説明

微小試料台、微小試料台作成用基板、微小試料台の製造方法および微小試料台を用いた分析方法

【課題】 生産性の向上を図ることが可能で、小型化が容易な微小試料台を提供すること。
【解決手段】 微小試料台100は、全体がシリコン半導体基板により形成され、微小試料台基部10の凹部11内に微小試料搭載部20が形成されている。従って、微小試料搭載部20は微小試料台基部10よりも薄く形成される。多数の微小試料台100を、1枚の半導体ウエハから作製することが可能であり、半導体ウエハから分離すると微小試料台が製作されるので、生産性の向上を図ることができる。また、小型化が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子顕微鏡等により分析を行う試料を固定する微小試料台、微小試料台作成用基板、微小試料台の製造方法および微小試料台を用いた分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハの上面に形成された半導体素子やディスクリートの半導体デバイスを透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)またはオージェ電子分光法(Auger Electron Spectroscopy:AES)等による分析あるいは観察等の評価は次のようにして行う。半導体素子や半導体デバイス等の分析エリアをエッチング法やFIB(Focused Ion Beam)により加工して微小試料を形成し、該微小試料を切り取ったうえ、この微小試料よりも大幅に大きい厚さの微小試料台に固定する。次に、微小試料が固定された微小試料台を、上部にガード部が設けられたほぼ半円状のメッシュといわれる試料ホルダに固定したものを準備する。そして、微小試料台を介して微小試料が固定された試料台ホルダをピンセット等により把持して、分析装置のステージに取り付けて分析を行う。
【0003】
通常、微小試料台は金属製の基板を用い、試料台ホルダは、シリコン基板や金属製の基板等を用いる。この、微小試料は、例えば、10μm×10μm×1μm(厚さ)程度のサイズにしたうえ、微小試料台の側面に固定される。
そして、微小試料台に微小試料を固定した後、Gaイオン等の荷電粒子イオンを用いたFIB法にて微小試料を、一般的には、100nm程度の厚さにまで薄片化する。
【0004】
微小試料台または試料台ホルダが金属製の場合、試料固定面の粗さが試料のサイズに対して、凹凸が大きいので、固定した試料の位置を確認するのが困難であり、また、固定した試料が傾くために観察面を正確に位置あわせすることも困難である。
そこで、微小試料台をシリコン基板で形成するようにしたものも知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−185338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に記載された微小試料台は、この微小試料台を支持する試料台ホルダを必要とする。つまり、微小試料台および試料台ホルダを別々に作製したうえ、両者を接着する必要がある。このため、生産性が低く、また、接着する工程を含むため、小型化が困難となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の微小試料台は、微小試料搭載部と、前記微小試料搭載部を支持し、分析装置への取付部となる微小試料台基部とを具備し、微小試料搭載部と微小試料台基部とは、
(i)半導体層により一体化されて形成されている、
(ii)微小試料搭載部と微小試料台基部との間に無機絶縁膜を介在して半導体層により形成されている、
のいずれかの構成を有することを特徴とする。
【0008】
請求項10に記載の微小試料台作成用基板は、それぞれが微小試料搭載部と微小試料台基部を有する多数の微小試料台を有する半導体ウエハまたはSOIウエハであり、半導体ウエハまたはSOIウエハにおける微小試料台の周囲を、連結部を残して厚さ方向に切り欠いた貫通溝を有することを特徴とする。
【0009】
請求項14に記載の微小試料台の製造方法は、半導体基板の一面に無機材料からなる微小試料搭載部上面形成用薄膜を形成する工程と、半導体基板の他面に、無機材料からなる微小試料搭載部形成用薄膜を形成する工程と、微小試料搭載部上面形成用薄膜および微小試料搭載部形成用薄膜を含む微小試料台の形成領域の外周における半導体基板を除去して貫通溝を設け、貫通溝の周囲における半導体基板に連結部で連結されるように微小試料台の外形を形成する工程と、微小試料搭載部上面形成用薄膜および微小試料搭載部形成用薄膜を除去する工程と、微小試料搭載部上面形成用薄膜下および微小試料搭載部形成用薄膜下の半導体基板を除去して微小試料台搭載部および微小試料台基部を形成する工程と、連結部で連結された微小試料台を半導体基板から分離する工程と、を具備することを特徴とする。
【0010】
請求項17に記載の微小試料台の製造方法は、第1の半導体層と、第2の半導体層と、第1の半導体層と第2の半導体層の間に設けられた無機絶縁膜を有する微小試料台形成用基板を準備する工程と、第1の半導体層の一部を除去して微小試料搭載部を形成する工程と、第2の半導体層の一部を除去して開口部を含む微小試料台基部の外形を形成する工程と、無機絶縁膜を除去して、微小試料台基部の開口部に対応して微小試料搭載部が形成された微小試料台を得る工程と、の各工程を含むことを特徴とする。
【0011】
請求項20に記載の微小試料台を用いた分析方法は、微小試料搭載部および微小試料台基部を有する微小試料台を準備し、微小試料台の前記微小試料搭載部に微小試料を固定し、微小試料が固定された微小試料台を、直接、分析用装置の分析ステージに取り付ける微小試料台の分析方法であって、微小試料搭載部と微小試料台基部とは、
(i)半導体層により一体化されて形成されている、
(ii)微小試料搭載部と小試料台基部との間に無機絶縁膜を介在して半導体層により形成されている、
のいずれかの構成を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、微小試料搭載部と、微小試料搭載部を支持し、分析装置への取付部となる微小試料台基部とを半導体層により形成するので、生産性の向上を図ることができる。また、小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の微小試料台の一例としての実施形態1に関する外観拡大斜視図。
【図2】(a)および(b)は、図1の微小試料台の製造方法を説明するための所定の工程における拡大断面図(図9における領域AのII−II線切断断面図)および拡大平面図。
【図3】(a)および(b)は、図2に続く工程を説明するため拡大断面図(図9における領域AのII−II線切断断面図)および拡大平面図。
【図4】(a)および(b)は、図3に続く工程を説明するため拡大断面図(図9における領域AのII−II線切断断面図)および拡大平面図。
【図5】(a)および(b)は、図4に続く工程を説明するため拡大断面図(図9における領域AのVIII−VIII線切断断面図)および拡大平面図。
【図6】(a)および(b)は、図5に続く工程を説明するため拡大断面図(図9における領域AのVIII−VIII線切断断面図)および拡大平面図。
【図7】(a)および(b)は、図6に続く工程を説明するため拡大断面図(図9における領域AのVIII−VIII線切断断面図)および拡大平面図。
【図8】(a)および(b)は、図7に続く工程を説明するため拡大断面図(図9における領域AのVIII−VIII線切断断面図)および拡大平面図。
【図9】図1に示す微小試料台を半導体ウエハから分離する直前の状態を示す平面図。
【図10】この発明の微小試料台の実施形態2に関する外観拡大斜視図。
【図11】図10に示す微小試料台を半導体ウエハから分離する直前の状態を示す平面図。
【図12】(a)および(b)は、図10の微小試料台の製造方法を説明するための所定の工程における拡大断面図(図11における領域AのXIII−XIII線切断断面図)および拡大平面図。
【図13】(a)および(b)は、図12に続く工程を説明するため拡大断面図(図11における領域AのXIII−XIII線切断断面図)および拡大平面図。
【図14】この発明の微小試料台の実施形態3に関する外観拡大斜視図。
【図15】(a)および(b)は、図14の微小試料台の製造方法を説明するための所定の工程における拡大断面図(図15(b)のA−A線切断断面図)および拡大平面図。
【図16】(a)および(b)は、図15に続く工程を説明するため拡大断面図および拡大平面図。
【図17】(a)および(b)は、図16に続く工程を説明するため拡大断面図および拡大平面図。
【図18】(a)および(b)は、図17に続く工程を説明するため拡大断面図および拡大平面図。
【図19】(a)および(b)は、図18に続く工程を説明するため拡大断面図および拡大平面図。
【図20】(a)および(b)は、図19に続く工程を説明するため拡大断面図)および拡大平面図。
【図21】(a)および(b)は、図20に続く工程を説明するため拡大断面図および拡大平面図。
【図22】この発明の微小試料台に微小試料を固定する方法を説明するための外観拡大斜視図。
【図23】図22に続く工程を説明するための外観拡大斜視図。
【図24】実施形態1および実施形態2に示す試料台に微小試料を固定した状態を示す第一の例の概要側面図。
【図25】実施形態1および実施形態2に示す試料台に微小試料を固定した状態を示す第二の例の概要側面図。
【図26】実施形態3に示す試料台に微小試料を固定した状態を示す第一の例を示す概要側面図。
【図27】実施形態3に示す試料台に微小試料を固定した状態を示す第二の例を示す概要側面図。
【図28】実施形態3に示す試料台に微小試料を固定した状態を示す第三の例を示す概要側面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態1)
以下、この発明の微小試料台の一例に関する実施形態1について説明する。
図1はこの発明の微小試料台の拡大斜視図である。
微小試料台100は、全体がシリコン基板等の半導体基板からなり、微小試料台基部10および微小試料搭載部20を有する。微小試料台基部10は、平面視で、平坦な上面13と、中心角が半円(中心角180度)より大きい直径2〜4mmの扇形の円弧状の外形部を有している。微小試料台基部10の中央の上方側には平面視で矩形形状の凹部11が形成されている。凹部11は、下面11aと一対の側面11bとを有し、下面11aの対向側は開放されている。下面11aおよび一対の側面11bは一面10aから対向面(裏面)側に向かって凹部11が小さくなる方向に傾斜する傾斜面となっている。後述する如く、傾斜面はシリコン基板の(111)面である。
【0015】
微小試料台基部10の下部には矩形状の小さな溝12が形成されている。凹部11および溝12は、扇形の円弧状の中心線上に位置している。この溝12は、詳細は後述するが、半導体ウエハから各微小試料台100を分離する際、分離を容易にするために形成されたものである。
【0016】
微小試料搭載部20は、微小試料台基部10の凹部11内に形成されている。微小試料搭載部20は上面21および一側面22を有する。微小試料搭載部20の上面21は、微小試料台基部10の上面13よりも低い位置にある。換言すれば、微小試料台基部10の上面13は微小試料搭載部20の上面21よりも突き出して形成されている。このため、微小試料台基部10の上面13は、微小試料搭載部20に固定された微小試料を分析する作業において、微小試料に分析装置等が衝突するのを防止し、また、微小試料台100が落下した場合に微小試料をガードする。すなわち、微小試料台基部10の微小試料搭載部20よりも高い部分はガード部となっている。
【0017】
微小試料搭載部20の一側面22は、微小試料台基部10の凹部11内に位置し、この一側面22の対向面(裏面)は微小試料台基部10の対向面(裏面)と面一となっている。限定する意味ではないが、微小試料搭載部20の厚さtは、例えば、数μm以下である。
【0018】
通常、微小試料は、微小試料台100に固定する前には、5μm程度の厚さを有しており、微小試料台に固定した後、Gaビーム等の荷電粒子ビームを照射して、0.1μm程度の厚さにする薄片化処理を行う。この際、微小試料搭載部がスパッタされて微小試料の表面に異物として付着して、分析をする際のバックグラウンドノイズとなる。しかし、この発明では、微小試料搭載部20が大変薄いので、微小試料に付着する異物の量を大幅に抑止することができる。
【0019】
合わせて、本発明の微小試料台では、以下に説明するように、微小試料搭載部20および微小試料台基部10を含む微小試料台100全体が半導体基板をフォトリソグラフィ法で形成される。フォトリソグラフィ法により形成したパターンは直線性が高く、エッジ部にも殆ど凹凸が形成されない。このため、微小試料搭載部20に固定された微小試料がエッジによって固定した位置で傾斜したり、固定時に位置がずれたり、あるいはエッジのために観難くなったりすることがない。
すなわち、微小試料の取付および位置の確認が容易である、という効果を奏することができる。
【0020】
そして、この微小試料台は、微小試料を固定した状態で、直接、分析装置等による評価のために、直接、評価装置のステージ上に取り付けられる。この点で、本発明の微小試料台は、微小試料台を微小試料台ホルダに固定した上、分析装置等のステージ上に取り付ける従来のものとは全く相違する。
このように、本発明の微小試料台は、従来のものと異なり、単一のディスクリート部材として構成され、それゆえに、微小試料を微小試料台ホルダに固定する作業がないので、きわめて効率的に生産をすることが可能であり、また、コスト的なメリットを得ることもできる。
【0021】
図9は、シリコン基板からなる半導体ウエハ1に本発明の微小試料台100が多数形成された状態を示す平面図であり、各微小試料台100を半導体ウエハ1から分離する直前の状態を示す。半導体ウエハ1から分離する直前の各微小試料台100は、その周囲が半導体ウエハ1に形成された貫通溝2により該半導体ウエハ1の周囲の領域と分離されており、それぞれ、1箇所の連結部3によってのみ、半導体ウエハ1に連結されている。
【0022】
半導体ウエハから分離する前の各微小試料台100は、それぞれ、左右2個を一対として配列されており、各一対の微小試料台100は、貫通溝2の中心線、換言すれば、一対の微小試料台基部10の上面13間の中間線、を対称軸とする線対称に形成されている。
半導体ウエハ1は、上面が(100)面であり、(110)面のフラット面4を有しており、各一対の微小試料台100は、フラット面4に対して平行または垂直に配列されている。
次に、図1に図示された微小試料台100を製造する方法の一例を図2乃至図8を参照して説明する。
【0023】
図2〜図8の各図において、(a)は図9において二点鎖線で囲んだ領域AのVIII−VIII線切断拡大断面図であり、(b)は図9において二点鎖線で囲んだ領域A近傍の拡大平面図である。
先ず、半導体ウエハ(以下、半導体基板という)1の表面全面および裏面全面に窒化シリコン等の無機材料からなる薄膜31をCVD(Chemical Vapor Deposition)法により成膜する。
【0024】
次に、半導体基板1の表面に形成された薄膜31上の全面にフォトレジストを塗布し、露光用マスクを介して露光し、その後、現像を行って、第1のフォトレジストパターンを形成する。なお、フォトレジストの塗布からフォトレジストパターンを形成するまでの方法はフォトリソグラフ法として知られているものであり、以下、単にフォトリソグラフ法と記載して、その説明を、適宜、省略する。
【0025】
次に、第1のフォトレジストパターンをマスクとして、Cを主ガスとするRIE(Reactive Ion Etching)法により、第1のフォトレジストパターンの周囲の薄膜を除去し、第1のフォトレジストパターン下に第1の基板エッチング用薄膜(微小試料搭載部上面形成用薄膜)51を形成する。この後、第1のフォトレジストパターンを剥離する。この状態を図2(a)および図2(b)に示す。
第1のフォトレジストパターン除去は、例えば、酸素ガスを含むRIE法を用いる。
【0026】
次に、半導体基板1の他面側に形成された窒化シリコン等の無機材料からなる薄膜31上に、フォトリソグラフ法により第2のフォトレジスパターンを形成する。そして、この第2のフォトレジストパターンをマスクとして薄膜31をパターニングして第2の基板エッチング用薄膜(微小試料搭載部形成用薄膜)52を形成し、第2のフォトレジスパターンを剥離する。第2のフォトレジストパターン除去は、例えば、酸素ガスを含むRIE法を用いる。この状態を図3(a)および図3(b)に示す。
【0027】
図3(b)に図示されるように、第2の基板エッチング用薄膜52は、第1の基板エッチング用薄膜51と重合する部分と重合しない部分とを有する。第2の基板エッチング用薄膜52の第1の基板エッチング用薄膜51と重合しない部分は半円形形状を有し、重合する部分は、半円形形状部分の直径と同一の幅を有する矩形形状を有する。また、第2の基板エッチング用薄膜52の幅は、第1の基板エッチング用薄膜51の幅よりも小さい。
【0028】
次に、半導体基板1の第1の基板エッチング用薄膜51が形成された面全体に外形用フォトレジストを形成し、フォトリソグラフィ法により、図9に図示されている、貫通溝2が形成される領域が除去された形状を有する外形用フォトレジストパターン43を形成する。つまり、半導体基板1の第1の基板エッチング用薄膜51が形成された面に形成される外形用フォトレジストパターン43は、貫通溝2に対応する部分が除去され、微小試料台100、連結部3およびその周囲の半導体基板1の領域を覆う形状を有する。この場合、図4(a)および図4(b)に図示されるように、第1の基板エッチング用薄膜51の幅wは、外形用フォトレジストパターン43における微小試料台100の上面13の間隔dよりも大きい寸法とされている。
【0029】
そして、外形用フォトレジストパターン43をマスクとして、ICP(Inductively Coupled Plasma)−RIE法により半導体基板1を除去し、連結部3で周囲の半導体基板1と連結された微小試料台基部10の外形を形成する。但し、この時点では、各微小試料台基部10は、対となる微小試料台基部10の上面13の間に形成された第1の基板エッチング用薄膜51下では連結されている。また、微小試料台基部10の凹部11は未だ形成されていない。
そして、酸素ガスを用いたRIE法により外形用フォトレジストパターン43を除去する。この状態を図4(a)および図4(b)に示す。
【0030】
次に、熱酸化炉に収容して熱酸化を行い、図5(a)および図5(b)に図示される如く、半導体基板1における、第1の基板エッチング用薄膜51および第2の基板エッチング用薄膜52に覆われた領域以外の領域全てに酸化シリコン膜からなるエッチングストッパ53を形成する。
【0031】
次に、Cを主ガスとするRIE法により、半導体基板1の表面および裏面に形成された第1の基板エッチング用薄膜51および第2の基板エッチング用薄膜52を剥離する。この状態を図6(a)および図6(b)に示す。図6(a)に図示されるように、第1の基板エッチング用薄膜51および第2の基板エッチング用薄膜52下の半導体基板1の領域が露出される。
【0032】
この状態で、例えば、水酸化カリウム(KOH)の20〜30重量%水溶液中に浸漬し、半導体基板1の露出部をウエットエッチングする。このエッチングは、(111)面が残存する異方性エッチングである。
ここで、(111)面は、(110)面と平行または垂直な辺を有し、z軸(図9において紙面と垂直な方向)と交差する方向に傾斜する傾斜面となる面である。各微小試料基部10は、(110)面に対し、平行または垂直な方向に配列され、第2の基板エッチング用薄膜52は、平面視で半円形状であるので、半導体基板1のエッチングはフラット面4と垂直方向および平行方向に拡大して進行する。
【0033】
この場合、図1に示す如く、微小試料台基部10の凹部11の下面11aおよび一対の側面11bは(111)面に平行または垂直であることから、半導体基板1のウエットエッチングは下面11aおよび一対の側面11bを一面10a側から対向面側に向けて内側に傾斜する斜面を形成するように進行する。ウエットエッチングは、半導体基板1の表面側および裏面側から進行するので、半導体基板1は、図7(a)および図7(b)に図示されるように、凹部11および微小試料搭載部20を形成するようにエッチングされる。
【0034】
これにより、各一対の微小試料台基部10間の半導体基板1の部分が除去され、各微小試料台基部10は連結部3のみで半導体基板1に連結された状態となる。また、第1の基板エッチング用薄膜51の幅wは、一対となる微小試料台100を形成するための外形用フォトレジストパターン43の間隔dよりも大きく形成されているので、微小試料台基部10の上面13aは微小試料搭載部20の上面21よりも突き出して形成される。
微小試料搭載部20の厚さtは、ウエットエッチング液のエッチング速度に応じて適切に決定することができる。因みに、水酸化カリウム(KOH)の20〜30重量%水溶液のエッチング速度は0.5〜1.0μm/分である。
なお、第2の基板エッチング用薄膜52は、平面視で円弧状でなく、方形としてもよく、この場合も、異方性エッチングは、フラット面4と垂直方向および平行方向に拡大して進行する。
【0035】
次に、リンスをし、さらに、バッファード弗酸(BHF)により酸化シリコン膜からなるエッチングストッパ53を除去する。これにより、図8(a)および図8(b)に図示されるようにと、微小試料搭載部20の上面21が表出する。
【0036】
この後、リンス、乾燥を行い、各微小試料台基部10の連結部3をエッチング等適宜な方法で切断または除去することにより、図1に示す微小試料台100が、同時に多数個得られる。
【0037】
以上の通り、この発明においては、微小試料搭載部20および微小試料台基部10を有する微小試料台100を、1枚の半導体ウエハから作製する。半導体ウエハから分離すると微小試料台が製作されるので、生産性の向上を図ることができる。また、小型化が可能となる。半導体ウエハは凹凸が小さく、換言すれば、平坦性が高いので、高精細な加工をすることができる。このため、微小試料搭載部20に固定した微小試料にイオンビームを照射して薄片化処理を行う際に、微小試料搭載部がスパッタされることにより微小試料の表面に付着する異物の量を大幅に抑止することができる。
また、微小試料が固定される箇所を含む微小試料搭載部20の表面全体の平坦性が高いので、微小試料搭載部20に固定された微小試料の位置の確認が容易である。これと共に、微小試料台に固定された微小試料の傾きが殆ど無く、分析装置による観察面の位置合わせが容易である、という効果を奏することができる。
【0038】
本発明の微小試料台100は、1枚の半導体ウエハから作製されるので、生産性が高い。この場合、微小試料台基部10を扇形形状とし、且つ、微小試料をガードするガード部を設けたので、直接、分析装置等のステージに取り付けることができる。このことによっても、さらに、生産性の向上およびコスト的なメリットを得ることができる。
【0039】
微小試料台基部10には、微小試料搭載部20を形成するための凹部11を形成するが、微小試料搭載部20の形成は半導体ウエハのエッチング異方性を利用し、微小試料台基部10と微小試料搭載部20の境界は傾斜面とするので、直角に形成される場合よりも強度を高めることができる。
【0040】
なお、上記実施形態1では、各微小試料台基部10を(110)フラット面4に平行または垂直な方向に配列されるように形成する場合で説明した。
しかし、この発明は、各微小試料台基部10が、(110)フラット面4に対して傾斜する方向に配列されるように形成することもできる。
次に、そのような実施形態について説明する。
【0041】
(実施形態2)
図10は、本発明の微小試料台の実施形態2に係る拡大斜視図である。
実施形態2においても、微小試料台200は1枚の半導体基板から作製されるもので、シリコン基板等の半導体基板からなる微小試料台基部60および微小試料搭載部70を有する。
実施形態2が実施形態1と相違する点は、微小試料台基部60に形成される凹部61がV字形状であり、従って、この凹部61内に形成される微小試料搭載部70は、凹部61との境界部がこのV字形状に沿う形状を有することである。
【0042】
微小試料台基部60に形成されたV字形状の凹部61は90度の頂角を有している。凹部61の頂点と溝12の中心を結ぶ線は、扇形形状の試料台基部60の中心を通る。凹部61の一対の側面61aは、一面60aから対向面に向かって凹部61を小さくする方向に傾斜する傾斜面である。この側面61aはシリコンの(111)面である。
【0043】
その他の構成は実施形態1と同様であるので、逐一、その説明をすることは省略するが、以下に、その一例を記載する。
微小試料台基部60の上面63は、微小試料搭載部70の上面71より高い位置に突き出して形成されており、微小試料搭載部70に固定される微小試料をガードする。微小試料搭載部70の一側面72は、微小試料台基部70の凹部61内に位置し、この一側面72の対向面(裏面)は微小試料台基部60の対向面(裏面)と面一となっている。微小試料搭載部70の厚さtは、実施形態1と同様である。また、微小試料台基部60の外形形状、サイズ等も実施形態1の微小試料台基部10と同様である。
次に、図10に図示された微小試料台200の製造方法について説明する。
【0044】
図11は、シリコン基板からなる半導体ウエハ201に本発明の微小試料台200が多数形成された状態を示す平面図であり、各微小試料台200を半導体ウエハ201から分離する直前の状態を示す。半導体ウエハ201から分離する直前の各微小試料台200は、その周囲が半導体ウエハ201に形成された貫通溝2により半導体ウエハ201の周囲の領域と分離されている。つまり、それぞれ、各微小試料台200は1箇所の連結部3によってのみ、半導体ウエハ201に連結されている。
【0045】
半導体ウエハ201から分離する直前の各微小試料台200は、それぞれ、上下2個を一対として配列されており、各一対の微小試料台200は、貫通溝2の中心線、換言すれば、微小試料台基部60の上面63側の中心線、を対称軸とする線対称に形成されている。
半導体ウエハ201は、上面が(100)面であり、(110)面のフラット面4を有しており、各一対の微小試料台200は、フラット面4に対して45度傾斜した軸と平行に配列されている。
【0046】
実施形態2の微小試料台200を形成するには、半導体ウエハ201のフラット面4に対し、45度傾斜した軸と平行な方向を基準軸として各工程を行う。
実施形態2の微小試料台200の製造方法は、上記した如く、基準軸がフラット面4に対し45度傾斜している点を除けば、実施形態1の微小試料台100の製造方法と同一である。
【0047】
実施形態2において、凹部61がV字形状に形成される理由および工程を、図12(a)、図12(b)および13(a)、図13(b)と共に説明する。
各図において、(a)は図11において二点鎖線で囲んだ領域AのXIII−XIII線切断拡大断面図であり、(b)は図11において二点鎖線で囲んだ領域A近傍の拡大平面図である。
フラット面4に対し45度傾斜した軸を基準軸として、図2(a)および図2(b)〜図6(a)および図6(b)に示す各工程を行うと、図12(a)および図12(b)に図示する状態となる。図12(a)および図12(b)は図6(a)および図6(b)に対応する図である。すなわち、半導体ウエハ(半導体基板)201において、第1の基板エッチング用薄膜51の下面に位置していた第1の領域251および第2の基板エッチング用薄膜52の下面に位置していた第2の領域252(第1の基板エッチング用薄膜51および第2の基板エッチング用薄膜52は図5(a)および図5(b)参照)が露出され、それ以外の全領域には酸化シリコン膜からなるエッチングストッパ253が形成されている。
【0048】
この場合において、半導体基板201の第2の領域252は、第1の領域251と重合する部分と重合しない部分とを有する。半導体基板201の第2の領域252の第1の領域251と重合しない部分は半円形形状を有し、重合する部分は、半円形形状部分の直径と同一の幅を有する矩形形状を有する。つまり、第2の実施形態におけるエッチングストッパ253は、第1の実施形態におけるエッチングストッパ53と同一の形状を有する。
【0049】
この状態で、例えば、水酸化カリウム(KOH)の20〜30重量%水溶液中に浸漬し、半導体基板1の露出部をウエットエッチングする。このエッチングは、(111)面が残存する異方性エッチングである。
ここで、(111)面は、(110)面と平行な辺を有し、z軸(図11において紙面と垂直な方向)と交差する方向に傾斜する傾斜面となる面であり、フラット面4が(110)面であることから、フラット面4と垂直な面および平行な面に対し傾斜する斜面となる。上述した如く、半導体基板201の第2の領域252の第1の領域251と重合しない部分は、平面視で半円形形状である。また、一対となる各微小試料基部60は、(110)面に対し、45度傾斜した軸に平行な方向に配列されている。このため、半導体基板201の第2の領域252のウエットエッチングは、フラット面4と垂直方向および平行方向に拡大して進行する。
【0050】
すなわち、図13に示す如く、微小試料台基部60には、V字状の凹部61が形成される。凹部61の側面61aは(111)面であり、その頂角θは90度である。また、エッチングは、半導体基板201の第1の領域251側からも進行するので、凹部61内に微小試料搭載部70が形成され、図13(a)および図13(b)に図示された状態となる。この後は、連結部3を除去して半導体基板201から分離して微小試料台200を得る。
【0051】
実施形態2においても、実施形態1と同様な効果を奏する。加えて、実施形態2では、凹部61がV字形状であるので、一層、強度を大きくすることができる。
なお、本発明の微小試料台は、全体が単一半導体層の半導体ウエハだけでなく、複数層の半導体層を有する半導体ウエハを用いて形成することができる。次に、そのような実施形態について説明する。
【0052】
(実施形態3)
図14は、本発明の微小試料台の実施形態3に係る拡大斜視図である。
微小試料台300は、詳細は後述するが、SOI(Silicon on Insulator)ウエハを用いて形成されるものであり、シリコン等の単結晶半導体層からなる微小試料台基部310、微小試料搭載部320および微小試料台基部310と微小試料搭載部320との間に介在された酸化シリコンからなる絶縁膜340を有する。
【0053】
微小試料台基部310の外形形状およびサイズは実施形態1と同様であり、中心角が半円(中心角180度)より大きい直径2〜4mmの扇形の円弧状の外形部を有している。微小試料台基部310の中央の上方側には平面視で矩形形状の開口部311が形成されている。開口部311は、下面311aと一対の側面311bとを有し、下面311aの対向側は開放されている。下面311aおよび一対の側面311bは一面310aに対しほぼ垂直に形成されている。
【0054】
微小試料搭載部320は、微小試料台基部310の一面310a上に形成されている。微小試料搭載部320は、開口部311より長く、一部が開口部311の一面を覆っている。微小試料搭載部320は、上部側に複数の試料設置部321を有する。図14に図示された試料設置部の数は三個であるが、これよりも多くても少なくてもよい。試料設置部321の上面321aは、微小試料台基部310の上面313よりも低い位置とされている。これにより、微小試料搭載部320に固定された微小試料はガードされる。
【0055】
絶縁膜340は、微小試料台基部310と微小試料搭載部320との間に設けられている。絶縁膜340の形状は、微小試料搭載部320に対応する領域の中、開口部311に面する領域が除去された形状および面積を有する。このような、形状および面積となる理由は、この半導体装置300の製造方法と共に後述する。
【0056】
微小試料台基部310の下部には矩形状の小さな溝12が形成されている。開口部311および溝12は、扇形の円弧状の中心線上に位置している。上記以外に記載のない構成に関しては、実施形態1と同様である。
次に、図14に図示された微小試料台300の製造方法について説明する。
【0057】
図15(a)および図15(b)〜図21(a)および図21(b)は、図14に図示された微小試料台300の製造方法を説明するための図である。図示は省略するが、実施形態4の微小試料台300も、実施形態1および実施形態2と同様に、半導体ウエハに多数配列して形成される。図15(a)および図15(b)〜図21(a)および図21(b)の各図において、(a)は図9および図11における領域Aに対応する部分の拡大断面図であり、(b)はその領域近傍の拡大平面図である。
【0058】
先ず、SOIウエハを準備する。SOIウエハには、2枚のシリコン半導体基板を、酸化膜を介在して張り合わせたDBW(Direct Bonded Wafer)と、シリコン半導体基板内部に酸素イオンを注入して高温で酸化させることによりシリコン半導体基板の内部に酸化シリコン層を形成するSIMOX(Separation by Implantation of Oxygen)方式により形成したものとがある。このどちらでもよい。
すなわち、SOIウエハ(以下、「半導体基板」という)301は、第1半導体層302と、第1半導体層302下に配置された第2半導体層303と、第1半導体層302と第2半導体層303との間に介在された酸化シリコンからなる絶縁膜304を有する。
【0059】
第1半導体層302の一面302a上の全面にフォトレジストを塗布する。そして、第1半導体層302上に塗布されたフォトレジストを、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングし、微小試料搭載部形成用マスク361を形成する。この状態を図15(a)および図15(b)に示す。図15(a)に図示されるように、微小試料搭載部形成用マスク361は、図14に図示される微小試料搭載部320に対応する形状を有しており、三個の試料設置部321に対応する部分を含んでいる。
【0060】
次に、微小試料搭載部形成用マスク361をマスクとして、第1半導体層302をドライエッチングして微小試料搭載部320を形成する。ドライエッチングとしては、例えば、ICP―RIE法を用いる。この後、微小試料搭載部形成用マスク361を除去する。微小試料搭載部形成用マスク361の除去は、例えば、酸素ガスを含むRIE法を用いる。この状態を図16(a)および図16(b)に示す。
【0061】
次に、第2半導体層303の一面303a上の全面にフォトレジストを塗布し、フォトリソグラフィ法により、フォトレジストをパターニングして、微小試料台基部310の外形形状を有するフォトレジストパターン343を形成する(図17(a)および図17(b)参照)。フォトレジストパターン343は貫通溝2を除く領域、すなわち、形成しようとする微小試料台基部310、連結部3および連結部3間を連結する領域の第2半導体層303を覆う形状を有する。この場合、形成しようとする微小試料台基部310に対するフォトレジストパターン343の形状は、開口部311に対応する部分が除かれた形状である。図17(b)においては、フォトレジストパターン343は、絶縁膜304下に位置するため、点線で描画されたパターンの内側領域となっている。
【0062】
次に、フォトレジストパターン343をマスクとして、ICP(Inductively Coupled Plasma)−RIE法等のドライエッチングにより、第2半導体層303を除去し、連結部3で周囲の第2半導体層303と連結された微小試料台基部310を形成する。この工程では、第2半導体層303は、微小試料台基部310の開口部311に対応する領域が除かれた形状に形成されるので、微小試料台基部310が形成されることになる。つまり、最初に準備したSOI基板の全体に亘って形成されていた絶縁膜304の一面上に第1半導体層302により形成された微小試料搭載部320が形成されている。また、絶縁膜304の他面上に第2半導体層303により形成された微小試料台基部310および連結部3が形成されている。この状態を、図18(a)および図18(b)に示す。
【0063】
次に、微小試料搭載部320をマスクとして、バッファード弗酸(BHF)により酸化シリコンよりなる絶縁膜304をウエットエッチングする。この工程により、図19(a)および図19(b)に図示されるように絶縁膜304は、微小試料搭載部320に対応する領域の中、開口部311に面する領域が除去された形状および面積を有する絶縁膜340となる。また、絶縁膜304が開口部311に面する領域が除去される結果、絶縁膜304によって連結されて一対となっていた微小試料台基部310は分離され、それぞれ、連結部3のみにより第2半導体層303に連結された状態となる。
【0064】
上記の状態で、微小試料台基部310を連結部3から分離すれば、微小試料台300が得られるが、本実施形態では、この後、微小試料搭載部320の試料設置部321の上面321aの平坦化処理を行う。この処理を行うため、図19(a)および図19(b)に図示された状態のSOIウエハを、熱酸化炉に収容して熱酸化を行う。この処理により、図20(a)および図20(b)に図示されるように、絶縁膜340から表出している微小試料搭載部320および微小試料台基部310の全表面に酸化シリコン膜345が形成される。
【0065】
次に、BHFを用いて、微小試料搭載部320および微小試料台基部310に形成された酸化シリコン膜345をウエットエッチングする。これにより、図21(a)および図21(b)に図示されるように、熱酸化により形成された酸化シリコン膜が除去され、微小試料搭載部320および連結部3により相互に連結された微小試料台基部310が絶縁膜340を介して一体化された状態となる。
この後、リンス、乾燥を行い、連結部3をエッチング等適宜な方法で除去または切断して微小試料台基部310を第2半導体層303から分離することにより、図14に図示される多数の微小試料台300を同時に得ることができる。
【0066】
図16(a)および図16(b)にて説明した通り、微小試料搭載部320は、いったんは、ICP―RIE法等のドライエッチング法により形成される。通常、この処理によって、試料設置部321の上面321aを含む微小試料搭載部320全体にスキャロップといわれる規則的な凹凸が形成される。これに対し、本実施形態では、上述の如く、絶縁膜304から表出している微小試料搭載部320および微小試料台310の全表面を熱酸化して酸化膜を形成し、この酸化膜をウエットエッチングにより除去するので、試料設置部321全体およびその上面321aを含む微小試料搭載部320が平坦化される。
【0067】
実施形態3では、複数の試料設置部321を有する。これらの試料設置部321は、それぞれ、上面321aが平坦とされるので、これらの上面321a上に、それぞれ、微小試料を固定することが可能となる。複数の試料設置部321の間における微小試料搭載部320は凹部となっているため、微小試料の薄片化処理において、イオンビームを照射した際、逆スパッタにより発生する微粉の量が低減する。このため、分析時におけるバックグラウンドノイズを一層低減することができる。
【0068】
実施形態3においても、実施形態1と同様な効果を奏する。加えて、実施形態3では、上述した如く、微小試料搭載部320を、いったんドライエッチングによりパターニングした後、熱酸化して酸化層を形成し、この酸化層をウエットエッチングにより除去する平坦化処理を行うので、微小試料搭載部320の試料設置部321の側面および上面321a上に微小試料を設置することが可能となる。
この場合、実施形態3では、微小試料台基部310を含んで平坦化処理したが、微小試料台320のみ平坦化処理するようにしてもよい。
【0069】
次に、上述した微小試料台100、200および300に微小試料を固定する方法につき、図22および図23と共に説明する。
図22において、80はシリコン基板等からなる微小試料である。微小試料80は、分析領域83の周囲をGaイオンビーム等で除去して溝82を形成したものである。この微小試料の上面には、マイクロプローブ85が固定されている。マイクロプローブ85は、微小試料を、母材であるデバイスから分離する前に、微小試料80の上面にマイクロプローブ85を押し当てた状態で、CVD法によりカーボン86を成膜して固定される。
【0070】
マイクロプローブ85が固定された状態で、微小試料80は、微小試料台100、200または300の微小試料搭載部90の上面90aに固定される。
微小試料台100または200と微小試料搭載部90との固定も、上記と同様に、CVD法により成膜したカーボン87によって行うことができる。
【0071】
なお、上記においては、微小試料80をマイクロプローブ85に固定した後、微小試料台100、200または300の微小試料搭載部90の上面90aに固定する方法で説明したが、微小試料80を、直接、ナノピンセットにより把持し、この状態のまま、微小試料搭載部90の上面90aに固定するようにしてもよい。
【0072】
図22に図示される如く、微小試料80が、微小試料台100、200または300の微小試料搭載部90の上面90aに固定されたら、イオンビームを照射してマイクロプローブを分離して図23の状態とする。
そして、この後、図示はしないが、微小試料80にGaイオン等の荷電粒子をFIB法により照射して微小試料80を0.1μm程度の厚さになるまで薄片化する。
この薄片化工程において、本発明では、微小試料搭載部90が数μm以下の厚さであるため、微小試料搭載部90がイオンビームによってスパッタされることがなく、したがって、異物が微小試料の表面に付着することが全くないか、あるいは極く少量しかない。
よって、分析時のバックグラウンドノイズを大幅に低減することが可能である。
【0073】
図23は、微小試料80を微小試料搭載部90の上面90aに固定した状態の側面図である。
微小試料80は微小試料搭載部90の側面に固定することも可能である。
図24および図25は、微小試料搭載部90が、微小試料台基部91に形成された凹部92内に形成された状態の側面図である。図24では、微小試料80は、微小試料搭載部90の、微小試料台基部91の凹部92側と反対面側の側面に固定されている。また、図25では、微小試料80は、微小試料搭載部90の、微小試料台基部91の凹部92側に固定されている。
【0074】
図26〜28は、それぞれ、微小試料が固定された微小試料搭載部320が、絶縁膜304を介して微小試料台基部310の一側面に設けられた微小試料台の側面図である。図26では、微小試料80は、微小試料搭載部320の、微小試料台基部310とは反対面側の側面に固定されている。この場合、図26において、二点鎖線で示すように、微小試料80は、微小試料搭載部320の、微小試料台基部310側に固定することも可能である。図27は、微小試料80が微小試料搭載部320に形成された試料設置部321の上面321aに固定された状態を示す。試料設置部321は上面321aを含む全表面がウエットエッチングにより形成されており、平坦性が高いので、このように上面321a上に微小試料80を固定することが可能となる。図28では、微小試料80は、微小試料搭載部320に形成された試料設置部321の厚さ方向の側面に固定されている。この場合、微小試料80は、実線で示す右側面側および二点鎖線で示す左側面側のいずれに固定してもよい。上述した如く、微小試料が固定される試料設置部321間の微小試料搭載部320を凹部とすることにより、微小試料の薄片化処理における微粉の発生を一層抑止することができる。
【0075】
なお、上記実施形態では、半導体基板としてシリコン基板を用いた場合で説明したが、半導体基板として、Ge等の元素半導体、あるいはGaAs、InP等の化合物半導体基板を用いることができる。
半導体基板または半導体層から分離する前、微小試料台基部を1箇所の連結部で保持する場合で説明したが、連結部の数および位置は、適宜、適切に設定することができる。
また、微小試料台の2個を一対として生産する方法で説明したが、個々に独立して形成することもできる。
【0076】
その他、本発明の微小試料台は発明の趣旨の範囲内において、種々、変形して構成することが可能であり、要は、微小試料搭載部と前記微小試料搭載部を支持する微小試料台基部とを具備し、微小試料搭載部と微小試料台基部とは
(i)半導体層により一体化されて形成されている、
(ii)微小試料搭載部と微小試料台基部との間に無機絶縁膜を介在して半導体層により形成されている、のいずれかの構成を有するものであればよい。
【0077】
また、本発明の微小試料台作成用基板は、それぞれが微小試料搭載部と微小試料台基部を有する多数の微小試料台を有する半導体ウエハまたはSOIウエハであり、半導体ウエハまたはSOIウエハにおける微小試料台の周囲を、連結部を残して厚さ方向に切り欠いた貫通部を有するものであればよい。
【0078】
本発明の微小試料台の製造方法は、半導体基板の一面に無機材料からなる微小試料搭載部上面形成用薄膜を形成する工程と、半導体基板の他面に、無機材料からなる微小試料搭載部形成用薄膜を形成する工程と、微小試料搭載部上面形成用薄膜および小試料搭載部形成用薄膜を含む微小試料台の形成領域の外周における半導体基板を除去して、連結部で連結された微小試料台の外形を形成する工程と、微小試料搭載部上面形成用薄膜および微小試料搭載部形成用薄膜を除去する工程と、微小試料搭載部上面形成用薄膜下および微小試料搭載部形成用薄膜下の半導体基板を除去して微小試料台搭載部および微小試料台基部を形成する工程と、連結部で連結された微小試料台を半導体基板から分離する工程と、を具備するものであればよい。
また、本発明の微小試料台の製造方法は、第1の半導体層と、第2の半導体層と、第1の半導体層と第2の半導体層の間に設けられた無機絶縁膜を有する微小試料台形成用基板を準備する工程と、第1の半導体層の一部を除去して微小試料搭載部を形成する工程と、第2の半導体層の一部を除去して開口部を含む微小試料台基部の外形を形成する工程と、無機絶縁膜を除去して、微小試料台基部の開口部に対応して微小試料搭載部が形成された微小試料台を得る工程と、の各工程を含むものであればよい。
【0079】
さらに、本発明の微小試料台の分析方法は、微小試料搭載部および微小試料台基部を有する微小試料台を準備する工程と、微小試料台の微小試料搭載部に微小試料を固定するステップと、微小試料が固定された前記微小試料台を、直接、分析用装置の分析ステージに取り付けるステップと、を具備し、微小試料搭載部と微小試料台基部とは、
(i)半導体層により一体化されて形成されている、
(ii)微小試料搭載部と微小試料台基部との間に無機絶縁膜を介在して半導体層により形成されている、のいずれかの構成を有するものであればよい。
【符号の説明】
【0080】
1、201 半導体ウエハ(半導体基板)
2 貫通溝
3 連結部
4 フラット面
10、60 微小試料台基部
10a 一面
11、61 凹部
11a 下面
11b、61a 側面
13、63 上面
20、70 微小試料搭載部
21、71 上面
22、72 一側面
31 薄膜
43 外形用フォトレジストパターン
51 第1の基板エッチング用薄膜(微小試料搭載部上面形成用薄膜)
52 第2の基板エッチング用薄膜(微小試料搭載部形成用薄膜)
53、253 エッチングストッパ
80 微小試料
82 溝
83 分析領域
86、87 カーボン
90 微小試料搭載部
100、200 微小試料台
251 第1の領域
252 第2の領域
300 微小試料台
301 SOIウエハ(半導体基板)
302 第1半導体層
302a 一面
303 第2半導体層
303a 一面
304 絶縁膜
310 微小試料台基部
310a 一面
311 開口部
311a 下面
311b 側面
320 微小試料搭載部
321 試料設置部
321a 上面
343 フォトレジストパターン
345 酸化シリコン膜
361 微小試料搭載部形成用マスク


【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小試料搭載部と、前記微小試料搭載部を支持し、分析装置への取付部となる微小試料台基部とを具備し、前記微小試料搭載部と前記微小試料台基部とは
(i)半導体層により一体化されて形成されている、
(ii)前記微小試料搭載部と前記微小試料台基部との間に無機絶縁膜を介在して半導体層により形成されている、
のいずれかの構成を有することを特徴とする微小試料台。
【請求項2】
請求項1に記載の微小試料台において、前記微小試料搭載部と前記微小試料台基部は前記半導体層により一体化されて形成され、前記微小試料台基部は、厚さ方向に陥没した凹部を有し、前記微小試料搭載部は前記微小試料台基部の凹部内に形成されていることを特徴とする微小試料台。
【請求項3】
請求項2に記載の微小試料台において、前記微小試料台基部の凹部は、平面矩形形状を有することを特徴とする微小試料台。
【請求項4】
請求項2に記載の微小試料台において、前記微小試料台基部の凹部は、平面V字矩形形状を有することを特徴とする微小試料台。
【請求項5】
請求項1に記載の微小試料台において、前記微小試料搭載部と前記微小試料台基部は、前記微小試料搭載部と前記微小試料台基部との間に無機絶縁膜を介在して半導体層により形成され、前記無機絶縁膜は酸化シリコンを含むことを特徴とする微小試料台。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の微小試料台において、前記微小試料台基部は前記微小試料搭載部よりも高さ方向に高く突き出すガード部を有することを特徴とする微小試料台。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の微小試料台において、前記微小試料台基部は、外形が半円よりも中心角の大きい扇形の円弧状部分を有することを特徴とする微小試料台。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の微小試料台において、前記微小試料搭載部は、その厚さが数μm以下であることを特徴とする微小試料台。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の微小試料台において、微小試料搭載部は突き出し状に形成された複数の試料設置部を有することを特徴とする微小試料台。
【請求項10】
それぞれが微小試料搭載部と微小試料台基部を有する多数の微小試料台を有する半導体ウエハまたはSOIウエハであり、前記半導体ウエハまたは前記SOIウエハにおける前記微小試料台の周囲を、連結部を残して厚さ方向に切り欠いた貫通溝を有することを特徴とする微小試料台作成用基板。
【請求項11】
請求項10に記載の微小試料台作成用基板において、前記半導体ウエハまたは前記SOIウエハは(110)面のフラット面を有し、前記微小試料台は前記フラット面に対し水平方向または垂直方向に配列されていることを特徴とする微小試料台作成用基板。
【請求項12】
請求項10に記載の微小試料台作成用基板において、前記半導体ウエハまたは前記SOIウエハは(110)面のフラット面を有し、前記微小試料台は前記フラット面に対し45度傾斜した方向に配列されていることを特徴とする微小試料台作成用基板。
【請求項13】
請求項10乃至12のいずれか1項に記載の微小試料台作成用基板において、前記微小試料台の各々は、前記微小試料搭載部を相互に近接する側に向けて線対称となる一対を構成するように配置されていることを特徴とする微小試料台作成用基板。
【請求項14】
半導体基板の一面に無機材料からなる微小試料搭載部上面形成用薄膜を形成する工程と、
前記半導体基板の他面に、無機材料からなる微小試料搭載部形成用薄膜を形成する工程と、
前記微小試料搭載部上面形成用薄膜および前記微小試料搭載部形成用薄膜を含む微小試料台の形成領域の外周における前記半導体基板を除去して貫通溝を設け、前記貫通溝の周囲における前記半導体基板に連結部で連結されるように前記微小試料台の外形を形成する工程と、
前記微小試料搭載部上面形成用薄膜および前記微小試料搭載部形成用薄膜を除去する工程と、
前記微小試料搭載部上面形成用薄膜下および前記微小試料搭載部形成用薄膜下の前記半導体基板を除去して微小試料台搭載部および微小試料台基部を形成する工程と、
前記連結部で連結された前記微小試料台を前記半導体基板から分離する工程と、
を具備することを特徴とする微小試料台の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の微小試料台の製造方法において、前記微小試料搭載部上面形成用薄膜の下面および前記微小試料搭載部形成用薄膜の下面の前記半導体基板を除去して微小試料台搭載部および微小試料台基部を形成する工程は、ウエットエッチングにより前記半導体基板を除去する工程を含むことを特徴とする微小試料台の製造方法。
【請求項16】
請求項14または15のいずれか1項に記載の微小試料台の製造方法において、前記連結部で連結された微小試料台の外形を形成する工程の後、前記微小試料搭載部上面形成用薄膜および前記微小試料搭載部形成用薄膜を除去する工程の前に、前記微小試料搭載部上面形成用薄膜および前記微小試料搭載部形成用薄膜で覆われた領域以外の前記半導体基板の領域の表面に前記微小試料搭載部上面形成用薄膜および前記微小試料搭載部形成用薄膜とは異なる材料からなる無機絶縁物を形成する工程を含むことを特徴とする微小試料台の製造方法。
【請求項17】
第1の半導体層と、第2の半導体層と、前記第1の半導体層と前記第2の半導体層の間に設けられた無機絶縁膜を有する微小試料台形成用基板を準備する工程と、
前記第1の半導体層の一部を除去して微小試料搭載部を形成する工程と、
前記第2の半導体層の一部を除去して開口部を含む微小試料台基部の外形を形成する工程と、
前記無機絶縁膜を除去して、前記微小試料台基部の前記開口部に対応して前記微小試料搭載部が形成された微小試料台を得る工程と、
の各工程を含むことを特徴とする微小試料台の製造方法。
【請求項18】
請求項17に記載の微小試料台の製造方法において、前記第1の半導体層の一部を除去して微小試料搭載部を形成する工程は、ドライエッチングにより前記第1の半導体層を除去する工程を含むことを特徴とする微小試料台の製造方法。
【請求項19】
請求項17または18のいずれか1項に記載の微小試料台の製造方法において、前記第1の半導体層の一部を除去して微小試料搭載部を形成する工程の後、少なくとも前記微小試料搭載部の表面に酸化膜を形成し、前記酸化膜をウエットエッチングにより除去する工程を含むことを特徴とする微小試料台の製造方法。
【請求項20】
微小試料搭載部および微小試料台基部を有する微小試料台を準備し、
前記微小試料台の前記微小試料搭載部に微小試料を固定し、
前記微小試料が固定された前記微小試料台を、直接、分析用装置の分析ステージに取り付ける微小試料台の分析方法であって、
前記微小試料搭載部と前記微小試料台基部とは、
(i)半導体層により一体化されて形成されている、
(ii)前記微小試料搭載部と前記微小試料台基部との間に無機絶縁膜を介在して半導体層により形成されている、
のいずれかの構成を有することを特徴とする微小試料台を用いた分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2011−47660(P2011−47660A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193980(P2009−193980)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(390022471)アオイ電子株式会社 (85)
【Fターム(参考)】