説明

微粉炭吹込み方法

【課題】微粉炭の粒度分布の経時的な変化を正確に測定して適切な微粉炭吹込みができる微粉炭吹込み方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る微粉炭吹込み方法は、微粉炭製造装置16によって石炭を粉砕して製造された微粉炭をバグフィルタ7に気流搬送して、バグフィルタ7で回収した微粉炭をコールビン8に貯留し、コールビン8に貯留された微粉炭を吹込みタンク9に切り出して高炉羽口13に向けて気流搬送する微粉炭吹込み装置を用いた微粉炭の吹込み方法であって、微粉炭製造装置16によって製造された微粉炭を搬送経路から取り出して粒度分布測定装置40で周期的に測定する粒度分布測定工程と、粒度分布測定工程で測定された測定値と目標値との偏差を用いて微粉炭製造装置16における石炭粉砕力を調整する粉砕力調整工程とを有し、粒度分布測定工程は、標準試料の測定値の標準偏差が1%以内である粒度分布測定装置40を用いて行うことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助還元材としての微粉炭を高炉に安定的に吹き込む微粉炭吹込み方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高炉操業においては、還元材であるコークスの一部の代わりとして微粉炭を高炉羽口から吹き込む、微粉炭吹込み高炉操業が行なわれている。高炉への微粉炭吹込み操業は、高炉用コークスに比べて微粉炭が安価であるために、大きなコスト低減効果が得られる。また、高炉への微粉炭吹き込み量を増やすことにより高炉用コークスの製造設備であるコークス炉の負荷軽減を図ることができ、コークス炉の延命にも寄与する。
そこで、高炉操業においては、より一層多量の微粉炭を吹き込むための操業技術開発が要請されるに至り、現在では120kg/T以上の微粉炭多量吹込み操業が行われている。
【0003】
このような、微粉炭の高炉内への吹込み処理の流れを図14に基づいて概説する。微粉炭の高炉内への吹込みは、ヤードにストックされた石炭1を石炭ホッパ2に貯留し、その石炭ホッパ2に貯留されている石炭1をフィーダ3で切出して、微粉炭製造装置4に供給する。石炭1は、複数銘柄(石炭種)からなり、微粉炭製造装置4へは、各銘柄の石炭を所定の比率で供給・混合して粉砕すると共に乾燥し、所定の粒度分布に調製する。
【0004】
こうして調製された微粉炭5を、主管6を通してバグフィルタ7へ気流輸送する。バグフィルタ7で捕集された微粉炭5はコールビン8で貯留され、更に吹込みタンク9へ輸送する。吹込みタンク9に輸送された微粉炭5を気送により分配器10へ供給し、更に分配器10から複数の枝管11を通して高炉12下部の多数の羽口13部まで分配気送する。熱風炉14から各羽口13部のブローパイプ15に供給される熱風中に、微粉炭5を吹込みノズルから噴射し、熱風と共に各羽口13から高炉12内に吹き込み、燃焼させる。
【0005】
このように、微粉炭5を高炉12の炉内へ吹き込むまでには、いくつかの配管系やバルブ、吹込み装置等を経由させなければならない。ところが、多量吹込みが要請される今日の微粉炭吹込みの高炉操業においては、微粉炭が配管系等の内部に付着し、更にはそれらを閉塞させることもある。
このような微粉炭の配管系等における付着や閉塞が発生した場合には、正常な高炉操業を継続することができなくなる。例えば、吹込みタンク9から分配器10までの間で閉塞した場合には、高炉12の全羽口からの微粉炭吹込みが不可能となり、炉頂からのオールコークス装入操業に切り替えなければならず、炉内状況を安定化させるためには長時間を要する。あるいは、分配器10以降の複数の枝管11のいずれかで閉塞すれば、炉内円周方向についての微粉炭吹込み量にバラツキが発生し、溶銑の成分変動や炉況不調の原因となる。特に、微粉炭吹込み量が多い高炉操業の場合には、減風や休風を余儀なくされて、減産その他大きな問題となる。
このように、配管系等における微粉炭の付着や配管系の閉塞は高炉操業に多大な損失を与える。したがって、微粉炭吹込みにおいては、微粉炭がその配管系等に付着したり、閉塞したりすることなく、スムーズに流れることが強く要請される。
【0006】
ところで、配管系等における付着や閉塞の要因として微粉炭の粒度分布が影響していることが知られている。
そこで、特許文献1においては、配管系における付着や閉塞が微粉炭の水分含有量にも関係することに着目して、微粉炭の5〜50質量%が粒径1〜20μmの微粉炭粒子であり、かつ前記微粉炭が水分を1〜8質量%含有する高炉への微粉炭吹き込み方法が開示されている。
また、吹き込み経路において閉塞を生じないような流動性が確保された微粉炭の製造方法として、特許文献2には以下のような反応炉内吹込み用微粉炭の製造方法が開示されている。
「単一種の石炭又は複数種の石炭から製造された微粉炭を、微粉炭製造装置からキャリアガスによって配管系内を経由して輸送し、こうして輸送された当該微粉炭を微粉炭吹込み装置から反応炉内へ吹き込んで燃焼させるための微粉炭を、微粉炭製造装置により製造する方法において、前記反応炉に吹き込まれる前記微粉炭の粒度分布の制御を、当該微粉炭製造に用いる石炭の粉砕性をパラメーターとし、前記微粉炭製造装置において当該石炭に負荷する粉砕力を調整すること、により行なうことを特徴とする、反応炉内吹込み用微粉炭の製造方法。」(特許文献2の請求項1参照)
【0007】
特許文献1、2においては微粉炭の閉塞を生じないための微粉炭の粒径や製造方法が開示されているものの、実際に吹き込まれている微粉炭の粒径の測定に関しては詳細な開示はないが、恐らく輸送管等からサンプリングして測定室に設置されたレーザ回折法により測定をするといういわゆるバッチ方式によって行われていると推察される。
【0008】
しかしながら、輸送管を流れる微粉炭の粒度分布を常に適切な粒度分布になるように管理するためには、微粉炭の粒度分布の経時変化を測定することが要請される。
微粉炭粒度を連続測定するための微粉炭粒度測定装置、微粉炭製造システム、高炉操業方法としては例えば特許文献3に開示されている。
【0009】
特許文献3に開示された微粉炭の粒度分布測定装置は、微粉炭を高炉羽口へ気流輸送する輸送管と、該輸送管を流れる微粉炭をキャリアガスと共に取り出すバイパス路と、該バイパス路に設けられて該バイパス路に流入する微粉炭の濃度を希釈する希釈手段と、該希釈手段で希釈された微粉炭の粒度分布を連続的に測定するレーザ回折式粒度分布測定装置とを備えたことを特徴とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−271105号公報
【特許文献2】特開2002−194408号公報
【特許文献3】特開2005−241480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
配管系等における付着や閉塞の要因として微粉炭の粒度分布が影響しており、適切な粒度分布の微粉炭の粒度分布やその製造方法の開示はあるものの、そのような粒度分布の微粉炭を製造するには、実際に吹き込まれている微粉炭の性状を適切にオンラインで知ることが必要であり、それを前提として初めて適切な微粉炭吹込みが実現できるのである。
しかしながら、特許文献3に開示された微粉炭の粒度分布測定装置は、流路の圧力調整が複雑なため微粉炭の取り出しが安定せず、微粉炭の粒度分布を正確に測定するのは難しいという問題があった。すなわち、最大9kg/cm2程度の高圧となっている吹込みタンクから輸送管を通して微粉炭は輸送されるが、吹込みタンクの圧力が変動すると輸送管内圧力も変動するためエジェクタ差圧が変動し、エジェクタ効果により取り出しされるキャリアガス量および微粉炭量が変動することになる。レーザ回折式粒度分布測定装置は、透過率が所定の範囲内にあることが要請されるところ、取り出されるキャリアガス量および微粉炭量が変動するとキャリアガス中の微粉炭濃度が変化し、それ故に透過率が変化して、安定した測定が難しいという問題がある。
また、吹込みタンクの圧力が変動してエジェクタ差圧の変動が大きい場合には、微粉炭の取り出しが困難になることも考えられる。
さらに、特許文献3に開示された方法は、高圧で気流輸送中の微粉炭を、バイパス路やエジェクタ等を設けて輸送管から取り出すため、取り出し流路が複雑でバルブ等が多数必要となり、設置およびメンテナンスの費用が多大となる問題もあった。
【0012】
このように、特許文献3に開示された粒度分布測定装置によって吹き込まれる微粉炭の粒度分布をオンラインで測定したとしても、正確な粒度分布の測定が期待できないため、この装置を特許文献1,2のものと組み合わせたとしても適切な微粉炭吹込み方法を実現することはできない。
【0013】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、微粉炭の粒度分布の経時的な変化を正確に測定して適切な微粉炭吹込みができる微粉炭吹込み方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)本発明に係る微粉炭の吹込み方法は、微粉炭製造装置によって石炭を粉砕して製造された微粉炭をバグフィルタに気流搬送して、該バグフィルタで回収した微粉炭をコールビンに貯留し、該コールビンに貯留された微粉炭を吹込みタンクに切り出して高炉羽口に向けて気流搬送する微粉炭吹込み装置を用いた微粉炭の吹込み方法であって、
前記微粉炭製造装置によって製造された微粉炭を搬送経路から取り出して粒度分布測定装置で周期的に測定する粒度分布測定工程と、該粒度分布測定工程で測定された測定値と目標値との偏差を用いて前記微粉炭製造装置における石炭粉砕力を調整する粉砕力調整工程とを有し、
前記粒度分布測定工程は、標準試料の測定値の標準偏差が1%以内である粒度分布測定装置を用いて行うことを特徴とするものである。
【0015】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記粒度分布測定工程で用いる粒度分布測定装置は、前記バグフィルタと前記吹込みタンクとの間に設けられた微粉炭の搬送管に取り付けられて該搬送管内を移動する微粉炭を採取する採取装置と、該採取装置によって採取された微粉炭をレーザ回折式粒度分布測定装置に気送する微粉炭気送装置とを備え、
前記採取装置は、前記搬送管に挿入され搬送管内を移動する微粉炭を捕集する捕集部と、該捕集部で捕集した微粉炭を前記微粉炭気送装置側に搬送して供給する搬送部とを有する機械式サンプラーであることを特徴とするものである。
【0016】
(3)また、上記(2)に記載のものにおいて、前記粒度分布測定装置は、前記機械式サンプラーと前記微粉炭気送装置における吸入口との間に振動フィーダを備え、該振動フィーダによって前記吸入口側に向かって供給される微粉炭を前記吸入口で吸入するようにしたことを特徴とするものである。
【0017】
(4)また、上記(2)又は(3)に記載のものにおいて、前記微粉炭気送装置は、微粉炭の吸入量を調節する吸入量調節機能を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の微粉炭の吹込み方法においては、微粉炭製造装置によって製造された微粉炭を搬送経路から取り出して粒度分布測定装置で周期的に測定する粒度分布測定工程と、該粒度分布測定工程で測定された測定値と目標値との偏差を用いて前記微粉炭製造装置における石炭粉砕力を調整する粉砕力調整工程とを有し、前記粒度分布測定工程は、標準試料の測定値の標準偏差が1%以内である粒度分布測定装置を用いて行うようにしたので、微粉炭粒度を精度良く制御し微粉炭吹込み配管の閉塞を抑制し、実質的に微粉炭吹込み量を増やし低コストの高炉溶銑の製造を実現可能にできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る微粉炭吹込み方法において使用する粒度分布測定装置の取り付け位置を説明する説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る微粉炭吹込み方法に使用する粒度分布測定装置の説明図である。
【図3】図2に示した粒度分布測定装置によって標準試料の粒度分布測定を行った場合の微粉炭の粒度分布(-74μm割合(%))の時間経過を示したグラフである。
【図4】図2に示した粒度分布測定装置によって標準試料の粒度分布測定を行った場合の微粉炭の粒度分布(-44μm割合(%))の時間経過を示したグラフである。
【図5】本発明の一実施形態に係る微粉炭吹込み方法に使用する微粉炭製造装置の説明図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る微粉炭吹込み方法によって微粉炭吹込みを行ったときの微粉炭の粒度分布の推移を示すグラフである。
【図7】本発明の一実施形態に係る微粉炭吹込み方法によって微粉炭吹込みを行ったときの微粉炭吹込み配管の閉塞本数の推移を示すグラフである。
【図8】本発明の効果を確認するために比較例とした粒度分布測定装置の説明図である。
【図9】図8に示した粒度分布測定装置(比較例)を用いて標準試料の粒度分布測定を行った場合の微粉炭の粒度分布(-74μm割合(%))の時間経過を示したグラフである。
【図10】図8に示した粒度分布測定装置(比較例)を用いて標準試料の粒度分布測定を行った場合の微粉炭の粒度分布(-44μm割合(%))の時間経過を示したグラフである。
【図11】図8に示した粒度分布測定装置(比較例)を用いて微粉炭吹込みを行ったときの微粉炭の粒度分布の推移を示すグラフである。
【図12】図8に示した粒度分布測定装置(比較例)を用いて微粉炭吹込みを行ったときの微粉炭吹込み配管の閉塞本数の推移を示すグラフである。
【図13】本発明の一実施形態に係る微粉炭吹込み方法に使用する微粉炭製造装置の他の態様の説明図である。
【図14】微粉炭の高炉内への吹込みフローの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施の形態に係る微粉炭の吹込み方法は、微粉炭製造装置16によって石炭を粉砕して製造された微粉炭をバグフィルタ7に気流搬送して、該バグフィルタ7で回収した微粉炭をコールビン8に貯留し、コールビン8に貯留された微粉炭を吹込みタンク9に切り出して羽口13に向けて気流搬送する微粉炭吹込み装置を用いた微粉炭の吹込み方法であって、
微粉炭製造装置16によって製造された微粉炭を搬送経路から取り出して粒度分布測定装置40で周期的に測定する粒度分布測定工程と、該粒度分布測定工程で測定された測定値と目標値との偏差を用いて微粉炭製造装置16における石炭粉砕力を調整する粉砕力調整工程とを有している。
以下、各工程及び各工程に使用される機器について詳細に説明する。
【0021】
<粒度分布測定工程>
粒度分布測定工程は、微粉炭製造装置16によって製造された微粉炭を搬送経路から取り出して粒度分布測定装置40で周期的に測定する工程である。
粒度分布測定工程においては、同一粉砕条件で周期的に測定した連続10点の測定値の標準偏差が1%以内である粒度分布測定方法を用いることが必要である。
そのため、本実施の形態では、上記の条件を満たす粒度分布測定方法とするために、粒度分布測定装置40や粒度分布測定装置40を取り付ける部位を工夫している。
【0022】
図1は、本実施の形態に係る微粉炭吹込み方法に用いる粒度分布測定装置40が取り付けられる部位を説明するための説明図であり、バグフィルタ7と吹込みタンク9との間の配管等を詳細に示している。
まず、図1に基づいて、バグフィルタ7と吹込みタンク9との間の配管等を詳細に説明する。
図1に示されるように、バグフィルタ7の下部にはバグフィルタ7で回収された微粉炭を切り出すためのスクリューフィーダ17が設けられている。また、スクリューフィーダ17で切り出された微粉炭をコールビン8に搬送するための2本の搬送管19がスクリューフィーダ17とコールビン8との間を連結するように設けられている。各搬送管19にはバグフィルタ7の機密性を確保するためのロータリーバルブ21が設けられている。
コールビン8の下方には中間タンク23が設けられ、中間タンク23の下方には吹込みタンク9が設けられている。
【0023】
上記のように構成されたバグフィルタ7から吹込みタンク9までの構造において、バグフィルタ7で回収された微粉炭が吹込みタンク9に供給されるまでの流れを説明する。
バグフィルタ7で回収された微粉炭は、スクリューフィーダ17で切り出され、スクリューフィーダ17の下部に設けられた搬送管19内を自由落下してコールビン8に貯留される。コールビン8に貯留された微粉炭は中間タンク23を経由して吹込みタンク9に供給される。
【0024】
次に粒度分布測定装置40の構造について説明する。
粒度分布測定装置40は、図2に示すように、バグフィルタ7とコールビン8との間に設けられた搬送管19に取り付けられて搬送管19内を落下する微粉炭を採取する採取装置としての機械式サンプラー41と、採取装置によって採取された微粉炭をレーザ回折式粒度分布測定装置35に気送する微粉炭気送装置27とを備えている。
以下、粒度分布測定装置40の構成を詳細に説明する。
【0025】
<採取装置>
本実施の形態に係る採取装置は、搬送管19に挿入された機械式サンプラー41によって構成される。
機械式サンプラーとしては、上面が開放された筒体内にスクリューを設置したスクリューフィーダ等を用いることが出来る。上面が開放したスクリューフィーダを用いる場合、スクリューの一部を搬送管19に挿入し、スクリュー上に落下した微粉炭を搬送管19の外に定量的に取り出すことが可能となる。
機械式サンプラー41によって取り出された微粉炭は、微粉炭気送装置27によってレーザ回折式粒度分布測定装置35に導入される。
【0026】
<微粉炭気送装置>
微粉炭気送装置27は、先端側が吸入ノズル25に連結された吸入管29と、吸入管29の他端に取り付けられたエジェクタ31と、エジェクタ31に吸入用のガスとなる窒素を供給する窒素供給管33とを備えている。吸入管29におけるエジェクタ31の上流側には、レーザ回折式粒度分布測定装置35が設けられ、レーザ回折式粒度分布測定装置35にはPC37(パーソナルコンピュータ)が接続され、さらにPC37にはプロセスコンピュータ39が接続されている。
【0027】
上記のように構成された微粉炭の粒度分布測定装置40を用いて微粉炭の粒度分布を測定する方法を説明する。
バグフィルタ7で捕集された微粉炭はバグフィルタ7下部のスクリューフィーダ17により搬送管19に切出される。搬送管19に切り出された微粉炭は、コールビン8に貯留され、中間タンク23を経て吹込みタンク9へと搬送される。
ここで、バグフィルタ7から吹込みタンク9間は、ほぼ大気圧であり、微粉炭は自然落下しているため、搬送管19から微粉炭を取り出す場合には、複雑な圧力調整が必要ない。
【0028】
搬送管19を落下する微粉炭は機械式サンプラー41における筒体内に落下してスクリューによって定量的に切り出され、ホッパ43を介して吸入管29の吸入口45に供給される。
他方、微粉炭気送装置27における窒素供給管33に窒素を供給すると、エジェクタ31の作用によって吸入口45に供給された微粉炭が吸入ノズル25から吸入される。吸入された微粉炭は、レーザ回折式粒度分布測定装置35に供給される。レーザ回折式粒度分布測定装置35は、搬送管19から吸入されて分散飛翔状態で流れる微粉炭粒子群にレーザ光を照射することによって生ずる回折光の空間強度分布を測定し、その測定結果に基づいて微粉炭粒子群の粒度分布を測定する。
レーザ回折式粒度分布測定装置35によって測定された測定結果はPC37に出力され、PC37によって所定の演算がなされ、プロセスコンピュータ39にさらに出力され、プロセス操作室等でモニターされると共に微粉炭製造装置16の制御装置55に入力され、微粉炭製造装置16における粉砕力制御に使用される。
【0029】
本実施の形態の微粉炭吹込み方法に使用する粒度分布測定装置40においては、バグフィルタ7と吹込みタンク9との間にある搬送管19に機械式サンプラー41を設けて、搬送管19内を落下する微粉炭を取出してレーザ回折式粒度分布測定装置35に導入するようにしたので、搬送管19内はほぼ大気圧であることから、搬送管19から微粉炭を取り出すに際して、複雑な圧力調整が必要ない。そして、安定的かつ確実に微粉炭を取り出すことができるので、散飛翔状態の微粉炭濃度を安定させることができ、微粉炭の粒度分布の経時変化を正確に測定することができる。
その結果、同一粉砕条件で周期的に測定した連続10点の測定値の標準偏差が1%以内である粒度分布測定方法を実現できる。
【0030】
また、本実施の形態では、バグフィルタ7とコールビン8との間に設けた搬送管19に微粉炭を取り出す機械式サンプラー41を設けたので、吹込みタンク9側の圧力の影響が少なく、より好ましい。もっとも、バグフィルタ7と吹込みタンク9との間であれば、コールビン8と吹込みタンク9との間、例えばコールビン8と中間タンク23の間にある配管に機械式サンプラー41を設けるようにしてもよい。
【0031】
なお、レーザ回折式粒度分布測定装置35による微粉炭の粒度分布の測定に際し、微粉炭濃度を調整するには、微粉炭気送装置27における窒素供給管33への窒素の供給量を調整して微粉炭の吸入量を変化させることで対応できる。
【0032】
本実施の形態の粒度分布測定装置40の測定精度を検証するために、微粉炭製造装置16を用いて代表的な粉砕条件で微粉炭を製造して得た微粉炭標準試料(−74μm割合:約70%、−44μm割合:約50%)を、オフラインの搬送管中に自然落下させ、粒度分布測定装置40によって粒度分布測定を行った。図3、図4はその結果を示すグラフであり、図3は、横軸が経過時間を示し、縦軸が微粉炭粒度分布(-74μm割合(%))を示している。
また、図4は、横軸が経過時間を示し、縦軸が微粉炭粒度分布(−44μm割合(%))を示している。図3、図4のグラフを見ると、測定値の上下への変動が少ない。
10点の標準偏差は、図3(−74μm割合(%))では0.8%、図4(−44μm割合(%))では0.7%であり、本発明の測定値の安定性が1%以下の条件を満たし、微粉炭粒度分布の経時変化を正確に測定できていることが読み取れる。
このように本実施の形態の粒度分布測定装置40によれば、微粉炭採取装置として機械式サンプラー41を用いたので、微粉炭の粒度分布を安定的、かつ正確に測定することができ、標準試料の測定値の標準偏差を1%以内にすることができる。
なお、上記の例では標準試料の測定値の標準偏差を求める計測値のデータとして連続する10点(図3、図4参照)を用いたものを示したが、測定値のデータ数はこれに限られず、10点以上のデータ数であれば測定値の安定性を評価できる。
【0033】
<粉砕力調整工程>
粉砕力調整工程は、粒度分布測定工程で測定された測定値と目標値との偏差を用いて微粉炭製造装置16における石炭粉砕力を調整する工程である。
微粉炭製造装置16の構成を説明する。
【0034】
微粉炭製造装置16は、石炭を装入するための装入部63と、装入部63から装入された石炭を受け止めるターンテーブル65と、ターンテーブル65を囲むように設置された竪型のローラータイヤ51と、ローラータイヤ51における粉砕力を調整するための油圧シリンダー53と、油圧シリンダー53の押圧力を制御する制御装置55と、所定の粒度の石炭が通過できる開口隙間が形成された粒度分級調整盤57と、粒度分級調整盤の開口隙間を通過した微粉炭が排出される排出口59と、粉砕室に高速の温風を供給する温風供給管61とを備えている。
【0035】
上記のように構成された微粉炭製造装置16においては、装入部63から給炭された石炭は、複数個のローラータイヤ51とターンテーブル65とで囲まれた空間領域に供給され、ローラータイヤ51とターンテーブル65の隙間において両者によって破砕・粉砕される。粉砕された石炭は、ターンテーブル65の上面とローラータイヤ51の下端面との隙間から、ターンテーブル65の盤面上を周円部に移動し、はじき出される。はじき出された粉砕石炭は、高速温風に乗ってターンテーブル65の周縁から舞い上がり、大部分の粉砕石炭は、粒度分級調整盤57の開口隙間を通過して当該装置上部の排出口59から温風によって排出される。
他方、粒度分級調整盤57の開口隙間を通過できなかった粉砕石炭は、落下してローラータイヤ51の間隙に供給され、再度、破砕・粉砕される。
【0036】
微粉炭製造装置16における粉砕加圧力はローラータイヤ51を支持する支持部に設けられた油圧シリンダー53の圧力を制御することによって制御される。つまり、油圧シリンダー53の圧力を高くすることで粉砕力を高め、微粉炭の粒度を細かくでき、逆に油圧シリンダー53の圧力を弱くすることで微粉炭の粒度を粗くすることができる。
油圧シリンダー53の圧力は、粒度分布測定工程で粒度分布測定装置40によって測定された測定値と目標値との偏差を用いて制御装置55によって調整される。
調整方法の一例を示すと、下式(1)によって調整される。
Pn+1=Pn+A×(X−Xn)・・・(1)
但し、Xn:粒度分布(-44μm割合(%))測定値
X:粒度分布(-44μm割合(%))目標値
Pn+1:調整後の加圧力(MPa)
Pn:調整前の加圧力(MPa)(粒度分布Xn測定時)
A:定数(MPa/%)
【実施例】
【0037】
[実施例]
本発明の効果を確認するために、羽口が40本の高炉で、計画出銑量に対し[150kg/t−溶銑]の微粉炭比で高炉内へ微粉炭を吹込む操業を実施した。
各羽口の微粉炭吹込み配管が閉塞した場合は、微粉炭吹込み配管の負荷が変わらないように羽口1本当たりの微粉炭吹込み量を変えず実質の微粉炭比が変わるようにし、その分コークス比を調整した。
吹込む微粉炭の粒度分布の管理値は、「45%≦―44μm≦50%、+74μm≦40%」とした。
【0038】
上記の操業条件で粒度分布測定装置40を用い、その測定結果に基づいて微粉炭製造装置16で石炭に負荷する粉砕力を、前述の(1)式を満たすように調整して、微粉炭の粒度分布の制御を実施する試験操業を行った。微粉炭粒度は12分毎に測定し、(1)式を用いた粉砕力の調整も12分毎に行った。なお、A=0.01(MPa/%)、X=48%とした。
【0039】
粉砕力を調整した結果、Xn、Yn、Pnの推移を図6のグラフに示す。図6のグラフは、左縦軸が粒度分布であり、また右縦軸が加圧力(MPa)であり、横軸が経過日数である。また、微粉炭吹込み配管の閉塞本数を調査した結果を図7のグラフに示す。微粉炭吹込み配管の閉塞本数とは、各羽口の閉塞(微粉炭吹込み停止)時間を24時間で割った値の羽口本数(40本)分の総和を、日毎に示した値である。図7のグラフにおいて、縦軸が閉塞本数であり、横軸が経過日数である。
【0040】
実験の結果、粒度分布Xnの変動幅が48±2%であり、極めて小さい変動幅での微粉炭吹込みが実現され、粒度分布Xnの管理値である「45%≦―44μm≦50%」に調整できた。
なお、粒度分布Yn(-74μm割合(%))の管理値は40%以下であるが、38%を目標値とし粒度分布Ynが目標値より高い場合には、微粉炭製造装置16に吹き込む温風の流量を減らして、また目標値より低い場合には、温風の流量を増やして粒度分布Ynを管理値内に調整した。
【0041】
[比較例]
本発明の実施例の効果を検証するため、実施の形態で用いた粒度分布測定装置40とは異なる形態の粒度分布測定装置24を用いた場合について同様の実験を比較例として行った。
まず、比較例として使用した粒度分布測定装置24について図8に基づいて説明する。
比較例の粒度分布測定装置24は、採取装置として機械式サンプラー41を用いるのではなく、吸入ノズル25を搬送管19に直接挿入して搬送管19内を落下する微粉炭を吸入して採取するようにしたものである。
【0042】
微粉炭製造装置16の粉砕条件や粒度分布測定周期は実施例と同様とした。
まず、粒度分布測定装置24の測定精度を検証するために、前記実施の形態と同様の微粉炭標準試料(−74μm割合:約70%、−44μm割合:約50%)を、オフラインの搬送管中に自然落下させ、粒度分布測定装置24によって粒度分布測定を行った。
図9、図10はその結果を示すグラフである。図9は、横軸が経過時間を示し、縦軸が微粉炭粒度分布(-74μm割合(%))を示している。また、図10は、横軸が経過時間を示し、縦軸が微粉炭粒度分布(-44μm割合(%))を示している。図9、図10のグラフを図3、図4と比較すると、粒度分布測定装置40に比べ、測定値の変動が大きい。
測定値における10点の標準偏差は、図9(―74μm割合(%))では1.4%、図10(―44μm割合(%))では2.5%であり、本発明の測定値の安定性として要求している1%以下の条件を満たしていなかった。
【0043】
このような本発明の条件を満たさない粒度分布測定装置24を用いて微粉炭吹込みを行った場合についてどのような結果が得られるかを確認するために、実施例と同様に羽口が40本の高炉で、微粉炭を吹込む操業を実施した。
比較例の粒度分布測定装置24を用いた場合は、粒度分布測定値Xnの変動が、粒度分布測定装置40を用いた場合よりも大きいので、A=0.01(MPa/%)とすると石炭に負荷する粉砕力が調整の度にXnの変動の影響を受け変動し不安定であったため、A=0.004(MPa/%)とすることで石炭に負荷する粉砕力を調整した。粒度分布Ynの調整は、実施例1と同様に行った。
【0044】
実験結果であるXn、Yn、Pnの推移を図11に、微粉炭吹込み配管の閉塞本数を図12に示す。
比較例の粒度分布測定装置24を用いた場合には、粒度分布Xnの変動幅が48±5%と実施例の場合よりも大きくなり、粒度分布Ynの変動幅もまた大きく、粒度分布測定装置24のばらつき(測定値の安定性が低い)以上に、実際の微粉炭粒度の変動も大きいと推察される結果となった。
実施例と比較例の試験結果を表1に示す
【0045】
【表1】

【0046】
理想では詰まり本数が0本/日であり、その場合に微粉炭比が[150kg/t−溶銑]となるが、実施例では、14日間の平均詰まり本数が0.34本/日で、実質の微粉炭比が[149kg/t−溶銑]と比較的良好であった。
一方、比較例では、14日間の平均詰まり本数が3.6本/日で、実質の微粉炭比が[137kg/t−溶銑]と低く、安価な微粉炭の使用量が減った上、閉塞した微粉炭吹込み配管の清掃作業の頻度が高く操業コストが高い結果であった。
このように、微粉炭粒度分布測定装置の測定値の安定性が1%以下の測定装置を用いて、微粉炭製造装置16の石炭に負荷する粉砕力を調整することによって、微粉炭粒度を精度良く制御し微粉炭吹込み配管の閉塞を抑制し、実質的に微粉炭吹込み量を増やし低コストの高炉溶銑を製造できることが実証された。
【0047】
なお、粒度分布測定装置の他の態様として、図13に示す粒度分布測定装置42のように、機械式サンプラー41によって取り出した微粉炭を一時的に貯留するバッファタンク47を設け、バッファタンク47から吸入ノズル25へフィーダ49によって定量的に切出すようにしてもよい。このようにすれば、レーザ回折式粒度分布測定装置35導入される分散飛翔状態の微粉炭濃度をより安定させることができる。フィーダ49は、振動フィーダを用いると切出し量(供給量)の時間変動が少ないのでより好ましい。
この場合、フィーダ49による供給量を調整することにより、微粉炭の吸入量を調節して、レーザ回折式粒度分布測定装置へ導入される微粉炭濃度を最適値になるように調製することもできる。
【符号の説明】
【0048】
1 ヤードにストックされた石炭
2 石炭ホッパ
3 フィーダ
4 微粉炭製造装置(従来例)
5 微粉炭
6 主管
7 バグフィルタ
8 コールビン
9 吹込みタンク
10 分配器
11 枝管
12 高炉
13 羽口
14 熱風炉
15 ブローパイプ
16 微粉炭製造装置(実施形態)
17 スクリューフィーダ
19 搬送管
21 ロータリーバルブ
23 中間タンク
24 粒度分布測定装置(比較例)
25 吸入ノズル
27 微粉炭気送装置
29 吸入管
31 エジェクタ
33 窒素供給管
35 レーザ回折式粒度分布測定装置
37 PC(パーソナルコンピュータ)
39 プロセスコンピュータ
40 粒度分布測定装置
41 機械式サンプラー
42 粒度分布測定装置(他の形態)
43 ホッパ
45 吸入口
47 バッファタンク
49 フィーダ
51 ローラータイヤ
53 油圧シリンダー
55 制御装置
57 粒度分級調整盤
59 排出口
61 温風供給管
63 装入部
65 ターンテーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粉炭製造装置によって石炭を粉砕して製造された微粉炭をバグフィルタに気流搬送して、該バグフィルタで回収した微粉炭をコールビンに貯留し、該コールビンに貯留された微粉炭を吹込みタンクに切り出して高炉羽口に向けて気流搬送する微粉炭吹込み装置を用いた微粉炭の吹込み方法であって、
前記微粉炭製造装置によって製造された微粉炭を搬送経路から取り出して粒度分布測定装置で周期的に測定する粒度分布測定工程と、該粒度分布測定工程で測定された測定値と目標値との偏差を用いて前記微粉炭製造装置における石炭粉砕力を調整する粉砕力調整工程とを有し、
前記粒度分布測定工程は、標準試料の測定値の標準偏差が1%以内である粒度分布測定装置を用いて行うことを特徴とする微粉炭の吹込み方法。
【請求項2】
前記粒度分布測定工程で用いる粒度分布測定装置は、前記バグフィルタと前記吹込みタンクとの間に設けられた微粉炭の搬送管に取り付けられて該搬送管内を移動する微粉炭を採取する採取装置と、該採取装置によって採取された微粉炭をレーザ回折式粒度分布測定装置に気送する微粉炭気送装置とを備え、
前記採取装置は、前記搬送管に挿入され搬送管内を移動する微粉炭を捕集する捕集部と、該捕集部で捕集した微粉炭を前記微粉炭気送装置側に搬送して供給する搬送部とを有する機械式サンプラーであることを特徴とする請求項1記載の微粉炭の吹込み方法。
【請求項3】
前記粒度分布測定装置は、前記機械式サンプラーと前記微粉炭気送装置における吸入口との間に振動フィーダを備え、該振動フィーダによって前記吸入口側に向かって供給される微粉炭を前記吸入口で吸入するようにしたことを特徴とする請求項2記載の吹込む微粉炭の吹込み方法。
【請求項4】
前記微粉炭気送装置は、微粉炭の吸入量を調節する吸入量調節機能を有することを特徴とする請求項2又は3に記載の吹込む微粉炭の吹込み方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図13】
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【図14】
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【図6】
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【図7】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−43998(P2013−43998A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180594(P2011−180594)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】