説明

循環流動層ガス化設備のHOT起動方法

【課題】再起動に要する時間を大幅に短縮できるようにした循環流動層ガス化設備のHOT起動方法を提供する。
【解決手段】ガス化設備の運転が停止されると流動層ガス化炉8を密閉しフリーボード部Fに不活性ガス23を供給してガス化炉8内圧力を大気圧よりも高く保持する。ガス化設備の再起動が要求されると、補助ボイラ34を起動し、補助ボイラ34から必要な補助蒸気S'が生成されると、ガス化炉8に補助蒸気S'を供給して循環媒体を流動化させて燃焼炉1へ循環させると共に、燃焼炉1に空気Aと起動用燃料3を供給して循環媒体を加熱しガス化炉8へ循環させてガス化炉8内の温度を高める。排熱回収ボイラ11から必要な主蒸気Sが生成されると、補助蒸気S'に代えて主蒸気Sをガス化炉8に供給し、ガス化炉8内の温度がガス化可能温度に達すると、ガス化炉8に原料13を投入してガス化を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は循環流動層ガス化設備のHOT起動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より種々のガス化設備が提案されており、例えば、流動層ガス化炉と燃焼炉とを有する2塔式と称される循環流動層ガス化設備がある(特許文献1参照)。
【0003】
図5は従来の循環流動層ガス化設備の概略を示すブロック図であり、図5中、1は燃焼炉1であり、燃焼炉1は、下部にファン2からの空気Aが供給されると共に起動用燃料3が供給され、更に後述するチャーが下部内側に供給されて流動燃焼することにより硅砂、石灰石等からなる循環媒体を加熱するようになっている。燃焼炉1内に吹き上げられて上部から取り出される燃焼ガス4はサイクロン等の分離器5に導かれて排ガス7と循環媒体6とに分離されるようになっている。
【0004】
図5中、8は流動層ガス化炉であり、流動層ガス化炉8には、前記分離器5からの循環媒体6がダウンカマー9を介して導入されると共に、散気装置10の下部からはガス化剤としての主蒸気Sが供給されており、主蒸気Sによって流動層ガス化炉8内には流動層12が形成されている。主蒸気Sは、前記排ガス7を導く排ガス管17に設けた排熱回収ボイラ11にポンプ11aによって水を供給し排ガス7と熱交換させることによって得るようにしている。更に、流動層ガス化炉8内には石炭或いはバイオマス等の原料13が供給されるようになっており、流動層ガス化炉8に供給された原料13は、前記循環媒体による加熱と主蒸気Sの作用によりガス化反応(吸熱反応)が行われ、フリーボード部Fに生成した水素(H)、一酸化炭素(CO)、メタン(CH)等のガス成分が混在したガス化ガス14が上部から取り出されるようになっている。
【0005】
流動層ガス化炉8内でガス化されなかった未反応のチャーと循環媒体は循環流路15により前記燃焼炉1に戻され、燃焼炉1でチャーを燃焼することにより循環媒体の加熱を行うようになっている。前記流動層ガス化炉8では可燃性のガス化ガス14の生成が行われるため、外部との間のガスの移動を遮断するための機構を備えており、図5では流動層ガス化炉8内部に流動層12の内部(下部)のみで流動層ガス化炉8内と連通された区画室16a,16bを設け、該区画室16aに前記ダウンカマー9の下端を開口させて分離器5との間のガスの移動を遮断し、又、区画室16bに循環流路15を開口させて燃焼炉1との間のガスの移動を遮断している。
【0006】
前記分離器5で循環媒体6が分離された排ガス7は、排ガス管17により排熱回収ボイラ11に導かれて主蒸気Sの生成を行った後、除塵器、脱硫装置、脱硝装置等の排ガス処理装置18を経て誘引ファン18aに誘引されて煙突19から排出されるようになっている。
【0007】
流動層ガス化炉8で生成したガス化ガス14は、導出系路20により取り出されて、図示しない固体分離装置やガス精製装置等を経た後目的に応じた利用装置21に導かれるようになっている。
【0008】
図5中、22は流動層ガス化炉8の下部に接続された、窒素(N)或いはアルゴン(Ar)等の不活性ガス23を供給するための不活性ガス供給源、24は流動層ガス化炉8の起動時にファン2からの空気Aを流動層ガス化炉8の下部に供給する空気導入管である。図5中、25は燃焼炉1に供給する空気Aの流量を調節する流量調節弁、26は流動層ガス化炉8に供給する主蒸気Sの流量を調節する流量調節弁、27は流動層ガス化炉8に供給する不活性ガス23の流量を調節する流量調節弁、28は流動層ガス化炉8に供給する空気Aの流量を調節する流量調節弁、29は遮断弁、30は排熱回収ボイラ11からの主蒸気Sを外気に逃がす外気逃がし弁、31は必要に応じて燃焼炉1に供給される補助燃料である。
【0009】
循環流動層ガス化設備を温度が低い状態から起動するCOLD起動時には、ファン2を駆動し、遮断弁29及び流量調節弁28を開けて空気Aを流動層ガス化炉8の下部に供給し、流動層ガス化炉8内部及び導出系路20の内部をフレッシュな空気に置換するプレパージを行う。このプレパージはこの種の設備においては一般的に行われており、通常、流動層ガス化炉8の容積の約5倍の空気を供給することによって行われる。
【0010】
続いて、流量調節弁25を開けて空気Aを燃焼炉1の下部に供給し、燃焼炉1内部をフレッシュな空気に置換するプレパージを行う。このプレパージもこの種の設備においては一般的に行われており、通常、燃焼炉1の容積の約5倍の空気を供給することによって行われる。
【0011】
流動層ガス化炉8の下部に供給する空気Aで循環媒体6を流動化させて流動層12を形成すると共に、燃焼炉1に空気Aと起動用燃料3を供給することにより燃焼を行う。これにより、燃焼炉1で加熱された循環媒体は流動層ガス化炉8へ移動されると共に流動層ガス化炉8の循環媒体は燃焼炉1へ移動されて循環媒体の加熱と循環とが行われ、流動層ガス化炉8の内部温度が上昇される。
【0012】
流動層ガス化炉8内の温度がガス化に必要な温度に上昇し、且つ排ガス7の温度が上昇することによって排熱回収ボイラ11で生成される主蒸気Sが流動層ガス化炉8内の循環媒体の流動化に必要な圧力・温度になると、流動層ガス化炉8へ供給していた空気Aに代えて主蒸気Sを供給するように切り換えることにより起動前パージを行う。この起動前パージは、流動層ガス化炉8内部及び導出系路20の内部の空気がすべて主蒸気Sによって置換されるまで行われる。
【0013】
起動前パージが終了すると、前記主蒸気Sの供給によって流動層12が形成された状態において流動層ガス化炉8に原料13を供給する。供給された原料13は高温の循環媒体6と主蒸気Sの作用によりガス化が開始される。流動層ガス化炉8内の未反応のチャーが燃焼炉1に供給されて燃焼し、これによって循環媒体の加熱が十分に行われるようになると、燃焼炉1に対する起動用燃料3の供給は停止される。又、流動層ガス化炉8内の循環媒体の温度が不足するような場合には、適宜補助燃料31の供給が行われる。
【0014】
一方、運転している循環流動層ガス化設備の運転を停止する停止時には、流動層ガス化炉8に対する原料13の供給を停止すると共に、流量調節弁26を閉じて排熱回収ボイラ11から流動層ガス化炉8へ供給されている主蒸気Sの供給を停止する一方、ファン2により燃焼炉1に供給している空気Aの供給を停止する。
【0015】
また、流動層ガス化炉8の運転が停止されると同時に、不活性ガス供給源22により窒素(N)或いはアルゴン(Ar)等の不活性ガス23を流動層ガス化炉8に供給して、流動層ガス化炉8内部及び導出系路20内部をパージする停止時パージを行う。
【0016】
停止時パージの完了後は、流動層ガス化炉8の内部温度が、流動層ガス化炉8内に残留している原料の自然着火温度以下に低下するまで自然放熱させるように待機している。このため、前記停止が行われてから、流動層ガス化炉8内部の温度が原料の自然着火温度以下に低下するまでに通常は1日前後の時間が掛かっている。
【0017】
上記したように、流動層ガス化炉8の運転が停止されると、流動層ガス化炉8内には循環媒体6(ベッド材)に多量の原料が残ったままとなっており、しかも高温の状態にあるため、空気の侵入を阻止しないと燃焼が起こってしまう。流動層ガス化炉8内で燃焼が起こると、その燃焼排ガスが導出系路20を介して利用装置21に送られてしまうことになるが、上記導出系路20にはバグフィルタ等の除塵装置が備えられていないため、導出系路20及び利用装置21が排ガスによって汚される問題があり、よって流動層ガス化炉8内では燃焼が起こることを阻止する必要がある。
【0018】
上記循環流動層ガス化設備においては、運転停止後の短い時間内に再び起動することが要求される場合がある。
【0019】
しかし、従来はこのように運転停止後直ちに運転を再開する要求がある場合にも、流動層ガス化炉8の温度が、流動層ガス化炉8内に残留している原料の自然着火温度以下に低下するまでは再起動することができず、流動層ガス化炉8内の温度が低下した後に再起動を行っている。
【0020】
従来における再起動は、前記COLD起動時と同様に、ファン2を駆動し、空気Aを流動層ガス化炉8の下部に供給して流動層12を形成すると共に、燃焼炉1に空気Aと起動用燃料3を供給して燃焼を行う。これにより、燃焼炉1で加熱された循環媒体は流動層ガス化炉8へ移動されると共に流動層ガス化炉8の循環媒体は燃焼炉1へ移動されて循環媒体の加熱と循環とが行われ、流動層ガス化炉8の内部温度は上昇される。この時、流動層ガス化炉8内の循環媒体は10分以内の短い時間で燃焼炉1に供給されて燃焼炉1からの循環媒体と入れ代わるため、流動層ガス化炉8内に残留していた原料は温度が上昇する前に燃焼炉1へ供給されるので、流動層ガス化炉8内で残留原料が燃焼するようなことはない。
【0021】
流動層ガス化炉8内の温度がガス化に必要な温度に上昇され、且つ排ガス7の温度が上昇することによって排熱回収ボイラ11で生成される主蒸気Sが流動層ガス化炉8内の循環媒体の流動化に必要な圧力・温度になると、流動層ガス化炉8に供給している空気Aに代えて主蒸気Sを供給するように切り換えることにより起動前パージを行う。この起動前パージは、流動層ガス化炉8内部及び導出系路20の内部の空気がすべて主蒸気Sによって置換されるまで行われる。
【0022】
起動前パージが終了すると、主蒸気Sによって流動層12が形成された状態において流動層ガス化炉8に原料13を供給する。供給された原料13は高温の循環媒体6と主蒸気Sの作用によりガス化されてガス化が開始される。
【特許文献1】特開2005−041959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
しかし、従来の循環流動層ガス化設備においては、流動層ガス化炉8の温度と時間との関係を図6に示すように、ガス化される温度T1に保持されて運転していた流動層ガス化炉8の運転が停止されると、以後は自然放熱によって温度は低下し、流動層ガス化炉8内に残留している原料の自然着火温度T2以下に低下するまで待機するようにしており、従って、この温度低下の途中で再起動の要求があっても、流動層ガス化炉8内が原料の自然着火温度T2以下に低下するまでは再起動を開始することができず、よって、循環流動層ガス化設備の停止から再起動されるまでの時間が非常に長く、更に、原料の自然着火温度T2まで一旦低下してしまった流動層ガス化炉8の温度を再びガス化できる温度T1まで加熱する際にも長い時間が掛り、よって循環流動層ガス化設備が停止してからガス化が開始されるまでの時間Xが非常に長くなるという問題を有していた。
【0024】
又、このように、流動層ガス化炉8の運転が停止されると、流動層ガス化炉8内には循環媒体6(ベッド材)に多量の原料が残ったままであり、しかも高温の状態にあるため、流動層ガス化炉8の内部圧力が低下した際に大気中の空気が侵入し、流動層ガス化炉8内で燃焼が起こると、上記導出系路20にはバグフィルタ等の除塵装置が備えられていないため、導出系路20及び利用装置21が排ガスによって汚される問題を有していた。
【0025】
更に、従来、循環流動層ガス化設備の起動時には、流動層ガス化炉8に空気Aを供給して流動化させて循環媒体の循環を行い、続いて主蒸気Sが所定の圧力・温度になると前記空気Aに代えて主蒸気Sを供給し、この主蒸気Sによって流動層ガス化炉8内部及び導出系路20の内部の空気Aのすべを主蒸気Sに置換する起動前パージを行っているが、この起動前パージにも時間が掛かってしまい、このために流動層ガス化炉8内はガス化可能な温度T1に達しているにも拘らず、起動前パージが終了しないためにガス化を開始できないという問題も有していた。
【0026】
本発明は、上記実情に鑑みてなしたもので、循環流動層ガス化設備が運転した状態から停止され、流動層ガス化炉内に残留する原料の自然着火温度より高い温度を有している状態から再び循環流動層ガス化設備を起動するHOT起動を可能にし、これによって、再起動に要する時間を大幅に短縮できるようにした循環流動層ガス化設備のHOT起動方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は、チャーを燃焼させて循環媒体を加熱する燃焼炉と、燃焼炉から取り出した燃焼ガスを導入して循環媒体を捕集し排気ガスを排出する分離器と、分離器で捕集した循環媒体を導入し、下部からガス化剤を供給して流動層を形成すると共に原料を供給して原料のガス化を行う流動層ガス化炉と、流動層ガス化炉の循環媒体とガス化されない未反応のチャーとを前記燃焼炉に戻す循環流路と、主蒸気を生成する排熱回収ボイラと、補助蒸気を生成する補助ボイラと、を有する循環流動層ガス化設備の運転が停止し、その後、流動層ガス化炉が該流動層ガス化炉内に残留する原料の自然着火温度よりも高い温度を有している状態から再び循環流動層ガス化設備を起動する循環流動層ガス化設備のHOT起動方法であって、
循環流動層ガス化設備の運転が停止されると流動層ガス化炉を密閉してバンキング状態に保持するバンキング工程と、
密閉された流動層ガス化炉のフリーボード部に不活性ガスを供給して流動層ガス化炉内部圧力を大気圧よりも高い圧力に保持する圧力保持工程と、
循環流動層ガス化設備の再起動の要求により補助ボイラを起動する補助ボイラ起動工程と、
補助ボイラにより流動化に必要な圧力・温度の補助蒸気が生成された時、流動層ガス化炉の密閉を解除し、補助ボイラの補助蒸気を流動層ガス化炉の下部に供給して流動層ガス化炉内の循環媒体を補助蒸気により流動化させて燃焼炉へ循環させると共に、燃焼炉に空気と起動用燃料を供給して循環媒体を加熱し流動層ガス化炉へ循環させることにより流動層ガス化炉内の温度を高める昇温工程と、
排ガスの温度の上昇により排熱回収ボイラから流動化に必要な圧力・温度の主蒸気が生成された時、前記補助蒸気に代えて主蒸気を流動層ガス化炉に供給する蒸気切換工程と、
流動層ガス化炉内の温度がガス化可能温度に達した時、流動層ガス化炉に原料を投入して前記主蒸気により原料のガス化を開始するガス化工程と、
を有することを特徴とする循環流動層ガス化設備のHOT起動方法、に係るものである。
【0028】
上記循環流動層ガス化設備のHOT起動方法において、密閉された流動層ガス化炉の流動層上部のフリーボード部に不活性ガスを供給して流動層ガス化炉内部圧力を大気圧よりも高い圧力に保持する前記圧力保持工程に代えて、
密閉された流動層ガス化炉の流動層上部のフリーボード部に、排熱回収ボイラからの残熱によって得た主蒸気又は補助ボイラからの補助蒸気を供給して流動層ガス化炉内部圧力を大気圧よりも高い圧力に保持する圧力保持工程とすることは好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明の循環流動層ガス化設備のHOT起動方法では、循環流動層ガス化設備の運転が停止されると、流動層ガス化炉を密閉してバンキング状態に保持すると共に、密閉された流動層ガス化炉のフリーボード部に不活性ガスを供給して流動層ガス化炉内部圧力を大気圧より高い圧力に保持しており、従って、流動層ガス化炉内の原料が燃焼する問題を少ない不活性ガスの使用で防止することができる。上記停止の途中で循環流動層ガス化設備を再起動する要求があると、補助ボイラを起動し、補助ボイラにより流動化に必要な圧力・温度の補助蒸気が生成されると、前記流動層ガス化炉の密閉を解除し、補助ボイラの補助蒸気を流動層ガス化炉に供給して流動層ガス化炉内の循環媒体を補助蒸気で流動化させて燃焼炉へ循環させると共に、燃焼炉に空気と起動用燃料を供給して循環媒体を加熱し流動層ガス化炉へ循環させることにより流動層ガス化炉内の温度を高め、排ガスの温度の上昇により排熱回収ボイラから流動化に必要な圧力・温度の主蒸気が生成されると、前記補助蒸気に代えて主蒸気を流動層ガス化炉に供給し、流動層ガス化炉内の温度がガス化可能温度に達すると、流動層ガス化炉に原料を投入して前記主蒸気により原料のガス化を開始するようにしているので、循環流動層ガス化設備の運転が停止されてまだ流動層ガス化炉の温度が高い場合においても再起動を開始することができ、よって循環流動層ガス化設備を再起動する要求があってから、再起動を開始して原料のガス化が開始されるまでの時間を従来に比べて大幅に短縮できるという優れた効果を奏し得る。
【0030】
更に、従来は流動層ガス化炉に空気を供給して流動化させることにより循環媒体の循環を行っていたのに対し、補助ボイラの補助蒸気で流動化させて循環媒体の循環を行うようにしたので、補助蒸気から主蒸気による流動化に切り換える際には従来のような起動前パージを行う必要がなく、よって、起動前パージに時間が掛かることによって流動層ガス化炉内は既にガス化可能な温度に達しているにも拘らず、起動前パージが終了しないために原料のガス化が開始できないといった問題を防止することができる。
【0031】
更に、流動層ガス化炉の温度が原料の自然着火温度以下に低下するまで待機することなく、温度が高い状態から再起動を開始できるため、流動層ガス化炉の温度を原料のガス化に必要な温度まで再度高めるための起動用燃料の使用量を大幅に低減できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0033】
図1は図5に示した循環流動層ガス化設備に適用する本発明のHOT起動方法の一例を示すブロック図であり、図5と同一のものには同じ符号を付して説明を省略し、本発明の特徴部分についてのみ説明する。
【0034】
図1に示す形態では、前記排ガス7の排ガス管17に排熱回収ボイラ11を有する共に、ガス化ガス14の導出系路20に排熱回収ボイラ32が設けてあり、ポンプ11aにより排熱回収ボイラ11に水を供給して加熱し、更に排熱回収ボイラ32に供給して得られた主蒸気Sを、主蒸気管33により流動層ガス化炉8の散気装置10の下部に流量調節弁26を介して供給するようにしている。
【0035】
図1中、34は補助ボイラであり、該補助ボイラ34の補助蒸気S'を供給する補助蒸気管35は、前記主蒸気管33に接続している。主蒸気管33と補助蒸気管35には切換弁36,37が設けてあり、切換弁36,37の操作により流動層ガス化炉8に補助蒸気S'を供給している状態から主蒸気Sを供給する状態に切り換えられるようにしている。38は主蒸気管33に備えた外気逃がし弁、39は補助蒸気管35に備えた外気逃がし弁である。
【0036】
図1中、40は窒素(N)或いはアルゴン(Ar)等の不活性ガス23が収容されたボンベ或いはタンク等の不活性ガス供給源であり、該不活性ガス供給源40は調節弁41を介して流動層ガス化炉8のフリーボード部Fに接続されており、調節弁41は、流動層ガス化炉8に備えた圧力計42の検出圧力に基づいて、フリーボード部Fの圧力が大気圧以上の所定圧になるまで不活性ガス23を供給する操作と、その後は流動層ガス化炉8内の圧力が大気圧以下に低下することがないように、例えばスポット的に不活性ガス23を供給する操作とを行うようになっている。
【0037】
又、前記ガス化ガス14の導出系路20には遮断弁43を備えている。
【0038】
次に、図1の形態の作動を説明する。
【0039】
図1の循環流動層ガス化設備の運転時は、図5の場合と同様に流動層ガス化炉8に供給する原料13を主蒸気Sによりガス化ガス14を生成しており、この運転状態から運転を停止する際には、流動層ガス化炉8に対する原料13の供給を停止すると共に、流量調節弁26を閉じて排熱回収ボイラ11から流動層ガス化炉8へ供給されている主蒸気Sの供給を停止する一方、ファン2により燃焼炉1に供給している空気Aの供給を停止する。
【0040】
このように、流動層ガス化炉8の運転が停止されると、流動層ガス化炉8内には循環媒体6(ベッド材)に多量の原料が残ったままであり、しかも高温の状態にあるため、空気の侵入を阻止しないと燃焼が起こってしまう。
【0041】
このため、循環流動層ガス化設備の運転が停止されると、直ちにガス化ガス14の導出系路20に備えた遮断弁43を閉止し、流動層ガス化炉8を密閉したバンキング状態に保持する(バンキング工程)。この時、ダウンカマー9、循環流路15及び主蒸気管33は流動層ガス化炉8内に落下した循環媒体6(ベッド材)によって閉塞されている。
【0042】
続いて、調節弁41を操作することにより密閉された流動層ガス化炉8のフリーボード部Fに、不活性ガス供給源40からの不活性ガス23を供給する。この時、調節弁41は流動層ガス化炉8のフリーボード部Fの圧力を検出している圧力計42の検出圧力に基づいて、フリーボード部Fの圧力が大気圧以上の圧力になるように不活性ガス23の供給を行う。そして、その後は流動層ガス化炉8の温度の低下に伴って流動層ガス化炉8が外気を吸引することがないように、例えば図2に示すように、窒素等の不活性ガス23をスポット的に流動層ガス化炉8に供給することによって流動層ガス化炉8内の圧力を常に大気圧より高く保持するようにしている(圧力保持工程)。これにより、流動層ガス化炉8内に残留した原料が燃焼するような問題を生じることなく流動層ガス化炉8を冷却させることができる。
【0043】
一方、流動層ガス化炉8の冷却途中、即ち、流動層ガス化炉8の温度が流動層ガス化炉8内の原料の自然着火温度よりも高い状態において、冷却循環流動層ガス化設備の再起動の要求が生じた場合には、先ず補助ボイラ34の起動を行う(補助ボイラ起動工程)。このときの補助蒸気S'は外気逃がし弁39によって外気に排出する。
【0044】
そして、補助ボイラ34により流動層ガス化炉8での流動化に必要な圧力・温度の補助蒸気S'が生成されると、前記導出系路20の遮断弁43を開放して流動層ガス化炉8の密閉を解除し、更に、外気逃がし弁39を閉じ、切換弁37、流量調節弁26を開けることにより、補助ボイラ34からの補助蒸気S'を流動層ガス化炉8の下部に供給して循環媒体を流動化させて燃焼炉1へ循環させると共に、燃焼炉1に空気Aと起動用燃料3を供給して循環媒体を加熱し流動層ガス化炉8へ循環させることにより流動層ガス化炉8内の温度を上昇させる(昇温工程)。
【0045】
その後、排ガス7の温度が上昇することにより、排熱回収ボイラ11,32からの主蒸気Sが流動層ガス化炉8の流動化に必要な圧力・温度になると、外気逃がし弁38を閉じ、切換弁37を閉じる操作と切換弁36を開ける操作を同時に行うことにより、補助蒸気S'に代えて主蒸気Sを流動層ガス化炉8に供給する(蒸気切換工程)。
【0046】
そして、流動層ガス化炉8内の温度がガス化可能温度に達すると、流動層ガス化炉8に原料13を投入し、前記主蒸気Sにより原料13のガス化を開始する(ガス化工程)。
【0047】
上記したように、循環流動層ガス化設備の運転が停止されると、流動層ガス化炉8を密閉してバンキング状態に保持すると共に、密閉された流動層ガス化炉8のフリーボード部Fに不活性ガス23を供給して流動層ガス化炉8内部圧力を大気圧よりも高い圧力に保持しているので、少ない不活性ガスの使用によって流動層ガス化炉8内の原料が燃焼するような問題を防止することができる。
【0048】
上記停止操作の途中、即ち流動層ガス化炉8の温度が流動層ガス化炉8内の原料の自然着火温度よりも高い状態で、循環流動層ガス化設備を再起動する要求が生じた場合には、補助ボイラ34を起動し、補助ボイラ34により流動化に必要な圧力・温度の補助蒸気S'が生成されると、前記流動層ガス化炉8の密閉を解除し、補助ボイラ34の補助蒸気S'を流動層ガス化炉8に供給して流動層ガス化炉8内の循環媒体6を補助蒸気S'で流動化させて燃焼炉1へ循環させると共に、燃焼炉1に空気Aと起動用燃料3を供給して循環媒体を加熱し流動層ガス化炉8へ循環させることにより流動層ガス化炉8内の温度を高め、その後、排ガス7の温度の上昇により排熱回収ボイラ11,32から流動層ガス化炉8の流動化に必要な圧力・温度の主蒸気Sが生成されると、前記補助蒸気S'に代えて主蒸気Sを流動層ガス化炉8に供給し、流動層ガス化炉8内の温度がガス化可能温度T1に達すると、流動層ガス化炉8に原料13を投入して前記主蒸気Sにより原料13のガス化を開始するようにしているので、図4に示すように、循環流動層ガス化設備の運転が停止されてまだ流動層ガス化炉8の温度が高い場合においても再起動を開始することができ、よって循環流動層ガス化設備を再起動する要求があってから、再起動を開始して原料13のガス化が開始されるまでの時間Xを従来に比べて大幅に短縮することができる。
【0049】
更に、従来は流動層ガス化炉8に空気A(図5参照)を供給して流動化させることにより循環媒体の循環を行っていたのに対し、本発明では補助ボイラ34の補助蒸気S'で流動化させて循環媒体の循環を行うようにしたので、補助蒸気S'から主蒸気Sによる流動化に切り換える際には従来のような起動前パージを行う必要がなく、よって、起動前パージに時間が掛かることによって流動層ガス化炉内は既にガス化可能な温度に達しているにも拘らず、起動前パージが終了しないために原料のガス化が開始できないといった問題を防止することができる。
【0050】
更に、流動層ガス化炉8の温度が原料の自然着火温度以下に低下するまで待機することなく、流動層ガス化炉8の温度が高い状態から再起動を開始できるため、流動層ガス化炉8の温度を原料のガス化に必要な温度T1まで再度高めるための起動用燃料の使用量を大幅に低減することができる。
【0051】
図3は、本発明の他の形態を示したもので、前記不活性ガス供給源40を備えることに代えて、主蒸気管33を調節弁41を介して流動層ガス化炉8のフリーボード部Fに接続している。図3中、44は切換弁である。
【0052】
従って、図3の形態では、循環流動層ガス化設備の運転が停止されると、直ちにガス化ガスの導出系路20に備えた遮断弁43を閉止して流動層ガス化炉8をバンキング状態に保し、続いて、開閉弁44及び調節弁41を開き、密閉された流動層ガス化炉8のフリーボード部Fに、排熱回収ボイラ11,32からの残熱によって得られた主蒸気Sを供給して流動層ガス化炉8の内部圧力を大気圧よりも高い圧力に保持し、更に図2に示すように主蒸気Sをスポット的に供給することによって排熱回収ボイラ11の圧力を常に大気圧よりも高い圧力に保持するようにしている。
【0053】
この時、前記したように循環流動層ガス化設備の運転が停止されると、排ガス7及びガス化ガス14による残熱は急激に減少するようになるので、循環流動層ガス化設備の停止と同時に補助ボイラ34を作動させ、排熱回収ボイラ11,32からの主蒸気Sが減少してきたら、補助ボイラ34によって生成された補助蒸気S'を切り換えて流動層ガス化炉8に供給し流動層ガス化炉8の圧力を保持するようにしてもよい。
【0054】
なお、本発明は上記形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】循環流動層ガス化設備に適用する本発明のHOT起動方法の形態の一例を示すブロック図である。
【図2】流動層ガス化炉の圧力保持方法の一例を示す線図である。
【図3】本発明のHOT起動方法の他の形態を示すブロック図である。
【図4】本発明において循環流動層ガス化設備の停止から再起動を行って原料のガス化が開始されるまでの時間を示す線図である。
【図5】従来の循環流動層ガス化設備の一例を示すブロック図である。
【図6】従来において循環流動層ガス化設備の停止から再起動を行って原料のガス化が開始されるまでの時間を示す線図である。
【符号の説明】
【0056】
1 燃焼炉
3 起動用燃料
4 燃焼ガス
5 分離器
6 循環媒体
7 排ガス
8 流動層ガス化炉
11 排熱回収ボイラ
12 流動層
13 原料
14 ガス化ガス
15 循環流路
20 導出系路
23 不活性ガス
32 排熱回収ボイラ
34 補助ボイラ
40 不活性ガス供給源
43 遮断弁
F フリーボード部
S 主蒸気
S' 補助蒸気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャーを燃焼させて循環媒体を加熱する燃焼炉と、燃焼炉から取り出した燃焼ガスを導入して循環媒体を捕集し排気ガスを排出する分離器と、分離器で捕集した循環媒体を導入し、下部からガス化剤を供給して流動層を形成すると共に原料を供給して原料のガス化を行う流動層ガス化炉と、流動層ガス化炉の循環媒体とガス化されない未反応のチャーとを前記燃焼炉に戻す循環流路と、主蒸気を生成する排熱回収ボイラと、補助蒸気を生成する補助ボイラと、を有する循環流動層ガス化設備の運転が停止し、その後、流動層ガス化炉が該流動層ガス化炉内に残留する原料の自然着火温度よりも高い温度を有している状態から再び循環流動層ガス化設備を起動する循環流動層ガス化設備のHOT起動方法であって、
循環流動層ガス化設備の運転が停止されると流動層ガス化炉を密閉してバンキング状態に保持するバンキング工程と、
密閉された流動層ガス化炉のフリーボード部に不活性ガスを供給して流動層ガス化炉内部圧力を大気圧よりも高い圧力に保持する圧力保持工程と、
循環流動層ガス化設備の再起動の要求により補助ボイラを起動する補助ボイラ起動工程と、
補助ボイラにより流動化に必要な圧力・温度の補助蒸気が生成された時、流動層ガス化炉の密閉を解除し、補助ボイラの補助蒸気を流動層ガス化炉の下部に供給して流動層ガス化炉内の循環媒体を補助蒸気により流動化させて燃焼炉へ循環させると共に、燃焼炉に空気と起動用燃料を供給して循環媒体を加熱し流動層ガス化炉へ循環させることにより流動層ガス化炉内の温度を高める昇温工程と、
排ガスの温度の上昇により排熱回収ボイラから流動化に必要な圧力・温度の主蒸気が生成された時、前記補助蒸気に代えて主蒸気を流動層ガス化炉に供給する蒸気切換工程と、
流動層ガス化炉内の温度がガス化可能温度に達した時、流動層ガス化炉に原料を投入して前記主蒸気により原料のガス化を開始するガス化工程と、
を有することを特徴とする循環流動層ガス化設備のHOT起動方法。
【請求項2】
密閉された流動層ガス化炉の流動層上部のフリーボード部に不活性ガスを供給して流動層ガス化炉内部圧力を大気圧よりも高い圧力に保持する前記圧力保持工程に代えて、
密閉された流動層ガス化炉の流動層上部のフリーボード部に、排熱回収ボイラからの残熱によって得た主蒸気又は補助ボイラからの補助蒸気を供給して流動層ガス化炉内部圧力を大気圧よりも高い圧力に保持する圧力保持工程とする請求項1に記載の循環流動層ガス化設備のHOT起動方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−25378(P2010−25378A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184514(P2008−184514)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】