説明

微粉末シリカの製造方法及びその製造装置

【課題】 自然に存在する天然物を原料として得られるシリカの一層の微細化を図る。
【解決手段】 微粉末シリカの製造方法であり、シリカ含有溶液生成槽23において天然物由来の沈降シリカを液化炭酸に溶解させたシリカ含有溶液を生成し、次いで、圧縮機24を用いてシリカ含有溶液を圧縮し、その後、圧縮されたシリカ含有溶液を噴射機構25から噴射することによって急速減圧しながら膨張することにより、溶液中の二酸化炭素を蒸発させ、微粉化されたシリカを微粉末シリカ回収槽26中に回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ含有の天然物から得られる沈降シリカを微粉末化する微粉末シリカの製造方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリカは、含浸剤、増粘剤、流動改質剤、固結防止剤として広い用途に用いられている。例えば、ゴム製品の耐引裂性、耐熱性、接着性の向上を目的として、また、塗料用艶消し剤として用いられている。
【0003】
この種のシリカとして、二酸化ケイ素(SiO2)を主成分とする珪藻の殻の化石堆積物である珪藻土や、シリカの含有率が高い植物などの天然物から製造されるものがある。
【0004】
シリカの原料として用いられる珪藻土は、珪藻の主成分である非晶質シリカの他に、堆積環境によりアルミニウム、鉄、カリウム、ホウ素等の元素が含有されて構成されている。
【0005】
また、シリカの含有率が高い植物として、稲科に属する植物がある。稲科の植物のうち、とくに、稲のシリカ含有率が高いことが知られている。例えば、稲の籾殻を焼成したとき、18〜20%の灰分が発生し、この灰分の主成分が非晶質シリカである。
【0006】
このように、自然界には、高い割合でシリカを含有する天然物が存在することが知られている。この化石堆積物である珪藻土の埋蔵量は、莫大である。また、籾殻は、米の脱穀・精米工程の残渣であり、米の生産地では大量に発生する。
【0007】
そして、自然界に莫大に存在する珪藻土や、稲の残渣である籾殻、又はその灰などを原料とすることにより、安価にしかも安定してシリカの供給を行うことができる。
【0008】
珪藻土を原料にしてシリカを製造する方法として、特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に記載される方法は、珪藻土に含まれる生物由来のシリカがアルカリ水溶液に可溶であるという特徴を利用し、溶解・沈殿等のエネルギー消費の小さい化学プロセスを用いて、珪藻土から実質的にホウ素を含まない高純度シリカを製造するようにしたものである。具体的には、生物起源の珪藻土にアルカリ水溶液を加えてシリカを溶解させ、溶解したシリカからpH12〜13における沈殿物を予め除去し、次いで、溶解したシリカをpH5〜10で沈殿させた後、シリカ沈殿物を回収するようにしたものである。
【0009】
また、籾殻を原料にしてシリカを製造する方法として、特許文献2に記載されたものがある。特許文献2に記載される方法は、籾殻を焼成して得られた籾殻の灰に、70〜95℃の温度に加温しながら水酸化ナトリウム(NaOH)を添加し、この水酸化ナトリウム中に籾殻の灰中に存在するシリカを溶解してケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)を生成し、次いで、このケイ酸ナトリウム(Na2SiO3)に、大気圧から3.5kg/cm2(約340kPa)に亘るゲージ圧で、純粋な二酸化炭素ガス(CO2)を反応させ、上記ケイ酸ナトリウムからシリカを沈降させ、沈降したシリカを濾過、乾燥し、さらには粉砕するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3925763号公報
【特許文献2】特表2006−517900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上述した方法を採用することにより、1〜30μm程度まで微粉化した天然物由来のシリカを得ることができるが、最近のシリカを用いる分野では、さらに均一に微細化されたものが要求されている。例えば、自動車のタイヤの原料となるゴムの充填補強剤として用いられるシリカにあっては、平均粒径が10〜50nm程度にまで微細化したものが要求されている。
【0012】
そこで、本発明の課題は、自然界に莫大に存在する珪藻土や、稲の残渣である籾殻等の自然に存在する天然物を原料に用いて、一層微細化したシリカを製造することを可能とする微粉末シリカの製造方法及び微粉末シリカの製造を可能とする製造措置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述したような課題を達成するために提案される本発明は、天然物由来の沈降シリカを液化炭素に溶解して沈降シリカ含有溶液を生成し、次いで、沈降シリカ含有溶液を圧縮し、その後、上記圧縮された沈降シリカ含有溶液を急速減圧して膨張することにより微細化され、その後上記溶液中の二酸化炭素を蒸発させ、微粉化されたシリカを回収するようにしたことを特徴とする。
【0014】
上記沈降シリカ含有溶液溶液の圧縮は、1500〜3000kg/cm2の圧力で行われる。
【0015】
上記工程を経て回収されたシリカは、さらに分級されることにより、粒子径の均一化が図られる。
【0016】
本発明方法に用いられる天然物由来のシリカは、シリカ含有の天然物にアルカリ水溶液を加えてシリカを溶解させ、上記溶解したシリカからpH11〜12における沈殿物を除去し、次いで、溶解したシリカをpH5〜10で沈降させた後、沈降されたシリカを回収して得られる沈降シリカが用いられる。
【0017】
本発明方法に用いられるシリカ含有の天然物は、生物起源の珪藻土が用いられ、また、籾殻を焼成した籾殻灰を用いることができる。
【0018】
本発明方法を実行する微粉末シリカの製造装置は、液化炭酸が貯留される液化炭酸貯留槽と、液化炭酸貯留槽から液化炭酸が供給されるとともに、天然物由来の沈降シリカが投入され、液化炭酸に沈降シリカを溶解するシリカ含有溶液生成槽と、シリカ含有溶液生成槽から供給されるシリカ含有溶液を圧縮し、加圧シリカ含有溶液を生成する圧縮機構と、圧縮機構で圧縮された加圧シリカ含有溶液を噴射する噴射機構とを備える。
【0019】
ここで用いられる噴射機構は、加圧シリカ含有溶液を噴射する噴射ノズルと、噴射ノズルから噴射されるシリカ含有溶液の微粒化を行う微粒化部を有する。
【0020】
さらに、微粉末シリカ回収槽を備え、噴射機構から噴射される加圧シリカ含有溶液を上記微粉末シリカ回収槽内に噴射し、得られる微粉末シリカを上記微粉末シリカ回収槽中に回収する。また、蒸発した二酸化炭素は、回収されて圧縮機により圧縮され、膨張による冷却で液化炭酸に変換され再利用される。
【発明の効果】
【0021】
本発明方法は、天然物由来の沈降シリカを含有する沈降シリカ含有溶液を生成し、これを圧縮し、次いで、急速減圧して膨張させて噴射することにより、二酸化炭素を蒸発させ、微粉化したシリカを得ることができる。
【0022】
また、本発明に用いられる天然物由来の沈降シリカは、溶解・沈殿等のエネルギー消費の小さい化学的なプロセスを用いて製造されるので、微粉化したシリカを低コストで安定的に供給できる。
【0023】
さらに、微粉化されたシリカを分級することにより、粒子径を一層均一にした微粉末シリカを得ることができる。
【0024】
そして、シリカ含有の天然物として、生物起源の珪藻土や、籾殻を焼成した籾殻灰を用いることにより、資源の枯渇することなく安定して沈降シリカを得ることができ、微粉末シリカの安定した供給を実現できる。
【0025】
本発明に係る粉末シリカの製造装置は、液化炭酸に沈降シリカを溶解するシリカ含有溶液を圧縮し、次いで、急速減圧して膨張させて噴射するようにしているので、水を溶媒にした場合の、微粉末の凝集、会合等による微粉の粒子径の増大を回避できる。
【0026】
また、微粉化された粒子の二酸化炭素と微粉化したシリカのとの分離は、確実に行うことができ微粉末シリカのみを容易に得ることができる。
【0027】
さらに、本発明に係る粉末シリカの製造装置は、噴射機構から噴射される加圧シリカ含有溶液を微粉末シリカ回収槽内に噴射し、生成される微粉末シリカを微粉末シリカ回収槽中に回収するようにしているので、容易に微粉末シリカの回収を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、籾殻を出発原料として沈降シリカを生成する沈降シリカ製造装置の一例を示す概念図である。
【図2】図2は、微粉末シリカの製造装置の一例を示す概念図である。
【図3】図3は、微粉末シリカの製造装置を構成する噴射機構の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、自然界に莫大に存在し、あるいは再生産される天然物を出発材料に用いることにより、資源が枯渇する問題点を解消し、安価にしかも安定して微粉末シリカの提供を実現するものである。
【0030】
そこで、本発明により製造される微粉末シリカは、天然物である稲の籾殻を原料にして得られる沈降シリカを微粉化することによって製造される。
【0031】
そして、稲の籾殻を出発原料として沈降シリカを得るには、図1に示すような工程を経て製造することができる。
【0032】
まず、稲の籾殻を焼成し、籾殻灰を得る。また、籾殻灰としては、籾殻を燃料とした小型発電所から得られる。この籾殻灰が貯留されている籾殻灰貯留槽1から籾殻灰を蒸解槽2に投入する。この蒸解槽2には、水酸化ナトリウム貯留槽3から水酸化ナトリウム(NaOH)が供給され、籾殻灰との混合が行われる。このとき、蒸解槽2は、70℃〜95℃の温度で1〜3時間程度加熱され、この蒸解槽1に供給された籾殻灰を水酸化ナトリウムに蒸解しケイ酸ナトリウムを生成する。なお、蒸解槽2の加熱は、蒸解槽2の外周囲に設けたヒーター5によって行われる。
【0033】
上記蒸解槽2で生成されたケイ酸ナトリウムは、フィルター6を介して吸引ポンプ7により吸引され、中和槽8に供給される。吸引ポンプ7により吸引されるケイ酸ナトリウムは、フィルター6を介して吸引されることにより、籾殻灰中に含まれていた粒径の大きな異物の除去が行われる。
【0034】
そして、ケイ酸ナトリウムが供給された中和槽8には、貯留槽9に貯留された液化炭酸が供給される。ケイ酸ナトリウムに液化炭酸が添加されると、ケイ酸ナトリウムが液化炭酸と反応し、二酸化ケイ素(SiO2)を生成する。ここで生成され二酸化ケイ素(SiO2)は、沈降シリカとなって中和槽8中に沈殿される。ここで得られる沈降シリカは、アルミニウムや鉄及びホウ素含量の少ない高純度のシリカとして生成される。
【0035】
次に、中和槽8に沈殿した沈降シリカを、中和槽8から抜き取る。ここで得られる沈降シリカは、80%以上の含水率を有するものであるので、フィルタープレス11に投入され脱水される。
【0036】
フィルタープレス11により脱水された沈降シリカは、減圧乾燥機12に投入され、減圧乾燥され、含水率が低減された乾燥シリカが生成される。この乾燥シリカは、シリカ貯留槽13に貯留され保管される。
【0037】
ここで得られる乾燥シリカは、1〜30μm程度の粒径にまで微細化されているが、ナノメートルオーダーにまで微細化されていない。
【0038】
本発明は、上述したような籾殻由来の沈降シリカをさらに微細化した微粉末シリカを得るようにしたものである。
【0039】
以下、籾殻灰から得られた乾燥シリカをさらに微細化して微粉末シリカを製造する例を挙げて説明する。
【0040】
本発明方法により、乾燥シリカを微細化するため、図2に示すような装置が用いられる。図2に示す微粉末シリカの製造装置は、液化炭酸が貯留される液化炭酸貯留槽21と、微粉化される乾燥シリカが貯留されるシリカ貯留槽22と、液化炭酸貯留槽21から供給される液化炭酸に、シリカ貯留槽22から供給される乾燥シリカを分散溶解させたシリカ含有溶液を生成するシリカ含有溶液生成槽23とを備える。このシリカ含有溶液生成槽23スラリー生成槽23内には、混合用のプロペラ23aが設けられ、シリカ含有溶液生成槽23に投入された乾燥シリカが液化炭酸に一層均一に分散溶解するようにしている。
【0041】
この微粉末シリカの製造装置は、シリカ含有溶液生成槽23において生成されたシリカ含有溶液を圧縮し、加圧シリカ含有溶液を生成する圧縮機24を備える。この圧縮機24は、超高圧ポンプが用いられる。そして、シリカ含有溶液は、圧縮機24により、1500〜3000kg/cm2の圧力で圧縮される。この圧縮操作は、常温下で行われる。
【0042】
そして、加圧シリカ含有溶液の溶媒としての液化炭酸は、1500〜3000kg/cm2の圧力で圧縮されると、超臨界状態となる。液化炭酸は、超臨界状態とされることにより、密度が大きく、低粘度で、高拡散性の流体となり、粒径を1〜30μmとする微細構造物としてのシリカ中にも容易に含浸していく。すなわち、微小径のシリカ粒子中に二酸化炭素を含浸させた二酸化炭素含浸シリカが得られる。
【0043】
さらに、本発明に係る微粉末シリカの製造装置は、圧縮機24によって圧縮して生成された加圧シリカ含有溶液である二酸化炭素含浸シリカを減圧しながら噴射する噴射機構25が設けられている。この噴射機構25は、微粉末シリカ回収槽26内に設けられている。すなわち、噴射機構25が微粉末シリカ回収槽26内に設けられることにより、噴射機構25から噴射される二酸化炭素含浸シリカは、微粉末シリカ回収槽26内に噴射され、二酸化炭素含浸シリカから分離される微粉末シリカを微粉末シリカ回収槽26内に確実に回収することができる。
【0044】
ところで、噴射機構25は、図3に示すように、筒状の噴射部本体26を有し、噴射部本体26の一端側に縮径された流入口27が設けられ、他端側に排出口28が設けられている。噴射部本体26内の流入口27側に位置して噴射ノズル29が設けられている。噴射ノズル29には、複数の噴射孔30が設けられている。そして、噴射部本体26の排出口側の領域は、噴射ノズル29から噴射された流体であるシリカ含有溶液の微粒化を行う微粒化部31として機能する。
【0045】
このような構成を備えた噴射機構25には、圧縮機24により圧縮された加圧シリカ含有溶液が流入口27を介して流入され、噴射ノズル29に設けた複数の噴射孔30を介して噴射部本体26内の微粒化部31に噴射される。複数の噴射孔30から噴射される加圧シリカ含有溶液は、減圧されながら複数の噴射流となって微粒化部31に放射される。微粒化部31に噴射された複数の噴射流は、互いに衝突し合う相互干渉や、微粒化部31の内壁による反射等の作用により過流となってこの微粒化部31内を進行する。そして、噴射機構25の噴射部本体26は、加圧等されることなく大気圧の環境下にあるので、噴射機構に噴射される加圧シリカ含有溶液は、大気圧に急峻に減圧されながら噴射ノズル29から噴射される。このとき、加圧シリカ含有溶液は、溶媒としての液化炭酸が大気中に蒸発し、炭酸ガスを含有しないシリカのみが微粉末となって微粒化部31に放射される。微粒化部31に放射されたシリカは、過流となって微粒化部31内に放射されることにより、互いに衝突を繰り返し、一層の微粉化が図られる。ここでは、1〜30μm程度の粒径のシリカをさらに微細化することができる。
【0046】
そして、噴射機構25は、圧縮された加圧シリカ含有溶液を微粉末シリカ回収槽26内に噴射するようにしているので、微粉末シリカは、微粉末シリカ回収槽26内に蓄積される。微粉末シリカ回収槽26に蓄積された微粉末シリカは、微粉末シリカ回収槽26に設けたドレイン35から外部に抜き取ることができる。
【0047】
上述したように、本発明は、沈降シリカを液化炭素に溶解してシリカ含有溶液を圧縮し、その後、圧縮されたシリカ含有溶液を急速減圧して膨張することにより、溶液中の二酸化炭素を蒸発させ、微粉化されたシリカを回収するようにしたので、一層の微細化をした微粉末シリカを得ることができる。なお、1回の圧縮・噴射で所定の粒度が得られない場合には、この工程を繰り返すことにより、シリカの粒度が低減される。ここで得られる微粉末シリカは、溶媒としての炭酸ガスは、大気中に蒸発されているので、異物を含むことがない高純度で、しかも水分の含有率の低いものとなる。
【0048】
さらに、上述した製造装置又は製造工程を経て製造された微粉末シリカは、さらに、分級処理されることにより、粒径を均一にすることができる。ここで得られる微粉末シリカは、分級され粒径の均一が図られることにより、使用目的に適した粒径のものを得ることができる。
【0049】
上述の実施の形態では、稲の籾殻を出発原料として沈降シリカを得る装置と微粉末シリカの製造装置を独立の装置として構成した例を挙げて説明したが、沈降シリカを得る装置と微粉末シリカの製造装置を、一連の製造工程を実行する一体の装置として構成してもよい。このように構成するとき、沈降シリカ製造装置の液化炭酸を貯留する貯留槽9と、微粉末シリカの製造装置の液化炭酸貯留槽21を共通に用い、この貯留槽の出口側に切り替えバルブを設け、製造の工程にあわせて選択的に次工程に液化炭酸を供給するようにすればよい。
【0050】
また、本発明方法及び装置により製造される微粉末シリカの原料として、天然物由来の沈降シリカである生物起源の珪藻土を出発原料とする沈降シリカが用いられる。
【0051】
この生物起源の珪藻土を出発原料として沈降シリカは、次のような工程を経て製造することができる。
【0052】
まず、生物起源の珪藻土にアルカリ水溶液を加え、アルカリ水溶液中に生物起源の珪藻土中のシリカを溶解させる。ここで用いられるアルカリ水溶液としては、生物起源の珪藻土中のシリカを溶解することができるpH13以上のアルカリ水溶液が用いられる。特に、シリカの高溶解性を実現するため、pHをほぼ14とするアルカリ水溶液を用いることが望ましい。この種のアルカリ水溶液として、アルカリ金属の水酸化物等の苛性アルカリ、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の水溶液がある。また、アルカリ水溶液によるシリカの溶解は、シリカの高溶解性と溶出時間短縮の点から、加熱下、例えば90〜100℃の加熱下で行うこと望ましい。
【0053】
そして、シリカを溶解させた溶液をpHコントロールすることにより、溶液中にシリカを沈殿させることができる。溶液中に溶解しているシリカを沈殿させる方法としては、自然沈積も含めて各種の方法を採用することができ、シリカ沈殿物の生成効率や沈殿の促進からして凝集沈殿剤を用いることが好ましい。この凝集沈殿剤としては、シリカ含有水溶液中のシリカを凝集・沈殿することができるものであればいずれのものでもよく、アルミニウム、マグネシウム、鉄、カルシウム、銅、マンガンを含む無機塩系凝集剤やアリル系含窒素化合物等の高分子系凝集剤を用いることができる。
【0054】
pHコントロール下でシリカの沈殿を行うことにより、アルカリ水溶液中に溶解しているシリカ、アルミニウム、鉄、カリウム、ホウ素等の各種pHでの溶解・沈殿における挙動の差異を利用して、特に溶解液中のホウ素濃度が、シリカ及び他の微量不純成分の場合とは異なり、pH非依存性であることを利用して実質的にホウ素を含まない高純度シリカを得ることができる。すなわち、溶解液中のシリカ濃度にはpH依存性があり、pHを変動させることによりシリカの溶解量(沈殿量)は異なるが、溶解液中のホウ素濃度がpH非依存性であることにより、シリカの溶解量に依存することなく溶解液中のホウ素濃度が一定であることを意味し、したがって、シリカの溶解量が極めて少なくその殆どが沈殿するpH領域であるpH5〜10で、ホウ素は溶解液中にそのまま留まることから、実質的にホウ素を含まないシリカ沈殿物を得ることができることになる。
【0055】
また、アルカリ水溶液中に溶解したシリカをpH3〜3.5となるように制御して沈殿させる場合、アルミニウムと鉄はその殆どが溶解しているのに対し、溶解しているシリカのうちの30〜60%が沈殿する。この沈殿したシリカは、収量が少ないものの、アルミニウムや鉄及びホウ素含量の少ない沈殿物として回収することができる。さらに、シリカ溶解液のpHをまずpH12〜13となるように制御し、溶解液に含まれるアルミニウムと鉄を沈殿させ、その上澄み液をpH5〜10、特にpH6〜9となるようにコントロールして沈殿させると、アルミニウムや鉄及びホウ素含量の少ないシリカ沈殿物を収率よく回収することができる。
【0056】
そして、pHコントロール下で、溶媒中に沈殿されたシリカ沈殿物は、従来公知の回収方法を採用して回収することができるが、自然沈降により分離した上澄み液を除去した後の脆弱なフロック状のシリカ沈殿物を加熱することにより、固化させて回収することが好ましい。
【0057】
ここで得られるシリカは、生物起源の珪藻土に含まれるシリカ以外のアルミニウム、鉄、ホウ素等の成分の含有割合が出発原料としての生物起源の珪藻土に比べて有意に少ない高純度シリカとして生成される。
【0058】
そして、この高純度シリカは、生物起源の珪藻土に含まれるシリカ以外の不純物の含有量が極めて少ないものであるが、沈殿物として回収されたのみの状態では、1〜30μm程度の粒径にまで微細化されるが、ナノメートル(nm)オーダーにまで微細化したものを得ることができない。また、アルカリ水溶液中から回収されたのみの沈降シリカは、容易に凝集してしまい微粉化状態を維持できない。
【0059】
本発明方法及び装置を用いることにより、ナノメートル(nm)オーダーにまで微細化した微粉末シリカを得ることができる。
【0060】
なお、本発明により微細化される沈降シリカは、上述した珪藻土や籾殻に由来のものに特定されるものではなく、シリカの含有率の高いトクサなどの植物を含む天然物由来の沈降シリカが用いられる。
【符号の説明】
【0061】
21 液化炭酸貯留槽
22 シリカ貯留槽
23 シリカ含有溶液生成槽
24 圧縮機
25 噴射機構
26 微粉末シリカ回収槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然物由来の沈降シリカを液化炭素に溶解してシリカ含有溶液を生成し、
次いで、上記シリカ含有溶液を圧縮し、
その後、上記圧縮されたシリカ含有溶液を急速減圧して膨張することにより、上記溶液中の二酸化炭素を蒸発させ、微粉化されたシリカを回収するようにした
ことを特徴とする微粉末シリカの製造方法。
【請求項2】
上記沈降シリカ含有溶液は、1500〜3000kg/cm2の圧力で圧縮されることを特徴とする請求項1記載の微粉末シリカの製造方法。
【請求項3】
上記回収されたシリカをさらに分級することにより、粒子径を均一化したシリカを得るようにしたことを特徴とする請求項1記載の微粉末シリカの製造方法。
【請求項4】
上記天然物由来のシリカは、
シリカ含有の天然物にアルカリ水溶液を加えてシリカを溶解させ、上記溶解したシリカからpH11〜12における沈殿物を除去し、
次いで、溶解したシリカをpH5〜10で沈降させた後、沈降されたシリカを回収して得られる沈降シリカであることを特徴とする請求項1記載の微粉末シリカの製造方法。
【請求項5】
上記シリカ含有の天然物は、生物起源の珪藻土であることを特徴とする請求項1記載の微粉末シリカの製造方法。
【請求項6】
上記シリカ含有の天然物は、籾殻を焼成した籾殻灰であることを特徴とする請求項1記載の微粉末シリカの製造方法。
【請求項7】
液化炭酸が貯留される液化炭酸貯留槽と、
上記液化炭酸貯留槽から液化炭酸が供給されるとともに、天然物由来の沈降シリカが投入され、上記液化炭酸に上記沈降シリカを溶解するシリカ含有溶液生成槽と、
上記シリカ含有溶液生成槽から供給されるシリカ含有溶液を圧縮し、加圧シリカ含有溶液を生成する圧縮機構と、
上記圧縮機構で圧縮された加圧シリカ含有溶液が減圧されながら噴射される噴射機構と
を備えることを特徴とする微粉末シリカの製造装置。
【請求項8】
上記噴射機構は、上記加圧シリカ含有溶液を噴射する噴射ノズルと、上記噴射ノズルから噴射されるシリカ含有溶液の微粒化を行う微粒化部を有することを特徴とする請求項7記載の微粉末シリカの製造装置。
【請求項9】
さらに、上記噴射機構は、加圧シリカ含有溶液を微粉末シリカ回収槽内に噴射し、得られる微粉末シリカを上記微粉末シリカ回収槽中に回収するようにしたことを特徴とする請求項7記載の微粉末シリカの製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−16690(P2011−16690A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−162880(P2009−162880)
【出願日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(509194998)
【出願人】(509195009)
【出願人】(509194002)
【Fターム(参考)】