説明

微生物数測定装置及び微生物数測定方法

【課題】本発明は、微生物の測定を実施する者が予め要求する測定感度および測定時間を満たすような測定方法を指定でき、目的に則した微生物数測定を実現する微生物数測定装置および微生物数測定方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、微生物含有の液体を導入することができ、内部に電極を備えたセルと、泳動電源回路と、電極間に集中した微生物に起因するインピーダンスを測定する測定部と、前記測定部の測定結果から微生物が電極間に集中したことに起因するインピーダンス時間変化の初期傾きを演算して微生物数を算出する演算部と、制御部と、複数の入力手段とを備え、前記複数の入力手段によって入力された命令に応じて制御手段がインピーダンス測定時間を変更することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は溶液中の微生物数を測定するための微生物数測定装置及び微生物数測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、溶液中の微生物数を測定する方法として特許文献1に記載されたもの等の多数の技術が知られている。
【0003】
しかし、従来の技術による微生物数の測定方法は、試料液に専用の薬剤、例えば酵素や色素を投入して生化学反応を起こさせ、その反応経過または結果を蛍光や発光によって測定するものであり、測定感度は比較的高いが微生物分野及び生化学分野に関する専門知識が必要であったり、また専用で高価な大型の測定装置が必要となり、さらには専任者による作業が必要となる等、とても一般的かつ簡易に微生物数を測定することができるものではなかった。
【0004】
そこで、誘電泳動とインピーダンス計測を組み合わせ、薬剤や特別な装置を必要とすることなく、簡易で高感度な測定ができ、自動測定が可能でメンテナンスフリーの微生物数測定装置及び微生物数測定方法が提案された(特許文献2)。
【特許文献1】特開昭57−50652号公報
【特許文献2】特開2000−125846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
微生物数を測定する際、その目的によって要求される検出感度や測定時間が異なり、例えば微生物のスクリーニング検査の場合は高い検出感度は不要であるが測定時間を短くしたい、という要求がある。特許文献2に記載の発明には、広範囲なダイナミックレンジを得るための手段として誘電泳動電極を複数設ける記載があるが、高濃度の微生物を測定する際には低感度の電極を用いるため、迅速な測定が実現できないという課題があった。
【0006】
本発明は前記従来の課題を解決するもので、複数の誘電泳動電極を使用するため、測定セルのコストが上昇するという問題があった。本発明は上記従来の事情に鑑みてなされたものであり、微生物の測定を実施する者が予め要求する測定感度および測定時間を満たすような測定方法を指定でき、目的に則した微生物数測定を実現する微生物数測定装置および微生物数測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の微生物数測定装置は、溶液中の微生物数を測定するための微生物数測定装置であって、微生物含有の液体を導入することができ、内部に電極を備えたセルと、泳動電源回路と、電極間に集中した微生物に起因するインピーダンスを測定する測定部と、前記測定部の測定結果から微生物が電極間に集中したことに起因するインピーダンス時間変化の初期傾きを演算して微生物数を算出する演算部と、制御部と、複数の入力手段とを備える。
【0008】
上記構成によれば、入力手段によって入力された命令に応じて制御手段がインピーダンス測定時間を変更することができるため、目的に則した感度と時間にて微生物数の測定を行える。
【0009】
また、本発明の微生物数測定装置は、少なくともインピーダンス測定時間を入力する設定値入力手段を備え、制御部が記憶手段を有し、前記記憶手段にインピーダンス測定時間が書き換え可能に記憶され、前記制御手段が、前記設定値入力手段で入力され記憶手段に記憶されたインピーダンス測定時間で測定する。
【0010】
上記構成によれば、微生物測定を実施する者が、予め所望の測定感度や時間に応じた設定をすることができ、かつ、特定の入力手段による簡易な操作で測定を開始することができるため、微生物数測定が手軽に行える。
【0011】
また、本発明の微生物数測定方法は、溶液中の微生物数を測定するための微生物数測定方法であって、入力手段によって測定条件を選択する測定条件選択ステップと、セル中に誘電泳動力を発生させ電極近傍に微生物を集中させるための交流電圧を前記電極間に印加する泳動電圧印加ステップと、電極間に集中した微生物に起因するインピーダンスを測定するインピーダンス測定ステップと、前記測定ステップの測定結果から微生物が電極間に集中したことに起因するインピーダンス時間変化の初期傾きを演算して微生物数を算出する微生物数算出ステップと、算出した微生物数を結果出力する測定結果出力ステップとを有し、測定条件選択ステップで選択された測定条件に応じて、インピーダンス測定ステップを有する。
【0012】
上記構成によれば、入力手段によって入力された命令に応じて制御手段がインピーダンス測定時間を変更することができるため、目的に則した感度と時間にて微生物数の測定を行える。
【0013】
また、本発明の微生物数測定方法は、測定条件設定ステップを有し、測定条件設定ステップで設定されたインピーダンス測定時間でインピーダンス測定を行う。
【0014】
上記構成によれば、微生物測定を実施する者が、予め所望の測定感度や時間に応じた設定をすることができ、かつ、特定の入力手段による簡易な操作で測定を開始することができるため、微生物数測定が手軽に行える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、微生物の測定を実施する者が予め要求する測定感度および測定時間を満たすような測定方法を指定でき、目的に則した微生物数測定を実現する微生物数測定装置および微生物数測定方法が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(実施の形態1)
本発明の微生物数測定装置の実施の形態1について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は微生物数測定装置の概略図、図2は微生物測定装置の構成要素を示すブロック図、図3は溶液中の微生物を誘電泳動によって捕捉するための誘電泳動電極を表す概略図、図4は誘電泳動電極に微生物が捕捉されるに従って測定されるインピーダンスの経時変化を溶液中に含まれる微生物濃度毎にプロットしたグラフである。
【0017】
図1において、1は本発明の微生物数測定装置、2は測定を実施する者が測定条件を選択し、入力するための第一のボタン、3は、第二のボタン、5はLCDなどの表示手段である。
【0018】
図2において、10は微生物含有の溶液を投入するためのセル、11は溶液中の微生物を誘電泳動誘によって捕捉するための電泳動電極、12は誘電泳動を発生させるための交流電圧を誘電泳動電極11に供給するための泳動電源回路、13は誘電泳動電極11に流れる電流を測定する測定部、14は測定部13が測定した電流からインピーダンス値を算出する演算部、15は制御部、16は記憶手段、17は第一のボタン2および第二のボタンなどから成る、複数の入力手段である。
【0019】
図3において、21は誘電泳動電極11の一方の極、22は他方の極、23は一方の極21と他方の極22に挟まれたギャップである。
【0020】
図1に示すように、微生物測定装置には第一のボタン2および第二のボタン3を備えている。本実施の形態では、タクトスイッチを採用しているが、他の押しボタンやタッチパネルなど、汎用的な入力手段が利用可能である。第一のボタン2には、低感度で高速に測定する条件であることを示す表記が施されている。例えば、「簡易測定」や「スクリーニング測定」や「短時間測定」などである。第二のボタン3には、高感度で測定する条件であることを示す表記が施されている。例えば、「精密測定」や「高感度測定」などである。これらの表記は、測定実施者が低感度で高速な測定または、高感度な測定であることを理解できれば良いので、ここで挙げた表現にこだわる必要は無く、装置上の配置関係も図1のように限定されるものではない。
【0021】
図2ないし図3に示すように、誘電泳動によって試料液体中の微生物を所定位置に移動させるために、誘電泳動電極11は、微小なギャップ23を介して一方の極21と他方の極22が対向して設けられており、互いに入れ子になるよう櫛歯状に配置されている。それぞれの電極はスパッタリングや蒸着やメッキ等の方法によって基板上に密着して形成された導電体からなり、基板上で導電体が密着している部分と基板表面がむき出しになっている部分の境界である端線を有している。二つの極によって誘電泳動電極の端線間に構成されるギャップ23は実施の形態1においてはすべて同じ間隔である。誘電泳動のための電圧印加によってこのギャップ23付近の電界がもっとも強くなるため、ギャップ23が本実施の形態1における電界集中部になる。誘電泳動によって、微生物は最も電界が集中するこのギャップ23付近に向かって泳動される。
【0022】
ここで、本発明において検出対象としている微生物について説明する。本発明で言う微生物とは一般に細菌、真菌、放線菌、リケッチア、マイコプラズマ、ウイルス、として分類されているいわゆる微生物学の対象となっている生物のほかに、原生動物や原虫のうちの小型のもの、生物体の幼生、分離または培養した動植物細胞、精子、血球、核酸、蛋白質等も含む広い意味での生体または生体由来の微粒子である。また本発明では、測定対象として液体中の微生物を想定している。
【0023】
泳動電源回路12は誘電泳動を起こすための交流電圧を誘電泳動電極11に供給するものである。印加する交流電圧は、測定対象となる微生物にを最も効率よく捕捉できる条件を選択することが望ましく、本実施の形態1では、周波数100kHz、電圧1Vrmsの正弦波交流電圧を用いているが、この値にとらわれる必要はない。なお、ここで交流電圧というのは、正弦波のほか、ほぼ一定の周期で流れの向きを変える電圧のことであり、かつ両方向の電流の平均値が等しいものである。
【0024】
制御部15は、図示しないマイクロプロセッサと、タイマー等から構成され、記憶手段16として、SRAMやSDRAMなどの揮発性メモリおよびROMやFLASHメモリなどの不揮発性メモリを備える。制御部15の動作を規定するためのプログラムやインピーダンス測定時間など各種の設定値は、前記記憶手段16の不揮発性メモリに記憶される。制御部15は前記プログラムにしたがって、泳動電源回路12を制御して、誘電泳動電極11へ特定の周波数と電圧をもった交流電圧を印加する。さらに制御部15は測定部13と演算部14と信号の送受信を行ない適宜制御を行ったり、表示手段5へのデータ転送や、複数の入力手段17からの信号の入力を行うことで測定動作全般の流れを管理する。
【0025】
図5は記憶手段16の内部構造の一部を仮想的に示す図である。記憶手段15には少なくとも第一の測定時間31および第二の測定時間32を格納する領域が確保されており、それぞれの領域に予め制御部15内蔵のタイマがカウント可能なデータ形式で時間の情報が記憶されている。詳細は後述するが、第一のボタン2が入力された場合は第一の時間31が、第二のボタン3が入力された場合は第二の時間32が制御部15によって読み出される。本実施の形態では、測定条件の入力手段(第一のボタン2および第二のボタン3)および測定時間(第一の測定時間31および第二の測定時間32)はそれぞれ2つずつ備えているが、要求する測定条件の数に応じて適宜増設されてもよい。
【0026】
実施の形態1において測定部13は、インピーダンスを調べるために必要となる誘電泳動電極11間にかかる電圧と、それによって誘電泳動電極11を流れる電流と、前記電圧と電流の位相の差を測定するための回路等から構成され、誘電泳動によって微生物が移動し、電界集中部近傍に捕捉されることに起因する誘電泳動電極11に流れる電流の変化を測定する。インピーダンスを調べるために必要となる誘電泳動電極11間にかかる電圧と、それにより誘電泳動電極11を流れる電流と、前記電圧と電流の位相の差は演算部14に渡され、後述する手順によって演算が行われる。本実施の形態1では、測定部13は制御部15によって制御されており、予め設定されたプログラムに従って一連の測定動作を連携して円滑に進めることができる。
【0027】
演算部14は、図示しないマイクロプロセッサ、メモリ等から構成され、詳細は後述するが、測定部13にて測定された結果から誘電泳動電極11のインピーダンス値を算出する。そして演算結果は、制御部15に渡され、必要に応じて演算結果を記憶手段16に格納したり、予め保存されているデータを読み出して比較を行なう等して、溶液に含まれている微生物数を算出し表示手段5に表示を行うなどする。なお、このマイクロプロセッサは制御部15と演算部14とで共用することができる。また、演算部14も測定部13同様制御部15によって制御されており、予め設定されたプログラムに従って一連の測定動作を連携して円滑に進めることができる。
【0028】
表示手段5は算出された微生物数を試料1mlあたりの微生物数としてデジタル表示する。表示手段5の表示が実施の形態1における微生物数測定装置の最終出力となる。
【0029】
以下、測定条件の選択からセル10内の微生物の濃縮、測定、結果表示にいたるまでの一連の流れを説明する。まず測定実施者は、要求する微生物数測定に応じて、第一のボタン2あるいは第二のボタン3を選択し、押下する。本実施の形態では、入力手段は押しボタンであるため、測定実施者はボタンを押下するだけで要求する測定を開始することができる。制御部15は、第一のボタン2が入力された場合は第一の測定時間31を、第二のボタン3が入力された場合は第二の測定時間32を読み出し、その後、制御部15は直ちに泳動電源回路12および測定部13に測定開始の信号を送って測定の開始を指令する。以上が測定条件選択ステップとなる。
【0030】
測定開始の指令を受けた泳動電源回路12は、測定のための電圧として直ちに誘電泳動電極11間に周波数100kHz、電圧1Vrmsの正弦波交流電圧を印加し、測定部13はその時の電流値および電圧と電流の位相の差を測定する。
【0031】
測定結果は演算部14に送られる。演算部14は得られた測定結果から、誘電泳動電極11間のインピーダンスを算出する。最終的に微生物数の換算に用いるインピーダンスの値としては、コンダクタンス成分および静電容量成分どちらも使用可能であるが、本実施の形態では、コンダクタンス成分の値を用いる。
【0032】
以下、予め設定された時間毎に、制御部15と演算部14と測定部13は連携して連続的に泳動を行いながら測定を繰り返し、制御部15は算出されたコンダクタンスを都度記憶手段16に格納する。このように、誘電泳動による微生物のギャップ23付近への移動と誘電泳動電極11のインピーダンス測定を繰り返すことによって、誘電泳動電極11間のコンダクタンスの時間変化を調べることができる。以上、泳動電圧印加ステップとインピーダンス測定ステップが同時並列に実行される。
【0033】
以下、微生物数算出ステップについて説明する。
【0034】
誘電泳動のための交流電圧印加開始後、測定開始時に読み出された測定時間(第一の測定時間もしくは第二の測定時間)だけ時間が経過すると、制御部15は、泳動電源回路12に対して電圧印加の終了を支持し、演算部14に対して微生物数の算出を指示する。
【0035】
指示を受けた演算部14は記憶手段16に格納されている複数の時点におけるコンダクタンスの測定結果から、誘電泳動電極11のコンダクタンスの時間変化の初期における傾きを計算し、後述する変換式に従って溶液中の微生物数を算出する。
【0036】
なぜコンダクタンスの時間変化の傾きを測定すれば微生物数を算出することができるかというと、微生物は電気的には抵抗と静電容量の並列接続された素子として等価的に表現することができるからである。これは微生物がイオンリッチで比較的電気伝導率が大きな細胞壁と、リン脂質からなり電気伝導率の小さな細胞膜に囲まれていることに起因する。誘電泳動によりギャップ23に移動する微生物によってギャップ23が架橋されると、微生物を介して誘電泳動電極11間に電流が流れるようになる。ギャップ23へ泳動される微生物の数が増え、微生物による架橋の数が増えると誘電泳動電極11流れる電流が増加するから、誘電泳動電極11間のコンダクタンス変化を測定すればその値はギャップ23付近に移動してきた微生物数、ひいては試料液中に存在する微生物数に相関した測定結果を得ることができるのである。このようなコンダクタンスの時間変化の一例を示したのが図4である。図4から、測定初期のコンダクタンスの時間変化の傾き(勾配)もコンダクタンスの時間変化と同様に、微生物数に対応して増加しているのが分かる。
【0037】
さて、最終的に試料液中の微生物数を表示するためには、コンダクタンスの時間変化の傾きと試料中の微生物数の変換式が必要である。この変換式は、本実施の形態1で説明した微生物数測定装置の測定系と、培養法などの従来から微生物数の測定法として確立している方法を用いて、双方の測定方法で同時に測定し、従来の確定した方法で測定した微生物数とコンダクタンスの時間変化の傾きの間の相関関係を回帰分析し、その結果得られる関数をもちいる。このような相関関係を変換式としてプログラミングし、記憶手段16に記憶させることによって、微生物数が未知の溶液を測定する場合にも、コンダクタンスの時間変化の傾きの値を代入することにより試料液中の微生物数を算出できる。
【0038】
微生物数算出ステップが完了すると、演算部14は結果を制御部15に渡し、これを受けた制御部15は直ちに表示部5へ測定結果を出力し、測定結果出力ステップを完了する。
【0039】
ここで、測定開始時に第一のボタン2が押下された場合について、微生物数の算出から結果表示までの流れについて説明する。
【0040】
第一のボタン2が入力された場合、制御部15は第一の測定時間31を読み出すが、第一の測定時間31として、15秒間が予め記憶手段16に記憶されている。30秒間測定を行った場合の微生物濃度別コンダクタンス変化を図6に示す。溶液中の微生物数が1mlあたり10の7乗cells場合、15秒間の測定結果から算出される傾きは、最小二乗法を用いると、4.61μS/secとなる。同様に、10の6乗cellsの場合は0.462μS/sec、10の5乗cellsの場合はほぼ0となり、10の6乗cellsまでは比例関係が保たれているが、それ以下はS/Nの関係で30秒間で傾きを算出するのは困難になる。従って、第一のボタン2が入力された場合、0.462μS/sec未満の傾きであった場合は、結果表示は「10の6乗cells未満」となる。これは、測定実施者が、溶液中の微生物数が10の6乗cells以上であるか短時間で測定したいという場合に有効な測定方法である。
【0041】
次に、第二のボタン3が入力された場合、制御部15は第二の測定時間32を読み出すが、第二の測定時間32として、30分間が予め記憶手段16に記憶されている。溶液中の微生物数が1mlあたり10の5乗cellsの場合、30秒間の測定結果から算出される傾きは、最小二乗法を用いると、0.045μS/secとなる。同様に、10の4乗cellsの場合は0.0046μS/sec、10の3cellsの場合はほぼ0となり、10の4乗cellsまでは比例関係が保たれているが、それ以下はS/Nの関係で30分間で傾きを算出するのは困難になる。従って、第二のボタン3が入力された場合、0.0046μS/sec未満の傾きであった場合は、結果表示は「10の4乗cells未満」となる。これは、測定実施者が、溶液中の微生物数が10の4乗cellsまでの微生物数を精度よく測定したいという場合に有効な測定方法である。
【0042】
本実施の形態では、第一の測定時間31を15秒間、第二の測定時間32を30分間としたが、この時間に限定されるものではない。更に高濃度の微生物を短時間に測定したい場合は、測定時間を15秒以下にすることもできるし、更に低濃度の微生物を感度良く測定したい場合には、測定時間を1時間以上などとすればよい。これらの測定時間は、第一の測定時間31および第二の測定時間32にそれぞれ設定されても良いし、新たに第三の測定時間および入力ボタンを設けても良い。
【0043】
このように、実施の形態1では、複数の測定条件入力手段を設けることにより、微生物の測定を実施する者が、予め要求する測定感度および測定時間を満たすような測定方法を指定でき、目的に則した微生物数測定を実現することができる。
【0044】
(実施の形態2)
本発明の微生物数測定装置の実施の形態2について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、前述した実施の形態1と重複する部分については説明を割愛する。
【0045】
図8は本発明の実施の形態2における微生物数測定装置の概略図である。4は微生物数の測定を実施する者が任意に設定した条件にて測定を開始するための第三のボタン、6は任意の測定条件を入力するための設定値入力手段である。
【0046】
測定に先立ち、測定実施者は、設定値入力手段6を用いて任意の測定条件を入力する(測定条件設定ステップ)。設定値入力手段6は具体的には、複数のタクトスイッチから構成され、上下左右の矢印キーや数字入力キーなど複数の入力手段から構成される。測定実施者は設定値入力手段6を用いて、任意の測定時間を入力する。本実施の形態2では、記憶手段16としてFLASHメモリなど書き換え可能なメモリが用いられており、入力された測定時間が記憶手段16中に記憶される。記憶手段16は書き換え可能であるため、入力された測定時間の変更も可能である。
【0047】
入力される設定値は、要求する感度領域(例えば、1mlあたり10の6乗cells以上など)でもよい。その場合、指定された感度領域と測定時間の対応関係を予め記憶手段16に記憶しておき、入力された感度領域に応じて適切な測定時間を制御部15が選択すれば良い。
【0048】
測定条件設定ステップが完了すると、測定条件選択ステップに移る。ここで、測定実施者が第三のボタンを押下すると、制御部15は測定条件設定ステップにて入力された測定時間を記憶部16より読み出し、その後、制御部15は直ちに泳動電源回路12および測定部13に測定開始の信号を送って測定の開始を指令する。以上が測定条件選択ステップとなる。以後のステップについては実施の形態1と同様のため、省略する。
【0049】
このように、本実施の形態2では、測定実施者が任意に測定の条件を設定でき、要求する測定感度および測定時間を満たすような測定方法を指定でき、目的に則した微生物数測定を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上のように、本発明にかかる微生物数測定装置および微生物数測定方法によれば、微生物の測定を実施する者が予め要求する測定感度および測定時間を満たすような測定方法を指定でき、目的に則した微生物数測定を実現できるという効果を有し、要求される測定感度や測定時間が広範囲に渡る、汎用的な微生物検査検査に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】第一の微生物数測定装置の概略図
【図2】微生物数測定装置の構成ブロック図
【図3】誘電泳動電極の概略図
【図4】第一のコンダクタンス時間変化図
【図5】記憶手段の内部構造を仮想的に示す図
【図6】第二のコンダクタンス時間変化図
【図7】第三のコンダクタンス時間変化図
【図8】第二の微生物数測定装置の概略図
【符号の説明】
【0052】
1 微生物数測定装置
2 第一のボタン
3 第二のボタン
4 第三のボタン
5 表示手段
6 設定値入力手段
10 セル
11 誘電泳動電極
12 泳動電源回路
13 測定部
14 演算部
15 制御部
16 記憶手段
17 複数の入力手段
21 一方の極
22 他方の極
23 ギャップ
31 第一の測定時間
32 第二の測定時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物含有の液体を導入することができ内部に電極を備えたセルと、泳動電源回路と、電極間に集中した微生物に起因するインピーダンスを測定する測定部と、前記測定部の測定結果から微生物が電極間に集中したことに起因するインピーダンス時間変化の初期傾きを演算して微生物数を算出する演算部と、制御部と、複数の入力手段とを備え、前記複数の入力手段によって入力された命令に応じて制御手段がインピーダンス測定時間を変更することを特徴とする微生物数測定装置。
【請求項2】
少なくともインピーダンス測定時間を入力する設定値入力手段を備え、制御部が記憶手段を有し、前記記憶手段にインピーダンス測定時間が書き換え可能に記憶され、前記制御手段が、前記設定値入力手段で入力され記憶手段に記憶されたインピーダンス測定時間で測定を行うことを特徴とする請求項1に記載の微生物数測定装置。
【請求項3】
入力手段によって測定条件を選択する測定条件選択ステップと、セル中に誘電泳動力を発生させ電極近傍に微生物を集中させるための交流電圧を前記電極間に印加する泳動電圧印加ステップと、電極間に集中した微生物に起因するインピーダンスを測定するインピーダンス測定ステップと、前記測定ステップの測定結果から微生物が電極間に集中したことに起因するインピーダンス時間変化の初期傾きを演算して微生物数を算出する微生物数算出ステップと、算出した微生物数を結果出力する測定結果出力ステップとを有し、測定条件選択ステップで選択された測定条件に応じて、インピーダンス測定ステップのインピーダンス測定時間を変更することを特徴とする微生物数測定方法。
【請求項4】
測定条件設定ステップを有し、測定条件設定ステップで設定されたインピーダンス測定時間でインピーダンス測定を行うことを特徴とする請求項3に記載の微生物数測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−195426(P2007−195426A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−15913(P2006−15913)
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】