説明

微小電気機械システム(MEMS)を用いて創傷を治癒するためのシステム及び方法

患者の組織部位を治療するためのシステム及び方法が、患者の組織部位の1以上の滲出液の特徴を感知するステップを具えることができる。感知した1以上の滲出液の特徴のレベルは測定でき、測定された少なくとも1の特徴的なレベルに応じて、組織部位に対する治療の実施又は変更が行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は2008年10月3日提出の米国仮特許出願第61/102,662号の利益を主張し、全体が引用によって本明細書中に組み込まれる。
【0002】
[本発明の分野]
本発明の原理は一般的には組織を治療するためのシステム及び方法に関する。特に、本発明の原理は、BioMEMSとしても知られる微小電気機械システム(MEMS)を減圧送達システムで用いて、組織を治療することに関する。
【背景技術】
【0003】
[関連技術の説明]
創傷療法の分野は近年進歩してきた。創傷治癒療法の進歩の1つは、創傷に対する真空補助式の創傷治癒又は減圧送達の開発である。創傷に対する減圧又は陰圧の印加によって、創傷又は組織部位で血流が改善され、組織の成長が増加し、感染が低減し、治癒時間が改善されることが臨床上示されてきた。介護者はこのような真空補助式の創傷治癒を用いて、褥瘡、糖尿病性の創傷、腹部創傷、中間層熱傷、外傷性の創傷、皮弁、及び移植片といった多様な慢性及び急性の創傷型を治療できる。
【0004】
[創傷及び創傷治癒プロセスの背景]
創傷は一般的には皮膚上皮の完全性の破壊として規定される。しかしながら、このような損傷は相応に深くなり、真皮、皮下脂肪、筋膜、筋、更には骨を含みうる。固有の創傷療法は組織修復を導く、非常に複雑で、動的で、かつ協調的な一連のステップである。急性創傷療法は、常在性及び遊走性の双方の細胞集団が協調的な方法において細胞外基質環境内で作用して、損傷組織を修復するステップを具える。一部の創傷は(多様な理由のために)この方法で治癒できず、慢性創傷と称される。
【0005】
組織の損傷に続く、協調的な創傷の治癒は一般的には、4の重複するが明確な段階:止血;炎症;増殖;及び、組織修復;を具える。止血は出血、凝固、ならびに血小板及び補体の活性化である、創傷の応答及び修復における第1のステップを具える。炎症は最初の日の終わり近くにピークとなる。細胞増殖は次の7ないし30日にわたって生じ、創傷領域の測定が最も有益になる期間を含んでいる。この期間中に、線維増殖、血管新生、再上皮化及び細胞外基質の合成が生じる。創傷における初期のコラーゲン形成は一般的には、ほぼ7日目にピークとなる。創傷の再上皮化は最適な条件下でほぼ48時間で生じ、この時に創傷は完全に塞がれうる。治癒する創傷は3週で完全な引張り強さの15%ないし20%を有し、4ヶ月で完全な強度の60%を有する。1ヶ月後に、分解及び組織修復段階が開始し、細胞充実性及び血管増生が低減し、引張り強さが増加する。成熟した瘢痕の形成には多くの場合6ないし12ヶ月必要である。
【0006】
[創傷治癒プロセスを測定するための関連技術における試み]
創傷治療には材料と専門的な治療時間の双方がかかりうるため、創傷及び創傷治癒プロセスの評価は必須となりうる。創傷の治癒の進捗を判定するのに介護者を補助できるいくつかの創傷パラメータがある。例えば、創傷の面積及び容量の測定は、創傷が治癒しているか否か、及び、創傷が治癒している場合にどの程度の早さで創傷が治癒しているかについての知見を提供できる。
【0007】
創傷の大きさ及び容量に加えて、介護者は多くの場合、創傷の治癒力及び治癒の進捗を判定するのに創傷の呈色及び質感を用いる。創傷組織は創傷床と創傷周囲の領域又は創傷縁部とを具える。特定の問題は創傷組織の呈色及び質感から検出できる。例えば、通常の肉芽組織は肉状で、赤く、光沢のある質感の外観を有し、容易に退色する一方、壊死組織(すなわち、死滅組織)は「脱落(slough)」組織として一般的に知られる黄灰色で柔かい組織であるか、「焼痂(eschar)」組織として一般的に知られる硬く呈色が黒/茶色の組織のいずれかである。介護者はこれら及びその他の創傷組織を観察及びモニタリングして、創傷全体及び特定の創傷領域の創傷治癒の進捗を判定できる。不適切かつ不完全な評価は広範で多様な合併症を引き起こすため、創傷の評価は固有に創傷を治療するための重要なプロセスである。治療されない組織部位での感染症によって、持続性の損傷、切断、あるいは患者の死さえも生じうる。
【0008】
感染症は緩徐に開始するが急速に増加しうる。感染症が急速に増加した場合、患者は短期間で重篤な病気になり得る。創傷の治療中、包帯又は他のドレッシング剤は一般的には創傷を覆っている。従って、介護者はドレッシング剤を脱離又は変更する時以外に創傷を見ることができない。創傷の大きさ及び種類に依存して、ドレッシング剤は創傷の治癒プロセスを妨害するのを回避するため、定期的にはほとんど変更できない。創傷が変わる期間中に、介護者が感染症が生じたこと、あるいはどの程度の速さで感染症が進捗しているのかを知ることなく、感染症が形成されうる。他の問題は創傷治癒プロセス中に発生しうるが、創傷はドレッシング剤によって覆われており、ドレッシング剤が変えられるまで認知されない。
【発明の概要】
【0009】
介護者が患者の組織部位の治癒及び感染の状態を評価できるように改善するために、本発明の原理は組織部位からの1以上の滲出液の特徴の測定を提供する。滲出液は、化学的特徴(例えば、pHレベル)、生物学的マーカー(例えば、細菌数又は型)、あるいはその他の1以上の化学的特徴及び/又は1以上の生物学的マーカーの指標について測定されて、組織部位を治療する介護者を補助できる。1以上の滲出液の特徴を測定するためのある実施形態は、組織部位に又はその近くに配置される微小電気機械システム(MEMS)を用いるステップを具える。MEMSデバイスを、減圧を用いて組織部位を治療するように動作する減圧送達システムに統合することによって、減圧送達システムは1以上の治療パラメータを調整して、MEMSデバイスが1以上の滲出液の特徴を感知するのに応じて、組織部位からの所望されない滲出液の特徴を補償できる。
【0010】
減圧送達システムのある実施形態は、患者の組織部位に対して治療を実施するように構成される電気機械部品を具えうる。演算処理装置は、電気機械部品と接続して、組織部位に対する治療を実施するように、電気機械部品を動作させるべく構成できる。少なくとも1の導管は、組織部位に治療を送達するように構成できる。微小電気機械(MEMS)デバイスは組織部位から1以上の滲出液の特徴を感知するように構成され、更に感知した1以上の滲出液の特徴を示すデータを通信するように構成される。演算処理装置は前記MEMSデバイスからデータを受信するように構成され、患者の組織部位に対する治療を1の導管を介して電気機械部品で実施するように構成されうる。
【0011】
患者の組織部位を治療する方法のある実施形態は、患者の組織部位の1以上の滲出液の特徴を感知するステップを具えうる。感知した1以上の滲出液の特徴のレベルを測定でき、測定された1以上の特徴のレベルに応じて、組織部位に対する治療の実施又は変更を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、患者が減圧送達システムを用いて治療される例示的な構成の説明である。
【図2】図2は、減圧送達システムによって減圧が印加される組織部位を覆う例示的なドレッシング剤の説明であり、MEMSデバイスは組織部位の減圧送達システムへの流路に含まれている。
【図3】図3は、組織部位を覆う例示的なドレッシング剤の説明であり、MEMSデバイスは組織部位の減圧送達システムへの流路に含まれている。
【図4A】図4Aは、例示的な減圧送達システムのブロック図である。
【図4B】図4Bは、図4Aの減圧送達システムの動作を制御するように構成される例示的なモジュールのブロック図である。
【図5】図5は、例示的なグラフィカルユーザインタフェースを表示するための電子ディスプレイを含む例示的な減圧送達システムの説明である。
【図6】図6は、患者の組織部位で1以上の滲出液の特徴を感知し、それに応じて治療液を組織部位に送達するための例示的なプロセスのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1について、患者102を治療するためのセットアップ100が示される。患者は減圧送達システム106によって組織部位104で減圧治療を受けている。減圧送達システム106は更に真空補助式の治療デバイスとして知られている。減圧送達システム106は創傷療法といった組織治療のプロセスにおいて患者を補助するように一般的に用いられる任意のシステムとなりうる。更には、減圧送達システム106は、本明細書中に更に記載のソフトウェアを利用して、組織部位104の治癒をモニタリングして介護者を補助するように構成される任意のコンピュータシステムであってもよい。介護者は一般的には、任意の医療従事者、ユーザ、患者の家族、又は減圧送達システムと対話するか、あるいはそのインタフェースとなる患者を意味する。代替的な実施形態においては、減圧送達システムは、移動可能な患者を治療するのに利用できる一体型のドレッシング剤に統合できる。
【0014】
本明細書中で用いられるような用語「組織部位(tissue site)」は任意の組織の上又は内部に位置する創傷又は欠損のことであり、限定しないが骨組織、脂肪組織、筋組織、神経組織、皮膚組織、血管組織、結合組織、軟骨組織、腱、又は靱帯を含む。用語「組織部位」は更に、創傷又は欠損である必要はなく、更なる組織の成長を追加又は促進するのに所望される領域である任意の組織の領域であってもよい。例えば、減圧組織治療は、回収され、別の組織位置に移植されうる更なる組織の成長のために特定の組織領域で用いてもよい。
【0015】
本明細書中で用いられるような用語「減圧(reduced pressure)」は一般的には、治療を受けている組織部位での雰囲気圧未満の圧力のことである。ほとんどの場合においては、この減圧は患者が位置する大気圧未満である。代替的に、減圧は組織部位での組織の静水圧未満であってもよい。用語「真空(vacuum)」及び「陰圧(negative pressure)」は組織部位に印加される圧力について記載するのに用いられうるが、組織部位に印加される実際の真空レベルは完全真空で通常関連づけられる真空レベルよりも顕著に低くなりうる。減圧は最初に、組織部位の領域におけるチューブ又は導管に流動を生成できる。組織部位の周りの静水圧が所望の減圧に接近するとき、流動は弱まり、減圧はその後維持される。他に示さない限り、本明細書中に述べた圧力の値はゲージ圧である。
【0016】
減圧送達システム106は減圧送達システム106から組織部位104に延在する減圧導管108を具えることができる。組織部位104で、分配マニホルド(特に引用せず)を具える減圧ドレッシング剤110は、減圧導管108に流体連結できる。更に、ドレープ112は組織部位104及び分配マニホルド110の上方に配置できる。本明細書中で用いられるような用語「マニホルド(manifold)」は一般的には減圧を組織部位に印加し、液体を組織部位に送達し、組織部位から液体を除去するのを補助するために提供される物体又は構成のことである。マニホルドは一般的には、マニホルドの周囲の組織の領域に提供され、そこから除去される流体及び圧力の分布を改善するために内部連結される複数の流動のチャネル又は経路を具える。マニホルドの例は限定しないが、流動チャネルを形成するように構成される構造要素、連続気泡発泡体等の気泡発泡体、多孔性組織の集合、ならびに流動チャネルを含み、又は含むように硬化させた液体、ゲル及び発泡体を有するデバイスを具えてもよい。
【0017】
ドレープ112は気体透過性であり、減圧治療中に液体が組織部位104に出入りするのを防ぐ可撓性材料であってもよい。可撓性材料は屈曲(bent/flexed)可能な物体又は材料である。エラストマー材料は一般的には可撓性であるが、本明細書中の可撓性材料に対する引用はエラストマーのみの材料選択に限定することを必ずしも要しない。本発明の原理による材料又は減圧送達機構と関連する用語「可撓性(flexible)」の使用は一般的には、組織部位の形状に適合し、厳密に合致する材料の性能のことである。例えば、骨の欠損を治療するのに用いられる減圧送達機構の可撓性の性質によって、機構は、欠損を有する骨の部分の周りを包み込むか、あるいは巻きつけることが可能になる。
【0018】
減圧送達システム106は滲出液を収集する滲出液キャニスター114を具えることができる。図示のように、滲出液キャニスター114が少なくとも部分的に半透明である場合に、ユーザが滲出液のレベルを見ることができるように減圧送達システム106から突出するように滲出液キャニスター114は示される。代替的に、滲出液キャニスター114は、例えば中間チューブ(図示せず)を通って減圧送達システム106と流体連結してもよい。
【0019】
ある実施形態においては、MEMSデバイス(図示せず)は、減圧送達システム106で減圧導管108、減圧ドレッシング剤110、滲出液キャニスター114に統合されるか、組織部位104に直接的に適用されるか、あるいはそうでない場合は減圧送達システム106の流路内に配置される。MEMSデバイスは一般的には、微細加工技術を用いた共通基板上の機械素子、センサー、アクチュエータ、電子機器、あるいはその組合せとの統合であると考えられ、統合した機械部品及び電気部品の使用を通して、1以上の機能を実行できる。減圧送達システム106用の機能は、サンプリング及び感知することと、フィードバック信号を生成することと、送達あるいは組織部位104に対する治療の送達を行うこととを具えてもよい。このようなフィードバックは一般的には、自動制御システムにおける能動フィードバックと見なされる。「流路(fluid path)」は滲出液が流れ出し、かつ組織部位104を含み、かつ滲出液キャニスター114を含む経路である。MEMSデバイスは流路に固定的に取付けられ、あるいは脱離可能に配置されて、組織部位104から滲出液をサンプリングできる。多くのパラメータが組織部位から離れた流路において測定できるが、温度及び圧力等の特定のパラメータは組織部位でより正確に測定される。本明細書中で用いられるような用語「流体(fluid)」は一般的には気体又は液体のことであり、限定しないがゲル、コロイド、及び発泡体を含むその他の流動性を有する材料を更に含んでもよい。気体の一例は空気である。
【0020】
図2については、ヒトの身体202上の組織部位200は減圧送達システム(図示せず)から減圧療法を受けている。減圧送達システムは動物の身体に同様に利用しても良いことは理解されよう。減圧送達システムは直接的に、あるいはアダプター206を介してかのいずれかで減圧導管204に連結され、分配マニホルド210と流体連結される。ドレープ208は、ドレープ208に押しつけているように示されている分配マニホルド210を覆うように構成できる。ドレープ208は組織部位200で組織を覆い、これによって空気等の流体が組織部位200に出入りできないように、ドレープ208と組織部位200での周囲の組織214との交差部分212で形成される密封を維持するのを助ける。介護者は手215を用いて、密封を形成するように組織部位200を包囲するヒトの身体202の健常組織にドレープ208を押しつけてもよい。流体が組織部位200に出入りするのを防ぐことによって、組織部位200は減圧療法の最大の利益を受けることができ、更なる感染のための変化を最小にするステップ、組織の成長を改善するステップ、及び水腫を減少させるステップ等を具える。
【0021】
MEMSデバイス216は、組織部位200と減圧療法システムとの間の流路に配置してもよい。MEMS216のデバイスは流路内のマニホルド、減圧導管204、ドレープ208、又はその他の場所に固定してもよい。ある実施形態においては、MEMSデバイス216は減圧送達システムと無線通信するように構成される。無線型のMEMSデバイスは時に無線統合型のマイクロシステム(WIMS)と称される。代替的に、MEMSデバイス216は減圧送達システムへ無線接続するように構成してもよい。無線の場合、MEMSデバイス216は、減圧送達システムと通信するように任意の無線通信プロトコルを用いて構成してもよい。例えば、減圧送達システムは一般的にはBluetooth(登録商標)通信経路を形成する範囲内にあるため、Bluetooth(登録商標)無線通信プロトコルを利用してもよい。
【0022】
MEMSデバイス216は組織部位200から滲出液をサンプリングするように構成してもよい。ある実施形態においては、MEMSデバイス216はpHレベル又はOレベル等の1以上の特定の特徴を決定するように構成でき、組織酸素化を決定するのを助けうる。この説明の目的では、滲出液の特徴は、MEMSデバイス216によって測定可能な、滲出液の化学組成、化学的特徴、生物学的マーカー、又はその他の特徴である。代替的に、MEMSデバイス216は滲出液の未加工データをサンプリング及び収集するように構成してもよい。MEMSデバイス216は未加工データ又は処理済データを減圧送達システムに通信してもよい。
【0023】
更には、MEMSデバイス216は組織部位で湿度を感知するように構成してもよい。非常に低い創傷部位での湿度によって、創傷の水疱形成(dessication)が生じる。湿度を感知することによって、減圧送達システムは創傷の水疱形成(dessication)が発生しないことを保証しうる。ある実施形態においては、所定の最小しきい値は警告を始動するように、あるいは、組織部位への流体送達を開始することによって減圧送達システムの動作を変更するように構成されうる。例えば、95%の湿度の最小しきい値は湿度が95%未満に低下した場合に、減圧送達システムが組織部位に治療液を送達するように設定してもよい。90%の別の最小しきい値は、湿度がその別のしきい値未満に低下するのに応じて、警告を生成してその立場の介護者に告知できるように設定してもよい。代替的な実施形態においては、組織部位自体の湿性はMEMSデバイス216で感知してもよい。
【0024】
図3については、組織部位200の断面図(cutout view)が提供され、組織部位200で創傷組織といった組織303を包囲する健常組織302の上に延在するドレープ208を図示する。ドレープ208はマニホルド304とドレッシング剤の発泡体305との上に延在し、減圧導管306と流体連結される。ドレープ208、マニホルド304、及びドレッシング剤の発泡体305は総て、当該技術分野で理解されるようにドレッシング剤の一部である。ドレッシング剤は、当該技術分野で理解されるように追加の、わずかな、及び/又は異なる成分で構成してもよいことは理解されよう。減圧導管306は更に減圧送達システム308と流体連結される。バルブ307は減圧送達システム308の内部又は外部にあり、減圧療法システム308で制御可能であり、組織部位200に対する減圧及び/又は治療液の印加/塗布(apply)、あるいは変更を可能にする。減圧療法システム308は真空ポンプ310と電子ディスプレイ312とを含んでもよい。電子ディスプレイ312は、ユーザが減圧送達システム308を動作させることによって用いられうる制御要素314aないし314n(集合的には符号314)を含んでもよい。更には、又は代替的に、電子ディスプレイ312はユーザが減圧送達システム308のインタフェースとなり、それを操作することを可能にするタッチスクリーン式の電子ディスプレイ316を具えてもよい。最も詳細に例示した減圧送達システムは図4Aに提供される。
【0025】
MEMSデバイス216はドレープ208の下方に図示され、マニホルド304に取付けられるか、そうでない場合は連結される。組織部位200の組織303に可能な限り近くなるようにMEMSデバイス216を配置することによって、MEMSデバイス216は、可能な限り正確な1以上の滲出液の特徴(例えば、化学的特徴及び/又は生物学的マーカー)の読取り値を収集及び/又は生成できる。ある実施形態においては、MEMSデバイス216は組織部位200に接触するように配置して、MEMSデバイス216が組織部位200に接触する際により正確に測定される特定のパラメータを測定できる。
【0026】
減圧送達システム308はMEMSデバイス216から通信される1以上の信号を介してデータを受信できる。データは1以上の滲出液の特徴を示す未加工データ又は処理済データを含んでもよい。当該技術分野で理解されるように、MEMSデバイス216は任意の型の特徴をサンプリングし、化学的特徴及び/又は生物学的マーカーを含むように構成してもよい。例えば、MEMSデバイス216は、患者の治療の際に介護者の補助を手助けできる滲出液のpHレベル、滲出液中の細菌数又は型、あるいは滲出液中のその他の化学的特徴及び/又は生物学的マーカーをサンプリング及び測定するように構成してもよい。MEMSデバイス216は更にあるいは代替的に、前に述べたような圧力、温度及び湿度等の環境因子を感知するように構成してもよい。使用又は変更可能で、かつ圧力を感知して減圧送達システム308に対する圧力読取り値を無線通信するのに使用可能な例示的なMEMSデバイスは、米国ミシガン州イプシランティのIntegrated Sensing Systems(ISSYS)社で生成されている。他の化学的特徴、生物学的マーカー、及び/又は環境状態を感知するためにISSYS社又は他の製造会社で生成される他のMEMSセンサーは本発明の原理に従って利用できる。
【0027】
図4Aについては、例示的な減圧送達システム400が示されて、電子機器402と流動機器404とで構成される。電子機器はソフトウェア408を実行する演算処理装置406を含んでもよい。ソフトウェア408は、減圧送達システム400の動作を制御及び管理するように構成してもよい。演算処理装置406は、メモリ410、ディスプレイ412、入出力(I/O)装置414、記憶装置416と通信できる。記憶装置はデータベースであり、設定情報又は、治療が減圧送達システム400で行われる際の1以上の患者に関する情報を記憶するためのデータレジストリ418を記憶できる。データレジストリ418は当該技術分野で理解されるように1以上のデータファイルで構成してもよいことは理解されよう。メモリ410は、減圧送達システム400の1以上の機能の設定及び動作状態などの動作情報を記憶するために、演算処理装置406で用いてもよい。ディスプレイ412はグラフィカルユーザインタフェース等のユーザインタフェースを提供する電子ディスプレイであってもよく、介護者が減圧送達システムを制御可能なようにタッチセンサ式であってもよい。I/O装置414は局所的に(すなわち、減圧送達システム400で)、あるいは遠隔的に(例えば、ネットワーク上のデバイスで、あるいは遠隔配置されたMEMSデバイスで)通信するように構成してもよい。
【0028】
電子機器402は、電気機械部品の動作を制御するために流動機器404と通信できる。電気機械部品は真空ポンプ424と、滲出液キャニスター426と、1以上の治療液428とを具えてもよい。他の電気機械部品は当該技術分野で理解されるような、流動、組織圧、及びポンプ圧のトランスデューサといったトランスデューサを具えてもよい。フィルタ(図示せず)は更に流動機器404に含まれてもよい。真空ポンプ424は患者の組織部位で減圧を印加するのに用いられる減圧を生成するように構成してもよい。滲出液キャニスター426はプラスチック容器等の容器であってもよく、減圧送達システム400と統合又は分離され、減圧送達システム400によって治療されている患者から滲出液を収集するのに用いられる。
【0029】
1以上の治療液428は患者を治療するために用いられる1以上の治療液を含みうる。例えば、1以上の治療液428は組織部位で細菌を低減するのを助ける抗菌液又は消毒液を含んでもよい。別の例として、1以上の治療液428は、pHバランスを調整すべく組織部位に対し塗布又は変更を行うことができる1以上のpHバランス液(例えば、酸性液、又は塩基性液)を含んでもよい。更には、1以上の治療液428は組織部位を洗浄、灌注、又は加湿するのに用いられうる生理食塩水又は他の洗浄液を含んでもよい。一般的には、任意の生物学的マーカー又は医薬液は本発明の原理に従って治療液として用いてもよい。
【0030】
1以上の治療ポンプ429は組織部位に1以上の治療液428をポンピングするように構成できる。1以上の治療ポンプ429は流体をポンピング可能な、含気式及び電気機械式のポンプといった任意のポンプであってもよい。
【0031】
演算処理装置406は、1以上の演算処理装置を具えてもよく、減圧送達システム400の動作を制御するためのバルブ430とトランスデューサ432とを具える流動機器と通信するように構成できる。ソフトウェア408は演算処理装置406を制御して、トランスデューサ434又は他のセンサからの情報の受信に応じて、真空ポンプ424の作動/停止ができ、バルブといった作動デバイス431を具えるバルブ430を開閉できる。
【0032】
MEMSデバイス434は、無線通信がMEMSデバイス434で行われる場合にWIMSデバイスとも見なされ、患者の組織部位及び減圧送達システム400の滲出液キャニスター426の、あるいはその間の流路内に配置してもよい。MEMSデバイス434は1以上の滲出液の特徴を:(i)サンプリングするか;あるいは(ii)サンプリングかつ測定する;ように構成してもよい。MEMSデバイス434は有線又は無線にして、データ信号を減圧送達システム400と通信するように構成してもよい。有線あるいは無線での通信時に、MEMSデバイス434はアナログ式又はディジタル式のいずれかの通信技術、及び任意の通信プロトコルを用いて通信してもよい。データ信号は滲出液の特徴的なデータ(例えば、pHレベル)を示す未処理データ又は処理済データを含んでもよい。
【0033】
MEMSデバイス434は滲出液をサンプリングして、Oレベル、CO、化学マーカー、及び他の化学的特徴についての1以上の化学的特徴を測定するように構成してもよい。更には、あるいは代替的に、MEMSデバイス434は滲出液をサンプリングして、微生物の生物学的マーカー、バイオマーカー、タンパク質(例えば、アルブミン)、及び他の生物学的マーカーを測定するように構成してもよい。更に、MEMSデバイス434は滲出液の温度を測定するように構成してもよく、組織部位で生じる感染又は他のプロセスを示してもよい。ある実施形態においては、減圧動作を制御するのにトランスデューサ432を用いるのではなく、MEMSデバイス434が減圧送達システム400で用いられて、減圧動作を制御できる。
【0034】
ある実施形態においては、減圧送達システム400は洗浄又は治療用に、洗浄液又は医薬液などの治療液を組織部位に送達するように構成してもよい。組織部位を洗浄又は治療するために、MEMSデバイス434が1以上の滲出液の化学的特徴及び/又は生物学的マーカーを感知するのに応じて、演算処理装置406は、電子ディスプレイ上に感知した1以上の滲出液の特徴を示す情報(例えば、棒グラフ)を表示、あるいは音声出力(例えば、トーン又はボイスの出力)を生成してもよい。代替的及び/又は更には、演算処理装置406はドレッシング剤438に連結される1以上の導管436を介して組織部位に対する1以上の治療液の塗布又は変更を行ってもよい。ある実施形態においては、各々の治療液は他の治療液と同一又は異なる導管を用いて組織部位に送達してもよい。多数の導管が1以上の治療液428を送達するのに用いられる場合、多数のバルブ又は作動デバイスが各々の1以上の治療液428の送達を制御するのに用いられうる。1以上の治療液は、減圧を組織部位に送達するのに用いられるのと同一又は異なる導管を介して送達してもよい。
【0035】
ある実施形態においては、1以上の導管436は組織部位に減圧を印加するための減圧導管と、1以上の治療液428を塗布するための別個の導管とを具える。代替的に、減圧を印加し、かつ1以上の治療液428を塗布するのに同一の導管を用いてもよいが、このような構成においては、1以上の治療ポンプ429及び真空ポンプ424は別の時間に動作させるか、あるいはバルブ430は1以上の治療ポンプ429及び真空ポンプ424の1以上の導管436への流体連結を限定するかをすべきである。演算処理装置は作動デバイス431と電気接続され、第1の状態において組織部位に対する減圧の印加又は変更を真空ポンプ424で行うような配置で作動デバイス431を設定し、第2の状態において作動デバイス431を配置するように電子機器402から流動機器404に通信線420を介して送達信号422を通信して、1以上の治療液428を組織部位に塗布できる。第1及び第2の状態において作動デバイス431を配置するかどうかを決定する場合、所定の療法は演算処理装置406を採用し、所定の療法はMEMSデバイス434で感知される1以上の滲出液の特徴に応答してもよい。更には、送達中の治療液に依存して、演算処理装置406は、例えば、組織部位を薬剤で治療できるように真空ポンプ424を特定の期間停止するか、あるいは例えば組織部位を洗浄する間に真空ポンプ424を動作させるように構成してもよい。多様な治療動作を用いて、MEMSデバイス434が組織部位からの1以上の滲出液の特徴をサンプリングするのに応じて、治療液428を送達し、真空ポンプ424を制御できることは理解されよう。例えば、演算処理装置406は滲出液で酸性度が増加したことを判定するのに応じて減圧治療を変更するように構成してもよい。更には演算処理装置406は、可視的又は可聴的な通知又は警告を生成するように構成して、滲出液における高レベル又は低レベルの化学的特徴及び/又はを生物学的マーカーについて介護者に告知してもよい。ある実施形態においては、演算処理装置406はグラフィカル表示(例えば、グラフ、パイチャート、又は棒)又は英数字表示(例えば、数字又はグレード)を呈示するように構成して、滲出液における化学的特徴及び/又は生物学的マーカーのレベルを示してもよい。演算処理装置406は更に、MEMSデバイスによって感知される、温度、圧力、及び湿度といった環境状態のグラフィカル表示又は文字数表示を生成及び呈示するように構成してもよい。1以上のMEMSデバイスが1以上の感知及び/又は測定機能を行うのに用いられうることは理解されよう。
【0036】
図4Bについて、モジュール440は減圧療法システム400の動作を制御するように構成できる(図4A)。モジュール440は演算処理装置406、ハードウェア、又はその組合せによって実行されるソフトウェア408といった、ソフトウェアであってもよい。モジュール440は特徴測定モジュール442と減圧印加モジュール444と、1以上の治療液の塗布モジュール446と、測定された特徴の表示を有するGUIの呈示モジュール448と、特徴的なしきい値設定及び警告生成モジュール450とを含みうる。モジュール440は例示的であり、いくつかの他の方法で分割、結合又は構成してもよい。更に、追加の、及び/又は異なるモジュールを用いて、本発明の原理に従って同一又は同様の機能を実行してもよい。
【0037】
特徴測定モジュール442は、MEMSデバイスによって感知される1以上の滲出液の特徴を測定するように構成できる。ある実施形態においては、MEMSデバイスは未加工データを特徴測定モジュール442に通信して、どの特徴が感知されるかのレベルを算出できる。代替的な実施形態においては、特徴測定モジュール442はMEMSデバイス自体に構成され、算出された特徴的なレベル又は値を減圧送達システム400に報告する。多数のMEMSデバイスは滲出液の特徴を感知及び処理するのに用いてもよい。
【0038】
減圧印加モジュール444は減圧送達システム400における電気機械部品を制御して患者の組織部位に減圧を印加するように構成できる。減圧モジュール444は一定の減圧又は間欠的な減圧を印加するように構成してもよい。ある実施形態においては、減圧モジュール444は特徴測定モジュール442によって判定される1以上のレベルを用いて、組織部位に対する減圧の印加量を、組織部位に印加中の減圧を停止すべきかどうかを含めて決定してもよい。例えば、細菌のレベルが高いと判定された場合、組織部位に対する治療液の印加又は変更が行われうるまで減圧は減圧モジュール444によって一時的に停止でき、次いで、減圧モジュール444は減圧を組織部位に再印加できる。
【0039】
1以上の治療液の塗布モジュール446は減圧送達システム400内の電気機械部品を制御するように構成して、治療液を患者の組織部位に塗布できる。電気機械部品は、組織部位に対する治療液の塗布又は変更を制御するのに用いられるポンプ、バルブ、及びその他の電気機械部品を具えてもよい。更に、1以上の治療液の塗布モジュール446は、電気機械部品を制御し、流体又は他の材料(例えば、粉末)の混合物を調整して、治療液を形成することによって、組織部位に対する治療液の塗布濃度又は変更濃度を制御するように構成してもよい。動作時は、1以上の治療液の塗布モジュール446は(i)滲出液中の特徴的なレベルを受信し;(ii)患者の組織部位に塗布すべき治療液の量、濃度、及び/又は持続期間を判定し;(iii)減圧送達システム400における電気機械部品を制御することによって1以上の治療液を組織部位に塗布する;ように構成してもよい。
【0040】
測定された特徴の表示を有するGUIの呈示モジュール448は滲出液における特徴的なレベルを受信し、電子ディスプレイ上に特徴的なレベルのグラフィカル表示及び/又は英数字表示を呈示するように構成できる。GUIは特徴のレベルを介護者に示す任意のグラフィカル表示を呈示してもよい。例えば、pHレベルは棒グラフ、数字、円グラフ、又は介護者が滲出液のpHレベルを見ることができるその他のフォーマットで示してもよい。
【0041】
特徴的なしきい値設定及び警告生成モジュール450は、最大又は最小の事前決定されたしきい値で構成できるか、あるいは、介護者が滲出液の特徴に関するしきい値のレベルを決定又は設定できる。警告は可視的及び/又は可聴的であってもよい。しきい値を設定する場合、モジュール450は事前決定されたしきい値でメニューを提供してもよく、介護者がケースバイケースに基づいてしきい値を変更できるようにしてもよい。例えば、介護者はpHレベルについてそれぞれ6.5及び7.5で最大レベル及び最小レベルのしきい値を設定してもよい。別の例のように、最大のしきい値は細菌数を75に設定してもよい。治療液を組織部位に自動的に塗布するように減圧送達システム400が構成される場合、特徴的なレベルがしきい値に交差したことを示す警告は、減圧送達システム400が特徴を変更又は維持することが困難であることを介護者に示してもよい。自動でない場合は、警告は組織部位又は患者が問題を有することを介護者に知らせてもよい。
【0042】
図5については、例示的なグラフィカルユーザインタフェース(GUI)504を表示する電子ディスプレイ502を具える例示的な減圧送達システム500が示される。GUI504は、1以上のMEMSデバイスによって感知されている化学的特徴及び生物学的マーカーの1以上の指標を表示するように構成してもよい。図示のように、2の棒指標506及び508はそれぞれ、pHバランス及び細菌数のレベルを表示するために用いられている。棒指標506は、ラインが棒指標506に沿って延在して測定されるpHレベルを表わす矢印の形態で表示510を呈示してもよい。ある実施形態においては、表示510は、MEMSデバイスによって感知される滲出液のpHレベルの値に依存して呈色を変化させてもよい。別の実施形態においては、数のような英数字表示は棒指標506の代わりに、あるいはそれに追加して呈示してもよい。更には、pHレベルの履歴値(例えば、時間ごとのpHレベルの測定値)は表示しても、要求を介して表示可能としてもよい。
【0043】
棒指標508はMEMSデバイスによって滲出液の細菌数を表示するように構成してもよい。棒指標508は、MEMSデバイスが細菌を感知し、細菌数を判定するのに応じて増減する動的表示512の形態でレベルを表示してもよい。細菌の計数は細菌サンプルがMEMSデバイスによって培養されうる場合に長きにわたって実行されるため、動的表示512は細菌数に関して遅延指標(例えば、12時間前からの滲出液サンプルによる指標)となりうる。動的表示512は細菌数に依存して呈色を変化させてもよい。例えば、細菌数が特定のレベル未満(例えば、25)である場合、動的表示512は緑色で表示して、細菌数が抑制されているのを介護者が容易に判断できるようにしてもよい。細菌数が別のレベル(例えば、75)を超える場合、動的表示512は赤色で表示して、介護者に細菌レベルが非常に高く適切に行動すべきであることを警告してもよい。ある実施形態においては、可聴的及び/又は可視的な指標の形態で1以上の警告を用いて、介護者にpHレベル又は細菌数が所定のレベルを超えて増加したことを通知してもよい。棒指標506及び508が例示であり、その他の型のグラフィカルな、あるいは英数字の指標を用いて、1以上のMEMSデバイスによって感知されている滲出液の特徴の情報を介護者に提供してもよいことは理解されよう。
【0044】
減圧送達システム500が介護者用にグラフィカルな指標を表示して、治療中の組織部位の化学的特徴及び/又は生物学的マーカーの状態をモニタリングできるのに加えて、本発明の原理は更に感知した1以上の滲出液の特徴に基づいて、減圧送達システム500が自動的に治療液を組織部位に送達するように提供してもよい。例えば、pHレベルが7.0を超えて増加する場合、酸性の治療液は減圧送達システム500によって組織部位に送達してもよい。pHレベルに依存して、酸性の治療液は、様々な期間で送達してもよい。例えば7.5のpHレベルでは、酸性の治療液は2分間送達してもよく、8.5のpHレベルでは、酸性の治療液は8分間送達してもよい。代替的に、治療液は異なるレベルのpHで設定してもよく(すなわち、異なる酸性濃度又は塩基性濃度を有してもよく)、治療液は測定されるpHレベルが異なる場合であっても、同一の期間で送達してもよい。ある実施形態においては、治療液のpHレベルは治療液中の酸性濃度を調整することによって自動的に変更してもよい。
【0045】
細菌数の増加が特定のレベルを超えたと減圧送達システム500によって判定された場合、消毒治療液は組織部位に送達できる。ある実施形態においては、消毒治療液は細菌数に対処するように調整してもよい。例えば、細胞数が比較的小さい場合、比較的低濃度の消毒治療液を組織部位に送達してもよい。細菌数が増加するにつれて、消毒治療液も増加する。消毒薬の濃度は、開口又はバルブを増減させて、消毒液を洗浄液(例えば、生理食塩水)等の別の流体とともに追加又は低減させることによって変更して、導管を介して組織部位に送達するための消毒治療液を生成してもよい。消毒治療液の送達後は、洗浄液を組織部位をすすぐのに用いてもよい。組織部位が治療中の間は減圧は中止され、治療が完了するとすぐに減圧が再開されて、減圧治療を開始し組織部位から治療液及び滲出液が除去されることは理解されよう。
【0046】
図6については、例示的なフローチャート600が示される。プロセスはステップ602で開始し、患者の組織部位の1以上の滲出液の特徴が感知されうる。1以上の滲出液の特徴はMEMSデバイスによって感知してもよく、滲出液をサンプリングし、未加工データ又は処理済データを減圧送達システムに通信してもよい。MEMSデバイスは1以上の化学的特徴及び/又は生物学的マーカーをサンプリングするように構成してもよい。ステップ604で、感知された1以上の滲出液の特徴のレベルを測定できる。測定はサンプリングデータから未加工データを処理するステップを具えてもよく、MEMSデバイスか減圧送達システムかのいずれかによって行ってもよい。ステップ606では、測定した特徴的なレベルに応じて、組織部位に対する治療の実施又は変更を行うことができる。治療は減圧治療を変更するステップを具えてもよく、治療液を塗布してもよく、その組合せでもよい。例えば、組織部位に対する、生理食塩水といった洗浄治療液の塗布又は変更を行ってもよく、減圧は組織部位から洗浄治療液を除去するように印加してもよい。1以上の滲出液の特徴に依存して、組織部位に対する代替的な治療液の印加又は変更を行ってもよい。
【0047】
MEMSデバイスは、減圧の組織部位への送達用に導管を用いる減圧送達システムにおける使用のために組み込まれると記載してきたが、MEMSデバイスは導管を用いることなく、減圧を組織部位に送達する一体型の減圧送達システムによって用いられうることは理解されよう。このような一体型の減圧送達システムは処理及び真空ポンプの機能性をドレッシング剤に組み込み、これによって導管を除去している。MEMSデバイスは有線又は無線のいずれかを介して演算処理装置と通信して、薬剤又は洗浄液を送達するのを補助できる。
【0048】
この説明はMEMSについて記載しているが、本発明の原理はナノ電気機械システム(NEMS)の使用に応用できることは理解されよう。NEMSデバイスはドレッシング剤に組み込まれ、かつ減圧送達システムと通信するように構成してもよく、これによってNEMSデバイスは組織部位でなされている測定に基づいてフィードバック制御を行う能力を提供するために減圧送達システムと有線又は無線接続してもよい。
【0049】
本発明の原理は前述の実施形態の面から記載されているが、この記載は例示のみによって提供されており、本発明の限定として解釈されることを意図していない。当該技術分野の当業者は特定の患者及び組織治療環境に適応できる本発明の変形物を理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の組織部位を治療するための減圧送達システムであって:
前記患者の組織部位に対する治療を実施するように構成される電気機械部品と;
当該電気機械部品と接続され、かつ前記組織部位に対する前記治療を実施又は変更するように、前記電気機械部品を動作させるべく構成される演算処理装置と;
前記組織部位に治療を送達するように構成される少なくとも1の導管と;
前記組織部位からの1以上の滲出液の特徴を感知するように構成され、かつ、感知した前記1以上の滲出液の特徴を示すデータを伝達するように更に構成される微小電気機械システム(MEMS)デバイスと;
を具え、前記演算処理装置が、前記MEMSデバイスから前記データを受信し、かつ前記患者の組織部位に対する前記治療を前記少なくとも1の導管を介して前記電気機械部品で実施するように構成されることを特徴とする減圧送達システム。
【請求項2】
請求項1に記載の減圧送達システムにおいて、前記電気機械部品が少なくとも1のバルブと少なくとも1のポンプとを具え、当該少なくとも1のポンプが前記組織部位に対し減圧を印加するように構成され、前記組織部位に対する前記減圧の印加又は変更が可能及び不可能になるように、前記少なくとも1のバルブが構成されることを特徴とする減圧送達システム。
【請求項3】
請求項2に記載の減圧送達システムにおいて、前記少なくとも1のポンプが前記組織部位に対し治療液の送達又は変更を行うように更に構成され、前記組織部位に対する前記治療液の塗布又は変更が可能及び不可能になるように、前記少なくとも1のバルブが構成されることを特徴とする減圧送達システム。
【請求項4】
請求項1に記載の減圧送達システムにおいて、前記MEMSデバイスが前記演算処理装置と無線接続されることを特徴とする減圧送達システム。
【請求項5】
請求項1に記載の減圧送達システムにおいて、前記MEMSデバイスが前記滲出液のpHレベルを感知するように構成されることを特徴とする減圧送達システム。
【請求項6】
請求項1に記載の減圧送達システムが、前記少なくとも1の導管と流体連結されるドレッシング剤を更に具え、前記MEMSデバイスが前記組織部位の前記1以上の滲出液の特徴を感知したときに、前記ドレッシング剤内に配置されることを特徴とする減圧送達システム。
【請求項7】
請求項1に記載の減圧送達システムにおいて、前記治療が少なくとも1の治療液を含むことを特徴とする減圧送達システム。
【請求項8】
請求項1に記載の減圧送達システムが、前記演算処理装置と接続される電子ディスプレイを更に具え、前記演算処理装置が前記電子ディスプレイ上にグラフィカルユーザインタフェース(GUI)を生成及び表示するように更に構成され、前記GUIが前記組織部位からの前記滲出液の特徴的なレベルを示す表示を含むことを特徴とする減圧送達システム。
【請求項9】
請求項8に記載の減圧送達システムにおいて、前記1以上の滲出液の特徴が化学的特徴を含むことを特徴とする減圧送達システム。
【請求項10】
請求項8に記載の減圧送達システムにおいて、前記1以上の滲出液の特徴が生物学的マーカーを含むことを特徴とする減圧送達システム。
【請求項11】
患者の組織部位を治療する方法であって、当該方法が:
前記患者の組織部位の滲出液の特徴を感知するステップと;
感知した前記滲出液の特徴のレベルを測定するステップと;
測定した前記特徴のレベルに応じて、前記組織部位に対する治療の実施又は変更を行うステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、前記組織部位に対する治療の実施又は変更を行うステップが、前記組織部位に対する治療液の塗布を行うステップを具え、前記組織部位から前記治療液を収集するために前記患者の組織部位に減圧を印加するステップを更に具えることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法において、前記組織部位に対する前記治療液の塗布又は変更を行うステップが、少なくとも1のバルブを作動させるステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項11に記載の方法が、前記感知した滲出液の特徴を示すデータを無線受信するステップを更に具えることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項11に記載の方法において、特徴を感知するステップが前記滲出液の化学的特徴を感知するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項11に記載の方法が、前記組織部位に対し治療液を塗布することによって前記組織部位を洗浄するステップを更に具えることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法が、電子ディスプレイ上にグラフィカルユーザインタフェースを生成及び表示するステップを更に具え、前記グラフィカルユーザインタフェースが、前記滲出液の化学的特徴のレベルを示す表示を含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法において、前記グラフィカルユーザインタフェースを表示するステップが、前記滲出液のpHレベルを示す表示を呈示するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法において、前記グラフィカルユーザインタフェースを表示するステップが、前記滲出液における細菌数を示す表示を呈示するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項17に記載の方法が、所定のレベルを超えて前記滲出液の特徴が増加したことを判定するのに応じて、警告を発するステップを更に具えることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項11に記載の方法が:
前記組織部位で湿度を感知するステップと;
所定のしきい値未満に前記湿度が低下したことを判定するのに応じて、組織部位に対し実施されている治療を変更するステップと;
を具えることを特徴とする方法。
【請求項22】
患者の組織から滲出液を引き抜き、前記組織を治療するための減圧療法システムであって、当該減圧療法システムが:
前記組織に対し真空及び治療液を送達するように前記組織と流体連結されるドレッシング剤と;
前記組織に対し前記真空及び前記治療液を送達するように前記ドレッシング剤と流体連結される一方の端部を有する、少なくとも1の導管と;
送達信号に応じて、第1の状態で前記組織に対し前記真空を提供し、第2の状態で前記組織に対し前記治療液を提供するように、前記少なくとも1の導管の他方の端部に連結される作動デバイスと;
前記組織を治療するための所定の療法に応じて、前記第1の状態の間に前記真空の印加又は変更を行い、前記第2の状態の間に送達信号の印加又は変更を行うように、前記作動デバイスと電気接続される演算処理装置と;
前記滲出液の特徴を感知し、前記滲出液の特徴に関連する特徴的なデータを生成するように前記組織と流体連結され、かつ、前記特徴的なデータを送信するように前記演算処理装置と電気接続されるMEMSデバイスと;
を具え、前記演算処理装置が、前記所定の療法による前記特徴的なデータの分析に応じて、前記作動デバイスに対する前記送達信号の印加又は変更を行うことを特徴とする減圧療法システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−504460(P2012−504460A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530104(P2011−530104)
【出願日】平成21年9月22日(2009.9.22)
【国際出願番号】PCT/US2009/057757
【国際公開番号】WO2010/039481
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(508268713)ケーシーアイ ライセンシング インコーポレイテッド (125)
【Fターム(参考)】