説明

微生物・細胞培養用器具包装体及びその製造方法

【課題】 僅かな労力で容器から蓋材を取ることができて、植菌する際の手間が差程かからない上に、長期に渡って培地を無菌状態に保存することができる微生物・細胞培養用器具を提供することにある。
【解決手段】 本発明の微生物・細胞培養用器具包装体10は、培地22を蓄えた試験管14の開口部にキャップ18を被して蓋をしてなる、複数の微生物・細胞培養用器具26と、微生物・細胞培養用器具26をホール34でそれぞれ立設する試験管立て30と、試験管立て30によって立設された微生物・細胞培養用器具26を試験管立て30とともに収容し、脱気状態で封入する包装袋38とを含んで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物や細胞を培養するために用いられる器具を包装してなる微生物・細胞培養用器具包装体、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、細菌の培養には、その前工程として、かかる細菌を培養するために好適な培地を調製する工程と、この調製された培地を試験管やシャーレ等の細菌を培養するための容器に移す工程とが必要となる。詳細には、所望の組成から構成される培地を先ず調製し、これを試験管やシャーレ等の容器に注ぎ入れた後、これらをオートクレーブで加熱加圧滅菌したり、あるいは、予め滅菌した試験管やシャーレ等の容器に、予め滅菌された所望の組成から構成される培地を注ぎ入れる操作が必要となる。このため、従来から、細菌の培養には、その準備に手間がかかった。
【0003】
そこで、かかる手間を省くべく、これまでに、予め所定の培地が蓄えられた試験管やシャーレ等が市販されてきた。その一方で、かかる培地が蓄えられた試験管やシャーレの開口部が蓋材によって密封されていない場合には、開口部と蓋材との空隙から培地内に他の細菌が侵入することとなる。したがって、かかる態様によって予め所定の培地が蓄えられた試験管やシャーレ等は、長期間保存することができず、購入後は早期に使い切る必要があった。また、その製造場所から遠隔地へ輸送するにも不向きであった。
【0004】
かかる問題を解決するために、予め所定の培地が蓄えられた試験管やシャーレ等の開口部に蓋材を熱接着させる等して、容器内を蓋材で密封してなる培養用器具が提供されてきた(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【特許文献1】特公昭56−10027号公報
【特許文献2】特公昭59−1478号公報
【0005】
しかしながら、かかる従来の蓋材の態様では、細菌を容器内の培地に植菌する際に、蓋材を開口部から引き剥がす操作が必要となることから、植菌前に過度の負担を強いることとなっていた。
【0006】
また、試験管やシャーレ等の開口部に蓋材を熱接着させて構成される培養用器具に代えて、図2(a)、(b)に示すように、例えば、試験管14の開口部の側壁周縁に設けられたねじ山46に蓋材を螺合させたり、試験管の開口部の側壁周縁に設けられた係合部50に蓋材を係合させる等して培地を密封した培養用器具が提供されているが、かかる場合にあっても、依然として、植菌工程前に蓋材を離脱させるために蓋材を回したり、係合状態を解除する手間を要した。そして、かかる手間は、一度に大量の培養用器具に植菌を行なう必要がある場合に大きな負担となっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、僅かな労力で容器から蓋材を取ることができて、植菌する際の手間が差程かからない上に、長期に渡って培地を無菌状態に保存することができる微生物・細胞培養用器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨とするところは、培地を蓄えた容器の開口部を蓋材で蓋してなる微生物・細胞培養用器具が、包装用容器内に脱気状態で封入された微生物・細胞培養用器具包装体にある。
【0009】
かかる構成によって、容器の開口部と蓋材とを密着させず、すなわち、容器の開口部と蓋材との間に空隙を設けて、容器内の培地を蓋材によって密封しない場合であっても、微生物・細胞培養用器具を無菌状態で包装用容器内に封入すれば、微生物・細胞培養用器具包装体を長期間保存しても、この空隙から雑菌が侵入する等して、容器内の培地が雑菌で汚染されることが防がれる。
【0010】
また、本発明の要旨とするところは、前記開口部と前記蓋材との間に空隙が設けられ、前記容器が通気性を有することにある。
【0011】
かかる構成によって、包装用容器から微生物・細胞培養用器具を取り出して放置した場合に、容器内が嫌気性状態になることが防がれる。
【0012】
また、本発明の要旨とするところは、前記容器から前記蓋材を引き抜く引抜き力が10N以下であることにある。
【0013】
かかる構成によって、容器と蓋材との着脱を僅かな労力で行ない得ることとなる。
【0014】
ここで、本明細書における「引抜き力」とは、容器から蓋材を離脱させるために要する力のことを意味する。具体的には、容器の開口部を蓋する蓋材の一部を、重量計から延びた挟持手段を用いて挟持し、その後重量計の位置を固定した状態で容器のみを重量計から離れた方向に引張って、容器から蓋材を離脱させるのに要する力を測定して求める。
【0015】
また、本発明の要旨とするところは、前記包装用容器が包装袋から構成され、前記脱気状態が前記包装袋の内部の空気を吸引して実現されたことにある。
【0016】
かかる構成によって、包装袋が包装体内の微生物・細胞培養用器具に密着して、包装体内における微生物・細胞培養用器具の位置が固定されることとなる。
【0017】
また、本発明の要旨とするところは、脱酸素剤とともに封入されたことにある。
【0018】
かかる構成によって、包装用容器内に残留する酸素が除かれることとなる。
【0019】
また、本発明の要旨とするところは、前記微生物・細胞培養用器具を立設する器具立てとともに封入されたことにある。
【0020】
かかる構成によって、包装用容器内で微生物・細胞培養用器具が横転することが防がれる。また、包装用容器を開封後、微生物・細胞培養用器具を使用するに際し、器具立てに立てる手間が省かれる。
【0021】
また、本発明の要旨とするところは、前記微生物・細胞培養用器具が複数個封入されたことにある。
【0022】
また、本発明の要旨とするところは、開口部を有する容器に培地を入れる工程と、前記開口部を蓋材で蓋して、微生物・細胞培養用器具とする工程と、前記微生物・細胞培養用器具を包装用容器の内部に収容する工程と、前記包装用容器の内部を脱気する工程と、前記包装用容器の開口部を封止する工程とを含んで構成される微生物・細胞培養用器具包装体の製造方法にある。
【発明の効果】
【0023】
本発明の微生物・細胞培養用器具包装体は、蓋材を容器から離脱し易い態様として微生物・細胞培養用器具を構成しても、かかる器具内の培地は長期間無菌状態に保たれる。このため、植菌する際に蓋材を取る手間が少ないにも関わらず、長期の保存が利いて早期に使い切る必要のない微生物・細胞培養用器具を提供することができる。また、本発明の微生物・細胞培養用器具包装体は、その製造地から遠隔地へ輸送することもできる。
【0024】
本発明の微生物・細胞培養用器具包装体は、包装用容器から微生物・細胞培養用器具を取り出して放置した場合に、容器内が嫌気性状態になることが防がれるため、培地に植菌後、培地を好気性状態に保つことができる。
【0025】
また、本発明の微生物・細胞培養用器具包装体は、蓋材が容器から微力で離脱するため、大量の数の微生物・細胞培養用器具の培地に一時期に細菌を植菌する必要がある場合に、容器から蓋材を取り除く手間を極力省くことができる。
【0026】
また、本発明の微生物・細胞培養用器具包装体は、包装体内における微生物・細胞培養用器具の位置が固定されるため、かかる包装体内に複数の微生物・細胞培養用器具が収容されている場合には、包装体内で各微生物・細胞培養用器具同士の位置が固定される。その結果、本発明の微生物・細胞培養用器具包装体は、振動を生じる輸送手段で遠隔地へ輸送された場合でも、輸送中に同一包装体内の微生物・細胞培養用器具同士が衝突して容器等が破損することを防ぐことができる。
【0027】
また、本発明の微生物・細胞培養用器具包装体は、包装用容器内に残留する酸素が除かれるため、微生物・細胞培養用器具包装体内で好気性細菌が増殖することを防ぐことができる。
【0028】
また、本発明の微生物・細胞培養用器具包装体は、微生物・細胞培養用器具が横転することがないため、容器内の培地が容器外へこぼれることを防ぐことができる。また、微生物・細胞培養用器具を使用するに際し、器具立てに立てる手間が省かれるため、包装用容器を開封後直ちに植菌操作に移ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1に従えば、本発明の微生物・細胞培養用器具包装体10は、培地22を蓄えた試験管14の開口部にキャップ18を被して蓋をしてなる、複数の微生物・細胞培養用器具26と、微生物・細胞培養用器具26をホール34でそれぞれ立設する試験管立て30と、試験管立て30によって立設された微生物・細胞培養用器具26を試験管立て30とともに収容し、脱気状態で封入する包装袋38とを含んで構成される。
【0030】
本発明の微生物・細胞培養用器具包装体10において、包装袋38内を脱気状態とする方法は、微生物・細胞培養用器具包装体10内を嫌気性状態として、培地22中で好気性菌が増殖することを防ぐことができれば、いずれの態様によって行なってもよい。例えば、包装袋38内に希ガス等の不活性ガスを充填して包装袋38内の酸素を不活性ガスで置換して行なってもよい。また、包装袋38内を真空ポンプやアスピレーター等で減圧して行なってもよい。包装体38内を減圧することにより、微生物・細胞培養用器具包装体10内の微生物・細胞培養用器具26に包装袋38が密着して、微生物・細胞培養用器具包装体10内での各微生物・細胞培養用器具26の位置が固定されることとなる。このため、本発明の微生物・細胞培養用器具包装体10に振動を加えた際に、微生物・細胞培養用器具包装体10内で各微生物・細胞培養用器具26同士が衝突して試験管14が破損することを防ぐことができる。また、かかる微生物・細胞培養用器具包装体10を輸送する際に嵩張ることを防ぐことができる。
【0031】
本発明にかかる微生物・細胞培養用器具包装体10中の微生物・細胞培養用器具26は、包装袋38を開封後、培地22に細菌等を植菌して用いるものである。このため、試験管14内の培地22は無菌状態で保たれていることが好ましい。ここで、本発明にかかる微生物・細胞培養用器具26は、脱気状態で包装袋38内に密封・保持されるため、好気性細菌の侵入及び増殖は抑制されている。その一方、嫌気性細菌の増殖は効果的に抑制し得ない。このため、本発明の微生物・細胞培養用器具包装体10は、嫌気性細菌を微生物・細胞培養用器具包装体10内から除いて構成されることが好ましい。
【0032】
かかる嫌気性細菌を微生物・細胞培養用器具包装体10内から除く方法は、例えば、予め殺菌した試験管14と培地22とキャップ18と試験管立て30と包装袋38とを準備し、かつ、本発明の微生物・細胞培養用器具包装体10の製造をクリーンルーム内で行なう態様によって実現してもよい。
【0033】
また、かかる嫌気性細菌を微生物・細胞培養用器具包装体10内から除く方法は、包装袋38内を脱気して、次いで包装袋38の開口部42を封止した後、得られた微生物・細胞培養用器具包装体10をオートクレーブで加熱加圧滅菌する態様で実現してもよい。
【0034】
本発明の微生物・細胞培養用器具包装体10に用いる試験管14は、その開口部の周縁側壁に、図2(a)、(b)に示すように、キャップ18を係合させ、あるいはキャップ18との摩擦力を増大させるための係合手段54を備えた試験管14であってもよいが、図2(c)に示すように、かかる係合手段54を何ら備えない試験管14であることが好ましい。かかる構成により、キャップ18を試験管14から離脱させる際に、試験管14とキャップ18との係合状態を解除する手間が省かれることとなるため、試験管14の開口部を蓋するキャップ18の試験管14からの離脱を僅かな労力で行なうことが可能となる。例えば、試験管14からのキャップ18の離脱は、同一の手の薬指と小指とを試験管14の底部に巻き付けて試験管14を固定しつつ、親指と人差し指の各腹でキャップ18を摘み、キャップ18を試験管14の略延長方向に押し上げて行なうことが可能となる。
【0035】
また、本発明の微生物・細胞培養用器具包装体10に用いる試験管14の材質は、試験管14に蓄えられた培地22によって試験管14の構成成分が溶出しないものであれば特に限定されるものではなく、ガラス製や樹脂製、あるいは金属製等であってよい。なお、かかる試験管14は、試験管14を減圧状態で保持した場合にもその形状を維持できるように、耐圧性であることが好ましい。
【0036】
本発明の微生物・細胞培養用器具包装体10に用いるキャップ18は、その側壁にあって試験管14と対向する面に、図3(a)、(b)に示すような、試験管14の開口部の周縁側壁に設けられた係合手段54に対応する被係合手段58を備えて構成されてもよいが、かかる被係合手段58を何ら備えずに構成されてもよい。かかる構成により、試験管14からキャップ18を離脱させる際に、試験管14とキャップ18の係合状態を解除する手間を省くことができる。
【0037】
なお、本発明の微生物・細胞培養用器具包装体10に用いるキャップ18には、図3(c)に示すように、試験管14と対向する面に滑り防止手段62を備えて構成されることが好ましい。かかる構成により、微生物・細胞培養用器具26を上下逆さに固定した場合においてもキャップ18が試験管14から滑り落ちることを防ぐことができる。
【0038】
また、本発明の微生物・細胞培養用器具包装体10に用いるキャップ18は、図3(c)に示すように、キャップ18の天板64が試験管14の開口部の周縁と密接することを防ぐための密接防止手段66を、試験管14と対向する面に備えて構成されることが好ましい。
【0039】
植菌する細菌によっては、培地22に細菌を植菌した後は、試験管14内は好気性に維持することを要する場合があるが、その一方で、植菌後の培地22に空気中の雑菌が自然落下することは防ぐ必要がある。このため、本発明の微生物・細胞培養用器具包装体10を、試験管14内を密封する態様の、従来公知のキャップを用いて構成した場合には、植菌後はかかる従来公知のキャップを試験管14の開口部に軽く載せる程度に留めておく必要がある。これに対し、かかる密接防止手段66を備えたキャップ18は、試験管14とキャップ18との間に空隙が形成されて、試験管14が通気性を備えることとなる。その結果、キャップ18を試験管14の開口部に被しても、キャップ18が試験管14を密閉することがなく、試験管14内が嫌気状態になることを防ぐことができる。このため、密接防止手段66を備えたキャップ18は、植菌後も試験管14の開口部を蓋する蓋材として好適に用いることができる。
【0040】
また、本発明の微生物・細胞培養用器具包装体10に用いるキャップ18は、試験管14からキャップ18を引抜くのに要する引抜き力が10N以下を示すことが好ましく、5N以下を示すことがより好ましく、4.5N以下を示すことがさらに好ましい。かかる構成により、試験管14からのキャップ18の離脱を微力で行なうことが可能となるため、試験管14からのキャップ18の着脱を片手で十分に行なうことができる。また、大量の数の試験管14に細菌を植菌する必要がある場合にキャップ18を素早く取ることができる。なお、かかる引抜き力が10Nより高い場合には、キャップ18を試験管14から引抜く際に必要以上の負荷がかかって、片手でキャップ18を着脱できない場合がある。
【0041】
また、本発明の微生物・細胞培養用器具包装体10に用いるキャップ18の材質は、特に限定されるものではなく、ガラス製やアルミニウム等の金属製、あるいは樹脂製のものであってよい。なお、減圧状態でキャップを保持した際にその形状を維持できるように、耐圧性であることが好ましい。
【0042】
本発明の微生物・細胞培養用器具包装体10に用いる包装袋38は、微生物・細胞培養用器具26を包装袋38内に脱気状態で封入した後、かかる脱気状態を長時間保持できるものであればよく、その材質は限定されない。例えば、非通気性の樹脂フィルムから構成される包装袋を挙げることができる。
【0043】
本発明の微生物・細胞培養用器具包装体10に用いる試験管立て30は、その形状及び材質は特に限定されるものではなく、従来公知の試験管立てを用いることができる。なお、減圧状態で試験管立てを保持した際にその形状を維持できる態様であることが好ましい。
【0044】
以上、本発明の微生物・細胞培養用器具包装体の実施態様を詳述したが、本発明は上述の態様に限定されるものではなく、その他の態様でも実施し得るものである。
【0045】
本発明の微生物・細胞培養用器具包装体に用いる容器は、培地を蓄えて細菌等を培養し得るものであれば、試験管に限定されるものではなく、例えばシャーレやフラスコやビーカー等であってもよい。
【0046】
本発明の微生物・細胞培養用器具包装体に用いる蓋材は、容器の開口部を被覆して、空気中に浮遊する雑菌が自然落下して容器内の培地に侵入することを防ぐことができるものであれば、その態様は限定されるものではなく、例えば、シャーレの上皿や、通気性を備えたコルクやゴム栓、あるいは綿栓等から構成されてもよい。
【0047】
本発明の微生物・細胞培養用器具包装体に用いる包装用容器は、微生物・細胞培養用器具等を脱気状態で封入して、かつこの脱気状態を長時間維持できるものであれば、非通気性の包装袋に限定されるものではない。このため、かかる包装用容器は、包装体内を減圧後も一定の形状を保持し得る非通気性の函体から構成されてもよい。かかる構成によって、複数の微生物・細胞培養用器具包装体を同一箇所に保存する場合に、これらを積み上げて保存しても、包装体内の微生物・細胞培養用器具が重みで破損することを防ぐことができる。なお、かかる函体は、本発明の微生物・細胞培養用器具包装体に振動を加えるおそれがない場合に好適に用いることができる。
【0048】
本発明の微生物・細胞培養用器具包装体は、複数の微生物・細胞培養用器具を同一包装用容器内に収容する操作を一度で行なうことを可能にし、また、収容後に微生物・細胞培養用器具が横転して容器内の培地が容器外に漏れることを防ぐために、微生物・細胞培養用器具を立設する試験管立てとともに包装用容器に収容されてもよいが、容器が自立する態様である場合には、かかる試験管立ては除いて構成されてもよい。また、本発明の微生物・細胞培養用器具包装体に用いる器具立ては、複数の微生物・細胞培養用器具を一まとめにし、また、微生物・細胞培養用器具が横転することを防ぐことができれば、試験管立てに限定されるものではなく、単に複数の微生物・細胞培養用器具をまとめ得る紐状部材から構成されてもよい。
【0049】
本発明の微生物・細胞培養用器具包装体は、脱酸素剤が封入されてもよい。これによって、包装体内の酸素濃度がより低く維持されるため、包装体内で好気性細菌が増殖することを効果的に抑制することができる。
【0050】
また、本発明の微生物・細胞培養用器具包装体は、乾燥剤が封入されてもよい。これによって、包装体内の湿気が乾燥剤に吸収されることとなるため、包装体内を乾燥状態で維持することができる。なお、かかる乾燥剤は、シリカゲルを含んで構成されることが好ましい。かかる構成により、シリカゲルは乾燥状態にある場合には青色を呈し、また吸湿状態にある場合には赤色を呈することから、微生物・細胞培養用器具包装体内の乾燥状態を視覚的に認知することができる。
【0051】
本発明の微生物・細胞培養用器具包装体は、複数の微生物・細胞培養用器具を同一包装用容器内に収容して構成した方が、微生物・細胞培養用器具当たりの製造コストを下げることができるため好ましいが、一つの微生物・細胞培養用器具を包装用容器内に収容して構成しても構わない。
【0052】
本発明の微生物・細胞培養用器具包装体は、いずれの態様によって製造されてもよい。例えば、容器に培地を入れる工程と、容器の開口部に蓋材を被して蓋をし、微生物・細胞培養用器具とする工程と、複数の微生物・細胞培養用器具を器具立てを用いて立設する工程と、器具立てによって立設された微生物・細胞培養用器具を、器具立てとともに包装用容器内に収容する工程と、脱酸素剤を収容する工程と、微生物・細胞培養用器具と器具立てと脱酸素剤とを収容した包装用容器内を、真空ポンプで減圧する工程と、包装用容器の開口部を封止する工程と、得られた細胞培養器具包装体をオートクレーブで加熱加圧滅菌する工程とを含んで構成されてもよい。
【0053】
本発明の微生物・細胞培養用器具包装体を構成する、微生物・細胞培養用器具は、いずれの微生物、あるいは細胞の培養に用いられてもよい。例えば、微生物としては、ウィルスや細菌や菌類等を挙げることができる。また、細胞としては、動物や植物の個体から取り出された細胞や組織を挙げることができる。
【0054】
その他、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、変更を加えた態様で実施し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の微生物・細胞培養用器具包装体の実施態様を示す。
【図2】本発明の微生物・細胞培養用器具包装体に用いられる容器の実施態様を示す。
【図3】本発明の微生物・細胞培養用器具包装体に用いられる蓋材の実施態様を示す。
【符号の説明】
【0056】
10:微生物・細胞培養用器具包装体
14:試験管
18:キャップ
22:培地
26:微生物・細胞培養用器具
30:試験管立て
34:ホール
38:包装袋
42:開口部
46:ねじ山
50:係合部
54:係合手段
58:被係合手段
62:滑り防止手段
64:天板
66:密接防止手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
培地を蓄えた容器の開口部を蓋材で蓋してなる微生物・細胞培養用器具が、包装用容器内に脱気状態で封入された微生物・細胞培養用器具包装体。
【請求項2】
前記開口部と前記蓋材との間に空隙が設けられ、前記容器が通気性を有する請求項1に記載の微生物・細胞培養用器具包装体。
【請求項3】
前記容器から前記蓋材を引き抜く引抜き力が10N以下である請求項1又は2に記載の微生物・細胞培養用器具包装体。
【請求項4】
前記包装用容器が包装袋から構成され、前記脱気状態が前記包装袋の内部の空気を吸引して実現された請求項1乃至3のいずれかに記載の微生物・細胞培養用器具包装体。
【請求項5】
脱酸素剤とともに封入された請求項1乃至4のいずれかに記載の微生物・細胞培養用器具包装体。
【請求項6】
前記微生物・細胞培養用器具を立設する器具立てとともに封入された請求項1乃至5のいずれかに記載の微生物・細胞培養用器具包装体。
【請求項7】
前記微生物・細胞培養用器具が複数個封入された請求項1乃至6のいずれかに記載の微生物・細胞培養用器具包装体。
【請求項8】
開口部を有する容器に培地を入れる工程と、
前記開口部を蓋材で蓋して、微生物・細胞培養用器具とする工程と、
前記微生物・細胞培養用器具を包装用容器の内部に収容する工程と、
前記包装用容器の内部を脱気する工程と、
前記包装用容器の開口部を封止する工程と
を含んで構成される微生物・細胞培養用器具包装体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−219158(P2006−219158A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−33199(P2005−33199)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(598125419)
【Fターム(参考)】