説明

循環流動層燃焼炉

【課題】耐火材の上縁側において、流動材や未燃灰等の粒子により蒸発管に生じる摩耗、減肉を抑制した循環流動層燃焼炉を提供する。
【解決手段】複数の蒸発管を並置して形成した炉壁で断面角型形状の燃焼室を区画し、前記炉壁の下部を覆った耐火材を設け、循環する流動材や未燃灰等の粒子が前記炉壁に沿って下降するようにされた循環流動層燃焼炉において、前記耐火材の上端縁を、前記蒸発管の内側壁面から耐火材の端部までの距離が50mm以上となるように突出させるとともに、前記燃焼室の角部で、前記耐火材に断面方形状の凹部を設け、前記凹部は、側辺側にある蒸気管が、他の部位における蒸発管よりも相対的に減肉の生じる蒸発管とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の蒸発管を並置して形成した炉壁で断面角型形状の燃焼室を区画し、前記炉壁の下部を覆った耐火材を設け、循環する流動材や未燃灰等の粒子が前記炉壁に沿って下降するようにされた循環流動層燃焼炉において、前記下降する粒子と蒸発管の衝突力等を前記耐火材の形状を調整し、前記蒸発管の摩耗や減肉を低減するようにした循環流動層燃焼炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の循環流動層燃焼炉について図9を用いて説明する。図9は、循環流動層燃焼炉設備の概略図である。
図9に示すように、循環流動層燃焼設備2は、循環流動層燃焼炉4、燃焼炉から循環される流動材を分離するサイクロン6、排ガス熱交換器42、排ガス中の煤塵を除去するバグフィルタ44から主に構成されている。なお、図9において、8はコンバスタ、10は炉底、12は燃料、14は空気、16は耐火材、18は蒸発管、19は循環粒子、20はシールポット、26は外部熱交換器、46は誘因ファン、48は煙突である。
ここで、蒸発管18は、互いに隣接して所定間隔をもって複数配置されており、燃焼室を区画する炉壁を構成している。
【0003】
前記耐火材16は、前記炉壁の下部で該炉壁を覆って配置され、火力の強い燃焼室の下部において、前記炉壁を構成する蒸発管18を高温から遮断するとともに、後述する流動材や未燃灰等の粒子により蒸発管18が摩耗しないように保護する役割を負っている。
なお、耐火材16の上部までの距離H1は、コンバスタ8の天井までの距離Hが約30000mmの場合には約8000mとしている。
【0004】
このように構成された循環流動層燃焼設備2において、空気14を空気ノズル(不図示)によりコンバスタ8内部に吹き込み、外部から供給される石炭等の燃料12、炉底10の近傍から帰還される未燃灰、及び予めコンバスタ8内部に収容された流動材(けい砂などの不活性流体又は石灰石などの脱硫剤からなる)等を混合して流動化し、流動層を形成して燃焼を促進する。
【0005】
このとき発生する高温の燃焼ガスは、流動材とともにサイクロン6に導かれ、該サイクロン6により燃焼ガスと循環粒子19に分離される。
分離された燃焼ガスは、排ガス熱交換手段42で空気などの外部媒体と熱交換して冷却された後、バグフィルタ44を通して排ガス中の煤塵が除去され、煙突48より大気放出される。
一方、サイクロン6で分離された循環粒子19は、シールポット20によりコンバスタ8に直接戻される高温粒子22と、外部熱交換器26を経てコンバスタ8に戻される低温粒子24とに分けられ、何れも経路は異なるがコンバスタ8に戻される。
【0006】
このようにして形成された循環流動燃焼炉4のコンバスタ8内の流動材や未燃灰等の粒子の挙動に注目すると、該粒子はコンバスタ8内の中央部で上昇するが、蒸発管18等で形成される炉壁の近傍では該炉壁に沿って下降する粒子がほとんどであり、この上昇流と下降流とによりコンバスタ8内で前記流動材や未燃灰等の粒子の循環が行われる。
【0007】
耐火材16の上端は、炉壁に対して段差状となった水平面で形成された耐火材上縁となっているので、前記炉壁に沿って下降する粒子の摺動により、蒸発管18に局部的な摩耗が生じることとなる。
【0008】
このような蒸発管18に生じる局所的な摩耗を低減させるための技術として、例えば特許文献1には、複数の蒸発管を並置して形成した炉壁で燃焼室を区画し、該炉壁の下部を覆った耐火材を設け、循環する流動材や未燃灰等の粒子が前記炉壁に沿って下降するようにされた循環流動層ボイラにおいて、前記耐火材はその上端縁を水平な端面で形成し、該端面に前記炉壁に沿って燃焼室の周方向に延びる堰を設けた循環流動層炉が開示されている。
【0009】
【特許文献1】特開2004−28430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に開示された技術においても蒸発管の局所的な摩耗の低減対策としては充分とはいえず、特に燃料としてバイオマス燃料や高Cl燃料を使用することにより、減肉が顕著となり、耐久性の高い対策が望まれている。
【0011】
従って、本発明はかかる従来技術の問題に鑑み、耐火材の上縁側において、流動材や未燃灰等の粒子により蒸発管に生じる摩耗、減肉を抑制した循環流動層燃焼炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため本発明においては、複数の蒸発管を並置して形成した炉壁で断面角型形状の燃焼室を区画し、前記炉壁の下部を覆った耐火材を設け、循環する流動材や未燃灰等の粒子が前記炉壁に沿って下降するようにされた循環流動層燃焼炉において、前記耐火材の上端縁を、前記蒸発管の内側壁面から耐火材の端部までの距離が50mm以上となるように突出させるとともに、前記燃焼室の角部で、前記耐火材に断面方形状の凹部を設け、前記凹部は、側辺側にある蒸気管が、他の部位における蒸発管よりも相対的に減肉の生じる蒸発管であることを特徴とする。
【0013】
炉壁の下部を覆って設けられた耐火材は、その上端縁を蒸発管の内側壁面から50mm以上突出させるようにしているので、炉壁に沿って下降した流動材や未燃灰等の粒子(以下下降粒子と称する場合がある)が内側壁面を削る摩耗幅が鉛直軸方向に増大し、この結果局所的な摩耗量、減肉が緩和される。
さらに、前記耐火材の上端縁を炉壁面全面に渡って50mm以上突出させると、燃焼室の角部、即ちコーナ部近傍では、コーナ部からの前記下降粒子の流れ込みにより、コーナ部近傍の蒸発管に減肉が生じるが、燃焼室の角部の耐火材に断面方形状の凹部を設けることで、前記流れ込みを防止することができ、コーナ部近傍の蒸発管においても他部の蒸発管と略同等まで減肉量を抑制することができる。
【0014】
また、前記断面方形状の凹部の側辺側にある蒸気管は、天井近傍まで断熱壁で覆われていることを特徴とする。
燃焼室の角部、即ちコーナ部では特に流動材の流動が激しく、該流動による損傷を防ぐ必要がある。そこで、前記断面方形状の凹部の側辺側にある蒸気管を、天井近傍まで断熱壁で覆うことで、前記流動による損傷を防ぐことができる。
【0015】
また、前記方形状の凹部は、テーパ部を有し、該テーパ部のテーパ角によって、凹部の側辺側にある蒸気管の本数を決定することを特徴とする。
これにより、前記凹部を設ける際の寸法等の設計が容易になる。
【発明の効果】
【0016】
以上記載のごとく本発明によれば、耐火材の上縁側において、流動材や未燃灰等の粒子により蒸発管に生じる摩耗、減肉を抑制した循環流動層燃焼炉を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【実施例1】
【0018】
まず、実施例に先立って、耐火材の上端縁を、蒸発管の内側壁面から耐火材の端部までの距離が50mm以上となるように突出させた中間形態について説明する。
図4は、中間形態に係る循環流動層燃焼炉の耐火材設置部位の一部を示す概略図である。なお、循環流動層燃焼設備の構成は従来の図9に示すものと同じであるのでその説明は省略し、図9と同一符号は同一物を表すものとする。
図4に示すように、複数(図4には1本のみ図示)の蒸発管18を並置して形成した炉壁(フィン)19で燃焼室を区画し、該炉壁19の下部を覆った耐火材16を設け、循環する流動材や未燃灰等の粒子が炉壁19に沿って下降するようにされた循環流動層炉において、蒸発管18の内側壁面18aから耐火材の端面16aまでの突出距離Xを50mm以上としている。
【0019】
すなわち、中間形態においては、多数の蒸発管18を間隔片(不図示)で連結して炉壁を形成し、その下部を耐火材16で覆って流動材や未燃灰等の粒子のうず流等による摩耗、減肉に備えている。
さらに、耐火材16はその上端縁を水平な端面で形成するとともに、蒸発管18の内側壁面18aから耐火材の端面16aまでの突出距離Xを50mm以上としている。
この突出距離Xは、図5の耐火材厚さ(突出距離X)と摩耗深さ比との関係図に示すように、突出距離Xが伸びるほど摩耗抑制の効果は増大する。
図5に示すように、耐火材の突出距離Xを50mmから130mm以上とすることで摩耗量を1/10以下に低減することが確認できる。また、耐火材の突出距離は50mm以上、より好ましくは130m以上であれば長いほど好ましいが、施工可能な距離として1000mm以下とすることが好ましい。
ここで、摩耗深さ比とは、耐火材の突出距離Xが50mmでの摩耗量を1とし、各耐火材厚さでの摩耗量を比率に換算したものである。
【0020】
ここで、突出距離が伸びると摩耗深さ比が低減する理由について図6の耐火材の突出距離と蒸発管の摩耗領域との関係を示す図を参照して説明する。
図6に示すように、壁面近傍で蒸発管18に沿って降下する粒子は耐火材16の上面のステージ上に堆積し、安息角αに基づく傾斜面を形成する。この安息角αは流動材の粒径や運転条件等が変わらない限り一定である。
そして、突出距離が短い場合(Y)には、蒸発管18の内側壁面18aを削る摩耗領域(幅)bが小さいものとなるが、本中間形態のように突出距離が長い(50mm以上)場合(X)には、その摩耗領域(幅)aが鉛直軸方向に増大することとなる。
この結果、蒸発管の内側壁面に対する局所的な摩耗が緩和され、蒸発管の局部的な摩耗、減肉が抑制される。
【0021】
図7は中間形態におけるコンバスタ内のコーナ部近傍の斜視図であり、図8は中間形態におけるコンバスタ内のコーナ部近傍の上平面図である。図7及び図8に示すように、コーナ部直近に存在する蒸発管18Aは、天井近傍まで断熱壁28で覆われており、蒸発管18Aを保護している。これは、コンバスタ内のコーナ部は特に流動材の流動が激しく、これによる損傷を防ぐためである。
【0022】
また、耐火材16及び断熱壁28はその表面に耐摩耗性の皮膜が溶射されて形成されており、粒子の流れによる摩耗に備えている。
【0023】
このようなコンバスタ内で、壁面近傍で蒸発管18に沿って降下する粒子32は耐火材16の上面のステージ上に堆積し、堆積部30を形成し、その後コンバスタ内側方向への流れF1を形成してコンバスタ内に落下する。
【0024】
このとき、断熱壁28に覆われている蒸発管18Aは断熱壁28により摩耗、減肉が抑制され、コーナ部から離れた位置に配されている蒸発管18Cは断熱材16を突出させることにより摩耗、減肉が抑制されて減少したが、断熱壁28で覆われておらず且つコーナ部に近い位置に配されている蒸発管18Bには摩耗、減肉が見られた。
これは、コーナ部近傍においては、断熱材16の上面のステージ上に落下した粒子は、コンバスタ内側向きの流れF1だけでなく、炉壁に略沿った方向の流れF2も生じ、そのため、流れF2によって蒸発管18B近傍に粒子が集中し摩耗、減肉するためである。
【0025】
そこで、本実施例においては、中間形態における図7及び図8で示した断熱材16の構成に加えて、断熱材16のコーナ部に相当する位置に断面方形状の凹部17を設けた。図1は実施例におけるコンバスタ内のコーナ部近傍の斜視図であり、図2は実施例におけるコンバスタ内のコーナ部近傍の上平面図である。
これにより、コーナ部周辺では、凹部17方向への流れF3が生じ、前記炉壁に略沿った方向の流れF2はほとんど生じなくなる。
なお、前記凹部17は、その側辺側にある蒸気管が、他の部位における蒸発管よりも相対的に減肉の生じる蒸発管、即ち蒸発管18Bとなるように設ける。凹部が小さすぎると前記流れF2を減少させる効果が小さく、凹部が大きすぎると摩耗、減肉の抑制ができている蒸発管18Cの直近の断熱材の突出部が短くなってしまい、蒸発管18Cの摩耗、減肉の抑制が充分でなくなる可能性があるためである。
凹部17の大きさ及び位置は、例えば凹部17にテーパ部17aを設け、テーパ部末端位置17bの側辺側の位置が、蒸発管18Bと蒸発管18Cの中間位置付近となるようにテーパ部17aのテーパ角を決定することで調整が可能である。
【0026】
図3は蒸発管18を断熱壁で覆う様子を示す概略断面図である。図3(A)は図1及び図2で示した例における断熱壁の様子を示しており、図3(B)は別の例における断熱壁の様子を示している。
図3(A)においては、コーナ部直近にある蒸発管18Aのみを断熱壁28で覆ったが、図3(B)においては、蒸発管18Aに加えて他の部位における蒸発管よりも相対的に減肉の生じる蒸発管、即ち蒸発管18Bも断熱壁28で覆った。断面方形状の凹部17の側辺側にあり減肉の生じやすい蒸気管18Bを、天井近傍まで断熱壁で覆うことで、蒸発管Bの粒子の流動による損傷をさらに効率的に防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
耐火材の上縁側において、流動材や未燃灰等の粒子により蒸発管に生じる摩耗、減肉を抑制した循環流動層燃焼炉として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例におけるコンバスタ内のコーナ部近傍の斜視図である。
【図2】実施例におけるコンバスタ内のコーナ部近傍の上平面図である。
【図3】蒸発管を断熱壁で覆う様子を示す概略断面図である。
【図4】中間形態に係る循環流動層燃焼炉の耐火材設置部位の一部を示す概略図である。
【図5】耐火材厚さ(突出距離X)と摩耗深さ比との関係図である。
【図6】耐火材の突出距離と蒸発管の摩耗領域との関係を示す図である。
【図7】中間技術におけるコンバスタ内のコーナ部近傍の斜視図である。
【図8】中間技術におけるコンバスタ内のコーナ部近傍の上平面図である。
【図9】循環流動層燃焼炉設備の概略図である。
【符号の説明】
【0029】
4 循環流動層燃焼炉
16 断熱材
17 凹部
18 蒸発管
28 断熱壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の蒸発管を並置して形成した炉壁で断面角型形状の燃焼室を区画し、前記炉壁の下部を覆った耐火材を設け、循環する流動材や未燃灰等の粒子が前記炉壁に沿って下降するようにされた循環流動層燃焼炉において、
前記耐火材の上端縁を、前記蒸発管の内側壁面から耐火材の端部までの距離が50mm以上となるように突出させるとともに、
前記燃焼室の角部で、前記耐火材に断面方形状の凹部を設け、
前記凹部は、側辺側にある蒸気管が、他の部位における蒸発管よりも相対的に減肉の生じる蒸発管であることを特徴とする循環流動層燃焼炉。
【請求項2】
前記断面方形状の凹部の側辺側にある蒸気管は、天井近傍まで断熱壁で覆われていることを特徴とする請求項1記載の循環流動層燃焼炉。
【請求項3】
前記方形状の凹部は、テーパ部を有し、
該テーパ部のテーパ角によって、凹部の側辺側にある蒸気管の本数を決定することを特徴とする請求項1又は2記載の循環流動層燃焼炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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