説明

微生物検出用抗体

【課題】種特異的であり、かつ同一種内のすべての血清型を検出できる微生物検出用抗体とその作製法、微生物検出方法及び微生物検出用試薬キットを提供する。
【解決手段】各種の微生物について細胞内の同一機能分子、特にリボソーム蛋白質、とりわけリボソーム蛋白質Ribosomal Protein L7/L12に対する抗体であって、対象微生物に特異的に反応する抗体。この抗体を用いて微生物を検出する。医薬工業品、特に細菌を中心とする微生物感染症のための診断薬として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の微生物、特に細菌の検出に有用な抗体、それを用いた微生物検出方法、微生物検出用試薬キット及び微生物検出用特異的抗体の作製法に関する。
本発明は、医薬品工業、特に細菌を中心とする微生物感染症のための診断薬の製造に有効に利用される。
【背景技術】
【0002】
微生物感染症の診断は通常感染部位などでの原因菌の検出か、血清、体液中の原因菌に対する抗体の検出により確定される。特に、この診断は原因菌の検出が患者への迅速な治療を可能にする意味で重要である。
感染症原因菌の検出には原因菌の分離培養を経て、その生化学的性状をもとに菌の同定を行う培養同定法、原因菌特異的遺伝子をもとにPCR法などにより増幅し検出する遺伝子診断法、原因菌の表面抗原マーカーとの抗体の特異反応を利用して原因菌検出を行う免疫的手法に大別できるが、培養同定法、遺伝子診断法は検出結果を得るまでに時間がかかり、短時間にしかも高感度に原因菌を検出し、迅速かつ適切な患者への治療につながる点で免疫法による診断が汎用されている。
従来免疫法による感染症原因菌の検出には、菌種によって様々なマーカー抗原と抗体の組み合わせが使われている。
例えばクラミジア(Chlamydia)属の場合、属特異的抗原であるリポ多糖(LPS)の抗原決定基としての存在が知られており(非特許文献1:Stephens,R.ら:J.Immunol.,128:1083−89,1982、Caldwell.M.D.:Inf.Immun.,44:306−14,1984)、様々な診断用キットにおいて特にクラミジア トラコマチス(Chlamydia trachomatis)の検出用試薬抗体に利用されている。
また、Chlamydia属の外膜主要蛋白質(MOMP;Major Outer Membrane Protein)に対するモノクローナル抗体についてEllena M.Petersonら:Infection and Immunity,59(11),4147−4153,1991(非特許文献2)及びByron E.Batteigerら:Infection and Immunity,53(3),530−533,1986(非特許文献3)がそれぞれ報告している。
特開昭63−298号公報(特許文献1)は、約43キロダルトンのマイコプラズマ ニューモニア(Mycoplasma pneumoniae)の膜抗原蛋白質に対するモノクローナル抗体を用いたウエスタンブロット法をベースとする免疫検出法が記載されている。
また、特開昭62−148859号公報(特許文献2)(特公平6−64065号公報)には、ヘモフイルス インフルエンザ(Haemopohilus influenzae)の外膜蛋白質に対するポリクローナル抗体の作製法と作製した抗体を用いた診断方法について記載されている。
英国特許出願2172704号明細書(特許文献3)には、ナイセリア ゴノロエ(Neisseria gonorrhoeae)株BS4(NCTC 11922)の外膜小胞のコール酸ナトリウム抽出液から単離された約20キロダルトンの蛋白質について記載されており、この物質を用いてハイブリドーマを調製することが開示されており、またEP 419238A1号(特許文献4)にはNeisseria gonorrhoeae培養菌体を免疫源として作製され、約14キロダルトンの蛋白質に結合可能なモノクローナル抗体とその作製方法について記載されている。また、同じNeisseria gonorrhoeaeについてカナダ特許出願1220147号明細書(特許文献5)にはLPSに対するモノクローナル抗体を用いる検出法について記載されている。
しかし、これらの抗体および検出法では、微生物に対する種特異性が十分ではなく、また同一種に存在する複数の表面抗原による血清型の全てをカバーし検出することが困難であるなどの問題点がある。
またこれらの従来の技術に用いられているマーカー抗原は各種微生物細胞において普遍的に存在する同一機能分子(例えば、同一機能の蛋白質、LPSあるいは表面多糖成分)が微生物の進化の過程で菌種ごとに変化してきた分子をマーカーとして検出するというような統一的なものでなく、1つの分子を基準として菌種間で抗原性の差を検出しようという発想に基づいた免疫診断法はいまだに知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−298号公報
【特許文献2】特開昭62−148859号公報
【特許文献3】英国特許出願2172704号明細書
【特許文献4】EP 419238 A1号
【特許文献5】カナダ特許出願1220147号明細書
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Stephens,R.ら:J.Immunol.,128:1083−89,1982、Caldwell.M.D.:Inf.Immun.,44:306−14,1984
【非特許文献2】Ellena M.Petersonら:Infection and Immunity,59(11),4147−4153,1991
【非特許文献3】Byron E.Batteigerら:Infection and Immunity,53(3),530−533,1986
【発明の概要】
【0005】
本発明は、理想的な微生物の検出・免疫診断法を可能とする統一マーカー抗原としてそれぞれの微生物について同一の分子に対する抗体、特に検出したい全ての微生物について細胞内の同一機能成分分子を用いて微生物の進化の過程で変化が生じてきた部分に対する抗体、該抗体を用いた特異的でかつほぼ全ての血清型をカバーできる微生物検出方法、微生物検出用試薬キット及び微生物検出用特異抗体の作製方法を提供しようとするものである。
【0006】
本発明者らは、全ての微生物において同一の機能が保存されている蛋白質を有用な抗原蛋白質として見出した。通常、このような蛋白質の構造変化は極めて少ないと予想される。しかし驚くべきことに、該蛋白質の抗原エピトープは微生物の種あるいは属特異的であり、該蛋白質に対する抗体は、微生物の種あるいは属特異的な識別に用いることが可能な多様性を持つと共に、対象となる微生物についてはその全ての血清型を検出しうるものであることが見出されたのである。
【0007】
本発明者らは全ての微生物細胞に存在し、しかもそのアミノ酸構造が微生物間である程度の相違点をもつ細胞内分子、特にリボソーム蛋白質の一種であるリボソーム蛋白質L7/L12(Ribosomal Protein L7/L12)に着目した。Ribosomal Protein L7/L12は蛋白質合成に必須なリボソーム蛋白質としてその存在が知られている分子量約13キロダルトンの蛋白質であり、特に大腸菌、枯草菌などいくつかの微生物でその全アミノ酸配列の解析が進んでおり、微生物間で50%〜65%程度のアミノ酸配列の相同性が確認されている。
【0008】
本発明者らはこの分子が微生物間で類似しているにもかかわらずその一部に各微生物固有のアミノ酸配列等の構造部分を持つことに着目し、該蛋白質に対する抗体を利用することで様々な微生物に特異的でかつ同一菌種内の全ての血清型について検出が可能であることを見いだした。具体的には例えばHaemophilus influenzae、ストレプトコッカス ニューモニア(Streptococcus pneumoniae)及びNeisseria gonorrhoeaeについてその特異抗体を用いた微生物種の免疫法診断技術の開発を試みた結果、個々の微生物において当該蛋白質特異的な抗体が取得でき、当該抗体を用いることによりそれぞれの菌について特異的な検出が可能であるということを見いだしたことにより本発明を完成した。
【0009】
従って本発明は、次のとおりの微生物検出用抗体、それを用いる微生物検出方法及び微生物検出用試薬キット及び微生物検出用特異的抗体の作製法に関する。
1)微生物のリボソーム蛋白質に対する抗体であって、当該微生物に特異的に反応する抗体、
2)微生物のリボソーム蛋白質がRibosomal Protein L7/L12である、1)に記載の抗体、
3)微生物が性行為感染症(STD,Sexually transmitted disease)原因微生物である1)または2)に記載の抗体、
4)微生物が呼吸器系感染症の原因微生物である1)または2)に記載の抗体、
5)呼吸器系感染症の原因微生物のがHaemophilus influenzaeである4)に記載の抗体、
6)呼吸器系感染症の原因微生物がStrptococcus pneumoniaeである4)に記載の抗体、
7)性行為感染症(STD,Sexually transmitted disease)微生物がNeisseria gonorrhoeaeである3)に記載の抗体、
8)Neisseria gonorrhoeaeのRibosomal Protein L7/L12蛋白質に対する抗体であって、配列表配列番号:22のアミノ酸配列において115番目のアラニンを含む5から30アミノ酸の長さの連続する部分アミノ酸配列を認識する抗体である7)に記載の抗体、
9)各種の微生物について同一機能の細胞内分子に対する抗体を用いる微生物検出方法、
10)各種の微生物について1)から8)のいずれかに記載の抗体を用いる微生物検出方法、
11)各種の微生物について同一機能の細胞内分子に対する抗体を用いる微生物検出用試薬キット、
12)各種の微生物について1)から8)のいずれかに記載の抗体を用いる微生物検出用試薬キット、
13)遺伝子操作手法によりあるいは微生物からの単離精製により得られた微生物のRibosomal Protein L7/L12蛋白質、その部分ペプチド、またはその部分ペプチドに相当する合成ペプチドを免疫源とする1)から8)のいずれかに記載の抗体の作製方法。
【0010】
以下本発明について詳細に説明する。
配列表において配列番号1及び2はHaemophilus influenzaeのRibosomal Protein L7/L12遺伝子のDNA配列及び対応するアミノ酸配列である。配列番号3及び4はヘリコバクター ピロリ(Helicobacter pylori)のRibosomal Protein L7/L12遺伝子のDNA配列及び対応するアミノ酸配列である。配列番号5及び6はStreptococcus pneeumoniaeのRibosomal Protein L7/L12遺伝子のDNA配列及び対応するアミノ酸配列である。配列番号7及び8はNeisseria gonorrhoeaeのRibosomal Protein L7/L12遺伝子のDNA配列及び対応するアミノ酸配列である。配列番号9及び10はナイセリア メニンギチヂス(Neisseria meningitidis)のRibosomal Protein L7/L12遺伝子のDNA配列及び対応するアミノ酸配列である。配列番号11及び12はHaemophilus influenzaeからのRibosomal Protein L7/L12遺伝子の取得に用いたPCRのプライマーDNAである。配列番号13及び14はStreptococcus pneumoniaeからのRibosomal Protein L7/L12遺伝子の取得に用いたPCRのプライマーDNAである。配列番号15及び16はNeisseria gonorrhoeaeからのRibosomal Protein L7/L12遺伝子の取得に用いたPCRのプライマーDNAである。配列番号17及び18はHaemohilus influenzaeから取得したRibosomal Protein L7/L12遺伝子のDNA配列及び対応するアミノ酸配列である。配列番号19及び20はStreptococcus pneumoniaeから取得したRibosomal Protein L7/L12遺伝子のDNA配列及び対応するアミノ酸配列である。配列番号21及び22はNeisseria gonorrhoeaeから取得したRibosomal Protein L7/L12遺伝子のDNA配列及び対応するアミノ酸配列である。
【0011】
なお、配列表に記載されたアミノ酸配列の左端および右端はそれぞれアミノ基(以下、N末)およびカルボキシル基末端(以下、C末)であり、また塩基配列の左端および右端はそれぞれ5'末端および3'末端である。
【0012】
また、本発明で述べられる遺伝子操作の一連の分子生物学的な実験は通常の実験書の記載方法によって行うことができる。前記の通常の実験書としては、例えばMolecular Cloning,A labolatory manual,Cold Spring Harber Laboratory Press,Sambrook,J.ら(1989)を挙げることができる。
【0013】
本発明において微生物は、細菌、酵母、カビ、放線菌、リケッチア類などの微生物類全般をさすが、特に微生物感染症の診断において問題となるのは細菌の場合が多い。
本発明において、「微生物に特異的に反応する抗体」とは、微生物の種あるいは属に特異的に反応する抗体をさすが、微生物感染症の診断においては微生物の種に特異的に反応する抗体が特に有用となる。
【0014】
本発明において、STDの原因微生物とは、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、クラミジア(Chlamydia trachomatis)、カンジダ菌(Candida albicans)、梅毒菌(Tteponema pallidum)、ウレアプラズマ菌(Ureaplasma urealyticum)などをさすがこれらの微生物に限定されるものではない。
【0015】
本発明において、呼吸器系感染症の原因微生物とは、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)、肺炎クラミジア(Chlamydia pneumoniae)、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)、肺炎かん菌(Klebsiella pneumoniae)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、A群溶連菌(Streptococcus sp.GroupA)結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、レジオネラ菌(Legionella pneumophila)、アスペルジルス属真菌(Aspergillus spp.)などをさすがこれらの微生物に限定されるものではない。
【0016】
本発明において抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体をさし、該リボソーム蛋白質の全長あるいはその部分ペプチドを用いて作成することができる。抗体を作成するためのペプチドの長さは特に限定されないがRibosomal Protein L7/L12蛋白質に対する抗体の場合、この蛋白質を特徴づけられる長さがあれば良く、好ましくは5アミノ酸以上、特に好ましくは8アミノ酸以上のペプチドを用いれば良い。このペプチドあるいは全長蛋白質をそのまま、またはKLH(keyhole−limpet hemocyanin)やBSA(bovine serum albumin)といったキャリア蛋白質と架橋した後必要に応じてアジュバントとともに動物へ接種せしめ、その血清を回収することでRibosomal Protein L7/L12蛋白質を認識する抗体(ポリクローナル抗体)を含む抗血清を得ることができる。また抗血清より抗体を精製して使用することもできる。接種する動物としてはヒツジ、ウマ、ヤギ、ウサギ、マウス、ラット等であり、特にポリクローナル抗体作製にはヒツジ、ウサギなどが好ましい。また、ハイブリドーマ細胞を作製する公知の方法によりモノクローナル抗体を得ることも可能であるが、この場合はマウスが好ましい。また該蛋白質の全長またはアミノ酸5残基以上、望ましくは8残基以上の部分ペプチドをGST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)などと融合させたものを精製して、または未精製のまま、抗原として用いることもできる。成書(Antibodies a laboratory manual,E.Harlow et al.,Cold Spring Harbor Labolatory)に示された各種の方法ならびに遺伝子クローニング法などにより分離されたイムノグロブリン遺伝子を用いて、細胞に発現させた遺伝子組み換え抗体によっても作製することができる。
本発明のマーカー抗原として用いることができるRibosomal Protein L7/L12蛋白質に対する抗体は、以下の3つの方法あるいはその他の類似の方法によって取得することができるが、これらの方法に限定されるものではない。
【0017】
a)Ribosomal Protein L7/L12の遺伝子配列およびアミノ酸配列が既知の微生物については、他の微生物における該蛋白質のアミノ酸配列との類似性が少ない領域についてアミノ酸数5個から30個ほどのペプチド断片を合成し、それを免疫原としてポリクローナル抗体、あるいはモノクローナル抗体を作製することにより目的の抗体を取得することができる。
【0018】
また、既知の該遺伝子の両端部位におけるDNA配列をプローブとしたPCR手法による遺伝子増幅、相同部分配列を鋳型プローブとしたハイブリダイゼーション法など通常の遺伝子操作手法を用いることにより該遺伝子の全長配列を取得することができる。
【0019】
その後他の蛋白質遺伝子とのフュージョン遺伝子などを構築し、大腸菌等を宿主として公知の遺伝子導入手法により宿主内に該当フュージョン遺伝子を挿入し大量に発現させた後にフュージョン蛋白質として用いた蛋白質に対する抗体アフィニティーカラム法などにより発現蛋白質を精製することにより目的とする蛋白質抗原を取得することができる。この場合Ribosomal Protein L7/L12の全長蛋白質が抗原となるため微生物間で保存されているアミノ酸部分に対する抗体を取得しても本発明の目的に合致しない。従って、本法によって取得した抗原に対しては公知の手法によりモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを取得し、該当する微生物とのみ反応する抗体を産生するクローンを選択することにより目的の抗体を取得することができる。
【0020】
b)Ribosomal Protein L7/L12のアミノ酸配列が未知の微生物については1つにはRibosomal Protein L7/L12のアミノ酸配列が菌種間で50〜60%相同であることより、そのアミノ酸配列の相同部分の配列を基にしてPCR法による特定配列部分の遺伝子増幅や相同部分配列を鋳型プローブとしたハイブリダイゼーション法など通常の遺伝子操作手法を用いることにより該蛋白質遺伝子を容易に取得することができる。
【0021】
その後他の蛋白質遺伝子とのフュージョン遺伝子などを構築し、大腸菌等を宿主として公知の遺伝子導入手法により宿主内に該フュージョン遺伝子を挿入し大量に発現させた後にフュージョン蛋白質として用いた蛋白質に対する抗体アフィニティーカラム法などにより発現蛋白質を精製することにより目的とする蛋白質抗原を取得することができる。この場合Ribosomal Protein L7/L12の全長蛋白質が抗原となるため微生物間で保存されているアミノ酸部分に対する抗体を取得しても本発明の目的に合致しない。従って、本法によって取得した抗原に対しては公知の手法によりモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを取得し、該当する微生物とのみ反応する抗体を産生するクローンを選択することにより目的の抗体を取得することができる。
【0022】
c)あるいはRibosomal Protein L7/L12のアミノ酸配列が未知な場合の別な方法として、既知のRibosomal Protein L7/L12のアミノ酸配列のうち微生物間で保存されている共通配列部分に相当する5〜30アミノ酸の合成ペプチドを作製し、そのペプチド配列に対し公知の方法でポリクローナル抗体あるいはモノクローナル抗体を作製し、該抗体を用いたアフィニティーカラムクロマトによって目的の微生物細胞破砕液を精製することにより高度に精製されたRibosomal Protein L7/L12蛋白質を取得することができる。
【0023】
蛋白質の精製度が不足している場合は公知の精製手法であるイオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、ゲル濾過などの手法により精製した後作製した抗体によるウェスタンブロットなどの方法によりRibosomal Protein L7/L12蛋白質の溶出画分を同定し精製蛋白質を得ることができる。得られた精製Ribosomal Protein L7/L12蛋白質抗原を基にして公知の方法によりハイブリドーマあるいはポリクローナル抗体を取得しb)と同様に目的の微生物に特異的に反応するハイブリドーマあるいはポリクローナル抗体を選択することにより目的の抗体を取得することができる。
【0024】
前記a)〜c)などの方法によって取得した本発明における各種微生物特異的な抗体は例えばポリスチレンラテックス粒子上に該抗体を吸着させた凝集反応、マイクロタイタープレート中で行う公知技術であるELISA法、既存のイムノクロマト法、着色粒子もしくは発色能を有する粒子、または酵素もしくは蛍光体でラベルされた該抗体とともに捕捉(capture)抗体で被覆した磁気微粒子などを用いるサンドイッチアッセイなど既知の全ての免疫測定手法に利用することにより種々の目的の微生物に特異的な検出用試薬キットを提供することができる。
【0025】
抗体を用いる微生物検出方法とは、例えばポリスチレンラテックス粒子上に該抗体を吸着させた凝集反応、マイクロタイタープレート中で行う公知技術であるELISA法、既存のイムノクロマト法、着色粒子もしくは発色能を有する粒子、または酵素もしくは蛍光体でラベルされた該抗体とともにcapture抗体で被覆した磁気微粒子などを用いるサンドイッチアッセイなどの既知の免疫測定手法を利用する検出方法に相当する。
【0026】
また、特に抗体を用いる有用な微生物検出方法として特表平7−509565号公報に記載されているシリコン、窒化珪素などにより形成された光学薄膜上で抗体反応をおこない光干渉原理等により検出するいわゆるオプティカルイムノアッセイ(OIA,Optical Immunoassay)などが高感度な検出方法として有用である。
【0027】
また該検出方法において必要となる微生物からの細胞内マーカー抗原の抽出方法としては、トリトンX−100(Triton X−100)、ツイーン−20(Tween−20)をはじめとする種々の界面活性剤を用いた抽出試薬による処理法、適当なプロテアーゼなどの酵素を用いる酵素処理法、物理的方法による微生物細胞の破砕をはじめ既知の細胞構造の破砕手法が用いられうるが、界面活性剤等の組み合わせにより微生物ごとに試薬による最適な抽出条件を設定することが望ましい。
【0028】
また、本発明における、抗体を用いる微生物検出用試薬キットとは、当該検出方法を用いた検出用試薬キットに相当する。
【0029】
例えば、肺炎、気管支炎、髄膜炎などの原因菌として診断意義の高いHaemphilus influenzaeの特異的抗体を取得する場合、本菌のRibosomal Protein L7/L12蛋白質のアミノ酸配列及びDNA配列はデータベース等の記載により公知である。Haemophilus influenzaeのRibosomal Protein L7/L12のアミノ酸配列及びDNA配列を配列表配列番号:1及び2に示す。
【0030】
従って本菌の場合同様にRibosomal Protein L7/L12蛋白質のアミノ酸配列が公知である、例えば配列表配列番号:3及び4に示すHelicobacter pyloriの同蛋白質などとのアミノ酸配列を比較しその相同性の低い部分について5〜30アミノ酸の合成ペプチドを合成しそのペプチドに対するHaemophilus influenzae特異的なポリクローナル抗体あるいはモノクローナル抗体を作製することができる。
【0031】
特にポリクローナル抗体の場合、免疫した動物の抗血清をProtein Aカラム等で精製しIgG画分を取得した後、さらに動物の免疫に用いた合成ペプチドによるアフィニティー精製を実施することが望ましい。
【0032】
さらにHaemophilus influenzaeのRibosomal Protein L7/L12蛋白質のDNA配列からN末端、C末端の配列を元にしたPCRプライマー、例えば配列表配列番号:11及び12に示すPCRプライマーを設計し、その相同性を利用して、公知の方法に従い、Haemophilus influenzaeの培養菌体より抽出したゲノムDNAを材料としてPCR法などにより増幅してくるDNA断片を取得し、その断片のDNAシークエンス情報を解析することによりHaemophilus influenzaeのRibosomal Protein L7/L12蛋白質の全長遺伝子を取得することができる。
【0033】
取得したHaemophilus influenzaeのRibosomal Protein L7/L12遺伝子は、例えばGSTなどとフュージョン蛋白質遺伝子を構成し、適当な発現用プラスミドを用いて発現ベクターを構築後、大腸菌等を形質転換して該蛋白質を大量発現させうる。形質転換した大腸菌を適当量培養し、回収した菌体破砕液をGSTを用いたアフィニティカラムで精製することにより、Haemophilus influenzaeのRibosomal Protein L7/L12蛋白質とGSTとのフュージョン蛋白質が得られる。この蛋白質をそのまま、あるいはGST部分をプロテアーゼなどにより切断後、抗原蛋白質として公知の手法により、複数のハイブリドーマを確立し、Haemophilus influenzae菌体あるいは菌体破砕液またはHaemophilus influenzaeのRibosomal Protein L7/L12蛋白質に特異的な反応を示す抗体を選択することにより目的の特異的モノクローナル抗体を取得することも可能である。
【0034】
またHaemophilus influenzaeと同様に呼吸器感染症原因菌として診断意義の高いStreputococcus pneumoniaeについてもRibosomal Protein L7/L12蛋白質のアミノ酸配列及びDNA配列はデータベース等の記載により公知である。Streutococcus pneumoniaeのRibosomal Protein L7/L12のアミノ酸配列及びDNA配列を配列表配列番号:5及び6に示す。
【0035】
従って本菌の場合もHaemophilus influenzaeの場合と同様にStreutococcus pneumoniaeのRibosomal Protein L7/L12蛋白質のDNA配列からN末端、C末端の配列を元にしたPCRプライマー、例えば配列表配列番号:13及び14に示すPCRプライマーを設計し、以後全く同様の手法を用いてStreutococcus pneumoniae特異的なポリクローナル抗体あるいはモノクローナル抗体を取得することが可能である。
【0036】
Streutococcus pneumoniae特異的なモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマAMSP−2を日本国通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に平成11年7月28日に受託番号:FERM BP−6807として国際寄託した。
【0037】
また例えば淋病の原因菌でありSTDの代表的な原因菌としてその診断意義が認知されているNeisseria gonorrhoeaeの場合、そのDNA、アミノ酸配列の大部分は最近米国オクラホマ大学でNeisseria gonorrhoeaeゲノムプロジェクトにおいて決定され、該菌のDNA配列がインターネット上で公開されている。
【0038】
公知のRibosomal Protein L7/L12蛋白質のDNA配列の一部配列を用いて類似配列DNA断片の有無を検索したところRibosomal Protein L7/L12遺伝子に該当するDNA配列が存在し、その全DNA配列情報を取得できた。このNeisseria gonorrhoeaeのRibosomal Protein L7/L12遺伝子の全塩基配列及び対応するアミノ酸配列を配列表配列番号:7及び8に示す。
【0039】
従ってHaemophilus influenzaeStreputococcus pneumoniaeの場合と同様にNeisseria gonorrhoeaeのRibosomal Protein L7/L12蛋白質のDNA配列からN末端、C末端の配列を元にしたPCRプライマー、例えば配列表配列番号:15及び16に示すPCRプライマーを設計し、以後全く同様の手法によりNeisseria gonorrhoeaeのRibosomal Protein L7/L12蛋白質全部あるいは一部を抗原とするNeisseria gonorrhoeae特異的な目的の抗体を得ることが可能である。
【0040】
特に、Neisseria gonorrhoeaeについては同じNeisseria属に属するNeisseria meningitidisのRibosomal Protein L7/L12の蛋白質遺伝子に該当する遺伝子配列がインターネット上で公開されており容易に入手可能である。このNeisseria meningitidisのRibosomal Protein L7/L12遺伝子の全塩基配列および対応するアミノ酸配列を配列表配列番号:9及び10に示す。ここでNeisseria gonorrhoeaeNeisseria meningitidisのRibosomal Protein L7/L12遺伝子の全塩基配列を比較するとアミノ酸配列の異なる部分はN末端から115番目のアミノ酸がNeisseria gonorrhoeaeはアラニンであるのに対してNeisseria meningitidisの場合はグルタミン酸であるただ1個のアミノ酸の違いだけである。従って、Neisseria gonorrhoeaeを種特異的に検出することができるNeisseria gonorrhoeaeのRibosomal Protein L7/L12蛋白質抗体は該当するRibosomal Protein L7/L12蛋白質のN末端から115番目のアラニン及びそれを含むアミノ酸領域をエピトープとして認識する抗体であると断定できる。
【0041】
本発明に基づき作製された抗体は、公知の測定手法であるポリスチレンラテックス粒子上に該抗体を吸着させた凝集反応、マイクロタイタープレート中で行う公知技術であるELISA法、既存のイムノクロマト法、着色粒子もしくは発色能を有する粒子、または酵素もしくは蛍光体でラベルされた該抗体とともにcapture抗体で被覆した磁気微粒子などを用いるサンドイッチアッセイなど既知の全ての免疫測定手法に利用できる。
【0042】
また本発明に基づき作製された抗体は全ての免疫測定手法において当該抗原蛋白質を固相あるいは液相中で捕獲するcapture抗体として機能しうると同時にパーオキシダーゼやアルカリフォスファターゼなどの酵素を公知の方法により修飾することによりいわゆる酵素標識抗体としても機能しうる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下の例は本発明を具体的に説明するためのものであって本発明について何らその範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0044】
Haemophilus influenzaeからのRibosomal Protein L7/L12遺伝子のクローニング
Haemophilus influenzae ATCC9334(IID984)株(東京大学医科学研究所より分譲、購入)をチョコレート寒天培地上に適当量植菌した後、CO2インキュベーター中で37℃、CO20.5%条件で24時間培養する。生育したコロニーを最終的に5×109CFU/ml前後になるようにTE Buffer(和光純薬工業社製)に懸濁する。このうち約1.5mlを微量遠心チューブに移し取り10000rpmで2分間遠心し、上澄みを棄てる。沈殿部分を567μlのTEBufferに再懸濁する。さらに30μlの10%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)と3μlの20mg/ml Proteinase K溶液を加えて良く混合し、37℃で1時間インキュベートする。次に10%のセチルトリメチルアンモニウムブロマイド/0.7M NaCl溶液を80μl追添し、よく混合した後65℃で10分間インキュベートする。次に、体積比24/1のクロロホルム−イソアミルアルコール混合液を700μl加えよく攪拌する。この溶液を微量遠心機で12000rpm、5分間(4℃コントロール下)遠心処理した後、水層画分を新しい微量遠心管に移す。そこに0.6倍量のインプロパノールを加えチューブをよく振ってDNAの沈殿を形成する。白いDNA沈殿をガラス棒ですくって1mlの70%エタノール(−20℃冷却したもの)が入った別の微量遠心管に移す。
【0045】
次に10000rpmで5分間遠心処理し、上澄みを静かに除去した後さらに1mlの70%エタノールを加えて再び5分間遠心する。再び上澄みを除去した後沈殿を100μlのTE Bufferに溶解しDNA溶液を得た。このゲノムDNA溶液の濃度をMolecular Cloning,A laboratory manual,1989,Eds.Sambrook,J.,Fritsch,E.F.,and Maniatis,T.,Cold Spring harbor Laboratory PressのE5,Spectrophotometric Determination of the Amount of DNA or RNAに従って定量した。
【0046】
このゲノムDNAのうち10ngを用いてPCR(polymerase chain reaction)を行った。PCRはTaqポリメラーゼ(宝酒造社製、コードR001A)を用いた。酵素に添付のバッファーを5μl、酵素に添付のdNTP mixture 4μlと配列表配列表番号:11に示した合成オリゴヌクレオチドA及び配列表配列表番号:12に示したオリゴヌクレオチドBをそれぞれ260pmol加え、最終容量50μlとした。
【0047】
この混合物を、TaKaRa PCR Thermal Cycler 480を用いて、95℃ 1分、50℃ 2分、72℃ 3分を5サイクル行った後、95℃ 1分、60℃ 2分、72℃ 3分を25サイクル行った。このPCR産物の一部を1.5%アガロースゲル中で電気泳動を行い、エチジウムブロマイド(日本ジーン社製)にて染色後、紫外線下で観察し、約400bpのcDNAが増幅されていることを確認した。さらに制限酵素BamHIおよびXhoIで切断処理後、1.5%アガロースゲル中で電気泳動を行いエチジウムブロマイド染色後約370bpのバンドをゲルから切り出してSuprec01(宝酒造社製)で精製後、市販のベクターであるpGEX−4T−1(Pharmacia社製)に組み込んだ。同ベクターは目的の遺伝子断片を適当な制限酵素サイトに組み込むことによりGST蛋白質とのフュージョン蛋白質を発現しうる目的分子の発現ベクターとして機能することができる。
【0048】
具体的には、ベクターpGEX−4T−1と先のDNAとをそのモル比が1:3となるように混ぜ合わせて、T4 DNAリガーゼ(Invitrogen社製)にてベクターにDNAを組み込んだ。DNAが組み込まれたベクターpGEX−4T−1を大腸菌One Shot Competent Cells(Invitrogen社製)に遺伝子導入し、アンピシリン(Sigma社製)を50μg/ml含むL−Broth(宝酒造社製)半固型培地のプレートに蒔き、12時間程度37℃に放置し、現れてきたコロニーを無作為選択し、同濃度のアンピシリンを含むL−Broth液体培地2mlに植え付け、8時間程度37℃で振盪培養し、菌体を回収し、ウィザードミニプレップ(Promega社製)を用いて添付の説明書に従ってプラスミドを分離し、このプラスミドを制限酵素BamHI/XhoIにて消化して、約370bpのDNAが切り出されてくることで該PCR産物が組み込まれていることを確認し、確認されたクローンについて、組み込まれているDNAの塩基配列決定を行った。
【0049】
挿入DNA断片の塩基配列の決定は、Applied Biosystems社製の蛍光シークエンサーを用いて実施した。シークエンスサンプルの調製はPRISM,Ready Reaction Dye Terminator Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems社製)を用いて行った。0.5ml容のマイクロチューブに9.5μlの反応ストック液、4.0μlの0.8pmol/μlのT7プロモータープライマー(GIBCO BRL社製)および6.5μlの0.16μg/μlのシークエンス用鋳型DNAを加えて混合し、100μlのミネラルオイルを重層後、96℃30秒、55℃15秒および60℃ 4分を1サイクルとするPCR増幅反応を25サイクル行い、4℃で5分間保温した。反応後、80μlの滅菌精製水を加えて攪拌し、遠心分離後、その水層を3回のフェノール・クロロホルム抽出を行った。100μlの水層に10mlの3M酢酸ナトリウム(pH5.2)および300μlのエタノールを加えて攪拌後、室温、14,000rpmにて15分間の遠心を行い沈殿を回収した。沈殿を75%エタノールで 洗浄後、真空下に2分間静置して乾燥させ、シークエンス用サンプルとした。シークエンスサンプルは、4μlの10mMのEDTAを含むホルムアミドに溶解して90℃、2分間で変性後、氷中で冷却してシークエンスに供した。
【0050】
得られた5個のクローンの内1個の配列にPCRに用いたプローブと配列の相同性がありさらに他の微生物、例えばNeisseria gonorrhoeaeのRibosomal Protein L7/L12遺伝子配列と非常に類似したDNA配列が見いだされた。その構造遺伝子部分の全塩基配列及び対応するアミノ酸配列は配列表配列番号:17及び18のような配列であった。この遺伝子断片は、明らかにHaemophilus influenzaeのRibosomal Protein L7/L12蛋白質の遺伝子をコードするものである。
【実施例2】
【0051】
Haemophilus influenzaeからのRibosomal Protein L7/L12遺伝子の大腸菌での大量発現と精製
発現ベクターを組み込んだ大腸菌をLB培地中で50ml 37℃1晩培養した。2倍濃度のTY培地500mlを37℃で1時間温めておいた。1晩培養した大腸菌液50mlを500mlの前述の培地に入れた。1時間後、100mMイソプロピルβ−D(−)−チオガラクトピラノシド(IPTG)550μl入れ4時間培養後回収し、250mlずつ遠心チューブにいれて7000rpm、10分間遠心した。上澄みを棄てて50mMトリス塩酸(Tris−HCl)pH7.4、25%スクロース(Sucrose)を含むLysisバッファー25mlずつに溶解した。
さらに、10%ノニデットP−40(NP−40)1.25ml、1M MgCl2125μlを加えてプラステイックチューブに移した。1分間×5回氷冷中でsonicationを実施し、12000rpm、115分間遠心後上澄みを回収した。
次に、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)でコンディショニングしたグルタチオンアガロースカラムに前記の上澄み液を吸着させた。
次に、20mM TrisバッファーpH7.4、4.2mM MgCl2、1mMジチオスレイトール(DTT)を含む洗浄液でカラムを2ベッドボリューム分洗浄した。その後5mMのグルタチオンを含む50mM TrisバッファーpH9.6で溶出し、分画したフラクション中の蛋白質含有量を色素結合法(ブラッドフォード法;Biorad社)で検出し、メインフラクションを取得した。得られた精製GSTフュージョンRibosomal Protein L7/L12蛋白質の純度は電気泳動法により確認したところ約75%であり免疫源として充分な純度を確保できた。
【実施例3】
【0052】
Haemophilus influenzaeのRibosomal Protein L7/L12の蛋白質に対するモノクローナル抗体の作製
まずマウスの免疫についてはHaemophilus influenzaeのGSTフュージョンRibosomal Protein L7/L12蛋白質抗原100μgを200μlのPBSに溶解後フロイントのコンプリートアジュバントを200μl加え混合、エマルジョン化した後200μlを腹腔内に注射した。
さらに、2週間後、4週間後、6週間後に同様のエマルジョン抗原を腹腔内に注射し、さらに10週間後、14週間後に2倍濃度の抗原エマルジョン液を腹腔内注射し最終免疫から3日後に脾臓を取り出し、細胞融合に供した。
無菌的に取り出したマウスの脾細胞108個に対し骨髄腫細胞2×107個をガラスチューブに取り良く混合した後1500rpmで5分間遠心し上澄みを棄て、その後細胞をよく混合した。
細胞融合に使用した骨髄腫細胞は、NS−1系の細胞株を用い10%ウシ胎児血清(FCS)を含むRPMI1640培地で培養し、細胞融合の2週間前から0.13mMのアザグアニン、0.5μg/mlのMC−210、10%FCSを含むRPMI1640培地で1週間培養後、さらに10%FCSを含むRPMI1640培地で1週間培養したものを用いた。混合した細胞サンプルに37℃に保温した50mlのRPMI1640培地を30ml加え1500rpmで遠心、上澄み除去後37℃に保温した50%ポリエチレングリコールを1ml加え激しく攪拌しながら2分間処理後、37℃に保温した10mlのRPMI1640培地を加え液を滅菌ピペットで吸引、排出しながら約5分間激しく攪拌混合した。
1000rpmで5分間遠心、上澄み除去後さらに30mlのHAT培地を加え細胞濃度が5×106個/mlになるように調整し攪拌均一化後、96穴プレート型培養プレートに0.1mlずつ分注し7%CO2条件下、37℃で培養し、1日目、1週間目、2週間目にHAT培地を0.1mlずつ加えた。
次に目的の抗体を生産している細胞をスクリーニングするためにELISA法による評価を実施した。0.05%のアジ化ソーダ含むPBS中に溶解したHaemophilus influenzaeのGSTフュージョンRibosomal Protein L7/L12蛋白質及びGST蛋白質をそれぞれ10μg/ml濃度で希釈した液を100μlずつ96穴プレートの別々に分注し4℃で1晩吸着させた。上澄み除去後、1%牛血清アルブミン溶液(PBS中)200μl添加し室温で1時間反応してブロッキングした。上澄み除去後洗浄液(Tween20 0.02%,PBS)で洗浄し、その上に融合細胞の培養液100μlを加え室温で2時間反応後上澄みを除去しさらに洗浄液で洗浄した。これに、500g/mlのペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウスIgG抗体液を100μl加え室温、1時間反応を実施し、上澄みを除去しさらに洗浄液で洗浄した後TMB溶液(KPL社)を100μlずつ加え室温で20分反応、発色後1Nの硫酸を100μl添加して反応を停止し、450nmの吸光を測定した。
この結果、GSTフュージョンRibosomal Protein L7/L12蛋白質にのみ反応しGST蛋白質には反応しない陽性ウェルが見いだされRibosomal Protein L7/L12蛋白質に対する抗体が含まれていることが判明した。
そこで陽性ウェル中の細胞をそれぞれ回収し24穴プラスティックプレート中、HAT培地で培養した。培養した融合培地を細胞数が約20個/mlになるようにHT培地で希釈し50μlを、HT培地に懸濁した6週齢のマウス胸腺細胞106個と96穴培養プレート中で混合後、7%CO2条件下、37℃で2週間培養した。培養上澄み中の抗体活性を前述のELISA法にて同様に検定し、Ribosomal Protein L7/L12蛋白質との反応陽性の細胞を回収した。
さらに、同様の希釈検定、クローニング操作を繰り返し、ハイブリドーマHIRB−1〜5の計5クローンを取得した。
【実施例4】
【0053】
Haemophilus influenzaeのRibosomal Protein L7/L12蛋白質と反応するモノクローナル抗体のNeisseria gonorrhoeaeおよび他の微生物との反応試験
前述のようにして取得した陽性ハイブリドーマ細胞を用いて定法に従ってモノクローナル抗体を生産回収した。
具体的にはRPMI1640培地(10%FCS入り)を用いて継代培養した細胞をあらかじめ2週間前に0.5mlのプリスタンを腹腔内に注射したBalb/Cマウスの腹腔内に5×106個(PBS中)注射し、3週間後腹水を回収し、その遠心上澄みを取得した。
取得した抗体含有液をProtein Aカラム(5mlベッド,Pharmacia社)に吸着させ、PBSで3ベッドボリューム洗浄し、pH3のクエン酸バッファーで溶出し、抗体フラクションを回収して各ハイブリドーマの生産するモノクローナル抗体を得た。
この5株のハイブリドーマ由来のモノクローナル抗体を用いてELISA法により評価した。
抗体の評価にはサンドイッチアッセイ法を用い、作製したモノクローナル抗体はパーオキシダーゼと化学的に結合させることにより酵素標識抗体として使用した。
すなわち酵素標識は、ホースラディッシュパーオキシダーゼ(SigmaグレードVI)を用い結合には試薬S−アセチルチオ酢酸N−ヒドロキシスクシンイミドを使用しAnalytical Bio−chemistry 132(1983),68−73に述べられている方法に従って行った。ELISA反応においては0.05%のアジ化ソーダ含むPBS中に溶解した市販の抗Haemophilus influenzaeポリクローナル抗体(Biodesign社、ウサギ)を10μg/ml濃度で希釈した液を100μlずつ96穴プレートの別々に分注し4℃で1晩吸着させた。
上澄み除去後、1%牛血清アルブミン溶液(PBS中)200μl添加し室温で1時間反応しブロッキングする。上澄み除去後洗浄液(Tween20 0.02%、PBS)で洗浄し、その上に各種微生物の培養液に0.3%濃度のTriton X−100により室温で5分間抽出操作をほどこした抗原液を100μlを加え室温で2時間反応後上澄みを除去し、さらに洗浄液で洗浄後、5μg/mlの各ペルオキシダーゼ標識抗Ribosomal Protein L7/L12抗体液を100μl加え室温、1時間反応を実施し、上澄みを除去しさらに洗浄液で洗浄した後TMB溶液(KPL社)を100μlずつ加え室温で20分反応、発色後1Nの硫酸を100μl添加して反応を停止し,450nmの吸光を測定した。
その結果、表1に示すように酵素標識抗体としてハイブリドーマHIRB−2由来のモノクローナル抗体を用いた場合、試験したHaemophilus influenzaeの全ての株を106個/mlの感度で検出すると同時に他のNeisseria属やその他の微生物について108個/mlの高濃度でも反応性を示さずRibosomal Protein L7/L12蛋白質に対するモノクローナル抗体を用いることでHaemophilus influenzae特異的な反応性をもつ抗体を取得したことが明確に確認できた。
【0054】
【表1】

【実施例5】
【0055】
Stretococcus pneumoniaeからのRibosomal Protein L7/L12遺伝子のクローニング、同蛋白質の大腸菌での大量発現と精製および同蛋白質に対するモノクローナル抗体の作製。
Stretococcus pneumoniae IID555株(東京大学医科学研究所より分譲、購入)を血液寒天培地上に適当量植菌した後、インキュベーター中、37℃で48時間培養する。生育したコロニーを最終的に5×109CFU/ml前後になるようにTE Bufferに懸濁する。内約1.5mlを微量遠心チューブに移し取り10000rpmで2分間遠心し、上澄みを棄てる。沈殿部分を567μlのTE Bufferに再懸濁する。さらに30μlの10%SDSと3μlの20mg/mlProteinase K溶液を加えて良く混合し、37℃で1時間インキュベートする。次に10%のセチルトリメチルアンモニウムブロマイド/0.7M NaCl溶液を80μl追添し、よく混合した後65℃で10分間インキュベートする。次に、体積比24/1のクロロホルム−イソアミルアルコール混合液を700μl加えよく攪拌する。この溶液を微量遠心機で12000rpm、5分間(4℃コントロール下)遠心処理した後、水層画分を新しい微量遠心管に移す。そこに0.6倍量のイソプロパノールを加えチューブをよく振ってDNAの沈殿を形成する。白いDNA沈殿をガラス棒ですくって1mlの70%エタノール(−20℃冷却したもの)が入った別の微量遠心管に移す。
次に10000rpmで5分間遠心処理し、上澄みを静かに除去した後さらに1mlの70%エタノールを加えて再び5分間遠心する。再び上澄みを除去した後沈殿を100μlのTE bufferに溶解しDNA溶液を得た。このゲノムDNA溶液の濃度をMolecular Cloning,A laboratory manual,1989,Eds.Sambrook,J.,Fritsch,E.F.,and Maniatis,T.,Cold Spring harbor Laboratory PrのE5,Spectrophotometric Determination of the Amount of DNA or RNAに従って定量した。
このゲノムDNAのうち10ngを用いてPCRを行った。PCRはTaqポリメラーゼ(宝酒造社製、コードR001A)を用いた。酵素に添付のバッファーを5μl,酵素に添付のdNTP mixture 4μlと配列表配列番号:13に示した合成オリゴヌクレオチドCおよび、配列表配列番号:14に示した合成オリゴヌクレオチドDをそれぞれ200pmolを加え、最終容量50μlとした。
この混合物を、TaKaRa PCR Thermal Cycler 480を用いて、95℃ 1分、50℃ 2分、72℃ 3分を5サイクル行った後、95℃ 1分、60℃ 2分、72℃ 3分を25サイクル行った。このPCR産物の一部を1.5%アガロースゲル中で電気泳動を行い、エチジウムブロマイド(日本ジーン社製)にて染色後、紫外線下で観察し、約400bpのcDNAが増幅されていることを確認した。さらに制限酵素BamHIおよびXhoIで切断処理後、1.5%アガロースゲル中で電気泳動を行いエチジウムブロマイド染色後約370bpのバンドをゲルから切り出してSuprec01(宝酒造社製)で精製後、市販のベクターであるpGEX−6P−1(Pharmacia社製)に組み込んだ。同ベクターは目的の遺伝子断片を適当な制限酵素サイトに組み込むことによりGST蛋白質とのフュージョン蛋白質を発現しうる目的分子の発現ベクターとして機能することができる。具体的にはベクターpGEX−6P−1と先のDNAとをそのモル比が1:5となるように混ぜ合わせて、T4 DNAリガーゼ(Invitrogen社製)にてベクターにDNAを組み込んだ。DNAが組み込まれたベクターpGEX−6P−1を大腸菌One Shot Competent Cells(Invitrogen社製)に遺伝子導入し、アンピシリン(Sigma社製)を50μg/ml含むL−Broth(宝酒造社製)半固型培地のプレートに蒔き、12時間程度37℃に放置し、現れてきたコロニーを無作為選択し、同濃度のアンピシリンを含むL−Broth液体培地2mlに植え付け、8時間程度37℃で振とり培養し、菌体を回収し、ウィザードミニプレップ(Promega社製)を用いて添付の説明書に従ってプラスミドを分離し、このプラスミドを制限酵素BamHI/XhoIにて消化して、約370bpのDNAが切り出されてくることで該PCR産物が組み込まれていることを確認し、確認されたクローンについて、組み込まれているDNAの塩基配列決定を行った。
挿入DNA断片の塩基配列の決定は、Applied Biosystems社製の蛍光シークエンサーを用いて実施した。シークエンスサンプルの調製はPRISM,Ready Reaction Dye Terminator Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems社製)を用いて行った。0.5ml容のマイクロチューブに9.5μlの反応ストック液、4.0μlの0.8pmol/μlのT7プロモータープライマー(GIBCO BRL社製)及び6.5μlの0.16μg/μlのシークエンス用鋳型DNAを加えて混合し、100μlのミネラルオイルを重層後、96℃30秒、55℃15秒および60℃ 4分を1サイクルとするPCR増幅反応を25サイクル行い、4℃で5分間保温した。反応後、80μlの滅菌精製水を加えて攪拌し、遠心分離後、その水層を3回のフェノール・クロロホルム抽出を行った。100μlの水層に10μlの3M酢酸ナトリウム(pH5.2)および300μlのエタノールを加えて攪拌後、室温、14,000rpmにて15分間の遠心を行い沈殿を回収した。沈殿を75%エタノールで洗浄後、真空下に2分間静置して乾燥させ、シークエンス用サンプルとした。シークエンスサンプルは、4μlの10mMのEDTAを含むホルムアミドに溶解して90℃、2分間で変性後、氷中で冷却してシークエンスに供した。
得られた7個のクローンの内1個の配列にPCRに用いたプローブと配列の相同性がありさらに他の微生物、例えばNeisseria gonorrhoeaeのRibosomal Protein L7/L12遺伝子配列と非常に類似したDNA配列が見いだされた。その構造遺伝子部分の全塩基配列及び対応するアミノ酸配列は配列表配列番号:19及び20のような配列であった。この遺伝子断片は、明らかにStreptococcus pneumoniaeのRibosomal Protein L7/L12蛋白質の遺伝子をコードするものである。
発現ベクターを組み込んだ大腸菌を2倍濃度のYT培地中で50ml 37℃1晩培養した。2倍濃度のYT培地450mlを37℃で1時間温めておいた。1晩培養した大腸菌培養液50mlを450mlの前述の培地に入れた。37℃1時間培養後、500mMのIPTGを100μl入れ、25℃ 4時間培養後回収し、250mlずつ遠心チューブにいれて5000rpm、20分遠心した。上澄みを棄てて50mM Tris−HCl pH7.4、25% Sucroseを含むLysisバッファー25mlずつに溶解した。
さらに10% NP−40 1.25ml、1M MgCl2 125μlを加えてプラステイックチューブに移した。1分間×5回氷冷中でsonicationを実施し、12000rpm、15分間遠心後上澄みを回収した。
次にPBSでコンディショニングしたグルタチオンセファロース(Pharmacia社製)カラムに前記の上澄み液を吸着させた。次にPBSでカラムを3ベットボリューム分洗浄した。その後10mMのグルタチオンを含む50mM Tris−HCl 8.0で溶出し、分画したフラクション中の蛋白質含有量を色素結合法(ブラッドフォード法;BioRad社)で検出し、メインフラクションを取得した。メインフラクションを3L PBSに対して3回透析を行った。
得られたGSTフュージョンRibosomal Protein L7/L12蛋白質の1mg/ml溶液10mlに500mM Tris−HCl pH7.0、1.5M NaCl、10mM EDTA、10mM DTTを含むCleavageバッファー1mlを加え、さらに2u/μlのPreScission Protease(Pharmacia社製)を100μl添加して4℃で反応させることによりGST部分をRibosomal Protein L7/L12蛋白質部分から切り離した。
次にPBSでコンディショニングしたグルタチオンセファロースカラムに反応液を通し、通過液を回収し、さらにPBSを1ベッドボリューム流し、これも回収した。取得した精製Ribosomal Protein L7/L12蛋白質の純度は電気泳動法により確認したところ約90%であり免疫源として充分な純度を確保できた。
まずマウスの免疫についてはStreptococcus pneumoniaeのRibosomal Protein L7/L12蛋白質抗原100μgを200μlのPBSに溶解後フロイントのコンプリートアジュバントを200μl加え混合、エマルジョン化した後200μlを腹腔内に注射した。さらに2週間後、4週間後、6週間後に同様のエマルジョン抗原を腹腔内に注射し、さらに10週間後、14週間後に2倍濃度の抗原エマルジョン液を腹腔内注射し最終免疫から3日後に脾臓を取り出し、細胞融合に供した。
無菌的に取り出したマウスの脾細胞108個に対し骨髄腫細胞2×107個をガラスチューブに取り良く混合した後1500rpmで5分間遠心し上澄みを棄て、その後細胞をよく混合した。
細胞融合に使用した骨髄腫細胞はNS−1系の細胞株を用い10%FCSを含むRPMI1640培地で培養し、細胞融合の2週間前から0.13mMのアザグアニン、0.5μg/mlのMC−210、10%FCSを含むRPMI1640培地で1週間培養後、さらに10%FCSを含むRPMI1640培地で1週間培養したものを用いた。混合した細胞サンプルに37℃に保温した50mlのRPMI1640培地を30ml加え1500rpmで遠心、上澄み除去後37℃に保温した50%ポリエチレングリコールを1ml加え激しく攪拌しながら2分間処理後、37℃に保温した10mlのRPMI1640培地を加え液を滅菌ピペットで吸引、排出しながら約5分間激しく攪拌混合した。
1000rpmで5分間遠心、上澄み除去後さらに30mlのHAT培地を加え細胞濃度が5×106個/mlになるように調整し攪拌均一化後、96穴プレート型培養プレートに0.1mlずつ分注し7%CO2条件下、37℃で培養し、1日目、1週間目、2週間目にHAT培地を0.1mlずつ加えた。
次に目的の抗体を生産している細胞をスクリーニングするためにELISA法による評価を実施した。0.05%のアジ化ソーダ含むPBS中に溶解したStrptococcus pneumoniaeのRibosomal Protein L7/L12蛋白質を10μg/ml濃度に希釈した液を100μlずつ96穴プレートの別々に分注し4℃で1晩吸着させた。上澄み除去後、1%牛血清アルブミン溶液(PBS中)200μl添加し室温で1時間反応しブロッキングする。上澄み除去後洗浄液(Tween20 0.02%、PBS)で洗浄し、その上に融合細胞の培養液100μlを加え室温で2時間反応後上澄みを除去しさらに洗浄液で洗浄後、50ng/mlのペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウスIgG抗体液を100μl加え室温、1時間反応を実施し、上澄みを除去しさらに洗浄液で洗浄した後TMB溶液(KPL社)を100μlずつ加え室温で20分反応、発色後1Nの硫酸を100μl添加して反応を停止し、450nmの吸光を測定した。
この結果Ribosomal Protein L7/L12蛋白質に反応する陽性ウェルが見いだされRibosomal Protein L7/L12蛋白質に対する抗体が含まれていることが判明した。
そこで陽性ウェル中の細胞をそれぞれ回収し24穴プラスティックプレート中、HAT培地で培養した。培養した融合培地を細胞数が約20個/mlになるようにHT培地で希釈し50μlを、HT培地に懸濁した6週齢のマウス胸腺細胞106個と96穴培養プレート中で混合後、7%CO2条件下、37℃で2週間培養した。培養上澄み中の抗体活性を前述のELISA法にて同様に検定し、Ribosomal Protein L7/L12蛋白質との反応陽性の細胞を回収した。
さらに同様の希釈検定、クローニング操作を繰り返し、ハイブリドーマAMSP−1〜4の計4クローンを取得した。
【実施例6】
【0056】
Streptococcus pneumoniaeのRibosomal Protein L7/L12蛋白質と反応するモノクローナル抗体のStreptococcus pneumoniae及び他の微生物との反応試験
前述のようにして取得した陽性ハイブリドーマ細胞を用いて定法にしたがってモノクローナル抗体を生産回収した。
具体的にはRPMI1640培地(10%FCS入り)を用いて継代培養した細胞を25cm2培養フラスコ中で2×105個/ml、3.3×105個及び5×105個/ml程度に無血清培地にて希釈し全容を5mlとした。7%CO2、37℃で3〜5日間増殖させ、細胞の増殖がみられたフラスコの内、元の細胞数が最も少ないものを選択し、最終的に2×105個/ml希釈のものが3〜4日間で2×106個/mlに増殖するようになるまで同様の操作を繰り返し無血清培地に馴化させた。次に細菌培養用96穴プレート中でクローニングを行い、増殖が早く抗体価の高い細胞を選択した。選択した細胞を24穴プレートで増殖させたものを25cm2培養フラスコ中で2×105個/ml程度となるように無血清培地で希釈し全容10mlとした。これを7%CO2、37℃で3〜4日間培養し1×106個/mlまで増殖させた後、75cm2培養フラスコにて同様に増殖させ1×106個/ml、100mlを大量培養用ボトルに移した。これに無血清培地100mlを加え、攪拌しながら37℃で2日培養後、無血清培地200ml加えさらに2日培養した。この培養液を4本に分け各々100mlの無血清培地を添加し、2日培養し各々400mlの無血清培地を添加後さらに約6日培養した後、培養液を回収し10000rpm15分の遠心により目的とする抗体を含む培養上清を取得した。培養上清は0.1%アジ化ソーダ添加後4℃で保存した。取得した抗体含有液100mlをPBSで5倍に希釈後ProteinGカラム(5mlベッド,Pharmacia社)に吸着させ、PBSで3ベッドボリューム洗浄し、pH3のクエン酸バッファーで溶出し、抗体フラクションを回収して各ハイブリドーマの生産するモノクローナル抗体を得た。この4株のハイブリドーマ由来のモノクローナル抗体は特表平7−509565号公報に記載されているOIA法により評価した。
すなわちOIA法は窒化珪素の薄膜層をもつシリコンウエハー上にcapture用抗体を反応させた反応用基材を作製し、これに抗原物質すなわち微生物の抽出液を一定時間反応させた後、捕捉された抗原と酵素標識した抗体(増幅試薬)とをさらに反応させ、最後に基質溶液を加えて生じた薄膜沈殿による光干渉色の濃さにより、抗原抗体反応を視覚的に判定できる方法である。
作製したモノクローナル抗体はOIA法の窒化珪素の薄膜層をもつシリコンウエハー上に固相化するcapture抗体として使用し、評価した。またdetoct抗体としては参考例に記載した種々の微生物のRibosomal Protein L7/L12蛋白質と非特異的に反応しうるAMGC−1モノクローナル抗体をパーオキシダーゼで酵素標識したものを使用した。すなわち酵素標識はホースラディッシュパーオキシダーゼ(SigmaグレードVI)を用い結合には試薬S−アセチルチオ酢酸N−ヒドロキシスクシンイミドを使用しAnalytical Bio−chemistry132(1983),68−73に述べられている方法に従って行った。
OIA反応においては0.05%アジ化ナトリウムを含むPBS中のモノクローナル抗体を10μg/ml濃度に0.1M HEPES pH8.0で希釈した液を50μlずつ窒化珪素の薄膜層をもつシリコンウエハー上に添加し室温で30分反応させた後、蒸留水で洗浄した後、使用した。
その上に各種微生物の懸濁液に0.5%濃度のTriton X−100により室温で5分間抽出操作をほどこした抗原液を15μl加え室温で10分間反応後、20μg/mlのペルオキシダーゼ標識AMGC1抗体を15μl加え室温10分間反応を実施し、蒸留水で洗浄した後、基質溶液(KPL社)を15μlずつ加え、室温で5分反応し、蒸留水で洗浄後検出シグナルの濃さを光干渉色の強さとして目視で判定した。
その結果表2に示すようにcapture抗体としてハイブリドーマAMSP−2由来のモノクローナル抗体を用いた場合、試験したStreptococcus pneumoniaeの全ての株を10個/mlの感度で検出すると同時に他の微生物について10個/mlの高濃度でも反応性を示さずStreptococcus pneumoniaeのRibosomal Protein L7/L12蛋白質に対するモノクローナル抗体を用いることでStreptococcus pneumoniae特異的な反応性をもつ抗体を取得したことが明確に確認できた。
Streptococcus pneumoniae特異的なモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマAMSP−2を日本国通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に平成11年7月28日に受託番号:FERMBP−6807として国際寄託した。
【0057】
【表2】

【実施例7】
【0058】
NeisserigonorrhoeaeからのRibosomal Protein L7/L12遺伝子のクローニング、同蛋白質の大腸菌での大量発現、精製および同蛋白質の対するモノクローナル抗体の作製。
Neisseria gonorrhoeae IID821株(東京大学医科学研究所より分譲、購入)をチョコレート寒天培地上に適当量植菌した後、CO2インキュベーター中で37℃、CO20.5%条件で24時間培養した。生育したコロニーを最終的に5×109CFU/ml前後になるようにTE Bufferに懸濁する。そのうち約1.5mlを微量遠心チューブに移し取り10000rpmで2分間遠心し、上澄みを棄てた。沈殿部分を567μlのTE bufferに再懸濁した。さらに、30μlの10% SDSと3μlの20mg/ml Proteinase K溶液を加えて良く混合し、37℃で1時間インキュベートした。
次に10%のセチルトリメチルアンモニウムブロマイド/0.7M NaCl溶液を80μl追添しよく混合した後65℃で10分間インキュベートした。次に、体積比24/1のクロロホルム−イソアミルアルコール混合液を700μl加えよく攪拌した。この溶液を微量遠心機で12000rpm、5分間(4℃コントロール下)遠心処理した後、水層画分を新しい微量遠心管に移した。そこに0.6倍量のイソプロパノールを加えチューブをよく振ってDNAの沈殿を形成した。白いDNA沈殿をガラス棒ですくって1mlの70%エタノール(−20℃に冷却したもの)が入った別の微量遠心管に移した。
次に、10000rpmで5分間遠心処理し、上澄みを静かに除去した後さらに1mlの70%エタノールを加えて再び5分間遠心した。再び上澄みを除去した後沈殿を100μlのTE bufferに溶解しDNA溶液を得た。このゲノムDNA溶液の濃度をMolecular Cloning,A laboratory manual,1989,Eds.Sambrook,J.,Fritsch,E.F.,and Maniatis,T.,Cold Spring harbor Laboratory PressのE5,Spectrophotometric Determination of the Amount of DNA or RNAに従って定量した。このゲノムDNAのうち10ngを用いてPCRを行った。PCRはTaqポリメラーゼ(宝酒造社製、コードR001A)を用いた。酵素に添付のバッファーを5μl、酵素に添付のdNTPmixture 4μlとHaemophilus influenzaeなどの菌のRibosomal Protein L7/L12 DNA配列との類似性によりインターネット情報(オクラホマ大、Neisseria gonorrhoeaeゲノムプロジェクト公開ゲノムDNA情報)より取得したNeisseria gonorrhoeaeのRibosomal Protein L7/L12 DNA配列をもとに設計した配列表配列番号:15に示した合成ヌクレオチドE及び配列表配列番号:16に示したオリゴヌクレオチドFをプローブとしてそれぞれ200pmolを加え、最終容量50μlとした。
この混合物を、TaKaRa PCR Thermal Cycler 480を用いて、95℃ 1分、50℃ 2分、72℃ 3分を5サイクル行った後、95℃ 1分、60℃ 2分、72℃ 3分を25サイクル行った。このPCR産物の一部を1.5%アガロースゲル中で電気泳動を行い、エチジウムブロマイド(日本ジーン社製)にて染色後、紫外線下で観察し、約400bpのcDNAが増幅されていることを確認した。さらに制限酵素BamHIおよびXhoIで切断処理後、1.5%アガロースゲル中で電気泳動を行いエチジウムブロマイド染色後約370bpのバンドをゲルから切り出してSuprec01(宝酒造社製)で精製後、市販のベクターであるpGEX−4T−1(Pharmacia製)に組み込んだ。具体的にはベクターpGEX−4T−1と先のDNAとをそのモル比が1:3となるように混ぜ合わせて、T4 DNAリガーゼ(Invitrogen社製)にてベクターにDNAを組み込んだ。DNAが組み込まれたベクターpGEX−4T−1を大腸菌One Shot Competent Cells(Invitrogen社製)に遺伝子導入し、アンピシリン(Sigma社製)を50μg/ml含むL−Broth(宝酒造社製)半固型培地のプレートに蒔き、12時間程度37℃に放置し、現れてきたコロニーを無作為選択し、同濃度のアンピシリンを含むL−Broth液体培地2mlに植え付け、8時間程度37℃で振盪培養し、菌体を回収し、ウィザードミニプレップ(Promega社製)を用いて添付の説明書に従ってプラスミドを分離し、このプラスミドを制限酵素BamHI/XhoIにて消化して、約370bpのDNAが切り出されてくることで該PCR産物が組み込まれていることを確認し、確認されたクローンについて、組み込まれているDNAの塩基配列決定を行った。
挿入DNA断片の塩基配列の決定は、Applied Biosystems社製の蛍光シークエンサーを用いて実施した。シークエンスサンプルの調製はPRISM,Ready Reaction Dye Terminator Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems社製)を用いて行った。0.5ml容のマイクロチューブに9.5μlの反応ストック液、4.0μlの0.8pmol/μlのT7プロモータープライマー(GIBCO BRL社製)および6.5μlの0.16μg/μlのシークエンス用鋳型DNAを加えて混合し、100μlのミネラルオイルを重層後、96℃ 30秒、55℃ 15秒および60℃ 4分を1サイクルとするPCR増幅反応を25サイクル行い、4℃で5分間保温した。反応後、80μlの滅菌精製水を加えて撹梓し、遠心分離後、その水層を3回のフェノール・クロロホルム抽出を行った。100μlの水層に10μlの3M酢酸ナトリウム(pH5.2)及び300μlのエタノールを加えて攪拌後、室温、14000rpmにて15分間の遠心を行い沈殿を回収した。沈殿を75%エタノールで洗浄後、真空下に2分間静置して乾燥させ、シークエンス用サンプルとした。シークエンスサンプルは、4μlの10mMのEDTAを含むホルムアミドに溶解して90℃、2分間で変性後、氷中で冷却してシークエンスに供した。得られた5個のクローンの内1個の配列にPCRに用いたプローブと配列の相同性がありさらに他の微生物、例えばHaemophilus influenzaeのRibosomal Protein L7/L12遺伝子配列と非常に類似したDNA配列が見いだされた。
その構造遺伝子部分の全塩基配列及び対応するアミノ酸配列は配列表配列番号:21及び22に示すような配列であった。この遺伝子断片は明らかにNeisseria gonorrhoeaeのRibosomal Protein L7/L12蛋白質の遺伝子をコードするものである。
このように構築したNeisseria gonorrhoeaeのGSTフュージョンRibosomal Protein L7/L12蛋白質発現ベクターを用いて実施例2に記載の方法と同様の方法により精製したNeisseria gonorrhoeaeのGSTフュージョンRibosomal Protein L7/L12蛋白質を取得した。
さらに、実施例3記載の方法に従いNeisseria gonorrhoeaeのRibosomal Protein L7/L12蛋白質に対するモノクローナル抗体に生産するハイブリドーマGCRB−3株を取得した。
【実施例8】
【0059】
Neisseria gonorrhoeaeのRibosomal Protein L7/L12蛋白質と反応するモノクローナル抗体のNeisseria gonorrhoeae及び他の微生物との反応試験
前述のようにして取得した陽性ハイブリドーマ細胞GCRB−3を用いて定法にしたがってモノクローナル抗体を生産回収した。
具体的には、RPMI1640培地(10% FCS入り)を用いて継代培養した細胞をあらかじめ2週間前に0.5mlのプリスタンを腹腔内に注射したBalb/Cマウスの腹腔内に5×106個(PBS中)注射し、3週間後腹水を回収し、その遠心上澄みを取得した。取得した抗体含有液をProteinAカラム(5mlベッド,Pharmacia社製)に吸着させ、PBSで3ベッドボリューム洗浄し、pHのクエン酸バッファーで溶出し、抗体フラクションを回収してハイブリドーマの生産するモノクローナル抗体を得た。このGCRB−3ハイブリドーマ由来のモノクローナル抗体を用いてELISA法により評価した。
抗体の評価にはサンドイッチアッセイ法を用い、作製したモノクローナル抗体はパーオキシダーゼと化学的に結合させることにより酵素標識抗体として使用した。すなわち酵素標識はホースラディッシュパーオキシダーゼ(SigmaグレードVI)を用い結合には試薬S−アセチルチオ酢酸N−ヒドロキシスクシンイミドを使用しAnalytical Bio−chemistry132(1983),68−73に述べられている方法に従って行った。ELISA反応においては0.05%のアジ化ソーダを含むPBS中に溶解した市販の抗淋菌ポリクローナル抗体(ヴァイロスタット社、ウサギ)を10μg/ml濃度で希釈した液を100μlずつ96穴プレートの別々に分注し4℃で1晩吸着させた。
上澄み除去後、1%牛血清アルブミン溶液(PBS中)200μl添加し室温で1時間反応しブロッキングした。上澄み除去後洗浄液(Tween20 0.02%、PBS)で洗浄し、その上に各種微生物の培養液に0.3%濃度のTriton X−100により室温で5分間抽出操作をほどこした抗原液を100μlを加え室温で2時間反応後上澄みを除去しさらに洗浄液で洗浄後、5μg/mlのペルオキシダーゼ標識抗Ribosomal Protein L7/L12抗体液を100μl加え室温、1時間反応を実施し、上澄みを除去しさらに洗浄液で洗浄した後TMB溶液(KPL社)を100μlずつ加え室温で20分反応、発色後1Nの硫酸を100μl添加して反応を停止し、450nmの吸光を測定した。
その結果、表3に示すように酵素標識抗体としてハイブリドーマGCRB−3由来のモノクローナル抗体を用いた場合、試験したNeisseria gonorrhoeaeの全ての株を106個/mlの感度で検出すると同時に他のNeisseria属やその他の微生物について108個/mlの高濃度でも反応性を示さずRibosomal Protein L7/L12蛋白質に対するモノクローナル抗体を用いることでNeisseria gonorrhoeae特異的な反応性をもつ抗体を取得したことが明確に確認できた。
【0060】
【表3】

【実施例9】
【0061】
Neisseria属特異的抗Ribosomal Protein L7/L12蛋白質モノクローナル抗体の取得
Neisseria gonorrhoeae IID821株(東京大学医科学研究所より分譲、購入)をチョコレート寒天培地上に適当量植菌した後、CO2インキュベーター中、CO2濃度0.5%条件で37℃で24時間培養する。生育したコロニーを最終的に5×109CFU/ml前後になるようにTE Bufferに懸濁する。そのうち約1.5mlを微量遠心チューブに移し取り10000rpmで2分間遠心し、上澄みを棄てる。沈殿部分を567μlのTE Bufferに再懸濁する。さらに30μlの10%SDSと3μlの20mg/ml Proteinase K溶液を加えて良く混合し、37℃で1時間インキュベートする。 次に10%のセチルトリメチルアンモニウムブロマイド/0.7M NaCl溶液を80μl追添し、よく混合した後65℃で10分間インキュベートする。次に、体積比24/1のクロロホルム−イソアミルアルコール混合液を700μl加えよく攪拌する。この溶液を微量遠心機で12000rpm、5分間(4℃コントロール下)遠心処理した後、水層画分を新しい微量遠心管に移す。そこに0.6倍量のインプロパノールを加えチューブをよく振ってDNAの沈殿を形成する。白いDNA沈殿をガラス棒ですくって1mlの70%エタノール(−20℃に冷却したもの)が入った別の微量遠心管に移す。
次に10000rpmで5分間遠心処理し、上澄みを静かに除去した後さらに1mlの70%エタノールを加えて再び5分間遠心する。再び上澄みを除去した後沈殿を100μlのTE Bufferに溶解しDNA溶液を得た。このゲノムDNA溶液の濃度をMolecular Cloning,A laboratory manual,1989,Eds,Sambrook,J.,Fritsch,E.F.,and Maniatis,T.,Cold Spring harbor Laboratory PressのE5,Spectrophotometric Determination of the Amount of DNA or RNAに従って定量した。
このゲノムDNAのうち10ngを用いてPCRを行った。PCRはTaqポリメラーゼ(宝酒造社製、コードR001A)を用いた。酵素に添付のバッファーを5μl,酵素に添付のdNTP mixture 4μlと他菌のRibosomal Protein L7/L12 DNA配列との類似性により、インターネット情報(オクラホマ大、Neisseria gonorrhoeaeゲノムプロジェクト公開ゲノムDNA情報)より取得したNeisseria gonorrhoeaeのRibosomal Protein L7/L12 DNA配列をもとに設計した配列表配列番号:15に示した合成オリゴヌクレオチドEおよび、配列表配列番号:16に示した合成オリゴヌクレオチドFをプローブとしてそれぞれ200pmolを加え、最終容量50μlとした。
この混合物を、TaKaRa PCR Thermal Cycler 480を用いて、95℃ 1分、50℃ 2分、72℃ 3分を5サイクル行った後、95℃ 1分、60℃ 2分、72℃ 3分を25サイクル行った。このPCR産物の一部を1.5%アガロースゲル中で電気泳動を行い、エチジウムブロマイド(日本ジーン社製)にて染色後、紫外線下で観察し、約400bpのcDNAが増幅されていることを確認した。さらに制限酵素BamHIおよびXhoIで切断処理後、1.5%アガロースゲル中で電気泳動を行いエチジウムブロマイド染色後約370bpのバンドをゲルから切り出してSuprec01(宝酒造社製)で精製後、市販のベクターであるpGEX−6P−1(Pharmacia社製)に組み込んだ。同ベクターは目的の遺伝子断片を適当な制限酵素サイトに組み込むことによりGST蛋白質とのフュージョン蛋白質を発現しうる目的分子の発現ベクターとして機能することができる。具体的にはベクターpGEX−6P−1と先のDNAとをそのモル比が1:5となるように混ぜ合わせて、T4 DNAリガーゼ(Invitrogen社製)にてベクターにDNAを組み込んだ。DNAが組み込まれたベクターpGEX−6P−1を大腸菌One Shot Competent Cells(Invitrogen社製)に遺伝子導入し、アンピシリン(Sigma社製)を50μg/ml含むL−Broth(宝酒造社製)半固型培地のプレートに蒔き、12時間程度37℃に放置し、現れてきたコロニーを無作為選択し、同濃度のアンピシリンを含むL−Broth液体培地2mlに植え付け、8時間程度37℃で振とう培養し、菌体を回収し、ウィザードミニプレップ(Promega社製)を用いて添付の説明書に従ってプラスミドを分離し、このプラスミドを制限酵素BamHI/XhoIにて消化して、約370bpのDNAが切り出されてくることで該PCR産物が組み込まれていることを確認し、確認されたクローンについて、組み込まれているDNAの塩基配列決定を行った。
挿入DNA断片の塩基配列の決定は、Applied Biosystems社製の蛍光シークエンサーを用いて実施した。シークエンスサンプルの調製はPRISM,Ready Reaction Dye Terminator Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems社製)を用いて行った。0.5ml容のマイクロチューブに9.5μlの反応ストック液、4.0μlの0.8pmol/μlのT7プロモータープライマー(GIBCO BRL社製)及び6.5μlの0.16μg/μlのシークエンス用鋳型DNAを加えて混合し、100μlのミネラルオイルを重層後、96℃ 30秒、55℃ 15秒及び60℃ 4分を1サイクルとするPCR増幅反応を25サイクル行い、4℃ で5分間保温した。反応後、80μlの滅菌精製水を加えて攪拌し、遠心分離後、その水層を3回のフェノール・クロロホルム抽出を行った。100μlの水層に10μlの3M酢酸ナトリウム(pH5.2)および300μlのエタノールを加えて攪拌後、室温、14000rpmにて15分間の遠心を行い沈殿を回収した。沈殿を75%エタノールで洗浄後、真空下に2分間静置して乾燥させ、シークエンス用サンプルとした。シークエンスサンプルは、4μlの10mMのEDTAを含むホルムアミドに溶解して90℃、2分間で変性後、氷中で冷却してシークエンスに供した。
得られた4個のクローンの内1個の配列にPCRに用いたプローブと配列の相同性がありさらに他の微生物、例えばHaemophilus influenzaeのRibosomal Protein L7/L12遺伝子配列と非常に類似したDNA配列が見いだされた。その構造遺伝子部分の全塩基配列及び対応するアミノ酸配列は配列表配列番号:21及び:22のような配列であった。この遺伝子断片は、明らかにNeisseria gonorrhoeaeのRibosomal Protein L7/L12蛋白質の遺伝子をコードするものである。
発現ベクターを組み込んだ大腸菌を2倍濃度のYT培地中で50ml 37℃1晩培養した。2倍濃度のYT培地450mlを37℃で1時間温めておいた。1晩培養した大腸菌培養液50mlを450mlの前述の培地に入れた。37℃1時間培養後、500mMのIPTGを100μl入れ、25℃4時間培養後回収し、250mlずつ遠心チューブにいれて5000rpm、20分遠心した。上澄みを棄てて50mM Tris−HCl pH7.4、25%Sucroseを含むLysisバッファー25mlずつに溶解した。
さらに10% NP−40 1.25ml、1M MgCl2 125μlを加えてプラステイックチューブに移した。1分間×5回氷冷中でsonicationを実施し、12000rpm、15分間遠心後上澄みを回収した。
次にPBSでコンディショニングしたグルタチオンセファロース(Pharmacia社製)カラムに前記の上澄み液を吸着させた。次にPBSでカラムを3ベットボリューム分洗浄した。その後10mMのグルタチオンを含む50mM Tris−HCl 8.0で溶出し、分画したフラクション中の蛋白質含有量を色素結合法(ブラッドフォード法;BioRad社)で検出し、メインフラクションを取得した。メインフラクションを3L PBSに対して3回透析を行った。
得られたGSTフュージョンRibosomal Protein L7/L12蛋白質の1mg/ml溶液10mlに500mM Tris−HCl pH7.0、1.5M NaCl、10mM EDTA、10mM DTTを含むCleavageバッファー1mlを加え、さらに2u/μlのPreScission Protease(Pharmacia社製)を100μl添加して4℃で反応させることによりGST部分をRibosomal Protein L7/L12蛋白質部分から切り離した。
次にPBSでコンディショニングしたグルタチオンセファロースカラムに反応液を通し、通過液を回収し、さらにPBSを1ベッドボリューム流し、これも回収した。取得した精製Ribosomal Protein L7/L12の純度は電気泳動法により確認したところ約90%であり免疫源として充分な純度を確保できた。
まずマウスの免疫についてはNeisseria gonorrhoeaeのRibosomal Protein L7/L12蛋白質抗原100μgを200μlのPBSに溶解後フロイントのコンプリートアジュバントを200μl加え混合、エマルジョン化した後200μlを腹腔内に注射した。さらに2週間後、4週間後、6週間後に同様のエマルジョン抗原を腹腔内に注射し、さらに10週間後、14週間後に2倍濃度の抗原エマルジョン液を腹腔内注射し最終免疫から3日後に脾臓を取り出し、細胞融合に供した。
無菌的に取り出したマウスの脾細胞108個に対し骨髄腫細胞2×107個をガラスチューブに取り良く混合した後1500rpmで5分間遠心し上澄みを棄て、その後細胞をよく混合した。
細胞融合に使用した骨髄腫細胞はNS−1系の細胞株を用い10%FCSを含むRPMI1640培地で培養し、細胞融合の2週間前から0.13mMのアザグアニン、0.5μg/mlのMC−210、10%FCSを含むRPMI1640培地で1週間培養後、さらに10%FCSを含むRPMI1640培地で1週間培養したものを用いた。混合した細胞サンプルに37℃に保温した50mlのRPMI1640培地を30ml加え1500rpmで遠心、上澄み除去後37℃に保温した50%ポリエチレングリコールを1ml加え激しく攪拌しながら2分間処理後、37℃に保温した10mlのRPMI1640培地を加え液を滅菌ピペットで吸引、排出しながら約5分間激しく攪拌混合した。
1000rpmで5分間遠心、上澄み除去後さらに30mlのHAT培地を加え細胞濃度が5×106個/mlになるように調整し攪拌均一化後、96穴プレート型培養プレートに0.1mlずつ分注し7%CO2条件下、37℃で培養し、1日目、1週間目、2週間目にHAT培地を0.1mlずつ加えた。
次に目的の抗体を生産している細胞をスクリーニングするためにELISA法による評価を実施した。0.05%のアジ化ソーダ含むPBS中に溶解したNeisseria gonorrhoeaeのRibosomal Protein L7/L12蛋白質を10μg/ml濃度で希釈した液を100μlずつ96穴プレートの別々に分注し4℃で1晩吸着させた。上澄み除去後、1%牛血清アルブミン溶液(PBS中)200μl添加し室温で1時間反応しブロッキングする。上澄み除去後洗浄液(Tween20 0.02%、PBS)で洗浄し、その上に融合細胞の培養液100μlを加え室温で2時間反応後上澄みを除去しさらに洗浄液で洗浄後、50ng/mlのペルオキシダーゼ標識ヤギ抗マウスIgG抗体液を100μl加え室温、1時間反応を実施し、上澄みを除去しさらに洗浄液で洗浄した後TMB溶液(KPL社)を100μlずつ加え室温で20分反応、発色後1Nの硫酸を100μl添加して反応を停止し、450nmの吸光を測定した。
この結果Ribosomal Protein L7/L12蛋白質に反応する陽性ウェルが見いだされRibosomal Protein L7/L12蛋白質に対する抗体が含まれていることが判明した。
そこで陽性ウェル中の細胞をそれぞれ回収し24穴プラスティックプレート中、HAT培地で培養した。培養した融合培地を細胞数が約20個/mlになるようにHT培地で希釈し50μlを、HT培地に懸濁した6週齢のマウス胸腺細胞106個と96穴培養プレート中で混合後、7%CO2条件下、37℃で2週間培養した。培養上澄み中の抗体活性を前述のELISA法にて同様に検定し、Ribosomal Protein L7/L12蛋白質との反応陽性の細胞を回収した。
さらに同様の希釈検定、クローニング操作を繰り返し、ハイブリドーマAMGC−5〜8の計4クローンを取得した。
前述のようにして取得した陽性ハイブリドーマ細胞を用いて定法にしたがってモノクローナル抗体を生産回収した。
具体的にはRPMI1640培地(10%FCS入り)を用いて継代培養した細胞を25cm2培養フラスコ中で2×105個/ml、3.3×105個及び5×105個/ml程度に無血清培地にて希釈し全容を5mlとした。7%CO2、37℃で3〜5日間増殖させ、細胞の増殖がみられたフラスコの内、元の細胞数が最も少ないものを選択し、最終的に2×105個/ml希釈のものが3〜4日間で2×106個/mlに増殖するようになるまで同様の操作を繰り返し無血清培地に馴化させた。次に細菌培養用96穴プレート中でクローニングを行い、増殖が早く抗体価の高い細胞を選択した。選択した細胞を24穴プレートで増殖させたものを25cm2培養フラスコ中で2×105個/ml程度となるように無血清培地で希釈し全容10mlとした。これを7%CO2、37℃で3〜4日間培養し1×106個/mlまで増殖させた後、75cm2培養フラスコにて同様に増殖させ1×106個/ml、100mlを大量培養用ボトルに移した。これに無血清培地100mlを加え、攪拌しながら37℃で2日培養後、無血清培地200ml加えさらに2日培養した。この培養液を4本に分け各々100mlの無血清培地を添加し、2日培養し各々400mlの無血清培地を添加後さらに約6日培養した後、培養液を回収し10000rpm15分の遠心により目的とする抗体を含む培養上清を取得した。培養上清は0.1%アジ化ソーダ添加後4℃で保存した。取得した抗体含有液100mlをPBSで5倍に希釈後ProteinGカラム(5mlベッド、Pharmacia社)に吸着させ、PBSで3ベッドボリューム洗浄し、pH3のクエン酸バッファーで溶出し、抗体フラクションを回収して各ハイブリドーマの生産するモノクローナル抗体を得た。
この4株のハイブリドーマ由来のモノクローナル抗体は特表平7−509565号公報に記載されているOIA法により評価した。
すなわちOIA法は窒化珪素の薄膜層をもつシリコンウエハー上にcapture用抗体を反応させた反応用基材を作製し、これに抗原物質すなわち微生物の抽出液を一定時間反応させた後、捕捉された抗原と酵素標識した抗体(増幅試薬)とをさらに反応させ、最後に基質溶液を加えて生じた薄膜沈殿による光干渉色の濃さにより、抗原抗体反応を視覚的に判定できる方法である。
作製したモノクローナル抗体はOIA法の窒化珪素の薄膜層をもつシリコンウエハー上に固相化するcapture抗体として使用した。またdetect抗体としては参考例に記載した種々の微生物のRibosomal Protein L7/L12蛋白質と非特異的に反応しうるAMGC−1モノクローナル抗体をパーオキシダーゼで酵素標識したものを使用した。すなわち酵素標識はホースラディッシュパーオキシダーゼ(SigmaグレードVI)を用い結合には試薬S−アセチルチオ酢酸N−ヒドロキシスクシンイミドを使用しAnalytical Bio−chemistry132(1983),68−73に述べられている方法に従って行った。
OIA反応においては0.05%アジ化ナトリウムを含むPBS中のモノクローナル抗体を10μg/ml濃度に0.1M HEPES pH8.0で希釈した液を50μlずつ窒化珪素の薄膜層をもつシリコンウエハー上に添加し室温で30分反応させた後、蒸留水で洗浄した後、使用した。
その上に各種微生物の懸濁液に0.5%濃度のTriton X−100により室温で5分間抽出操作をほどこした抗原液を15μl加え室温で10分間反応後、20μg/mlのペルオキシダーゼ標識AMGC1を15μl加え室温10分間反応を実施し、蒸留水で洗浄した後、基質溶液(KPL社)を15μlずつ加え、室温で5分反応し、蒸留水で洗浄後検出シグナルの濃さを光干渉色の強さとして目視で判定した。
その結果表4に示すようにcapture抗体としてハイブリドーマAMGC−8由来のモノクローナル抗体を用いた場合、108個/mlの菌濃度で試験したNeisseria属の全ての株を検出すると同時に他の微生物については反応性を示さず、Neisseria属のRibosomal Protein L7/L12蛋白質に対するモノクローナル抗体を用いることでNeisseria属特異的な反応性をもつ抗体を取得したことが明確に確認できた。
【0062】
【表4】

【実施例10】
【0063】
Ribosomal Protein L7/L12蛋白質固定化アフィニティカラムを用いたHaemophilus influenzae Ribosomal Protein L7/L12蛋白質と特異的に反応するポリクローナル抗体の取得。
0.5%濃度のTriton X−100で処理したHaemophilus influenzae菌体抽出液の遠心上清を抗原として使用した。抗原100μgを含む生理食塩水溶液約1.2mlにフロイントのアジュバンド1.5mlを加えエマルジョン化した後、4匹のSPF Japanese White Rabbitに皮下注射し免疫した。2週間おきに5〜6回免疫し、抗体価を確認した。
抗体価の確認はELISA法により実施した。0.05%のアジ化ソーダ含むPBS中に溶解したHaemophilus influenzaeのRibosomal Protein L7/L12蛋白質を10μg/ml濃度に希釈した液を100μlずつ96穴プレートに分注し4℃で1晩吸着させた。上澄み除去後、1%牛血清アルブミン溶液(PBS中)200μl添加し室温で1時間反応しブロッキングする。上澄み除去後洗浄液(0.02% Tween20、PBS)で洗浄し、その上に正常ウサギ血清と免疫後のウサギ抗血清を段階希釈したもの100μlを加え室温で2時間反応後、上澄みを除去しさらに洗浄液で洗浄後、50ng/mlのペルオキシダーゼ標識抗ラビットIgG抗体液を100μl加え室温、1時間反応を実施し、上澄みを除去しさらに洗浄液で洗浄した後OPD溶液(Sigma社)を100μlずつ加え室温で20分反応、発色後1Nの硫酸を100μl添加して反応を停止し,492nmの吸光を測定した。
抗体価上昇を確認できたものにつき、大量採血を実施した。耳動脈から血液をガラス製遠心管に採取し、37℃1時間放置後、4℃一晩静置した。
その後3000rpm5分間遠心し、上清を回収した。
得られた抗血清4ロットは4℃で保存した。
次にHaemophilus influenzae及びNeisseria gonorrhoeaeのRibosomal Protein L7/L12蛋白質を固定化したアフィニティカラムを調製した。カラムはHiTrap NHS−activated(1ml、Pharmacia社製)を使用した。1mM HCl 6mlでカラムを置換した後、直ちに1mg/mlに調製したRibosomal Protein L7/L12蛋白質のPBS溶液1mlを注入し25℃で15分放置、これを5回繰り返し、Ribosomal Protein L7/L12蛋白質のPBS溶液計5mlをカラムに注入した。その後、ブロッキング試薬としてBuffer A(0.5Mエタノールアミン、0.5M NaCl、pH8.3)を6ml、Buffer B(0.1M酢酸、0.5M NaCl、pH4)を6ml、Buffer A 6mlを注入し、25℃15分放置後、さらにBuffer Bを6ml、Buffer Aを6ml、Buffer Bを6ml流した。その後PBS6mlで平衡化した。
このHaemophilus influenzaeのRibosomal Protein L7/L12蛋白質固定化アフィニティカラムを使用して、Haemophilus influenzaeのTriton X−100処理した菌体の上清を抗原として得られた抗血清中のポリクローナル抗体の精製を行った。まず該抗血清をPBSで5倍に希釈し、0.45μmのフィルターを通した後、流速0.5ml/minでHaemophilus influenzaeのRibosomal Protein L7/L12蛋白質固定化カラムに吸着させた。その後0.1MグリシンpH2.1でカラムから溶出し、直ちに1M Tris−HCl pH9.0で中和した後、抗体価測定法と同様のELISA法により目的とする抗体の溶出画分を回収した。次にこの画分をPBSで平衡化したNeisseria gonorrhoeaeのRibosomal Protein L7/L12蛋白質固定化アフィニティカラムを通過させ、Neisseria gonorrhoeaeのRibosomal Protein L7/L12蛋白質に反応する抗体を吸収除去させ非吸着の通過画分を回収した。
こうして精製したポリクローナル抗体は実施例6と同様にOIA法により評価した。
精製した抗体はOIA法のcapture抗体として使用した。またdetect抗体としては参考例に記載したAMGC−1モノクローナル抗体をパーオキシダーゼで酵素標識したものを使用した。酵素標識はホースラディッシュパーオキシダーゼ(SigmaグレードVI)を用い結合には試薬S−アセチルチオ酢酸N−ヒドロキシスクシンイミドを使用しAnalytical Bio−chemistry132(1983),68−73に述べられている方法に従って行った。
OIA反応においては0.05%アジ化ナトリウムを含むPBS中の精製ポリクローナル抗体を10μg/ml濃度に0.1M HEPES pH8.0で希釈した液を50μlずつシリコンウエハー上に添加し室温で30分反応させた後、蒸留水で洗浄した後、使用した。
その上に各種微生物の懸濁液に0.5%濃度のTriton X−100により室温で5分間抽出操作をほどこした抗原液を15μlを加え室温で10分間反応後、20μg/mlのペルオキシダーゼ標識AMGC1を15μl加え室温10分間反応を実施し、蒸留水で洗浄した後、基質溶液(KPL社)を15μlずつ加え、室温で5分反応し、蒸留水で洗浄後青色の濃さを目視で判定した。
その結果表5に示すようにcapture抗体としてAPHI2−2の精製ポリクローナル抗体を用いた場合、108個/mlの菌濃度で試験したHaemophilus influenzaeを検出すると同時に他の微生物について反応性を示さず、Ribosomal Protein L7/L12蛋白質固定化アフィニティカラムで精製したポリクローナル抗体を用いることでHaemophilus influenzae特異的な反応性をもつ抗体を取得したことが明確に確認できた。
【0064】
【表5】

【参考例1】
【0065】
各種の微生物のRibosomal Protein L7/L12蛋白質と非特異的に反応するモノクローナル抗体の取得。
オプティカルイムノアッセイやELISAでの微生物検出の際、一般的にはcapture抗体とdetect用標識抗体で抗原をはさんで検出するいわゆるサンドイッチアッセイ法がその検出感度の高さから特に有用であるが、その場合対象微生物由来の抗原物質と特異的に反応する抗体が必要であると同時にその特異的抗体とは異なる抗原エピトープを認識するもう1種の抗体が必要である。
種々の微生物由来のRibosomal Protein L7/L12蛋白質と非特異的に反応する抗体は、Ribosomal Protein L7/L12蛋白質と特異的に反応する抗体とのサンドイッチアッセイを構成しうる抗体として非常に有用である。
幸いRibosomal Protein L7/L12蛋白質は種々の微生物でアミノ酸配列が相同である領域が存在するため、ここでは、Neisseria gonorrhoeaeから種々の微生物のRibosomal Protein L7/L12蛋白質と交差反応するモノクローナル抗体の取得を試み、一つの微生物から取得した特異性のない抗Ribosomal Protein L7/L12蛋白質抗体を種々の微生物のサンドイッチアッセイに共通して利用することが可能であることを見出した。
まず、Neisseria gonorrhoeaeからRibosomal Protein L7/L12遺伝子をクローニングし、同蛋白質の大腸菌での大量発現、精製および同蛋白質の対するモノクローナル抗体を作製した。
Neisseria gonorrhoeae IID821株(東京大学医科学研究所より分譲、購入)をチョコレート寒天培地上に適当量植菌した後、CO2インキュベーター中で37℃、CO2 0.5%条件で24時間培養する。生育したコロニーを最終的に5×109CFU/ml前後になるようにTE Bufferに懸濁する。内約1.5mlを微量遠心チューブに移し取り10000rpmで2分間遠心し、上澄みを棄てる。沈殿部分を567μlのTE Bufferに再懸濁する。さらに30μlの10%SDSと3μlの20mg/ml Proteinase K溶液を加えて良く混合し、37℃で1時間インキュベートする。 次に10%のセチルトリメチルアンモニウムブロマイド/0.7M NaCl溶液を80μl追添しよく混合した後65℃で10分間インキュベートする。次に、体積比24/1のクロロホルム−イソアミルアルコール混合液を700μl加えよく攪拌する。この溶液を微量遠心機で12000rpm、5分間(4℃ コントロール下)遠心処理した後、水層画分を新しい微量遠心管に移す。そこに0.6倍量のインプロパノールを加えチューブをよく振ってDNAの沈殿を形成する。白いDNA沈殿をガラス棒ですくって1mlの70%エタノール(−20℃冷却したもの)が入った別の微量遠心管に移す。
次に10000rpmで5分間遠心処理し、上澄みを静かに除去した後さらに1mlの70%エタノールを加えて再び5分間遠心する。再び上澄みを除去した後沈殿を100μlのTE Bufferに溶解しDNA溶液を得た。このゲノムDNA溶液の濃度をMolecular Cloning,A laboratory manual,1989,Eds.Sambrook,J.,Fritsch,E.F.,and Maniatis,T.,Cold Spring harbor Laboratory PressのE5,Spectrophotometric Determination of the Amount of DNA or RNAに従って定量した。
このゲノムDNAのうち10ngを用いてPCRを行った。PCRはTaqポリメラーゼ(宝酒造社製、コードR001A)を用いた。酵素に添付のバッファーを5μl、酵素に添付のdNTP mixture 4μlとHaemophilus influenzaeなどの菌のRibosomal Protein L7/L12 DNA配列との類似性によりインターネット情報(オクラホマ大、Neisseria gonorrhoeaeゲノムプロジェクト公開ゲノムDNA情報)より取得したNeisseria gonorrhoeaeのRibosomal Protein L7/L12 DNA配列をもとに設計した配列表配列番号:15に示した合成オリゴヌクレオチドEおよび、配列表配列番号:16に示した合成オリゴヌクレオチドFをプローブとしてそれぞれ200pmolを加え、最終容量50μlとした。
この混合物を、TaKaRa PCR Thermal Cycler 480を用いて、95℃ 1分、50℃ 2分、72℃ 3分を5サイクル行った後、95℃ 1分、60℃ 2分、72℃ 3分を25サイクル行った。このPCR産物の一部を1.5%アガロースゲル中で電気泳動を行い、エチジウムブロマイド(日本ジーン社製)にて染色後、紫外線下で観察し、約400bpのcDNAが増幅されていることを確認した。さらに制限酵素BamHI及びXhoIで切断処理後、1.5%アガロースゲル中で電気泳動を行いエチジウムブロマイド染色後約370bpのバンドをゲルから切り出してSuprec01(宝酒造社製)で精製後市販のベクターであるpGEX−4T−1(Pharmacia製)に組み込んだ。具体的にはベクターpGEX−4T−1と先のDNAとをそのモル比が1:3となるように混ぜ合わせて、T4 DNAリガーゼ(Invitrogen社製)にてベクターにDNAを組み込んだ。DNAが組み込まれたベクターpGEX−4T−1を大腸菌One Shot Competent Cells(Invitrogen社製)に遺伝子導入し、アンピシリン(Sigma社製)を50μg/ml含むL−Broth(宝酒造社製)半固型培地のプレートに蒔き、12時間程度37℃に放置し、現れてきたコロニーを無作為選択し、同濃度のアンピシリンを含むL−Broth液体培地2mlに植え付け、8時間程度37℃で振とう培養し、菌体を回収し、ウィザードミニプレップ(Promega社製)を用いて添付の説明書に従ってプラスミドを分離し、このプラスミドを制限酵素BamHI/XhoIにて消化して、約370bpのDNAが切り出されてくることで該PCR産物が組み込まれていることを確認し、確認されたクローンについて、組み込まれているDNAの塩基配列決定を行った。
挿入DNA断片の塩基配列の決定は、Applied Biosystems社製の蛍光シークエンサーを用いて実施した。シークエンスサンプルの調製はPRISM,Ready Reaction Dye Terminator Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems社製)を用いて行った。0.5ml容のマイクロチューブに9.5μlの反応ストック液、4.0μlの0.8pmol/μlのT7プロモータープライマー(GIBCO BRL社製)及び6.5μlの0.16μg/μlのシークエンス用鋳型DNAを加えて混合し、100μlのミネラルオイルを重層後、96℃ 30秒、55℃ 15秒及び60℃ 4分を1サイクルとするPCR増幅反応を25サイクル行い、4℃で5分間保温した。反応後、80μlの滅菌精製水を加えて攪拌し、遠心分離後、その水層を3回のフェノール・クロロホルム抽出を行った。100μlの水層に10μlの3M酢酸ナトリウム(pH5.2)および300μlのエタノールを加えて攪拌後、室温14000rpmにて15分間の遠心を行い沈殿を回収した。沈殿を75%エタノールで洗浄後、真空下に2分間静置して乾燥させ、シークエンス用サンプルとした。シークエンスサンプルは、4μlの10mMのEDTAを含むホルムアミドに溶解して90℃2分間で変性後、氷中で冷却してシークエンスに供した。得られた5個のクローンの内1個の配列にPCRに用いたプローブと配列の相同性がありさらに他の微生物、例えばHaemophilus influenzaeのRibosomal Protein L7/L12遺伝子配列と非常に類似したDNA配列が見いだされた。その構造遺伝子部分の全塩基配列及び対応するアミノ酸配列は配列表配列番号:21及び22に示すような配列であった。この遺伝子断片は明らかにNeisseria gonorrhoeaeのRibosomal Protein L7/L12蛋白質の遺伝子をコードするものである。
このように構築したNeisseria gonorrhoeaeのRibosomal Protein L7/L12 GSTフュージョン蛋白質発現ベクターを用いて実施例2に記載の方法と同様の方法により精製したNeisseria gonorrhoeaeのGSTフュージョンRibosomal Protein L7/L12蛋白質を取得した。さらに、実施例3記載の方法と同様の方法によりNeisseria gonorrhoeaeのRibosomal Protein L7/L12蛋白質に対するモノクローナル抗体に生産するハイブリドーマAMGC1株を取得した。前述のようにして取得した陽性ハイブリドーマ細胞AMGC1株を用いて定法にしたがってモノクローナル抗体を生産回収した。
具体的にはRPMI1640培地(10%FCS入り)を用いて継代培養した細胞を25cm2培養フラスコ中で2×105個/ml、3.3×105個及び5×105個/ml程度に無血清培地にて希釈し全容を5mlとした。7%CO2、37℃で3〜5日間増殖させ、細胞の増殖がみられたフラスコの内、元の細胞数が最も少ないものを選択し、最終的に2×105個/ml希釈のものが3〜4日間で2×106個/mlに増殖するようになるまで同様の操作を繰り返し無血清培地に馴化させた。次に細菌培養用96穴プレート中でクローニングを行い、増殖が早く抗体価の高い細胞を選択した。選択した細胞を24穴プレートで増殖させたものを25cm2培養フラスコ中で2×105個/ml程度となるように無血清培地で希釈し全容10mlとした。これを7%CO2、37℃で3〜4日間培養し1×106個/mlまで増殖させた後、75cm2培養フラスコにて同様に増殖させ1×106個/ml、100mlを大量培養用ボトルに移した。これに無血清培地100mlを加え、攪拌しながら37℃で2日培養後、無血清培地200ml加えさらに2日培養した。この培養液を4本に分け各々100mlの無血清培地を添加し、2日培養し各々400mlの無血清培地を添加後さらに約6日培養した後、培養液を回収し10000rpm15分の遠心により目的とする抗体を含む培養上清を取得した。培養上清は0.1%アジ化ソーダ添加後4℃で保存した。取得した抗体含有液100mlをPBSで5倍に希釈後Protein Aカラム(5mlベッドボリューム、Pharmacia社製)に吸着させ、PBSで3ベッドボリューム洗浄し、pH3.0のクエン酸バッファーで溶出し、抗体フラクションを回収して各ハイブリドーマの生産するモノクローナル抗体を得た。このハイブリドーマ由来のモノクローナル抗体を用いてELISA法により評価した。
抗体の評価には各種の微生物由来のRibosomal Protein L7/L12蛋白質を抗原として感作した96穴プレートを用い、作製したモノクローナル抗体を反応させたあと2次抗体として抗マウスIgGのホースラディッシュペルオキシダーゼ標識(MBL社製、Code330)を反応させ最後に酵素反応発色試薬により検出した。ELISA反応においては0.05%のアジ化ソーダ含むPBS中に溶解したNeisseria gonorrhoeaeHaemophilus influenzaeStretococcus pneumoniaeのリコンビナントRibosomal Protein L7/L12蛋白質を1μg/ml濃度に希釈した液を100μlずつ96穴プレートの別々に分注し4℃で1晩吸着させた。上澄み除去後、1%牛血清アルブミン溶液(PBS中)200μl添加し室温で1時間反応しブロッキングする。上澄み除去後洗浄液(0.02%Tween20、PBS)で洗浄し、その上にAMGC1抗体の0.1から1μg/ml液100μlを加え室温で2時間反応後上澄みを除去しさらに洗浄液で洗浄後、5μg/mlの抗マウスIgGのホースラディッシュペルオキシダーゼ標識(MBL社製、Code330)抗体液を100μl加え室温、1時間反応を実施し、上澄みを除去しさらに洗浄液で洗浄した後TMB溶液(KPL社)を100μlずつ加え室温で20分反応、発色後1Nの硫酸を100μl添加して反応を停止し、4500mの吸光を測定した。 その結果表6に示すようにハイブリドーマAMGC1由来のモノクローナル抗体を用いた場合、この抗体がNeisseria gonorrhoeaeHaemophilus influenzae及びStreptococcus pneumoniaeのRibosomal Protein L7/L12蛋白質と反応できることを確認できた。
【0066】
【表6】

【0067】
ここで取得されたAMGC1抗体はオプティカルイムノアッセイやELISAでの微生物検出などいわゆるサンドイッチアッセイ法による微生物検出において各微生物特異的な抗Ribosomal Protein L7/L12蛋白質抗体と組み合わせて用いる抗体として非常に有用である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明によると各種の微生物について同一機能の細胞内分子に対する抗体を用いて微生物の検出を行うことで微生物を特異的になおかつ同一種内の全ての血清型の微生物を精度よく検出することができる。
このような抗体として微生物のリボソーム蛋白質、Ribosomal Protein L7/L12に対する抗体を用い、Haemophilus influenzaeStreptococcuspneumoniae及びNeisseria gonorrhoeaeの検出を精度良く行うことができる。 また、このような抗体を構成要素とする微生物検出用試薬キットを用いることで、微生物の検出をより汎用的に精度良く行うことができる。
また各種の微生物における同一機能の細胞内分子を抗原として用いることで、各種の微生物の検出に用いる特異的抗体を作製することができる。
【受託番号】
【0069】
寄託した寄託機関
名称: 通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所
あて名: 日本国茨城県つくば市東1丁目1−3
当該寄託機関に微生物を寄託した日付: 平成11年(1999)7月28日
当該寄託機関が寄託について付した受託番号: FERM BP−6807
[配列表]






















【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を有することを特徴とするモノクローナル抗体の作製方法。
(1)遺伝子操作手法によりあるいは細菌からの単離精製により得られた細菌のリボソーム蛋白質L7/L12を免疫源として、細菌のリボソーム蛋白質L7/L12に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを選択する工程
(2)上記(1)で得られたハイブリドーマから、さらに、当該細菌の全長リボソーム蛋白質L7/L12に特異的に反応し、該細菌を他の細菌と種あるいは属で識別できるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを選択する工程
(3)上記(2)で得られたハイブリドーマから抗体を取得する工程
【請求項2】
細菌が性行為感染症(STD、Sexually transmitted disease)原因細菌である請求項1に記載のモノクローナル抗体の作製方法。
【請求項3】
細菌が呼吸器系感染症原因細菌である請求項1に記載のモノクローナル抗体の作製方法。
【請求項4】
呼吸器系感染症原因細菌がHaemophilus influenzaeである請求項3に記載のモノクローナル抗体の作製方法。
【請求項5】
呼吸器系感染症原因細菌がStreptococcus pneumoniaeである請求項3に記載のモノクローナル抗体の作製方法。
【請求項6】
性行為感染症(STD、Sexually transmitted disease)原因細菌がNeisseria gonorrhoeaeである請求項2に記載のモノクローナル抗体の作製方法。
【請求項7】
抗体がNeisseria gonorrhoeaeのリボソーム蛋白質L7/L12に対する抗体であって、配列表配列番号:22のアミノ酸配列において115番目のアラニンを含む5から30アミノ酸の長さの連続する部分アミノ酸配列を認識する抗体である請求項6に記載のモノクローナル抗体の作製方法。

【公開番号】特開2010−268800(P2010−268800A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147122(P2010−147122)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【分割の表示】特願2000−562399(P2000−562399)の分割
【原出願日】平成11年7月30日(1999.7.30)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】