説明

循環式貯湯給湯システム

【課題】 本発明は、給湯水を貯留する貯湯槽と、貯湯槽から給湯栓との接続部に至る往管路と当該接続部から貯湯槽に至る復管路とからなる循環管路と、往管路に設けられ循環管路に給湯水を循環させる循環手段とを備えた循環式貯湯給湯システムに関し、その目的は、循環管路における給湯水の循環による即時給湯の持つ利便性と省資源(捨て水の減少)という特長を継承しながら、既に高温の給湯水が大量に貯湯槽に貯留されているにも係わらず、給湯圧力や循環管路圧力損失のために給湯量が抑えられていた貯湯式給湯のボトルネックを解消して、大流量の給湯を可能にする循環式貯湯給湯システムを提供する点にある。
【解決手段】 貯湯槽1が、加圧式に構成され、復管路9から開栓状態の給湯栓5との接続部6への給湯水の供給を許容する復管路給湯水供給手段20を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯水を貯留する貯湯槽と、前記貯湯槽から給湯栓との接続部に至る往管路と当該接続部から貯湯槽に至る復管路とからなる循環管路と、前記往管路に設けられ前記循環管路に給湯水を循環させる循環手段とを備えた循環式貯湯給湯システム、特に家庭用もしくはホテル等の業務用に適用可能で貯湯槽に貯留されている給湯水を、循環管路を通じて即時に給湯栓に供給することができる循環式貯湯給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用途等に用いられる給湯システムでは、通常、給湯需要があるときに、給湯器等から給湯管路を通じて給湯バルブ又は湯水混合栓等の給湯栓へ給湯水を送出するように構成されている。従って、給湯需要がないときには給湯管路中に滞留する給湯水が放熱によって温度低下し、給湯栓を開いても最初は適温(例えば30℃)に達しない温度の水が放出されるため、給湯管路中の滞留水を排出してからでないと適温の湯が出てこない不便があった。同時に、そのような滞留水の排出によって水資源を消費する無駄と上下水道料金の浪費を生じていた。
特に、ホテル等の業務用途では、給湯管路が長くなるため、上述のような不便と無駄を回避することが望まれる。
【0003】
そこで、このような不便と無駄を回避することができる貯湯給湯システムとして、図4に示すように、熱源機130により加熱された給湯水を貯留する貯湯槽101と、貯湯槽101から給湯栓105との接続部106に至る往管路108とその接続部106から貯湯槽101に至る復管路109とからなる循環管路110と、その貯湯槽101に貯留されている給湯水を循環管路110に循環させる循環ポンプ111とを備え、その循環管路111から循環管路110に接続された給湯栓105に給湯する循環式貯湯給湯システム400が知られている(例えば、特許文献1及び2を参照。)。
そして、このような従来の循環式貯湯給湯システム400は、その循環管路110における給湯栓105との接続部106よりも上流側の給湯水の温度を適切な給湯適温(例えば60℃)以上に保つことで、その給湯適温以上の給湯水を、循環管路110を通じて即時に給湯栓105に供給することができる。
【0004】
【特許文献1】特開平8−121800号公報
【特許文献2】特開平8−159501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した循環式貯湯給湯システムでは、高温に加熱された給湯水が比較的大量に貯湯槽に貯留されていることから、本来は、給湯栓において大量の給湯が可能である。しかしながら、従来の循環式貯湯システムでは、循環経路の少なくとも往管路の圧力損失や、貯湯槽から給湯栓側に給湯水を押し出すために貯湯槽に付加する給湯圧力の制限から、上記のような大流量の給湯能力を生かし切れず、瞬間式給湯と同程度の給湯量しか得られないのが現状であった。
また、上記大流量の給湯能力を発揮するために、循環管路の特に往管路を形成する配管の口径を大きくすれば、設備費の高額化、配管の設置作業の煩雑化、更には、循環管路における給湯水の必要循環流量の増加に起因するエネルギロス等の問題がある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、循環管路における給湯水の循環による即時給湯の持つ利便性と省資源(捨て水の減少)という特長を継承しながら、既に高温の給湯水が大量に貯湯槽に貯留されているにも係わらず、給湯圧力や循環管路圧力損失のために給湯量が抑えられていた貯湯式給湯のボトルネックを解消して、循環管路を形成する配管の口径を可能な限り小さくしながら大流量の給湯を可能にする循環式貯湯給湯システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る循環式貯湯給湯システムは、給湯水を貯留する貯湯槽と、前記貯湯槽から給湯栓との接続部に至る往管路と当該接続部から貯湯槽に至る復管路とからなる循環管路と、前記往管路に設けられ前記循環管路に給湯水を循環させる循環手段とを備えた循環式貯湯給湯システムであって、その第1特徴構成は、前記貯湯槽が、加圧式に構成され、
前記復管路に、前記循環管路における給湯水の循環流量を調整する循環流量調整手段を備え、
前記給湯栓との接続部を前記循環流量調整手段をバイパスして前記復管路の前記循環流量調整手段よりも下流側に接続するバイパス管路と、前記バイパス管路において前記接続部側へ向かう給湯水の流通のみを許容する流通規制手段とで構成された復管路給湯水供給手段を備えた点にある。
【0008】
上記第1特徴構成によれば、給湯使用のないとき、即ち給湯栓が閉栓状態であるときには、上記循環手段により、給湯水は、貯湯槽を出て、往管路、給湯栓との接続部、及び復管路の順に一巡して貯湯槽に戻り、循環管路における給湯水の循環による即時給湯が実現される。また、このとき、バイパス管路において接続部側から復管路側に向かう給湯水の流通が流通規制手段により阻止されて、上記循環管路において給湯水が上記循環流量調整手段を通じて循環することで、その循環流量が所定流量に設定される。
一方、給湯使用があるとき、即ち給湯栓が開栓状態であるときには、給湯栓直上流の接続部まで、常時高温の給湯水が流通しているため、殆ど時間遅れなく、高温の給湯水が給湯栓から出湯される。更に、給湯栓を開栓状態とすると、直上流の接続部において内圧低下を招くので、往管路を通じてのみではなく、バイパス管路において復管路の循環流量調整手段の下流側から接続部側へ向かう給湯水の流通が流通規制手段により許容されて、復管路の上記循環流量調整手段よりも下流側の給湯水がバイパス管路を通じて接続部に供給されることになる。よって、給湯栓には2系統の管路、即ち往管路と復管路とから給湯が行われることになり、貯湯槽から給湯栓に渡る管路の圧力損失が減少するために、循環管路を形成する配管の口径を可能な限り小さくしながら大流量の給湯が可能になる。さらには、このときの往管路に設けられた循環手段における給湯水の流れ方向は循環方向に対して順方向でもあるために、往管路における給湯水の流量増加も見込むことができる。従って、例えば往管路と復管路の径が略同じであれば、給湯栓の圧力損失が支配的でない限り、従来の循環式貯湯給湯システムに比べて、2倍程度の大量出湯が見込めることになる。
以上に述べたように、本発明により、循環管路における給湯水の循環による即時給湯の持つ利便性と省資源(捨て水の減少)という特長を継承しながら、既に高温の給湯水が大量に貯湯槽に貯留されているにも係わらず、給湯圧力や循環管路圧力損失のために給湯量が抑えられていた貯湯式給湯のボトルネックを解消して、循環管路を形成する配管の口径を可能な限り小さくしながら大流量の給湯を可能にする循環式貯湯給湯システムを実現することができ、例えば、風呂の湯張り時間を3分程度に短縮して、脱衣中に、湯張りの完了が可能になる。
【0009】
本発明に係る循環式貯湯給湯システムの第2特徴構成は、前記給湯栓が複数配置されていると共に、一の前記往管路に対して前記複数の給湯栓の夫々が順次接続され、
前記複数の給湯栓のうちの少なくとも1つの給湯栓に対して前記復管路給湯水供給手段が設けられている点にある。
【0010】
上記第2特徴構成によれば、一の往管路に複数の給湯栓を順次接続する所謂配管分枝工法に適合するものであり、複数の給湯栓が設置される一般的な循環式貯湯給湯システムに適用できて実用性を発揮することができる。
即ち、給湯栓が複数配置されていると共に、一の前記往管路に対して前記複数の給湯栓の夫々が順次接続されている場合には、複数の給湯栓のうちの少なくとも1つの給湯栓に対して復管路給湯水供給手段を設けることで、その給湯栓において大流量の給湯を実現することができる。
また、復管路給湯水供給手段が設けられて大流量の給湯が可能な給湯栓に隣接する給湯栓において、復管路給湯水供給手段が設けられていなくても、その大流量の給湯が可能な給湯栓で給湯使用がないときには、給湯時に、隣接する復管路給湯水供給手段により、復管路の上記循環流量調整手段よりも下流側の給湯水がバイパス管路を通じて接続部に供給され大流量の給湯が可能となる。即ち、大流量の給湯を必要とする給湯栓が複数あり且つ互いに隣接する場合には、その複数の給湯栓に対して共通の復管路給湯水供給手段を設ければ、その複数の給湯栓において、同時給湯時以外で大流量の給湯が可能となり、一方、同時給湯時でも通常の給湯流量を確保することができる。
また、上記配管分岐工法により、往管路において最上流側の給湯栓との接続部よりも上流側に循環手段を一つだけ設置すればよく、更に、復管路に循環管路における給湯水の循環流量を設定する循環流量調整手段を備える場合でも、その循環流量調整手段を一つだけ設置すればよく、給湯栓ごとに上記循環手段等を設置する必要が無い。
【0011】
本発明に係る循環式貯湯給湯システムの第3特徴構成は、前記往管路における前記循環手段の下流側と前記貯湯槽又は前記復管路とを接続する放熱用管路と、前記放熱用管路に設けられ給湯水の熱を熱消費部側へ供給する熱供給手段とを備えた点にある。
【0012】
上記第3特徴構成によれば、循環管路における給湯水の循環による即時給湯を実現しながら、熱消費部側への熱供給を行うことができ、更に、新たな供給ポンプ等を設置することなく、循環管路に給湯水を循環させるための循環手段を用いて、給湯水を放熱用管路側に流通させることができ、安価かつ小さな設置スペースで、即時給湯と熱供給を行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0013】
以上により、本発明に係る循環式貯湯給湯システムでは、循環管路における給湯水の循環による即時給湯を実現しながら、設備費の増加を殆ど伴うことなく、給湯量を略2倍程度に増大することが可能になる。
しかも、複数の給湯栓に対しても適用が可能である。また、熱消費部への熱供給をも兼用することができる。
本発明に係る循環式貯湯給湯システムによって、従来の単一の給湯管路による給湯方式では必須であった捨て水の無駄が無くなり、省資源が実現できる。給湯水の循環によって、管路からの放熱量が増大するというマイナス面は、上記の捨て水の無駄と一部相殺できる他、深夜等に循環を停止することによっても、減殺することが可能である。更に、熱源機としてコージェネレーション装置を想定した場合には、余り気味となる熱を、給湯の利便性向上と水資源の節約に有効活用できるため、コージェネレーション装置の稼働率向上を通じての省エネルギーとも相殺されるべきものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る循環式貯湯給湯システム(以下、本発明システムと呼ぶ。)の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0015】
〔第1実施形態〕
第1実施形態の本発明システム100について図1に基づいて説明する。
本発明システム100は、給湯水を貯留する貯湯槽1と、その貯湯槽1から湯水混合栓(給湯栓の一例)5との接続部6に至る往管路8と当該接続部6から貯湯槽1に至る復管路9とからなる循環管路10とを備え、貯湯槽1に貯留されている給湯水を循環管路10に循環させて当該循環管路10から湯水混合栓5に給湯する循環式貯湯給湯システムとして構成されている。
【0016】
そして、このような本発明システムでは、貯湯槽1から循環管路10の往管路8に流出した給湯水は、湯水混合栓5との接続部6に至ってもなお給湯適温(例えば60℃)以上を維持されており、その循環管路10に対して湯水混合栓5を比較的短い(例えば1m以内)給湯管路7を介して接続することができる。よって、湯水混合栓5が開かれて給湯の使用があったときには、給湯適温以上の給湯水が、湯水混合栓5の直上流の接続部6まで流通しているため、殆ど時間遅れなく直ちに接続部6から湯水混合栓5に供給され出湯される。
また、循環管路10が湯水混合栓5よりも鉛直方向において下方に設置されている場合には、自然対流が生じて循環管路10から分岐する給湯管路7中の給湯水の温度が上昇することも期待できる。
【0017】
上記貯湯槽1は、熱源機30により加熱された給湯水を貯留するように構成されており、詳しくは、貯湯槽1の最下部3から熱源機30を介して最上部2に至るように敷設された冷却水管路31に、貯湯槽1の最下部3側から最上部2側に向けて水を流通させる冷却水ポンプ32(例えば、熱源機30に内蔵されている。)を設け、その冷却水ポンプ32を作動させて冷却水管路31に水を流通させることで、貯湯槽1の最下部3側から冷却水管路31に取り出された水が熱源機30により加熱されて、その加熱された温水が給湯水として貯湯槽1の最上部2側に供給される。
尚、上記熱源機30としては、ボイラや湯沸器を用いるのが通常であるが、エンジン駆動発電機や燃料電池などのコージェネレーション装置やヒートポンプ装置などを利用することができる。
【0018】
更に、貯湯槽1の最下部3には、水道メータ26を通じて上水を供給する給水管路25から比較的低温の上水が供給されることで、常に水道圧が付加された加圧式に構成され、更に、その貯湯槽1の最下部3にある低温の水を熱源機30により適切な温度以上に加熱した後に、貯湯槽1の最上部2に戻すことで、貯湯槽1は、温度成層を形成する形態で給湯水を貯留する温度成層型に構成されている。
詳しくは、冷却水管路31において貯湯槽1の最上部2側に供給される温水の温度を検出する温度センサ33を備え、冷却水ポンプ32の動力を温度センサ33の検出結果に基づいて制御して、貯湯槽1の最上部2側に供給される温水の温度が適切な温度以上となるように制御されているので、貯湯槽1に貯留されている給湯水は、最上部2側に高温層を形成し最下部3側に低温層を形成する形態で、温度成層を形成して貯留されている。
尚、貯湯槽1に付随する減圧弁(あるいは減圧逆止弁)や逃し弁等、冷却水管路31に付随する流量調整弁等の通常設置される補機等については、図示を省略しているものもある。
【0019】
循環管路10は、貯湯槽1の最上部2から往管路8に給湯水が流出すると共に復管路9から貯湯槽1の中央部4に給湯水が流入する形態で、貯湯槽1に対して接続されている。
往管路8及び復管路9からなる循環管路10については、例えば、銅管を発泡ポリウレタン成型材にて保温したもののように、通常の仕様で構成することができる。ただし、循環管路10を形成する配管の仕様によっては火傷防止程度の被覆しか成されていない場合があるため、断熱材を厚くして、放熱損失を抑える方が、経済的で省エネルギーに繋がる。尚、往管路8及び復管路9を形成する夫々の配管の口径は同等とされている。
【0020】
従って、貯湯槽1の最上部2から往管路8に流出し湯水混合栓5に供給されずに復管路9に戻された給湯水の温度(例えば60℃)が、略その温度を維持したまま、復管路9を通じて貯湯槽1の中央部4に流入する。
よって、貯湯槽1を温度成層型に構成する場合には、貯層層1において復管路9との接続部である中央部4よりも下方側に、高温層と低温層との温度境界が形成されるように、冷却水ポンプ32の動力及び熱源機30の出力が制御されている。
【0021】
また、貯湯槽1の最下部3の給湯水の温度を比較的低温(例えば25℃)に保たれるので、熱源機30がコージェネレーション装置である場合には、その貯湯槽1の最下部3から冷却水管路31に取り出された低温の水により、そのコージェネレーション装置が十分に冷却される。
【0022】
循環管路10の往管路8には、給湯水を往管路8から復管路9に向かう方向に強制循環させるための循環ポンプ11(循環手段の一例)が設けられ、一方、循環管路10の復管路9には、その給湯水の循環流量を設定可能な循環流量調整弁12(循環流量調整手段)が設けられている。
尚、湯水混合栓5が閉栓状態であるときの循環管路10における給湯水の循環流量が、湯水混合栓5が開栓状態であるとき即ち給湯時の往管路10における給湯水の流量よりもかなり小さい場合においては、給湯時に循環ポンプ11が圧力損失増加の原因になることがある。そこで、往管路11において循環ポンプ11の上流側と下流側とをバイパスする管路16を設け、その管路16に循環ポンプ11の上流側から下流側に向かう給湯水の流通のみを許容する逆止弁15を設けることで、給湯時に、往管路8において循環ポンプ11をバイパスし管路16を通じて湯水混合栓5側に給湯水を供給することができるので、循環ポンプ11における圧力損失の増加を防止することができる。
【0023】
そこで、本発明システムには、コンピュータで構成される制御装置(図示省略)が設けられ、その制御装置は、循環管路10において湯水混合栓5との接続部6に到達する給湯水の温度が給湯適温以上となるように、循環管路10における給湯水の循環流量が制御するように構成されている。
【0024】
即ち、貯湯槽1から往管路8に流出し湯水混合栓5に供給されずに復管路9に戻された給湯水の温度を検出する温度センサ14を備え、循環ポンプ11の動力又は循環流量調整弁12の開度を温度センサ33の検出結果に基づいて制御して、温度センサ14で検出される給湯水の温度を給湯適温以上に保つように構成されている。
尚、上記温度センサ14は、循環管路10において、湯水混合栓5との接続部6の代表温度を検知できる位置に設置すべきである。例えば、温度センサ14を復管路9の無保温の位置等に設置すれば、給湯水の温度降下が早くなり、接続部6における給湯水の温度維持には十分であるが、循環管路10における循環流量が増加して省エネルギーに反することになるからである。
【0025】
更に、循環管路10に24時間連続で給湯水を循環させるように構成しても構わないが、時間制御機能を使用して、例えば、給湯使用のない深夜は循環ポンプ11の作動を停止して、省エネルギーを図ることも可能である。
【0026】
また、復管路9において一定流量の給湯水を流せば、循環管路10において湯水混合栓5との接続部6に到達する給湯水の温度が給湯適温以上に保つことができるのであれば、上記のような上記循環ポンプ11の動力制御又は循環流量調整弁12の開度制御を省略して、定流量弁(上流側と下流側との間の差圧が変動しても、常に一定の設定流量を流す機能を持つ弁)により復管路9における給湯水の流量を一定に維持することが簡便である。また、この定流量弁は、減圧弁、手動調節弁もしくは細管等で代用することも可能である。
【0027】
このように構成された本発明システム100では、給湯使用があるとき、即ち湯水混合栓5が開栓状態であるときには、その開栓状態の湯水混合栓5直上流の接続部6まで、常時高温の給湯水が流通しているため、殆ど時間遅れなく、高温の給湯水が湯水混合栓5から出湯される。
【0028】
更に、本発明のシステム100には、復管路9から開栓状態の湯水混合栓5との接続部6への給湯水の供給を許容する復管路給湯水供給手段20が設けられており、湯水混合栓5が開栓状態となると、往管路8を通じてのみではなく、この復管路給湯水供給手段20により復管路9から開栓状態の湯水混合栓5との接続部6への給湯水の供給が許容され、復管路9からも給湯水が供給されることになり、結果、循環管路10を形成する配管の口径を可能な限り小さくしながら、湯水混合栓5において大流量の給湯が可能になる。
【0029】
上記復管路給湯水供給手段20は、復管路9に上述した循環流量調整弁12が設けられている場合には、湯水混合栓5との接続部6を循環流量調整弁12をバイパスして復管路9に接続するバイパス管路21と、バイパス管路21において復管路9側から接続部6側へ向かう給湯水の流通のみを許容する流通規制手段としての逆止弁22とで構成することができる。
即ち、湯水混合栓5が閉栓状態であるときには、バイパス管路21において接続部6側から復管路9側に向かう給湯水の流通が逆止弁22により阻止されて、循環管路10において給湯水が循環流量調整弁12を通じて循環することで、その循環流量が所定流量に設定される。一方、湯水混合栓5が開栓状態であるときには、バイパス管路21において復管路9側から接続部6側へ向かう給湯水の流通が逆止弁22により許容されて、復管路9の循環流量調整弁12よりも下流側の給湯水が殆ど圧力損失無くバイパス管路21を通じて接続部6に供給されることになり、湯水混合栓5における大流量の給湯が可能となる。
【0030】
尚、循環管路10において給湯水が循環している際に、バイパス管路21に滞留する給湯水は自然放熱により冷却されてしまう。そして、給湯時に、この冷却された給湯水が湯水混合栓5に供給され、湯水混合栓5から吐出される給湯水の温度が低下することを防止するために、上記バイパス管路21の長さは可能な限り短くして、上記のようにバイパス管路21において冷却される給湯水の量を出来るだけ少なくすることが望ましい。
【0031】
尚、接続部6側へ向かう給湯水の流通のみを許容する流通規制手段としては、逆止弁22を用いることが簡便であるが、逆止弁22の代わりに、例えば電磁弁と流れの向きの検知手段を用いて電気的に制御する機構等の別の構成を採用しても構わない。
【0032】
また、湯水混合栓5は、給湯管路7から供給された給湯水とは別に又はそれに混合する形態で、給水管路25から供給された上水を吐出可能に構成されている。また、給湯水と上水とを混合して吐出する場合には、循環管路10から供給される給湯水の温度が変動することによる吐出水の温度変動を防止するために、自動温度調整機能を内蔵した湯水混合栓5を用いると便利である。
尚、湯水混合栓5の代わりに、上記給湯水を吐出するための給湯栓と、上記上水を吐出するための給水栓とを個別に設けても構わない。
【0033】
また、湯水混合栓5を利用すると、給湯管路7と給水管路25との間で、圧力の高い方から低い方に水が逆流する可能性があるが、給湯管路7側及び給水管路25側に逆流防止機能を内蔵した湯水混合栓5を利用することで、そのような逆流を防止することができる。また、このような逆流防止機能を持たない湯水混合栓5を利用する場合には、給湯管路7及び給水管路25に逆止弁を設ければ、このような逆流を防止することができる。
【0034】
尚、この本発明システム100の場合、循環ポンプ11による循環が、貯湯槽1と循環管路10で構成される回路以外の回路、具体的には貯湯槽1と往管路8と湯水混合栓5と給水管路25とを経由する回路にも循環が生じる可能性がある。このような循環を回避するためには、給湯管路7及び給水管路25に逆止弁37等の逆流防止手段を設ければよい。また、湯水混合栓5に、このような逆流防止機能が内蔵されている場合には、その逆止弁37を省略することができる。
【0035】
〔第2実施形態〕
第2実施形態の本発明システム200について図2に基づいて説明する。尚、他の実施形態と同様の構成については同じ符号を使用して説明を割愛する場合がある。
【0036】
湯水混合栓5等の給湯栓は、循環管路10に対して一つだけ単独に設けられることは少なく、家庭用であっても、台所、洗面所、風呂等複数箇所に設置されることが一般的であり、そのような複数設置に対してこそ、給湯水の循環による即時給湯の設置意義があるわけである。
また、給湯管路7は、一般的には配管分枝工法にて施工される。これは、給水管路25にあっても同じである。他の給湯管路工法として、ヘッダー工法が知られているが、このヘッダー工法は細径配管を用いてヘッダーと各給湯栓とを個々に接続する工法であり、管路の滞留水量を減らして捨て水量と給湯待ち時間を減少させるものであり、本発明と目的を一部共通にしている。しかしながら、ヘッダー工法では、一般に、ヘッダーからの給湯管路の長さが長くなって設備費が高額になると共に、放熱面積が増加するため、給湯水の循環を行うためには不都合な面がある。
【0037】
そこで、本発明システム200では、一の循環管路10の往管路8に複数(例えば3個)の湯水混合栓5a,5b,5cの夫々を順次接続する所謂配管分岐工法により、湯水混合栓5が複数設置されている。
即ち、上記配管分枝工法にあっては、一の往管路8を各湯水混合栓5a,5b,5c設置場所近傍に配置し、そこから夫々の湯水混合栓5a,5b,5cへ通じる夫々の給湯管路7a,7b,7cを接続部6a,6b,6cから分枝して、一の往管路8に湯水混合栓5a,5b,5cを個々に接続していく。尚、住宅においては、夫々の給湯管路7a,7b,7cの長さは通常1m未満である。これは、床下の往管路8から流しや浴槽に取り付けられた湯水混合栓5等の給湯栓までの長さに対応している。
【0038】
また、複数の湯水混合栓5のうち少なくとも1つの湯水混合栓に対して必要に応じて復管路給湯水供給手段20が設けられており、本実施形態では、湯水混合栓5bを除く湯水混合栓5a,5cに対して、復管路給湯水供給手段20a,20cとしての、バイパス管路21a,21c、及び逆止弁22a,22cが設けられており、この湯水混合栓5a,5cにおいて大流量の給湯が実現される。
即ち、全ての湯水混合栓5a,5b,5cが閉栓状態であるときには、夫々のバイパス管路21a,21cにおいて接続部6a,6c側から復管路9側に向かう給湯水の流通が逆止弁22a,22cにより阻止されて、循環管路10において給湯水が復管路9に設けられた循環流量調整弁12を通じて循環することで、その循環流量が所定流量に設定される。
一方、湯水混合栓5a,5cのうち何れかの湯水混合栓が開栓状態であるときには、その直上流の接続部6a,6cの圧力が低下し、バイパス管路21a,21cにおいて復管路9側から接続部6a,6c側へ向かう給湯水の流通が逆止弁22a,22cにより許容されて、復管路9の循環流量調整弁12よりも下流側の給湯水が殆ど圧力損失無くバイパス管路21a,21cを通じて接続部6a,6cに供給されることになり、湯水混合栓5a,5cにおける大流量の給湯が可能となる。
【0039】
尚、上記湯水混合栓5bについても個別に復管路給湯水供給手段20を設けても構わないが、この湯水混合栓5bが上記復管路給湯水供給手段20が設けられた湯水混合栓5a,5cの何れかに隣接する場合には、その復管路給湯水供給手段20を利用して湯水混合栓5bにおける大流量の給湯を実現することができる。
即ち、湯水混合栓5bが開栓状態であるときには、例えば復管路給湯水供給手段20cが設けられた湯水混合栓5cで給湯使用がない場合、接続部6bの圧力低下に伴って、復管路9の循環流量調整弁12よりも下流側の給湯水がバイパス管路21cを通じて接続部6bに供給されることになり、湯水混合栓5bにおける大流量の給湯が可能となる。
【0040】
更に、循環ポンプ11については、往管路8において最上流側の給湯栓5aとの接続部6aよりも上流側に一つだけ設置すればよく、更に、循環流量調整弁12についても、復管路9に一つだけ設置すればよい。
また、循環管路10において最下流側に接続された給湯栓5cとの接続部6cに到達する給湯水の温度が給湯適温以上となるように、循環管路10における給湯水の循環流量を制御するように構成されている。よって、温度センサ14は、その接続部6c付近に設置することが望ましい。
【0041】
〔第3実施形態〕
第3実施形態の本発明システム300について図3に基づいて説明する。尚、他の実施形態と同様の構成については同じ符号を使用して説明を割愛する場合がある。
【0042】
本発明システム300は、往管路8における循環ポンプ11の下流側と貯湯槽1とを接続する放熱用管路35と、放熱用管路35に設けられ給湯水の熱を熱消費部34側へ供給する熱供給手段30とを備える。従って、本発明システム300では、循環管路10における給湯水の循環による即時給湯を実現しながら、熱消費部34側への熱供給を行うことができ、更に、新たな供給ポンプ等を設置することなく、循環管路10に給湯水を循環させるための循環ポンプ11を用いて、給湯水を放熱用管路35側に流通させることができ、安価かつ小さな設置スペースで、即時給湯と熱供給を行うことが可能となっている。
【0043】
尚、上記熱消費部34としては、家庭用の場合、温水式暖房機や乾燥機もしくは風呂追焚き装置等が対象となる。
更に、放熱用管路35を流通する給湯水と、それら熱消費部34側の暖房水又は風呂水が混合すると衛生上や構造上の問題が発生するため、そのような混合が起きないように、上記熱供給手段30を、上記給湯水の熱を熱交換器31を介して上記熱消費部34を循環する暖房水又は風呂水に供給するように構成することが望ましい。
即ち、熱消費部34側の暖房水又は風呂水を熱消費部側循環ポンプ33により熱供給用循環管路32に循環させ、熱交換機31において、放熱用管路35を流通する給湯水と熱消費部側循環管路32を流通する暖房水又は風呂水との間で熱交換を行うことで、給湯水と暖房水又は風呂水との混合を防止しながら、給湯水の熱を熱消費部34側へ供給することができる。
【0044】
また、熱消費部34における熱消費量が小さい場合には、循環ポンプ11の動力を変更しなくても構わないが、熱消費部34における熱消費量が大きい場合には、循環ポンプ11の動力を増大させる必要が生じる。そして、循環ポンプ11の動力は、ポンプの回転数制御にて、流量を熱消費部34における熱消費量に合わせて増減することができる。もちろん放熱用管路35に設けた流量調整弁を使用して、放熱用管路35における給湯水の流量を熱消費部34の熱消費量に合わせて制御しても構わない。尚、熱消費部34における熱消費量は、放熱用管路35において熱供給手段30から流出して貯湯槽1側に戻る給湯水の温度に基づいて推定することができる。
【0045】
尚、湯水混合栓5における大流量の給湯時に、放熱用管路35から流出したやや低温の給湯水が復管路9から湯水供給栓5側に供給される給湯水に混じることを許容するのであれば、放熱用管路35の下流側端部を、貯湯槽1に接続するのではなく、復管路9に接続することで、放熱用管路35を短くして設備費をさらに低減することができる。
【0046】
尚、上述した夫々の実施形態では、貯層層1を温度成層型に構成したが、別に、貯湯槽1を上下方向において略等温の給湯水を貯留する完全混合型に構成しても構わない。尚、貯湯槽1を完全混合型に構成した場合には、その貯湯槽1全体に高温に加熱された給湯水が貯留されていることが好ましい。また、貯湯槽1を完全混合型に構成する場合には、復管路9は貯湯槽1の最下部3付近に接続することが可能である。
また、貯湯槽1を温度成層型に構成する場合には、温度成層維持のために、貯湯槽1の最上部2に貯留されている給湯水の温度に対して復管路9から貯湯槽1に流入する給湯水の温度低下を数℃程度に抑えるために、循環管路10における給湯水に循環流量を比較的大きく取る必要があるが、貯湯槽1を完全混合型に構成する場合には、上記温度低下は10℃以上であっても問題ないので、上記循環流量を比較的小流量に設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係る循環式貯湯給湯システムは、循環管路における給湯水の循環による即時給湯の持つ利便性と省資源(捨て水の減少)という特長を継承しながら、既に高温の給湯水が大量に貯湯槽に貯留されているにも係わらず、給湯圧力や循環管路圧力損失のために給湯量が抑えられていた貯湯式給湯のボトルネックを解消して、大流量の給湯を可能にする循環式貯湯給湯システムとして有効に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る循環式貯湯給湯システムの第1実施形態を示す概略構成図
【図2】本発明に係る循環式貯湯給湯システムの第2実施形態を示す概略構成図
【図3】本発明に係る循環式貯湯給湯システムの第3実施形態を示す概略構成図
【図4】従来の循環式貯湯給湯システムの概略構成図
【符号の説明】
【0049】
1:貯湯槽
5,5a,5b,5c:湯水混合栓(給湯栓の一例)
6,6a,6b,6c:接続部
8:往管路
9:復管路
10:循環管路
12:流量調整弁(循環流量調整手段)
20:復管路給湯水供給手段
21:バイパス管路
22:逆止弁(流通規制手段)
25:給水管路
30:熱供給手段
34:熱消費部
35:放熱用管路
100,200,300:循環式貯湯給湯システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給湯水を貯留する貯湯槽と、前記貯湯槽から給湯栓との接続部に至る往管路と当該接続部から貯湯槽に至る復管路とからなる循環管路と、前記往管路に設けられ前記循環管路に給湯水を循環させる循環手段とを備えた循環式貯湯給湯システムであって、
前記貯湯槽が、加圧式に構成され、
前記復管路に、前記循環管路における給湯水の循環流量を調整する循環流量調整手段を備え、
前記給湯栓との接続部を前記循環流量調整手段をバイパスして前記復管路の前記循環流量調整手段よりも下流側に接続するバイパス管路と、前記バイパス管路において前記接続部側へ向かう給湯水の流通のみを許容する流通規制手段とで構成された復管路給湯水供給手段を備えた循環式貯湯給湯システム。
【請求項2】
前記給湯栓が複数配置されていると共に、一の前記往管路に対して前記複数の給湯栓の夫々が順次接続され、
前記複数の給湯栓のうちの少なくとも1つの給湯栓に対して前記復管路給湯水供給手段が設けられている請求項1に記載の循環式貯層給湯システム。
【請求項3】
前記往管路における前記循環手段の下流側と前記貯湯槽又は前記復管路とを接続する放熱用管路と、前記放熱用管路に設けられ給湯水の熱を熱消費部側へ供給する熱供給手段とを備えた請求項1又は2に記載の循環式貯湯給湯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−17083(P2007−17083A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−198958(P2005−198958)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】