説明

微生物を含む医薬投与製剤の安定化方法

本発明は、少なくとも1種の微生物を含む固体の医薬投与製剤を安定化させる方法と、少なくとも1種の微生物を含む固体の医薬投与製剤と包装とを有するパックに関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の微生物を含有する投与製剤の固体剤形を安定化させる方法、及び、少なくとも1種の微生物を含有する固体の医薬投与製剤と包装とを含むパックに関する。
固体の医薬投与製剤の中でも、経口、膣又は肛門から投与する剤形には微生物を含有させているものが多い。例えば、腸内細菌叢の乱れや損傷を原因とする症状を改善したり、該症状を取り除くために、体にとって良い働きをするプロバイオティック微生物を医薬品に用いて経口投与する。別の例として、例えばラクトバチルスアシドフィルス菌等の微生物培養物(microorganism cultures)を含む膣坐剤が挙げられるが、これは膣内細菌叢を安定化させるために用いられ尿路感染症の再発の頻度を抑える(Reid G.等:Influence of three day antimicrobial therapy of lactobacillus vaginal suppositories on recurrence of urinary tract infections, Clin Ther 1992; 14: 11-6)。
製剤が効果的であるためには、その中に存在する微生物が投与時点で生きた状態であり繁殖可能であることが必要である。そこで、微生物を含む医薬投与製剤を調製する際、また、その後の貯蔵の際、含有される微生物の活性を可能な限り保つことが目標となる。
微生物を含有する医薬品の調製及び保存方法については先行技術から公知である。例えば、欧州特許EP0131114A1に記載の乳酸棹菌製剤は、バクテリア懸濁液を粉状又は顆粒状の担体材料に加えた後、乾燥を施して調製している。調製後、微生物の活性が保存中も保持されるように、保護ガスによる無酸素雰囲気の包装容器中に製剤が充填される。
DE19819475には微生物培養物の乾燥方法が記載されており、長期間の貯蔵安定性の向上がクレームされている。これは、乾燥対象材料の水分活性値(aw)を0.15未満とすることが目標値である。この目標値を達成するためには、乾燥対象材料を流動床で乾燥させること、及び/又は、水分活性値0.01以下の助剤を添加することが必要である。
【0002】
先行技術から公知の貯蔵安定性を向上するための方法は、下記の中の少なくとも1つの理由により満足のいくものではない。
1.該方法が技術的に非常に複雑である。
2.助剤の水分活性値の条件が高すぎる。
3.投与剤形の貯蔵安定性が低すぎる。
4.該方法が商品化の観点から費用がかかりすぎる。
5.該方法により、微生物培養物及び/又は助剤及び活性化合物が熱的損傷をうける。
本発明の目的は、先行技術に記載の欠点がない方法を提供することであった。とりわけ、その方法が簡便で安価に実行でき、いかなる水分活性値の助剤でも使用可能であり、結果的に微生物及び微生物を含む投与剤形に熱的負荷をかけることなく、その医薬品の全貯蔵期間を通して微生物の活性が実質的に保持されること、即ち、患者が摂取するまで保持されるという効果がある方法がよい。
驚くべきことに、先行技術にしたがって調製した固体の微生物含有投与製剤を、吸湿剤と少なくとも1種のチャンネル形成剤(channel former)とが内壁の少なくとも一部にわたって埋設されている包装に導入することによって、前記目的が達成された。そこで、本発明は、少なくとも1種の微生物培養物を含む固体の医薬投与製剤の安定化方法であって、吸湿剤と少なくとも1種のチャンネル形成剤とが内壁の少なくとも一部にわたって埋設されている包装に、前記固体の医薬投与製剤を導入することを特徴とする方法に関する。固体の医薬投与製剤を包装内に導入した後、該包装材を例えば蓋などによって封止する。内壁とは、包装材の壁で内側を向いている面、即ち、その中に収納されている固体の医薬投与製剤と接触する包装材の面を意味するものである。
【0003】
本方法は、室温では物理的に固体状態で、例えば経口投与、肛門又は膣から投与することを意図したすべての固体の医薬投与製剤に使用することができる。包装から取り出して直接投与できる固体の医薬投与製剤、例えば、錠剤、糖衣錠、硬カプセル剤、顆粒剤、ペレット剤、散剤、ペレット剤、座剤等、また、これらに限らず、投与前に投与可能な状態に変換する必要がある剤形で、例えば、投与する前に溶液状にする必要がある粉末剤のような乾燥ジュース等、すべての固体の医薬投与製剤が包含される。好ましい医薬投与製剤は、錠剤、糖衣錠、硬カプセル剤、顆粒剤、座剤、ペレット又は散剤である。硬カプセル剤は可塑剤を添加していないシェルを有し、上部と下部に分離することができ、例えばゼラチン又はデンプンで構成される。
前述及び後述の医薬投与製剤とは、ヒト又は他の動物に医薬品を投与するための公知である様々な技術的投与形態を指す用語と解釈される。即ち、医薬投与製剤という表現は、特定の法律上の状態とは関係がなく、医薬品に限定されるものではなく、含有可能な成分は様々な物質で、例えば薬品、補助食品及び/又は機能性成分である。本発明の目的のための医薬投与製剤の例は、医薬品や補助食品の状態にすることができる。
含有可能な微生物とは、健康なヒト又は動物の体内に通常産生するか、あるいは、健康なヒト又は動物の体内、又は障害があるか疾病状態のヒト又は動物の体内に対して健康促進作用を有するすべての微生物をさす。例えば、含有可能な微生物の例として、バクテリア、真菌類及び/又は酵母菌類が挙げられる。
【0004】
好ましい微生物としては、例えばサッカロミケス属(Saccharomyces boulardii)等の生酵母菌及び/又はバクテリアで、特に好ましいのはバクテリアであり、なかでも、例えば乳酸桿菌、ビフィズス菌及び/又は連鎖球菌等のプロバイオティックなバクテリアである。特に好ましい種としては、ラクトバチルスカゼイ菌(Lactobacillus casei)、ラクトバチルスアシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルスロイテリ菌(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルスビフィダム菌(Lactobacillus bifidum)、ラクトバチルスガゼリ菌(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルスプランタラム菌(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルスジョンソニ菌(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルスラムノーザス菌(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルスファーメンタム菌(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルスパラカゼイ菌(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルスクリスパトゥス菌(Lactobacillus crispatus)、ビフィドバクテリウムロンガム菌(Bifidobakterium longum)、ビフィドバクテリウムビフィダム菌(Bifidobakterium bifidum)、ビフィドバクテリウムロンガム菌(Bifidobakterium longum)、ビフィドバクテリウムラクティス菌(Bifidobacterium lactis)、ビフィドバクテリウムブレビス菌(Bifidobacterium brevis)、ビフィドバクテリウムアニマリス菌(Bifidobacterium animalis)、ビフィドバクテリウムアドレセンティス菌(Bifidobacterium adolescentis)、ビフィドバクテリウムインファンティス菌(Bifidobacterium infantis)、ストレプトコッカスサーモフィルス菌(Streptococcus thermophilus)及び/又はラクトコッカスラクティス菌(Lactococcus lactis)が本願では特に好ましい。
【0005】
好適な包装とは高分子製容器である。吸湿剤及びチャンネル形成剤は共に容器を構成する高分子材料の内壁に直接存在させるか、あるいは、高分子製容器の内壁に層として適用してもよい。吸湿剤及びチャンネル形成剤は同じようにしてインレイに埋設することができ、そのインレイはインサートとして容器に導入され、包装の内壁の少なくとも一部が該インサートで内張りされる。
本発明の目的のためには、容器は単回投与量用の容器、例えばブリスターパック等と、複数回投与量用の容器、例えばネジ式蓋が付いた容器又は錠剤用筒型容器(tablet tube)等がある。
吸湿剤とチャンネル形成剤と共に混合物として使用することができる高分子材料としては、特に、熱可塑性物質が挙げられるが、例えば、ポリエチレン及び/又はポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリブテン、ポリシロキサン、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアンハイドライド(polyanhydride)、ポリアクリレートニトリル、ポリスルホネート、ポリエステルアミド、ポリアクリレートエステル、プロピレン−無水マレイン酸、ポリエチレン−無水マレイン酸、ポリエチレンン−ウレタン、ポリエチレン−エチルビニルアルコール、ポリエチレン−ナイロン及び/又はポリウレタンが挙げられる。内面に吸湿剤とチャンネル形成剤とが設けられる壁は、高分子材料とチャンネル形成剤と吸湿剤との混合物の全質量を基準とした場合、高分子材料分が10〜90質量%である。
【0006】
吸湿剤は基本的にはいずれのタイプの乾燥剤でもよく、水分結合型バインダーであるとよい。乾燥剤は3つのグループが考えられる。
第1のグループには、水と一緒になって水和物を形成する化学的物質が含まれる。この種の化学物質の例は無水塩で、プロセスにおいて水分又は湿気を吸収して、安定した水和物を形成する傾向がある。化学反応により、水分を結合し遊離を抑える。
乾燥剤の第2グループには反応性のある物質が含まれる。この物質は、水又は湿気と反応して新しい物質を形成する。新たに形成された物質は、通常、低温で安定しており、高エネルギーを消費しなければ(on expenditure of high energy)可逆的にならない。この種の乾燥剤は主に溶媒の乾燥に使用されたり、ポリマー自体の水分量を抑えた状態に保たなければならない場合にポリマー中の吸水材料として使用される。
乾燥剤の第3のグループは物理的な吸着により水分を結合する。この乾燥剤は、水分を吸い込む微細な毛管を有する粒子で構成される。ここでは乾燥剤中の毛管の細孔サイズや細孔の密度により吸収性が決まる。この種の乾燥剤の例はモレキュラーシーブ、シリカゲル、例えば赤ちゃんのオムツに使用されるような特定の合成ポリマー、及びデンプン等が挙げられる。第3グループの乾燥剤は実質的に不活性であり水に溶解しないので、包装への使用が好ましい。孔径が3〜15Åのモレキュラーシーブ及び/又は孔径が24Åのシリカゲルが本願では特に好ましい。
考えられるチャンネル形成剤は親水性物質であり、例えば、ポリグリコール、エチルビニルアルコール、グリセロール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン、N-メチルピロリドン、多糖類、糖類及び/又は糖アルコールである。好適なポリグリコールとしては、ポリエチレングリコール及び/又はポリプロピレングリコールが挙げられる。使用可能な糖類は、例えば、グルコース、マンノース、ガラクトース及び/又はフルクトースである。好適な糖アルコール類としては、例えば、マンニトール、ソルビトール、ヘキシトール、ズルシトール、キシリトール、リビトール及び/又はエリトロールが挙げられる。多糖類とは、例えばデキストリン類及び/又は加水分解したデンプンを意味する。
【0007】
吸湿剤及びチャンネル形成剤を備えた内壁において、高分子材料とチャンネル形成剤と吸湿剤との混合物の全質量を基準とした場合、チャンネル形成剤の割合は10〜40質量%がよい。
吸湿剤及びチャンネル形成剤は容器の内壁の一部の領域又は全領域にわたり埋設される。一部の領域にわたるとは、容器の内壁を形成する全領域のうちの少なくとも一部に吸湿剤とチャンネル形成剤が含まれていることを意味する。全領域にわたるとは、容器の内壁を形成する全領域に吸湿剤とチャンネル形成剤が含まれていることを意味する。有用な実施形態によると、容器の内側の全面積に対して少なくとも10%、好ましくは少なくとも50%、特に好ましくは少なくとも90%に吸湿剤とチャンネル形成剤とが存在していることが好ましい。
吸湿剤とチャンネル形成剤とを含有する高分子材料、ならびに、本発明の方法用の包装として使用できる前記高分子材料から作成される容器については、先行技術から公知であり、例えば、WO97/32663A1、EP1000873A2及びWO03/086900A1、EP1421991A1、WO00/76879A1に記載されている。本発明の方法に使用できる包装は市販されており、例えば、Capitol Specialty Plastics社(米国、アラバマ州オーバーン、McMillan Street 2039)の商品名Activ-Vial、又は、Sud Chemie社(ドイツ、モースブルグ、Ostenrieder Str. 15, 85368)の商品名2 AP Multipolymerが提供される。
本発明の方法によると、少なくとも1種の微生物培養物を含む安定した固体の医薬投与製剤を安価に提供することが可能になる。例えば、水分活性値が高いために先行技術では出発物質として使用できない安価な材料、あるいは、医薬投与製剤に変換する前及び/又は後に追加の工程で乾燥しなければならない安価な材料を使用して、医薬投与製剤を調製することができる。
【0008】
また、驚くべきことに、本発明の方法によれば、従来、貯蔵安定性が不十分であるために先行技術では商品化には不向きであった、少なくとも1種の微生物培養物を含む固体の医薬投与製剤の商品を提供することも可能である。投与製剤を包装材に移し入れた後は、包装材の内壁にある吸湿剤により、常に、かつ、長期にわたって投与製剤から水分が取り除かれる。水分の除去は広い範囲にわたり、穏やかな条件下で起きるので、貯蔵期間中の医薬投与製剤は安定している。
少なくとも1種の微生物培養物を含む固体の医薬投与製剤は、本発明と類似した方法で安定化させる場合、調製後に乾燥を行ったとしても安定化は容易ではない。それは比較的穏やかな条件下で乾燥を行う場合、時間と費用の理由から実用上延長することができないからである。また、温度を上げて乾燥を行うと、医薬投与製剤に、とりわけその中に存在する微生物培養物に損傷をあたえる結果となるからである。
本発明の方法による安定化は、包装が医薬投与製剤に対して及ぼす作用が基礎となっているため、製剤を安定した保存状態で提供することができる。本発明による安定化を達成するには、医薬投与製剤が包装中に存在していることが必要である。即ち、医薬投与製剤と包装とが一緒になってパック(pack)になっていることが必要である。
そこで、本発明は、前記及び後記のごとく、少なくとも1種のチャンネル形成剤が少なくとも1種の吸湿剤と共に、少なくとも内壁の一部にわたって埋設されている包装と、少なくとも1種の微生物培養物を含む医薬投与製剤とを含むパックに関する。
前記パックは、少なくとも1種の微生物培養物を含有するいずれの固体医薬投与製剤を有していてもよい。本発明の好適な実施形態によると、医薬投与製剤として、経口投与用の固形製剤剤形、とりわけ錠剤、糖衣錠、硬カプセル剤、顆粒剤、座剤又は散剤がパックに含まれる。パック内の医薬投与製剤には、それぞれの目的に必要な数の微生物を含んでよい。パックに存在する医薬投与製剤は、103〜1012個のプロバイオティック微生物、特に好ましくは105〜1011個、極めて好ましくは107〜1010個のプロバイオティック微生物を含んでよい。
【0009】
プロバイオティック微生物は、経口投与後、その健康促進作用がヒト又は動物の腸において達成される前段階で、胃を通り抜ける間にほぼ不活性化する。ヒト又は動物の腸においてプロバイオティック微生物の十分に高い活性を確保するためには、パックに含まれる固体経口医薬投与製剤に、胃を通り抜ける間は微生物を不活性化させないようにし、かつ、腸で溶解する被膜を設け、微生物が腸で放出されるようにすることが好ましい。好適な被膜としてはあらゆるものが挙げられるが、なかでも好ましいのは、例えば胃液に耐性のある被膜、即ち、酸性の胃液には不溶であり、(胃液よりアルカリ性の)腸で溶解する物質で作成されたpH調整被膜、あるいは、それぞれの環境におけるpHとは関係なく、ヒト又は動物へ経口投与してから所定時間経過後に溶解する時間制御された被膜で、この所定時間は製剤を摂取してから腸の中の目的の場所に到達するまでの投与経過時間に応じて設定される。あるいは、医薬投与製剤全体を被覆するのではなく、微生物自体を保護膜でコーティングしてもよい。
さらに好ましい実施形態では、パックに含まれる医薬投与製剤が、特に経口投与用の場合、プロバイオティック微生物にくわえて栄養に関連した添加物をさらに含む。含有させることができる栄養に関連した添加物とは、ビタミン類、ミネラル物質、微量元素、食物繊維、酵素、植物抽出物、タンパク質、炭水化物及び/又は脂肪が好ましい。消化が早く、胃で消化される、例えばタンパク質などの栄養関連添加物を経口医薬投与製剤が含有する場合は、その栄養関連添加物をコーティングで少なくとも完全に被覆しないことが重要である。
【0010】
プロバイオティック微生物とさらには栄養関連添加物とを含む経口医薬投与製剤は、EP931543A1から公知である。そこに記載されているように、プロバイオティック微生物を記載の栄養関連添加物と一緒に含有する製剤は不安定である。それにもかかわらず、プロバイオティック微生物と栄養関連添加物とを含む経口医薬投与製剤を提供するのに、プロバイオティック微生物と栄養関連添加物とを、互いに分離する多層錠剤の層にして送達することが提案されている。良好な安定性を得るためには、微生物含有層の水分は極めて低いことが好ましいが、これは、微生物培養物と担体物質とを細心の注意を払って乾燥させてから混合することによって可能となる。しかしながら、微生物と担体物質の乾燥が必須であること、また、多層錠剤に製剤化することは装置の点から複雑であり時間もかかり、全体の結果として製造コストの上昇を招く。
驚くべきことに、少なくとも1種の微生物培養物と栄養関連添加物とを含む固体の医薬投与製剤は、少なくとも1種のチャンネル形成剤が少なくとも1種の吸湿剤と共に内壁に局所的に埋設されている包装に導入して、微生物を含む固体の医薬投与製剤と包装とを含むパックにすることにより、微生物と担体物質をあらかじめ乾燥すること、及び/又は、微生物と栄養関連添加物とをいずれの場合も分離する層にして含有させることもなく、貯蔵安定性のある状態で提供することができることがわかった。そこで、本発明は、少なくとも1種のチャンネル形成剤が少なくとも1種の吸湿剤と共に内壁の少なくとも一部に埋設されている包装と、少なくとも1種の微生物培養物及び少なくとも1種の栄養関連添加物を含む固体の医薬投与製剤とを含むパックに関する。パックの中の医薬投与製剤中に、栄養関連添加物と微生物とが混合物として存在することが有利であり、このようにしても不安定な製品にはならない。先行技術で記載した層構造を有する製剤の制限、とりわけ多層錠剤に対する制限はあてはまらない。
【0011】
本発明によるパック内の固体医薬投与製剤に含まれる好ましいビタミン類は、ビタミンA(β-カロチン)、カロチノイド、ビタミンD、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンB複合体及び/又はビタミンK、ならびに、これらと同等の作用を有する関連化合物である。使用が好ましいビタミンB複合体は、葉酸、テトラヒドロ葉酸及び/又はそれらの誘導体で、特には、(6S)-テトラヒドロ葉酸、5-メチル-(6S)-テトラヒドロ葉酸、5-ホルミル-(6S)-テトラヒドロ葉酸、10-ホルミル-(6R)-テトラヒドロ葉酸、5,10-メチレン-(6R)-テトラヒドロ葉酸、5,10-メテニル-(6R)-テトラヒドロ葉酸及び/又は5-ホルムイミノ-(6S)-テトラヒドロ葉酸である。通常、ビタミンの量は個々のビタミンの必要最低限の推奨用量によるが、平均して50〜300%超えてもよい。好適な範囲はビタミンCの場合50〜300mg、ビタミンEの場合は10〜50mg、ビタミンAの場合は1.5mg以下、ビタミンB複合体の場合は10μg〜20mgである。
本発明によるパック内の固体医薬投与製剤に含まれる好ましいミネラル物質は、摂取に適した無機又は有機のナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛及び/又は鉄の塩で、炭酸塩、重炭酸塩、リン酸塩、重リン酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、塩化物、フッ化物、クエン酸塩及び/又は乳酸塩の形が好ましい。ミネラル物質の割合は、固体医薬投与製剤の全質量を基準として20〜40質量%が好ましい。固体医薬投与製剤は、好ましくは、珪素、クロム、マンガン、ヨウ素、モリブデン及び/又はセレンを微量元素として含んでもよい。
本発明によるパック内の固体医薬投与製剤に含まれる好ましい食物繊維は、大豆の外殻、とうもろこしの外殻、小麦の外殻及び/又は全粒で、特に大豆の外殻が好ましい。食物繊維の割合は、固体医薬投与製剤の全質量を基準として2〜50質量%が好ましい。
【0012】
好適な酵素又は補酵素はリパーゼ及び/又はプロテアーゼ、或いは、コエンチームQ、スーパーオキシドジスムターゼ及び/又はグルタチオンペルオキシダーゼで、これらは胃及び/又は腸の機能及び/又は代謝を促進するものである。これらを本質的に公知である量及び形態で導入することができる。
本発明によるパック内の固体医薬投与製剤は、前生物的物質、好ましくはオリゴフルクトース及び/又はこのほかのオリゴ糖類をさらに含んでもよい。
好適な植物抽出物とは乾燥抽出物で、本願では特にビオフラボノイド、ポリフェノール、植物エストロゲン及び/又はサポニンを含むもの、例えば菊科エキナセア抽出物が挙げられる。
本発明によるパック内の固体医薬投与製剤は、好ましくは、たんぱく質として大豆タンパク及び/又は乳製品タンパク質、ならびに/あるいは、脂肪としてポリ不飽和脂肪酸を含む脂肪を含有する。
さらに本発明によるパック内の固体医薬投与製剤は、実施形態によるが従来からの助剤及び添加剤を含んでもよい。助剤及び/又は添加剤の選択は、パックにした固体医薬投与製剤を使用する国の食品規制によって変わる。例えば、錠剤、多層構造錠剤、糖衣錠、硬カプセル剤、顆粒剤、ペレット製剤及び/又は散剤において使用される助剤及び/又は添加剤としては、デンプン(例えばコーンスターチ)、タルク、微結晶性セルロース、ラクトース、高分散性二酸化珪素、ポリビニルピロリドン及び/又はセルロース粉末が挙げられる。バインダー及び/又は離型剤としてさらに含有できる成分は、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、グルコース、蔗糖、フルクトース、マルトース、デキストロース、マルトデキストリン等の糖類、ならびに/あるいはカオリンならびに/あるいは、例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体、ならびに/あるいは炭酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム及び/又はステアリン酸グリセロールが挙げられる。さらに、パック内の固体医薬投与製剤は、色素、香味料及び/又は芳香物質や、潤滑剤、酸化防止剤及び/又は安定化剤をさらに含有してもよい。これらの基本的な物質の量は、一方でプロバイオティック微生物、ビタミン類、酵素、食物繊維等の目標とする量に応じて、また、他方では経口投与剤形の機械的/物理的特性、例えば硬度、圧縮性、大きさ、色及び/又は形状等を決定する基準によって変わる。
【0013】
本発明の経口投与製剤はこの分野の当業者には公知の様々な方法により調製することができる。これらの方法は、例えば、H. Sucker、P. Fuchs、P. Speiser著 "Pharmazeutische Technologie"(Pharmaceutical Technology:製薬技術)、Stuttgart 1978、又は、K.H. Bauer、K.H. Fromming、C. Fuhrer著 "Pharmazeutische Technologie"(Pharmaceutical Technology:製薬技術)、Stuttgart 1986から公知である。これらは引用により本願明細書の記載に含まれるものとし、明細書の一部を構成する。
実施例は本発明を限定することなく、本発明を説明するものである。
【0014】
実施例1
EP931543A1と同様にプロバイオティック微生物を含む3層構造錠剤
製造:
バクテリア製剤(ラクトバチルスガゼリ菌、ビフィドバクテリウムビフィダム菌、ビフィドバクテリウムロンガム菌を含む)3質量%と、イヌリン10.5質量%と、燐酸カルシウム8.6質量%と、セルロース5.7質量%と、助剤(崩壊剤、離型剤)2.3質量%(第1の層)、ミネラル物質、微量元素、色素、崩壊剤、離型剤及びセルロース(第2の層)、ビタミン類、微量元素、崩壊剤、離型剤及びセルロース(第3の層)の混合物(それぞれのパーセンテージは錠剤全質量を基準とする)を、畑鉄工所社製の3層タイプの打錠機(回転式)で順次圧縮して、寸法18mmx8mmの長楕円形3層錠剤を得る。引き続き、得られた錠剤にフィルムコーティング(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及び離型剤を含む水溶液により)を施す。コーティングはコア部の質量を基準として5質量%で、これは錠剤表面単位面積あたり11mg/cm2に相当した。被覆した3層構造錠剤を得るが、1錠が1050mgである。
貯蔵及び試験:
被覆錠剤の安定性を耐久性試験で調べる。この目的のために、内壁にチャンネル形成剤が吸湿剤と一緒に埋設された包装(包装A)、又は、ネジ式蓋が付いたポリプロピレン製キャニスター(包装B)のどちらかに被覆錠剤を投入し、温度40℃、相対湿度75%で貯蔵する。所定期間の経過後、それぞれ錠剤を取り出して存在する微生物の菌数をコッホ法(Koch pour plate method)で求める。結果を表1に示す(3バッチの平均)。
【0015】
【表1】

【0016】
実施例2
バクテリア、ビタミン類及びミネラル物質を含む錠剤
製造:
ソルビトール50質量%、ビタミン混合物7.7質量%、ミネラル物質24質量%、バクテリア製剤(ラクトバチルスガゼリ菌、ビフィドバクテリウムビフィダム菌、ビフィドバクテリウムロンガム菌を含む)3質量%、離型材6質量%、色素4.5質量%、酸味料2.3質量%、芳香物質2.2質量%、甘味料0.06質量%の混合物を、錠剤機Fette E1エキセンプレスで圧縮して、わずかに曲線を描く丸型錠剤(質量1000mg、直径15mm)を得る。
貯蔵及び安定性テストを実施例1と同様にして行う。この実施例における包装Bは、ネジ式の蓋と乾燥剤カプセルを有するポリプロピレン製キャニスターである。結果を表2に示す。
【0017】
【表2】

【0018】
実施例3
バクテリア製剤を含む顆粒剤
バクテリア製剤をゼラチン水溶液と一緒にして、給気温度65℃、排気温度約45℃、噴霧量12g/分でGlatt GPCG-3造粒機(ノズル0.5mm)で造粒する。
実施例4
バクテリア製剤を含む硬ゼラチンカプセル剤
バクテリア製剤98%と、アスコルビン酸1%、イヌリン1%の混合物を硬ゼラチンカプセル(サイズNo.ゼロ)に挿入する。
実施例5
バクテリア製剤を含む硬ゼラチンカプセル剤
バクテリア製剤(ラクトバチルスカゼイ菌、ラクトコッカスラクティス菌、ラクトバチルスアシドフィルス菌、ビフィドバクテリウムビフィダム菌を含む)を少なくとも含有する混合物を硬ゼラチンカプセル(サイズNo.ゼロ)に挿入した。
貯蔵及び安定性テストを実施例1と同様にして行う。この実施例での包装Bは、有機ポリマー/アルミ製ブリスターパックである。結果を表3に示す。
【0019】
【表3】

【0020】
実施例6
バクテリア製剤を含む硬ゼラチンカプセル剤
バクテリア製剤(ラクトバチルスGGを含む)と、微結晶性セルロースと、ステアリン酸マグネシウムとの混合物を硬ゼラチンカプセル(サイズNo.ゼロ)に挿入した。
貯蔵及び安定性テストを実施例1と同様にして行う。結果を表4に示す。
【0021】
【表4】

【0022】
実施例7
バクテリア製剤を含む散剤
包装材にいれた散剤は、バクテリア製剤(ラクトバチルスGGを含む)と、マルトデキストリンと、ソルビトールと、蔗糖とを含む。
貯蔵及び安定性テストを実施例1と同様にして行う。結果を表5に示す。
【0023】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の微生物培養物を含む固体医薬投与製剤の安定化方法であって、少なくとも1種のチャンネル形成剤が少なくとも1種の吸湿剤と共に内壁の少なくとも一部の領域にわたって埋設されている包装に前記固体医薬投与製剤を含ませることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記固体医薬投与製剤が、錠剤、糖衣錠、カプセル剤、顆粒剤、座剤、ペレット剤又は散剤であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記微生物培養物がプロバイオティック微生物であることを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記プロバイオティック微生物が乳酸桿菌、ビフィズス菌又は連鎖球菌であり、好ましくは、ラクトバチルスカゼイ菌(Lactobacillus casei)、ラクトバチルスアシドフィルス菌(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルスロイテリ菌(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルスビフィダム菌(Lactobacillus bifidum)、ラクトバチルスガゼリ菌(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルスプランタラム菌(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルスジョンソニ菌(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルスラムノーザス菌(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルスファーメンタム菌(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルスパラカゼイ菌(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルスクリスパトゥス菌(Lactobacillus crispatus)、ビフィドバクテリウムロンガム菌(Bifidobakterium longum)、ビフィドバクテリウムビフィダム菌(Bifidobakterium bifidum)、ビフィドバクテリウムロンガム菌(Bifidobakterium longum)、ビフィドバクテリウムラクティス菌(Bifidobacterium lactis)、ビフィドバクテリウムブレビス菌(Bifidobacterium brevis)、ビフィドバクテリウムアニマリス菌(Bifidobacterium animalis)、ビフィドバクテリウムアドレセンティス菌(Bifidobacterium adolescentis)、ビフィドバクテリウムインファンティス菌(Bifidobacterium infantis)、ストレプトコッカスサーモフィルス菌(Streptococcus thermophilus)及び/又はラクトコッカスラクティス菌(Lactococcus lactis)である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記包装が、吸湿剤として、物理的吸着により水分と結合する乾燥剤を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記乾燥剤がモレキュラーシーブ又はシリカゲルであることを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
請求項1、5及び6のいずれか1項記載の包装と、少なくとも1種の微生物培養物を含む請求項1〜4のいずれか1項記載の固体医薬投与製剤とを含むパック。
【請求項8】
前記包装に収容されている前記固体医薬投与製剤が経口投与用であることを特徴とする、請求項7記載のパック。
【請求項9】
前記包装に収容されている前記固体医薬投与製剤が、103〜1012個、好ましくは105〜1011個、特に好ましくは107〜1010個の微生物を含む、請求項7又は8記載のパック。
【請求項10】
前記包装に収容されている前記医薬投与製剤がさらに栄養関連添加物を含み、好ましくはビタミン類、ミネラル物質、微量元素、食物繊維、酵素、植物抽出物、タンパク質、炭水化物及び/又は脂肪を含むことを特徴とする、請求項7〜9のいずれか1項記載のパック。

【公表番号】特表2009−509983(P2009−509983A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532619(P2008−532619)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【国際出願番号】PCT/EP2006/008468
【国際公開番号】WO2007/036278
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】