説明

微多孔膜、電池セパレーターおよび電池

電池セパレーターとしての使用に対して優れた特性を有している微多孔性重合膜が提供される。膜は、少なくとも上流段階及び下流段階で、微多孔性重合膜を熱セットすることによって生成されるもので、前記上流段階の温度は前記下流段階の温度より少なくとも15℃低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横断方向(「TD」)に薄膜を透過する透過性(permeability)の標準偏差が20秒以下で、突刺強度が3000mN以上で、膜厚が16μmに規格化された微多孔膜の製造方法に関する。微多孔膜は電池セパレーターとして使用できる。微多孔膜には、またよい熱収縮特性と耐圧縮性がある。また、本発明は、微多孔膜等で構成される電池セパレーター、電池セパレーターを利用する電池、および電荷の放出(source)と吸収(sink)のような電池使用向けの微多孔膜を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微多孔膜は一次電池、並びにリチウムイオン二次電池、リチウム−ポリマー二次電池、ニッケル−水素二次電池、ニッケル−カドミウム二次電池、ニッケル−亜鉛二次電池、銀−亜鉛二次電池等の二次電池のセパレーターとして有用である。微多孔膜が電池セパレーターとして、特にリチウムイオン電池に用いられたときに、この膜の性能は、電池の性質、生産性、及び安全性に有意に影響を与える。即ち、この微多孔膜は、好適な透過性、機械的性質、熱安定性、寸法安定性、シャットダウン特性、メルトダウン特性を有していなければならない。そのような電池は、特に電池が運転条件のもと高温に曝されたときに、改善された電池の安全性を示すように、比較的低いシャットダウン温度と、比較的高いメルトダウン温度を有していなければならない。高いセパレーター透過性は、高いキャパシティーの電池のためには好まれる。高い機械的強度を有するセパレーターは、改善された電池アセンブリ及び製造のために好まれる。セパレーター面の全体にわたって一様な高い透過性の分布状態は重要な物理的性質である。微多孔膜の透過性均一性は、TDと平行なラインに沿った2点以上での透気度(air permeability)値の分布状態によって特徴づけられる。比較的高い透気度は、測定された透気度値の比較的小さな標準偏差によって特徴づけられる。透気度は、標準圧力で1.0平方インチの材料を通して、100cmの空気を通過させるのに必要とされる秒数と等しい「ガーレイ」値に換算して頻繁に表現される。ガーレイ値は、100cm当りの秒数や、(「100cm」が了解されている)秒数として慣例通りに表現される。透気度が比較的一様な場合、例えば、横断方向TDに沿った異なる点でほぼ同じ値を有する場合、適切な透過性仕様がある膜を製造するために必要である膜のトリミングをより少なくする。この結果、廃棄物が少なくて済み、また薄膜生産ラインの収率を増加させる。
【0003】
物質の組成、延伸条件、熱処理条件等の最適化が電池セパレーターとして用いられる微多孔膜の性質を改善するために提案されてきた。例えば、JP6−240036Aは改良された細孔直径及び鋭い細孔直径分布を有する微多孔膜を開示する。この膜は重量平均分子量(「Mw」)が7×10以上の超高分子量ポリエチレンを容量で1%以上含むポリエチレンレジンから作られる。このポリエチレンレジンは10乃至300の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)を有し、この微多孔膜は35乃至90%の空孔率、0.05乃至2μmの平均透過細孔直径、0.2kg以上の破断強度(15mm幅)及び1.5以下の細孔直径分布(最大細孔直径/平均透過細孔直径)を有する。この微多孔膜は前述のポリエチレンレジン及び膜形成溶媒の溶融混合物をダイを介して押出し形成する工程、前述のポリエチレンレジンの結晶分散温度(Tcd)から溶融温度+10℃の温度まで冷却することにより、得られたゲル様シートを延伸する工程、このゲル様シートから膜形成溶媒を除去する工程、得られた膜を前述のポリエチレンの溶融温度−10℃以下の温度でエリア拡大して、1.5乃至3倍に再延伸する工程、及び前述のポリエチレン樹脂の結晶分散温度乃至融点の間の温度での単一段階で熱セット(heat-setting)する工程により、製造される。
【0004】
WO1999/48959は局所的に透過性に偏りがない均一な細孔表面を有するだけでなく、好適な強度及び透過性を有する微多孔性ポリオレフィン膜を開示する。この膜は、ポリオレフィンレジンから製造されるもので、例えば、50,000以上で5,000,000未満の重量平均分子量Mw、及び1以上30未満の分子量分布を有する高密度ポリエチレンで、20乃至100nmの平均ミクロフィブリルサイズ及び40乃至400nmの平均繊維距離を有する一様に分散したミクロフィブリル(micro-fibril)で形成された微細間隙を持ったネットワーク構造を有する。この微多孔膜は、ダイを介して、前述のポリオレフィンレジンと膜形成溶媒との溶融混合物を押出し成型する工程、ポリオレフィンレジンの融点温度−50°C又はこの融点温度よりも高い又は低い温度で冷却して得られるゲル様シートを延伸する工程、このゲル様シートから膜形成溶媒を除去する工程、このポリオレフィンレジンの融点温度−50°C又はこの融点温度よりも高い又は低い温度でこのシートを1.1乃至5倍に再延伸する工程、及び前述のポリオレフィンレジンの結晶分散温度乃至融点の間の温度で単一段の熱セットをする工程により製造される。
【0005】
WO2000/20492は5x10以上の重量平均分子量Mwを有する微細なポリエチレンファイバーにより特徴付けられる、改善された透過性の微多孔性ポリオレフィン膜を開示する。この組成物はポリエチレンを含む。この微多孔性ポリオレフィン膜は0.05乃至5μmの平均細孔直径、縦横の断面において、膜表面に対して80乃至100°の角度θにおけるラメラの割合が40%以上である。このポリエチレン組成物は重量により1乃至69%の、7x10以上の重量平均分子量Mwを有する超高分子量ポリエチレン、重量により1乃至98%の高密度ポリエチレン、及び1乃至30%の低密度ポリエチレンを含む。この微多孔膜は前記ポリエチレン組成物及び膜形成溶媒の溶融ブレンドをダイを介して押出し成形し、冷却により得られたゲル状シートを延伸し、前述のポリエチレン又は組成物の結晶分散温度乃至融点+30℃の温度で単一段の熱セットをし、そして膜形成溶媒の除去により製造される。
【0006】
WO2002/072248は改善された透過性、粒子ブロック性質、及び強度を有する微多孔膜を開示する。この膜は380,000未満の重量平均分子量Mwを有するポリエチレン樹脂を用いて製造される。この膜は50乃至95%の空孔率及び0.01乃至1μmの平均細孔直径を有している。この微多孔膜は微多孔膜全体を通じてお互いに連結している0.2乃至1μmの平均直径を有するミクロフィブリルにより形成された3次元網目状骨格を有し、0.1μm以上で3μm未満の平均直径を有する骨格により定義される間隙を有する。この微多孔膜は前記ポリエチレンレジンと膜形成溶媒の溶融ブレンドをダイを介して押出し成形し、冷却して得られたゲル状シートから膜形成溶媒を除去し、20乃至140℃の温度で2乃至4倍に延伸し、延伸した膜を80℃乃至140°の温度で単一段の熱セットをして得られる。
【0007】
WO2005/113657は好適なシャットダウン特性、メルトダウン特性、二次元安定性、及び高温耐性を有する微多孔性ポリオレフィン膜を開示する。この膜は(a)10,000以下の分子量、11乃至100のMw/Mn(Mnはこのポリエチレンレジンの数平均分子量である)、及び100,000乃至1,000,000の粘度平均分子量(Mv)を有する成分の容量により8乃至60%のポリエチレンレジンと、(b)ポリプロピレンとを含むポリオレフィン組成物を用いて製造する。この膜は20乃至95%の空孔率及び100℃において10%以下の熱収縮率を有する。この微多孔性ポリオレフィン膜は前述のポリオレフィンと膜形成溶媒との溶融ブレンドをダイを介して押出し成形し、冷却により得られたゲル状シートを延伸し、膜形成溶媒を除去し、及びこのシートをアニールして製造される。
【0008】
セパレーターの性質を考慮すると、透過性、機械的強度、シャットダウン特性、及びメルトダウン特性だけでなく、熱収縮性に関する性質が近年重要になっている。電池製造に特に重要なのは、高い透過性及び耐熱性を維持しつつも、低い熱収縮率を有することである。特に、リチウムイオン電池の電極はリチウムの侵入及び放出により膨張又は収縮され、電池容量が高くなると膨張率も高くなる。セパレーターは電極が膨張したときに、圧縮されるので、圧縮された時のセパレーターが電解溶液保持の中で出来る限り少ない減少に耐えることが好まれる。
【0009】
更に、改善された微多孔膜はJP6−240036A、WO1999/48959、WO2000/20492、WO2002/0722548、及びWO2005/113657に記載されているけれども、さらなる改善が必要とされ、高い強度と耐熱性を維持すると共に、微多孔膜にわたって低い熱収縮率、よい空孔率および一様な高い透過性分布状態を有する微多孔膜が特に必要とされる。それ故、そのような微多孔膜から電池セパレーターを製造することが好ましい。
【発明の概要】
【0010】
ある実施の態様においては、本発明は比較的高力及び比較的均一な透気度を持つ微多孔膜を製造する方法に関し、微多孔性重合膜を少なくとも上流段階(例えば、第一段階)及び下流段階(例えば、最終段階)において熱セットし、前記第一段階は前記最終段階の上流にあり、第一段階の温度は最終段階の温度より少なくとも15℃低い。本発明はまたその様な方法により生成された膜に関する。前記重合膜がポリエチレンを含む場合、前記第一段階の温度は、例えば、ポリエチレンの結晶分散温度より10℃を超えた高い温度であってはならない。ある実施の態様においては、微多孔性重合膜は、熱セット工程の間、膜の幅の変化を調節するために熱セットの間掴まれた状態にある。膜の幅は、例えば、膜の幅を減少させるために対のテンタークリップを調整することにより、熱セットの間一定に保ち又は減少させることができる。したがって、ある実施の態様においては、本発明は少なくとも上流(又は第一段階)及び下流(又は最終段階)で微多孔性重合膜を熱セットすることに関し、第一段階は最終段階の上流にあり、第一段階の温度は最終段階の温度より少なくとも15℃低く、微多孔性重合膜は少なくとも一つの平面方向(例えば、横方向「TD」)の熱セットの前に第一の(又は最初の)サイズを持ち、一つの平面方向の熱セットの後の第二の(又は最終サイズの)を持ち、最終サイズは最初のサイズの80から90%の範囲である。電池セパレーターとして使用される特に重要な場合に、微多孔膜は優れた熱収縮、溶融温度及び熱−機械特性、すなわち、溶融状態で低い最大収縮を示す。
【0011】
ある実施の態様においては、微多孔性重合膜は以下を含む工程により生産される:(1)ポリオレフィン組成物及び少なくとも1つの希釈剤又は溶媒、例えば、膜形成溶媒を組合わせてポリオレフィン溶液を形成する工程であり、前記ポリオレフィン組成物は(a)1.0x106未満の重量平均分子量(Mw)、例えば、約4.5x10乃至約6.5x10の範囲、例えば、約2.5x10乃至約9x10の範囲のMw、及び約3乃至約100の範囲の分子量分布(MWD;Mw/Mnで定義される)を有する約50乃至約100%の第一ポリエチレンレジン、(b)1x106以上のMw、例えば、約1x106乃至約5x106の範囲、及び約3乃至約100の範囲のMWDを有する約0乃至約40%の第二ポリエチレンレジン、(c)約5x10以上のMw、約1乃至約100のMWD、及び90J/g以上の融解熱を有する約0乃至約50%のポリプロピレンレジンであり、各パーセントはポリオレフィン組成物の質量に基づき、及び(2)ポリオレフィン溶液をダイを通して押出して、押出し成形物を成形する工程、(3)この押出し成形物を冷却して、高いポリオレフィン含有量を有する冷却した押出し成形物を成形する工程、(4)組み合わせたポリエチレンの冷却された押出し成形物の約Tcd℃から約Tm℃の延伸温度で少なくとも1つの方向に、冷却された押出し成形物を延伸して延伸されたシートを形成する工程、(5)延伸されたシートから希釈剤又は溶媒の少なくとも一部を除去し膜を形成する工程、(6)(5)の工程での膜製品を熱セットし微多孔膜を形成する工程であり、前記熱セットは少なくとも2段階で実施され、少なくとも一つの先の熱セット段階は一以上の後の段階の温度と異なる、及び低い温度で実施され、第一段階と最終段階の温度差は15℃以上である。
【0012】
ある実施の態様においては、本発明はポリオレフィンを含む微多孔膜に関し、前記膜は以下を含む:
(a) 膜の平面において縦方向並びに膜の平面及び縦方向の両方に垂直な厚さ方向
(b) 厚さ方向及び縦方向の両方に垂直な横方向の幅Wであり、Wの値は膜の切
断の前に決定される
(c) 最初の点から最終の点への横方向に各点の厚さ方向の複数の空気透過値であり、空気透過値の標準偏差は20秒を超えない
(i)最初の点及び最終の点は横方向に沿って点W/2から同距離であり、及び
(ii) 横方向に沿って測定した最初の点と最終の点の間の距離は少なくともWの75%であり、及び以下の(d)〜(f)の少なくとも一つを含む、すなわち、
(d) 16μmの厚さに正規化された穿刺強度は3,000mN以上
(e) TD熱収縮比が105℃で10%以下
(f) TD熱収縮比が130℃で20%以下
(g) 溶融状態でのTMA収縮は約140℃で20%以下。
【0013】
ある関連する実施の態様においては、微多孔膜は、105℃で5%以下のTD熱収縮比、130℃で15%以下のTD熱収縮比、又は約140℃で10%以下の溶融状態でのTMA収縮、の内の少なくとも一つを持つ。微多孔膜は重合膜であっても良く、その重合膜はポリエチレン、ポリプロピレン又はその両方を含んでも良い。例えば、前記膜は以下を含んでも良い:
(a)約2.5x10乃至約9x10のMw、及び約3.5乃至約20のMWDを有する約50乃至約100%の第一ポリエチレンレジン、(b)約1.1x106乃至5x106のMw、及び約3.5乃至約20のMWDを有する約0乃至約40%の第二ポリエチレンレジン、(c)5x10以上のMw、約1乃至約100のMWD、及び90J/g以上の融解熱を有する約0乃至約50%のポリプロピレンレジンであり、各パーセントは前記膜の質量に基づく。
【0014】
本発明の微多孔膜は微多孔性重合膜であっても良い。この場合「重合」の意味は「一以上の重合体(polymer)を含む」ことを言う。重合体に加え、重合膜は任意選択的に他の成分、例えば、充填材料の様な有機及び/又は無機材料を含んでも良い。微多孔性重合膜がポリオレフィン及び任意選択的に他の成分を含む場合、それはポリオレフィン膜と呼ぶこともできる。重合体(ポリマー)の用語は本明細書においては、広い意味で使用されており、例えば、オリゴマー、ポリマー、コポリマーなどの重合反応の任意の生成物を含み、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー等を含む。「コポリマー」の用語は少なくとも2つの異なるモノマーの重合により形成されるポリマーを言う。例えば、「コポリマー」の用語はエチレン及びアルファ−オレフィン(α―オレフィン)、例えば、これは単なる表示例として、プロピレン、又は1−ヘキセンのみを示すが、の共重合(copolymerization)反応生成物を含む。しかし「コポリマー」の用語は、例えば、エチレン、プロピレン、1−ヘキセン、及び1−オクテンの混合物の共重合を含む。
【0015】
本発明の段階的熱セット工程から得られる利益を持つ微多孔膜は「湿式」製造プロセスにより製造された微多孔膜を含み、膜に多孔性を与えるのを助けるために同プロセスはポリマー(及び任意選択的に他の成分)に加えて希釈剤又は溶媒を用いる。しかし本発明はその様な膜に限定されない。例えば、本発明の段階的熱セット工程はまた「乾燥」プロセス、例えば、ポリマー及び任意選択的に他の材料を用いるが相当量の希釈剤又は溶媒を使用しないプロセスで生産される微多孔膜に適用される。
【0016】
本発明の段階的熱処理工程におかれる微多孔膜は、ポリオレフィン及び希釈剤を含むポリオレフィン溶液の押出し物から湿式法により生成され、ポリオレフィン溶液を形成するために使用されるレジンは、例えば、以下を含んでも良い:
(a)約2.5x10乃至約9x10の、例えば、約4.5x10乃至約6.5x10の重量平均分子量(Mw)及び約3.5乃至約20の、例えば、約4乃至約10の分子量分布(MWD)を有する、約50乃至約100%の、例えば、約50乃至約80%の第一ポリエチレンレジン、(b)約1.1x106乃至約5x106の、例えば、約1.5x106乃至約3x106のMw、及び約3乃至約100、例えば、約3.5乃至約20のMWDを有する約0乃至約40%の、例えば、約10乃至約30%の第二ポリエチレンレジン、(c)約5x10以上の、例えば、約8x10乃至約1.5x106のMw、約1乃至約100の、例えば、約2乃至約50のMWD及び90J/g以上の、例えば、約100乃至約120J/gの融解熱を有する約0乃至約50%の、例えば、約0乃至約40%のポリプロピレンレジン、である。前記微多孔膜は、微多孔膜の質量に基づき、好適に、ポリプロピレンレジンから得られるポリプロピレンをその質量により50%以下(例えば、0から45%又は5から45%)含んでも良く及びポリプロピレンレジンから得られるポリプロピレンをその質量により50%以上(例えば、55から100%又は55から95%)含んでも良い。
【発明の詳細な説明】
【0017】
ポリマー膜の場合、相対的に高い透気度と相対的に高い突刺強度を有する微多孔膜を製造するためには、相対的に高い熱セット温度が必要であることが認められた。例えばポリエチレンを含む微多孔膜の場合、膜厚16μmに規格化した透気度が≦400秒/100cm(ガーレイ(Gurley)値)で、膜厚16μmに規格化したピン突刺強度が≧3000mNの微多孔性ポリマー膜を製造するためには、熱セット温度を約90℃から約127℃にすることが必要であり、より低い熱セット温度では相対的に長い時間が必要になることが認められた。
【0018】
実際問題として、相対的に低い熱セット温度でより長い熱セット時間とすることは、製造ラインの生産性が低下するため好ましくない。また相対的に低い熱セット温度にすると、微多孔膜のピン突刺強度が相対的に低くなることが認められた。熱セット温度を高くすると生産性とピン突刺強度は向上するが、特に微多孔膜の端部近傍において透気度の均一性が悪化することが認められた。特に、相対的に高い熱セット温度(例えばポリエチレンを含む微多孔膜の場合約127℃)を用いると、熱セットする前のガーレイ値の標準偏差と比較して、フィルムの一端から他端に向かう微多孔膜の横断(TD)方向に沿った複数の点で測定したガーレイ値の標準偏差が顕著に悪化することが認められた。
【0019】
理論やモデルにこだわることは意図しないが、ガーレイ値の標準偏差の悪化は、微多孔膜中の不均一な残留変形、特に熱セット工程前のTD方向における不均一な残留変形に起因すると考えられる。ウエットプロセスで製造される微多孔膜の場合、残留変形は、例えば押出時にポリオレフィン溶液がダイを通過する際にポリオレフィン溶液に加わる不均一な剪断、ウエット延伸工程における不均一な変形分布(例えばパンタグラフに取り付けられたテンタークリップが膜の端部を掴むとき生じる)、延伸および/または乾燥時における不均一な熱分布(例えばホットスポット)等に起因する。ドライプロセスで製造される微多孔膜の場合、残留変形は、シート成型時のダイ形状の不均一性に起因する。
【0020】
この発明の一部は、初期(上流)段階の温度が最終(下流)段階の温度より少なくとも15℃低い、少なくとも2段階で微多孔膜を熱セットすることにより、微多孔膜のピン突刺強度、透気度、及び透気度の均一性(TD方向に沿った複数の点で測定した透気度値(すなわちガーレイ値)の標準偏差)を顕著に改善できるという発見に基づく。
【0021】
この発明に係る段階的熱セットは、ウエットプロセスで製造される微多孔膜だけでなく、ドライプロセスで製造される微多孔膜にも適用することができる。ひとつの実施形態では、微多孔膜は単層の膜である。製造方法の選択は重要ではなく、本願に参照として組み込まれる米国特許第5051183号及び米国特許第6096213号に開示された方法等、公知のポリマー出発原料から微多孔膜を成型できる方法であれば、どのような方法でも用いることができる。別の実施形態では、微多孔膜は多層膜、すなわち少なくとも2層からなる膜である。説明を簡潔にするために、微多孔膜の製造について、主としてウエットプロセスにより製造される単層ポリマー微多孔膜に関して説明する。しかし、当業者であれば段階的熱セット法を膜または2以上の層を有する膜の製造に適用可能なことを理解できよう。
【0022】
[1]微多孔膜の製造に用いる原料
(1)ポリオレフィン組成物
ひとつの実施形態では、この発明は優れた空孔率、低熱収縮率、及び膜全体にわたる均一な透過性分布を含む重要な物性のバランスがよく、かつ、高い透過性と耐熱性を保持するとともに、良好な機械的強度と対圧縮性を備える微多孔性ポリマー膜フィルムを製造する方法に関する。微多孔性ポリマー膜は、1以上のポリマーレジン及び希釈剤または溶媒から製造される。1以上のポリマーレジン、例えば1以上のポリオレフィン(例えばポリエチレン)レジンを用いる場合、レジンを例えばメルトブレンディング、ドライミキシング等により組み合わせて、ポリマー(例えばポリオレフィン)組成物を調製する。
説明を簡潔にするために、本願では微多孔性ポリオレフィン膜の製造について説明するが、この発明はこれ以外の微多孔膜にも適用可能である。
【0023】
ポリオレフィン組成物は、例えば(a)Mw<1×10、例えば約2.5×10から約9×10の範囲で、MWDが約3から約100の第1ポリエチレンレジンが約50から約100%、(b)Mw≧1×10、例えば約1.1×10から約5×10の範囲で、MWDが約3から約100の第2ポリエチレンレジンが約0から約40%、及び(c)Mw≧5×10、MWDが約1から約100で、融解熱量が90J/g以上のポリプロピレンが約0から約50%から成る。ここで、パーセンテージはポリオレフィン組成物の全質量を基準とする。
【0024】
ポリマー組成物の分子量分布は、例えば比較的狭い約2.5から約7の範囲内であってもよい。
【0025】
ポリオレフィンレジンについて更に詳しく説明する。
【0026】
(a)ポリエチレンレジン
ひとつの実施形態では、微多孔性ポリオレフィン膜は少なくとも1のポリエチレンレジン、すなわち第1ポリエチレンレジンから製造される。
【0027】
(i)組成物
第1ポリエチレンレジンはMw<1×10、例えば約2.5×10から約9×10の範囲で、MWDが約3から約100である。本願で用いる第1ポリエチレンレジンの非限定的例示として、Mwが約2.5×10から約9×10、例えば4.5×10から6.5×10で、MWDが約3.5から約20、例えば約4から約10のものが挙げられる。第1ポリエチレンレジンはエチレンホモポリマーであってよく、あるいはエチレンと、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、またはスチレン、またはこれらの組み合わせから選択されるコモノマー≦5モル%とから成るエチレン/α−オレフィン共重合体であってもよい。このような共重合体は、好ましくはシングルサイト触媒を用いて製造される。必須ではないが、第1ポリエチレンは末端不飽和基を、例えばポリエチレンの10,000炭素原子について2以上備えていてもよい。末端不飽和基は、例えば公知の赤外分光分析法により測定することができる。
【0028】
第2ポリエチレンレジンを用いる場合、例えばMw≧1×10、例えば約1.1×10から約5×10で、MWDが約3から約100の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)レジンを用いることができる。本願で用いる第2ポリエチレンレジンの非限定的例示としてMwが約1.5×10から約3×10の範囲、例えば約2×10で、MWDが約3.5から約20のものが挙げられる。第2ポリエチレンレジンはエチレンホモポリマーであってよく、あるいはエチレンと、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、またはスチレン、またはこれらの組み合わせから選択されるコモノマー≦5モル%とから成る共重合体であってもよい。このような共重合体は、好ましくはシングルサイト触媒を用いて製造される。
【0029】
(ii)ポリエチレンの分子量分布
本願で用いるポリエチレン組成物全体のMWDは好ましくは約2から約300であり、例えば約5から約50である。MWDが100を超えると、低分子量成分の割合が高くなりすぎ、得られる微多孔膜の強度が低下するので好ましくない。ポリエチレン(ホモポリマーまたはポリエチレン/α−オレフィン共重合体)のMWDは、多段重合により制御することができる。多段重合法は好ましくは、高分子量ポリマー成分を第1段において生成させ、低分子量ポリマー成分を第2段において生成させる、2段重合法である。本願で用いられるポリエチレン組成物は、MWDが大きいほど高分子量ポリエチレンと低分子量ポリエチレンのMwの差が大きくなり、その逆も成り立つ。ポリエチレン組成物のMWDは、各成分の分子量及び混合比を調整することで、適切に制御することができる。
【0030】
(b) ポリプロピレンレジン
必須ではないが、微多孔膜をポリエチレンとポリプロピレンから製造することもできる。
【0031】
(i) 組成物
本願で用いるポリプロピレンレジンはMw≧5×10で、例えば約8×10から約1.5×10であり、融解熱量が90J/g以上、非限定的例示として約100から約120J/gで、分子量分布が約1から約100、例えば約2から約50、または約2から約6である。ポリプロピレンはプロピレンのホモポリマーでも、プロピレンと、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、スチレン等、あるいは、ブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン等のジオレフィンから選択されるコモノマー<10モル%とからなる共重合体(ランダムまたはブロック)でもよい。
【0032】
ポリオレフィン組成物中のポリプロピレンレジンの量は、ポリオレフィン組成物の質量100%を基準として50%以下である。ポリプロピレンの割合が50質量%を超えると、得られる微多孔膜の強度が低下する。ポリオレフィン組成物中のポリプロピレンレジンの割合は、約0から約50質量%、例えば約0から約40質量%、例えば約0から約30質量%である。
【0033】
ひとつの実施形態では、ポリプロピレンレジンのMwは約0.8×10から約1.5×10、例えば約0.9×10から約1.4×10であり、MWDが約1から約100、例えば約2から約50であり、融解熱量が約80J/g以上、例えば約90から約120J/gである。任意に、ポリプロピレンは次の物性を1以上備えていてもよい:(i)ポリプロピレンはアイソタクティックである。(ii)ポリマー組成物の融解熱量が約108J/gより大きく、または約110J/gより大きく、または約112J/gより大きい。(ポリマー組成物の融解熱量は、例えば示差走査熱量測定法(DSC)等の公知の方法で求めることができる。)(iii)融解ピーク(2回目の溶融)が少なくとも約160℃である。(iv)温度約230℃及び歪速度25秒−1において測定したポリプロピレンのトルートン(Trouton)の比が少なくとも約15である。(v)温度約230℃及び歪速度25秒−1において測定した伸長粘度が少なくとも約50,000Pa秒である。(vi)高温融点(Tm)が例えば約166℃より高く、あるいは約168℃より高く、あるいは約170℃より高い。(融点は、例えば示差走査熱量測定法(DSC)等の公知の方法で求めることができる。)(vii)分子量が約1.75×10より大きく、あるいは約2×10より大きく、あるいは約2.25×10より大きく、例えば約2.5×10より大きい。(viii)230℃及び荷重2.16kgのメルトフローレート(MFR)が約0.01dg/分より小さい。(すなわち、実質的にMFRを測定できないほど小さい値である。メルトフローレートは米国材料試験協会(ASTM)第D部1238−95、条件(Condition)L等の公知の方法で測定することができる。)(ix)立体規則性の欠陥が10,000炭素原子につき約50未満、または約40未満、または約30未満、または約20未満であり、例えばポリプロピレンは10,000炭素原子につき約10未満、または約5未満の立体規則性の欠陥を有する。(x)メソ-ペンタッド-フラクション(meso pentad fraction)が約96モル%mmmmペンタッドより大きい。および/または(xi)抽出分(沸騰キシレン中でポリプロピレンから抽出)が、ポリプロピレンの重量に対し0.5重量%未満、0.2重量%未満、0.1重量%未満である。
【0034】
<融点の測定>
示差走査熱量測定法(DSC)のデータは、パーキンエルマー・インスツルメント(PerkinElmer Instrument)社、モデルピリス(model Pyris)1DSCにより採取することができる。約5.5−6.5ミリグラムの重量のサンプルをアルミニウム製サンプルパン中に封止する。1回目の溶融(データは記録しない)と呼ばれる、サンプルを150℃/分の昇温速度で200℃まで最初に加熱するときDSCデータを記録する。サンプルを200℃に10分間置いた後、冷却−加熱サイクルを行う。次に、サンプルを200℃から25℃まで10℃/分の速度で冷却する。これは結晶化と呼ばれる。次に、サンプルを25℃に10分間置いた後、200℃まで10℃/分の速度で加熱する。これは、2回目の溶融と呼ばれる。結晶化及び2回目の溶融の双方における熱挙動を記録する。融点(Tm)は、2回目の溶融曲線におけるピーク温度であり、結晶化温度(Tc)は、結晶化ピークのピーク温度である。
【0035】
<メソ-ペンタッド-フラクション及び抽出成分量の測定>
バリアン(Varian)VXR400NMRスペクトロメータを用いて100MHz及び125℃において13C NMRのデータを採取する。90℃パルス、収集時間3.0秒、及びパルス遅延20秒で測定する。スペクトルはデカップリングしたブロードバンドであり、ゲーテッドデカップリング(gated decoupling)せずに測定する。定量に通常用いられる唯一のホモポリマーの共鳴であるポリプロピレンのメチル基の共鳴について、同様の緩和時間及び核オーバーハウザー効果が生じると考えられる。測定において採取されるトランジエントの数は通常2500である。サンプルは、テトラクロロエタン−d中に、15重量%となるように溶解させる。テトラメチルシラン内部標準を用い、全スペクトル周波数について測定する。ポリプロピレンホモポリマーの場合、文献に報告されているテトラメチルシラン内部標準の値である21.855ppmに近い、21.81ppmのmmmmのメチル基の共鳴を測定する。用いられるペンタッドの割り当ては公知である。
【0036】
抽出成分(例えばアモルファスポリエチレン等の、低分子量および/またはアモルファスな物質)の量は、以下の手順により、135℃のキシレンに対する溶解性から求める。300mlのコニカルフラスコ中にサンプル(ペレットでも顆粒状でもよい)2グラムを秤量する。コニカルフラスコにキシレン200mlを撹拌子とともに入れ、このフラスコを加熱オイルバス中に入れる。加熱オイルバスのスイッチを入れ、フラスコを135℃のオイルバス中に15分間置いてポリマーを溶かす。ポリマーを溶けたら加熱を止め、冷却中も撹拌し続ける。溶解したポリマーを一晩自然冷却させる。沈殿物をテフロン(登録商標)濾紙で濾別し、90℃において真空下で乾燥させる。キシレン可溶分の量は、全ポリマーサンプル(A)の重量から室温における沈殿物(B)の重量を差し引き、重量パーセントで求める[可溶分=((A−B)/A)×100]。
【0037】
<ポリエチレンとポリプロピレンのMWDの測定>
ポリエチレンとポリプロピレンのMwとMWDは、示差屈折率計(DRI)を備えた高温サイズ排除クロマトグラフィー(High Temperature Size Exclusion Chromatograph)、または「SEC」、(GPC PL220、ポリマーラボラトリー(Polymer Laboratories)社)を用いて測定する。測定は、「高分子」(Macromolecules)第34巻第19号第6812−6820頁(2001年)に記載された方法に従って行う。MwとMWDの測定には、ポリマーラボラトリー社製のPLgel Mixed−Bカラムを3本用いる。ポリエチレンの場合、見かけ流速0.5cm/分で見かけ注入量を300μLとし、移送ライン、カラム、及びDRI計を145℃に保たれたオーブンに入れる。ポリプロピレンの場合、ノーミナルフローレート1.0cm/分でノーミナル注入量を300μLとし、移送ライン、カラム、及びDRI計を160℃に保たれたオーブンに入れる。
【0038】
使用するGPC溶媒には、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を1000ppm含むAldrich試薬グレード1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)を濾過して用いる。TCBをSECへ入れる前に、オンライン脱気装置で脱気した。この溶媒を、SEC溶出液に用いた。ポリマー溶液は、乾燥したポリマーをガラス容器に入れ、所定量のTCB溶媒を加え、次にこの混合物を連続的に160℃で加熱しながら約2時間撹拌した。ポリマー溶液の濃度は0.25から0.75mg/mlであった。サンプル溶液をGPCに注入する前に、SP260型サンプル準備ステーション(Sample Prep Station)(ポリマーラボラトリー社製)を用いて、2μmのフィルターによりオフラインで濾過した。
【0039】
一組のカラムの分離効率は、Mp(Mpは、Mwのピークと定義される)が約580から約10,000,000の範囲の、17種のポリスチレン標準サンプルを用いて作成した較正曲線を用いて較正した。ポリスチレン標準サンプルはポリマーラボラトリー社(マサチューセッツ州アナハイム(Amherst,MA))から入手した。較正曲線(logMp対保持容量)は、各PS標準サンプルのDRIシグナルにおけるピークの保持容量を測定し、このデータを二次多項式にフィッティングすることにより作成した。サンプルは、ウェーブメトリックス社(Wave Metrics, Inc)製のIGOR Proを用いて分析した。
【0040】
(2) 他の成分
上記の成分の他に、ポリオレフィン溶液には(a)追加のポリオレフィン、および/または(b)融点またはガラス転移温度が170℃以上の耐熱性レジンであって、微多孔膜の物性(突刺強度、透気度等)を低下させない程度の量、例えばポリオレフィン組成物に対し例えば10質量%以下の量である耐熱性レジンが含まれていてもよい。
【0041】
(a)追加のポリオレフィン
追加のポリオレフィンは、(a)Mwが1×10から4×10のポリブテン−1、ポリペンテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリヘキセン−1、ポリオクテン−1、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン及びエチレン/α−オレフィン共重合体、及び(b)Mwが1×10から1×10のポリエチレンワックスの内の少なくともいずれか1である。ポリブテン−1、ポリペンテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリヘキセン−1、ポリオクテン−1、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレンはホモポリマーである必要はなく、別のα−オレフィンを含む共重合体であってもよい。
【0042】
(b)耐熱性レジン
耐熱性レジンの例は、(a)融点が170℃以上で一部結晶性のアモルファスレジン、(b)融点が170℃以上で完全にアモルファスなレジン、及びこれらの混合物である。融点とTgはJISK7121に準拠して示差走査熱量測定法(DSC)により測定することができる。耐熱性レジンの例として、ポリブチレンテレフタレート(融点約160−230℃)、ポリエチレンテレフタレート(融点約250−270℃)等のポリエステル、フッ素レジン、ポリアミド(融点215−265℃)、ポリアリーレンスルフィド、ポリイミド(Tg:280℃以上)、ポリアミドイミド(Tg:280℃)、ポリエーテルスルホン(Tg:223℃)、ポリエーテルエーテルケトン(融点:334℃)、ポリカーボネート(融点:220−240℃)、セルロースアセテート(融点:220℃)、セルローストリアセテート(融点:300℃)、ポリスルホン(Tg:190℃)、ポリエーテルイミド(融点:216℃)等が挙げられる。
【0043】
(c)含有量
追加のポリオレフィン及び耐熱性レジンの量は、ポリオレフィン溶液の質量100%に対し好ましくは20%以下、例えば約0から約20%である。
2]微多孔膜の製造
【0044】
簡潔にするために、微多孔膜の製造は湿式法の観点から記載されているけれども、本発明はこれに限定されるものではない。したがって、1の実施態様では、本発明は、
(1)(一般に、ポリオレフィン樹脂の形態をした)ある特定のポリオレフィンと少なくとも1の希釈剤(たとえば、溶媒)とを一緒にして、混合物(たとえば、ポリオレフィン溶液)を形成する工程、
(2)該混合物をダイに通して押出して、押出成形物を形成する工程、
(3)該押出成形物を冷却して、冷却された押出成形物を形成する工程、
(4)該冷却された押出成形物をある特定の温度で延伸して、延伸されたシートを形成する工程、
(5)該延伸されたシートから溶媒または希釈剤の少なくとも一部を除去して、希釈剤の除去された膜を形成する工程、および
(6)工程(5)の膜生成物を熱セットして、仕上げられた微多孔膜を形成する工程であって、該熱セットが少なくとも2段階で実施され、その場合に少なくとも1の早い熱セット段階が、1以上の遅い熱セット段階の温度とは異なる温度かつそれよりも低い温度で実施される工程
を含む微多孔膜を製造する方法に関する。熱セット処理工程(4i)、熱ロール処理工程(4ii)、および/または熱溶媒処理工程(4iii)が、所望により工程(4)と工程(5)との間に実施されてもよい。工程(6)に引き続いて、電離放射線、親水化処理工程(7i)および/または表面塗工処理工程(7ii)を含む架橋工程(7)が、所望により工程(6)の後で実施されてもよい。
(1)ポリオレフィン溶液の調製
【0045】
ポリオレフィン樹脂は少なくとも1の希釈剤と一緒にされて、混合物が調製されることができる。あるいは、複数のポリオレフィン樹脂が、たとえば溶融ブレンド、ドライ混合等によって一緒にされて、ポリマー組成物とされ、これが次に少なくとも1の希釈剤と一緒にされて、混合物が調製されてもよい。該混合物は、所望により様々な添加剤、たとえば酸化防止剤、微細ケイ酸塩粉体(孔形成物質)等を、この混合物から製造される微多孔膜の特性の劣化を引き起こさない量、一般的には該混合物の重量基準で、総計で5重量%未満の量で含有してもよい。
【0046】
比較的高い倍率で延伸することを可能にするために、希釈剤、たとえば成膜用溶媒は、室温で好ましくは液状である。液体溶媒は、たとえば脂肪族、脂環式または芳香族炭化水素、たとえばノナン、デカン、デカリン、p−キシレン、ウンデカン、ドデカン、液状パラフィン、これらの炭化水素の沸点と同等の沸点を有する鉱油蒸留物、および室温で液状のフタル酸エステル、たとえばフタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等であることができる。安定な溶媒含有量を有する押出成形物をより有効に得るために、不揮発性液体溶媒、たとえば液状パラフィンが用いられることができる。1の実施態様では、たとえば溶融ブレンドの間はポリオレフィン組成物と混和性であるが室温では固形である1以上の固体溶媒が、液体溶媒に添加されてもよい。かかる固体溶媒は、好ましくはステアリルアルコール、セリルアルコール、パラフィンワックス等である。他の実施態様では、固体溶媒は液体溶媒なしで用いられることができる。しかし、固体溶媒のみが用いられると、押出成形物を均等に延伸することがより困難になることがある。
【0047】
液体溶媒の粘度は25℃の温度で測定されたときに、好ましくは約30〜約500cSt、より好ましくは約30〜約200cStである。25℃における粘度が30cSt未満であると、ポリオレフィン溶液が発泡し、その結果ブレンドすることが困難になることがある。他方、粘度が500cSt超であると、液体溶媒の除去が困難になることがある。
【0048】
特に必須ではないが、ポリオレフィン溶液の均一な混合は、好ましくは二軸押出機中で実施されて、高濃度ポリオレフィン溶液が調製される。希釈剤は、混合を開始する前に添加されてもよいし、または混合する間に二軸押出機の中間部分に供給されてもよい。もっとも、後者が好ましい。
【0049】
ポリオレフィン溶液の混合(たとえば、溶融ブレンド)温度は、好ましくはそのポリオレフィン樹脂の融点(「Tm」)+10℃〜Tm+120℃の範囲である。融点は、JIS K7121に準拠して示差走査熱量計法(DSC)によって測定されることができる。1の実施態様では、溶融ブレンド温度は、とりわけポリオレフィン樹脂が約130℃〜約140℃の融点を有するときは、約140℃〜約250℃、より好ましくは約170℃〜約240℃である。
【0050】
1の実施態様では、ポリオレフィン溶液中のポリオレフィン組成物の濃度は、ポリオレフィン溶液の質量基準で好ましくは約15〜約50質量%、より好ましくは約20〜約45質量%である。
【0051】
二軸押出機のスクリュー長さLとスクリュー直径Dとの比L/Dは、好ましくは約20〜約100の範囲、より好ましくは約35〜約70の範囲である。L/Dが20未満であると、熔融ブレンドが非効率になることがある。L/Dが100超であると、二軸押出機中のポリオレフィン溶液の滞留時間が長すぎることがある。この場合、過度のせん断および加熱の結果、膜の分子量が劣化し、これは望ましくない。二軸押出機のシリンダーは、好ましくは約40〜約100mmの内径を有する。
【0052】
二軸押出機では、投入されたポリオレフィン溶液の量Q(kg/時)とスクリューの回転数Ns(rpm)との比Q/Nsは、好ましくは約0.1〜約0.55kg/時/rpmである。Q/Nsが0.1kg/時/rpm未満であると、ポリオレフィンがせん断によって損傷を受けて、強度およびメルトダウン温度が減少することがある。Q/Nsが0.55kg/時/rpm超であると、均一なブレンドが達成されることができない。Q/Nsは、より好ましくは約0.2〜約0.5kg/時/rpmである。スクリューの回転数Nsは好ましくは180rpm以上である。特に必須ではないが、スクリューの回転数Nsの上限は好ましくは約500rpmである。
(2)押出
【0053】
ポリオレフィン溶液の成分は押出機中で熔融ブレンドされ、ダイから押出されることができる。他の実施態様では、ポリオレフィン溶液の成分は押出され、次にペレット化されることができる。この実施態様では、ペレットは第二の押出機中で熔融ブレンドされ、押出されて、ゲル状の成型物またはシートにされることができる。どちらの実施態様でも、ダイは矩形の口金を有するシート形成ダイ、二重円筒型中空ダイ、インフレーションダイ等であることができる。ダイギャップは決定的に重要ではないけれども、シート形成ダイの場合、ダイギャップは好ましくは約0.1〜約5mmである。押出温度は好ましくは約140〜約250℃であり、押出速度は好ましくは約0.2〜約15m/分である。
(3)冷却された押出成形物の形成
【0054】
ダイからの押出成形物は冷却されて冷却された押出成形物を形成し、これは一般に高ポリオレフィン含有量のゲル状の成型物またはシートの形態をしている。冷却は好ましくは、少なくともゲル化温度まで、約50℃/分以上の冷却速度で実施される。冷却は好ましくは約25℃以下まで実施される。このような冷却は、成膜用溶媒によって分離されたポリオレフィンのミクロ相をつくる。一般に、よりゆっくりした冷却速度は、より大きい擬似セル単位を有するゲル状シートをもたらし、その結果より粗な高次構造となる。他方、より大きい冷却速度は、より密なセル単位をもたらす。冷却速度が50℃/分未満であると、結晶化度が増加して、好適な延伸性を有するゲル状シートを得ることがより困難になることがある。使用に適した冷却方法は、押出成形物を冷却媒体、たとえば冷却空気、冷却水等に接触させる方法、押出成形物を冷却ロール等に接触させる方法を含む。
【0055】
高ポリオレフィン含有量とは、冷却された押出成形物が、ポリオレフィン組成物の樹脂から誘導されたポリオレフィンを、該冷却された押出成形物の質量基準で少なくとも約15%、たとえば約15〜約50%含むことを意味する。ポリオレフィン含有量が、冷却された押出成形物の約15%未満または50%超であると、微多孔膜を形成することがより困難になることがある。冷却された押出成形物は、好ましくはポリオレフィン溶液のポリオレフィン含有量と少なくとも同じ大きさのポリオレフィン含有量を有する。
(4)冷却された押出成形物の延伸
【0056】
一般に高ポリオレフィン含有量のゲル状の成型物またはシートの形態をしている冷却された押出成形物は、次に少なくとも1方向に延伸される。何らかの理論またはモデルに束縛されることは望まないけれども、ゲル状シートは、希釈剤または溶媒を含有しているので、均一に延伸されることができると考えられる。ゲル状シートは好ましくは、たとえばテンター法、ロール法、インフレーション法またはこれらの組み合わせによって加熱された後に所定の倍率まで延伸される。延伸は、一軸方向または二軸方向に実施されることができるけれども、二軸延伸が好ましい。二軸延伸の場合、同時二軸延伸、逐次延伸または多段階延伸(たとえば、同時二軸延伸と逐次延伸との組み合わせ)のいずれもが用いられることができるけれども、同時二軸延伸が好ましい。どちらの方向への延伸量とも同じである必要はない。
【0057】
この延伸工程の延伸倍率は、一軸方向の場合、たとえば2倍以上、好ましくは3〜30倍であることができる。二軸延伸の場合、延伸倍率は、いずれの方向にもたとえば3倍以上、すなわち面積倍率で9倍以上、たとえば16倍以上、たとえば25倍以上であることができる。この延伸工程の例としては約9倍〜約49倍の延伸を含むだろう。ここでも、どちらの方向への延伸量とも同じである必要はない。9倍以上の面積倍率であれば、微多孔膜の突刺強度が改善される。面積倍率が、たとえば400倍超であると、延伸装置、延伸操作等が大規模延伸装置を必要とし、これは操作するのが困難になることがある。
【0058】
良好な微多孔構造を得るために、この延伸工程の延伸温度は比較的高く、好ましくは、冷却された押出成形物の合計ポリエチレン含有物のおよその結晶分散温度(「Tcd」)〜およその融点(「Tm」)であり、たとえば合計ポリエチレン含有物のTcd〜Tmの範囲である。延伸温度がTcdよりも低いと、合計ポリエチレン含有物の軟化が不十分すぎるためにゲル状シートが延伸によって容易に破断して、高倍率延伸を達成することができないと考えられる。
【0059】
結晶分散温度は、ASTM D4065に準拠して動的粘弾性の温度特性を測定することによって決められる。本発明の合計ポリエチレン含有物は約90〜100℃の結晶分散温度を有するので、延伸温度は約90〜125℃、好ましくは約100〜125℃、より好ましくは105〜125℃である。
【0060】
上記の延伸は、ポリオレフィン、たとえばポリエチレンのラメラ間の解裂を引き起こして、ポリオレフィン相をより微細にし、多数のフィブリルを形成する。フィブリルは三次元網状組織構造を形成する。延伸は、微多孔膜の機械的強度を改善しその孔を拡大して、微多孔膜を電池セパレーターとして使用するのに適したものにすると考えられる。
【0061】
所望の特性に応じて、厚さ方向に温度分布を有する延伸が実施され、さらに改善された機械的強度を有する微多孔膜を得ることもできる。この方法の詳細な説明は特許第3347854号に示されている。
(5)溶媒または希釈剤の除去
【0062】
溶媒または希釈剤の少なくとも一部を除去(洗い流し、置換または溶解)することを目的として、洗浄溶媒が用いられる。ポリオレフィン組成物の相は希釈剤または溶媒の相から相分離されているので、溶媒または希釈剤の除去は微多孔膜をもたらす。溶媒または希釈剤の除去は、1以上の適当な洗浄溶媒、すなわち膜から液体溶媒を移動させる能力のある洗浄溶媒を用いることによって実施されることができる。洗浄溶媒の例は、揮発性溶媒、たとえば飽和炭化水素、たとえばペンタン、ヘキサン、ヘプタン等、塩素化炭化水素、たとえば塩化メチレン、四塩化炭素等、エーテル、たとえばジエチルエーテル、ジオキサン等、ケトン、たとえばメチルエチルケトン等、直鎖状フッ化炭素、たとえばトリフルオロエタン、C14等、環式ヒドロフルオロカーボン、たとえばC等、ヒドロフルオロエーテル、たとえばCOCH、COC等、パーフルオロエーテル、たとえばCOCF、COC等およびこれらの混合物を含む。
【0063】
延伸された膜の洗浄は、洗浄溶媒中への浸漬および/または洗浄溶媒のシャワー掛けによって実施されることができる。用いられる洗浄溶媒は、延伸された膜の100質量部当たり好ましくは約300〜約30,000質量部である。洗浄温度は普通約15〜約30℃であり、所望であれば、洗浄の間加熱が実施されてもよい。洗浄の間の加熱温度は好ましくは約80℃以下である。洗浄は好ましくは、残留液状希釈剤または溶媒の量が、押出前にポリオレフィン溶液中に存在していた液体溶媒の量の約1質量%未満になるまで実施される。
【0064】
希釈剤または溶媒を除かれた微多孔膜は、加熱乾燥方法、風乾(たとえば、移動する空気を用いる空気乾燥)方法等によって乾燥されて、膜から残留揮発性成分、たとえば洗浄溶媒が除去されることができる。洗浄溶媒の有意の量を除去する能力のある任意の乾燥方法が、用いられることができる。好ましくは、実質的にすべての洗浄溶媒が乾燥の間に除去される。乾燥温度は好ましくはTcdに等しいかまたはそれよりも低く、より好ましくはTcdよりも5℃以上低い。残留洗浄溶媒が微多孔膜の(乾燥基準で)100質量%当たり好ましくは5質量%未満、より好ましくは3質量%未満になるまで、乾燥は実施される。不十分な乾燥は望ましくないことに、後続の熱処理によって微多孔膜の空孔率の減少を招き、その結果不満足な透過性をもたらすことがある。
(6)熱処理
【0065】
工程(5)の膜生成物は、少なくとも2の段階を有する熱セット工程において所定の幅に熱処理(熱セット)される。膜を熱セットすることは、結晶体を安定化させ、膜中に均一なラメラをつくると考えられる。熱セット段階は一般に、膜の端部を所望の幅に固定して実施される。慣用の方法、たとえばテンター法またはロール法が用いられることができる。各段階の熱セット温度は、好ましくは約Tcdより20℃下(「Tcd−20℃」)〜Tmの範囲である。さらに、少なくとも一方の早い(上流の)熱セット段階は、他方の遅い(下流の)熱セット段階の温度とは異なりかつそれよりも低い温度で実施される。もっとさらには、第一の段階の熱セットは、約Tcdの上10℃の(Tcdよりも10℃熱い)(「Tcd+10℃」の)温度以下で、好ましくは約Tcd−10℃〜約Tcdの範囲の温度で実施される。第一の段階(すなわち、「最初の」または最上流の熱セット段階)と最後の段階(すなわち、「最終の」または最下流の熱セット段階)との間の温度差は、約15℃以上、好ましくは約20℃以上、より好ましくは25℃〜40℃以上である。1の実施態様では、少なくとも3の熱セット段階が用いられる。他の実施態様では、少なくとも5の熱セット段階が用いられる。
【0066】
低すぎる熱セット温度を用いると、適切な突刺強度、引張破断強度、引張破断伸びおよび熱収縮抵抗を有する膜を製造することをより困難にすることがあり、他方、高すぎる熱セット温度を用いると、十分な透過性の膜を製造することがより困難になることがあると考えられる。
【0067】
膜は、一般的には約1〜約200秒間、典型的には20〜約90秒間、たとえば約25〜の約80秒間の範囲の全段階にわたっての合計時間、熱セットされる。1段階当たりの時間は独立に選択されることができる。たとえば、各段階における各熱セット時間は、0.2〜195秒間、または約5〜約50秒間の範囲であることができる。1の実施態様では、ポリマー微多孔膜は、ポリオレフィン、たとえばポリエチレン、またはポリエチレンおよびポリプロピレンを含み、第一の熱セット段階の温度はポリエチレンのTcdよりも10℃を超えて熱くない。一般に、熱セット段階は上流から下流に、その間にプロセス工程を介在させないで配置されるが、これは必須ではない。たとえば、1以上のロール段階、たとえば加熱ロール段階が熱セット段階の間に用いられることができる。
【0068】
ポリマー微多孔膜を加熱すると、一般に膜サイズの収縮を引き起こす。熱セットの間、膜の端部は、たとえば膜の端部を固定するテンタークリップによって把持され、加熱の間の収縮しようとする傾向は膜の面内に張力を生じさせ、この張力は膜の両反対端に配置されたクリップ対の把持によって抗される。クリップの対は一般に、対向する一対の連続した(膜の各端部に一つの)レールまたは軌道に沿って組み込まれ、かつ膜が製造ラインに沿って下流から上流に機械方向に進むにつれて、所望により熱セットプロセスが連続的に操作されることができるように、クリップの閉鎖/開放手段が設けられる。熱セット段階の間、膜幅を一定に保つ経路を、あるいは膜サイズの、たとえばTD、機械方向(「MD」)、またはMDおよびTDの両方における減少をもたらす経路をテンタークリップがたどるように、レールまたは軌道が設定されることができる。たとえば、クリップの経路は、最初の幅(TD)よりも約1%〜約30%、または約5%〜約20%少ない範囲の、熱セット前の最初の幅から最終のサイズまでの幅の減少を膜に生じさせるような経路であることができる。
【0069】
1の実施態様では、膜はポリエチレン、またはポリエチレンおよびポリプロピレンを含み、最初の熱セット段階の温度は、ポリエチレンのTcdよりも20℃下の(Tcdよりも20℃冷たい)温度である。任意的に、一連の各熱セット段階の温度は、先行する熱セット段階の温度と同じまたはそれよりも高められる。たとえば、1の実施態様は5の熱セット段階、すなわち最初の段階、該最初の段階の直ぐ下流の第二の段階、該第二の段階の直ぐ下流の第三の段階、該第三の段階の直ぐ下流および最終の段階の直ぐ上流の第四の段階、ならびに最終の段階を有する。各段階の温度は単調に増加し、それから横ばいになることができ、たとえば最初の段階の温度は、たとえば85℃〜95℃の範囲、たとえば90℃であり;第二の段階の温度は、たとえば95℃〜115℃の範囲、たとえば100℃または110℃であり;第三の段階の温度は、たとえば115℃〜125℃の範囲、たとえば110℃または120℃であり;第四の段階の温度は、たとえば115℃〜127℃の範囲、たとえば127℃であり;および最終の段階の温度は、たとえば120℃〜127℃の範囲、たとえば127℃である。
【0070】
「段階の温度」の語は、その段階内の平均温度を意味し、これはたとえば、(一般に機械方向に沿って)その段階の内側の様々な点に熱電対を置き、そして次に該熱電対の値の数値平均(算術平均)をとることによって測定されることができる。
【0071】
1の実施態様では、ポリマー微多孔膜は(a)1x10未満、たとえば約2.5x10〜9x10の範囲のMwおよび約3〜約100のMWDを有する第一のポリエチレン樹脂約50〜約80%、(b)1x10以上、たとえば約1.1x10〜約3x10の範囲のMwおよび約3〜約100のMWDを有する第二のポリエチレン樹脂約10〜約30%、ならびに(c)5x10以上、たとえば約8x10〜約1.5x10の範囲のMwおよび約1〜約100のMWDおよび80J/g以上の、たとえば約100〜約120J/gの範囲の融解熱を有するポリプロピレン樹脂約0〜約40%を含有し、これらのパーセントはポリオレフィン組成物の質量基準である。以下の表は、かかるポリオレフィン組成物から製造された膜についての選択された熱セット条件の例を含む。

【0072】
一実施態様では、膜の製造方法は、稀釈剤又は溶剤の少なくとも一部を除いた後の微多孔膜の伸長工程(乾燥伸張又は乾燥延伸といわれる)を含む。この場合、設定される熱セット(heat-setting)は、一般的に乾燥延伸の後、例えば、乾燥延伸直後に行われる。乾燥延伸は一軸延伸、二軸延伸又はそれらを組み合わせることができ、PCT特許出願WO2008/016174及びWO2007/117042(引用により全てを本明細書に組み入れる)の実施例に述べられているような従来の方法で行うことができる。乾燥延伸は初期のサイズから最終サイズへ膜の平面積が変わることにより特徴付けられる。このサイズの変化は、一対の連続一対のレールまたは軌道上を移動する、対になった向き合うテンタークリップ(tenter clips)で膜の端を固定することにより行うことができる。レールが互いに離れるように配置されているときは、向き合うテンタークリップ間の距離は大きくなり、膜は伸長する。乾燥延伸工程の下流終点(downstream end)は、膜がそれ以上伸長しない点、例えば、レール間の距離が大きくならなくなったときであると定義できる。乾燥延伸工程の終点の固定したサイズ(又はそれより小さいサイズ)での膜の熱セットはこの乾燥延伸工程の終了後直ぐに始めることができる。
【0073】
各熱セット工程における熱セットは従来の熱セットの条件下で行うことができる。2つのそのような条件は、「熱固定(thermal fixation)」又は「熱緩和(thermal relaxation)」といわれる。用語「熱固定」は、例えばテンタークリップにより乾燥延伸中に選択した伸びの倍率を維持しながら行われる熱セットをいう。用語「熱緩和」は、例えば向かい合うテンタークリップの対により乾燥延伸中の伸びよりも小さい伸び倍率になるように熱セットが行われることをいう。
【0074】
ある実施態様では、熱セット工程は連続して行うことができる。別の実施態様では、熱セット工程は、半連続的に、又は間欠的に行われる。例えば、膜の乾燥延伸、その後適当な時間の経過後に、熱セットを行うことができる。必ずしも必要ではないが、膜の幅の縮小量は各熱セット工程で別々に決定できる。テンタークリップの軌道は、熱セット工程において、伸長方向に、(例えば熱セット工程(6)の開始時の)膜のサイズと比べて約0.7から約0.99倍の最終倍率となるよう、膜が、伸長した向きに緩和(つまり縮小)するように決めることができる。膜は熱セット工程(6)の開始時の膜のサイズより、約1%から約30%、好ましくは約5%から約20%小さい比率で緩和できる。膜は、TD、MD又は両方向に緩和できる。
【0075】
熱セット工程は、微多孔膜に膜全体にわたりより均一な高い透過性を与えることが発見された。熱セット工程の後、微多孔膜はTDの方向に透過性の標準偏差(例えば、約10から約16(秒)以下)、105℃での10%以下のTD方向の熱収縮率(例えば、約0.5%から約5%以下)、130℃で10%以下のTD方向の熱収縮率(例えば、約10%から約20%以下)、及び約140℃で、溶融状態での20%以下のTMA収縮(例えば約1%から約20%以下)を示す。
【0076】
熱セット工程の後、アニーリング処理を行うことができる。アニーリングは、微多孔膜に力又は荷重が負荷されない点で、熱セットと異なり、例えば、ベルトコンベヤーのついた加熱チャンバー、又は空気フローティングタイプ加熱チャンバーを用いて行うことができる。アニーリングは、熱セットに続いてテンタークリップを緩めて行うこともできる。アニーリング温度は好ましくは、Tm以下、より好ましくは約60℃から約Tm-5℃の範囲である。アニーリングは微多孔膜の透過性と強度を向上させると信じられている。
【0077】
任意に、工程(4)と(5)の間で、伸長したシートは熱セットできる。この熱セット法は工程(6)について先に述べたのと同じ方法で行うことができるが、これが必要というわけではなく、従来の単回熱セットを使用できる。
【0078】
さらに、工程(4)の伸長したシートの少なくとも一表面は(4)から(6)の何れかの工程の後1以上のヒーターローラーと接触しても良い。このローラーの温度はTcd+10℃からTmの範囲が好ましい。伸長したシートと加熱ロールの接触時間は約0.5秒から約1分が好ましい。この加熱ロールは平滑な又は粗い表面を有してもよい。この加熱ロールは溶剤を除去するため吸い込み機能を有しても良い。特に重要ではないが、ローラー加熱システムの一例はローラーの表面に加熱した油を保持することを含んでも良い。
【0079】
さらに、伸長したシートは工程(4)と(5)の間で高温の溶剤と接触しても良い。高温溶剤処理は、伸長により形成された小繊維群を、比較的厚い繊維の幹を伴う葉脈状の形状に変え、大きな細孔と適度な強度と透過性を有する微多孔膜を与える。用語「葉脈状の形状」とは、小繊維群が、厚い繊維の幹部分と幹から複雑な網状構造に延びた薄い繊維群を有することをいう。高温溶剤処理法の詳細はWO2000/20493に記載されている。
(7)架橋
【0080】
熱セットされた微多孔膜はα-線、β-線、γ-線、電子線等の電離放射線により架橋できる。電子線を放射する場合、電子線の量は約0.1から約100Mradが好ましく、加速電圧は約100から約300kVが好ましい。架橋処理は微多孔膜のメルトダウン温度を上げる。
(7i)親水化処理
【0081】
熱セットされた微多孔膜は親水化処理を受けても良い(膜をより親水性にする処理)。親水化処理は、モノマーグラフティング処理、界面活性剤処理、コロナ放電処理等でも良い。モノマーグラフティング処理は、架橋処理の後に行うことが好ましい。
【0082】
熱セットされた微多孔膜の親水化を行う界面活性剤処理の場合、非イオン系界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤のいずれも使用できるが、非イオン系界面活性剤が好ましい。微多孔膜は、界面活性剤の水溶液、又はメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のような低級アルコールにさっと浸すことができまた、ドクターブレード法によりこの溶液でコートすることができる。
(7ii)表面コート処理
【0083】
必ずしも必要ではないが、工程(6)を経た熱セットされた微多孔膜は、膜が電池のセパレーターとして使用されるとき、メルトダウンする性質を改善するため多孔性ポリプロピレン、多孔性フッ素樹脂、例えば、ポリビニリデンフルオライドやポリテトラフルオロエチレン、多孔性ポリイミド、多孔性硫化ポリフェニレン等でコートすることができる。コーティングに使用されるポリプロピレンは、約5,000から約500,000のMw、25℃で100グラムのトルエン中に約0.5グラム以上の溶解度をもつことが好ましい。そのようなポリプロピレンは、約0.12から約0.88の割合のラセミ2連子をもつことが好ましい。ラセミ2連子は2つの隣接するモノマー単位が互いに鏡像関係の異性体である構造単位である。表面コーティング層は、例えば、良い溶剤に溶かした上記のコーティング樹脂の溶液を微多孔膜に使用し、樹脂の濃度を高くするために溶剤の一部を除き、それにより樹脂相と溶剤相が分離する構造を形成し、その後溶剤の残りを除くことにより作成できる。このこのため良い溶媒の例は、トルエン又はキシレンのような芳香族化合物を含む。
[3]微多孔膜の構造、性質及び組成
(1)構造
【0084】
本発明の微多孔膜はこの膜を作るために使用されたポリマー樹脂に由来する組成をもつ多孔性膜である。本明細書で使用する場合、用語「細孔サイズ」は、細孔がほぼ円筒状である場合の細孔の直径のようなものである。膜の厚さは一般に約1から100μm、通常、5から50μmの範囲である。
【0085】
本発明の微多孔膜は、ドメインが粗大であるため比較的大きい内部空間と孔を有しているので、圧縮すると、空気の透過性はほとんど変わらずに、適した透過性と電解液吸収性をもつ。この微多孔膜はまた、電池のセパレーターとして使用されたときに、シャットダウン温度とシャットダウン速度のような膜の安全性に影響を及ぼす比較的小さい内部空間と孔も有する。したがって、リチウムイオン電池、例えばこのような微多孔膜により形成されたセパレーターを含むリチウムイオン二次電池は、高い安全性能を保持しながら適した生産性とサイクル性を有する。
(2)性質
【0086】
本発明の微多孔膜は、20秒以下(Gurley値)(例えば、約10から約16秒以下)の、TD方向で膜の透気度(air permeability)(16μmの膜の厚さに標準化)の標準偏差、105℃で10%以下(例えば、約0.5から約5%以下)TD方向の熱収縮比、130℃で20%以下(例えば、約10から約15%以下)のTD熱収縮比、及び約140℃、溶融状態で20%以下(例えば、約1から約10%以下)のTMA収縮、また高いメルトダウン温度を示し、優れた電池セパレーターに、特に、例えばリチウムイオン電池用のセパレーターとなる。
【0087】
熱セット工程を出る膜は、膜を挟んでいるテンタークリップのため端に沿って変形している。一般に膜のこの部分は、端に近い膜の部分を細長く切り取ることで除去される。この切除は連続的に行うことができる。例えば、膜の端から(TDに沿って)内側、望む距離に、機械方向に切断ブレードを据えることにより行える。端の部分の材料は切り取られ、工程から取り去られる。一般に、この細長く切除する工程(スリッティング)は、熱セット工程を出た膜の幅を、約90%から約95%まで小さくする。このスリッティング工程は、例えば、電池の製造用の所定の最終幅をもつ微多孔膜を製造するため、別のスリッティングが下流工程で用いられる場合、「第一」スリッティング工程ということができる。
【0088】
膜を通過する膜の透気度はTD(つまり、膜全体を横切る方向)に沿って選ばれた位置で測定できる。文脈から異なる場合を除き、用語「透気度」は本明細書で使用する場合、測定値の算術平均(つまり、数平均)をいう。必ずしも必要ではないが、TDに沿ってほぼ等しい間隔を置いた測定点と膜の中心線上の複数の測定点(機械方向に平行)が透気度と透気度の標準偏差を決定するために使用される。測定点は膜の中心線にあるので、測定はスリッティング前または後で行うことができる。
【0089】
ある実施態様では、選択された透気度測定点はTDに沿い、開始点と終了点の間に置かれ、開始点と終了点は膜の中心線からTDに沿って任意の等距離にある。開始点と最終点の間の距離は、例えば、熱セット後、スリッティング前(つまり第1スリッティングと第1スリッティングの下流の何れのスリッティングの前)の膜の幅の約75%、または約80%、又は約90%、又は約95%になりうる。透気度と透気度の標準偏差は、開始点と終了点によってのみで決めることができるが、通常、TDに沿ったこれらの点と複数の点がこれらの値を決定するために使用される。例えば、5点以上、10点以上、20点以上、または40点以上が使用される。例えば、測定点の数は10点から30点の範囲にあり、これらの点は、任意に、都合の良い間隔でTDに沿って等間隔で置くことができ、例えば、隣接する測定点間の距離は約25mmから約100mmの範囲にあってもよい。
【0090】
用語「μ」は、TDに沿った測定点で決定された透気度の算術平均(Gurley 値、100cm3当たりの秒で測定)をいう。測定された透気度の標準偏差”σ”は変動の平方根として定義される。つまり、
σ=(Σ(AP-μ)2/N)1/2、ここでAPは各測定点での測定した透気度(Gurley値)であり、Nは測定点の数である。
【0091】
膜は105℃で測定された熱収縮値で特徴付けられ、これは以下のように測定できる。微多孔膜のサンプルをTDとMDに沿って切り各辺100mm(つまりTD方向に100mm、MD方向に100mm)の正方形のサンプルを得る。次にこのサンプルを8時間105℃の温度で(オーブン中で)熱平衡に達するように加熱し、次いで冷却する。MDにおける収縮率(パーセントで表される)は、加熱前のMD方向のサンプルの長さを加熱後のMD方向のサンプルの長さで割り100倍したパーセントに等しい。TD方向の収縮率(パーセントで表される)は加熱前のTD方向のサンプルの長さを加熱後のTD方向のサンプルの長さで割り100倍したパーセントに等しい。
【0092】
膜は130℃で測定された加熱収縮によっても特徴付けることができる。この値は130℃が一般に、充電と放電時のリチウムイオン二次電池の稼動温度範囲内である(この範囲の上限(シャットダウン温度)に近いが)ので特に重要である。この測定は105℃での加熱収縮の測定とは少し異なり、横断方向と平行な膜の端が一般に電池内に固定され、特に、機械方向に平行な端の中心の近辺では、横断方向の膨張又は縮小(収縮)が限られるという事実を反映している。従って、TDに沿って50mm及びMDに沿って50mmである微多孔フィルムの正方形のサンプルは、TDに平行な端を(例えばテープにより)フレームに固定し、MD方向は35mmの空間を残し、TD方向は50mmの空間を残しておく。サンプルを付けたフレームは、次に加熱され30分間、130℃で熱平衡させて加熱し、次いで冷却する。TD熱収縮は一般にMDと平行なフィルムの端が僅かに内側に(フレームの空間の中心の方向に)曲がる。TD方向の収縮率(パーセントで表される)は、加熱前のTD方向のサンプルの長さを加熱後の(フレームの内側の)TD方向のサンプルの最も短い長さで割り100倍したパーセントに等しい。
【0093】
8時間、105℃に晒した後の加熱収縮が横断方向で10%を超えるときは、この微多孔膜のセパレーターをもつ電池内で発生する熱はセパレーターの収縮を起こすことができ、セパレーターの端付近で短絡を起こしやすくする。同様に、30分間130℃に晒した後の加熱収縮率が横断方向で30%をこえるときは、この微多孔膜セパレーターを使用する電池内で発生する熱は、セパレーターの端付近で短絡を起こしやすくする。加熱収縮率は105℃で約0.5から約5%、130℃で約10%から約55%であることが好ましい。
【0094】
微多孔膜は一般に140℃以下のシャットダウン温度と145℃以上のメルトダウン温度を有する。メルトダウン温度は以下の手順で測定される。サンプルの長軸を、工程で製造されたときの微多孔膜の横断方向にあわせ、短軸を機械方向に合わせるようにして3mmx50mmの長方形のサンプルを微多孔膜から切り出す。このサンプルは10mmの固定距離(つまり上部の固定から下部の固定までの距離が10mm)で熱機械的分析装置(セイコーインスツルメント社(Seiko Instruments, Inc)から入手できるTMA/SS6000)にセットされる。下部を固定し、19.6mNの荷重が上部固定に負荷される。固定装置とサンプルが加熱出来る管に入れられる。30℃で始め、この管の内側温度は5℃/分の速度で上昇し、19.6mNの荷重下で、温度が上昇するときのサンプルの長さの変化が0.5秒の間隔で測定され、記録される。温度は200℃まで上昇する。サンプルのメルトダウン温度はサンプルが破壊される温度と定義され、一般に約145℃から約200℃の範囲の温度である。特に商業グレードの電池のセパレーターは145℃のメルトダウン温度、またはそれより高い温度が好ましく、つまり145℃以上のメルトダウン温度を有することが好ましい。
【0095】
溶融状態での最大収縮は以下の手順により測定される。メルトダウン温度の測定の手順を用いて、135℃から145℃の温度範囲で測定されたサンプルの長さが記録される。溶融状態での最大収縮は23℃で測定された固定装置の間のサンプルの長さ(L1は10mm)引く、一般に約135℃から約145℃の範囲で測定された最短長さ(L2)をL1で割った値、つまり[L1−L2]/L1x100%である。特に商業グレードの電池のセパレーターは30%の、140℃で溶融状態の熱機械的分析最大収縮を有し、それより低いパーセント、つまり20%以下が好ましい。
【0096】
好ましい実施態様では、本発明の微多孔膜も以下の性質の少なくとも1つを有している。
(a) (16μmの厚さでの値に変換して)約20から約400秒/100cm3透気度
【0097】
JIS P8117により測定された膜の透気度が20から400秒/100cm3/16μmであるとき、この微多孔膜で形成されたセパレーターを有する電池は、適当に、大きい容量と良好なサイクル性を有する。透気度が20秒/100 cm3/16μmより小さいときは、電池内の温度が140℃以上に上昇したとき、細孔が非常に大きいので細孔が十分に閉じることができないためシャットダウンが十分に起こらない。JIS P8117に従い厚さT1を有する微多孔膜について測定された透気度P1は式、P2=(p1x16)/T1により16μmの厚さでの透気度P2に変換(つまり、標準化)される。16μmの厚さの膜に相当する値に変換された透気度は[秒/100cm3/16μm]の単位で表される。
(b) 約25から約80%の空孔率
【0098】
空孔率が25%未満であるとき、微多孔膜は一般に電池のセパレーターとしてとして有用性が低い。空孔率が80%を超えるとき、微多孔膜で形成される電池のセパレーターは不十分な強度しかなく、電池の電極の短絡を起こし得ると信じられている。
【0099】
空孔率は以下の式を用いた重量法により測定される。空孔率% = 100 x (w2-w1)/w2、ここで”w1”はフィルムの実際の重量であり、”w2”は100%ポリエチレンの想定される重量である。
(c)3,000mN以上(16μmの厚さでの値に変換された値)の突刺強度(pin puncture)
【0100】
膜の突刺強度(16μmの厚さの膜の値に変換されたもの)は、微多孔膜が2mm/秒の速度で球形の末端表面(半径Rの湾曲:0.5mm)をもつ直径1mmの針で突かれたときに測定される最大荷重により表される。突刺強度が低いと(例えば、2,000mN/16μm未満)、一般に、内部短絡に対して十分な保護を与える電池を製造することはより困難である。突刺強度は3,000mN/16μm以上、例えば3,500mN/16μm以上が好ましい。
(d)60000kPa以上の引張強度
【0101】
縦方向及び横方向の両方で40,000kPa以上の引張強度(10mm幅の長方形の試験片を使用するASTM D−882により測定)は、特に電池のセパレーターとして使用される場合、適当な耐久性をもつ微多孔膜の特徴である。引張破断強度は、約80,000kPa以上、例えば約100,000kPa以上が好ましい。
(e)100%以上の引張伸度
【0102】
縦方向と横方向の両方で100%以上の引張伸長(10mm幅の長方形の試験片を使用したASTM D−882による測定)は、特に電池のセパレーターとして使用される場合、適当な耐久性を持つ微多孔膜の特徴である。
(f)加熱圧縮後の20%以下の厚さの変動率
【0103】
2.2Mpaの圧力、90℃で5分間加熱圧縮した後の厚さの変動率は、圧縮前の厚さの100%に対し、一般に20%(絶対値として表された場合)以下である。厚さは以下の(h)のようにして測定できる。厚さの変動率は、(圧縮後の平均厚さ-圧縮前の平均厚さ)/(圧縮前の平均厚さ)x100の式により計算される。
【0104】
厚さの変動率が20%以下、好ましくは10%以下の微多孔膜セパレーターを含む電池は、適度に大きい容量と良好なサイクル性を有する。
(g)700秒/100cm3以下の加熱圧縮後の透気度
【0105】
厚さT1をもつ各微多孔膜は上記の条件で加熱圧縮されJIS P8117により透気度P1について測定される。
【0106】
上記の条件で加熱圧縮されたとき、微多孔ポリオレフィン膜は一般に700秒/100cm3以下の透気度(Gurley値)を有する。そのような膜を用いる電池は適度に大きい容量とサイクル性をもつ。透気度は650秒/100cm3以下が好ましい。
(h)平均厚さ(μm)
【0107】
各微多孔膜の厚さは、幅30cmについて縦方向5cmの間隔で、接触厚み計測器で測定され、平均化される。使用する厚み計測器は、ミツヨト株式会社(Mitsutoyo Corporation)製のライトマテック(Litematic)である。膜の厚さは一般に約1から100μm、通常は10から100μmの範囲にある。
(3)微多孔膜組成物
【0108】
微多孔性ポリマー膜は、膜の製造に用いられるレジンは複数のレジンのポリマーから構成される。この膜が湿式工程で製造された場合、通常、微多孔性ポリマー膜の重量に基づいて1wt%未満の量の、わずかな洗浄溶媒及び/又は処理溶媒が含まれていてもよい。プロセスの間にポリマー分子量がわずかに分解するが、許容可能である。ポリマーがポリオレフィンであり膜が湿式工程で製造される態様において、処理の間に分子量が減少する場合があるが、たとえあったとしても、ポリオレフィン溶液のMWDに対して、膜のポリオレフィンのMWDの値が、わずか約50%、又は約1%、又はわずか約0.1%である。
ポリオレフィン
【0109】
本発明の微多孔膜の1つの態様は、(a)1x10未満、即ち、約2.5x10乃至約9x10の範囲、例えば、約4.5x10乃至約6.5x10のMw及び約3乃至約100、例えば、3.5乃至約2.5のMWDを有する、約50乃至約100%の第一ポリエチレン、(b)1x10以上のMw(例えば、約1.1x10乃至約5x10、例えば、1.5x10乃至約3x10)及び約3乃至100、例えば、約3.5乃至約20のMWDを有する、約0乃至約40%の第二ポリエチレン、並びに(c)5x10以上、例えば、8x10乃至1.5x10、のMw及び約1乃至100、例えば、約2乃至約50、又は約2乃至約6のMWD、及び90J/g以上、例えば、約100乃至約120J/gの融解熱を有する、約0乃至約50%のポリプロピレンからなる。パーセンテージは膜の容量に基づく。
(a)ポリエチレン
(i)組成
【0110】
第一ポリエチレンは1x10未満、例えば、約2.5x10乃至約9x10の範囲のMw及び約3乃至100のMWDを有する。本明細書で用いる第一ポリエチレンの非限定的な例としては、約4.5x10乃至約6.5x10のMw及び約3.5乃至約20又は約4乃至約10のMWDを有するものである。この第一ポリエチレンはエチレンホモポリマー、又はエチレンと5モル%以下のコモノマーとの共重合体でよい。この共重合体は、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、又はスチレン、あるいはこれらの組み合わせから選択される。そのような共重合体はシングルサイト触媒を用いて製造することが好ましい。
【0111】
第二ポリエチレン、例えば、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)は任意で用いられ、1x10以上、例えば、1.1x10乃至約5乃至10の範囲のMw(WMDは間違い)及び約3乃至約100の範囲のMWDを有する。本明細書で用いる第二ポリエチレンの非限定的な例の1つは約1.5x10乃至約3x10のMw及び約4乃至約10のMWDを有するものである。第二ポリエチレンはエチレンホモポリマー、又はエチレンと5モル%以下のコモノマーとの共重合体でよく、この共重合体はプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、又はスチレン、あるいはこれらの組み合わせから選択される。そのような共重合体は一部位触媒を用いて製造することが好ましい。
(ii)微多孔膜のポリエチレンの分子量分布(MWD)
【0112】
重要なことではないが、膜におけるポリエチレンのMWDは好ましくは約3乃至約100、例えば、約3.5乃至約20である。MWDが3未満である場合、より高い分子量成分のパーセンテージが高すぎて、溶融押出し成形が困難になる。一方、MWDが100以上になると、より低い分子量成分のパーセンテージが高くなり、得られた微多孔膜の強度が減少する。本発明の方法により膜を製造する間に開始レジンからいくらかのMwの分解が生じる。例えば、膜生成物の第一及び/又は第二ポリエチレンのMwは本発明の工程(1)のポリオレフィン溶液のポリオレフィン組成物における第一及び/又は第二ポリエチレンエチレンレジンのMwよりも低い。
(a)ポリプロピレン
(i)組成物
【0113】
ポリプロピレンは約5x10以上、例えば、約8x10乃至約1.5x10のMw、約1乃至約100、例えば、約2乃至約50のMWD、及び90J/g以上、例えば、約100乃至約120J/gの融解熱を有する。このポリプロピレンはプロピレンホモポリマー又はプロピレンと10モル%以下のコモノマーとの共重合体でもよい、このコモノマーはエチレン、ブテンー1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテンー1、オクテンー1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、スチレン等、及びブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン等のジオレフィンから選択される。プロピレン共重合体中のオレフィンコモノマーのパーセンテージは耐熱性、耐圧縮性、耐熱収縮性等の微多孔膜の性質を阻害しない範囲であることが好ましい。更に、本発明の方法により膜を製造する間に開始レジンのMwが減少する。例えば、膜中のポリプロピレンのMwは本発明の工程(1)のポリオレフィン溶液のポリオレフィン組成物部分にあるポリプロピレンのMwよりも低い。
【0114】
融解熱は示差走査熱量計(DSC)により決定される。このDSCはTAインスツルメンツのMDSC2920又はQ1000Tzero−DSCを用いて行い、一般的な解析ソフトウェアを用いてデータを解析する。通常、3乃至10mgのポリマーをアルミニウムパン中に封入し、室温で装置に入れる。このサンプルを−130℃又は−70℃のいずれかにまで冷却し、10℃/分の加熱速度で210℃まで加熱して、サンプルのガラス転移温度及び融解性質を評価する。このサンプルを210℃で5分間維持し、熱ヒストリーを壊す。結晶化性質は10℃/分の冷却速度で、準室温(室温付近)にまで融解したサンプルを冷却して評価する。このサンプルを低温に10分間維持し、固形状態を完全に並行化して、安定な状態にする。第二融解データはこの融解して結晶化させたサンプルを10℃/分で加熱して測定する。第二融解データは従って、制御された熱ヒストリー条件下で結晶化されたサンプルの相性質を提供する。吸熱性融解転移(第一及び第二融解)及び発熱性結晶化転移は転移の開始剤及びピーク温度について解析される。曲線の下の面積を融解熱(△H)の決定に用いる。
【0115】
1つの態様において、膜中のポリプロピレンの量は膜中のポリオレフィンの総容量の50%以下である。
他の成分
【0116】
前述の成分に加えて、本発明の膜は追加的なポリオレフィン及び/又は約170℃以上の融点又はガラス転移温度を有する耐熱性ポリマーを含むこともできる。
(a)追加的なポリオレフィン
【0117】
追加的なポリマーは、(a)ポリブテン−1、ポリペンテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリヘキセン−1、ポリオクテン−1、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、及びエチレン/αオレフィン共重合体(それぞれは1x104乃至4x106のMwを有する)及び(b)1x103乃至1x104のMw有するポリメエチレンワックスの1つ以上でよい。ポリスプリットブテン−1、ポリペンテン−1、ポリ−4−メチルペンテン、ポリヘキセン−1、ポリオクテン−1、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、及びポリスプリットスチレンはホモポリマーに限定されない、しかし、他のαオレフィンを含む共重合体でもよい。
(b)耐熱性ポリマー
【0118】
耐熱性ポリマーは好ましくは(i)約170℃以上の融点を有するアモルファスポリマーこのポリマーは部分的に結晶があってもよい、及び/又は(ii)約170℃以上のTgを有するアモルファスポリマーである。融点及びTgはJISK7121に基づいて示差走査熱量計(DSC)により決定される。耐熱性ポリマーの例としては、ポリポリブチレンテレフタレート(融点:約160乃至230℃)、ポリエチレンテレフタレート(融点:250℃乃至270℃)等、フルオロレジン、ポリアミド類(融点:215na 265℃)、ポリアリーレンスルフィド、ポリイミド(Tg:280℃以上)、ポリアミドイミド類(Tg:2870℃)、ポリエーテルスルフィド(Tg:223℃)、ポリエーテルエーテルケトン(融点:334℃)、ポリカーボネート類(融点:220乃至240℃)、セルロースアセテート(融点:220℃)、セルローストリアセテート(融点:300℃)、ポリスルホネート(Tg:190℃)、ポリエーテルイミド(融点:216℃)等がある。
(c)含量
【0119】
膜中の追加的なポリオレフィン及び耐熱性ポリポリオレフィンの総量は膜の容量を100%とすると、20%以下であることが好ましい。
[4]電池セパレーター
【0120】
本発明の微多孔膜は電池セパレーターとして有用である。1つ以上の態様において、本発明の微多孔膜は約3乃至約200μm、又は約5乃至約50μm、又は約7乃至約35μmの厚みを有するが、最も好適な厚みは製造される電池のタイプに依存する。
[5]電池
【0121】
重要ではないが、本発明の微多孔膜は一次及び二次電池のセパレーターとして、特にリチウムイオン二次電池、リチウム−ポリマー二次電池、ニッケル−ハイドロゲン二次電池、ニッケル−カドミウムにジスルフィド電池、ニッケル−亜鉛二次電池、銀−亜鉛二次電池、特にリチウムイオン二次電池のセパレーターとして有用である。
【0122】
このリチウムイオン二次電池はセパレーターを介して積層された陽極及び陰極を含み、セパレーターは、通常電解溶液(電解液)の形で電解液を含む。電極の構造は重要ではない。従来の構造が好適である。電極の構造は例えば、陽極と陰極が正反対に設置されているディスク形状のコインタイプのもの、陽極と陰極が平面状に積層されている積層タイプのもの、リボン形状の陽極と陰極がドーナツ状に巻きつけられているものである。
【0123】
陽極は通常電流コレクタを含み、電流コレクタ上に形成されたリチウムイオンを吸収及びディスチャージすることができる正極活性物質層を含む。正極活性物質は遷移金属酸化物、リチウム及び遷移金属の複合酸化物(リチウム複合酸化物)、遷移金属硫化物等の無機物質である。この遷移金属はV、Mn、Fe、Co、Ni等である。リチウム複合酸化物の好適な例としては、リチウムニッケレート、リチウムコバルトエート、リチウムマグネート、α−NaFeOに基づく、薄層上のリチウム三価複合物を含む。陰極は電流コレクタ及びこの電流コレクタの上に形成された負の電極活性物質層を含む。この負の電極活性物質層は、天然グラファイト、人口グラファイト、コーク、カーボンブラック等の炭素系物質である。
【0124】
この電解溶液は無機溶媒にリチウム塩を溶解することにより得られる溶液である。このリチウム塩はLiClO、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiBF、LICFSO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、Li10Cl10、LiN(CSO、LiPF(CF、LiPF(C、リチウムの低級脂肪族カルボン酸塩、LiAlCl等である。これらのリチウム塩は単独又は組合わせて用いることができる。有機溶媒は、エチレンカルボネート、プロピレンカルボネート、エチルメチルカルボネート、γ−ブチルカルボネート等の高い沸点及び高い誘電率を有する有機溶媒;及び/又はテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジオキソラン、ジメチルカルボネート、ジメチルカルボネート等の低い沸点及び低い粘度を有する有機溶媒でよい。これらの有機溶媒は単独又は組み合わせて用いることができる。高い誘電率を有する有機溶媒は高い粘度を有し、低い粘度を有するものは、通常低い誘電率を有することから、これらの混合物を用いることが好ましい。
【0125】
電池を組み立てるときには、セパレーターを電解液に浸して、イオン透過性を引き起こさせる。この含浸処理は通常室温で電解質溶液中に微多孔膜を浸すことにより行われる。円筒形の電池を組み立てる場合、例えば、電極シート、微多孔膜セパレーター、及び負極シートを順番に積層し、得られた積層体をドーナツ型の電極集合体に巻きつける。得られた電極集合体を電池缶に詰め込み/成形して、前述の電解溶液に浸して、正極の末端に安全バルブを取り付けて蓋をした電池をガスケットにより電池缶に詰めて、電池にする。
【0126】
優先権の基礎となる出願を含む、全ての試験、試験手順、及び他の引用文献は、それらの開示が本発明と矛盾せず、参照による援用が法律において認められている全ての法域において、参照により本明細書に援用する。
【0127】
例示的な形態で説明をしてきたが、特に本発明の精神及び範囲を逸脱せずに、他の変更を当業者が容易に行えることができることは理解されるであろう。即ち、添付の特許請求の範囲は本明細書の実施例及び各種説明に限定されるべきではなく、本発明の属する分野の当業者により均等であるとされている全ての技術的特長を含む、本明細書における特許性のある全ての技術的特長から構成されている。
【0128】
数値限定の下限値及び上限値が列挙されているが、任意の下限値と上限値を組み合わせた範囲も意図するものである。
【0129】
本発明は以下の実施例を参照することにより詳細に説明される。以下の実施例は本願の範囲を限定するものではない。
実施例1
【0130】
(a)5.6x10のMw及び4.05のMWDを有する第一ポリエチレンを80%、(b)1.9x10のMw、及び5.09のMWDを有する第二ポリプロピレンを20%、(c)ポリプロピレンレジンは添加しない、からなるポリオレフィン組成物を乾燥ブレンドにより調製した。パーセンテージはポリオレフィン組成物の容量に基づく。この組成物中のポリエチレンレジンは135℃の融点、100℃の結晶分散温度、及び14.4のMWDを有する。
【0131】
得られたポリオレフィン組成物の容量に基づき25部を内部直径が58mmで、L/D比が42のストロングブレンド二軸押出し成形器に装填し、容量に基づき75部の液体パラフィン(40℃で50cst)をサイドフィーダーを通じて、この2軸押出し成形器に供給した。溶融ブレンドは210℃で200rpmで行って、ポリエチレン溶液を得た。このポリエチレン溶液を押出し成形器に設置されているTダイから押出し成形した。この押出し成形物を40℃に調整された冷却ロールに通して冷却し、冷却された押出し成形物、即ち、ゲル様シートを製造した。
【0132】
テンター延伸器を用いて、ゲル様シートを115℃で縦軸及び横軸のそれぞれに、同時2軸延伸で、5倍に延伸した。この延伸されたゲル様シートを25℃に調整された塩化メチレンの浴槽に浸し、ポリオレフィン溶液中に存在する液体パラフィンの量が、容量により1%以下になるまで液体パラフィンを除去して、その後室温での空気流れにより乾燥させた。乾燥した膜を90℃で10秒間の第一工程、100℃で10秒間の第二工程、120℃で10秒間の第三工程、127℃で10秒間の第四工程、及び/又は127℃で10秒間の第五工程の5つの工程により、テンタータイプマシーンにより熱セットして微多孔膜を製造した。はじめの4つの熱セット工程における縦方向のフィルム幅は一定に保たれていた。最終熱セット工程において、第一熱セット工程における縦方向のフィルム幅に対して最終的に6.5%縮小された。
実施例2
【0133】
乾燥膜の熱セット工程を、90℃で10秒の第一工程、127℃で10秒の第二工程、127℃で10秒の第三工程、127℃で10秒の第四工程、及び127℃で10秒の第五工程で行った以外は、実施例1を繰り返して、微多孔膜を製造した。
実施例3
【0134】
乾燥膜の熱セット工程を、100℃で10秒の第一工程、100℃で10秒の第二工程、1100℃で10秒の第三工程、127℃で10秒の第四工程、及び127℃で10秒の第五工程で行った以外は、実施例1を繰り返して、微多孔膜を製造した。
実施例4
【0135】
乾燥膜の熱セット工程を、90℃で10秒の第一工程、120℃で10秒の第二工程、127℃で10秒の第三工程、127℃で10秒の第四工程、及び127℃で10秒の第五工程で行った以外は、実施例1を繰り返して、微多孔膜を製造した。工程4におけるフィルム幅は工程1におけるフィルム幅(TD)よりも熱収縮により、16.1%小さかった。
実施例5
【0136】
実施例1をポリオレフィン組成物が容量により、50%の第一ポリエチレンレジン、及び容量により30%のポリプロピレンレジン(1.1x106のMe,5.0のMWD、及び114J/gの融解熱を有するを含む以外は実施例1と同様に行った。乾燥膜の熱セットは90℃、10秒の第一工程、120℃で10秒の第二工程、127℃で10秒の第三工程、127℃で10秒の第四工程、及び/又は127℃で10秒の第五工程で行って、微多孔膜を製造した。
比較例1
【0137】
乾燥膜の熱セットを各工程127℃で10秒で行った以外は、実施例1を繰り返して、微多孔膜を製造した。
比較例2
【0138】
乾燥膜の熱セットにおいて、第一工程を115℃で10秒行う以外は、比較例1を繰り返して、微多孔膜を製造した。
比較例3
【0139】
乾燥膜の熱セットを各工程90℃で10秒で行った以外は、比較例1を繰り返して、微多孔膜を製造した。
比較例4
【0140】
乾燥膜の熱セットを、127℃で10秒の第一工程、他の工程を60℃で10秒で行った以外は実施例1を繰り返して、微多孔膜を製造した。
比較例5
【0141】
第四工程の縦方向のフィルム幅が第一工程のフィルム幅よりも16.1%小さい熱セットを行う以外は、比較例4を繰り返した。
比較例6
【0142】
ポリオレフィン溶液が30%のポリオレフィンレジン組成物から成る(を含む)、乾燥膜の熱セットを127℃で10秒の各工程で行った以外は、実施例5繰り返して、微多孔膜を製造した。
性質
【0143】
実施例及び比較例で得られた多層微多孔膜の性質をセクション[3](2)で説明した方法で測定した。結果を表1に示す。単位は以下に示す。
【表1】



【0144】
表1より、本発明の微多孔膜は、バランスのよく取れた性質及び高い均一性を有することがわかる。本発明の微多孔膜は熱圧縮の後の厚みの変化及び透気度がわずかであり、優れた電解溶液吸収性のほかにも、好適な透気度、突刺強度、引張破裂強度、引張破裂伸び、及び耐熱収縮性を有する。一方、比較例の微多孔膜は縦方向の透過性において大きなばらつきが見られ、このことは均一な製品を製造する上で好ましくない。比較例3ではこのようなことは観察されなかったが、この例では突刺強度が好ましくなかった。
【0145】
本発明の微多孔性ポリオレフィン膜により形成された電池セパレーターは好適な安全性、耐熱性、貯蔵性質、及び生産性を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微多孔膜を製造する方法であって、前記方法は、
微小孔性重合膜を少なくとも上流段階及び下流段階で熱セットすることを含み、前記上流段階の温度は前記下流段階の温度より少なくとも15℃低い、前記方法。
【請求項2】
前記微小孔性重合膜がポリエチレンを含み、及び前記第一段階の温度はポリエチレンのTcdより10℃を超えた高い温度ではない、請求項1の方法。
【請求項3】
前記微小孔性重合膜は熱セットの前に少なくとも一つの平面方向の第一のサイズを持ち、熱セットの後に一つの平面方向の第二のサイズを持ち、前記第二のサイズは前記第一のサイズより5から20%の範囲で小さい、請求項1又は2の方法。
【請求項4】
請求項1の方法であって、(6)段階的熱セット工程の前に更に以下の工程を含む:
(1)ポリオレフィン組成物及び少なくとも1つの希釈剤を組合わせて混合物を形成する工程であり、前記ポリオレフィン組成物は(a)1.0x106未満の重量平均分子量(Mw)、3乃至100の分子量分布(MWD)を有する50乃至100%の第一ポリエチレンレジン、(b)1x106以上のMw、3乃至100のMWDを有する0乃至40%の第二ポリエチレンレジン、(c)5x10以上のMw、1乃至100のMWD、及び90J/g以上の融解熱を有する0乃至50%のポリプロピレンレジンであり、各パーセントはポリオレフィン組成物の質量に基づき、
(2)混合物をダイを通して押出し、押出し成形物を成形する工程、
(3)前記押出し成形物を冷却して、冷却された押出し成形物を成形する工程、
(4)組み合わされたポリエチレンの冷却された押出し成形物の約Tcdから約Tmの延伸温度で少なくとも1つの方向に前記冷却された押出し成形物を延伸して、延伸されたシートを形成する工程、及び
(5)延伸されたシートから少なくとも一部の希釈剤を除去し微小孔性重合膜を形成する工程。
【請求項5】
請求項4の方法であって、更に以下の工程の少なくとも一つを含む:
(4)及び(5)の工程の間の(4i)熱セット工程であり、前記延伸されたシートが延伸温度±5℃の温度で熱セットされ;
(4i)工程に続き及び(5)工程の前の(4ii)加熱ロール処理工程であり、延伸されたシートをポリオレフィン組成物のTcdからポリオレフィン組成物の溶融点+10℃の範囲の温度で加熱されたローラに接触させ;
(4ii)工程に続き、及び(5)工程の前の(4iii)加熱溶媒処理工程であり、前記延伸されたシートを加熱溶媒と接触させ;
(6)工程に続く架橋工程(7)であり、熱セットされた微多孔膜がα線、β線、γ線及び電子線の内の一以上から選択された電離放射線により架橋され;
(6)工程に続く(7i)親水化処理工程であり、前記熱セットされた微多孔膜はモノマーグラフト化処理、界面活性済処理、及びコロナ放電処理の内の一以上により、より親水性に変えられ;又は
(6)工程に続く(7ii)表面被覆処理工程であり、前記熱セットされた微多孔膜は多孔性ポリプロピレン、多孔性フッ素化樹脂、多孔性ポリイミド、及び多孔性硫化ポリフェニレンの内の一以上により被覆される。
【請求項6】
前記熱セットは上流段階及び下流段階の間に第二段階を持ち、前記第二段階の温度は前記上流段階より高く、前記下流段階と同じであり又は低く、微小孔性重合膜は全段階に亙る時間の合計が約1から約200秒の範囲で熱セットされる、請求項4又は5の方法。
【請求項7】
前記熱セットが上流段階の直ぐ下流に第二段階、前記第二段階の直ぐ下流に第三段階、及び前記第三段階の直ぐ下流及び前記下流段階の直ぐ上流に第四段階を持ち、各連続する段階の温度はその先行する段階と同じか、又はそれより高い温度であり、そして微小孔性重合膜は各段階で2から100秒の範囲で熱セットされる、請求項4又は5の方法。
【請求項8】
前記ポリオレフィン組成物が(a)2.5x10乃至9x10のMw及び3.5乃至20の分子量分布(MWD)を有する50乃至80%の第一ポリエチレンレジン、(b)1.1x106乃至5x106のMw、及び3.5乃至20のMWDを有する10乃至30%の第二ポリエチレンレジン、(c)8x10乃至1.5x106のMw、2乃至50の範囲のMWD、100乃至120J/gの融解熱を有する0乃至40%のポリプロピレンレジンを含み、各パーセントは前記ポリオレフィン組成物の質量に基づく、請求項7の方法。
【請求項9】
前記上流段階の温度が90℃であり、前記第二段階の温度が110℃であり、前記第三段階の温度が120℃であり、前記第四段階の温度が127℃であり、前記下流段階の温度が127℃である、請求項8の方法。
【請求項10】
微小孔性重合膜が請求項1乃至9のいづれか1項の方法により生産される前記微小孔性重合膜。
【請求項11】
ポリオレフィンを含む微多孔膜であり、前記膜は
(a) 膜の平面において縦方向並びに膜の平面及び縦方向の両方に垂直な厚さ方向
(b) 厚さ方向及び縦方向の両方に垂直な横方向の幅Wであり、Wの値は膜の切
断の前に決定される
(c) 最初の点から最終の点への横方向に沿った各点の厚さ方向での複数の空気透過値であり、前記空気透過値の標準偏差は20秒/100cm3/16μmを超えず、
(i)最初の点と最終の点は横方向に沿って点W/2から同距離であり、及び
(ii) 横方向に沿って測定した最初の点と最終の点の間の距離は少なくともWの75%であり、及び以下の(d)〜(g)の少なくとも一つを含む、すなわち、
(d) 3,000mN/16μm以上の突刺強度
(e) TD熱収縮比が105℃で10%以下
(f) TD熱収縮比が130℃で20%以下。
(g) 溶融状態でのTMA収縮は約140℃で20%以下
を持つ、前記微多孔膜。
【請求項12】
前記突刺強度が3,500mN/16μm以上、TD熱収縮比が105℃%以下、又はTD熱収縮比が130℃で15%以下、又は溶融状態でのTMA収縮は約140℃で10%以下である、請求項11の微多孔膜。
【請求項13】
前記ポリオレフィンが
(a)1.0x106未満の重量平均分子量(Mw)、及び3乃至100の分子量分布(MWD)を有する50乃至100%の第一ポリエチレン、(b)1x106以上のMw、及び3乃至100のMWDを有する0乃至40%の、第二ポリエチレン、(c)5x10以上のMw、1乃至100のMWD、及び90J/g以上の融解熱を有する0乃至50%のポリプロピレンを含み、各パーセントは前記膜の質量に基づく、請求項11又は12の微多孔膜。
【請求項14】
前記微多孔膜が、
(a)2.5x10乃至9x10の重量平均分子量(Mw)及び3.5乃至20の分子量分布(MWD)を有する50乃至80%の第一ポリエチレン、(b)1.1x106乃至5x106のMw、及び3.5乃至20のMWD、を有する10乃至30%の第二ポリエチレン、(c)8x10乃至1.5x106のMw、1乃至100のMWD及び100乃至120J/gの融解熱を有する0乃至40%のポリプロピレンを含み、各パーセントは前記膜の質量に基づく、請求項13の微多孔膜。
【請求項15】
前記第一のポリエチレンはエチレン ホモポリマー又はエチレン/α―オレフィン コポリマーのうちの一以上、前記第二のポリエチレンはエチレン ホモポリマー又はエチレン/α―オレフィン コポリマーのうちの一以上、及び前記ポリプロピレンはプロピレン ホモポリマー又はプロピレン/α―オレフィン コポリマーのうちの一以上である、請求項13の微多孔膜。
【請求項16】
前記膜が更にポリブテン−1、ポリペンテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリへキセン−1、ポリオクテン−1、ポリ酢酸ビニル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、及びエチレン/α―オレフィン コポリマーのうちの一以上を含む、請求項13の微多孔膜。
【請求項17】
(1)前記点の数の少なくとも一つは少なくとも20であり、空気透過値の標準偏差は18秒/100cm3/16μmを超えず、(2)横方向に沿って測定された最初の点と最終の点の間の距離は少なくともWの90%であり、又は(3)突刺強度は3,500mN/16μm以上である、請求項11又は12の微多孔膜。
【請求項18】
(1)前記点の数の少なくとも一つは少なくとも40であり、空気透過値の標準偏差は15秒を超えず、(2)横方向に沿って測定された最初の点と最終の点の間の距離は少なくともWの95%であり、又は(3)突刺強度は4,000mN/16μm以上である、請求項11又は12の微多孔膜。
【請求項19】
請求項11又は12の微多孔膜を含む電池セパレーター。
【請求項20】
電解質、陽極、陰極、及び請求項19の電池セパレーターを含む電池。
【請求項21】
前記電池がリチウムイオン二次電池、リチウム−ポリマー二次電池、ニッケル−水素二次電池、ニッケル−カドミウム二次電池、ニッケル−亜鉛二次電池、又は銀−亜鉛二次電池である、請求項20の電池。
【請求項22】
前記陰極が電流コレクタ及びリチウムイオンを吸収し及び放電することの可能な電流コレクタ上に陰極活性材料層を持つ、請求項21の電池。
【請求項23】
請求項21の電池及び線形回路素子又は非線形回路素子又はその両者を含む電気回路であって、前記電池は線形及び/又は非線形回路素子に対する電荷のソース又はシンク(sink)として作用する、前記電気回路。

【公表番号】特表2011−515512(P2011−515512A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−549338(P2010−549338)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【国際出願番号】PCT/JP2009/053794
【国際公開番号】WO2009/110396
【国際公開日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000221627)東燃化学株式会社 (45)
【Fターム(参考)】