説明

微粒子および複合微粒子の製造方法

【課題】目的とする用途に応じた高分子化合物から、粒子径及び粒子径分布を制御した微粒子を容易に製造する方法を提供する。
【解決手段】(1)高分子化合物及び溶剤1から、25℃における粘度が20mPa・s以下の溶解液を調製する工程、(2)前記溶解液と溶剤2を混合してエマルションを調製する工程、(3)前記エマルションから溶剤1を抽出除去して前記高分子化合物からなる微粒子を得る工程とを有する微粒子の製造方法。高分子化合物が溶剤1に可溶で、且つ溶剤2に難溶であり、溶剤1と溶剤2が実質的に混和しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子材料、光学材料、医用材料などを含む広範な分野において適用できる微粒子および複合微粒子の製造方法に関するもので、特にサブミクロンサイズ以下の単分散微粒子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子材料、光材料、医用材料などの分野への応用を指向して、サブミクロンサイズ以下の微粒子に関する研究開発が盛んに行われている。
高分子化合物系の微粒子について、サブミクロンサイズ以下の微粒子(以下、微粒子と呼ぶ)を得る代表的な方法として、乳化重合法やソープフリー乳化重合法がある(非特許文献1)。これらの方法は工業的に優れた方法ではあるが、適用可能な高分子化合物の種類が少なく、近年の多様化されたニーズに対応することは難しい。また、重合メカニズムを鑑みると、微粒子内部に色材や磁性体などの機能性物質を内包させた微粒子(以下、複合微粒子と呼ぶ)を製造することは極めて困難である。
【0003】
一方、サブミクロンサイズ以下の微粒子を比較的容易に製造でき、且つ、複合微粒子の製造も可能な方法として、ミニエマルション重合が提案されている(非特許文献1)。この方法は、水難溶解性の低分子物質(以下、ハイドロホーブと呼ぶ)を添加して、サブミクロンサイズ以下のモノマーエマルションを安定化させ、次いで重合反応を進行させることによって、モノマーエマルションをそのまま微粒子化する方法である。しかしながら、上記した方法と同様、適用可能な高分子化合物の種類が少なく、また、複合微粒子を製造しようとした場合、エマルションの形成過程や重合過程において、機能性物質がエマルションから脱離して内包効率が低下するという問題がある。
【0004】
また、特許文献1では、高分子化合物を良溶媒に溶解させ、この溶解液に、高分子化合物の貧溶媒を添加しながら良溶媒を徐々に蒸発させることにより、最終的に貧溶媒中に高分子微粒子を析出させる自己組織化析出法を提案している。この方法は、広範な高分子化合物に適用可能な方法ではあるが、粒子径やサイズ均一性の制御が難しく、また、複合微粒子を製造する場合には、さらなるプロセス検討が必要であると推察される。
【特許文献1】特開2004−67883号公報
【非特許文献2】「ナノ粒子・マイクロ粒子の最先端技術」、シーエムシー出版、2004年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、この様な背景技術に鑑みてなされたものであり、目的とする用途に応じた高分子化合物から、粒子径及び粒子径分布を制御した微粒子を容易に製造する方法を提供するものである。
【0006】
また、本発明は、微粒子へさらなる機能を付与した複合微粒子を効率的に製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、高分子化合物を溶剤1に溶解させた溶液と、前記溶剤1と実質的に混和しない溶剤2から、サブミクロンサイズ以下のエマルションを形成させ、次いで前記溶剤1を抽出除去することで、サイズ均一性に優れた微粒子を製造可能であることを見出し、本発明に至った。
【0008】
上記の課題を解決する微粒子の製造方法は、(1)高分子化合物及び溶剤1から、25℃における粘度が20mPa・s以下の溶解液を調製する工程、(2)前記溶解液と溶剤2を混合してエマルションを調製する工程、(3)前記エマルションから溶剤1を抽出除去して前記高分子化合物からなる微粒子を得る工程とを有することを特徴とする。
【0009】
上記の課題を解決する複合微粒子の製造方法は、(1)高分子化合物、機能性物質及び溶剤1から、25℃における粘度が20mPa・s以下の混合液を調製する工程、(2)前記混合液と溶剤2を混合してエマルションを調製する工程、(3)前記エマルションから溶剤1を抽出除去して前記高分子化合物および機能性物質からなる微粒子を得る工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、目的の用途に応じた高分子化合物から、粒子径及び粒子径分布を制御した微粒子を容易に製造する方法を提供することができる。また、微粒子へのさらなる機能付与を目的として、複合微粒子を効率的に製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の微粒子の製造方法は、(1)高分子化合物及び溶剤1から、25℃における粘度が20mPa・s以下の溶解液を調製する工程、(2)前記溶解液と溶剤2を混合してエマルションを調製する工程、(3)前記エマルションから溶剤1を抽出除去して前記高分子化合物からなる微粒子を得る工程とを有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の複合微粒子の製造方法は、(1)高分子化合物、機能性物質及び溶剤1から、25℃における粘度が20mPa・s以下の混合液を調製する工程、(2)前記混合液と溶剤2を混合してエマルションを調製する工程、(3)前記エマルションから溶剤1を抽出除去して前記高分子化合物および機能性物質からなる微粒子を得る工程とを有することを特徴とする。
【0013】
本発明において、微粒子あるいは複合微粒子が得られるメカニズムについて説明する。
通常、水と油を混合してO/Wエマルションとし、さらにこのエマルションをせん断してサブミクロンサイズ以下のエマルションを形成させようとした場合、粒子径分布が不均一な粗いエマルションを中間状態として生じる。粗いエマルションを生じると、油滴ごとの粒子径の違いからオストワルドライプニングが促進されるため、サブミクロンサイズ以下の単分散エマルション(以下、ミニエマルションと呼ぶ)を製造することは極めて困難である。
【0014】
一方、オストワルドライプニングを効果的に抑制し、ミニエマルションを調製する方法として、ハイドロホーブと呼ばれる水難溶性低分子物質を利用する方法が知られている。油相にハイドロホーブを添加してO/Wエマルションとした場合、ラプラス圧に対抗する浸透圧を生じて全ての油滴間で圧平衡が成り立つため、オストワルドライプニングが抑制されて、ミニエマルションを安定に形成させることが可能になる。
【0015】
本発明では、微粒子化したい高分子化合物をハイドロホーブ代替物質(圧力調整剤)として機能させることで、ミニエマルションを安定化することを特徴とする。高分子化合物の適量を溶剤1に溶解させて溶解液とし、前記溶解液を溶剤1と実質的に混和しない溶剤2と混合・せん断して、前記溶解液を分散質とするミニエマルションを中間状態として形成させる。さらに、溶剤1のみを選択的に抽出除去することによって、目的の高分子微粒子を製造することが可能になる。
【0016】
さらに、本発明の方法を応用して複合微粒子を製造することも可能である。
高分子化合物の適量と、目的とする機能性物質を溶剤1と混合して混合液とし、前記混合液を溶剤1と実質的に混和しない溶剤2と混合・せん断して、前記混合液を分散質とするミニエマルションを中間状態として形成させる。さらに、溶剤1のみを選択的に抽出除去することによって、高分子化合物と機能性物質から成る複合微粒子を製造することができる。前記混合液は、高分子化合物を含有する拡散性の小さい溶液であるため、混合・せん断に基づく分散質からの機能性物質の脱離を効果的に抑制する。つまり本発明は、複合微粒子の製造に好適な製造方法である。
【0017】
本発明が目的とする単分散微粒子の単分散性とは、1ピークの粒子径分布を有し、その分散度指数が1.5以下、好ましくは1.3以下、さらに好ましくは1.2以下である。本発明における分散度指数とは、数平均粒子径(Dn)と重量平均粒子径(Dw)から算出される分散度指数(Dw/Dn)を意味する。
【0018】
本発明におけるミニエマルションとは、1ピークの粒子径分布を有し、且つ、平均粒子径が20nm以上1000nm以下、好ましくは50nm以上500nm以下で、且つ分散度指数1.5以下、好ましくは1.3以下の単分散エマルションを意味する。この領域のエマルションは、オストワルドライプニングの影響を強く受けるため、ハイドロホーブ、あるいは本発明の高分子化合物ような圧力調整剤の添加なしでは安定化することが極めて困難である。
【0019】
本発明における高分子化合物、溶剤1、溶剤2は、それぞれの溶解性の組み合わせが極めて重要である。
すなわち、高分子化合物は溶剤1に可溶性、且つ、溶剤2に難溶性であり、溶剤1と溶剤2は実質的に混和しない組み合わせであれば、いかなる高分子化合物、溶剤1、溶剤2であっても適用可能である。
【0020】
高分子化合物が溶剤に対して可溶性であるか、難溶性であるかについては、以下の方法に基づいて評価することが可能である。
高分子化合物を、溶剤に対して3wt%になるように混合して25℃、24時間振とうしてから24時間放置する。そして、その混合状態を均一な状態として存在する場合を可溶性、ゲルまたは粒状の外観や明らかな濁りを示す不完全溶解として存在する場合を難溶性として定義する。ただし本発明における難溶性とは、高分子化合物と溶媒の作用が認められない、いわゆる不溶状態を含有する表現である。目視により溶解性を判断することが困難である場合、高分子化合物を溶解あるいは分散させた溶液の透過率を測定することで溶解性の指標とすることができる。この場合、本発明では透過率95%以上である場合を可溶性、透過率95%未満である場合を難溶性として定義する。透過率は公知の方法により測定することが可能である。本発明では、U−2001型ダブルビーム分光光度計(日立製作所)を用いて測定した、入射光が500nmにおける透過率を評価基準としている。
【0021】
また本発明における、溶剤1と溶剤2が実質的に混和しない組み合わせとは、良好なミニエマルションを形成可能な範囲においていかなる組み合わせも適用可能である。好ましくは、溶剤1の溶剤2に対する溶解度が常温(20℃)で3質量%以下である。また、同様に溶剤2の溶剤1に対する溶解度が常温(20℃)で3質量%以下である場合に好適である。
【0022】
本発明における高分子化合物は、溶剤1、溶剤2との溶解性の組み合わせを満たすものであればどのような高分子化合物であっても好適である。例えば、汎用高分子化合物であるポリオレフィン系化合物、ナイロン等に代表されるポリアミド系化合物、ポリチオフェンやポリアセチレンなどの導電性高分子化合物、ポリアミノ酸等の生体由来の高分子化合物、ポリ脂肪酸エステル等の生分解性高分子化合物などが挙げられる。ただし、本発明の高分子化合物はこれらに限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲において、いかなる高分子化合物も適用可能である。また、1種類の高分子化合物を用いても良いし、2種類以上の高分子化合物を用いても良い。
【0023】
本発明における溶剤1と溶剤2は、上記の高分子化合物、及び溶剤1と溶剤2の溶解性の組み合わせを満たすものであれば、いかなる溶剤であっても好適である。
例えば、O/Wエマルションを中間状態として形成させる場合の溶剤1の例として、ハロゲン化炭化水素(ジクロロメタン、クロロホルム、クロロエタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、四塩化炭素等)、ケトン類(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エーテル類(テトラヒドロフラン、エチルエーテル、イソブチルエーテル等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン等)等が挙げられ、これらを単独で用いても良いし、あるいは2種類以上適宜の割合で混合して用いることもできる。溶剤1として特に、ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素が好適である。また溶剤2の例としては、水、あるいは水溶液が好適である。ただし、本発明の目的を達成できる範囲において、溶剤1と溶剤2はこれらに限定されない。
【0024】
例えば、W/Oエマルションを中間状態として形成される場合の溶剤1の例として、水、あるいは水溶液が好適である。また溶剤2の例として、ハロゲン化炭化水素(ジクロロメタン、クロロホルム、クロロエタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、四塩化炭素等)、ケトン類(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エーテル類(テトラヒドロフラン、エチルエーテル、イソブチルエーテル等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン等)等が挙げられ、これらを単独で用いても良いし、あるいは2種類以上適宜の割合で混合して用いることもできる。溶剤1として特に、ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素が好適である。ただし、本発明の目的を達成できる範囲において、溶剤1と溶剤2はこれらに限定されない。
【0025】
本発明における溶解液、あるいは混合液は、その25℃における粘度が20mPa・s以下であることを特徴とする。これより高粘度である場合には、公知の手法では、ミニエマルションを中間状態として形成させることが困難であることを実験により確認している。より好ましくは、15mPa・s以下、さらに10mPa・s以下である場合に、より好適に本発明を実施することが可能である。
【0026】
本発明における溶液、あるいは混合液の粘度は、従来公知の手法によって評価することができるが、例えば、TOKI.SANGYO CO.,LTD.製のVISCOMETER. CONTROLLER RC−100等の既存の粘度径によって評価することができる。
【0027】
本発明における機能性物質とは、微粒子化を目的とする高分子化合物、溶剤1、及びエマルションの分散安定性向上のために添加する分散剤以外の物質で、微粒子に付加的な機能を付与する物質であれば、いかなる物質も適用することが可能である。このような物質の例として、薬剤や色材、蛍光物質、金属、金属酸化物などが挙げられる。ただし、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の目的を達成可能な範囲において限定されない。
【0028】
本発明における複合微粒子は、高分子化合物と機能性物質から構成されることを特徴とし、1つの複合微粒子中に含有される機能性物質の含有量は、本発明の目的を達成できる範囲において限定されないが、好ましくは1質量%以上80質量%以下、より好ましくは5質量%以上70質量%以下、10質量%以上60質量%以下である場合に特に好適に用いることが可能である。複合微粒子中に含有される機能性微粒子の含有量が1質量%より少ない場合には、複合微粒子としての機能を十分発揮することができない可能性がある。また、80質量%よりも多い場合には、高分子化合物の特性が複合微粒子の特性に反映され難いため好ましくない場合がある。
【0029】
本発明におけるエマルションの調製工程において、溶剤1、溶剤2のいずれか、あるいはその両方に分散剤を加えてもよい。その例としては、アニオン界面活性剤(例、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等)、非イオン性界面活性剤〔ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(Tween 80,Tween 60,アトラスパウダー社製,米国)、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体(HCO−70,HCO−60,HCO−50,日光ケミカルズ社製)等〕、あるいはポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、レシチン、ゼラチン、ヒアルロン酸それらの誘導体等が挙げられ、これらの中の一種類か、いくつかを組み合わせて使用しても良い。分散剤の濃度は、本発明を実施可能な範囲において限定されないが、0.01質量%以上20質量%以下、好ましくは0.05質量%以上10質量%以下の範囲が好適である。
【0030】
本発明の第1の発明において、ミニエマルションは、以下のような工程により調製することができる。ただし、本発明におけるミニエマルションの調製方法は、以下の工程に限定されるものではなく、本発明を実施可能な範囲において、いかなる方法も実施可能である。
【0031】
まず、高分子化合物と溶剤1から溶解液を調製し、この溶解液と溶剤2を混合し、次いで乳化操作を行うことで第1のエマルションを調製する。
第1のエマルションは、前記溶解液を分散質、溶剤2を分散媒とする多分散エマルションで、例えば、断続振とう法、プロペラ型攪拌機、タービン型攪拌機糖のミキサーを利用する攪拌法、コロイドミル法、ホモジナイザー法、超音波照射法等の従来公知の乳化方法によって調製することができる。
【0032】
次に、第1のエマルションに更なる乳化操作を加えることにより、第2のエマルションを調製する。第2のエマルションは、その平均粒子径が20nm以上1000nm以下、且つ分散度指数が1.5以下であることを特徴とする単分散に優れたミニエマルションである。中間状態としてミニエマルションを経由することによってはじめて、本発明の目的を達成することが可能である。第2のエマルションは、従来公知の乳化方法によって調製することができるが、特にホモジナイザー法、超音波照射法が好適である。
【0033】
本発明において、第1のエマルションを調製する工程と、第2のエマルションを調製する工程を、一度の乳化操作によって行うことも可能であるが、2段階の乳化操作を経る場合に、目的とするミニエマルションを得られやすい。また、本発明を効果的に実施可能な範囲において、2段階以上の多段階の乳化操作を行うことも可能である。
【0034】
本発明の第2の発明において、ミニエマルションは、以下のような工程により調製することができる。ただし、本発明におけるミニエマルションの調製方法は、以下の工程に限定されるものではなく、本発明を実施可能な範囲において、いかなる方法も実施可能である。
【0035】
まず、高分子化合物と機能性物質、溶剤1から混合液を調製し、この混合液と溶剤2を混合し、次いで乳化操作を行うことで第1のエマルションを調製する。
第1のエマルションは、前記混合液を分散質、溶剤2を分散媒とする多分散エマルションで、例えば、断続振とう法、プロペラ型攪拌機、タービン型攪拌機糖のミキサーを利用する攪拌法、コロイドミル法、ホモジナイザー法、超音波照射法等の従来公知の乳化方法によって調製することができる。
【0036】
次に、第1のエマルションに更なる乳化操作を加えることにより、第2のエマルションを調製する。第2のエマルションは、その平均粒子径が20nmから1000nm、且つ分散度指数が1.5以下であることを特徴とする単分散に優れたミニエマルションである。中間状態としてミニエマルションを経由することによってはじめて、本発明の目的を達成することが可能である。第2のエマルションは、従来公知の乳化方法によって調製することができるが、特にホモジナイザー法、超音波照射法が好適である。
【0037】
本発明において、第1のエマルションを調製する工程と、第2のエマルションを調製する工程を、一度の乳化操作によって行うことも可能であるが、2段階の乳化操作を経る場合に、目的とするミニエマルションを得られやすい。また、本発明を効果的に実施可能な範囲において、2段階以上の多段階の乳化操作を行うことも可能である。
【0038】
本発明において、ミニエマルションから溶剤1を除去する方法は、公知の方法に従って行うことができる。例えば、プロペラ型攪拌機あるいはマグネチックスターラー等で攪拌しながら常圧、もしくは徐々に減圧して溶剤1を蒸発除去する方法、ロータリーエバポレータ―等を用いて、真空度、温度を調節しながら溶剤1を蒸発除去する方法、溶剤1と溶剤2のいずれにも可溶な溶剤を添加することによって、溶剤1を抽出除去する方法等が挙げられる。ただし、本発明を実施可能な範囲においてこれらに限定されない。
【0039】
本発明におけるエマルション、微粒子、複合微粒子の平均粒子径及び分散度指数は、従来公知の手法によって評価することができるが、目的とする微粒子の粒子径を評価するのに適した手法として、動的光散乱法によって測定することが好ましい。さらに、大塚電子(株)のDLS8000を用い、マルカット法に基づく解析によって評価することが測定精度の点で好適である。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
実施例1
微粒子1の作製
ポリスチレンをクロロホルムに秤量してクロロホルム溶解液を調整した。一方、水にドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を溶解させてSDS水溶液を調製した。クロロホルム溶解液とSDS水溶液を混合して混合液とし、この混合液を、攪拌式ホモジナイザーにて1時間せん断することで第1のエマルションとした。
【0041】
次に、第1のエマルションを、超音波式ホモジナイザーで4分間せん断することによって、第2のエマルションを調製した。第2のエマルションを、DLS8000(大塚電子(株)製)にて評価したところ、平均粒子径204nm、分散度指数1.2であることを確認した。
【0042】
次に、第2のエマルションをエバポレータ―にて減圧することで、第2のエマルションからクロロホルムを抽出除去し、ポリスチレンからなる微粒子1を得た。微粒子1を、DLS8000(大塚電子(株)製)にて評価したところ、平均粒子径159nm、分散度指数1.1であることを確認した。
【0043】
実施例2
微粒子2の作製
ポリチオフェンをクロロホルムに秤量してクロロホルム溶解液を調整した。一方、水にドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を溶解させてSDS水溶液を調製した。クロロホルム溶解液とSDS水溶液を混合して混合液とし、この混合液を、攪拌式ホモジナイザーにて1時間せん断することで第1のエマルションとした。
【0044】
次に、第1のエマルションを、超音波式ホモジナイザーで4分間せん断することによって、第2のエマルションを調製した。第2のエマルションを、DLS8000(大塚電子(株)製)にて評価したところ、平均粒子径182nm、分散度指数1.3であることを確認した。
【0045】
次に、第2のエマルションをエバポレータ―にて減圧することで、第2のエマルションからクロロホルムを抽出除去し、ポリチオフェンからなる微粒子2を得た。微粒子2を、DLS8000(大塚電子(株)製)にて評価したところ、平均粒子径82nm、分散度指数1.1であることを確認した。
【0046】
実施例3
微粒子3の作製
ポリエチレンをオルトジクロロベンゼンに秤量してオルトジクロロベンゼン溶解液を調整した。一方、水にドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を溶解させてSDS水溶液を調製した。オルトジクロロベンゼン溶解液とSDS水溶液を混合して混合液とし、この混合液を、攪拌式ホモジナイザーにて1時間せん断することで第1のエマルションとした。
【0047】
次に、第1のエマルションを、超音波式ホモジナイザーで4分間せん断することによって、第2のエマルションを調製した。第2のエマルションを、DLS8000(大塚電子(株)製)にて評価したところ、平均粒子径260nm、分散度指数1.4であることを確認した。
【0048】
次に、第2のエマルションに、攪拌しながら室温にてエタノールを少量ずつ滴下し、次いで、50wt%エタノール水溶液、10wt%エタノール水溶液、水の順で透析することによって、第2のエマルションからオルトジクロロベンゼンを抽出除去し、ポリエチレンからなる微粒子3を得た。微粒子3を、DLS8000(大塚電子(株)製)にて評価したところ、平均粒子径142nm、分散度指数1.2であることを確認した。
【0049】
実施例4
微粒子4の作製
ポリL乳酸をクロロホルムに秤量してクロロホルム溶解液を調整した。一方、水にドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を溶解させてSDS水溶液を調製した。クロロホルム溶解液とSDS水溶液を混合して混合液とし、この混合液を、攪拌式ホモジナイザーにて1時間せん断することで第1のエマルションとした。
【0050】
次に、第1のエマルションを、超音波式ホモジナイザーで4分間せん断することによって、第2のエマルションを調製した。第2のエマルションを、DLS8000(大塚電子(株)製)にて評価したところ、平均粒子径125nm、分散度指数1.2であることを確認した。
【0051】
次に、第2のエマルションをエバポレータ―にて減圧することで、第2のエマルションからクロロホルムを抽出除去し、ポリL乳酸からなる微粒子4を得た。微粒子4を、DLS8000(大塚電子(株)製)にて評価したところ、平均粒子径59nm、分散度指数1.1であることを確認した。
【0052】
実施例5
複合微粒子の作製
先ず、疎水化マグネタイトを以下のようにして製造した。
【0053】
FeCl3とFeCl2を水に溶解させて溶解液とした。この溶解液に、激しく攪拌しながら、アンモニア水を加えてマネタイトの懸濁液とした。この懸濁液にオレイン酸を加え、攪拌しながら、70℃で1時間、110℃で1時間攪拌することでスラリーとしたスラリーを大量の水で洗浄し、次いで減圧乾燥することで粉末の疎水化マグネタイトとした。得られた疎水化マグネタイトをクロロホルムに分散し、DLS8000(大塚電子(株)製)にて評価したところ、平均粒子径11nm、分子量分布1.3であることを確認した。
【0054】
次に、スチレンと疎水化マグネタイトをクロロホルムに秤量してクロロホルム混合液を調整した。一方、水にドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を溶解させてSDS水溶液を調製した。クロロホルム混合液とSDS水溶液を混合して混合液とし、この混合液を、攪拌式ホモジナイザーにて1時間せん断することで第1のエマルションとした。
【0055】
次に、第1のエマルションを、超音波式ホモジナイザーで4分間せん断することによって、第2のエマルションを調製した。第2のエマルションを、DLS8000(大塚電子(株)製)にて評価したところ、平均粒子径208nm、分散度指数1.2であることを確認した。
【0056】
次に、第2のエマルションをエバポレータ―にて減圧することで、第2のエマルションからクロロホルムを抽出除去し、スチレンと疎水化マグネタイトからなる微粒子4を得た。複合微粒子を得た。複合微粒子を、DLS8000(大塚電子(株)製)にて評価したところ、平均粒子径152nm、分散度指数1.1であることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、目的の用途に応じた高分子化合物から、粒子径及び粒子径分布を制御した微粒子を、また微粒子へのさらなる機能付与を目的として、複合微粒子を効率的に製造できるので、電子材料、光材料、医用材料などの分野に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)高分子化合物及び溶剤1から、25℃における粘度が20mPa・s以下の溶解液を調製する工程、(2)前記溶解液と溶剤2を混合してエマルションを調製する工程、(3)前記エマルションから溶剤1を抽出除去して前記高分子化合物からなる微粒子を得る工程とを有することを特徴とする微粒子の製造方法。
【請求項2】
前記高分子化合物が溶剤1に可溶で、且つ溶剤2に難溶であり、溶剤1と溶剤2が実質的に混和しないことを特徴とする請求項1記載の微粒子の製造方法。
【請求項3】
前記エマルションが、1ピークの粒子径分布を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の微粒子の製造方法。
【請求項4】
前記エマルションの平均粒子径が20nm以上1000nm以下であり、且つ分散度指数が1.5以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの項に記載の微粒子の製造方法。
【請求項5】
前記溶解液、溶剤2の少なくとも一方に分散剤が含有されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかの項に記載の微粒子の製造方法。
【請求項6】
前記(2)前記溶解液と溶剤2を混合してエマルションを調整する工程が、前記溶解液と溶剤2を混合して第1のエマルションを調製する工程、および前記第1のエマルションをせん断処理して第2のエマルションを調製する工程により行われることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかの項に記載の微粒子の製造方法。
【請求項7】
(1)高分子化合物、機能性物質及び溶剤1から、25℃における粘度が20mPa・s以下の混合液を調製する工程、(2)前記混合液と溶剤2を混合してエマルションを調製する工程、(3)前記エマルションから溶剤1を抽出除去して前記高分子化合物および機能性物質からなる微粒子を得る工程とを有することを特徴とする複合微粒子の製造方法。
【請求項8】
前記高分子化合物が溶剤1に可溶で、且つ溶剤2に難溶であり、溶剤1と溶剤2が実質的に混和しないことを特徴とする請求項7記載の複合微粒子の製造方法。
【請求項9】
前記エマルションが、1ピークの粒子径分布を有することを特徴とする請求項7と請求項7または8記載の複合微粒子の製造方法。
【請求項10】
前記エマルションの平均粒子径が20nm以上1000nm以下であり、且つ分散度指数が1.5以下であることを特徴とする請求項7乃至9のいずれかの項に記載の複合微粒子の製造方法。
【請求項11】
前記混合液、溶剤2の少なくとも一方に分散剤が含有されることを特徴とする請求項7乃至10のいずれかの項に記載の複合微粒子の製造方法。
【請求項12】
前記(2)前記混合液と溶剤2を混合してエマルションを調整する工程が、前記混合液と溶剤2を混合して第1のエマルションを調製する工程および前記第1のエマルションをせん断処理して第2のエマルションを調製する工程により行われることを特徴とする請求項7乃至11のいずれかの項に記載の複合微粒子の製造方法。

【公開番号】特開2008−56828(P2008−56828A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−236723(P2006−236723)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】