説明

微保護層を備える拡散層及びその製法

【課題】拡散層の機能を効果的に保護し、使用寿命を延長させられ、またこれにより単一の燃料電池は電解機能を兼備可能となる微保護層を備える拡散層及びその製法を提供する。
【解決手段】微保護層51を備える拡散層5及びその製法は、従来の燃料電池中に用いる拡散層5外表面に、微保護層551構造を複合し、水電解電池の拡散層5とし、その製作ステップは、拡散層5外に先ず、耐腐蝕金属基材を複合し、耐腐蝕金属基材を複合した拡散層5を高温処理し、次に、高活性触媒基材を高温処理後の拡散層5外表面に複合し、最後に、温度処理を施し完成し、これにより微保護層51は拡散層5を保護可能で、水電解中に拡散層5は、酸素原子或いは水酸基等の酸素活性物質により侵蝕されにくくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は微保護層を備える拡散層及びその製法に関し、特にカーボンファイバー、カーボンペーパー、或いはグラファイトにより製造する拡散層の表面に微保護層を備え、微保護層はカーボン或いはグラファイトの酸素活性物質による侵蝕或いは破壊を防止する機能と効果を備える微保護層拡散層及びその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
この百年間というもの、科学技術の勃興により世界経済は発展し、社会は進歩を遂げた結果、人口が急増し、人類のエネルギーに対する需要量は増加の一途をたどっている。
そのため、限りある地球の資源が枯渇する恐れが出ている。
特に、石油の埋蔵量は確実に減っており、このままでは、近い将来のエネルギー危機は避けられない状況にまで陥っている。
代替エネルギーが開発されなければ、人類の生存は脅威に曝されることとなるため、代替エネルギーの開発は、全人類にとって急務の課題である。
【0003】
既存の代替エネルギーの中で、最も注目を集めているのは、燃料電池である。
燃料電池は、化学エネルギーを電気エネルギーに転換する発電装置で、主に水素と酸素を燃料とし、化合作用により、水素と酸素は電流と液態水を生じる。
すなわち、燃料電池反応後の産物は、液態水だけであるため、環境をほとんど汚染せず、環境に非常に優しいのが特徴である。
低汚染という長所の他に、燃料電池には、騒音が低く、効率が高く、寿命が長く、適用範囲が広いという長所があり、高い潜在性を秘めたエネルギーとして、各国が開発にしのぎを削っている。
【0004】
燃料電池は、水素と酸素の化合反応を利用し、電流と液態水を発生するが、反対に、液態水に電流を通せば、水素と酸素を発生する。
この液態水を解離し水素及び酸素とする反応作用は、水電解と呼ばれる。
この種の双方向反応の特性を利用して、燃料電池の反応物、すなわち水素と酸素を循環させて利用することができる。
しかし、従来の燃料電池においては、水電解反応を行なう時の操作電位が高い(単電池で約2.0V)ため、燃料電池内の拡散層が、酸素活性物質により侵蝕され損壊し易いという問題があり、従来の燃料電池を、水電解に適用することはできない。
【0005】
燃料電池中の拡散層は、カーボン原子を主要成分とするカーボンペーパー或いはカーボンファイバーなどのカーボン製品である。
水電解の過程において、酸素は、酸素原子及び水酸基等の酸素活性物質を発生するが、酸素活性物質は、拡散層のカーボン分子と結合し、一酸化炭素或いは二酸化炭素となるため、拡散層が侵蝕され損壊してしまう。
よって、既存の技術では、燃料電池と水電解装置をそれぞれ独立させて設置し、燃料電池は、電力供給のみに用い、水電解装置は、水素と酸素の生成にのみ用いている。
しかしこれでは、配置空間と設置コストの無駄であるばかりか、燃料電池の応用範囲をも制限してしまう。
【0006】
燃料電池中の拡散層が、水電解時に、一酸化炭素或いは二酸化炭素により侵蝕され、損壊するという問題を解決することができれば、燃料電池を利用し水電解により水素と酸素を生産し、水電解で生じた水素と酸素を、多種の工業と民生用途に応用することができ、さらに、水素発生と発電機能を単一の電池に統合することができる。
本発明は、従来の微保護層を備える拡散層及びその製法の上記した欠点に鑑みてなされたものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、拡散層の防護機能を向上させ、水電解中に腐蝕され破壊されないようにする微保護層を備える拡散層及びその製法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は下記の微保護層を備える拡散層及びその製法を提供する。
微保護層を備える拡散層及びその製法において、拡散層表面には、微保護層を複合させ、
該微保護層は、耐腐蝕金属基材と高活性触媒基材を備え、該耐腐蝕金属基材と該高活性触媒基材は、粉末状、粘液状、或いは他の任意の形態で、
該微保護層を備える拡散層の製作ステップは、
該拡散層上に、先ず耐腐蝕金属基材を複合させ、高温処理により固着し、
次に、高活性触媒基材を該拡散層外表面に複合し、
最後に、温度処理を経て固化後、完成品とし、
該微保護層中の耐腐蝕金属基材は、カーボンと酸素活性物質の接触表面積を減らし、該高活性触媒基材の該拡散層外表面への複合を助け、
該高活性触媒は、酸素活性物質を触媒し、侵蝕性を備えない酸素とし、
該微保護層の保護作用により、カーボン製の拡散層を効果的に保護し、酸素活性物質により侵蝕されにくくし、
こうして、本発明の実施により、燃料電池を直接逆反応、すなわち水電解に利用可能とし、水素と酸素の発生設備でありながら、電気エネルギーを生成することもできる両用機とし、エネルギーを循環させて再利用し、機体を小型化して、配置コストを低下させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明微保護層を備える拡散層は、カーボンファイバー、カーボンペーパー、或いはグラファイトにより製造する拡散層の表面に微保護層を備え、微保護層はカーボン或いはグラファイトの酸素活性物質による侵蝕或いは破壊を防止する機能と効果を備え、本発明の製法は、微保護層を備える拡散層を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】従来の燃料電池の構造断面図である。
【図2】本発明の微保護層を用いた燃料電池の構造断面図である。
【図3】本発明の微保護層を用いた燃料電池において、水電解を行なう構造の断面図である。
【図4】本発明微保護層を備える拡散層製法のプロセスを示すブロックチャートである。
【図5】本発明の微保護層を用いた燃料電池において、拡散層外に微保護層を複合させる構造の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照しながら本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【実施例】
【0012】
従来の燃料電池の内部構造模式図である図1に示すように、従来の燃料電池は、本体1内に、端板2、端板2’、集電板3、集電板3’、流道板4、流道板4’、拡散層5、拡散層5’、触媒層6、触媒層6’、プロトン交換膜7、回路ユニット8を備える。
本体1には別に、水素/水出入り口11、14、酸素/水出入り口12、13等の出入り口を設置し、これにより気体と液態水を出入りさせる。
拡散層5、5’は、反応物(すなわち、気体)を均一に拡散させ、反応物をスムーズに出入りさせ、電子を伝導する等の機能を備え、酸素と触媒層6、6’の反応はより効率的になる。
拡散層5、5’は、「カーボン」材により製造するカーボンペーパー、或いはカーボンファイバーである。
【0013】
一方、図2、3に示すように、本発明は、燃料電池の本体1中、特に酸素/水出入り口12、13端側に近い拡散層5に、微保護層51を複合させて設置する。
微保護層51は、拡散層5と触媒層6の間に形成する。
【0014】
本発明において水電解作用を実施する時には、図3に示すように、液態水は、酸素/水出入り口13から本体1に入り、触媒層6へと至る。
回路ユニット8により、電力を供給し、液態水に通電後、正極の集電板3は酸素極となり、酸素と水素イオンを解離し、酸素は、酸素/水出入り口12から排出される。
水素イオンは、プロトン交換膜7を通過して、水素極触媒層6’に至り、電子と結合して水素を発生し、最後に水素は、水素/水出入り口11から排出される。
【0015】
本発明は、拡散層5外表面に、微保護層51を複合し、しかも微保護層51は、高活性触媒基材及び抗腐蝕金属基材により組成する。
高活性触媒基材は、酸素活性物質を触媒し、侵蝕性を備えない酸素とすることができ、抗腐蝕金属基材は、カーボンと酸素活性物質の接触表面積を減らすことができるため、拡散層5保護の機能と効果を達成することができる。
【0016】
本発明を燃料電池に応用する時には、図2に示すように、水素は、水素/水出入り口14から入り、本体1内へ進入し、順番に端板2’、集電板3’、流道板4’、拡散層5’、触媒層6’を経由後、触媒層6’の作用を通して、水素は解離し水素イオンと電子となり、しかも水素イオンは、プロトン交換膜7中において酸素極へと伝送され、電子は、回路ユニット8に進入し、酸素極へ至り、電流を形成する。
一方、酸素は酸素/水出入り口12から本体1へと進入し、端板2、集電板3、流道板4、拡散層5、触媒層6を通過後、触媒層6へと均一に分布し、酸素は、触媒層6において、水素イオン及び電子と反応後、結合して液態水となり、酸素/水出入り口13から排出される。
【0017】
上記したように、本発明は、拡散層5外表面に複合する微保護層51構造を利用し、拡散層5を効果的に保護し、侵蝕されにくくするため、水電解設備に使用することができる。
同時に、本発明技術により、単一の燃料電池は、水電解機能をも兼ね備え、従来の燃料電池に存在していた適用範囲の制限という問題を解決することができる。
こうして、空間を節減し、コストを低下させ、使用寿命を延長させられるという長所を実現することができる。
【0018】
図4に示すように、本発明微保護層を備える拡散層の製作ステップは、以下の通りである。
(a) 拡散層91を基材とする。
(b) 拡散層91外表面に耐腐蝕金属基材961を複合92する。複合92の方式は、スプレーガン、インクジェット、スパッタリング、蒸着、積層、或いは電気メッキの内の1種である。
(c) 耐腐蝕金属基材961を複合92させた拡散層91を高温処理93し、耐腐蝕金属基材961を拡散層91外表面に固着させる。
(d) 高温処理93を完成した拡散層91外表面に、高活性触媒基材962を複合94する。複合94の方式は、スプレーガン、インクジェット、スパッタリング、蒸着、積層或いは電気メッキの内の1種である。
(e) 高活性触媒基材962を複合94した拡散層91を温度処理95し、高活性触媒基材962を拡散層91外表面に固着させる。
【0019】
上記各ステップの完成後、拡散層91は、微保護層96を複合した完成品9となる(図5参照)。
本発明の微保護層96を複合する拡散層91構造を、燃料電池構造に応用した場合には、その電気エネルギーの発生に関する機能は、従来の構造と差異がない。
但し、同一の燃料電池で水電解を行なう時には、微保護層96は、拡散層91に二重の保護作用を提供することができる。
先ず一つ目の保護作用は、より外層に位置する高活性触媒基材962により、酸素活性物質を触媒して酸素とし、二つ目の保護作用は、より内層に位置する耐腐蝕金属基材961により、酸素へと触媒されなかった酸素活性物質の、拡散層91への接触を遅らせ、減少させ、或いは阻害することである。
これら二重の保護作用により、拡散層91に含まれるカーボンは、分解侵蝕され損壊しにくくなり、こうして単一の燃料電池は、電気エネルギーを発生させる他に、水電解をも可能となる。
これにより、1台で2種の応用を達成し、エネルギーを循環させ再利用し、機体を小型化して、配置コストを節減することができる。
【0020】
上記の本発明名称と内容は、本発明技術内容の説明に用いたのみで、本発明を限定するものではない。本発明の精神に基づく等価応用或いは部品(構造)の転換、置換、数量の増減はすべて、本発明の保護範囲に含むものとする。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は特許請求の要件である新規性を備え、従来の同類製品に比べ十分な進歩を有し、実用性が高く、社会のニーズに合致しており、産業上の利用価値は非常に大きい。
【符号の説明】
【0022】
1 本体
11 水素/水出入り口
12 酸素/水出入り口
13 酸素/水出入り口
14 水素/水出入り口
2 端板
2’ 端板
3 集電板
3’ 集電板
4 流道板
4’ 流道板
5 拡散層
5’ 拡散層
51 微保護層
6 触媒層
6’ 触媒層
7 プロトン交換膜
8 回路ユニット
9 完成品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微保護層を備える拡散層は、拡散層外に、微保護層を複合し、
前記拡散層は、反応物を均一に拡散し、
前記微保護層は、前記拡散層外に複合し、耐腐蝕金属基材及び高活性触媒基材を含むことを特徴とする微保護層を備える拡散層。
【請求項2】
前記拡散層の材料は、カーボンペーパー、カーボンファイバー、或いはグラファイトの内の1種で、
前記耐腐蝕金属基材は、金属材料で、
前記高活性触媒基材は、活性物質を触媒して、腐蝕性を備えない水素に転換し、
その複合の方法は、スプレーガン、インクジェット、スパッタリング、蒸着、積層、或いは電気メッキの内の1種で、
前記微保護層を備える拡散層は、水電解装置、燃料電池と水電解装置を統合した装置の内の一つに応用可能であることを特徴とする請求項1に記載の微保護層を備える拡散層。
【請求項3】
微保護層を備える拡散層製法の製作方法は、以下のステップを含み、
(a) 拡散層を取り出し、
(b) 前記拡散層外に、耐腐蝕金属基材を複合し、
(c) 耐腐蝕金属基材を複合した拡散層を、高温処理し、
(d) 拡散層外に、さらに高活性触媒基材を複合し、
(e) 高活性触媒基材を複合した拡散層を、温度処理し、
(f) 完成品を得ることを特徴とする微保護層を備える拡散層の製法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−40312(P2011−40312A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187919(P2009−187919)
【出願日】平成21年8月14日(2009.8.14)
【出願人】(509230492)光騰光電股▲ふん▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】