説明

微粉炭吹込量の制御方法および制御装置

【課題】微粉炭の吹込量が変動することを抑制すること。
【解決手段】微粉炭流量制御装置103が、微粉炭の原料である石炭の組成、含有水分、および粉砕、乾燥した後の粒度に関する情報し、取得した情報に基づいて、高炉に吹き込む微粉炭の流量を調整する微粉炭流量調節計12の開度を制御する。これにより、組成、含有水分、粒度などの石炭および微粉炭の性状によって搬送経路内で微粉炭が詰まり、微粉炭の流量調節計の開度が変化していないのにも係わらず微粉炭の吹込量が変化することを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉に吹き込む微粉炭の流量を制御する微粉炭吹込量の制御方法および制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、高炉では、炉頂から鉄鉱石と熱源および還元剤としてのコークスとを交互に装入し、羽口から熱風を吹き込んで炉内を昇温し、炉内の鉄鉱石を還元、溶解させることによって、溶銑が製造される。しかしながら、コークスの製造にはコストがかかる。このため、近年、コークスの一部を代替する熱源として石炭を粉砕した微粉炭が使用され、羽口から微粉炭を吹き込むようにしている。微粉炭は、コークスと比較して安価、且つ、燃焼性が良いことから、溶銑製造の合理化に大きく寄与する。また、微粉炭の吹込量を増やすことによって、コークスを製造するコークス炉の負荷を軽減し、コークス炉の延命にも寄与できる。
【0003】
高炉に吹き込まれる微粉炭の量が変動すると、高炉内の熱バランスが不安定になり、高炉の炉況が悪化する。また、溶銑の製造に必要なコークス量も変動する。このため、高炉に微粉炭を吹き込む際には、操業条件に関係なく、微粉炭の吹込量の変動を抑制し、微粉炭の吹込量を一定に保つことが望ましい。このような背景から、特許文献1,2には微粉炭の吹込流量を制御する技術が提案されている。具体的には、特許文献1には、各種調節計や調節手段を用いて微粉炭の吹込流量を安定化させる技術が記載されている。また、特許文献2には、圧力調節計の操作出力に対して非直線演算をした後に圧力・流量変換演算をし、変換信号に基づいて加圧気体の供給量を制御する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平3−22443号公報
【特許文献2】特公平3−25483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、微粉炭は、吹込タンク内に貯留され、圧縮窒素などの気体を利用して搬送経路を介して吹込タンクから高炉の羽口へと気体搬送される。このため、組成、含有水分、粒度などの石炭および微粉炭の性状によっては搬送経路内で微粉炭が詰まり、微粉炭の流量調節計の開度が変化していないのにも係わらず微粉炭の吹込量が変化することがある。しかしながら、特許文献1,2記載の技術は、石炭および微粉炭の性状を考慮せず、微粉炭の流量調節計のみで微粉炭の吹込量を制御している。このため、特許文献1,2記載の技術によれば、石炭および微粉炭の性状によっては微粉炭の吹込量が変動する可能性がある。
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、微粉炭の吹込量が変動することを抑制可能な微粉炭吹込量の制御方法および制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る微粉炭吹込量の制御方法は、高炉に吹き込む微粉炭の流量を制御する微粉炭吹込量の制御方法であって、前記微粉炭の原料である石炭の組成、含有水分、および粉砕、乾燥した後の粒度に関する情報を取得する情報取得ステップと、前記情報取得ステップにおいて取得した情報に基づいて、前記高炉に吹き込む微粉炭の流量を調節する微粉炭流量調節計の開度を制御する制御ステップと、を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る微粉炭吹込量の制御方法は、上記発明において、前記微粉炭を収容する吹込タンクの重量を計測する計測ステップを含み、前記制御ステップは、前記情報取得ステップにおいて取得した情報と前記計測ステップにおいて計測された吹込タンクの重量とに基づいて、前記高炉に吹き込む微粉炭の流量を調節する微粉炭流量調節計の開度を制御するステップを含むことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る微粉炭吹込量の制御方法は、上記発明において、前記制御ステップは、過去の操業実績に基づいて作成された石炭の組成、含有水分、および粉砕、乾燥した後の粒度と前記微粉炭流量調節計の開度との関係を示すデータベースを参照して、前記微粉炭流量調節計の開度を制御することを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る微粉炭吹込量の制御装置は、高炉に吹き込む微粉炭の流量を制御する微粉炭吹込量の制御装置であって、前記微粉炭の原料である石炭の組成、含有水分、および粉砕、乾燥した後の粒度に関する情報を取得する情報取得手段と、前記情報取得手段によって取得した情報に基づいて、前記高炉に吹き込む微粉炭の流量を調節する微粉炭流量調節計の開度を制御する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る微粉炭吹込量の制御方法および制御装置によれば、微粉炭の吹込量が変動することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の制御対象である微粉炭吹込設備の構成を示す模式図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態である微粉炭吹込量の制御システムの構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、図2に示す石炭銘柄DB内に格納される石炭銘柄データの一例を示す図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態である微粉炭流量制御処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態である微粉炭吹込量の制御システムの構成およびその動作について説明する。
【0014】
〔微粉炭吹込設備の構成〕
始めに、図1を参照して、本発明の制御対象である微粉炭吹込設備の構成について説明する。
【0015】
図1は、本発明の制御対象である微粉炭吹込設備の構成を示す模式図である。図1に示すように、本発明の制御対象である微粉炭吹込設備1は、ローラーミル2と、バグフィルタ3と、ブロワー4と、吹込タンク5と、を主な構成要素として備え、ローラーミル2、バグフィルタ3、およびブロアー4は略管状の配管6によって連通されている。
【0016】
ローラーミル2は、石炭ホッパー7から供給される石炭を粉砕することによって微粉炭を製造する装置である。バグフィルタ3は、配管6内を循環する循環ガスから微粉炭を分離しつつ集める装置である。バグフィルタ3によって微粉炭が分離された循環ガスは、配管6を通ってブロアー4に至り、ブロワー4によって循環ガスとして再利用される。但し、ブロアー4は煙突8を介して循環ガスを大気へ放散してもよい。
【0017】
ブロワー4は、配管6内に循環ガスを循環させる装置である。ブロアー4から排出された循環ガスは、ガスヒーター9によって高温に加熱されてローラーミル2に送られる。これにより、ローラーミル2によって粉砕された微粉炭は乾燥されつつバグフィルタ3に搬送される。
【0018】
バグフィルタ2によって集められた微粉炭は、篩い分けされた後にコールビン10を介して吹込タンク5に送られる。吹込タンク5は、気送管11を介して図示しない高炉の羽口から高炉内に微粉炭を吹き込む装置である。なお、高炉内への微粉炭の吹込量は気送管11に設けられた微粉炭流量調節計12の開度を制御することによって制御される。また、吹込タンク5は複数設けられ、ある吹込タンク5内の微粉炭を使い切ると、他の吹込タンク5から微粉炭を供給するようにしている。
【0019】
〔制御システムの構成〕
次に、図2,3を参照して、本発明の一実施形態である微粉炭吹込量の制御システムの構成について説明する。
【0020】
図2は、本発明の一実施形態である微粉炭吹込量の制御システムの構成を示すブロック図である。図3は、図2に示す石炭銘柄DB101内に格納される石炭銘柄データの一例を示す図である。
【0021】
図2に示すように、本発明の一実施形態である微粉炭吹込量の制御システム100は、石炭銘柄データベース(石炭銘柄DB)101と、吹込タンク重量計測装置102と、微粉炭流量制御装置103と、微粉炭流量調節計12と、を備えている。石炭銘柄DB101は、石炭の銘柄毎の石炭の性状に関するデータを石炭銘柄データとして格納している。本実施形態では、図3に示すように、石炭銘柄データは、石炭の銘柄毎の石炭の組成、含有水分、および乾燥、粉砕後の(微粉炭の)粒度に関するデータを含んでいる。
【0022】
吹込タンク重量計測装置102は、複数の吹込タンク5毎に設けられ、吹込タンク5の重量を計測する。吹込タンク重量計測装置102は、計測した吹込タンク5の重量のデータを微粉炭流量制御装置103に出力する。微粉炭流量制御装置103は、パーソナルコンピュータやマイクロコンピュータなどの情報処理装置によって構成されている。微粉炭流量制御装置103は、微粉炭流量調節計12の開度を制御することによって微粉炭の吹込流量を制御する。
【0023】
このような構成を有する微粉炭吹込量の制御システム100では、微粉炭流量制御装置103が、以下に示す微粉炭流量制御処理を実行することによって微粉炭の吹込量が変動することを抑制する。以下、図4に示すフローチャートを参照して、微粉炭流量制御処理を実行する際の微粉炭流量制御装置103の動作について説明する。
【0024】
〔微粉炭流量制御処理〕
図4は、本発明の一実施形態である微粉炭流量制御処理の流れを示すフローチャートである。図4に示すフローチャートは、高炉の羽口への微粉炭の吹込動作が開始されたタイミングで開始となり、微粉炭流量制御処理はステップS1の処理に進む。微粉炭流量制御処理は、微粉炭の吹込処理が行われている間、所定の制御周期毎に繰り返し実行される。
【0025】
ステップS1の処理では、微粉炭流量制御装置103が、吹込タンク5内に格納されている石炭の銘柄に関する情報をプロセスコンピュータなどの上位コンピュータから取得し、取得した石炭の銘柄に対応する石炭の組成、含有水分、および乾燥、粉砕後の粒度に関するデータを石炭銘柄DB101から取得する。これにより、ステップS1の処理は完了し、微粉炭流量制御処理はステップS2の処理に進む。
【0026】
ステップS2の処理では、微粉炭流量制御装置103が、吹込タンク重量計測装置102を介して吹込タンク5の重量を計測し、微粉炭を供給している吹込タンク5の単位時間当たりの重量の変化量を算出する。これにより、ステップS2の処理は完了し、微粉炭流量制御処理はステップS3の処理に進む。
【0027】
ステップS3の処理では、微粉炭流量制御装置103が、ステップS1の処理によって取得した石炭の性状に関するデータとステップS2の処理によって算出された吹込タンク5の単位時間当たりの重量とに基づいて微粉炭流量調整計12の制御パラメータを推定し、推定された制御パラメータに従って微粉炭流量調節計12の開度を制御することによって微粉炭の吹込流量を制御する。これにより、ステップS3の処理は完了し、一連の微粉炭流量制御処理は終了する。
【0028】
以上の説明から明らかなように、本発明の一実施形態である微粉炭吹込流量制御処理によれば、微粉炭流量制御装置103が、微粉炭の原料である石炭の組成、含有水分、および粉砕、乾燥した後の粒度に関する情報し、取得した情報に基づいて、高炉に吹き込む微粉炭の流量を調整する微粉炭流量調節計12の開度を制御する。これにより、組成、含有水分、粒度などの石炭および微粉炭の性状によって搬送経路内で微粉炭が詰まり、微粉炭の流量調節計の開度が変化していないのにも係わらず微粉炭の吹込量が変化することを抑制できる。
【0029】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述および図面により本発明は限定されることはない。すなわち、本実施形態に基づいて当業者などによりなされる他の実施の形態、実施例、および運用技術などは全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0030】
1 微粉炭吹込設備
2 ローラーミル
3 バグフィルタ
4 ブロワー
5 吹込タンク
6 配管
7 石炭ホッパー
8 煙突
9 ガスヒーター
10 コールビン
11 気送管
12 微粉炭流量調節計
100 微粉炭吹込量の制御システム
101 石炭銘柄データベース(石炭銘柄DB)
102 吹込タンク重量計測装置
103 微粉炭流量制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉に吹き込む微粉炭の流量を制御する微粉炭吹込量の制御方法であって、
前記微粉炭の原料である石炭の組成、含有水分、および粉砕、乾燥した後の粒度に関する情報を取得する情報取得ステップと、
前記情報取得ステップにおいて取得した情報に基づいて、前記高炉に吹き込む微粉炭の流量を調整する微粉炭流量調整計の開度を制御する制御ステップと、
を含むことを特徴とする微粉炭吹込量の制御方法。
【請求項2】
前記微粉炭を収容する吹込タンクの重量を計測する計測ステップを含み、
前記制御ステップは、前記情報取得ステップにおいて取得した情報と前記計測ステップにおいて計測された吹込タンクの重量とに基づいて、前記高炉に吹き込む微粉炭の流量を調整する微粉炭流量調整計の開度を制御するステップを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の微粉炭吹込量の制御方法。
【請求項3】
前記制御ステップは、過去の操業実績に基づいて作成された石炭の組成、含有水分、および粉砕、乾燥した後の粒度と前記微粉炭流量調整計の開度との関係を示すデータベースを参照して、前記微粉炭流量調整計の開度を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の微粉炭吹込量の制御方法。
【請求項4】
高炉に吹き込む微粉炭の流量を制御する微粉炭吹込量の制御装置であって、
前記微粉炭の原料である石炭の組成、含有水分、および粉砕、乾燥した後の粒度に関する情報を取得する情報取得手段と、
前記情報取得手段によって取得した情報に基づいて、前記高炉に吹き込む微粉炭の流量を調整する微粉炭流量調整計の開度を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする微粉炭吹込量の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−104116(P2013−104116A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250364(P2011−250364)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】