説明

循環式給湯装置

【課題】温水を戻り配管5を介して戻して循環ポンプ6で循環させることにより、常に温水がすぐに出湯できる、いわゆる即出湯機能が付加された給湯装置が知られている。この給湯装置を新たに設置したような場合では、循環ポンプ6に呼び水を注入してから始動しないと、うまく循環が開始されず、循環ポンプ6の故障等のエラーが発生したと判断される。
【解決手段】循環ポンプ6の上流に空気抜き弁8を備えた分配器7を取り付け、循環ポンプ6を始動する前に、湯水が分配器7内に充填されやすくし、更に分配器7内の湯水が循環ポンプ6内に流れ込みやすくした。これにより、別途呼び水を循環ポンプ6に注入しなくても、循環ポンプ6の空回りを防止し、循環ポンプ6による循環を開始することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯管を介して各所に給湯された温水を戻り配管を介して循環させる循環ポンプを備えた循環式給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばホテルなどでは、大型の給湯装置を設置し、この給湯装置で温水を生成して給湯管を介してホテル内の客室や厨房その他の各所に給湯している。この場合、特に客室ではカランを開くと直ちに温水が吐出することが望まれる。そのため、給湯装置に循環ポンプを設け、戻り配管を介して温水が常に循環するように構成されている、循環式給湯装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4を参照して、循環ポンプPによって吸引され、戻り配管Rを介して戻ってきた温水は空気が混入されている場合がある。そこで、戻り配管Rを介して戻された温水は、気液分離ユニットSPを通過する際に空気が分離され、この分離された空気は気液分離ユニットSPの上部に取り付けられた空気抜き弁AVから大気中へと抜気される。空気が分離除去された温水は分配器STに一旦供給され、この分配器STから配管Tを介して循環ポンプPに温水が流れるように構成されている。なお、循環ポンプPを2基並列に接続したのは、一方が故障した場合に他方の循環ポンプPで温水の循環を継続することができるように冗長性を高めるためである。なお、SAは管路内の圧力がなんらかの理由により所定の圧力より高くなった際に開弁しドレン側に圧力を逃がす安全弁である。
【特許文献1】特開2003−42571号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の給湯装置を新たに設置し、あるいはメンテナンスのため循環経路内の湯水を排水した後に始動する際、循環ポンプP内には湯水が充填されていない。そのため呼び水を循環ポンプP内に注入した状態で始動しなければ、戻り配管Rから十分に湯水を循環ポンプPに吸い込むことができず、始動から所定時間経過しても湯水の循環が開始されないのでエラーと判断されてしまう。特に循環ポンプPがDCモータで駆動されている場合には、循環ポンプPの空回り時の回転数が高く、循環ポンプPが破損するおそれが生じる。
【0005】
なお、循環ポンプPとして自吸式のものを用いればよいが、自吸式の循環ポンプは非自吸式のものに比べて高価であり、給湯装置のコストが高くなるという不具合が生じる。また、戻り配管Rから気液分離ユニットSPまでは比較的簡単に湯水が流れるので、徐々にではあるが分配器STまでは湯水が自然に流れ込む。ただし、配管Tには登り勾配の部分TCがあるため、分配器ST内の湯水が自然に循環ポンプP内に流入するためにはきわめて長時間を要し、実用的ではない。
【0006】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、自吸式の循環ポンプを用いなくても呼び水の不要な循環式給湯装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明による循環式給湯装置は、給水を加熱し温水を生成し、その温水を給湯管を介して各所に給湯する給湯装置であって、給湯管を介して給湯された温水を戻り配管を介して戻す循環ポンプを備え、循環ポンプによって吸引された温水をふたたび加熱して給湯管から各所に給湯する循環機能を備えたものにおいて、ポンプの上流に気液分離装置を設け、この気液分離装置と上記循環ポンプとを配管によって直接連結したことを特徴とする。
【0008】
上記従来のものでは、気液分離装置と循環ポンプとの間に空気だまりとなる分配器が配置されていたため、循環ポンプまでスムーズに湯水が流れ込まなかった。しかし本発明では、気液分離装置と循環ポンプとを直接接続し、両者の間に空気だまりとなる部分が生じないようにしたので、短時間で循環ポンプまで湯水が流れ込み、別途呼び水を循環ポンプに充填する必要がない。
【0009】
なお、上記気液分離装置と循環ポンプとを連結する配管は、気液分離装置から循環ポンプに向かって登り勾配となる部分が生じないように成形されていれば、更に気液分離装置から循環ポンプへと湯水がスムーズに流れる。
【0010】
上記循環ポンプとして2基の循環ポンプが取り付けられており、上記気液分離装置は戻り配管からの温水を両循環ポンプに分配する分配器として機能させてもよい。
【発明の効果】
【0011】
以上の説明から明らかなように、本発明は、循環ポンプを初めて始動する際に戻り配管からの湯水が循環ポンプ内に流れ込みやすくしたので、自吸式の循環ポンプを用いなくても呼び水を注入する必要が無く、循環ポンプの最初の始動によって循環が開始され、エラーになることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1を参照して、1は本発明による給湯装置の一例であり、内部に給湯装置本体11を備えている。この給湯装置本体11は給水本管2から引き込まれた給水管21から給水され、給湯装置本体11内部でその給水を加熱し、給湯管31に温水を排出するものである。
【0013】
給湯管31内の温水は給湯本管3を介して各所に設定された給湯個所4に給湯される。給湯本管3は給湯個所4を経て戻り配管5に連結されている。この戻り配管5は循環ポンプ6に接続されており、循環ポンプ6の吐出側は給湯装置本体11の給水口に接続されている。したがって、循環ポンプ6を作動させると、給湯個所4で温水が消費されていない状態でも給湯本管3から戻り配管5へと温水が循環され、この循環中に温度が低下した温水を給湯装置本体11で再び加熱して給湯個所4へ供給することができる。
【0014】
このように温水が常に循環しているので、給湯個所4では常に温水が直ちに出湯できる状態に保たれている。
【0015】
本実施の形態では循環ポンプ6を2基並列に接続し、所定の周期で両循環ポンプ6を交互に運転することとした。このように2基の循環ポンプ6を並列に接続することにより、一方の循環ポンプ6が故障しても他方の循環ポンプ6で温水の循環を継続することができる。
【0016】
図2を参照して、戻り配管5を介して循環されてきた温水は安全弁9を通過した後、分配器7に一旦供給される。この分配器7は、図3に示すように、下部に流入口72を備え、温水はこの流入口72から分配器7内に流入する。流入口72は上方に伸びる拡張通路73に連通している。
【0017】
この拡張通路73は、温水の流れ方向に沿って通路面積が漸次拡張するように設計されており、そのため温水の流速は拡張通路73内を流れるにしたがって減速される。温水中に気泡Bが混入している場合には気泡は自らの浮力によって拡張通路73内を上昇する。
【0018】
拡張通路73は更に膨張室74に連通している。膨張室74に流入した温水は流速が大幅に減速され、ここで気泡Bはすべて上昇し、温水から気泡Bが分離される。気泡Bが分離された温水は2個の吐出口71から吐出される。
【0019】
また、分配器7の上部には空気抜き弁8が連結されており、分配器7で分離された空気はこの空気抜き弁8で適宜大気中へと排出される。このように分配器7は同時に気液分離装置として機能する。
【0020】
図2に戻り、分配器7の2個の吐出口71は各々配管61を介して循環ポンプ6の吸入口60に連結されている。この配管61は吐出口71から吸入口60に向かって常に水平か、もしくは下り勾配となるように配管されており、登り勾配となる部分が生じないようにした。
【0021】
上記構成によれば、例えば給湯装置1を新たに設置し、戻り配管5内に湯水が充填されていない状態で初めて始動する際、循環ポンプ6を駆動させていなくても給水圧に押されて湯水は安全弁9まで自然に到達する。分配器7内には当初空気が充満しているが、給水圧に押されて分配器7内の空気は空気抜き弁8から大気中へと押し出され、安全弁9から分配器7内へは短時間で湯水が流れ、分配器7は湯水によって充満される。
【0022】
分配器7内が湯水で充満すると吐出口71から湯水が配管61へと流れ出る。この配管61は上述のように途中に登り勾配になる個所がないので、そのまま重力によって配管61内を流れて循環ポンプ6内に流れ込む。この流れ込んだ湯水が呼び水として機能するので、別途改めて循環ポンプ6に呼び水を注入せずに始動スイッチをオンしても、循環ポンプ6は空回りすることなく湯水を引き込み、上述の給湯本管3から戻り配管5への温水の循環を行うことができる。
【0023】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態の構成を示す図
【図2】循環ポンプ周りの配管を示す図
【図3】気液分離装置の詳細を示す図
【図4】従来の循環ポンプ周りの配管を示す図
【符号の説明】
【0025】
1 給湯装置
2 給水本管
3 給湯本管
5 戻り配管
6 循環ポンプ
7 分配器
8 空気抜き弁
9 安全弁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水を加熱し温水を生成し、その温水を給湯管を介して各所に給湯する給湯装置であって、給湯管を介して給湯された温水を戻り配管を介して戻す循環ポンプを備え、循環ポンプによって吸引された温水をふたたび加熱して給湯管から各所に給湯する循環機能を備えたものにおいて、ポンプの上流に気液分離装置を設け、この気液分離装置と上記循環ポンプとを配管によって直接連結したことを特徴とする循環式給湯装置。
【請求項2】
上記気液分離装置と循環ポンプとを連結する配管は、気液分離装置から循環ポンプに向かって登り勾配となる部分が生じないように成形されたことを特徴とする請求項1に記載の循環式給湯装置。
【請求項3】
上記循環ポンプとして2基の循環ポンプが取り付けられており、上記気液分離装置は戻り配管からの温水を両循環ポンプに分配する分配器として機能することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の循環式給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−138537(P2006−138537A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−328246(P2004−328246)
【出願日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】