらに浄化フィルター16を透過して開口15aから作業室2に帰還する。一般的に、ブロワー13によって発生される風量は、作業室2内で発生される粉塵の量に関連(例えば比例)するが、この実施形態では、粉塵が大量に発生する作業室2を想定しているので、ブロワー13により発生される風量はかなり多い。そのため、浄化フィルター16による圧力損失を考慮しても、帰還ダクト15の空気帰還側の開口15aから作業室2に帰還される(吹き出される)空気の流速はかなり速いものとなる。帰還ダクト15の空気帰還側の開口15aは作業室2の床面3cの近傍に設けられているので、床面3cに退席した粉塵を巻き上げてしまう可能性がある。そのため、帰還ダクト15の空気帰還側の開口15aの総面積を、ブロワー13の吸引側開口の面積よりも広くして、それによって作業室2に帰還される空気の流速を遅くするようにしてもよい。作業室2に帰還される空気の流速は3m/sが好ましい。
【0020】
図2は、循環型集塵装置1の変形例を示す。この変形例では、フード11が、建築物3の作業室2の壁面であって、帰還ダクト15の空気帰還側の開口15aと対向する面3dに設けられている。また、フード11は、帰還ダクト15の空気帰還側の開口15aと異なり、作業室2の天井3bの近傍に設けられている。この場合は、帰還ダクト15の空気帰還側の開口15aの総面積を、ブロワー13の吸引側開口の面積よりも狭くして、開口15aから吹き出される空気によって、作業室2内で発生される粉塵をフード11側に吹き飛ばすようにしてもよい。
【0021】
図3は、循環型集塵装置1の他の変形例を示す。この変形例では、帰還ダクト15の一部分を電源20などによって帯電させ、除塵フィルター14で除去しきれなかった浮遊粉塵P(誇張して描いている)を帰還ダクト15の内壁に静電吸着させて除去する。このようにすれば、除塵フィルター14の目よりも細かな微粒子を除去することが可能になる。また、浮遊粉塵を静電吸着させるための帯電処理は、このような帰還ダクト15に直接電源を接続するものに限定されず、空気との摩擦による帯電など、その他の帯電処理であってもよい。例えば、帰還ダクト15の内側に、樹脂シートなどによる吹き流しを設けてもよい。さらに、図2に示す構成の循環型集塵装置1の帰還ダクトの少なくとも一部に、浮遊粉塵を静電吸着するように帯電処理を行ってもよい。なお、作業室2において使用される材料が爆発する可能性がある場合には、帯電処理を行わずに、帰還ダクト15をアースして除電することが好ましい。
【0022】
上記循環型集塵装置1を本出願人の半導体チップの封止工場に適用したと仮定して、エネルギーの節約効果を試算したところ、370,000kWh/年の節電及びCO換算で200t/年の排出量削減が可能になることがわかった。このように、本発明によれば、従来、屋外に捨てられていた排気の少なくとも一部分を元の作業室に帰還させているので、作業室外から流入する新たな空気量が低減され、それによって空調設備によって消費される電力を大幅に低減させることができる。なお、本発明は、上記半導体チップの封止作業など、粉塵が大量に発生する作業室に適するだけでなく、その他の設備に応用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0023】
1 循環型集塵装置
2 作業室
3 建築物
5 調温・調湿装置(空調設備)
11 フード(吸気口)
12 吸引ダクト
13 ブロワー
14 除塵フィルター
15 帰還ダクト
15a 帰還ダクトの空気帰還側の開口
16 浄化フィルター
17 ベンチレーター
18 断熱材
20 電源(帯電処理)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業室の空気を吸引するためのブロワーと、
前記ブロワーによって吸引された空気を濾過し、前記吸引された空気中に含まれる粉塵を除去する除塵フィルターと、
前記除塵フィルターによって濾過された空気の少なくとも一部分を前記作業室に帰還させるための帰還ダクトと、
前記帰還ダクトに設けられ、前記作業室に帰還される空気をさらに濾過するための浄化フィルターを備えたことを特徴とする循環型集塵装置。
【請求項2】
前記浄化フィルターは、材質の異なる少なくとも2種類のフィルターで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の循環型集塵装置。
【請求項3】
前記帰還ダクトの少なくとも一部は、浮遊粉塵を静電吸着するように帯電処理されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の循環型集塵装置。
【請求項4】
前記帰還ダクトから前記作業室に空気を帰還させるための開口の総面積は、前記ブロワーの吸引側開口の面積よりも広いことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の循環型集塵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−87997(P2012−87997A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235749(P2010−235749)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】