説明

微小板形状の銅含有メタリック効果顔料、それを調製するためのプロセス、およびその使用

本発明は、全金属含量を基準にして、60%〜100重量%の銅含量を有する、微小板形状の銅含有メタリック効果顔料に関し、その金属顔料が、走査型電子顕微鏡(SEM)法による厚み計測で求め、次の累積篩下分布として表される厚み分布を有し、
a)h50が10〜50nm、
b)h90が20〜70nm、
微小板形状の銅含有メタリック効果顔料が、銅含有金属粉体を潤滑剤を用いて摩砕することにより製造される。
本発明はさらに、この顔料を製造するためのプロセス、さらにはその使用、本発明の顔料を含む印刷インキ、およびこの顔料を含むコーティングされた物品にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小板形状の銅含有メタリック効果顔料、その調製および使用、ならびに前記顔料を含むコーティング組成物および前記顔料を用いてコーティングされた物品に関する。
【背景技術】
【0002】
銅顔料または銅−亜鉛合金から製造される黄銅顔料を含む銅含有メタリック効果顔料(ゴールドブロンズ顔料とも呼ばれる)は、とりわけグラフィック産業が挙げられる産業、たとえば印刷インキにおいて使用されている。
【0003】
摩砕(従来から主として乾式摩砕法による)により銅粉体または黄銅粉体から製造され、今日、たとえばフレキソ印刷およびグラビア印刷用のインキの顔料着色に使用されているメタリック効果顔料、たとえば、Eckart GmbH、D−90763 Fuerth、Germanyの“Rotovario”ゴールドブロンズ顔料分散体、または“Rotoflex”安定化リーフィングゴールドブロンズ顔料粉体、または“Rotosafe”安定化リーフィングゴールドブロンズ顔料ペレットは、リーフィング性を有していて、そのことが、鏡様の効果を有するフィルムリバース塗布物の顔料着色のためにそれらが適合している条件を与えている。
【0004】
PVD法によって製造された黄銅顔料を印刷インキの中で使用しようとすると、また、均一な色相を得ることを目的として2種の金属(銅および亜鉛)を均質に金属化することが、それらの高真空における蒸発温度に極めて大きな差があるために、技術的に極端に達成困難であるという問題もある。さらに、PVD黄銅顔料は、製造コストがかなり高く、極めて密な層を有していないという点で、従来からの摩砕法により製造された黄銅顔料とは異なっており、その密度がそれぞれの原料物質の密度より低く、所望の厚みの薄い膜では所望のゴールドの色相(特にリッチゴールド)が実現できない。
【0005】
EP 1 529 084 B1には、PVD法によって製造することが可能なゴールドブロンズ顔料の記載がある。その製造方法が複雑であるために、この顔料のコストは極めて高い。さらに、この顔料は、合金の構成成分の部分的相分離が起きる傾向を有し、その上に色相における望ましくない変化および色相の安定性が不十分であることを伴う現象を有している。
【0006】
さらに、PVD法によって製造された銅含有効果顔料は、今日までのところ、市場で入手することが不可能である。
【0007】
したがって、鏡様の効果を有するフィルムリバース塗布物の顔料着色のために、通常、使用されているPVDアルミニウム顔料、たとえば“Metalure”製品(Eckart GmbH)は、完全な非リーフィング挙動を伴う均質な表面性を特色とするが、イエロー系のトナー顔料を用いて着色しなければならない。このタイプの印刷インキは、たとえば、Eckartから“Ultrastar”の商品名で、溶媒ベースのグラビア印刷およびフレキソ印刷用のインキとして商業取引されている。その製造方法が複雑であるために、PVDメタリック効果顔料は、一般的に、従来からの摩砕によって製造されたメタリック効果顔料よりも、はるかに高価である。
【0008】
いわゆるリバース塗布物においては、印刷インキを用いて透明フィルムに印刷するが、これらの印刷インキを使用して、ほとんど完全に金属の鏡を作り出すことができる。しかしながら、その鏡は、その塗布物をフィルムの側から見た場合にのみ、視覚に感じられる。添加したイエロー系のトナーのために、その金属の鏡は、ゴールデンの色相に見える。したがって、アルミニウム顔料のシルバーの光沢が、着色剤固有の色と混じっている。
【0009】
これらの印刷インキの欠点は、それらの色があまり強くないことである。PVDアルミニウム顔料は、フィルムの近傍、すなわち、印刷されたフィルムの下側領域に集まる傾向がある。しかしながら、これが原因で、アルミニウム顔料とフィルムとの間に着色顔料がほとんど存在しないことになり、このために色の濃さが下がる。それを補うために着色顔料の濃度を上げると、避けられない結果として、光沢が相応に失われる。
【0010】
さらに、その印刷インキは、たとえば紙のような吸収性の基材に塗布したときに、メタリック顔料と着色顔料との間で分離が起きる可能性があるために不利である。
【0011】
摩砕法により黄銅粉体から製造される従来からの黄銅顔料を製造するためには、高純度の、電気分解法で得られた銅および亜鉛を、摩砕操作のための出発物質として使用し、還元剤として少量のアルミニウムを加えて合金化させる。この目的のためには、銅と亜鉛とを相互に融解させ、得られた黄銅融解物をアトマイズさせて、粗い、結節状の黄銅粉体を形成させる。次いで、その得られた黄銅粉体を研磨して黄銅フレークとする。黄銅粉体の摩砕は、主としてHametag乾式摩砕プロセスによって実施する。このプロセスにおいては、ボールミル中で、摩砕条件、たとえば、ミルのサイズ、ミルの直径、ミルの回転速度、ボールのサイズ、および摩砕時間を変えた複数の摩砕工程で、銅または黄銅の粒子の冷間圧接を防止するためにたとえばステアリン酸またはオレイン酸のような潤滑剤を添加し、たとえば鋼製ボールのような研磨助材を用いて、その粗い黄銅粉体を研磨する。
【0012】
黄銅粉体を乾式摩砕するためには、摩砕対象物として使用される、粗い、結節状の黄銅粉体を研磨して、微小板形状の黄銅顔料を形成させる。変形させることがかなり困難な黄銅微小板の密度は高く、対応するアルミニウム微小板の密度の約3倍である。摩砕および分級をしてから、黄銅顔料を集めて別の容器の中に入れて、次いで均質化させる。その次に、メタリックに顔料着色されたコーティングで必須のメタリック光沢を得るために、それに続く後処理の際に、さらなる添加剤(たとえばステアリン酸)を用いて、その顔料微小板の表面を「磨き上げる」ことも可能である。
【0013】
黄銅顔料(ゴールドブロンズ顔料)の場合には、その合金の色相は、銅の亜鉛に対する比率で決まる。一般的に言って、銅含量は70%〜100重量%の間である。ゴールドブロンズ顔料は、「ペールゴールド」(銅の割合が約90重量%で、残りが亜鉛)、「リッチペールゴールド」(銅の割合が約85重量%で、残りが亜鉛)、「リッチゴールド」(銅の割合が約70重量%で、残りが亜鉛)のような特徴的な自然な色相で商取引きされている。
【0014】
研磨助剤の存在下に黄銅粉体を摩砕することによって微小板形状の黄銅顔料を製造することは、顔料製造の当業者には公知であり、たとえばDE 200717 Aにも記載されている。不活性な液体を用いて実施される湿式摩砕操作を用いる、黄銅顔料を製造するためのこのプロセスにおいては、その研磨生成物を、少なくとも三つの粒子サイズの画分、すなわち二つの粗い画分と、一つの微細な画分(粒子サイズが44μm未満)とに分離する。製造された微細な画分は回収し、中程度に粗い画分は操作から除外し、その一方で少なくとも一つの粗い画分は、篩上のものと共にミル(ボールミル)にリサイクルされる。
【0015】
JP 63000406Aには、金属粉体を簡単かつ低コストで製造するためのプロセスが示されている。その粉体粒子は、たとえばボールミル中でオイルおよび水を使用して、機械的に摩砕することにより製造された金属フレークからなっているが、それにはたとえば、高い形状因子ならびに通常の顔料直径および厚みを有する黄銅のフレークが含まれる。
【0016】
JP 2002327201Aは、顔料の平均直径が40〜60μm、嵩密度が0.5〜0.7g/cm、被覆面積が少なくとも7000cm/gの黄銅フレークからなる、ディップコーティングのためのゴールデンの粉体に関する。
【0017】
US 2002891Aは、アルミニウム、銅またはその他の金属およびそれらの合金からの、ブロンズの粉体の製造に関する。所定の摩砕条件下で、使用する金属を摩砕して、フレーク形状、微小板形状または鱗形状の粉体粒子を形成させる。
【0018】
US 3995815 Aには、混合比および摩砕時間を規定してボールミル中で金属に対して実施する湿式摩砕操作によって、フレークを含む金属粉体を製造するためのプロセスの記載がある。この刊行物には、摩砕生成物についての詳細な記載はない。
【0019】
US 4172720 Aには、厚み分布が狭く、単一色で、極めて高い鏡面効果を有する、フレーク形状の金属粉体が開示されている。この公知の金属粉体は、金属、たとえば黄銅から、研磨助剤、金属、潤滑剤、および摩砕液を特定の重量比とすることを特徴とする湿式摩砕操作によって製造される。
【0020】
US 4,884,754に記載されたプロセスによって、厚みが3μm未満、直径が10μm未満の銅フレークを製造することができる。そのプロセスにおいては、非極性の有機溶媒中、1種または複数の有機潤滑剤の存在下で、銅粒子を摩砕する。次いで、有機潤滑剤および溶媒の大部分を除去し、得られた銅フレークを、ジェットミルの中でふたたび摩砕する。
【0021】
US 2002/0050186 A1には、直径が4〜10μm、形状因子が2〜20の、たとえば導電性ペースト用途のための銅フレークが記載されている。
【0022】
US 2008/077612 A2から、厚み分布が狭く、薄い微小板形状のアルミニウム顔料が公知である。このアルミニウム顔料は、走査型電子顕微鏡法による厚み計測で測定して、15〜75nmの厚みh50を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
市場では、ゴールドカラーの鏡様の効果をもたらす印刷インキ、特にグラビア印刷およびフレキソ印刷のインキがあればという強い要望があるが、現在のところこの要望を満たすことはできない。
【0024】
本発明の一つの目的は、より高い光沢および改良された不透明性のような改良された光学的性質を有する、微小板形状のカッパーカラーからゴールドカラーのメタリック効果顔料を提供することである。印刷インキ、特にグラビア印刷インキおよびフレキソ印刷インキに用いる場合、そのメタリック効果顔料は、改良された光学的性質を、改良された剥がれ抵抗性と組み合わせて、有しているべきである。
【0025】
さらなる目的は、鏡様の効果を有するフィルムリバース塗布物に使用するための、簡単で低コストな方法で製造することが可能な、板形状の、カッパーカラーからゴールドカラーのメタリック効果顔料を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0026】
その目的は、全金属含量を基準にして、60%〜100重量%の銅含量を有し、走査型電子顕微鏡(SEM)法による厚み計測で求め、次の累積篩下分布として表される厚み分布を有する微小板形状の銅含有メタリック効果顔料を提供することによって達成される。
a)h50が10〜50nm
b)h90が20〜70nm
その微小板形状の銅含有メタリック効果顔料は、銅含有金属粉体を潤滑剤を用いて摩砕することにより製造される。
【0027】
本発明のメタリック効果顔料の好適な展開法は、従属請求項2〜12に規定されている。
【0028】
その上に本発明が基礎をおく目的はさらに、請求項1〜12のいずれかに記載の微小板形状の銅含有メタリック効果顔料を製造するための、請求項13に記載のプロセスによって達成されるが、そのプロセスには以下の工程:摩砕装置を使用し、潤滑剤および研磨媒体および場合によっては溶媒の存在下で、dpowder,50が1〜15μm、dpowder,90が2〜27μmの粒子サイズ分布と、全金属粉体を基準にして60%〜100重量%の銅含量とを有する銅含有金属粉体を摩砕して、微小板形状のメタリック効果顔料を形成させる工程が含まれ、そうして得られる微小板形状のメタリック効果顔料は、h50が10〜50nm、h90が20〜70nmの、走査型電子顕微鏡(SEM)法による厚み計測で求めた平均厚みを有する。
【0029】
そのプロセスの好適な展開法は、従属請求項14〜16に規定されている。
【0030】
本発明の目的はさらに、請求項17に記載の本発明の顔料の使用、およびさらに本発明の銅含有メタリック効果顔料を含む請求項18に記載の印刷インキ、および本発明のメタリック効果顔料を用いてコーティングされた請求項19に記載の物品により達成される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明実施例1および2ならびに比較例4および5の厚み分布の累積篩下分布。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の微小板形状の銅含有メタリック効果顔料は、本発明の文脈においては、銅または合金を含むかもしくはそれからなるメタリック効果顔料であり、この合金は、顔料の全金属含量を基準にして少なくとも60重量%の銅含量を有する、亜鉛および銅を含むかもしくはそれからなるもの(黄銅)であると理解されたい。
【0033】
本発明の銅含有メタリック効果顔料には、銅顔料およびさらに黄銅顔料(ゴールドブロンズ)が包含される。
【0034】
銅効果顔料は、98%〜100重量%、好ましくは99%〜99.999重量%の銅含量を有している。銅が「100重量%」と言った場合に、それは、各種の異物金属が極めて少量の割合で存在していてもよいということを意味していると当業者が解釈するのは自明である。
【0035】
黄銅顔料は、典型的には「ゴールドブロンズ」と呼ばれるが、好ましくは70%〜約90重量%の銅含量を有している。それに対応して、亜鉛含量は30%〜10重量%の間であるが、この場合も同様に、2重量%まで、好ましくは1重量%未満のその他の金属が不純物として存在していてもよい。
【0036】
また別の好ましい実施態様では、実際のところ、全メタリック効果顔料を基準にしてたとえば0.5%〜2重量%のアルミニウム含量を、「不純物」として意識的に使用している。このタイプの合金が、腐食に対してより安定であることは、すでに実証されている。
【0037】
非リーフィング性を有する本発明の微小板形状の銅含有メタリック効果顔料は、その平均厚みが極めて薄いために、極めて高い不透明性を有している。顔料の不透明性というのは、顔料量の単位重量あたりの、表面積の被覆に関して、通常使用されている用語である。顔料の平均厚みが薄いほど、顔料によって被覆される面積が大きくなり、従ってその不透明性も高くなる。
【0038】
極めて狭い厚み分布を有する極めて薄いメタリック効果顔料は、塗布媒体の中で、広い厚み分布を有するメタリック効果顔料よりも均質に積み重なる。従来からのメタリック効果顔料を用いた場合、塗布媒体の中での顔料の積み重なりが不均質になることが容易に起こりうる。たとえば、極めて厚いメタリック効果顔料は、特に、「スペーサー」として機能する可能性があり、このことによって、塗布媒体中の周辺または隣接の顔料の配向を妨げる。このことは、その結果として、そのメタリック効果顔料の光沢、フロップ性、そしてある種の環境下においては不透明性に悪影響を及ぼす。それは、印刷用途におけるその効果において、特に有害である。コーティングの場合に比較して、印刷では、膜厚みが実質的に薄く、またバインダーの割合が低い。
【0039】
微小板形状の金属顔料の平均厚みを正確に測定することは困難である。実際には、顔料の厚みは、水被覆度(DIN 55923による広がり)の方法によるか、または走査型電子顕微鏡(SEM)法によって測定する。水被覆度では、顔料の平均厚みhだけは計算できるが、厚み分布の計算はできない。加えて厚み分布を求めるために、本発明の顔料の平均厚みを、本発明の目的のために、走査型電子顕微鏡(SEM)法により測定した。この方法を用いる場合、代表的な統計的評価ができるように、十分な数の粒子を測定する。典型的には、約50〜100個の粒子について計測する。
【0040】
厚み分布は、累積篩下曲線または累積度数分布の形態で表すのが有用である。適切な平均値は、累積篩下厚み曲線のh50である。粗い画分の目安は、h90値である。h90は、顔料粒子全体の内の90%のものが、この数値に等しいか、および/またはこの数値より小さい厚みを有しているという位置を表している。同様に、たとえばh98値は、その顔料粒子全体の内の98%のものが、この数値に等しいか、および/またはこの数値より小さい厚みを有しているという位置を表している。同様にして、h10は厚み分布の微細な画分の目安であって、顔料粒子全体の内の10%のものが、この数値に等しいか、および/またはこの数値より小さい厚みを有しているという位置を表している。
【0041】
本発明において使用される「累積篩下分布」という用語は、「累積度数分布」とも呼ばれる。したがって、これら二つの用語は相互に置き換え可能に使用することができ、そのため、本明細書においては、「累積篩下分布」という用語に代えて「累積度数分布」という用語を使用することもある。
【0042】
上述のこれらの特性値は、測定した個々の値のリストから、たとえばExcel表現の「分位数」関数によって、算術的に求めてもよい。SEMによる個々の顔料の厚みの測定は、DE 103 15 775 A1に記載されている方法に従って行う。
【0043】
走査型電子顕微鏡法による厚み計測の結果(累積篩下分布または累積度数分布のh50)において、本発明のゴールドブロンズ顔料の平均厚みh50が、10〜50nm、好ましくは15〜45nm、より好ましくは15〜40nm、極めて好ましくは20〜35nmであることが確認された。
【0044】
平均厚みh50が10nm未満であると、得られるメタリック効果顔料の色相が暗くなりすぎるが、これは、銅または黄銅の吸収性能が高いまま保持されて、反射能力が低下するためである。同様にして、メタリック効果顔料の透明度が上がるために、不透明性に低下があり、色相における望ましくない変化が起こりうる。
【0045】
平均厚みh50が50nmを超えると、本発明のメタリック効果顔料における有利な光学的性質が、極めて希薄な形態でしか存在しなくなった。
【0046】
さらに、本発明のメタリック効果顔料は、走査型電子顕微鏡(SEM)法による厚み計測で求めて、h90が20〜70nm、好ましくは20〜60nm、より好ましくは21〜50nm、極めて好ましくは22〜40nmの厚み分布を有している。
【0047】
90が70nmを超えると、本発明のメタリック効果顔料の有利な性質がもはや見られなくなった。特に、フィルムリバース塗布物における鮮明な鏡面性(極めて良好な像鮮鋭性)を確認することがもはやできなくなった。
【0048】
90が20nm未満の微小板形状の銅含有メタリック効果顔料は、今日まで、摩砕法によって製造することは不可能であった。
【0049】
本発明のメタリック効果顔料の有利な光学的性質は、顔料の厚み分布において、顔料の全てで厚みが極めて薄いことに由来していると考えられる。したがって、h98は、好ましくは21から80nm未満まで、より好ましくは24〜70nm、極めて好ましくは25〜60nmの範囲とするべきである。
【0050】
本発明の銅含有メタリック効果顔料の厚みが薄いことが、ゴールドカラーのフィルムリバース塗布物を作製するために、塗布媒体中、たとえば印刷インキ中、より詳しくはグラビア印刷インキおよびフレキソ印刷インキ中で、顔料を極めて良好に配向させるという有利な結果を与えている。微小板の厚みが特定の厚みを超えると、微小板は極めてフレキシブルとなるために、基材の形状に完全に密着すると考えられる。この効果は、PVDアルミニウム顔料の場合には確証されているので、特にフィルムリバース塗布物において利用される。
【0051】
本発明の一つのさらに好ましい実施態様においては、本発明のメタリック効果顔料は、8〜25nm、より好ましくは10〜20nmの範囲の厚み分布のh10を有している。h10が8nm未満では、顔料が薄すぎて、そのために光学的性質が損なわれる。h10が25nmを超えると、逆に、h10値が高いと、それに応じてh50およびh90の数値も高くなるために、顔料が厚くなりすぎる。
【0052】
さらに、本発明のメタリック効果顔料は、走査型電子顕微鏡(SEM)法による厚み計測で求め、次式に従って対応する相対度数の累積篩下曲線から計算される厚み分布の相対幅Δhが、30%〜90%、好ましくは35%〜85%、より好ましくは40%〜80%である。
Δh=100×(h90−h10)/h50
【0053】
湿式摩砕によって製造された本発明のメタリック効果顔料の厚み分布が狭いために、驚くべきことには、この狭い厚み分布がPVDメタリック効果顔料と類似していることによって、本発明の顔料は、光学的性質の面でPVD顔料に類似しているが、それにもかかわらず、実質的により低コストで製造することが可能である。
【0054】
長さ方向の寸法については、特に銅粉体または黄銅粉体を湿式摩砕することによって製造された本発明のメタリック効果顔料は、銅粉体または黄銅粉体を乾式摩砕することによって得られた市販されているゴールドブロンズ顔料と、基本的には変わらない。個別の観点からは、顔料サイズは目的とする用途に依存する。
【0055】
本発明の銅含有メタリック効果顔料の平均サイズd50は、好ましくは3〜50μm、より好ましくは4〜30μm、極めて好ましくは5〜20μm、特に好ましくは6〜15μmである。長さ方向の寸法d(直径)は、レーザー回折実験で、フラウンホーファー回折および/またはミー散乱理論に基づいて求められる。その回折データの評価は、相当球の直径を意図したモデルを基準にしている。この理由から、得られた数値は絶対的な値ではないが、測定されたその直径は、微小板形状の金属顔料のサイズ特性を表す信頼のおける相対値として確立されている。
【0056】
顔料の長さのd50値は、相当球の大きさ分布の形で測定および評価された、累積篩下分布曲線の50%に相当する。
【0057】
まったく驚いたことには、本発明の銅含有メタリック効果顔料を用いて顔料着色されたコーティング組成物は、「フィルムリバース塗布物」において、ゴールドカラーの鏡様の効果を示すことが見出されたが、この効果は、乾式摩砕によって製造された従来からの銅含有メタリック効果顔料を用いては、今日まで実施することが不可能であった。
【0058】
「フィルムリバース塗布物」は、メタリック効果顔料を用いて顔料着色された印刷インキが、透明なフィルムの上に印刷されるということを意味している。本発明の銅含有メタリック効果顔料を使用した場合、フィルムの上で硬化させた印刷物が、逆側から見たときに、ゴールデン(ゴールドカラー)の鏡様の効果を示す。この鏡面効果は、本発明の銅含有メタリック効果顔料が、厚みが薄く、そして厚み分布が狭いため、さらに非リーフィング性であるために、フィルムの表面に直接的に配向されるという事実の結果としてもたらされるものである。
【0059】
メタリック効果顔料が面に平行な配向をするためのドライビングフォースとしては、顔料のバインダーシステムとの界面における化学的非相溶性に加えて、形状因子が、本発明のメタリック効果顔料の性質においては、また別な重要な特性である。
【0060】
形状因子fは、顔料微小板の、長さ方向の平均寸法の平均厚みに対する比率と理解される。
【0061】
本発明における、無次元数の形状因子fは次式で定義される。
【数1】

【0062】
本発明の銅含有メタリック効果顔料(ゴールドブロンズ顔料)は、好ましくは、150〜3000の形状因子fを有する。本発明の顔料は、好ましくは250〜2500、より好ましくは300〜1000、極めて好ましくは325〜600の形状因子fを特徴とする。
【0063】
印刷物の場合、バインダーの割合と膜の厚みは、一般的に、コーティングの場合よりもはるかに低い。このことは、グラビア印刷インキの場合に特にあてはまる。市販のゴールドブロンズ顔料を用いて着色したグラビア印刷インキは、約40重量%の固形分含量を有している。そのようなインキの印刷膜は、未硬化膜の厚みが約3〜6μmであり、そして硬化膜の厚みが約1.5〜3μmである。PVD顔料を用いて着色したグラビア印刷インキの場合には、その固形分の割合は、グラビア印刷インキ全体の約5%〜20重量%である。したがって、それに伴い、硬化膜の厚みは、たったの0.5〜1.5μmである。こうした膜の厚みが極端に薄い場合には、金属顔料のほとんどが、均質に、面に平行に配向される必要がある。従来は、PVDメタリック効果顔料を用いた場合にのみこのことが達成可能であった。
【0064】
本発明の銅含有メタリック効果顔料を用いて顔料着色された印刷塗布物、特にフィルムリバース塗布物は、本発明の顔料の粒子の平均厚みが薄く、かつ粒子の厚み分布が狭いために、(光沢/鏡様の観点における)光学効果を有しているが、これは、従来からのPVDメタリック効果顔料を用いて顔料着色された印刷塗布物のそれに比肩するものである。
【0065】
本発明のまた別な好ましい実施態様においては、本発明のメタリック効果顔料の表面を、添加剤を用いて少なくとも部分的に被覆するが、その添加剤には、構造単位として、少なくとも4個の炭素原子を有する少なくとも1種のカルボン酸、および少なくとも1種のポリグリコールエーテルを含み、そのカルボン酸とポリグリコールエーテルとが相互に共有結合している。
【0066】
「構造単位」は、本発明においては、添加剤が、少なくとも4個の炭素原子を有するカルボン酸を含んでいるということを意味している。そのカルボン酸は、そのままで存在していてもよいし、あるいは、たとえば側鎖の形で置換基として存在していてもよい。いずれの場合においても使用される添加剤が、少なくとも4個の炭素原子を有するカルボン酸の形態の少なくとも1つの構造単位を有しているということが重要である。
【0067】
驚くべきことには、このタイプの添加剤が、銅含有金属粉体を摩砕してメタリック効果顔料を形成させるための優れた潤滑剤になることがわかった。
【0068】
その添加剤においては、ポリグリコールエーテルが、少なくとも1つのカルボン酸とエステル化されているのが好ましい。
【0069】
また別な好ましい実施態様においては、使用されるカルボン酸が、ジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸、またはそれらの混合物である。ポリグリコールエーテルと共有結合できるジカルボン酸および/またはトリカルボン酸として、飽和および/または不飽和カルボン酸を使用することも可能である。
【0070】
使用可能なジカルボン酸の例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸および/またはセバシン酸が挙げられる。
【0071】
本発明の一つの好ましい展開法においては、たとえば11〜30個の炭素原子、好ましくは12〜24個の炭素原子、より好ましくは14〜22個の炭素原子を有するかなり長い炭素骨格を有するジカルボン酸、トリカルボン酸、またはテトラカルボン酸が使用される。これらのジカルボン酸、トリカルボン酸、またはテトラカルボン酸は、不飽和脂肪酸、たとえば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸またはこれらと同等の酸を二量化、三量化または四量化させることによって形成させるのが好ましい。
【0072】
18個の炭素原子の炭素主鎖を有するジカルボン酸が極めて好適であることがわかった。したがって、このジカルボン酸は36個のC原子を有し、相当するトリカルボン酸は54個のC原子を有する。これら各種の脂肪酸の混合物を使用するのが好ましい。
【0073】
添加剤のポリエーテル構造単位に関しては、本発明の一つの好ましい展開法においては、そのポリグリコールエーテルが、R−O−(R−O)−(R−O)−(R−O)−基を含むが、ここでそのR−O、R−O、およびR−Oのポリエーテル単位は、ランダム、交互、あるいはブロックコポリマーとして配列されていてよい。この基において、Rは、1〜30個の炭素原子を有する、直鎖状もしくは分岐状の脂肪族基、または芳香脂肪族もしくは芳香族有機基である。基R、RおよびRは、同一であってもよいし、あるいは相互に独立して異なっていてもよいが、それぞれの場合において、1〜12個の炭素原子を有する、直鎖状もしくは分岐状の脂肪族有機基、または芳香脂肪族もしくは芳香族有機基である。個々の重合度y、zおよびkは、相互に独立して0〜200であるが、ただし、重合度を合計したy+z+kが2〜600である。
【0074】
基Rは、好ましくは2〜16個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐状の脂肪族基または芳香脂肪族もしくは芳香族有機基であり、より好ましくは1〜12個のC原子を有する脂肪族基である。
【0075】
基R、R、およびRは、相互に独立して、好ましくは2〜8個のC原子、より好ましくは2〜4個のC原子を有する。基R、R、およびRが、相互に独立して、エチル、イソプロピル、プロピル、またはブチルであれば、特に好ましい。特に好ましいのは、さらに、エチル単位とイソプロピル単位とが交互になっている、EO/POポリエーテルと呼ばれているものである。
【0076】
エーテル単位の長さ(重合度の合計)y+z+kは、好ましくは5〜300、より好ましくは7〜100、極めて好ましくは10〜50である。
【0077】
それに相当する化合物は、たとえばEP 1 304 210 A1に見出される。しかしながら、そこでは、その化合物は、プラスチックのための加工助剤としてしか記載されておらず、メタリック効果顔料を製造するための潤滑剤としての記載はない。
【0078】
さらに、本発明のメタリック効果顔料は、金属酸化物層を有していてもよいが、その金属酸化物層の金属は、メタリック効果顔料の金属と同じタイプである。このタイプの酸化物層は、典型的なカッパー顔料およびゴールドブロンズ顔料では、公知でもある。これらの酸化物層は、酸化によって得られる。その固有の色および干渉効果のために、これらの金属酸化物層は、その層の厚みに応じて、イエロー〜レッドの色彩範囲の広く各種の色相を有する効果顔料を与える。ここでは、その金属顔料の基本の色も大きな役割を果たしているということが認められるであろう。
【0079】
言うまでもないことであるが、酸化はいつも金属のほんの一部だけを対応する酸化物に転化させるので、本発明で最も薄い金属顔料を、酸化のために採用するのは好ましくない。そのような顔料は、残存金属含量が極めて少ないか、あるいはまったく存在しないであろうし、その不透明性に関連して大いに不利となるであろう。したがって、酸化のためには、25〜50nmの範囲の平均厚みh50を有する本発明の金属顔料のみが使用される。
【0080】
したがって、本発明は、さらに、酸化された、銅含有メタリック効果顔料にも関する。
【0081】
たとえば水性印刷インキ中のような水含有媒体中、または耐候性の屋外用途において使用するために、不動態化抑制剤層および/または不動態化耐食層を用いて本発明のメタリック効果顔料をコーティングしてもよい。
【0082】
抑制剤層および/または不動態化層の作用機構は複雑である。
【0083】
抑制剤の場合においては、その抑制または不動態化の効果は、通常、立体効果に基づいている。したがって、抑制剤の大部分のものは、さらに、リーフィング性および非リーフィング性、すなわち、塗布媒体中におけるフローティング性または非フローティング性という意味での、配向効果を有している。
【0084】
抑制剤は、典型的には、使用されるメタリック効果顔料の重量を基準にして、1%〜15重量%の程度の低濃度で添加される。
【0085】
本発明のメタリック効果顔料の場合に使用可能な不動態化抑制剤としては、以下のものが挙げられる:脂肪酸、カルボン酸誘導体、有機リン酸塩およびホスホン酸塩およびそれらのエステル、有機官能化シラン、脂肪族もしくは環状アミン、脂肪族および芳香族ニトロ化合物、酸素含有、硫黄含有もしくは窒素含有複素環化合物、高級ケトン、アルデヒドおよびアルコールの硫黄/窒素化合物、チオール、β−ジケトン、β−ケトエステル、またはそれらの混合物。
【0086】
本発明のメタリック効果顔料を抑制する目的で考えられるのは、好ましくは以下のものである。
・一般式R−P(O)(OR)(OR)の有機変性ホスホン酸および/またはそのエステル[式中、R=アルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、さらにはアルキルエーテル、特に、エトキシル化アルキルエーテル、そしてR、R=H、C2n+1(ここでn=1〜6)、いずれの場合においても、アルキルは分岐していても、あるいは非分岐であってもよく、Rは、Rと同一であっても、異なっていてもよい。]
・一般式R−O−P(OR)(OR)の有機変性リン酸およびそのエステル[式中、R=アルキル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、さらにはアルキルエーテル、特に、エトキシル化アルキルエーテル、そしてR、R=H、C2n+1(ここでn=1〜6)、いずれの場合においても、アルキルは分岐していても、あるいは非分岐であってもよく、Rは、Rと同一であっても、異なっていてもよい。]
【0087】
純粋なホスホン酸もしくはエステル、またはリン酸もしくはエステル、またはそれらの各種所望の混合物を使用してよい。
【0088】
主として水性の溶媒の中で本発明のメタリック効果顔料を摩砕する場合には、研磨助剤としてこのタイプの抑制剤を使用して、その摩砕操作の際の水素の生成(これは安全の見地からは危険である)を防止する。
【0089】
不動態化抑制剤層は、さらに、腐食抑制性の、有機官能化シラン、脂肪族もしくは環状アミン、脂肪族もしくは芳香族ニトロ化合物、または酸素含有、硫黄含有および/または窒素含有複素環化合物を含むか、またはそれらからなっていてもよい。これらの内では、窒素含有複素環化合物が好ましく、トリアゾールがとりわけ好ましく、ベンゾトリアゾールならば特に好ましい。さらに、たとえばチオ尿素誘導体、高級ケトン、アルデヒドおよびアルコール(脂肪族アルコール)の硫黄化合物および/または窒素化合物、もしくはチオール、またはそれらの混合物を使用してもよい。別な方法として、不動態化抑制剤層が、上に記載された物質からなっていてもよい。有機ホスホン酸および/またはリン酸エステルまたはそれらの混合物が好ましい。アミン化合物を使用する場合には、それが6個を超えるC原子を有する有機基を有しているのが好ましい。そのようなアミンを、有機ホスホン酸および/またはリン酸エステルまたはそれらの混合物と同時に使用するのが好ましい。
【0090】
化学的および物理的保護効果を有する腐食保護バリヤーによりメタリック効果顔料を不動態化するために可能な方法は、各種存在する。
【0091】
本発明のメタリック効果顔料を腐食から特に良好に確実に保護する不動態化耐食層は、酸化ケイ素、好ましくは二酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化アルミニウム、重合させたポリマー樹脂、リン酸塩、亜リン酸塩、ホウ酸塩、またはそれらの混合物を含むか、それらからなる。
【0092】
二酸化ケイ素の層が好ましく、シランを用いてその二酸化ケイ素の表面をコーティングするのが好ましい。
【0093】
SiO層は、有機溶媒中、ゾル−ゲル法で製造するのが好ましく、その平均層厚みは2〜150nm、好ましくは5〜40nmである。
【0094】
本発明の銅含有メタリック効果顔料は、好ましくは顔料ペーストの形態、より好ましくはグラビア印刷およびフレキソ印刷用のインキのためのペースト状製品の形態で使用される。
【0095】
本発明の板形状の銅含有メタリック効果顔料を製造するためのプロセスについて、以下において説明する。
【0096】
本発明の銅含有メタリック効果顔料は、銅含有金属粉体を潤滑剤と共に摩砕することにより製造される。この摩砕操作は湿式摩砕であるのが好ましい。銅含有金属粉体は、好ましくは銅粉体または黄銅粉体である。
【0097】
摩砕操作は、銅粉体または黄銅粉体を変形摩砕する穏やかな工程を含むものであれば、より好ましい。銅粉体または黄銅粉体が極めて狭い粒子サイズ分布を有していれば、さらに好ましい。
【0098】
微小板形状の銅含有メタリック効果顔料を製造するためのプロセスには次の工程が含まれる:潤滑剤および研磨媒体および場合によっては溶媒の存在下で、摩砕機構を使用して、dpowder,50が1〜15μm、dpowder,90が2〜27μmの粒子サイズ分布と、全金属粉体を基準にして60%〜100重量%の銅含量とを有する銅含有金属粉体を摩砕して微小板形状のメタリック効果顔料を形成させる工程であって、その微小板形状のメタリック効果顔料が、走査型電子顕微鏡(SEM)法による厚み計測で求めて、h50が10〜50nm、h90が20〜70nmの平均厚みを有している工程。
【0099】
摩砕は、溶媒の存在下での湿式摩砕であればより好ましい。
【0100】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、粉体粒子を、二段の工程で摩砕する。これらの工程の内の第一段では、粉体粒子に予備的な変形を与え、その第二段では、その摩砕を完結させる。
【0101】
ここでの予備的な変形工程は、金属粒子にかなり高いエネルギーを注入できるような条件下で実施する。二段の工程は、たとえば、ボールのサイズを変化させて実施してもよい。この場合、予備的な変形工程においては、より高いエネルギーの注入が可能となるように、より大きいボールを選択するのが有用である。しかしながら、このプロセスを用いると、二つの工程で操作することが必要となり、これはコストがかなりかさみ、都合が悪い。
【0102】
したがって、その二段の工程は、同一の研磨媒体を装入した一つのミルで実施するのが、さらに好ましい。この場合には、エネルギー注入の変化は、たとえばミルの回転速度を変化させる手段および/または摩砕時間を変化させる手段を用いることで可能となる。
【0103】
さらに好ましい実施態様においては、銅含有金属粉体が、1.5〜10μm、より好ましくは2〜5μmのdpowder,50を有する。銅含有金属粉体が、2.5〜20μm、より好ましくは3〜7μmのdpowder,90を有していれば、さらに好ましい。
【0104】
さらに、本発明において使用される銅粉体または黄銅粉体は、好ましくは0.8〜1.7、より好ましくは0.9〜1.3の、Δdpowder=(dpowder,90−dpowder,10)/dpowder,50で表されるスパンを有する。
【0105】
この銅粉体または黄銅粉体は、極めて狭いサイズ分布を有する、極めて微細な金属粉体である。粒子サイズ分布帯域は、典型的には、レーザー回折分光法により求め、粒子サイズはレーザー光回折から確認することができる。レーザー回折分光法は、Sympatec GmbH、Clausthal−Zellerfeld、GermanyのHelos機器を使用し、メーカーの取扱説明書に従って実施するのが好ましい。
【0106】
本発明の銅含有メタリック効果顔料を製造するために使用する金属粉体は、アトマイザーの中で、液状の銅、または銅−亜鉛合金、すなわち黄銅、好ましくは銅の融解物または黄銅の融解物からアトマイゼーションにより製造するのが好ましい。銅の融解物または黄銅の融解物をアトマイゼーションした結果として得られた粉体を、一つの好ましい変法に従って分級して、所望の粒子サイズ分布(これは粒子サイズ帯域とも呼ばれる)を得る。
【0107】
アトマイゼーション工程の後、銅粉体または黄銅粉体を、相応の分級工程により、所望の狭いサイズ分布とすることもできる。分級は、空気分級機、サイクロン、およびその他公知の装置を使用して実施することができる。
【0108】
狭いサイズ分布を有するこのタイプの微細な銅粉体または黄銅粉体を使用することが、本発明の微小板形状の銅含有メタリック効果顔料を製造するには、本質的に重要である。
【0109】
変形摩砕の間では、銅粉体粒子または黄銅粉体粒子が完全に一様に変形される訳ではない。これは、ある金属粒子がより大きく変形されるのに対して、粉体粒子の内のあるものは摩砕の極めて最後の段階でのみ変形されるということを意味している。こういうことが起きる原因の一つは、金属粒子が変形される確率が、そのサイズに依存する点にある。したがって、すでに予備的変形を受けて微小板となっている金属粒子は、まだ変形を受けていない金属粉体よりも高い比表面積を有しており、その結果、さらなる変形を受ける確率もより高くなる。そのために、金属粉体のサイズ分布の幅は、それから形成される銅または黄銅の微小板のサイズ分布だけではなく、その厚み分布の分布にも反映される。したがって、厚み分布を狭くするためには、相応にサイズの変動が小さい銅粉体または黄銅粉体を使用する必要がある。
【0110】
アトマイゼーション工程は、空気雰囲気中で実施することも、不活性ガス雰囲気下で実施することも可能である。使用される不活性ガスは、窒素および/またはヘリウムであるのが好ましい。
【0111】
アトマイゼーション工程で使用する銅または銅−亜鉛合金(黄銅)の純度は、99.0%から99.9重量%を超えるまでが好ましい。その粉体には、相対的に少量の典型的な合金成分(たとえば、Al、Si、Fe、Sn、Pb)が含まれていてもよい。0.1%〜2重量%のアルミニウムを合金成分として加えるのが好ましい。
【0112】
本発明の銅粉体または黄銅粉体の湿式摩砕は、慣用されるミルの中、好ましくはボールミル、撹拌ボールミル、エッジランナーミル、ドラムボールミルまたはロータリーチューブボールミルの中で、溶媒および研磨助剤としての潤滑剤の存在下、さらには研磨媒体を使用して実施する。
【0113】
少なくとも二段の工程で実施される、本発明の銅粉体または黄銅粉体の湿式摩砕の過程では、研磨媒体、好ましくは、0.3から4.7mmまで、好ましくは0.6〜2mmの平均直径を有する球状の研磨媒体が使用される。
【0114】
たとえばボール、楕円球、円柱、直方体など各種の形態で使用される研磨媒体は、クロム鋼、鋼、ガラスまたはセラミックからなっているのが好ましい。研磨媒体がクロム鋼からなっていれば、特に好ましい。さらに、使用される研磨媒体として特に好ましのは、好ましくは球状媒体、より好ましくはボールである。
【0115】
極めて平滑な表面と、極めて丸い形と、均一なサイズとを有する球状の研磨媒体が好ましい。
【0116】
銅粉体または黄銅粉体を湿式摩砕するために使用する研磨媒体は、個々の重量が85μg〜425mgであるのが好ましい。
【0117】
本発明の一つの好ましい展開法においては、研磨媒体が0.8〜180mgの個々の重量を有している。
【0118】
鋼球の場合、その個々の平均重量は、1〜180mg、好ましくは1.2〜150mg、より好ましくは2.0〜120mgの範囲であるのが好ましい。ガラス球の場合には、その個々の平均重量は、1.0〜12.5mgの範囲である。
【0119】
極端に穏やかなモードで摩砕を実施するために、摩砕時間は比較的に長い。
【0120】
摩砕時間は、10〜100時間、好ましくは20〜60時間、より好ましくは30〜50時間であるのが好ましい。
【0121】
この時間は、摩砕時間を合計したものであると理解されたい。二段またはそれ以上の工程で摩砕を実施するとすれば、個々の工程の摩砕時間を相応に加え合わさなければならない。
【0122】
このように長い摩砕時間をかけることで、顔料/研磨媒体の衝突回数が多くなる。結果として、顔料が極めて均質に成形され、極めて平滑な表面と極めて狭い厚み分布とが得られる。
【0123】
10時間未満の摩砕時間でこのことを達成することは、一般的には不可能である。逆に、100時間を超えるような摩砕時間では、コスト的にますます不利になる。
【0124】
摩砕操作の間の温度は、15℃〜55℃の範囲に設定する。20℃〜35℃の範囲の温度が好ましい。
【0125】
摩砕工程においては、所定の粒子サイズの銅粉体または黄銅粉体を、溶媒、たとえばホワイトスピリットと共にボールミルの中に導入する。
【0126】
使用する溶媒は、市販されている通常の有機溶媒、好ましくはホワイトスピリット、ソルベントナフサ、アルコール、グリコール、エステル、エーテル、ケトンまたはそれらの混合物などでよい。
【0127】
摩砕は、好ましくは、その後に予定されている用途に支障のない溶媒の中で実施するべきである。
【0128】
たとえば、グラビア印刷インキの用途の場合には、酢酸エチル、酢酸n−プロピルまたは酢酸イソプロピルのような溶媒が好ましい。
【0129】
アルミニウム顔料の場合に典型的に実施される再湿潤工程は、今回の場合には推奨できない。再湿潤が必要であることがわかって、それを実施する場合には、摩砕の後で、減圧下において高温でメタリック効果顔料から溶媒をほとんど除去し、次いで、特定の末端用途に支障のない(そしてユーザーが望む)溶媒を用いて、再びペースト化させる。
【0130】
本発明のメタリック効果顔料の比表面積が極めて高いために、その再湿潤工程で、金属顔料が集塊するという望ましくないケースが起こりうる。そのため、摩砕は、好ましくは、その後に予定されている用途に支障のない溶媒の中で実施するべきである。
【0131】
溶媒として(少なくとも主成分としての)水を使用することもまた可能である。しかしながら、その場合においては、採用される潤滑剤が、顕著な腐食抑制効果を有するようにするべきである。この場合、ホスホン酸および/またはリン酸エステルが好ましいが、それらはエトキシル化側鎖を有していてもよい。この場合もまた、摩砕の過程でさらなる腐食抑制剤を添加することが推奨される。
【0132】
溶媒の中で摩砕を実施するのが好ましいが、溶媒の金属粒子に対する重量比率は、好ましくは1.5:1〜5:1、より好ましくは2:1〜4:1である。
【0133】
粉体粒子が冷間圧接されるのを防止するために、潤滑剤、たとえば、オレイン酸、ステアリン酸またはその他の抑制剤を添加するが、その量は、圧延された銅顔料または黄銅顔料に特有の自由比表面積(BET)に依存する。一般的に言って、銅粉体または黄銅粉体の重量を基準にして、1%〜30重量%、好ましくは1.5%〜10重量%の潤滑剤を使用する。
【0134】
摩砕の過程で潤滑剤として使用してもよい化合物は多数存在する。
【0135】
ここでは特に、これまで長い間使用されてきた、10〜24個のC原子のアルキル基を有する脂肪酸を挙げることができる。オレイン酸、または各種の不飽和脂肪酸の混合物、または不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸との混合物を使用して、非リーフィング顔料に導くのが好ましい。塗布媒体中で表面に浮かび上がるリーフィング顔料とは対照的に、非リーフィング顔料は、塗布媒体、たとえばペイントまたは印刷インキの内部で配向する。さらに、たとえば、長鎖アミノ化合物を脂肪酸に追加してもよい。脂肪酸は、動物由来であっても、そうでなければ植物由来であってもよい。
【0136】
潤滑剤は、少なすぎないような量で添加すべきであるが、その理由は、そうしないと、銅粉体または黄銅粉体の成形される度合いが高いために、得られた微小板状の銅顔料または黄銅顔料の極めて大きい表面積が、吸着された潤滑剤によって十分には満たされないためである。この場合には、冷間圧接の事例が起こりうる。したがって、潤滑剤の典型的な量は、使用した銅粉体または黄銅粉体の重量を基準にして、1%〜30重量%、好ましくは2%〜15重量%である。
【0137】
使用するのに特に好ましい潤滑剤は添加剤であって、その添加剤は、構造単位として、少なくとも4個の炭素原子を有する少なくとも1種のカルボン酸、および少なくとも1種のポリグリコールエーテルを含み、そのカルボン酸とポリグリコールエーテルとが相互に共有結合している。
【0138】
この場合においては、ポリグリコールエーテルで少なくとも部分的にエステル化されたカルボン酸または脂肪酸が特に好ましい。
【0139】
したがって、たとえば、BYK−Chemie、Wesel、Germanyの、脂肪酸のポリグリコールエステル“P4100”を使用してもよいが、このものは、プラスチックのための加工助剤として市販されている。
【0140】
研磨ボールの金属粒子に対する重量比率は、好ましくは10:1〜60:1、より好ましくは25:1〜50:1である。
【0141】
ボールミル中での摩砕に関しては、臨界速度ncritが重要なパラメーターであるが、これは、ボールが遠心力によってミルの壁面に押しつけられて、もはや摩砕が事実上起きないような時点を示すものである。
【数2】

[式中、Dはドラムの直径であり、gは重力定数である]
【0142】
ボールミル中での回転速度は、臨界速度ncritの、好ましくは20%〜95%、より好ましくは50%〜90%、極めて好ましくは55%〜86%である。
【0143】
金属粒子をゆっくりと変形させようとすると、回転速度が高すぎないようにしなければならない。その一方で、銅粉体または黄銅粉体(ゴールドブロンズ粉体)は、たとえばアルミニウム粉体をアトマイズする場合とは対照的に、かなり高いエネルギーの注入、従ってより高い回転速度が必要となるが、その理由は、黄銅(または銅)の延性が低いからである。ゆっくりとした変形を起こさせるためには、本発明のプロセスにおいて、軽量の研磨ボールを使用するのもまた好ましい。
【0144】
従来からの摩砕プロセスとは対照的に、本発明のプロセスにおいては、銅粉体または黄銅粉体は、研磨されたり微粉砕されたりすることが優勢ではなく、その代わり、かなり長時間をかけて極めて穏やかに変形される。
【0145】
先に述べた条件では、極めて穏やかな摩砕が起きるが、この場合、金属粉体がゆっくりと成形され、高い運動エネルギーでボールが衝突した結果としての金属粒子の部分の破損が避けられる。
【0146】
摩砕された物質を濾過により単離し、得られたフィルターケーキを、ボールの形状の研磨媒体、溶媒、および研磨添加剤を加えたさらなるボールミルの中で摩砕する。
【0147】
溶媒でリンスすることにより、摩砕した物質を研磨ボールから分離し、次いで濃縮する。
【0148】
さらなる好適なプロセス工程においては、得られたメタリック効果顔料をサイズ分級にかけてもよい。この分級は、薄い金属顔料を壊さないように、穏やかに実施するべきである。その分級操作は、たとえば、湿式篩別法、デカント法、またはそうでなければ(重力または遠心力による)沈降による分離法などであってよい。湿式篩別の場合においては、通常、篩別されるのは粗い画分である。次いで、(たとえばフィルタープレス、遠心分離機またはフィルターにより)その懸濁液を過剰の溶媒から分離する。
【0149】
さらなる好適なプロセス工程においては、本発明の銅含有金属元素顔料を酸化してもよい。この顔料処理方法においては、大気中の酸素が、所定の温度で所定の時間かけて銅含有メタリック効果顔料に作用して、金属微小板の上に薄い酸化物層を形成する。干渉反射作用によって、興味深い色のシェーディングが作り出される。酸化された銅含有メタリック効果顔料は、イングリッシュグリーン、レモン、ダカットゴールド、およびファイアレッドのシェードを含めた色相で商取引される。
【0150】
本発明の銅含有メタリック効果顔料は、ペースト状の製品として、すべて公知の色相で、有利に提供される。本発明のメタリック効果顔料を含むペーストの固形分含量は、ペーストを基準にして、30%〜90重量%、好ましくは40%〜75重量%、より好ましくは45%〜70重量%である。
【0151】
摩砕法によって製造された極めて薄い、銅含有メタリック効果顔料は、PVDプロセスによって得ることができるゴールドブロンズ顔料、たとえばEP 1 529 084 B1に記載されている顔料のタイプとは、異なっている。
【0152】
第一には、驚くべきことには、ゴールドブロンズの場合の本発明の銅含有メタリック効果顔料は、その二つの合金成分の銅および亜鉛に関して、極めて均質な組成を有している。PVDプロセスによって製造された顔料の場合においては、それら二つの金属が相分離することが多いということが知られている。
【0153】
また別の構造的な違いは、本発明の銅含有メタリック効果顔料の表面は、PVDプロセスによって製造された顔料の表面よりは、より高いミクロの粗さをもともと有しているという点である。このようにミクロの粗さが高くなるのは、顔料の上での研磨媒体の作用に帰することができる。
【0154】
PVD顔料と本発明の顔料との間のさらなる構造的な違いは、顔料のエッジ領域において認識することができる。
【0155】
PVD顔料は、支持物体の上に蒸着させ、次いで剥離と微粉砕することによって製造される。この結果として、PVD顔料は、一般的に、直線的な破断エッジを有している。さらに、顔料の中央からエッジ領域に向けて、PVD顔料の厚みが低下することもない。
【0156】
本発明の銅含有効果顔料の場合には、一般的に、エッジ領域に向けての顔料の厚みの偏平化が存在する。さらに、一般的には、そのエッジ領域には直線的なエッジがない代わりに、不規則な形状のエッジとなっている。
【0157】
PVD顔料と本発明の顔料との間の、製造プロセスの違いから来る構造的な違いは、SEM顕微鏡写真で容易に識別することができる。
【0158】
本発明のメタリック効果顔料は、乾燥させて粉体の形態、好ましくは粉塵飛散のない粉体の形態、たとえば安定化金属粉体に転化させるのが特に有利である。その乾燥粉体を適切なホモジナイザーの中でさらに加工して、極めて少量(<10%)の溶媒を添加することにより、粉塵飛散のない金属粉体を得てもよい。最初にフィルターケーキを乾燥させ、次いで別の溶媒を用いてもう一度ペーストとすること(再湿潤)もまた可能である。
【0159】
しかしながら、驚くべきことには、本発明のメタリック効果顔料は、そのフィルターケーキに適切な樹脂の適切な分散体を添加することによって、粒状物、ペレット、ブリケット、タブレット、またはソーセージ状物に加工することもまた可能である。これらの形で供給すれば、それらは粉塵飛散がなく、計量が容易であり、優れた分散性を有しているという利点がある。
【0160】
ペレット化は、従来からの方法でペレット化プレートの上で実施すればよい。タブレット化は、タブレット化装置で実施すればよい。ソーセージ状物は、顔料ペーストまたは顔料粉体からの圧縮成形プロセスによるか、またはそのようなペーストまたは粉体をエクストルーダーを通過させて押出し、ロータリーナイフ装置を用いてその押出されたペーストのストランドを切断することによって製造すればよい。本発明の銅含有メタリック効果顔料(特にゴールドブロンズ顔料)の粒状化は、たとえばスプレー造粒法によって実施することができる。
【0161】
本発明の銅含有メタリック効果顔料は、粒状物またはペレットの形態で、いずれの場合もその粒状物またはペレットの全重量を基準にして、たとえば90重量%〜35重量%、好ましくは70重量%〜40重量%の高い顔料含量で、極めて有利に提供することができる。
【0162】
本発明の顔料が高い比表面積を有しているので、それのペレット化では、かなり多量の分散樹脂を使用するのが好ましい。ペレットの全配合物を基準にして2%〜50重量%、より好ましくは5%〜30重量%の樹脂を使用するのが好ましい。
【0163】
ペレット化に使用することが可能な分散樹脂は、数多く存在している。そのような樹脂の例としては、天然由来の樹脂および合成樹脂の両方が挙げられる。それらには、たとえば以下のものが含まれる:アルキド樹脂、カルボキシメチル−およびカルボキシエチルセルロース樹脂、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)およびセルロースアセテートブチレート(CAB)、クマロール−インデン樹脂、エポキシドエステル、エポキシド−メラミンおよびエポキシド−フェノール縮合物、エチル−およびメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ケトン樹脂およびマレイン酸樹脂、ロジン、メラミン樹脂、ニトロセルロース樹脂、フェノール樹脂および変性フェノール樹脂、ポリアクリルアミド、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、ならびにビニル樹脂。
【0164】
これらのポリマー樹脂の中でも、次のものが特記に値する:アクリレートコポリマーおよびアクリル酸エステル樹脂、ポリアクリロニトリルおよびアクリロニトリルコポリマー樹脂、ブタジエンと塩化ビニリデンとのコポリマー、ブタジエン/スチレンコポリマー、アクリル酸メチルおよびメタクリル酸メチルコポリマー、さらには、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、ならびにポリスチレン樹脂。他のコポリマーとしては、スチレン/無水マレイン酸樹脂およびスチレン/シェラック樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル/ビニルエーテル樹脂、および塩化ビニル/塩化ビニリデン樹脂が挙げられる。
【0165】
さらに考えられるのは、天然由来の樹脂、たとえば、アラビアゴム、グッタペルカ、カゼイン、およびゼラチンである。
【0166】
アルデヒド樹脂、たとえば、BASF AG、LudwigshafenのLaropalシリーズが好ましい。さらにワックスも、バインダー材料として考えられる。この例を挙げれば、天然ワックス、たとえば、蜜ろう、カンデリラワックス、カルナウバワックス、モンタンワックス、およびさらにはパラフィンワックスなどである。合成ワックス、たとえばPEワックスも、考えられる。
【0167】
上述のように調製したものは、たとえばペイント系または印刷インキの中に、顔料の望ましくない集塊を起こすことなく、極めて良好に組み入れることができる。
【0168】
銅または黄銅の典型的な色特性を有する、本発明の銅含有メタリック効果顔料は、コーティング組成物、たとえば、コーティング、ペイント、ワニス、印刷インキ、粉体コーティング、プラスチック、証券印刷および機密保護印刷、セラミックス、および化粧品の配合物において使用することができる。
【0169】
本発明の銅顔料または黄銅顔料は、グラビア印刷、フレキソ印刷またはスクリーン印刷のための印刷インキにおいて、特に有利に使用することができる。鏡様の効果を持つフィルムリバース塗布物を製造するための、グラビア印刷、スクリーン印刷、およびフレキソ印刷用のインキにおいて、これらの顔料を使用するのが特に好ましい。
【0170】
本発明はさらに、本発明の銅含有メタリック効果顔料を含むコーティング組成物、好ましくは印刷インキ、より好ましくはグラビア印刷、フレキソ印刷またはスクリーン印刷用のインキを提供する。
【0171】
印刷インキには、溶媒または溶媒混合物が含まれる。後者の目的の一つは、バインダーを溶解させることであるが、また別な目的は、これらの印刷インキの重要な性能特性、たとえば粘度または乾燥速度を設定することである。グラビア印刷およびフレキソ印刷用のインキのために使用される溶媒には、特に、低沸点溶媒が含まれる。その沸点は、通常、140℃以下である。高沸点溶媒は、乾燥速度を設定するために、かなり少量でのみ使用される。
【0172】
液状印刷インキに適した溶媒の例としては、エタノール、1−プロパノールもしくは2−プロパノール、置換アルコール、たとえば、エトキシプロパノールもしくはメトキシプロパノール、またはエステル、たとえば、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−プロピルおよび酢酸n−ブチルが挙げられる。言うまでもないことであるが、複数の溶媒の混合物を使用することもまた可能である。たとえば、混合物が、エタノールと、エステル、たとえば酢酸エチルまたは酢酸n−プロピルとの混合物であってもよい。
【0173】
グラビア印刷およびフレキソ印刷用のインキを用いて印刷する場合、全溶媒中のエステルの割合が約20%〜25重量%を超えないことが、一般的に推奨される。液状印刷インキに使用することが可能な溶媒は、水または主として水性の溶媒混合物を含んでいてもよい。印刷インキの性質に応じて、全成分を合計したものに対して、10%〜80重量%の溶媒を通常は使用する。
【0174】
しかしながら、本発明の印刷インキでは、溶媒が60%〜80重量%の範囲であることが、特に有利であることがわかる。
【0175】
放射線硬化が可能な印刷インキは、通常、上述のような溶媒を含まず、代わりに反応性希釈剤を含む。反応性希釈剤は、典型的には二つの機能を果たす。それは、一方では印刷インキを架橋または硬化させる機能を果たすが、他方では、しかしながら、従来からの溶媒(DE 20 2004 005 921 U1)のような役目も果たして、粘度を調節する。その例としては、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、ならびに特に多官能アクリレート、たとえば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートまたはトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0176】
本発明の印刷インキのためのバインダーとしては、原理的には、液状印刷インキに通常使用されているバインダーを使用することができる。所望の末端用途および所望の性質に応じて、当業者は適切な選択をする。好適なバインダーの例としては、ポリエステル、ポリアミド、PVCコポリマー、脂肪族および芳香族ケトン樹脂、メラミン−尿素樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、マレイン酸エステル、ロジン誘導体、ポリビニルブチラール、カゼインおよびカゼイン誘導体、エチルセルロース、ニトロセルロース、または芳香族および/もしくは脂肪族ポリウレタンが挙げられる。酢酸ビニル、ビニルアルコール、アクリレート、メタクリレート、ビニルピロリドン、またはビニルアセタールのポリマーまたはコポリマーを使用してもよい。特に有利なのは、官能基を含む超分岐状ポリマーを使用することであるが、その例は超分岐状のポリウレタン、ポリウレアまたはポリエステルアミドであり、それらはWO 02/36695およびWO 02/36697に開示されている。言うまでもないことであるが、複数のポリマーバインダーの混合物を使用することもまた可能であるが、ただし、選択された複数のバインダーが、相互に組み合わさったときに望ましくない性質を示さないことが必要である。バインダーをすべて合計した量は、典型的には、その印刷インキの全成分を合計した量に対して2%〜40重量%である。
【0177】
特に好適なバインダーとしては、たとえば、ニトロセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アクリレート、ポリビニルブチラール、ならびに脂肪族および芳香族のポリウレタンおよびポリウレア、特に超分岐状のポリウレタンおよびポリウレア、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0178】
水希釈性印刷インキのためのバインダーとして考えられるのは、特に、(メタ)アクリル酸および/またはそのエステルとスチレンとをベースとするコポリマーである。このタイプのバインダーは、印刷インキに使用するための溶液または分散体として、たとえばZinpol(登録商標)(Worlee)の名称で市販されている。さらなる例としては、芳香族および脂肪族の水性ポリウレタン、ポリエステル、ならびに水性ポリアミドが挙げられる。
【0179】
オフセット印刷インキに好適なバインダーとしては、たとえば、ロジンまたは変性ロジンが挙げられる。変性ロジンの例としては、たとえばグリセロールまたはペンタエリスリトールのようなポリオールを用いて部分的または全面的にエステル化されたロジンが挙げられる。
【0180】
放射線硬化が可能な印刷インキには、たとえばオレフィン基、ビニルエーテル基、またはエポキシド基のような架橋性の基を含むバインダーが含まれる。この場合、バインダー(反応性希釈剤を含む)を合計したものが、一般的には、印刷インキの成分全体の30%〜90重量%の範囲にある。
【0181】
本発明の印刷インキは、さらに、1種または複数の補助剤または添加剤を含んでいてもよい。添加剤および補助剤の例は、充填剤、たとえば、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム水和物またはケイ酸アルミニウムもしくはケイ酸マグネシウムである。ワックスは耐摩耗性を向上させ、潤滑性を上げるのに役立つ。その例としては、特に、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、石油ワックス、またはセレシンワックスが挙げられる。脂肪酸アミドを使用して、表面の平滑性を向上させてもよい。可塑剤は、乾燥させた膜の弾性を向上させるのに役立つ。さらに、放射線硬化が可能な印刷インキの場合には、少なくとも1種の光重合開始剤または光重合開始剤系を添加剤として使用する。効果顔料を分散させるために、分散助剤を使用してもよい。脂肪酸を使用して、印刷層の中で効果顔料のフローティングを起こし、それによって顔料が印刷層の上側境界表面の中またはその部分に集まるようにしてもよい。この手段により、有利に改良されたメタリック効果を得ることが可能である。さらに、沈降防止剤を添加してもよい。そのような添加によって、効果顔料の沈降が防止される。例としては、シリカ、セルロース誘導体、またはその他のワックス類が挙げられる。
【0182】
特に好ましい低粘度のグラビア印刷インキまたはフレキソ印刷インキを配合するためには、通常は沈降防止剤を添加することが推奨されるが、絶対に必要であるという訳ではない。全部の添加剤と補助剤を合計した量は、印刷インキの全成分の合計に対して、典型的には20重量%を超えないようにするべきであり、0.1%〜10重量%とするのが好ましい。
【0183】
本発明の印刷インキは、原理的には公知の方法である、慣用される装置、たとえば、ディソルバーまたは撹拌装置の中で、構成成分を強力に混合または分散させることによって製造することができる。ディソルバーを使用する場合、当業者ならば、エネルギーの注入を高くしすぎないようにして、本発明のメタリック効果顔料に対する損傷を防止するであろう。言うまでもないことであるが、逆の面からは、顔料を適切に分散させるのに十分な程度のエネルギーは注入しなければならない。典型的な着色顔料を本発明のメタリック効果顔料と同時に使用する場合には、印刷インキの溶媒、バインダー、および適切であるならば補助剤の一部または全部の中に、この着色顔料を予備分散させておき、本発明の顔料の添加は後回しにすることが推奨される。このようにすると、追加される顔料が分散されて特に良好な効果を与え、過度の分散操作による顔料の損傷が起きない。そうした顔料に代えて、予備分散させた顔料濃縮物を使用することも可能である。この場合においては、市販の印刷インキを少量使用することも特に手際のよい方法であるが、ただし、添加する印刷インキが印刷インキ配合物と相溶性があり、そしてその性質を損なうことがないということが必要である。
【0184】
本発明はさらに、そのコーティングが本発明の微小板形状の銅含有メタリック効果顔料を含む、コーティングされた物品も提供する。
【0185】
コーティングされた物品は、汎用物品、たとえば印字物もしくは自動車車両、または紙、板紙、厚紙、プラスチック、フィルム、金属、ガラス、石材、もしくはその他公知の材料でできた、その他の(商業的)用途に使用されるその他の物品などであってもよい。
【0186】
以下に記述する実施例は本発明を説明するものであるが、本発明を限定する訳ではない。
【0187】
実施例1:
a)金属粉体アトマイゼーション:
誘導炉に銅70重量%、亜鉛30重量%で仕込み、この初期仕込み物を融解させることによって、本発明の黄銅顔料を製造した。次いでその黄銅融解物を、前炉を有するチャンネルタイプの誘導炉へ移した。前炉の中で約1050℃の温度で液体の形態で存在している黄銅融解物を、前炉に取り付けたアトマイジングノズルによって、垂直下方向にアトマイズさせた。黄銅融解物をアトマイズさせるのに使用したノズルは、クローズカップルドノズルであった。アトマイゼーションの過程で生成した黄銅粒子は、飛行中に固化し、冷却される。アトマイゼーションは、約400℃で加熱空気を供給しながら実施した。アトマイゼーションのために使用する加熱ガスは、圧縮してから、ガスヒーター中で加熱し、次いでアトマイズされる黄銅融解物に導入した。黄銅粒子は、遠心力により堆積させた。堆積した黄銅粉体は、60μm未満のd50を有していた。気体/固体分離は、フィルターで実施した。この黄銅粉体のさらなる分離を、さらなる分級工程により実施した。得られたものは、超微細黄銅粉体(「黄銅、70:30、リッチゴールド」)であり、dpowder,10が1.4μm、dpowder,50が2.4μm、およびd90が4.0μm、さらにはdpowder,98が6μmとして製造された。
【0188】
b)摩砕添加剤の調製(EP 1 304 210 A1に基づく):
50gのPripol 1009(Unichemaの水素化C36ダイマー酸)および89mgのMPEG750(メトキシポリエチレングリコール)をガラス製の反応容器の中に量り込み、N不活性ガス下、撹拌しながら加熱して80℃とした。次いで0.8gのp−トルエンスルホン酸(触媒)を加え、その混合物を加熱して180℃とした。生成した反応水は、水セパレーターで分離した。酸価を使用して、反応の進行をモニターした。酸価は、DIN 53402に従って求めた。酸価が約24mgKOH/g添加剤に達したら、反応を停止させた。これは、約67%のエステル化度に相当する。得られたエステルの平均分子量は約1750g/molであった。
【0189】
c)摩砕:
工程a)で製造された超微細黄銅粉体を湿式摩砕するために、400gのこの金属粉体を、10kgのクロム鋼球(直径:3mm)および900gの酢酸イソプロピル、および30gの摩砕添加剤(実施例1bによるもの)が入っているミル(長さ:32cm、幅:19cm)の中に導入し、80rpmで30時間の摩砕を行った。溶媒を用いてリンスすることにより摩砕生成物を研磨ボールから分離し、濾過により単離させた。次いでそのフィルターケーキを第二のミルの中に導入した。400gの量で、このミルに導入した黄銅ペーストを、10kgのクロム鋼球(直径:1.3mm)を使用し、約900gの酢酸イソプロピル、および約25gの摩砕添加剤(実施例1bによる)と共に、60rpmの回転速度で30時間かけて摩砕した。次いで、溶媒を用いてリンスすることでその黄銅顔料ペーストを研磨ボールから分離し、次いで濃縮して、固形分含量を70重量%とした。
【0190】
実施例2:
実施例1と同様に実施したが、摩砕の際の溶媒として、酢酸イソプロピルに代えて酢酸N−プロピルを使用した。
【0191】
実施例3:
a)銅粉体アトマイゼーション
誘導炉に銅を仕込み、この初期仕込み物を融解させることにより、本発明の銅顔料を製造した。次いでその銅融解物を、前炉を有するチャンネルタイプの誘導炉へ移した。前炉の中に存在する銅融解物を、アトマイジングノズルによって、垂直下方向にアトマイズさせた。アトマイゼーションの過程で生成した銅粒子は、飛行中に固化し、冷却された。アトマイゼーションは、約500℃で加熱空気を供給しながら実施した。銅粒子は、遠心力により堆積させた。堆積した銅粉体は、60μm未満のdpowder,50を有していた。気体/固体分離は、フィルターで実施した。存在しているその銅粉体画分から、さらなる分級工程を実施して、dpowder,50の粒子サイズが10μm未満の超微細銅粉体を製造し、それから、dpowder,10が1.2μm、dpowder,50が3μm、dpowder,90が4.4μm、さらにdpowder,98が7μmである、超微細銅粉体を製造した。
【0192】
b)摩砕:
工程3a)で製造された超微細銅粉体の湿式摩砕を、実施例1cと同様にして実施した。
【0193】
比較例4:
グラビア印刷およびフレキソ印刷用のインキのための、市販されているゴールドブロンズ顔料粉体(Eckart GmbHの“Rotoflex”)は、ステアリン酸を研磨助剤として使用した、公知の多段乾式摩砕プロセス(Hametagプロセス)により製造されている。使用される出発物質は、銅が70重量%、亜鉛が30重量%で、平均粒径dpowder,50が140μmの黄銅粉体であった。分級された摩砕物質の形態で、平均粒径d50=8μmを有する、リーフィングゴールドブロンズ顔料を使用し、次いで2.5%のクエン酸を用いて表面変性を行うことにより、非リーフィング性を有するゴールドブロンズ顔料を製造した。
【0194】
比較例5:
市販のPVD顔料Metalure A(Eckart GmbH、Germany)。
【0195】
この顔料は、市販されているグラビア印刷およびフレキソ印刷のための印刷インキ(Eckartの“Ultrastar”)の中に使用されている。
【0196】
この印刷インキには、ゴールドの色調を出すために、イエローおよびオレンジのトナー染料がさらに含まれている。
【0197】
粒子の厚みを測定するために、本発明実施例1ならびに比較例4および5のサンプルについて、電界イオン走査型電子顕微鏡により、特性解析した。
【0198】
SEMによる厚み分布の測定では、サンプルを以下のようにして調製した。
【0199】
湿式摩砕した黄銅粉体から製造され、ペーストまたはフィルターケーキの形態で存在している微小板形状の黄銅顔料を、アセトンを用いて洗浄してから、乾燥させた。
【0200】
電子顕微鏡法において慣用される樹脂、たとえばTempfix(Gerhard Neubauer Chemikalien、D−48031 Muenster、Germany)を、サンプルプレートに塗布し、ホットプレート上で加熱して軟化させた。次いでそのサンプルプレートをホットプレートからおろし、軟化した樹脂の上に黄銅粉体を散布した。冷却すると、樹脂が再固化し、散布した黄銅顔料を、接着力と重力との間の相互作用のために、サンプルプレートの上にほとんど垂直に立った形で固定される様にして、調製することができた。その結果、黄銅顔料は、電子顕微鏡において、側面から適切に測定することができる。厚みの測定においては、表面に対して垂直な面に対する顔料の方位角を推定し、次式に従って厚みの評価に組み入れた。
eff=hmeas/cosα
【0201】
計算したheff値から、相対度数を用いて累積篩下分布曲線のプロットを行った。それぞれの場合において、50〜100個の粒子について計測した。
【0202】
本発明実施例1ならびに比較例4および5のサンプルの厚み分布の累積篩下分布を図1に示す。それらの測定値を、それぞれの場合で、対数正規関数にあてはめた。比較例4および5のサンプルに比較して、本発明実施例1のサンプルの全粒子分布の粒子の厚みがはるかに薄いことが明らかに読み取れる。
【0203】
以下の表1に、本発明の黄銅顔料(実施例1)の物理的特性を、市販のEckartのゴールドブロンズ顔料粉体(比較例4)およびEckartのPVDアルミニウム顔料(比較例5)と比較して示すが、物理的特性の基準としては、SEMによる測定からの、d10、d50、およびd90値、ならびに特性値h10、h50、およびh90、ならびにそれらから計算した厚み測定のスパン値を用いた。h10、h50、およびh90値は、もとの厚み計測データから分位数関数を用いて計算した。
【0204】
顔料の長さ方向の寸法dは、レーザー粒度計(Cilas 1064、Cilas、France)を用いて測定し、長さ方向の平均寸法のために選択した尺度は、常法どおり、累積篩下分布のd50値(単位、μm)とした。
【0205】
【表1】

【0206】
表1の数字から、実施例1および2の本発明の非リーフィング黄銅顔料は、比較例4のEckart GmbH、D−90763 Fuerthの安定化リーフィングゴールドブロンズ顔料である“Rotoflex”よりも、平均厚みh50が低いだけではなく、h90値も低いということがわかる。驚くべきことには、それらは、比較例5のEckartのPVDアルミニウム顔料である“Metalure A”と比較しても、顔料の厚みが薄い。
【0207】
厚み分布のスパンは、本発明の顔料の場合は、PVDアルミニウム顔料と同等である。これは、これまで湿式摩砕では得られなかったことである。従来からの湿式摩砕によるゴールドブロンズ顔料(比較例4)は、顕著に大きいスパンを示している。
【0208】
実施例1の本発明の黄銅顔料が、比較例4の従来からのゴールドブロンズ顔料よりは、実質的に狭い厚み分布(スパン)を有していることもまた、表1から明らかである。さらに、実施例1および2の本発明の黄銅顔料は、比較例4および5の顔料よりも低いパラメーターd90を有している。
【0209】
本発明実施例1および2ならびに比較例4および5の厚み分布の累積篩下分布を図1に示す。本発明の実施例1および2は、比較例4の市販のゴールドブロンズ顔料および実施例5の市販のPVDアルミニウム顔料に比較して、全粒子分布の粒子の厚みがはるかに薄いということが明らかに読み取れる。それらの測定値を、それぞれの場合で、対数正規関数にあてはめた。
【0210】
本発明の黄銅顔料のさらなる特性解析のために、透明なフィルムの上にいわゆるリバース塗布物を作製した。これは、Melinex 400フィルム(PETフィルム、50μm)に、市販のポリビニルブチラール(PVB)およびメトキシプロパノールと酢酸エチルとの混合物をベースとするグラビア印刷インキを、印刷機を使用して印刷することにより実施した。
【0211】
その着色されたフィルムリバース塗布物は、DIN 67 530に従った60゜での光沢測定により光学的に評価した(装置:Byk−Gardner、D−82538 Geretsried、Germanyのmicro−TRI−gloss)。キャリブレーションは、ダークキャリブレーション、そしてさらに、60°で92の値を有する黒色ミラーガラス板によって実施した。
【0212】
色濃度は、濃度計(装置:X−Rite、D−63263 Neu−Isenburgの濃度計)を使用して測定した。キャリブレーションは、イエロー領域の波長のところで、白色スタンダードおよび未印刷基材を使用して実施した。印刷標本の色濃度の定義は以下のとおりであり、測定は、正面から見た面で実施している。
色濃度=−lg反射率
【0213】
印刷機による試し刷り(印刷機:Rotova 300、Rotocolor、3インキユニット;印刷速度75m/分、粘度15秒 DIN 4 フローカップ、60、70、80および90ライン/cm;顔料着色レベル25%)に基づいて求めた、実施例1の本発明の黄銅顔料、および比較例4の従来からのゴールドブロンズ顔料、および比較例5の着色させた従来からのPVDアルミニウム顔料を用いて着色されたフィルムリバース塗布物の光学的性質を以下の表2に示す。
【0214】
比較例5の場合においては、イエロー(イエロー79)染料およびオレンジ(ソルベントオレンジ41)染料の混合物を2種の異なった濃度で加えた印刷インキのUltrastar(Eckart)を使用した(実施例5aおよび5b)。UltraStarトナーシリーズ(UltraStar Toner TY−21およびTO−11;Eckart)の形態の染料を混合したが、このトナーシリーズは、それぞれにおいて、メトキシプロパノール中に染料の分散体を含んでいた。
【0215】
【表2】

【0216】
表2から、実施例1の本発明の黄銅顔料を含むフィルムリバース塗布物は、比較例4および5の従来からの顔料を用いて顔料着色されたフィルムリバース塗布物よりも、各種の印刷物すべてにおいて、高い光沢を有していることがわかる。
【0217】
さらに、比較例4に比較すると、実施例1の本発明の顔料の塗布物は、より高い色濃度を有している。
【0218】
実施例1のフィルムリバース塗布物の光沢は、同様に、比較例5aおよび5bのものよりも高かった。しかしながら、比較例5aおよび5bの方が色濃度が高いことは、実施例1よりも、これらの塗布物の着色性が高いということを示唆している。しかしながら、実際には、これはあてはまらなかった。
【0219】
フィルムリバース塗布物の鏡面効果の視覚的評価では以下のような結果が得られた。
実施例1 :クリアー、極めて良好な鏡面性
実施例4 :鏡面艶消し、曇りあり
実施例5a:弱い着色、シルバー鏡面
実施例5b:艶消し鏡面
【0220】
さらなる光学的特性として、顔料着色されたフィルムリバース塗布物の明度、彩度、および色相角を求めたが、その実験結果を以下の表3に示した。明度の測定は、市販のX−Riteの装置(光源D65、10°標準観測者)を使用し、散乱測定ジオメトリーで、8°の観測角で実施した。この場合、一例として、60ライン/cmにおける数値を測定した。
【0221】
表3に記載の彩度Cは、基準のホワイトに対する、別の言い方をすれば、色空間の中で定義された最も明るい点に比較した、相対的な彩度を表している。同様に表3に記載されている色相角hは、色のシェードに割り当てられた色値であって、これは、色相と同じである。
【0222】
【表3】

【0223】
表3から、実施例1の本発明の黄銅顔料が、比較例4および5の顔料よりも強く着色されていたことが明らかである。これらの測定結果は、視覚的印象にもよく照応していた。
【0224】
このことは、実施例1のゴールドブロンズ顔料が、その顔料厚みが薄いために、高い光沢(輝き)を有し、さらにその固有の色彩のために、高い色値(彩度)を有しているということを意味している。表3からはさらに、実施例5aおよび5bのトナー着色されたフィルムリバース塗布物の光学的性質が、着色剤として使用されたトナーの量と相関があったということも明らかである。したがって、より多くの着色剤(トナー)を含む実施例5bのフィルムリバース塗布物の方が、より低いレベルの着色剤(トナー)を含む実施例5aのフィルムリバース塗布物よりも、彩度(C)は高いが、明度Lはより低く、実質的に光沢(60°)も低かった。明らかに、着色顔料が光を散乱させすぎて、そのためにメタリック効果が低下している。本発明のメタリック効果顔料を用いれば、これらの欠点を克服することができる。
【0225】
評価のためのさらなる判定規準として、粘着テープ試験(剥がれ抵抗性)により、顔料着色されたリバース塗布物の接着強度を求めた。この目的のために、粘着テープを表面に気泡が入らないようにしてしっかりと接着させた。次いでこの粘着テープを再び剥がしたが、基材は損傷を受けなかった。剥がれ抵抗性を、目視により、等級1(極めて良好)から等級5(極めて不良)までの等級付けに基づいて評価した。剥がれ抵抗性が不良ということは、相応に高いレベルで印刷物が剥離されることを反映している。
【0226】
実施例1の本発明の黄銅顔料(等級2)は、比較例4のゴールドブロンズ顔料(等級4)および比較例5のPVDアルミニウム顔料(等級3)よりも、良好な接着強度を有していることが見出された。
【0227】
たとえば印刷インキのような水性用途の顔料着色のためには、本発明の黄銅顔料が、顔料表面を完全に覆う保護層を備えていてもよい。以下の実施例6において、SiOを用いてコーティングした黄銅顔料の製造について記述する。
【0228】
実施例6:
実施例1による黄銅顔料を含むペースト55.1g(38.6gの黄銅に相当)を、375mLのイソプロパノールの中に分散させ、この分散液を沸点にまで加熱した。4.75gのテトラエトキシシランを添加した。次いで、3時間かけて、5gの水中4gの25%NHの溶液を計量仕込みした。さらに3時間経過してから、その懸濁液を冷却して室温とし、ブフナー漏斗で吸引濾過をした。次いで、その生成物を、真空乾燥器中で100℃で一夜かけて乾燥させた。
【0229】
その顔料は、HS暴露試験で極めて良好な結果を与えた。さらに、各種の水性印刷インキ系にその顔料を組み入れた。これらの系においては、集塊現象および/またはグリーン着色が、いくつかのケースではまったくなかったし、いくつかのケースでは、慣用される不動態化されたゴールドブロンズ顔料(Dorolan(登録商標)シリーズの顔料、Eckart)の場合に観察されるものよりも低レベルであった。
【0230】
グリーン着色および集塊は、それぞれ、生成する銅イオンおよび亜鉛イオンのためである。
【0231】
実験結果を総合的に見ると、本発明の顔料が、乾式摩砕法で製造された従来からのリーフィングゴールドブロンズ顔料ではこれまで達成することができなかった、特に厚み、厚み分布、および不透明性に関わる顔料特性を示すということが注目される。本発明の顔料を用いて着色されたフィルムリバース塗布物は、魅力的な色彩的特性、特に高い色濃度を伴うゴールド色の鏡面効果の点で注目に値し、これは、着色顔料を含むPVDアルミニウム顔料では、今まで達成不可能であったものである。本発明の顔料を用いて着色されたフィルムリバース塗布物は、高い接着強度を有している。さらに、本発明の顔料の不透明性が高いことの結果として、塗布媒体中で使用されるそれらの量を抑制することも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小板形状の銅含有メタリック効果顔料であって、全金属含量を基準にして、60%〜100重量%の銅含量を有し、
金属顔料が、走査型電子顕微鏡(SEM)法による厚み計測で求め、次の累積篩下分布として表される厚み分布を有し、
a)h50が10〜50nm、
b)h90が20〜70nm、
微小板形状の銅含有メタリック効果顔料が、銅含有金属粉体を潤滑剤を用いて摩砕することにより製造されることを特徴とする、微小板形状の銅含有メタリック効果顔料。
【請求項2】
顔料が、15〜45nmのh50を有することを特徴とする、請求項1に記載の微小板形状の銅含有メタリック効果顔料。
【請求項3】
顔料が、20〜60nmのh90を有することを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の微小板形状の銅含有メタリック効果顔料。
【請求項4】
顔料が、21から80nm未満までのh98を有することを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の微小板形状の銅含有メタリック効果顔料。
【請求項5】
顔料が、8〜25nmのh10を有することを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の微小板形状の銅含有メタリック効果顔料。
【請求項6】
顔料が、走査型電子顕微鏡(SEM)法による厚み計測で求め、次式に従って対応する相対度数の累積篩下曲線から計算される厚み分布の相対幅Δhが、30%〜90%であることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の微小板形状の銅含有メタリック効果顔料。
Δh=100×(h90−h10)/h50
【請求項7】
顔料が、3〜50μmの範囲の平均サイズd50を有することを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の微小板形状の銅含有メタリック効果顔料。
【請求項8】
顔料が、150〜3000の範囲の形状因子d50/h50を有することを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の微小板形状の銅含有メタリック効果顔料。
【請求項9】
顔料が、非リーフィング性を有することを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の微小板形状の銅含有メタリック効果顔料。
【請求項10】
顔料の表面が、添加剤を用いて少なくとも部分的に被覆され、添加剤が、構造単位として、少なくとも4個の炭素原子を有する少なくとも1種のカルボン酸、および少なくとも1種のポリグリコールエーテルを含み、カルボン酸とポリグリコールエーテルとが相互に共有結合していることを特徴とする、請求項9に記載の微小板形状の銅含有メタリック効果顔料。
【請求項11】
顔料が、不動態化抑制剤層および/または耐食層を用いてコーティングされていることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の微小板形状の銅含有メタリック効果顔料。
【請求項12】
顔料が、粉体またはペーストとして、好ましくはグラビア印刷、フレキソ印刷またはスクリーン印刷用のインキのためのペーストとして存在することを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載の微小板形状の銅含有メタリック効果顔料。
【請求項13】
粉体を摩砕することによって、請求項1〜12のいずれかに記載の微小板形状の銅含有メタリック効果顔料を製造するためのプロセスであって、以下の工程:潤滑剤および研磨媒体および場合によっては溶媒の存在下で、摩砕装置を使用して、dpowder,50が1〜15μm、dpowder,90が2〜27μmの粒子サイズ分布と、全金属粉体を基準にして60%〜100重量%の銅含量とを有する銅含有金属粉体を摩砕して微小板形状のメタリック効果顔料を形成させる工程が含まれ、そうして得られる微小板形状のメタリック効果顔料が、走査型電子顕微鏡(SEM)法による厚み計測で求めて、h50が10〜50nm、h90が20〜70nmの平均厚みを有している、プロセス。
【請求項14】
銅粉体または黄銅粉体が、0.8〜1.7の、Δdpowder=(dpowder,90−dpowder,10)/dpowder,50で表されるスパンを有することを特徴とする、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
銅含有金属粉体が、10〜100時間の時間をかけて摩砕されることを特徴とする、請求項13および14のいずれかに記載のプロセス。
【請求項16】
潤滑剤として添加剤が使用され、添加剤が、構造単位として、少なくとも4個の炭素原子を有する少なくとも1種のカルボン酸、および少なくとも1種のポリグリコールエーテルを含み、カルボン酸とポリグリコールエーテルとが相互に共有結合していることを特徴とする、請求項13〜15のいずれかに記載のプロセス。
【請求項17】
コーティング、ペイント、ワニス、印刷インキ、粉体コーティング、プラスチック、証券印刷および機密保護印刷、セラミックス、および化粧品配合物における、請求項1〜12のいずれかに記載の微小板形状の銅含有メタリック効果顔料の使用。
【請求項18】
請求項1〜12のいずれかに記載の微小板形状の銅含有メタリック効果顔料を含むコーティング組成物、好ましくは印刷インキ。
【請求項19】
コーティングされた物品であって、コーティングが、請求項1〜12のいずれかに記載の微小板形状の銅含有メタリック効果顔料を含む、コーティングされた物品。

【図1】
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【公表番号】特表2011−522073(P2011−522073A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510892(P2011−510892)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際出願番号】PCT/EP2009/003793
【国際公開番号】WO2009/152941
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(502099902)エッカルト ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (48)
【氏名又は名称原語表記】Eckart GmbH
【Fターム(参考)】