説明

微小気泡発生機構

【課題】 気泡の微細化効果が劇的に向上し、気体を加圧溶解して高濃度の気泡を発生させる場合においても、気泡の微細化を十分に達成できる微小気泡発生機構を提供する。
【解決手段】 すなわち、絞り部21Jから拡大部151に放出された流れは拡大部151内にて外方へ広がり、拡大部151外周領域に沿って流れる外方流れを生ずる。そして、流れ受入口152pの周囲には、拡大部151と流れ受入部152との断面積差に基づき、この外方流れを半径方向内向きに旋回させる外方流れ旋回部153が形成されており、旋回した外方流れは渦を巻きつつ気泡とともに拡大部151内に逆流する。その結果、液体中に含まれる気泡は拡大部151内に渦流とともに留まり、激しく撹拌されることにより微粉砕を十分に進行させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小気泡発生機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水中に形成される気泡は、そのサイズによりミリバブルあるいはマイクロバブル(さらには、マイクロ・ナノバブルおよびナノバブル等)に分類されている。ミリバブルはある程度の巨大な気泡であり、水中を急速に上昇して最終的には水面で破裂して消滅する。これに対して、直径が50μm以下の気泡は、微細であるが故に水中での滞在時間が長く、気体の溶解能力にも優れているため水中においてさらに縮小していき、ついには水中で消滅(完全溶解)する特殊な性質を有し、これをマイクロバブルと称することが一般化しつつある(非特許文献1)。
【0003】
近年、こうした微小気泡が多くの用途に応用され、例えば浴槽用の気泡水流噴出部やシャワー等に組み込みが可能な微小気泡発生装置が種々提案されている(特許文献1〜4)。基本的には、ベンチュリ管などの絞り機構に水流水を供給し、該絞り機構を高流速化して通過する際にベルヌーイの原理に由来して生ずる減圧効果により、水に溶解していた空気を微小気泡として析出させるキャビテーション方式が採用されている。また、予め気体を水に加圧溶解して絞り機構に供給すれば減圧発泡に伴う気泡析出量が増加し、より高濃度の微小気泡を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008− 73432号公報
【特許文献2】特開2007−209509号公報
【特許文献3】特開2007− 50341号公報
【特許文献4】特開2006−116518号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】インターネットホームページ(http://unit.aist.go.jp/emtech-ri/26env-fluid/pdf/takahashi.pdfマイクロバブルおよびナノバブルに関する研究')
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の微小気泡発生機構では、絞り機構通過後の水流中に析出した気泡をさらに微粉砕するための流れ要素として、絞り孔を通過した水流自体の開放・乱流化に伴なう渦発生のみしか期待できず、気泡の微細化レベルも十分でない欠点がある。また、気体を加圧溶解して高濃度の気泡を発生させようとした場合は、気体の急激な析出による気泡粗大化が特に進みやすいのが問題である。
【0007】
本発明の課題は、気泡の微細化効果が劇的に向上し、気体を加圧溶解して高濃度の気泡を発生させる場合においても、気泡の微細化を十分に達成できる微小気泡発生機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の微小気泡発生機構は、
液体入口と液体出口とを有し、液体入口から液体出口に向かう流路が内部に形成された中空の流路形成部材を備え、該流路形成部材の流路が、
流れ方向にて液体入口と液体出口との間に形成され、該液体入口と液体出口とのいずれよりも小断面積かつ高流速となるように形成された絞り部と、
絞り部よりも断面積が大きくなるように、絞り部に続いて形成される拡大部と、
流れ受入口が拡大部よりも小断面積であって、かつ、流れ方向と直交する平面への投影にて該流れ受入口が絞り部の開口と互いに重なりを生ずるように拡大部に続く形で形成され、絞り部から拡大部に放出される流れを流れ受入口にて受け入れて液体出口に導く流れ受入部と、
流れ受入口の周囲に形成され、拡大部に放出される流れのうち該拡大部外周領域に沿って流れる外方流れを旋回させつつ拡大部側へ戻す外方流れ旋回部と、を有することを特徴とする。
【0009】
上記本発明の微小気泡発生機構においては、流路の途上に設けた絞り部を液体が通過する際に、液体中に溶解している気体は減圧析出して気泡を生ずる。また、絞り部に供給される時点で液体中に存在していた気泡は絞り部内を高速で通過する際により微細な気泡に粉砕される。前述した如く、従来の微小気泡発生機構においては、絞り部を通過後の水流中に析出した気泡をさらに微粉砕するための流れ要素が考慮されておらず、析出気泡の成長や、もともと粗大な状態で存在していた気泡の粉砕が十分に進まないことから、微小気泡を効率よく生成することができなかった。
【0010】
しかしながら、本発明の微小気泡発生機構では、以下のような気泡の微粉砕機能を有した特有の流れ要素を形成し、上記の問題を解決することに成功した。すなわち、絞り部から拡大部に放出された流れは拡大部内にて外方へ広がり、拡大部外周領域に沿って流れる外方流れを生ずる。そして、流れ受入口の周囲には、拡大部と流れ受入部との断面積差に基づき、この外方流れを半径方向内向きに旋回させる外方流れ旋回部が形成されており、旋回した外方流れは渦を巻きつつ気泡とともに拡大部内に逆流する。その結果、液体中に含まれる気泡は拡大部内に渦流とともに留まり、激しく撹拌されることにより微粉砕を十分に進行させることができる。
【0011】
上記本発明の効果は、加圧溶解により液体中に気体を強制溶解させる場合に特に顕著に発揮される。具体的には、気体を液体と混合しつつ加圧して液体に気体を強制溶解させることにより気体濃度を上昇させた加圧濃縮気体溶解液を発生させる加圧溶解ユニットと、加圧溶解ユニットから加圧濃縮気体溶解液を減圧しつつ流出させる液体流出管とを設けることができ、該液体流出管上に流路形成部材を設けることができる。このようにすることで、絞り部に供給される液体中の溶存気体濃度が加圧溶解により高められ、キャビテーション効果により析出する気泡の数形成密度を大幅に高めることができる。加圧濃縮気体溶解液の場合、気泡が析出した時の周囲の溶存液体濃度が高いため、気泡が急速に成長しやすい傾向になる。しかし、本発明においては上記のごとく、絞り部通過後の液体が比較的粗大な気泡を含んでいても、外方流れ旋回部の作用により、拡大部内に発生する渦流にこれを巻き込んで微粉砕するので、加圧溶解特有の高濃度の気泡を均一に微細化することができ、微小で長寿命の気泡を極めて効率よく大量に発生させることができる。
【0012】
外方流れ旋回部の旋回流発生作用は、拡大部から流れ受入口を経て流れ受入部に移行する際の流路断面積の変化が急激であるほうがより顕著になる傾向にある。具体的には、流れ受入口の周囲にて拡大部から流れ受入部に向け流路断面積が階段状に変化すること、つまり、流れ受入口の周囲にて流路内周面が段付き形状となっていることが望ましいといえる。例えば、拡大部が円筒状に形成されている場合、流れ受入口が該拡大部に対し同心的に開口するとともに、拡大部を形成する壁部内周面と流れ受入部をなす壁部内周面とを接続する段部が外方流れ旋回部を形成するように構成するとよい。このようにすると、旋回流に基づく拡大部内部での渦流発生が流れ方向に関して対称形態となり、気泡粉砕を均一かつ効率的に進めることができる。
【0013】
また、流路において絞り部の上流側に隣接する形で、拡大部よりも小断面積であって絞り部の最小部よりも大断面積となるように、流れ方向に断面積が均一の準備径小部を形成でき、該準備径小部の上流側に隣接して、流路断面積を該準備径小部の入口に向け連続的に縮小させる準備縮径部を形成することができる。液体流入口から供給される液体の流れは、準備縮径部により絞り部に向けて集約されるが、絞り部に到達する直前に、断面積が均一となる準備径小部により整流することで、絞り部を通過する液体の流れを高速かつ均一なものとでき、気泡の析出及び微細化をより促進することができる。
【0014】
さらに、上記の流路に、流れ方向の全長にわたって絞り部よりも断面積が大きくなるように、絞り部の上流側に隣接して形成される準備拡大部と、該準備拡大部の上流側に隣接する形で周方向の段付き面を形成する形で接続され、該準備拡大部との接続側端部にて該準備拡大部よりも小断面積となり絞り部よりも大断面積となるように形成される流れ導入部とを設け、準備拡大部の流れ導入部との接続側の外周領域を、流れ導入部から準備拡大部内に直進する主流れの周囲を保護する流れバッファ空間とする構成が可能である。具体的には、流れ導入部を、液体入口に続く形で準備拡大部に接続する入口側導入部として形成し、準備拡大部を該入口側導入部との接続側にて液体入口よりも大断面積を有するとともに、下流側端部にて液体入口よりも流路断面積が小さく絞り部よりも流路断面積が大きくなるように断面積を漸減させる準備縮径部を有するものとして形成できる。
【0015】
流路に絞り部を形成することによる幾何学的に必然の帰結として、絞り部の上流側にはこれに隣接して絞り部よりも断面積が大きい領域が形成される。上記の構成では、この領域を準備拡大部と称し、その準備拡大部の上流側に隣接する形で周方向の段付き面が形成されるよう、該準備拡大部との接続側端部にて該準備拡大部よりも小断面積となり絞り部よりも大断面積となる流れ導入部を形成する。つまり、絞り部の直前に形成される領域に、あえてそれよりも小断面積にて流れ導入部を段付き形態で接続するのである(絞り部の直前に形成される上記領域は流れ導入部との接続側にて流路断面積が不連続に拡大するので、「準備拡大部」と称するのである)。
【0016】
流路断面積が上記のごとく不連続に拡大していることにより、準備拡大部の上流側端部において流れ導入部の接続開口周囲には流速の小さい淀み領域が流れバッファ空間として形成される。流れ導入部から準備拡大部内に直進する主流れの外周部は該流れバッファ空間で広がりながら主流れと逆向きに旋回して渦流を発生する。すなわち、上記流れバッファ空間では主流れの周囲を取り囲むように渦流が発生することで流路壁面との摩擦による主流れの圧力損失が軽減され、準備拡大部内部での液体流を高速に維持することができるようになる。準備拡大部自体を、絞り部に向けて断面積を漸減させる準備縮径部を含むものとして形成することで、絞り部に向けた液体流れの増速をスムーズに行うことができる。また、準備拡大部が入口側導入部との接続側にて液体入口よりも大断面積となることにより、準備拡大部の流れ導入部との接続側に形成される流れバッファ空間ひいては該流れバッファ空間で形成される渦流がより大きく顕著なものとなる。その結果、液体入口から流れ込む液体中に、比較的粗大な気泡が含有されている場合においても、流れバッファ空間に生ずる渦流によりこれを予備粉砕することが可能となる。
【0017】
入口側導入部は例えば円筒面状に形成することができる。また、準備拡大部の後端において、入口側導入部の接続側開口周囲をなす段付き面を、流れ方向と直交する切り立ち面状に形成され、準備絞り部の内周面は該段付き面との接続位置から絞り部に向けて流路断面積を連続的に減少させる傾斜面状に形成することができる。準備径小部は準備縮径部の出口側開口と等断面積を有するものとして形成することができる。
【0018】
絞り部は、流路内に配置された衝突部材と、流路内にて衝突部材の先端部と対向する絞りギャップ形成部とを備え、衝突部材の外面と流路の内面との間に迂回流路部が形成されるとともに、衝突部材と絞りギャップ形成部との間には、迂回流路部よりも低流量かつ高流速となるように液体流を絞りつつ通過させる絞りギャップが形成された構造を有するものとして構成できる。
【0019】
上記の構成によると、流路内に衝突部材を設け、また、該流路内にて衝突部材の突出方向先端部と対向する絞りギャップ形成部を設ける。そして、衝突部材の外面と流路内面との間に迂回流路部を形成するとともに、衝突部材と絞りギャップ形成部との間には、迂回流路部よりも低流量かつ高流速となるように液体を絞りつつ通過させる絞りギャップを形成する。このような構造の絞り部に液体流を供給すると、液体流は絞りギャップにて絞られ流速が増加する。ギャップを通過する高速液体流はギャップ出口から解放され、ベルヌーイの原理に従いギャップ及びその下流側に負圧域を形成するので、そのキャビテーション(減圧)効果により液体流中の溶存気体が析出して気泡が発生する。
【0020】
例えば特許文献1、2のようなベンチュリ管などの周知の絞り機構を用いる方式では、微細な渦流を生ずるための乱流の発生効率が低く、気泡の相互衝突確率は増大しても微小気泡への粉砕自体は進みにくい傾向にある。液体中の気泡は固体粒子と異なり、相互衝突しても気泡の合体が生じやすい。特許文献1、2に開示された機構では渦流の発生効率が低いため、液体流中の気泡に対しては比較的マクロな撹拌効果が主体的となる。また、通過液体流の流速が不十分なため、絞り孔下流側の減圧レベルも小さく渦流の発生程度も小さい。従って、キャビテーションによる気泡析出量も少ないし、渦流に巻き込むことによる気泡粉砕も進みにくいので、微小気泡を十分に形成することができなかった。結局のところ、十分に縮小した微小気泡を得るには、絞り機構通過時に生じている比較的粒径の大きい気泡を長時間循環させて気体自体の溶解により気泡を縮小させる方法に頼らざるを得ない。その結果、微小気泡を高濃度に含んだ水を得るには気体を導入しながらの長時間の循環が必要となり、微小気泡含有水の製造能率が悪い欠点があった。
【0021】
しかし、上記の構成では、従来のベンチュリ管やオリフィスなどの絞り孔以外の流路部分が存在しない構造ではなく、絞りギャップを形成する衝突部材と流路との間に、衝突部材にぶつけた液体流を迂回させる迂回流路部を形成したので、ギャップ通過時に流体抵抗が過度に増加せず、結果として該絞りギャップは従来よりもはるかに高速の液体流が通過する。これにより、絞りギャップ及びその下流でのキャビテーション(減圧)効果が大幅に高められ、溶存気体濃度が同じ液体流であってもより多量の気泡を析出させることができる。
【0022】
また、絞りギャップの通過流速が高速化することで、その下流側に立体広角的に拡がりながら形成される三次元的な負圧域の全体にわたって微小な渦流が多数形成される。また、これとは別に、衝突部材にぶつかって迂回流路部を通過した液体流が衝突部材の下流側に回りこみ、より大流量で激しい乱流が上記の負圧域に重畳して流れ込む。析出気泡を含む絞りギャップの通過流束は、これら2系統の乱流により三次元的に激しくランダムに撹拌されるとともに、析出した気泡を取り囲む多数の微小渦流がそれぞれ気泡を自身に引き込もうとする結果、気泡の微粉砕が大幅に促進される。
【0023】
拡大部は、その上流側端部が流れ方向にて衝突部材の軸断面中心よりも前方側に位置する部分と重なるように形成することができる。これにより、拡大部の内周面と、衝突部材の外周面との間には、絞りギャップに直接連通する形で、衝突部材の軸線方向(つまり、絞りギャップのギャップ対向方向)にてその外周面に沿う予備拡大領域が形成される。その結果、拡大部に発生する渦流がこの予備拡大領域に入り込んで、絞りギャップから放出される気泡が直ちに渦流に取り込まれ、気泡の微粉砕が一層促進される。
【0024】
上記構造の絞り部において迂回流路部は、流路内にて液体流通方向から見て衝突部材の突出方向に関しその片側だけに形成することもできるが、液体流通方向から見て衝突部材の突出方向に関しその両側に迂回流路部を形成しておけば、気泡析出する下流側の負圧域に向け、衝突部材の両側から回り込み乱流が合流するので気泡粉砕効果が一層高められ、微小気泡をより効率的に発生することができ、また、より細径の微小気泡を得る上でも有利となる。
【0025】
衝突部材及び絞りギャップ形成部との絞りギャップを形成する各対向面の少なくともいずれかには減圧空洞を形成することができる。すなわち、衝突部材ないし絞りギャップ形成部の絞りギャップに臨む面に形成された減圧空洞は流速の小さい淀み空間として機能するので絞りギャップ内部との流速差が拡大し、ベルヌーイの原理によるキャビテーション(減圧)効果を著しく高めることができる。その結果、液体流中の溶存空気に由来した気泡析出量が増加し、液体流中の微小気泡の濃度を高めることができる。負圧域を十分に確保する観点から、減圧空洞の開口径は1mm以上であることが望ましく、深さは開口径よりも大きいことが望ましい。
【0026】
また、減圧空洞を液体流中で共振させれば、該共振により超音波帯共鳴波が発生し、気泡析出のためのキャビテーションと、共鳴振動による気泡粉砕をさらに促進できる。円筒形の減圧空洞を形成する場合、共鳴波の帯域を超音波帯(100kHz以上)とする観点においては、その開口径を10mm未満(望ましくは4mm未満)とするのがよく、深さは開口径とほぼ等しいか、それよりも大きく設定する(望ましくは開口径のほぼ整数倍とする)のがよい。
【0027】
次に、衝突部材及び絞りギャップ形成部の絞りギャップを形成する各対向面の少なくともいずれかを、液体流入側にて該絞りギャップの間隔を上流側から下流側に向けて漸次縮小させる絞り傾斜面として形成することができる。これにより、絞りギャップの対向間隔が絞りギャップ入口からギャップ奥に向かうほど連続的に縮小するので、ギャップ奥に向けて液体流をスムーズに絞ることができ、ギャップ通過時の流量損失を低減して流速を高めることができる。また、衝突部材及び絞りギャップ形成部の絞りギャップを形成する各対向面の少なくともいずれかは、液体流出側にて該絞りギャップの間隔を上流側から下流側に向けて漸次拡大させる拡大傾斜面として形成することもできる。
【0028】
衝突部材(あるいは後述の対向衝突部材)の流路内突出部分の外周面には、液体流剥離凹凸部を形成することができる。上記のような液体流剥離凹凸部を衝突部材の外周面に形成しておくことで、流路の中心軸線方向に流れ込む液体流が液体流剥離凹凸部を乗り越える際に液体流の剥離が生じやすくなり、液体流の乱流化をさらに促進することができる。液体流剥離凹凸部は、衝突部材の流路内突出部分の外周面に形成されたねじ山とすることができる。ねじ山は衝突部材の軸線を法線とする仮想面に対して一定の傾斜角を有しており、この仮想面と平行な向きにて衝突部材に向け液体流が流れ込むと、該液体流方向に対して傾斜した複数のねじ山を横切って衝突部材の下流側に回り込む。このとき、液体流が一方の谷側から反対の谷側へねじ山の稜線部を乗り越える際に、上記乱流化に貢献する液体流剥離が特に生じやすい。
【0029】
微小気泡を十分なレベルで発生させるには、絞りギャップは、液体流入口と液体流出口との圧力差が例えば0.2MPaとなるように液体を供給したとき通過する液体流の最大流速が8m/秒以上(上限値には制限はないが、圧力差0.2MPaにて可能な上限値として、例えば50m/秒を例示できる)となるように調整されていることが望ましい。また、この場合、絞りギャップに発生する最大負圧は0.02MPa以上(理論上の上限値は0.1MPa)となっていることが望ましい。特に、前述の減圧空洞が形成されている場合は、前記圧力差が0.2MPaとなるように液体を供給したとき、該減圧空洞の全域を0.02MPa以上の負圧状態に容易に維持することができる。また、減圧空洞内の全域が該レベルの負圧状態となることで、回り込み乱流により衝突部材の下流側に隣接形成される負圧域も、0.02MPa以上の負圧状態に維持することが可能となる。いずれも、気泡析出のためのキャビテーション効果の顕著化に寄与する。絞りギャップや減圧空洞あるいはその下流側に形成される負圧域の負圧レベルは、より望ましくは0.05MPa以上となっているのがよい。
【0030】
上記のような負圧発生条件で前記圧力差が例えば0.2MPaとなるように液体を供給すれば、上記特有構成の絞り部の場合、液体流出口から噴射される液体流に含まれる気泡の微細化に大きく貢献する。例えば円状軸断面を有する衝突部材を採用する場合、前記圧力差が0.2MPaとなるように10℃の水を供給したとき、該円状軸断面を有する衝突部材の外径と迂回流路部の流通断面積とは、迂回流路部内に配置された衝突部材に関するレイノルズ数が10000以上となるように調整されているとよい。
【0031】
円柱状断面の衝突部材を液体流中に配置したとき、衝突部材の外径をD、流速をU及び水の動粘性係数をνとしてレイノルズ数Reは、
Re=UD/ν(無次元数) ‥ (1)
にて表され、該円柱状断面の衝突部材周囲の流れはレイノルズ数Reが1500以上で乱流化することが知られており、特にReが10000以上のとき、回り込み乱流による気泡の微粉砕効果は飛躍的に高められるので、個数平均値レベルでの気泡粒径をさらに容易に縮小することができる。例えば、平均流速が8m/秒以上となるように迂回流路部の流通断面積が調整されていれば、円状軸断面を有する衝突部材の外径を1〜5mmに調整することによりレイノルズ数Reの値を10000以上の値に容易に確保できる。
【0032】
特に、迂回流路部の流通断面積が、液体流入口に供給圧力0.55MPaにて10℃の水を供給したときの平均流速が18m/秒以上となるように調整され、円状軸断面を有する衝突部材の外径が1〜5mmに調整されていれば、迂回流路部内に配置された衝突部材に関するレイノルズ数Reは20000を超える値となる。そして、衝突部材が形成する絞りギャップでの通過液体流の最大流速が25m/秒以上となっていれば、噴射される液体流に含まれる微小気泡の数平均粒径を、電解質を積極添加しない淡水では従来実現不能と考えられていた1μm以下の値(例えば、1nm以上500nm以下の値、望ましくは1nm以上100nm以下の値、さらに望ましくは1nm以上50nm以下の値)に縮小することが可能となる。つまり、数平均値レベルにてナノバブル領域となる微小気泡を、複雑で高価なバブル発生装置を用いずとも容易に発生できる。また、上記の流速条件が充足されている状況下では、絞りギャップや減圧空洞あるいは下流側負圧域の負圧レベルは、0.05MPa以上にまで高めることができるので、発生可能な微小気泡の濃度も大幅に高められる。
【0033】
次に、上記構成の絞り部において絞りギャップの間隔を縮小すればギャップ通過流量は減少する一方、迂回流路部へ流れ込む水量が増大する。従って、絞りギャップの通過流速が過度に減少しない範囲内で絞りギャップ間隔を縮小すれば、絞りギャップで発生した微小気泡の回り込み乱流による微小化効果が高められ、より細径の気泡を発生できる。他方、絞りギャップの間隔を拡大すれば、絞りギャップ内の流通抵抗が減少するので、迂回流路部も合わせ流路断面全体で得られる噴射流量を増やすことができる(この場合、ギャップ間隔の設定値によっては、絞りギャップ内の流速がやや不足傾向となる場合もあるが、噴射流量の確保が優先される場合には有利となる)。そこで、上記絞り部に、絞りギャップの間隔を変更可能に調整する絞りギャップ間隔調整機構を設けておけば、気泡細径化と噴射流量との要求レベルに応じて絞りギャップの間隔を適宜調整できる。
【0034】
絞りギャップ形成部は、流路の断面中心に関して衝突部材と反対側にて壁部内面から衝突部材に向けて突出する対向衝突部材として形成することができ、絞りギャップを衝突部材の突出方向先端部と対向衝突部材の突出方向先端部との間に形成することができる。例えば、衝突部材の先端面を流路壁部内周面と対向させて絞りギャップを形成してもよく、この場合は流路壁部の衝突部材との対向部分が絞りギャップ形成部を構成することとなる。しかし、この構成では、壁面摩擦による流量損失の大きい流路軸断面の外周縁領域に絞りギャップが位置するので、絞りギャップの通過流速も小さくなりがちである。しかし、対向衝突部材を設けることで絞りギャップの形成位置を流速の大きい断面中心側に近づけることができ、絞りギャップの通過流速が増大してキャビテーション効果が高められ、微小気泡をより効率的に発生させることができる。
【0035】
また、衝突部材と対向衝突部材との少なくとも一方の絞りギャップに臨む先端部分には、先端に向かうほど径小となるテーパ状の周側面を有した縮径部を形成することができる。このような縮径部を設けることにより、次のような効果が達成される。
・衝突部材ないし対向衝突部材の縮径部の外周面先端付近においては、液体流の衝突迂回長が外周面基端付近よりも短くなり流速が増大する。また、縮径部外周面の液体流方向上流側に位置する部分は前述の絞り傾斜面を形成する。これにより、絞りギャップ付近の乱流発生効果がさらに高められ、微小気泡の発生効率がさらに向上する。
・衝突部材と対向衝突部材とに対し、液体流の衝突迂回による渦流ないし乱流の発生効果が、それらの対向方向と直交する面内だけでなく、対向方向と平行は面内(つまり、縮径部を絞りギャップ側に乗り越える方向)にも生じ、三次元的な気泡の微粉砕効果が一層高められる。
【0036】
対向衝突部材を設ける場合には、衝突部材及び対向衝突部材の一方又は双方に、絞りギャップに臨む先端面にギャップ形成方向に引っ込む前述の減圧空洞を形成できる。特に衝突部材及び対向衝突部材の一方に減圧空洞を形成し、他方には、その先端が減圧空洞の開口に臨む位置関係にて縮径部を形成する構成を採用すると、絞りギャップ内の液体流は該縮径部により大幅に速度を高めることができる。そして、その増速された液体流が減圧空洞内の淀み部分と接することで極めて大きな流速差が生じる。また、縮径部を乗り越える際に減圧空洞側に液体流が屈曲形態で迂回することで、該流速差の生ずる区間長も増大する(この効果は、縮径部の先端側の一部が減圧空洞の内部に入り込むように位置調整されている場合により顕著となる)。さらに、後述のごとく、この縮径部の形成により減圧空洞の共鳴効果をより顕著にできる可能性がある。いずれも、微小気泡の発生効率向上と、気泡径の更なる微小化に有効に貢献する。
【0037】
具体的には、絞りギャップは、衝突部材の先端面にて減圧空洞の開口周縁部をなす周縁領域と縮径部のテーパ状の周側面とが対向することにより楔状断面を有し、かつ空間外周側が迂回流路部に開放する円環状のギャップ周縁空間と減圧空洞とが、減圧空洞の開口内周縁と縮径部の周側面との対向位置に形成される円環状のくびれギャップ部を介して互いに連通した構造をなすように構成できる。これにより、縮径部外周面の、液体流方向に関し絞りギャップの両側に位置する部分も補助的なギャップとして機能する。従って、絞りギャップを通過しない液体流も、該補助的なギャップを通過する際にキャビテーションを生じ、微小気泡の発生効率向上に寄与する。
【0038】
なお、対向衝突部材を設ける場合、迂回流路部を衝突部材の外周面と対向衝突部材の外周面とにまたがる形で形成するとよい。これにより、衝突部材と対向衝突部材との双方が回り込み乱流の発生に寄与し、析出気泡の微粉砕効果が一層向上する。
【0039】
また、絞りギャップの液体流入側開口位置におけるギャップ間隔の中心をギャップ中心として定義したとき、流路の断面半径方向にて流路壁部の内面からギャップ中心までの距離が、断面中心からの距離よりも小さくならない範囲にて、該ギャップ中心が断面中心から半径方向に所定長オフセットするように絞りギャップの形成位置を調整しておくと、絞りギャップでの微小気泡の発生効率をさらに高めることができる。
【0040】
衝突部材と対向衝突部材とは各々、該流路形成部材の流路壁部に対し先端側が流路内に突出し、後端側が流路形成部材の外周面に露出するように、該流路壁部を貫通する形態にて配置することができる。そして、対向衝突部材は、外周面に雄ねじ部が形成されるとともに流路壁部に貫通形成された雌ねじ孔にねじ込まれる構成とすることができる。これにより、該雌ねじ孔内における該対向衝突部材の螺進量に応じて絞りギャップの間隔を調整することができる。また、衝突部材も同様のねじ部材として構成することで、流路断面内の絞りギャップの位置(特に、半径方向における断面中心からのオフセット量)を調整することも可能となる。この対向衝突部材の雄ねじ部も前述の液体流剥離凹凸部として活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の微小気泡発生機構を用いた微小気泡含有液体生成装置の一構成例を示す模式図。
【図2A】気泡微小化ノズルの平面図及び横断面図。
【図2B】気泡微小化ノズルの要部を拡大して示す横断面図。
【図3】衝突部材を用いて形成する絞りギャップ構造の拡大軸断面図。
【図4】気体吸引ノズルの構造を示す横断面図。
【図5】衝突部材による乱流形成作用を模式的に示す説明図。
【図6】複数の渦流により気泡が引き裂かれて微小化する概念を説明する図。
【図7】衝突部材及び対向衝突部材の作用説明図。
【図8】衝突により気泡が合体する概念を説明する図。
【図9】ギャップ周縁空間の作用説明図。
【図10】水流に及ぼすねじ山の作用説明図。
【図11】水流剥離凹凸部をセレーション状に形成した衝突部材の一例を示す斜視図。
【図12】気泡微小化ノズル内の流れ解析結果を示すシミュレーション画像(横断面図)。
【図13】気泡微小化ノズル内の流れ解析結果を示すシミュレーション画像(平面図)。
【図14】気泡微小化ノズルの第一の変形例を示す横断面図。
【図15】気泡微小化ノズルの第二の変形例を示す横断面図。
【図16】絞りギャップの第一の変形例を示す軸断面図。
【図17】同じく第二の変形例を示す軸断面図。
【図18】同じく第三の変形例を示す軸断面図。
【図19】同じく第四の変形例を示す軸断面図。
【図20】同じく第五の変形例を示す軸断面図。
【図21】同じく第六の変形例を示す軸断面図及び平面図。
【図22】同じく第七の変形例を示す軸断面図及び横断面図。
【図23】同じく第八の変形例を示す軸断面図及び横断面図。
【図24】気泡微小化ノズルの第三の変形例を示す横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明を実施するための形態を添付の図面を用いて説明する。
図1は、本発明の微小気泡発生機構を使用した微小気泡含有液体生成装置の一構成例を示す模式図である。微小気泡含有液体生成装置1は、気泡導入媒体となる液体として水を採用するようになっており、原料水導入管路372(原料水の導入を開閉するバルブ2が設けられている)を介して主タンク319に原料水が供給される。なお、気泡導入媒体となる液体は、用途に応じて水以外のものを採用してもよい(例えば、アルコールのほか、ガソリン、軽油、重油などの化石燃料などを例示できるが、これらに限定されるものではない)。主タンク319の上面には大気開放口319Lが形成されており、内圧が大気圧に保たれるようになっている。また、符号319kはタンク内の微小気泡含有水を取り出すための取出し口である。
【0043】
主タンク319からは循環管路313が延出しており、その末端がポンプ301の吸引側に接続されるとともに、その途上には気体吸引ノズル315が設けられている。気体吸引ノズル315には気体供給管309が接続されるとともに、気泡媒体となる気体が該気体供給管309を経て気体吸引ノズル315内に吸引され、循環管路313を通過する液体に混合・導入される。他方、ポンプ301の排出側からは加圧導入管路311が延出し、その末端が加圧溶解タンク310に接続される。気体吸引ノズル315にて気体が混合された液体はポンプ301により加圧溶解タンク310に圧送されるようになっている。加圧溶解タンク310では、気体と水とが混合しつつ加圧され、水に気体が強制溶解して気体濃度が上昇することにより加圧濃縮気体溶解水が発生する。つまり、気体吸引ノズル315と加圧溶解タンク310とが、気体と液体とを接触させた状態で加圧し、液体に気体を強制溶解させることにより気体濃度を上昇させた加圧濃縮気体溶解液を発生させる加圧溶解ユニットを構成する。
【0044】
加圧溶解タンク310からは、該加圧溶解タンク310内の加圧濃縮気体溶解水を減圧しつつ流出させる水流出管312が延出し、その末端が主タンク319に接続されている。該水流出管312上に本発明の微小気泡発生機構として構成された気泡微小化ノズル21が設けられ、加圧溶解タンク310から流出する加圧濃縮気体溶解水は気泡微小化ノズル21を通過することにより微小気泡含有水となって主タンク319に戻される。なお、水流出管312上にて気泡微小化ノズル21の上流側には、該気泡微小化ノズル21への加圧濃縮気体溶解水の送液圧力(ひいては、加圧溶解タンク310の内圧)を調整する圧力バルブ316が設けられている。
【0045】
図2Aは、気泡微小化ノズル21の構成例を示す平面図および横断面図である。また、図2Bは、その要部を拡大して示す横断面図である。気泡微小化ノズル21は液体入口31と液体出口106とを有し、液体入口31から液体出口106に向かう流路FPが内部に形成された中空の流路形成部材20を備える。なお、本実施形態において流路FPは、中心軸線Oに関する回転体形状に形成されており、流れ方向は中心軸線Oの向きに一致する。具体的には、流路FPは、以下のような要素を備えている。
・絞り部21J:流れ方向にて液体入口31と液体出口106との間に形成され、該液体入口31と液体出口106とのいずれよりも小断面積かつ高流速となるように形成されている。
・拡大部151:絞り部21Jよりも断面積が大きくなるように、絞り部21Jに続いて形成される。この実施形態では、拡大部151は流れ方向に断面積が均一となる均一断面部、具体的には円筒面として形成される。
【0046】
・流れ受入部152:流れ受入口152pが拡大部151よりも小断面積であって、かつ、流れ方向と直交する平面への投影にて該流れ受入口152pが絞り部21Jの開口と互いに重なりを生ずるように拡大部151に続く形で形成され、絞り部21Jから拡大部151に放出される流れを流れ受入口152pにて受け入れて液体出口106に導く。この実施形態では、流れ受入部152も円筒面状に形成されている。
【0047】
・外方流れ旋回部153:流れ受入口152pの周囲に形成され、拡大部151に放出される流れのうち該拡大部151外周領域に沿って流れる外方流れFSを旋回させつつ拡大部151側へ戻す。この実施形態では、拡大部151が円筒状に形成され、流れ受入口152pが該拡大部151に対し同心的に開口するとともに、拡大部151を形成する壁部内周面と流れ受入部152をなす壁部内周面とを接続する段部が外方流れ旋回部153を形成する。
【0048】
・準備拡大部156:絞り部21Jよりも断面積が大きくなるように、絞り部21Jの上流側に隣接して形成される。
・流れ導入部150:準備拡大部156の上流側に隣接する形で周方向の段付き面を形成する形で接続され、該準備拡大部156との接続側端部にて該準備拡大部156よりも小断面積となり絞り部21Jよりも大断面積となるように形成される。
そして、準備拡大部156の流れ導入部150との接続側の外周領域が、流れ導入部150から準備拡大部156内に直進する主流れFMの周囲を保護する流れバッファ空間155を形成する。
【0049】
流れ導入部150は、液体入口31に続く形で準備拡大部156に接続する円筒面状の入口側導入部(以下、入口側導入部150ともいう)として形成され、準備拡大部156は該入口側導入部150との接続側にて液体入口31よりも大断面積を有するとともに、下流側端部にて液体入口31よりも流路断面積が小さく絞り部21Jよりも流路断面積が大きくなるように断面積を漸減させる準備縮径部30を有する。また、準備縮径部30と絞り部21Jとの間には、液体入口31よりも流路断面積が小さく絞り部21Jよりも流路断面積が大きい、均一断面積の準備径小部157が形成されてなる。
【0050】
準備拡大部156の後端において、入口側導入部150の接続側開口周囲をなす段付き面156fが流れ方向と直交する切り立ち面状に形成され、準備縮径部30の内周面は該段付き面156fとの接続位置から絞り部21Jに向けて流路断面積を連続的に減少させる傾斜面(ここでは、円錐面)状に形成されている。準備径小部157は準備縮径部30の出口側開口と等断面積を有するものとして形成されている。
【0051】
なお、入口側導入部150の内径をD、準備拡大部156の上流側端部の内径をD、準備径小部157の内径をD、拡大部151の内径をD、流れ受入部152の内径をDとして、
<D
<D
>D
<D
となるように、各部の寸法が設定されている。また、本実施形態では、
>D>D(=D)>D
となるように設定されている。
【0052】
次に、絞り部21Jの構造について説明する。絞り部21Jは絞りギャップ21Gと迂回流路部251(図3)とからなる。絞りギャップ21Gを形成するのは、流路形成部材20内にて流路壁部25よりも半径方向内側に配置された衝突部材22と、流路FP内にて衝突部材22の突出方向先端部と対向する絞りギャップ形成部23とである。図3に示すように、気泡微小化ノズル21において衝突部材22の外周面と流路壁部25の内面との間に迂回流路部251が形成される。また、衝突部材22と絞りギャップ形成部23との間に絞りギャップ21Gは、迂回流路部251よりも低流量かつ高流速となるように水流を絞りつつ通過させるものとして形成される。
【0053】
流路形成部材20は、金属、セラミックあるいは樹脂にて構成される。図2Aに示すように、絞りギャップ形成部23は、流路FPの断面中心Oに関して衝突部材22と反対側にて壁部内面から衝突部材22に向けて突出する対向衝突部材(以下、対向衝突部材23ともいう)として形成され、絞りギャップ21G(図3)は衝突部材22の突出方向先端部と対向衝突部材23の突出方向先端部との間に形成されている。気泡微小化ノズル21の流路形成部材の両端は前後の配管に対し、例えばワンタッチ継ぎ手等により接続が可能である(ただし、ねじ継ぎ手など他の接続構造を採用してもよい)。
【0054】
衝突部材22及び対向衝突部材23はいずれも金属製(例えばステンレス鋼製:例えば、SUS316材)のねじ部材として構成され、いずれも流路壁部25に対し先端側が流路FP内に突出し、後端側が流路壁部25の外周面に露出するように該流路壁部25を貫通する形態にて配置されている。衝突部材22の外周面には雄ねじ部22tが形成され、流路壁部25に貫通形成された雌ねじ孔22uにねじ込まれている。該雌ねじ孔22u内における該衝突部材22の螺進量に応じて絞りギャップ21Gの間隔が調整可能である。また、対向衝突部材23の外周面にも雄ねじ部23tが形成され、流路壁部25に貫通形成された雌ねじ孔23uにねじ込まれている。該雌ねじ孔23u内における該対向衝突部材23の螺進量に応じて絞りギャップ21Gの間隔が調整可能である。また、衝突部材22と対向衝突部材23との双方を同一方向に螺進させれば、絞りギャップ21Gの、流路FPの軸断面半径方向における位置を変更することも可能である。これらの部材の螺進調整を容易にするために、流路壁部25外に突出する衝突部材22と対向衝突部材23との各頭部端面には六角レンチなどの工具を係合させる工具係合孔222,232がそれぞれ形成されている。また、流路形成部材20の外周面には、衝突部材22及び対向衝突部材23の外側端部を収容するためのスリーブ22S及び23Sが突出形成されている。
【0055】
なお、絞りギャップ21Gの間隔ないし位置を固定として調整を特に行なわない場合には、衝突部材22及び対向衝突部材23を流路壁部25に対し、インサート成型等により螺進不能に固定・一体化する構成も可能である。さらに、衝突部材22及び対向衝突部材23の一方のみを螺進操作可能として、他方を流路壁部25に螺進不能に固定一体化することもできる。
【0056】
図3に示すように、衝突部材22には、絞りギャップ21Gに臨む先端面にギャップ形成方向に引っ込む減圧空洞221が形成されている。また、対向衝突部材23には先端が減圧空洞221の開口に臨む位置関係にて縮径部23kが形成されている(ただし、対向衝突部材23に減圧空洞を形成し、衝突部材22に縮径部を形成してもよい)。対向衝突部材23に形成された縮径部23kは、先端に向かうほど径小となるテーパ状の周側面231(具体的には円錐面)を有している。該テーパ状の周側面231の水流入側(流れ上流側)に位置する部分は、該絞りギャップ21Gの間隔を上流側から下流側に向けて漸次縮小させる絞り傾斜面を構成する。また、水流出側(流れ下流側)に位置する部分は、絞りギャップ21Gの間隔を上流側から下流側に向けて漸次拡大させる拡大傾斜面を構成する。衝突部材22と対向衝突部材23とは同心的に配置されている。また、減圧空洞221は衝突部材22の外周面と同心的な位置関係にある円筒面状の内周面を有する。また、縮径部23kは先端側の一部が減圧空洞221の内部に入り込むように軸線方向の位置が調整されている。
【0057】
絞りギャップ21Gは、衝突部材22の先端面にて減圧空洞221の開口周縁部をなす周縁領域224と縮径部23kのテーパ状の周側面231とが対向することにより楔状断面を有する円環状のギャップ周縁空間251nが形成されている。該ギャップ周縁空間251nの空間外周側は迂回流路部251に開放するとともに、減圧空洞221の開口内周縁と縮径部23kの周側面との対向位置に形成される円環状のくびれギャップ部21nを介して減圧空洞221と互いに連通した構造をなす。迂回流路部251は、流路FP内にて水流通方向から見て衝突部材22の突出方向に関しその両側に、それぞれ衝突部材22の外周面と対向衝突部材23の外周面とにまたがる形で形成されている。
【0058】
また、図2Bに示すように、絞り部21Jの下流側に形成される拡大部151は、その上流側端部が流れ方向にて衝突部材22(及び対向衝突部材23)の軸断面中心λよりも前方側に位置する部分と重なるように形成されている。
【0059】
次に、図4は、気体吸引ノズル315の内部構造を示す横断面図である(気泡微小化ノズル21と概念的に共通する構成要素には同一の符号を付与している)。該気体吸引ノズル315も、金属、セラミックあるいは樹脂にて構成され、液体入口31から液体出口106に向かう流路FPが内部に形成された中空の流路形成部材20を備える。流路FPは、具体的には、以下のような要素を備えている。
・絞り部21J:流れ方向にて液体入口31と液体出口106との間に形成され、該液体入口31と液体出口106とのいずれよりも小断面積かつ高流速となるように形成されている。
・準備拡大部156:絞り部21Jよりも断面積が大きくなるように、絞り部21Jの上流側に隣接して形成される。
・流れ導入部150:準備拡大部156の上流側に隣接する形で周方向の段付き面を形成する形で接続され、該準備拡大部156との接続側端部にて該準備拡大部156よりも小断面積となり絞り部21Jよりも大断面積となるように形成される。
そして、準備拡大部156の流れ導入部150との接続側の外周領域が、流れ導入部150から準備拡大部156内に直進する主流れの周囲を保護する流れバッファ空間155を形成する。
【0060】
準備拡大部156(内径d)は液体入口31(内径d)よりも流路断面積が小さく形成される。また、流れ導入部150は、液体入口31に続く形で準備拡大部156に接続する入口側導入部25Lと、該入口側導入部25Lと準備拡大部156との間に形成され、上流端側(内径d)にて準備拡大部156よりも流路断面積が大きく、下流端(内径d)にて準備拡大部156よりも流路断面積が小さくなるように、準備拡大部156に向けて断面積を漸減させる準備縮径部30とを有する。さらに、準備縮径部30と準備拡大部156との間に、絞り部21Jの最小部よりも大断面積であって入口側導入部25Lよりも小断面積となるように、流れ方向に断面積が均一の準備径小部157(内径d)が形成されている。該準備径小部157は準備縮径部30とともに流れ導入部150を形成するものであり、準備縮径部30の出口側開口と等断面積を有するものとして、ここでは円筒面状に形成されている。
【0061】
また、絞り部21Jに発生する負圧により、該絞り部21Jを流れる液体に気体を吸引導入するノズル通路226が絞り部21Jに連通する形で形成されている。そして、流路FPは、絞り部21Jよりも下流側の液体出口106に至るまでの区間26において流路断面積が一定、ここでは、円筒面状に形成されている。なお、準備拡大部156は、該区間26の絞り部21J側の延長面と一致する形で円筒面状に形成されている。
【0062】
気体吸引ノズル315の絞り部21Jの形成形態は、衝突部材22及び対向衝突部材23を用いて絞りギャップ21G及び迂回流路部251(図3)が形成される点において、図3を用いて説明した気泡微小化ノズル21の絞り部21Jと全く同じである。以下、その相違点についてのみ詳細に説明し、共通部分についての説明は省略する。
【0063】
すなわち、気体吸引ノズル315においては、衝突部材22にノズル通路226が形成されている。ノズル通路226は、該衝突部材22を(結果的には流路壁部25を)流路FP内への突出方向に貫通する形で、一端側が該衝突部材22の先端側にて絞りギャップ21G内に気体噴出口226dを開口し、他端側が流路壁部25を貫通して壁部外面に気体取入口226eを開口する形で形成されている(前述の工具係合孔222と減圧空洞221がノズル通路の一部を構成していると見ることもできる)。衝突部材22を収容するためのスリーブ22Sには、該スリーブ22S内の衝突部材22の端面よりも外側に外れた位置に気体供給孔309Jが貫通形成され、気体供給管309がここに接続される。なお、スリーブ22Sは、軸線方向に形成された衝突部材22の収容孔の開口はキャップ22Cにより密閉されている。気体供給管309に供給される気体の種別は特に限定されないが、例えば、空気、酸素、オゾン、炭酸ガス、水素などであり、また、それらの1種または2種以上、あるいは、さらにその他の希釈ガス(例えば、窒素、アルゴンなど)との混合ガスを採用可能である。これらのガスが、気体供給管309を経てノズル通路226の気体取入口226eに供給されると、絞りギャップ21G内に発生する水流負圧により、気体は該ノズル通路226を経て吸引取り込みされ、気体噴出孔226dから絞りギャップ21G内に噴出する。
【0064】
図4に示すように、流路形成部材20の下流側外周面には接続用雌ねじ部274が形成されている。また、上流側内周面には接続用雌ねじ部278uが形成されている。これら接続用雄ねじ部274及び接続用雌ねじ部278uにて、流路形成部材20は配管に対し螺合により接続される。なお、流通経路接続部はねじ部に限らず、必要な耐圧を確保できるものであれば、例えばワンタッチ継手など、周知の他の配管接続構造を採用してもよい。
【0065】
以下、図1の微小気泡含有液体生成装置1の動作について説明する。まず、バルブ2を開状態とし、主タンク319内に原料水を供給しつつポンプ301を動作させる。ポンプ301は、主タンク319から気体吸引ノズル315を介して原料水を吸引する。図4に示すように、原料水は気体吸引ノズル315を通過する際に、準備縮径部30にて流れを絞られ流速を上昇させた後、準備径小部157及び準備拡大部156を経て絞り部21Jに供給される。
【0066】
流れ導入部150の末端をなす準備径小部157と準備拡大部156とは、両者の接続位置で段付き面を形成する形で不連続に断面積を増大させる。流路断面積が上記のごとく不連続に拡大していることにより、準備拡大部156の上流側端部において準備径小部157の接続開口周囲には流速の小さい淀み領域が流れバッファ空間155として形成される。準備径小部157から準備拡大部156内に直進する主流れFMの外周部は該流れバッファ空間155で広がりながら主流れFMと逆向きに旋回して渦流SWを発生する。すなわち、上記流れバッファ空間155では主流れFMの周囲を取り囲むように渦流SWが発生することで流路壁面との摩擦による主流れFMの圧力損失が軽減される。
【0067】
すなわち、準備縮径部30で増速された液体流は、液体入口31よりも流路断面積が小さい準備拡大部156を経て絞り部21Jに供給されるが、高速の液体流は、準備拡大部156の流れバッファ空間155に形成される渦流SWにより損失が軽減され、高流速状態を十分に維持した状態で絞り部21Jに供給されるので、ノズル通路226を介した絞り部21Jへの気体吸引量を増大させることができる。なお、流路FPは、絞り部21Jよりも下流側の液体出口106に至るまでの区間26の全体が、流路断面積が一定の円筒面状に形成されている。つまり、絞り部21Jよりも下流では付加的な断面縮小部が形成されず、絞り部21Jの通過流速を高速に維持する上での配慮がなされている。
【0068】
絞り部21Jでは、図3に示すごとく、衝突部材22と対向衝突部材23とにより、絞りギャップ21Gと迂回流路部251とを複合させた特有の構造が採用されており、絞りギャップ21Gへの気体吸引により形成される気泡の微小粉砕が顕著に進行する。その具体的な作用については、同様の絞りギャップ構造を採用する気泡微小化ノズル21を説明する際に詳述する。
【0069】
図1に戻り、こうして供給された気体は気体吸引ノズル315内で効率よく微細化され、微小気泡含有水となってポンプ301により加圧溶解タンク310へ圧送される。加圧溶解タンク310の出口側は、つまり、水流出管312上に設けられた圧力バルブ316により液体流出量が制限されているので、加圧溶解タンク310内に微小気泡含有水が圧送されれば液面上昇に伴いタンク内の圧力は上昇し、気泡状態で供給された気体の溶解が進行して加圧濃縮気体溶解液が生成する。気体溶解量はタンク内の圧力が上昇するほど増加するが、加圧導入管路311を経て加圧溶解タンク310へ流入する液体量と、圧力バルブ316から流出する液体量とが等しくなったところで加圧溶解タンク310内の液面上昇は停止し、内部圧力もほぼ一定となる。液体への気体溶解量を支配するタンク内圧は圧力バルブ316の開度により決定することができる。
【0070】
そして、加圧溶解タンク310から圧力バルブ316を経て水流出管312に流れ出す加圧濃縮気体溶解液は、減圧されつつ図2Aの気泡微小化ノズル21に流れ込む。図2Bに示すように、この場合も入口側導入部150の末端と準備拡大部156をなす準備縮径部30とは、両者の接続位置で段付き面156fを形成する形で不連続に断面積を増大させる。これにより、準備縮径部30の上流側端部において入口側導入部150の接続開口周囲には流れバッファ空間155が形成され、より大きく顕著な渦流SWが発生する。該渦流SWが発生することで流路壁面との摩擦による主流れFMの圧力損失が軽減されるとともに、加圧溶解した過飽和の気体が比較的粗大な気泡となって析出していても、流れバッファ空間155に生ずる渦流SWによりこれを予備粉砕することが可能となる。加圧濃縮気体溶解水の場合、気泡が析出した時の周囲の溶存液体濃度が高いため、気泡が急速に成長しやすい傾向になる。しかしながら、流れバッファ空間155に生ずる渦流によりこれを予備粉砕し、その後、絞り部21Jの急速な流れに巻き込むことで気泡のさらなる微粉砕を行うことが可能となる。
【0071】
こうして準備縮径部30により増速され、粗大気泡が予備粉砕された水流は絞り部21Jに供給される。図7(B,C)に示すように、絞りギャップ21Gには水流負圧が発生し、そのキャビテーション効果により溶存気体が析出してギャップ通過水流WFには気泡BMが析出する。一方、図3において、水流はその全てが絞りギャップ21Gに供給されるわけではなく、相当部分が衝突部材22に衝突し迂回流路部251側へ迂回する。図5に示すように、この迂回する水流は、多数の小渦流SWEを三次元的に発生させつつ該衝突部材22の下流側に回り込む回り込み乱流CFを形成する。ギャップ通過水流WFに形成された析出気泡BMは、該回り込み乱流CFに巻き込まれて微小気泡BFに粉砕される。
【0072】
上記のごとく、衝突部材22を用いて絞りギャップ21Gを形成することにより、絞りギャップ21Gにて負圧を発生させるにとどまらず、衝突部材22に高速で衝突させ下流側に回り込ませることで激しい乱流を三次元的に発生させ、それによって絞りギャップ21Gの直下流域に多数の小渦流を密集して形成することができる。準備縮径部30(図2A)の通過により、図7のAに示すように、加圧濃縮気体溶解液の流れWFは、例えば10〜20m/秒前後に増速された形で絞りギャップ21Gに向けて流れ込む。他方、図3に示すように、絞りギャップ21Gを形成する衝突部材22及び対向衝突部材23は、流路壁部との間に、ぶつかった水流WFを迂回させる迂回流路部251を形成している。つまり、絞りギャップ21Gの外周縁が迂回流路部251に開放していることで、ギャップ通過時の流体抵抗が過度に増加せず、結果として、該絞りギャップ21Gを水流WFは、例えば25m/秒を超える高速で通過することができる。これにより、絞りギャップ21G内及びその下流の広い領域にわたって強い負圧域が発生し、流れWFに含有される溶存気体が析出して気泡BMが多量に発生する。
【0073】
絞りギャップ21Gは、液体入口31と液体出口106との圧力差が例えば0.2MPaとなるように液体を供給したとき通過する液体流の最大流速が8m/秒以上(上限値には制限はないが、圧力差0.2MPaにて可能な上限値として、例えば50m/秒を例示できる)となるように調整されていることが望ましい。また、この場合、絞りギャップに発生する最大負圧は0.02MPa以上(理論上の上限値は0.1MPa)となっていることが望ましい。特に、衝突部材22に減圧空洞221が形成されている場合は、前記圧力差が0.2MPaとなるように液体を供給したとき、該減圧空洞221の全域を0.02MPa以上の負圧状態に容易に維持することができる。また、減圧空洞内221の全域が該レベルの負圧状態となることで、回り込み乱流により衝突部材22の下流側に隣接形成される負圧域も、0.02MPa以上の負圧状態に維持することが可能となる。いずれも、気泡析出のためのキャビテーション効果の顕著化に寄与する。絞りギャップ21Gや減圧空洞221あるいはその下流側に形成される負圧域の負圧レベルは、より望ましくは0.05MPa以上となっているのがよい。
【0074】
上記のような負圧発生条件で前記圧力差が例えば0.2MPaとなるように液体を供給すれば、上記特有構成の絞り部の場合、液体流出口から噴射される液体流に含まれる気泡の微細化に大きく貢献する。例えば円状軸断面を有する衝突部材22を採用する場合、前記圧力差が0.2MPaとなるように10℃の水を供給したとき、該円状軸断面を有する衝突部材22の外径と迂回流路部251の流通断面積とは、迂回流路部内に配置された衝突部材に関するレイノルズ数が10000以上となるように調整されているとよい。
【0075】
円柱状断面の衝突部材22を液体流中に配置したとき、衝突部材の外径をD、流速をU及び水の動粘性係数をνとしてレイノルズ数Reは、
Re=UD/ν(無次元数) ‥ (1)
にて表され、該円柱状断面の衝突部材22の周囲の流れはレイノルズ数Reが1500以上で乱流化することが知られており、特にReが10000以上のとき、回り込み乱流による気泡の微粉砕効果は飛躍的に高められる。例えば、平均流速が8m/秒以上となるように迂回流路部の流通断面積が調整されていれば、円状軸断面を有する衝突部材の外径を1〜5mmに調整することによりレイノルズ数Reの値を10000以上の値に容易に確保できる。
【0076】
特に、迂回流路部251の流通断面積が、液体入口31に供給圧力0.55MPaにて10℃の水を供給したときの平均流速が18m/秒以上となるように調整され、円状軸断面を有する衝突部材22の外径が1〜5mmに調整されていれば、迂回流路部251内に配置された衝突部材22に関するレイノルズ数Reは20000を超える値となる。
【0077】
こうして、図5に示すように、衝突部材22にぶつかって迂回流路部251を通過した水流WFは衝突部材22の下流側に回りこみ、前述のレイノルズ数Reのレベルから想定される大流量で激しい乱流CFを形成する。これにより、衝突部材22の下流側では、その全域にわたって微小な渦流SWE(乱流)が極めて高密度に形成される。また、渦流SWEの発生密度が高くなることで、負圧域は、絞りギャップ21G内部のみでなくその下流側にも立体広角的に大きく拡がって形成される。従って、図7のCに示すように、析出気泡BMを含む絞りギャップ21Gの通過流は、ギャップ下流側の負圧域にてさらに気泡析出を継続しながら多数の渦流により撹拌を受けることとなる。また、図9(図5のJ−J断面)に示すように、絞りギャップ21Gの周縁領域は、楔状断面を有し、かつ空間外周側が迂回流路部251に開放する円環状のギャップ周縁空間251nを形成し、特に、縮径部23kの外周面の、水流WFの方向に関し絞りギャップ21Gの両側に位置する部分も補助的なギャップとして機能する。従って、この補助的なギャップを通過する水流にもキャビテーションを生じ、発生した気泡BMが出口側で渦流SWEに巻き込まれ粉砕されるので、微小気泡の発生効率がさらに向上する。
【0078】
乱流化により発生する個々の渦流SWEは、渦外周よりも中心のほうが圧力が低いので、渦流SWEの周囲の流れを渦中心に引き込むように作用する。乱流下では上記のごとく、細かい多数の渦流SWEが三次元的に密集して形成されるので、図6の上に示すように、絞りギャップ通過時のキャビテーション効果により析出・成長した気泡BMは、複数の渦流SWEによる立体的な配位を常に受けた状態となる。各渦流SWEは気泡BMに対し、それぞれ自身の中心に向けて吸引力を作用させるので、図6の下に示すように、気泡BMはそれら周囲の渦流SWEにより四方八方に吸い込まれていわば「八つ裂き」状態となり、微小気泡BFへの粉砕が促進されるとともに気泡径の平均化が進行する。つまり、析出した気泡BM同士を衝突させて粉砕するというよりは、各々吸引力を有した多数の小渦流SWEにより取り囲み、互いに異なる複数方向に引きちぎるイメージである。また、負圧域がギャップ下流側にも大きく広がっていることで、一定レベル以上に成長した気泡粒子がこの負圧によって膨張し、破裂して微小化する効果も期待できる。
【0079】
また、図10に示すごとく、衝突部材22(あるいは対向衝突部材23)の外周面は、本実施形態では雄ねじ部22t(23t)となっているが、個々の部材の外周面が平滑な円筒面ではなくねじ面となっていることも、乱流の発生効率を高める上で貢献している。すなわち、衝突部材22ないし対向衝突部材23は中心軸線が水流方向にほぼ直角となる位置関係で立設されているので、その外周面に形成されたねじ山(水流剥離凹凸部)22mは、衝突部材の軸線を法線とする仮想面VPに対して一定の傾斜角φ(例えば2゜以上15゜以下)を有している。この仮想面VPと平行な向きにて衝突部材に向け水流WFが流れ込むと、該水流方向に対して傾斜した複数のねじ山22mを横切って衝突部材の下流側に回り込む。このとき、水流WFが一方の谷側から反対の谷側へねじ山の稜線部22bを乗り越える際に、乱流化に貢献する水流剥離が生じやすい。なお、図11に示すように、水流剥離凹凸部を衝突部材22(ないし対向衝突部材23)の軸線方向に沿うセレーション部22SRとして形成することも可能である。
【0080】
また、この実施形態において重要な点は、衝突部材22の先端に絞りギャップ21Gに面する形で減圧空洞221が形成されている点である。該減圧空洞221により次のような作用・効果が期待できる。
・減圧空洞221内は高負圧域となり、キャビテーションによる気泡析出が促進されるとともに、析出した気泡の膨張による破裂も起こりやすいので、気泡の微小化に寄与する。
【0081】
・減圧空洞221が水流中で共振することにより超音波帯共鳴波が発生し、気泡析出のためのキャビテーションと、共鳴振動による気泡粉砕が促進される。要因としては、次のような機構が考えられる。図7に示すように、減圧空洞221に臨む対向衝突部材23の先端部が縮径していることで、該先端部に沿って乗り上げる水流は、例えば30m/秒を超える高速で減圧空洞221内に進入し、減圧空洞221の内壁面間で多重反射を繰り返す。この水流の多重反射により、減圧空洞221の形状から定まる固有周波数にて超音波帯共鳴波が励起こされる。例えば、減圧空洞221の内径dxを2mm、水中での音速cを1500m/秒と仮定すれば、空洞半径方向の振動の固有周波数は、多少粗い近似ではあるがc/2dxのほぼ整数倍とみなすことができる(音響工学原論(伊藤毅著、昭和30年)p.270〜271、コロナ社)。これにより、その最低次振動の周波数は約375kHzと計算でき、超音波帯振動となることがわかる。
【0082】
また、上記の構造の絞りギャップ21Gは気体吸引ノズル315にも設けられているが、気体吸引ノズル315では、ノズル通路226から吸引された気体が気泡となって水流に混入し、これが絞りギャップ21G内にて、上記した気泡微小化ノズル21と全く同様の機構、すなわち、回り込み乱流CFと減圧空洞221の作用により速やかに微粉砕される。また、ノズル通路226を該減圧空洞221内に開口させることで、減圧空洞221内の大きな負圧により外気吸引力が増強される効果もある。また、微小気泡含有水が循環供給される場合のように、絞りギャップ21Gに到達する水が溶存気体を含有している場合は、気泡微小化ノズル21と全く同様に、溶存気体が析出して気泡BMが生じ、これが回り込み乱流CFに巻き込まれて微小気泡に粉砕される。
【0083】
次に、加圧濃縮気体溶解水が常圧での過飽和領域にまで気体を溶かしこんでいる場合には、絞りギャップ21Gを通過した後も粗大な気泡が残留する可能性がある。そこで図2Aの気泡微小化ノズル21では、こうした残留粗大気泡が、絞り部21Jの下流側に設けられた特有の流れ要素により効果的に微粉砕される。すなわち、図2Bに示すように、絞り部21Jから拡大部151に放出された流れは拡大部151内にて外方へ広がり、拡大部151外周領域に沿って流れる外方流れFSを生ずる。そして、流れ受入口152pの周囲には、拡大部151と流れ受入部152との断面積差に基づき、この外方流れFSを半径方向内向きに旋回させる外方流れ旋回部153が形成されており、旋回した外方流れは渦を巻きつつ気泡とともに拡大部151内に逆流する。その結果、液体中に含まれる気泡は拡大部151内に渦流とともに留まり、激しく撹拌されることにより微粉砕を十分に進行させることができるのである。
【0084】
図12(横断面図)及び図13(平面図)は、図2Aに示す形状の気泡微小化ノズル21の流路内の流れを、市販の熱流体解析ソフトウェア(EFD.Lab、株式会社構造計画研究所製)を用いて解析したシミュレーション結果を示すものである。画像内の矢印は各所での流れの向きを示し、矢印の明度により流速をあらわしている(明度の大きい矢印ほど流速が大きいことを示す)。液体入口31と液体出口106との間に付与された圧力差は0.2MPaである。まず、絞り部21Jの上流側では、準備拡大部をなす準備縮径部156の流れバッファ空間155において、準備縮径部156の後端側段付き面156fに規制される形で主流れFMの接線方向に旋回する渦流SW1が、該主流れFMの軸線周りにこれを取り囲むように発生していることがわかる。該渦流SWによる流れ損失の軽減効果により、主流れFMは20m/秒を超える高速度で準備径小部157を経て絞り部21Jに流れ込む。その絞りギャップ21Gでの流速は25m/秒を大幅に超えることが該シミュレーション結果から確認できている。
【0085】
図12に示すように、絞りギャップ21Gの下流側に形成された拡大部151では、絞りギャップ21Gの形成方向(つまり、衝突部材22と対向衝突部材23との対向方向)を図面の上下方向と定義したとき、絞りギャップ21Gの直後から下方(対向衝突部材23側)に向かい、拡大部151の下面に到達後は該下面に沿って流れ順方向に拡大部151の後端側へと流れる。そこで、段差状に形成された外方流れ旋回部153により上方へ旋回し、拡大部151の上面に沿って流れ逆方向に絞りギャップ21Gへと向かう大きな旋回流SW2が、拡大部151の内部空間をフルに活用する形で形成されていることがわかる。また、拡大部151の上流側端部が流れ方向にて衝突部材22の軸断面中心よりも前方側に位置する部分と重なるように形成されていることから、上記の旋回流SW2の上流側はこの重なり領域にも入り込み、旋回流SW2の上流側端縁が絞りギャップ21Gにより接近していることもわかる。これにより、絞りギャップ21Gから噴出する多量の気泡をより効果的に該旋回流SW2に取り込むことができ、気泡の微粉砕効果が高められている。図13に示すように、上記の旋回流SW2は、絞りギャップ21Gの両側に形成された迂回流路部251(図3)に対応して、衝突部材22の中心軸線に関し、両側に対をなして発生していることもわかる。
【0086】
以下、気泡微小化ノズルの種々の変形例について説明する(すでに説明済みの部分と共通する要素には同一の符号を付与して詳細な説明は省略する)。図14に示す気泡微小化ノズル21の構成は、図2Aの構成とほぼ同じであるが、外方流れ旋回部153をpなす段付き面153rと、準備縮径部30の後端部外周縁155rの断面形状を湾曲形態(つまり、アール面状)に形成している。これにより、旋回する流れがよりスムーズとなり、旋回流の流速が上昇して気泡の微粉砕効果が高められている。
【0087】
図15は準備縮径部30の上流端側の内径を流れ導入部150の内径に一致させ、流れバッファ空間を省略した構成を示すものである。流れバッファ空間は省略されているものの、絞り部21Jよりも下流側の構成は図2Bとまったく同じであり、外方流れ旋回部153による拡大部151内の旋回流発生効果ひいては気泡微粉砕効果が同様に享受できることはいうまでもない。
【0088】
以下、絞りギャップ形成にかかる種々の変形例を示す。図16は、衝突部材22に形成する減圧空洞221内の水流をより滑らかにするために、空洞底部を湾曲面状に形成した例を示す。また、図17は、減圧空洞221の開口内周縁面を、対向衝突部材23の先端部のテーパ状周側面231に対応する座ぐり状のテーパ面1224とした例を示す。このテーパ面1224の形成により、対向衝突部材23の先端側に水流を導く効果が高められる。
【0089】
図18は、衝突部材22から減圧空洞221を省略し、先端面を平坦に形成した例を示す。対向衝突部材23の先端部にはテーパ状周側面231が形成されているが、衝突部材22と対向する先端面は平坦に形成されている。図19は、対向衝突部材23の先端面に浅い減圧空洞1232を形成した例を示す。衝突部材22には減圧空洞が形成されず、その先端部外周縁がテーパ状周側面225とされている。図20は、衝突部材22と対向衝突部材23とをくびれ連結部21Cにより軸線方向に一体結合し、そのくびれ連結部に絞りギャップ21G’を貫通形成した例を示す。
【0090】
図21は、衝突部材22及び対向衝突部材23のいずれにも減圧空洞を形成せず、その平坦な対向面間に絞りギャップ21Gを形成するとともに、両部材の軸線を流路形成部材20の断面中心に対して片側に寄せて配置することで、迂回流路部251を衝突部材22(及び対向衝突部材23)の片側にのみ形成した例を示すものである。
【0091】
さらに、図22は、対向衝突部材を廃止し、衝突部材22を流路形成部材20の壁部内面を絞りギャップ形成部20cとして、これに対向させる形で絞りギャップ21Gを形成した例である。衝突部材22の先端面は、流路形成部材20の壁部内面に対応する凸湾曲面状とされている。また、図23は、対向衝突部材123を衝突部材22よりも広幅に形成することで、対向衝突部材123の側方に迂回流路部251が生じないように構成した例を示すものである。
【0092】
また、図24は、絞り部21Qを、通常のベンチュリ型絞り機構として形成した例を示す。
【符号の説明】
【0093】
1 微小気泡含有液体生成装置
21 気泡微小化ノズル(微小気泡発生機構)
21J 絞り部
21G 絞りギャップ
21n くびれギャップ部
22 衝突部材
22t,23t 雄ねじ部
22m ねじ山(水流剥離凸部)
22u,23u 雌ねじ孔
23 対向衝突部材(絞りギャップ形成部)
23k 縮径部
30 準備縮径部
FP 流路
31 液体入口
106 液体出口
150 流れ導入部
151 拡大部
152 流れ受入部
FM 主流れ
FS 外方流れ
153 外方流れ旋回部
155 流れバッファ空間
156 準備拡大部
157 準備径小部
221 減圧空洞
226 ノズル通路
231 テーパ状周側面(絞り傾斜面、拡大傾斜面)
251 迂回流路部
310 加圧溶解タンク(加圧溶解ユニット)
312 水流出管
319 主タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体入口と液体出口とを有し、前記液体入口から前記液体出口に向かう流路が内部に形成された中空の流路形成部材を備え、該流路形成部材の前記流路が、
流れ方向にて前記液体入口と前記液体出口との間に形成され、
該液体入口と液体出口とのいずれよりも小断面積かつ高流速となるように形成された絞り部と、
前記絞り部よりも断面積が大きくなるように、前記絞り部に続いて形成される拡大部と、
流れ受入口が前記拡大部よりも小断面積であって、かつ、流れ方向と直交する平面への投影にて該流れ受入口が前記絞り部の開口と互いに重なりを生ずるように前記拡大部に続く形で形成され、前記絞り部から前記拡大部に放出される流れを前記流れ受入口にて受け入れて前記液体出口に導く流れ受入部と、
前記流れ受入口の周囲に形成され、前記拡大部に放出される流れのうち該拡大部外周領域に沿って流れる外方流れを旋回させつつ前記拡大部側へ戻す外方流れ旋回部と、を有することを特徴とする微小気泡発生機構。
【請求項2】
気体を液体と混合しつつ加圧して前記液体に前記気体を強制溶解させることにより気体濃度を上昇させた加圧濃縮気体溶解液を発生させる加圧溶解ユニットと、
前記加圧溶解ユニットから前記加圧濃縮気体溶解液を減圧しつつ流出させる液体流出管とが設けられ、該液体流出管上に前記流路形成部材が設けられている請求項1記載の微小気泡発生機構。
【請求項3】
前記拡大部が円筒状に形成され、前記流れ受入口が該拡大部に対し同心的に開口するとともに、前記拡大部を形成する壁部内周面と前記流れ受入部をなす壁部内周面とを接続する段部が前記外方流れ旋回部を形成する請求項1又は請求項2に記載の微小気泡発生機構。
【請求項4】
前記流路において前記絞り部の上流側に隣接する形で、前記拡大部よりも小断面積であって前記絞り部の最小部よりも大断面積となるように、流れ方向に断面積が均一の準備径小部が形成されてなり、
該準備径小部の上流側に隣接して、流路断面積を該準備径小部の入口に向け連続的に縮小させる準備縮径部が形成されている請求項3記載の微小気泡発生機構。
【請求項5】
前記絞り部は、前記流路内に配置された衝突部材と、
前記流路内にて前記衝突部材の先端部と対向する絞りギャップ形成部とを備え、
前記衝突部材の外面と前記流路の内面との間に迂回流路部が形成されるとともに、前記衝突部材と前記絞りギャップ形成部との間には、前記迂回流路部よりも低流量かつ高流速となるように液体流を絞りつつ通過させる絞りギャップが形成された構造を有する請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の微小気泡発生機構。
【請求項6】
前記迂回流路部は、前記流路内にて水流通方向から見て前記衝突部材の突出方向に関しその両側に形成されている請求項5記載の微小気泡発生機構。
【請求項7】
前記衝突部材及び前記絞りギャップ形成部の前記絞りギャップを形成する各対向面の少なくともいずれかに減圧空洞が形成されている請求項5又は請求項6に記載の微小気泡発生機構。
【請求項8】
前記絞りギャップ形成部は、前記流路の断面中心に関して前記衝突部材と反対側にて前記壁部内面から前記衝突部材に向けて突出する対向衝突部材として形成され、
前記絞りギャップが前記衝突部材の突出方向先端部と前記対向衝突部材の突出方向先端部との間に形成されている請求項5ないし請求項7のいずれか1項に記載の微小気泡発生機構。
【請求項9】
前記拡大部は、その上流側端部が流れ方向にて前記衝突部材の軸断面中心よりも前方側に位置する部分と重なるように形成されてなる請求項5ないし請求項8のいずれか1項に記載の微小気泡発生機構。
【請求項10】
前記流路には、前記絞り部よりも断面積が大きくなるように、前記絞り部の上流側に隣接して準備拡大部が形成され、
該準備拡大部の上流側に隣接する形で周方向の段付き面を形成する形で接続され、該準備拡大部との接続側端部にて該準備拡大部よりも小断面積となり前記絞り部よりも大断面積となるように流れ導入部が形成され、
前記準備拡大部の、前記流れ導入部との接続側外周領域が、前記流れ導入部から前記準備拡大部内に直進する主流れの周囲を保護する流れバッファ空間を形成するとともに、
前記流れ導入部は、前記液体入口に続く形で前記準備拡大部に接続する入口側導入部として形成され、
前記準備拡大部は該入口側導入部との接続側にて前記液体入口よりも大断面積を有するとともに、下流側端部にて前記液体入口よりも流路断面積が小さく前記絞り部よりも流路断面積が大きくなるように断面積を漸減させる準備縮径部を有する請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の微小気泡発生機構。
















【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−240210(P2011−240210A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111771(P2010−111771)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(709004293)株式会社マインドレイ技術科学研究所 (8)
【Fターム(参考)】